• 検索結果がありません。

静岡市の消費者行動に関する予備的考察:1>

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "静岡市の消費者行動に関する予備的考察:1>"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

法経論集第71号 論  説

静岡市の消費者行動に関する予備的考察:1>

石 橋太 郎

1よ9な34﹃D

   目次

はじめに

消費の単一方程式モデルとデータ 推定結果

回帰診断 結びに代えて

1.はじめに

 静岡市は、地方都市の中でも物価が高い地域である2)。名目所得が一定の下 で物価水準が高ければ、地域住民の実質購買力は低い水準にあることになる。

したがって、仮に名Eii所得が上昇しても、物価水準の上昇が伴えば、豊かな 暮らしは実現できない。物価水準全般の抑制は政策当局の重大な使命ではあ

るが、個々の経済主体である家計にとっても物価の動きには無関心ではいら

れない。

 ミクロ経済学の標準的あるいは入門的教科書によれば、合理的な消費者で

1)本稿作成に当たり、関西大学経済学部橋本紀子助教授より、資料の提供ならび に数多くの有益な助言を頂いた。ここに感謝の意を表します。もちろん、本稿に ある多くの不十分な点や、謝りは全て筆者の責任です。

2)東京都特劉区部を100とした県庁所在都市の消費者物価地域差指数(総合指 数)を見てみると、静岡市は高度成長期が終了した1972年から1979年の間は、

全国で8位から12位と比較的高い水準にあり、1980年以降は4位、5位(ただし、

1984年は7位)と全国でもかなり高い物価水準にあることが分かる。詳細は、『消 費者物価指数年報』(総務庁)を参照。

一一 P一 (72)

(2)

静岡市の消費者行動に関する予備的考察

ある家計は、予算制約の下で消費から得られる満足を最大にするよう財・サー ビスへの支出配分決定を行なう。この最適な意思決定をする上で、財・サー

ビスの価格(相対価格)が重要なパラメ・ ..一.一タとなる。

 ミクm経済学は、このような家計の最適消費支出決定と企業の利潤極大化 行動を基礎にして、個別市場の需要・供給の均衡から、経済全体の・一一・・一般均衡 へと分析をすすめる。このミクロ経済学を貫く一つの精神は、消費者主権で ある。消費者主権が完全に保障されている経済システムのふるまいを理論上 明らかにするのがミクロ経済学である、とも言える。したがって、ミクm経 済学の基礎となる一つが、消費者行動の理論である。

 他方で、日本の先駆的な消費者行動の計量分析に、辻村[11]がある。ま た、消費者行動の計量分析を含み、一般均衡理論の日本における先駆的な計 量分析として、斎藤[9]がある。最近の研究では、黒田[6]がある。さら に、ミクロ経済学の消費者行動理論から導き出される需要理論それ自体の検 証を目的として多くのモデルが提示されているが、臼本における需要理論の 検証にSuruga[10]、橋本[3,4,5]がある。

 このような消費者行動の実証分析を見るとき、その対象となるのは、日本 経済全体であり、そこに映し出される消費者行動は日本の平均的家計の消費 行動である。しかし、俗に、大阪人は鞍くてうまいもの、安くていいもの」

に対する性向が強く、値段と品質について敏感であると言われることに対し、

静岡の人々は値切ることも知らないし、値切られることも知らないと言われ ている。このように実際の消費行動には、地域差があると考えられている。

 そこで本稿の関心は、比較的高い物価水準にある静岡市における地域住民 の消費行動に関するfact findingにある。その際重要なのは、需要の弾力性 の有意な発見があるかどうかである。この需要の弾力性は、ミクロ経済学消 費者行動理論の基本的な分析道具である。しかし、本稿の分析はミクロ経済 学の需要理論の検証を目的とするものではない。

 本稿の構成は、以下の通りである。次節(2節)で、fact findingにあたり 推定されるモデルとデータについて説明する。3節では、推定結果についてま とめる。4節では、回帰診断を用いて本稿で行なった推定の問題を検討する。

最後(5節〉に、本稿で明らかとなった点や、問題として残された点、不十分 な点をまとめることにする。

(71) 一2−一

(3)

法経言禽鐸…第71号 論  説

2。消費の単一・・P・一一方程式モデルとデータ

 推定に用いるデータは、(現在は)総務庁統計局『家計調査年報』にある都 道府県庁所在都市別の「1世帯当たり年平均1か月間の収入と支出」の年次

データである。標本期間は1976年から1990年の15年間3)である。価格の データは、総務庁『昭和60年基準消費者物価接続指数総覧』、『平成2年基準 消費者物価接続指数総覧』による。

 前節で述べたように、本稿の目的は、静岡市における消費行動についての fact findingにある。そこで実践的な見地から、もっとも基本的な財・サービ スの消費需要単一方程式を当てはめて、どのようなfact findingsがあるかを 分析することにする4)。尚、対象とする家計は、勤労者世帯である5)。また、

静岡市における特徴を明らかにするために、全国についても同じ推定を行う。

 推定に用いる消費の単一方程式は、次の通りである。

ln(qト+P・ln(E,)+P・1n(Pl)+u;

(1>6)

3)『家計調査年報』は、昭和55年(1980年)版より、消費支出項目がそれまでの 5大品自から10大品目へと変更された。本稿での分析は、この変更された品目を 対象とする。尚、昭和55年以前の10大品目についてのデータは、『静岡県統計年 鑑』より収集した。

4)本稿の目的にある fact findingといった実践的な目的には、 Brown and Deaton[1]により(1)式で表される古典的アプローチが十分であると指摘され  ている。Brown and Deat◎n[1]、 pp.1150〜115iを参照。尚(1)式は、 Brown

and Deaton[1]が示したモデルとは若干異なる。また(1)式は、需要理論から 導き出される性質(加法性)は満足しないことが知られている。例えば、橋本[3]、

p.199を参照。

5)勤労者世帯を分析の対象とするのは、全世帯よりも均一化した平均的消費行動 を仮定することができるためである。全世帯では所得のばらつきが一様ではな  く、本稿と同じ推定により得られる結果を用いて家計の平均的消費行動を説明す ることは難しいためである。勤労者世帯を分析の対象としている計量分析は、例  えば橋本[3]がある。

一3一 (70)

(4)

静岡市の消費餐行動に関する予備的考察

ここで、qiは第t期の第i財需要量、E,は第t期の所得項(総消費支出額)7)、

piは第t期の第i財価格、 ulは誤差項である。財の種類については、3節第 1表(10大品目)を参照。

 (1)式の特微は、いうまでもなく所得の需要弾力性と価格の需要弾力性8)

を直ちに求めることができることにある。

 また、消費行動の中でも食料需要は基礎的な消費行動と考えられるが、こ の点を考慮して、以下の式を別途推定する9>。

1n(fql)一α+6・ ・n(勾+P・1n(Pり+ul

(2)

ここで、fq 5は第t期の食料分類の中の第i財需要量、 fE lは第t期の食料に 配分される所得(食料支出額〉をそれぞれ示している。食料分類に含まれる 財の種類については、3節第3表(12品目)を参照。

3.推定結果

 (1)式の10