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石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究 (2)

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(1)

石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究 (2)

著者 柳澤 良一

雑誌名 金沢大学国語国文

39

ページ 5‑17

発行年 2014‑03‑20

URL http://hdl.handle.net/2297/46376

(2)

︻本文︸︵上四丁ウつづき︶

問旧︸題目破題警嶮述懐云名言↓陥一如何答第一発句名題目ハルノノヲニト0ノゾトハヲ事/挙皇其詩題故云題目︽U第二胸句名破題事作用分

卜0ハ破スル︵肥︶故二/之弓︵四︶云破題也︵釦︶破︷劃︶分破ノ破二ゞソテ破懐ノ︵〃︶非レ

ト0ハ01

テノヲ

スル破ニハ也︵調︶第三腰句名譽嶮.事−2︺/挙相似物躰一比観況一妬↑ ノヲ

故云讐瞼︵郡︶第四落句名述懐事其/侍︵訂一述柊顕逃思懐匂故一一一ノヲklハ

ート云述懐一也魂︶其證文可引軍一﹂︵上四丁ウ︶云述懐一也3其證文訂

︻校異︸︵上四丁ウつづき︶ 三川ロ文庫本﹃文筆問答紗﹄の翻刻 石川県立図書館蔵川口文庫﹃文筆問答紗﹄の研究︵三

︵喝︶問−この前に尊﹁題目破題譽嶮述懐事﹂あり︒

︵肥︶述懐云名言−内﹁述懐名言﹂︒

︵Ⅳ︶故云題目−内﹁故﹂︒

︵岨︶作用分破−内﹁分破作用﹂︒

︵四︶故之−尊﹁故是﹂︒

︵別︶故之云破題也−内﹁故﹂︒ ︵皿︶破−尊﹁破者﹂︒︵塊︶破懐−尊・内﹁破壊﹂︒︵羽︶破分破破破壊非破也−内ナシ︒︵別︶名譽嶮事−内﹁名譽喰﹂︒︵妬︶比観況−内﹁比況﹂︒︵恥︶故云譽嶮−尊﹁故云譽嶮也﹂︒内﹁故﹂︒︵︶事其侍述顕思懐故云述懐也−尊﹁事其詩述顕思懐故云述懐也﹂︒

内﹁顕述其詩述顕思懐故也﹂︒

︵羽︶證文−内﹁證﹂︒

︵羽︶可引−内﹁可見之﹂︒

︻本文一︵上五丁ォ︶

五︵1︶字題︿王沢抄文﹀

テヲス弓

待レ花催ご勝遊一催勝遊兒也/ノノハテカナニニスノ︿題目﹀斯地勝遊縁し底催︿灰胎韻﹀︵2︶侍吟花素終日二有い

カナ由哉/︽ンテヲカツカツクムスル一﹁︿破題﹀恋瀧謂γ屋一員詩7唾3︾謬艶且掛命し飲

柳澤良一

− 5 −

(3)

1r・蕊ハⅡr・塞ハス恋粧先展且斜待レ花心也言詩席命し飲盃催亘勝/

遊一心也ウタニレハヲスタテニヘハヲクル︿警喰﹀歌勧一︵4︶和声↓鶯未レ︵5︶出舞思:儂曲一蝶遅来/二レハヲ二トヲー毎ハスヲ歌勧上︵6︶和声舞思を傭曲ゞ催良勝遊警嶬也

リレーFO・・︑︑90JF●↑︑〃叩″/鴬未し出/心也言︲︶蝶遅来待レ花比況也/ハノヨィカナスヲ︿述懐﹀楊梅桃李一時興掎実今朝呈拙才/ハモノナレドモヲニハルー卜・舞う此楊梅桃李一時興尚桜花劣故花興詩述

懐也/ノノー字百詠詩︿文胎韻﹀︷8|﹂︵上五丁オ︶

︻校異一︵上五丁オ︶

︵1︶﹁五字題︿王沢抄文﹀﹂以下﹁花興詩述懐也﹂までの例詩−内

ナシ︒

︵2︶灰胎韻−底﹁待花催勝遊﹂の下にあるも一句目︵﹁斯地勝遊縁底催﹂︶

の下に移動する印あり︒尊は二句目﹁待花終日有由哉﹂の下に

あり︒

︵3︶言詩序−底﹁言﹂の左傍﹁ケン﹂︑﹁詩﹂の左傍﹁シノ﹂︑﹁席﹂

の左傍﹁セキ﹂︒

︵4︶勧−尊﹁歓﹂︒

︵5︶未−底﹁未﹂の左傍﹁ス﹂︒

︵6︶勧−尊﹁歓﹂︒

︵7︶心也−尊ナシ︒

︵8︶一字百詠詩︿文胎韻﹀−尊﹁一字題︿百詠詩﹀題日﹂︒内

﹁日︿百詠詩/支韻﹀﹂︒ サカヅキ盃/

︷本文一︵上五丁ウ︶ハテノヨリニルノー︿題目﹀日出二扶桑路一遙昇若木枝一︵︲︾ハノ︿此日︵2︶出兒也﹀/ノタニテリノキハ二ヒラヶ︿破題﹀雲間五色満霞際九光披ハグノノ︿此挙日輪色光一3︸用也﹀/

リクニカウニキス︿警嶮﹀東陸蒼龍駕南郊赤羽馳ハ一ア︿此以:青龍赤烏色光︽︵4︶比刈況日輪色光︵5︶也/

〃ノーテニナヲフルモノナヲハニヅカウマヅランニ二︿述懐﹀傾レ心葵蕾比−6︾朝夕奉堯礒

︿是言︲↑述懐句也↑8|﹀/アヲイノハ蕾花︵9︶随孑日ノ回一︵川︶傾也如レ此Ⅲ︸傾レ心奉公 セハッカウマヅルニニカランki云卜0ハルマ奉一︵吃︶堯礒一同述懐/述思懐↓義也/︵つづく︶

︻校異一︵上五丁ウ︶

︵1︶若木枝−尊﹁若木枝︿支脂韻﹀﹂︒

︵2︶此日−内﹁此初日﹂︒

︵3︶色光−内﹁光色﹂︒

︵4︶色光−内﹁色彩﹂︒

︵5︶色光−内﹁光用﹂︒

︵6︶葵蕾比−底﹁葵蕾﹂の右傍﹁ナラフルモノナラハ﹂とあるも

尊により﹁比﹂の右傍に移す︒底は﹁蕾﹂の左傍﹁クワク﹂︒

︵7︶是−尊・内﹁此﹂︒

︵8︶述懐句也−内﹁述思懐合上来也﹂︒

︵9︶蕾花随日回傾也如此傾心奉公奉堯礒同述懐述思懐義也−内ナ

− 6 −

(4)

︻本文︼︵上五丁ウつづき︶

按詩題事ルノヲテニノ問按を詩題・様如何答於レ題一字題五字︵︐︶六字題双貫題虚ノ︑卜実/題等辺々︵2|有之也問一々作︵3︶如何答一字題者漢土

百詠題和朝朗詠/題是也︵4五字題者王沢抄所載是也︵5︶双貫

題者於︵6︶一詩詠一︵7︶二物一也/王沢抄二︵8︶云双貫ノ題ハ者︵9︶朝 ースルアルニトヲ暮聞鶯ノ声づ也︵皿︸朝暮二字双貫也/其躰二躰故聞菟鶯声云 ハノニハスルヲノハヲ三字用也虚題々二一物也前如ド待花︵Ⅲ︸﹂︵上五丁ウ︶

一校異︼︵上五丁ウつづき︶

︵1︶五字−内﹁乃至五字﹂︒

︵2︶辺々−内﹁種々﹂︒

︵3︶作−内﹁作躰﹂︒

︵4︶者漢土百詠題和朝朗詠題是也−内﹁如右﹂︒

︵5︶者王沢抄所載是也−内﹁山谷詩燈下尋書義等是也﹂︒

︵6︶者於−内ナシ︒

︵7︶詩詠−尊﹁題々﹂︒

︵8︶王沢抄−内﹁王沢紗﹂︒

︵9︶双貫題者−内ナシ︒

121110

ー ー 』 …

奉−底﹁奉﹂の右傍司

ランニ﹂により改める︒ ︑ン○回−尊﹁廻﹂︒如此−尊﹁如其﹂︒奉−底﹁奉﹂の右傍﹁ツカウマルト也﹂なるも尊﹁ツカウマッ

︻本文︼︵上六丁オ︶卜ヲノノノミ

ノハノ︑卜

催ご勝遊一云題上者花一字躰也余四字用也了︶虚実題者於二ハノヲヲスヲノハノ此一有一/辺々説依二王沢抄意一待花催二勝遊一云題時花遊ニ

〃ノハノニ︑ン

フノハノ

字実字待/催勝三字虚字也又林下多烹芳草云題時林草ハノハDノハヲトー孑トーニ字実字下多芳/三字虚字也此等本躰云し実作用云虚ハノノニタルヲノヲトヶタルヲ也依二作文大躰意一出﹁於経籍/奥理一謂一之実題ゞ懸一ヨリノヲDトハルヲノノヲ卜於﹁風月浮花一謂皇之虚題一也此作一経教典籍奥理二云/実一

ルヲノハノノ作・花鳥風月之浮言云虚也已上両説和朝作詩躰也所し載三ノニBノ二躰/詩一虚実躰太別也儒者名近可一相尋皇2︶

序与詩作躰︵3︶事/

問序与詩作躰如何答王沢抄云/ノクステヴスヲ春日同賦待レ花催﹁勝遊一詩一首︿井序﹀/

某甲/レハヲダルニト観夫︿発句/以了景物超・異物為初躰・也﹂︵上六丁ォ︶

一校異︼︵上六丁オ︶

︵1︶催勝遊云題者花一字躰也余四字用也−内ナシ︒

︵2︶於此有辺々之説依王沢抄意待花催勝遊云題時花遊二字実字待

催勝三字虚字也又林下多芳草云題時林草二字実字下多芳三字

虚字也此等本躰云実作用云虚也依作文大躰意出於経籍奥理謂之

1110

也−尊・内﹁云々﹂︒

其躰二躰故聞鶯声云三字用也虚題々一物也前如待花−尊﹁其躰

二躰故聞鶯声云三字用也常題々一物也前如待花﹂︵下線部分︶︒

内ナシ︒

− 7 −

(5)

︹本文︼︵上六丁ウー上七丁オつづく︶二レテタ・〆二︿密々/↑l︸﹀山霞破一暖風︿平﹀

テサラス数重之錦好曝︿他﹀/一テ二︿上五/下六﹀渓雪消:遅日︿他﹀

ー片之色繕残︿平﹀︿一段﹀/

子時︿傍句﹀/二〃/二︑ン一テ︿軽々﹀風漸暖︿他﹀而

ナハラヵナルヲ︵2︶︿他﹀/聞二歌鶯之声滑二ク︿上四/下六﹀日已遅︿平﹀而サキコトヲ兄舞蝶之翅軽︿平﹀︿二段﹀/

一一方今︿傍句﹀/

︿六字/長句﹀侍一新花之未し︵3︶開く平﹀

ルコト0ヲ催二勝遊之有レ興︿他﹀︿三段﹀ 実題懸於風月浮花謂之虚題也此作経教典籍奥理云実作花鳥風月之浮言云虚也已上両説和朝作詩躰也所載三躰詩虚実躰太別也儒者名近可相尋−尊﹁於此有辺々之説依王沢抄意待花催勝遊云題時花遊二字実字待催勝三字虚字也又林下多芳草云題時林草二字実字下多芳三字虚字也此等本躰云実作用云虚也依作文大躰意出於経籍奥理謂之実題懸於風月浮花謂之虚題也此作経教典籍奥理云実作花鳥風月浮言云虚也已上両説和朝作詩之躰也所載三躰詩虚実躰太別也儒者名近可相尋﹂︵傍線部分︶︒内﹁有多義︿大小虚実題等更可師受也﹀﹂︒

︵3︶作躰−底・内﹁躰﹂︑尊﹁体﹂なるも︑底の目次題によって改める︒ ﹃アハガ〆二至ド子↓4︶如中︿傍句﹀/ニシテソへテヨウヲ︿六字/長句﹀︵5︶風暖而添一濃淡ゞ︿他﹀テルカヲ露染而交#浅深t︿平﹀/

︿軽々/上四下六︵6︶﹀猫ノ中二匂上溺参ハへ他﹀

一一︑今/遙如自沈癖之薫︿平﹀/ノへ二ヒス︿軽々/上四下六︵7︶﹀庭前粧散︿他﹀

一テフハタモノカト誤疑鷺錦繍之幅︵8︶︿平﹀︿ハタハリ也﹀︵9︶

﹂︵上六丁ウ︶二ノカ︑ンカン二︿緊句﹀何物如し之︿平﹀

誰人ヵ不陶霊感ソハ︿他﹀︿四段﹀/キハカヲノト如レ予者︿傍句﹀︿此︵Ⅲ︶云自謙句

也﹀/ニシテリヲ︿五字/長句﹀不才而採レ紙︿他﹀二︑ンテムヲ蒙昧而染レ筆︿平﹀/ヲ︑ンテリニ︿漫句﹀推当唱首二ソスルニザゾゴトーナリ巳迷賦レ花云永く五段﹀/ノノハヅテカナニ︑ス︿詩﹀斯地勝遊縁し︵Ⅲ︶底催テヲ二カナ待花一終日有し由哉︿灰胎﹀︵里/テヲッフイフム︑ンロ恋し粧先展言レ詩席︑ンテヲカソカゾムスルニサカヅキ期:艶且魁命し飲盃/ウタニレハヲ夕歌勧・和声鶯未レ画︶出二ヘハレンヲクル舞思二儂曲蝶遅来/ハノ楊梅桃李一時興

ヨイカナス.掎実今朝呈拙才↓﹂︵上七丁ォつづく︶

− 8 −

(6)

一校異一︵上六丁ウー上七丁ォつづく︶

︵1︶密々−底は﹁密々/﹂の次に誤字二字の上に二重線︒

︵2二滑﹂の訓﹁ナメラカナルヲ﹂−底﹁ナメラカスヲ﹂を尊・内によっ

て改める︒

︵3︶未−底・尊は左傍﹁ルヲ﹂︒

︵4︶至子−内﹁至﹂︒

︵5︶六字/長句−内﹁同﹂︒

︵6︶軽々/上四下六−尊﹁軽々﹂︒

︵7︶軽々/上四下六−底ナシ︒内﹁同﹂によって補う︒尊﹁上四

/下六﹂︒

︵8︶﹁幅﹂の訓﹁ハタモノカト﹂−底.尊﹁ハタモノヲ﹂を内によっ

て改める︒

︵9︶ハタハリ也−尊・内ナシ︒

︵蛆︶此−内﹁是﹂︒

︵皿︶﹁縁﹂の訓﹁ツテカ﹂−底﹁テハラカ﹂を尊・内によって改める︒

︵u︶灰胎−内﹁灰韻﹂︒

︵咽︶未−底は左傍﹁ス﹂︒

四校訂本文

五︑題目・破題・髻輪・述懐の事 五︑題目・破題・警喰・述懐事︵1︶

0卜フノヲヅクル問︑題目・破題・讐喰・述懐云名言如何︒答︑第一発句名弓卜ハグルノノヲ二フトノヲヅクルト題目事挙三其詩題一故云一題目一・第二胸句名一破題一事スルヲ二ヲフ卜︑トハノニシテノズ分刈破作用↓︵2︶故之云一破題↓也・破分破破破壊︵3︶非

ニハノ孑ツクルトーハゲテノヲ︵ママ︶スル破也︒第三腰句名↓警嶮事挙ゞ相似物躰比観況↓4︶

故云髻嚥|也・第四/落句ヲ名ゾル述懐斗事ハ其ノ詩一︷5述韮顕ハス思懐旬 二ブトニプト︐ノ勺︑ノ々ノ故云一述懐一也︒其證文可レ引・

五字題︿王沢抄文﹀チテヲ入ヲスヲかたち待レ花催勝遊ゞ催:勝遊↓兒也︒チテヲ二ル題目﹀斯/地ノ勝遊ハ繊踊厳二催ス︿灰胎壷待レ花終日有レ

かな由哉ヒテよそほひヲゾ山ヅいソヲむしろ︑ンテヲかつガッくムズルのムニ︿破題﹀恋し粧先展言し詩席期し艶且魁命し飲

ン一かづきヒテヲヅブかつガッくムトイフハツヲブヲむしろ恋し粧先展且掛待レ花心也︒言し詩席︑ズル二へ︲イブハスヲ命し飲盃催:勝遊心也︒うたこムレバ叩︑うぐひすダデニヘバザてふクきたル︿譽職﹀歌勧和声ゞ鶯未レ出舞思侭曲蝶遅来二ムレバヲ二フトヲワハスノ孑歌勧一和声︑舞思侭曲一云催二勝遊書嶬也︒ダデクルトイフハヅノヲ鶯未し出︑蝶遅来待レ花比況也︒ハノよいかなスヲ︿述懐﹀楊梅桃李一時興椅突今朝呈拙才これハモノナレドモなホニハルーノットィプ此楊梅桃李一時興尚桜花劣故花興待

述懐也︒ノノー字百詠詩︿支脂韻﹀6﹂ハデテ︐ノ劃Ⅲノカニルノ二︿題目﹀日出扶桑路︽遙昇若木枝↓ハノゾル︿此日出兒也︒﹀

− 9 −

(7)

ノあひだ|一テリノきは二ひらク︿破題﹀雲間五色満霞際九光披ハゲノノヲ︿此挙一日輪色光用也・﹀

りくニかう二せきうはス︿書礒﹀東陸蒼龍駕南郊赤羽馳ハ一アリ〆コグスル︐/二︿此以:青龍赤烏色光比1況日輪色光也︒﹀ケテヲきノ︑わく二ナラブルモノナラ〃ハニラン二︿述懐﹀傾し心葵種比朝夕奉堯嶬

︿此一︽上述懐句也・﹀あふひノハヅテノめぐルニクククノケヲ七︑ハ蕾花随司日回↓傾也︒如レ此傾レ心奉公つかうまつルトノ﹃″二ニジカランニトフトハブルヲ奉二堯礒一同云・述懐述一一思懐一義也︒

︻校訂注記︼

︵1︶題目破題警嶮述事−底・内ナシ︒尊・目録によって補う︒

︵2︶分破作用−底.尊﹁作用分破﹂なるも内によって改める︒

︵3︶破壊−底﹁破懐﹂なるも尊によって改める︒

︵4︶比観況−﹁比況﹂の誤りか︒

︵5︶其詩−底﹁其侍﹂なるも尊・内によって改める︒

︵6︶支脂韻−底﹁文胎韻﹂なるも尊によって改める︒内﹁支韻﹂︒

︵7︶此−底﹁是﹂なるも尊・内によって改める︒

︻注︼題目︑破題︑譽喰︑述懐の名が付いた理由と︑これらの聯を作者

がどのように詠むのかということを述べる︒

題目の首聯は詩の題を詠み入れ︑破題の頷聯は﹁作用を分破﹂し︑

警噛の頸聯は﹁相似の物躰﹂を詠み︑述懐の尾聯は﹁思懐を述べ顕は﹂

すと説明する︒

そして︑その﹁證文﹂として﹃王沢不渇紗﹄から五字の題の七言律詩︑

﹃百詠詩﹄から一字の題の五言律詩を引用し︑それぞれ簡潔な説明を 加えている︒ただし︑内閣文庫本には前者の﹁花を待ちて勝遊を催す﹂の七言律詩は載らない︒川口文庫本及び尊経閣文庫本の写本のみに載り︑刊本の内閣文庫本では省かれている︒

なお︑﹁比観況﹂は﹁比況﹂︵﹁警嶮﹂に同じ︶の誤りかと思うが︑元

のままにしておいた︒

﹁花を待ちて勝遊を催す﹂︵待膿花催勝遊︶の詩は︑﹃王沢不渇紗﹂

上巻に﹁勝遊詩﹂として見える︒すなわち︑静嘉堂文庫蔵の寛永

十一年版本﹁王沢不渇紗﹂には︑

○勝遊詩○以盃為韻︹原文は﹁句﹂︺/ノノヨヅテカ︵ママ一ニル斯地勝遊縁し底催詩し花終日有由哉/侍花仙遊プマ了一徐・ンテ花干Ⅲヅ勝雌インニ恋し粧先展言し詩席期し艶且掛銅レ飲/

○盃︿古詩云︑遊其挙レ盃催興味一・故一爺︒﹀則辮ダニ劫Ⅸ 一一乎スヲ二侍遊コトへレイ亨和圭星鶯未出舞/○思躍曲一︹﹁侭﹂の左傍﹁催﹂︺蝶遅来一ママ︶一ブス○桜梅桃李一時興︹﹁興﹂の左傍﹁此句遊意也﹂︺椅突/今朝呈化ゾ助ノ米ソコノ下ハ化ハハ・侍花心ノ拙才恋︹﹁恋﹂の左傍﹁シタウ﹂︺粧︑粧花事也︒ハヅハノヲハノ恋待儀也︒詩席詩歌/坐敷也︒侍レ艶︑艶花事也︒

カヅクンタルイーンーrハハ○且勘︹原文は﹁甚﹂の右横﹁欠﹂の誤字︺飲︑且少々儀也︒ノツハヲノノノニノ花待/間少酒呑レ汲儀也︒待間事也︒○琴音落梅

アリヲトヒレイ卜曲・依レ之花和声云也︒○舞/侭曲者傭ハウルハシキ

クトハヲヅモニクトョム也︒美曲事也︒蝶遅来云花待事也︒蝶花付ノ0トハハヅモノノ故也︒桜梅桃李一時興︑是何春盛花木也︒下旬勝りノハヲノー遊催云儀也︒拙才才述懐也︒我才云故/也︒述懐下旬

ハケノニ云籠也︒才如二上云一也︒○実字三字是也︒朝暮鶯三ヲスノハノテノカノ也卜テ字出・此意題中此三字肝要字云事也︒依/実

‑ 1 0 ‑

(8)

ノヲスルニノノトハ字云也︒虚実二字分別時虚字︑実字云儀非也︒

とある︒︵﹁/﹂は改行︑︹︺は私に補った注意書き︒また︑意味を理解しや

すくするために︑字間にアキを作り︑句読点を付けた︒︶

印融は︑﹃文筆問答紗﹂を著すにあたって︑﹁王沢不渇紗﹂のこ

の箇所を︑題目・破題・譽瞼・述懐の説明として利用したのであ

るが︑﹁王沢不渇紗﹂の本文の傍注︑例えば﹁恋粧﹂の右傍に﹁待

よそほ花﹂とあり︑これを破題の説明として︑﹁粧ひを恋ふ﹂とは花を待

つ心を表すと︑適切に取り入れている︒譽嶮・述懐についても同

様である︒なお︑これら題目・破題・警嶮・述懐の句の詠み方に

ついては︑佐藤道生氏に専著がある︵佐藤道生氏﹁句題詩概説﹂︿佐藤

道生編著﹁句題詩研究−古代日本の文学に見られる心と言葉−﹂慶應義塾大

学二一世紀COE心の統合的研究センター︑二○○七年︵平成十九︶三月﹀︶︒

韻の示し方は︑﹃王沢不渇紗﹄が韻字﹁盃﹂で示すのに対して︑﹁文筆問答紗﹂は﹁盃﹂字に属する上平声十灰韻の中か

ら﹁灰﹂字と﹁始﹂︵音︑カィ︶字を代表させて﹁灰胎韻﹂として

いる︒なお︑一句目の末尾の﹁催﹂字も上平声十灰の平声なの

で︑ここも韻を踏んでいることになる︒﹁王沢不渇紗﹂では︑﹁艶かつノ︑いんを期して且がつ斜む飲に命ずる盃﹂の句が﹁古詩﹂の﹁遊其挙し

盃催:興味﹂を踏まえていると言うが︑その出典は未詳である︒平灰を︑平声は○印︑灰声は●印︑韻字を◎印で示すと︑次のようになる︒平灰や押韻など︑すべてこれまでに言ってきた規則が厳密に守られていることが分かる︒

○●○○○●︒

●○○●●○◎ ●○○●○○●○●●○●●︒○●○○○●●●○●●●○.○○○●●○●○●○○○●◎次に︑李嶬の﹁百詠詩﹂であるが︑これは﹁李嶬雑詠﹂乾象部十首の冒頭︑﹁R﹂題の五言律詩である︒諸本間に本文に異同はない︒韻字は枝・披・馳・嶬であるので︑韻は上平声四支韻である︒したがって︑川口文庫本の韻の表記﹁文胎韻﹂は誤りと考えて︑尊経閣文庫本の﹁支脂韻﹂と正した︒なお︑拙稿﹁破題﹂︵﹁古典文学レトリック事典﹂︿﹁国文学解釈と教材の研究﹂第三十七巻十五号︑一九九二年︵平成四︶十二月﹀︶参照︒

・スルノゴ六︑按:詩題事ワプ︑ルノコヲイムナニノ・・.問︑按詩題様如何︒答︑於レ題一字題・五字乃至1六字題.

双貫題・虚実題等辺々有し之也︒

﹃ノノ1rハ問︑一々作躰−2︸如何︒答︑一字題者漢土百詠題・和朝朗ノ︐レノ0r一一スルレノ︑卜ブハ詠題是也︒五字題者王沢抄所し載是也−36双貫題云 六︑詩の題を按ずる事

‑ 1 1 ‑

(9)

イテニズルヲ二フノトハニクノ於三二吋詠一二物也︒王沢抄云︑双貫題者朝暮聞弓鶯

アルニクトノ一づフハ声一也︒朝暮二字双貫也︒其躰二躰故聞ゞ鶯声云三字用ノニハスル子ノキハチテヲストコフノ也・虚題々|一物一也︒前如ド待レ花催↑勝遊一云題k者

Jノ″J〃︑︑︑ノノーノハノ−卜イ←テ二川ノJ花一字躰也︒余四字用也︵4︶・虚実題者於レ此有二辺々

0レバノニチテヲ入ヲノハノハノ説b依王沢抄意︑待レ花催:勝遊之題時︑花遊二字実ノハ0ノー︑ントープノハ字︑待催勝三字虚字也︒又林下多↓芳草云題時︑林草ニ

ハ0ノノハノハ守上n卜ヲフ0r字実字︑下多芳三字虚字也︒此等本躰云レ実作用云レ虚也︒し﹂ハノノニデタルヲノ司りヒヲトケタルヲ依作文大躰意︑出於経籍奥理↑︑謂之実題︑懸レノ司りフヲトハルヲノノヲ上︐卜於風月浮花︑謂弓之虚題・也︒此作経教典籍奥理・云し実︑

ルヲヲヅト作花鳥風月之浮言一云レ虚也︒ノハノノノスルノーノハはなはダ已上両説和朝作詩躰也︒所し載一三躰詩虚実躰太ノケ/二︑ンヌ別也︒儒者名近可二相尋一︵5︶︒

︻校訂注記﹈

︵1︶乃至五字−底.尊﹁五字﹂なるも内によって補う︒

︵2︶作躰−底.尊﹁作﹂なるも内によって補う︒

︵3︶者王沢抄等題是也−尊﹁者王沢抄所載是也﹂︒内﹁山谷詩燈下

尋書義等是也﹂︒

︵4︶其躰二躰故聞鶯声云三字用也虚題々一物也前如待花催勝遊云題

者花一字躰也余四字用也−尊﹁其躰二躰故聞鶯声云三字用也

常題々一物也前如待花催勝遊云題者花一字躰也余四字用也﹂︵傍

線部分︶︒内ナシ︒

︵5︶於此有辺々之説依王沢抄意待花催勝遊云題時花遊二字実字待催

勝三字虚字也又林下多芳草云題時林草二字実字下多芳三字虚字

也此等本躰云実作用云虚也依作文大躰意出於経籍奥理謂之実題 懸於風月浮花謂之虚題也此作経教典籍奥理云実作花鳥風月之浮言云虚也已上両説和朝作詩躰也所載三躰詩虚実躰太別也儒者名近可相尋−尊﹁於此有辺々之説依王沢抄意待花催勝遊云題時花遊二字実字待催勝三字虚字也又林下多芳草云題時林草二字実字下多芳三字虚字也此等本躰云実作用云虚也依作文大躰意出於経籍奥理謂之実題懸於風月浮花謂之虚題也此作経教典籍奥理云実作花鳥風月浮言云虚也已上両説和朝作詩之躰也所載三躰詩虚実躰太別也儒者名近可相尋﹂︒内﹁有多義︿大小虚実題等更可師受也﹀﹂︒

︻注︸詩の題についての説明である︒作詩にあたっては︑題をよく考え

よということを述べる︒

一字の題は李崎の﹃百詠詩﹂貢和漢︶朗詠集﹂に見えるものであり︑

五字の題は前項の﹁五︑題目・破題・髻嶮・述懐の事﹂でも引用した﹃王

沢不渇紗﹄の﹁花を待ちて勝遊を催す﹂︵待修花催勝遊︶題︑また﹁朝

暮に鶯の声を聞く﹂︵朝暮聞一鴬声一︶題を言うとする︒その中で︑底

本や尊経閣文庫本が﹁五字の題とは王沢抄の載する所︑是れ也﹂と

言うのに対し︑内閣文庫本などの刊本は︑この箇所を﹁山谷詩に燈

下に書義を尋ぬる等︑是れなり﹂と変更する︒しかし︑これは刊本

さんこくこうていけんの編者の賢しらで︑山谷は︑中国︑北宋の詩人・書家の黄庭堅︵一○四五

〜二○五︶の号であるものの︑その総集にこのような題の作品は載

らないし︑またこの句が詠み入れられた漢詩の作品もない︒これは︑

北宋の政治家・文人である王安石︵一○二一〜一○八六︶の﹃古文真宝

おうけいこう前集﹂﹁勧学文﹂に載る﹁王荊公の勧学の文﹂︵王安石は荊国公に封じら

‑ 1 2 ‑

(10)

れたので王荊公と呼ばれる︶という︑読書の効用及び学問の勧めを説い

た句の一節で︑

窓前に古書を看て︑燈下に書義を尋ねよ

︵窓前看古書︑燈下尋書義︶

とある︒したがって︑﹁山谷﹂云々の誤りは明らかである︒どのよう

な経緯でこのような誤りが生じたのかということは興味ある問題で

あるが︑今はその指摘にとどめておく︒

次に︑双貫の題と虚実の題を説明する︒これを含めてこの部分は︑

﹁作文大体﹂﹁第一︑題を按ず﹂︵第一︑按レ題︶の︑

ふで凡そ作詩の道は︑先に題目を案じ︑然る後に翰を染む︒詩に長

おうり短有り︑題に虚実有り︒経籍より出でたる奥理は︑之を実題と

謂ふ︒風月の浮花に懸くるをば︑之を虚題と謂ふ︒或いは双関

あひならの題有るべし︒一つ題の中に二物相双ぶ︒︵凡作詩之道︑先案為題

目︑然後染し翰焉︒詩有鷺長短一︑題有淵虚実・出:於経籍奥理者︑謂

二之実題︽・懸貝於風月浮花者︑謂:之虚題・或可し有:双関之題・一

題之中二物相双也︒︶

とある内容と関連のあることが分かる︵本文と訓みは︑小沢正夫氏﹁作

文大体注解︵上ご含中京大学︹文学部紀要︺﹂︵第十九巻第二号︑一九八四年﹀︑

同氏﹁作文大体注解︵下こ︵﹃中京大学︹文学部紀要︺﹂︿第十九巻第三・四号︑

一九八五年﹀︶を底本とし︑山崎誠氏﹁智山書庫蔵﹁作文大体﹂翻刻と解題﹂︵国

文学研究資料館文献資料部﹁調査報告﹂︿第二十四号︑二○○三年﹀で補訂した︶︒

これによれば︑まず﹁双貫﹂は﹁双関﹂に同じと考えられる︒中世

には一般に﹁双貫﹂の語が用いられたようである︒﹁双関の躰﹂は﹃作

クワン文大体﹄﹁詩雑例﹂にも︑﹁双関躰﹂として︑ Jひ↓つ秋声管絃に脆しといふ題に菅三品の詩に云はく︑落葉の響き孤竹に随って乱れ︑長松の韻七絲を逐って軽し︒是れ則ち管

わか

と絃と上下の句に別けて作りたるなり︒毎句此くの如し︒︵秋

声脆:管絃・題菅三品詩云︑落葉響随:孤竹乱︑長松韻逐鴛七絲軽︒是

則管与し絃上下句別作也︒毎句如←此・︶

という例と説明がある︒﹁双関﹂︵双貫︶とは︑小沢氏がその注の中で︑

﹁二つの物が互いに関係があること︒関係ある二つの物︵例えば﹁管﹂

と﹁絃﹂とはどちらも楽器という点で関係がある︶が一つの題の中にある

ようなものを双関之題というのである︒﹂と言われる通りであろう︒

渡辺秀夫氏は︑﹁双関語とは︑同音に両義を懸ける修辞法︑正確には﹁譜

音双関語﹂であって︑同じ音のうちに二義を発生させる技巧をいう

︵王運煕﹃六朝楽府與民歌﹄こ︵渡辺秀夫氏﹁︽書評と紹介︾松浦友久雪万葉集﹂

かけことばという名の双関語﹂−認識の方法としての日中比較詩学−﹂︿早稲田大学比較

文学研究室﹁比較文学年誌﹂第三十二号︑一九九六年﹀︶と言われる︒また︑

佐藤道生氏は句題詩の説明の中で︑﹁句題は一般的に二つの事物によ

る複合題である︒すなわち題中には二つの実字茗詞︶が含まれる︒

この﹁松樹臨池水﹂ならば﹁松﹂と﹁水﹂︵或いは﹁池﹂︶との組み合

わせである︒また時として一方の事物に並列構造を有する二字熟語︑

たとえば﹁山水﹂﹁花酒﹂﹁遠近﹂などの語が用いられることがある︒

このような二字熟語を当時﹁双貫語﹂と呼んだ︒例えば﹁松竹有情

風﹂︵松竹に清風有り︶という句題であれば﹁松竹﹂という双貫語と

﹁風﹂との組み合わせである︒その場合︑句題には三つの実字が含ま

れることになる︒﹂と言われる︵佐藤道生氏﹁句題詩概説﹂︿佐藤道生氏編

著﹁句題詩研究−古代日本の文学に見られる心と言葉−﹂慶應義塾大学二一世

−13−

(11)

紀COE心の統合的研究センター︑二○○七年︵平成十九︶三月﹀︶︒

次に︑虚題と実題についてであるが︑﹁虚実の題とは此に於いて辺々

の説有り﹂と言うように︑諸説ある︒しかも︑内閣文庫本などの刊本は︑

双貫の題と虚実の題の説明の︑

其の躰二躰ある故に﹁間:鶯声﹂と云ふ三字は用なり︒虚の

題には一物を題するなり︒前の﹁待レ花催を勝遊﹂云ふ題の如

きは花一字のみの躰なり︒余の四字は用なり︒

という箇所と︑虚・実の題の説明である︑

此に於いて辺々の説有り︒王沢抄の意に依れば︑花を待ちて勝

遊を催すの題の時は︑花遊の二字は実の字︑待催勝の三字は虚

の字なり︒又林下に芳草多しと云ふ題の時は︑林草の二字は実

の字︑下多芳の三字は虚の字なり︒此等は本躰を実と云ひ作用

を虚と云ふなり︒作文の大躰の意に依れば経籍の奥理に出でた

るを之を実題と謂ひ︑風月の浮花より懸けたるを之を虚題と謂

ふなり︒此は経教の典籍の奥理を作るを実と云ひ︑花鳥風月の

浮言を作るを虚と云ふなり︒

已上の両説は和朝の作詩の躰なり︒三躰の詩に載する所の

はなは虚実の躰は太だ別なり︒儒者の名近くに相尋ぬくし︒

という部分をすべて欠いていて︑﹁多義有り︒︿大小の虚実の題等︑

更に師受すべきなり︒﹀﹂と言い︑たいへん分かりにくくなっている︒

実際︑

王沢抄の意に依れば︑花を待ちて勝遊を催すの題の時は︑花遊

の二字は実の字︑待催勝の三字は虚の字なり︒

という箇所は︑﹃王沢不渇紗﹄にも見えるものの︑ kし竜ノ〃ノセ︑序与レ詩作躰事 王沢抄に云ふ︑双貫の題とは朝暮に鶯の声を聞くなり︒朝暮の二字双貫なり︒其の躰二躰ある故に鶯の声を聞くと云ふ三字は用なり︒虚の題には一物を題するなり︒

という箇所は︑

次︵に︶双貫

︿客の云く︑双貫の題とは如何︒予云く︑句題五字の中に

実の字三つ有る是れなり︒﹀

朝暮に鶯の声を聞く

朝暮鴬︿此の三字は実の字なり︒聞声の両字︑此は是れ虚字な

り﹀

と︑﹁王沢不渇紗﹂は言っていて︵原文は漢文︶︑また別の箇所では︑

実の字三字是れなり︒朝暮鶯の三字を出す︒此の意は題の中で

此の三字が肝要の字なりと云ふ事なり︒依って実字と云ふなり︒

虚実の二字を分別するに時の虚字︑実の字と云ふ儀は非なり︒

とも言っていて︑混乱が見られるのである︒その中でも特に︑虚実

の二字の題については諸説あって︑当時明確に説明できる状況では

なかったことが分かる︒

七︑序と詩との作躰の事

‑ 1 4 ‑

(12)

フトーとノニハク問︑序与レ詩作躰如何︒答︑王沢抄云︑ノジクスチテヲスヲならび二春日同賦待レ花催弓勝遊↓詩一首︿井序﹀

某甲みレバそしテヲエタルヲニス卜︿発句﹀︷l﹀観夫︿以冒景物超:異物為初躰也・﹀︿密々﹀山霞破ルテ瞬雛ツー︿平﹀ 一一

にしきンデさらス数重之錦好曝︿他﹀エーテ二︿上五/下六﹀渓雪消二遅日一︿他﹀いるわづカニルー片之色縄残︿平﹀︿一段﹀

干し時︿傍句﹀

〃/二もン一テ︿軽々﹀風漸暖︿他﹀而

なめらカナルヲ聞息歌鶯之声滑|︿他﹀

二ケノ︑ン一ア︿上四/下六﹀日已遅︿平﹀而

|つばさかろキゴトヲ見舞蝶之翅軽︿平﹀︿二段﹀まき二いま方今︿傍句﹀

ダ力︿六字/長句﹀待新花之未レ開く平﹀

ルコ0トヲ催二勝遊之有一し興︿他﹀︿三段﹀ツテハクニ至下子如中︿傍句﹀ニシテそヘヂョウたんヲ︿六字/長句﹀風暖而添濃︵2︶淡一︿他﹀メテブルガヲ露染而交中浅深上︿平﹀

ゑんノ二にほひかんば︑︑/︿軽々/上四下六﹀苑中匂馥︿他﹀カニシぢんじゃかをりノ遙如↓沈霧之薫︿平﹀

ノまヘニよそほひ↓ス︿軽々/上四下六﹀庭前粧散︿他﹀ツテフはたもの力卜誤疑二錦繍之幅一︿平﹀︵3︶なにもの力しカン二︿緊句﹀何物如し之︿平﹀ たれひと力ランもてあそ︵誰人不し賞︿他﹀︿四段﹀キハガヲフノ卜如レ予者︿傍句﹀︿此云一自謙句一也︒﹀二︑ンテ叩〃ヲ︿五字/長句﹀不才而採レ紙︿他﹀Jひう↑まい二︑ンテムヲ︿漫句﹀蒙昧而染レ筆︿平﹀おシテタリ二推当旦唱首↓二フスルニヲフコトしかナリ巳迷賦し花云ホ︿五段﹀ノノハょツテヵなに二ス︿詩﹀斯地勝遊縁し底催チテヲ二ルよしかを待レ花終日有し由哉︿灰胎﹀したヅテヲヅのプいうヲむしろ恋し粧先展言し詩席シテヲかつガッム・スルニさかづき期し艶且斜命し飲盃うた二ムレバ守ダデ歌勧↓和声一鶯未レ出二ヘバれいヲクル舞思二偶曲一︵4︶蝶遅来ハ○ノ楊梅桃李一時興よイかなスヲ掎芙今朝呈為拙才︵つづく︶

︻校酊注記︸

︵1︶発句−諸本とも﹁観夫﹂の下にあるが理解しやすくするために

この位置に移した︒

︵2︶﹁濃﹂の音﹁ぢよう﹂−底.尊﹁テョウ﹂を歴史的仮名遣いに

改めた︒

︵3︶平−底﹁平ハタハリ也﹂とあるが尊・内によって改めた︒

︵4︶﹁偶﹂の音﹁れい﹂−底.尊﹁レン﹂を改めた︒

一注︼﹁春の日同じく賦す花を待ちて勝遊を催す詩﹂の詩序の構成要素な

どについて︑﹁王沢抄に云はく﹂として説明する︒その句は﹃王沢不

‑ 1 5 ‑

(13)

渇紗﹂下の冒頭近くに載っているが︑その説明の淵源はもちろん︑﹁作

文大体﹂にある︒本稿では︑﹃作文大体﹂を参考にしつつ︑﹁王沢不渇紗﹄

の説くところをどのように﹃文筆問答紗﹂に取り入れているのかを

中心に見てゆく︒

﹃王沢不渇紗﹂下の冒頭近くで︑

せこれ

凡そ詩序等は傍字を以て前を拮め後を催すこと尤も之を存すべ

︐︲し○

と言う︵原文は漢文︶︒﹁傍字﹂は﹁作文大体﹄に見える語で︑小沢正

夫氏によると︑﹁語例から推すと接続詞の機能をもつ語で﹂︑﹃作文大

体﹄には︑

ハ向ノ傍字ソモソモ︑ンハラクテ抑且就レ中︿等也︑如:発句︾

とある︒また︑その発句については︑﹃作文大体﹂﹁筆大躰﹂に︑

発句︿施し頭﹀夫夫以原夫夫惟於し是方今籟以伏惟観夫子時蓋聞汝当し知所以者何如レ此類言皆名発句也

︹或ハー字二字︑或ハ三字四字︑無し対︒︺

かしらとある︵訓点は返り点のみ付けた︶︒発句とは﹁頭に施す﹂こと︑すな

わち詩序の初めに用いられる句のことである︒﹁王沢不渇紗﹂下では︑

はじめ先づ端を発して事を叙ぶる詞︿是を発句と名づくるなり﹀

として︵原文は漢文︶︑今︑マ︶ミレハソレクヲ︑イニク夫観夫︑頼以︑夫以︑蓋聞巨聞

を挙げて︑これらは︑﹁申べ重ねて理を明らかにする詞﹂︵申重明し理訶︶

と説明するなど︑発句の例とその使い方を十九種に分類して示して いる︒当詩序の発句﹁観れば夫れ﹂︵観夫︶は︑﹁作文大体豈王沢不渇紗﹄の両書に確かに見え︑代表的な発句の語である︒

次に︑﹃王沢不渇紗﹂では︑詩序の構成は五段から成ることをいい︑

その初段は︑﹁亭主の敏思名誉を美む﹂﹁地形の勝絶奇異を賦す﹂﹁時

節の他に勝ることを時に述ぶ﹂﹁景物の異物超えたるを詠ず﹂という

﹁四つの次第﹂があることを言う︒

﹁文筆問答紗﹂の第一段では︑このうちの四つ目︑すなわち﹁景物

の異物超えたるを詠ず﹂が該当することが指摘されている︒また︑

第一段に︑﹁密々︑上五下六﹂とあるのは︑この部分の句の構成が︑﹁作

文大体﹄﹁筆大躰﹂の六種類の隔句のうちの一つである﹁密隔句﹂で

あることを言う︒﹃作文大体﹂によると︑

隔句︹六躰有り︒軽重疎密平雑なり︒軽重を勝れたりと為す︒

これととの

疎密之に次ぐ︒平雑之に次ぐ︒六躰同じく平他声を調ふくし︒︺

︵隔句︹有・六躰↓・軽重疎密平雑也︒軽重為し勝︒疎密次し之︒平雑次L之︒

六躰同可し調鴇平他声・・︺︶

とあり︑軽隔句︿上四下六﹀︑重隔句︿上六下四﹀︑疎隔句︿上三下

不し限冬多少﹀︑密隔句︿上五巳上下六已上︑或上多少下三有し躰﹀︑

平隔句︿上下或四︑或五﹀︑雑隔句︿或上四下五七八︑或下四上

六五七八﹀というふうに句の構成を説明し︑それぞれについての例

句を挙げている︒つまり︑﹃文筆問答紗﹂の﹁密々︑上五下六﹂は︑

上句が五文字︑下句が六文字より成る密隔句であることを言ってい

るのである︒

次に︑同じく上段の﹁長句﹂﹁緊句﹂﹁漫句﹂等についても︑﹁作文

大体﹂﹁筆大躰﹂に説明がある︒今︑例句を省いて解説のみを書き下

‑ 1 6 ‑

(14)

なお︑平灰についてであるが︑四段目の﹁幅﹂︵はたもの︑はたはり︶

は﹁観智院本類聚名義抄﹂に﹁幅︿音福︑ハタハリノ﹀﹂︑﹁色葉字類抄﹂

に﹁幅︿ハタハリ・絹布等−也﹀﹂とあり︑平灰は灰声︵他声︶であり︑

﹁平︵声ととあるのは誤り︒したがって︑この箇所は﹁平他の声を調﹂

えることができていない︒しかし︑﹁王沢不渇紗﹂にその認識はない

ようで︑何の指摘もない︒同様に︑五段目の﹁筆﹂も灰声︵他声︶の

字であり︑﹁平︵声ととあるのは誤り︒ここも平灰が合わない︒

漢詩についてはすでに述べた︒ここでは︑﹃王沢不渇紗﹂下にも若

干の解説が付いて載っていることを指摘しておく︒

︵つづく︶ し文で示し︑若干の言葉を丸括弧︵︶で補うと次の通りである︒

セウ

ついこれ

壮句︹三字対有り︒発句の次に之を用ゐる︒但し賦及び序には

ととの未だ必ずしも之を用ゐず︒形に随って之を施す︒平他の声を調

送句︿尾︵句︶に施す﹀ 長句︹五字より九字に至り之を用ゐる︒或は十余字を云へり︒

かしら対有り︑平他の声を調ふくし︒或は頭︵句︶に施し腹︵句︶

に施す︒賦には或は猶ほ腹︵句︶に施すべく見えたり︒︺

漫句︹対合せず︑平他の声を調へず︒或は四五字七八字︑或は

十余字なり︒或は頭︵包に施し或は尾︵句︶に施し︑

或は送句に代へたり︒平他の声を調へず︒︺ ふくし︒︺キン緊句︹四字対有り︒或は胸︵句︶際

或は腰︵句︶に施す︒賦には鍔

云々・平他の声を調ふくし︒︺

長句︹五字より九字に至り之を用ゐ 或は胸︵句︶に施す︒或は腹︵句︶に施す︒L施す︒賦には多く胸︵句︶に施すべしと ︻付記一

本研究は平成二十五年度日本学術振興会科学研究費補助金︵基盤

研究︵C︶︶JSPS科研費23520254の助成を受けたものです︒

前稿は︑﹁金沢学院大学紀要文学・美術・社会学編﹂第十二号︑

二○一四年三月刊予定︒

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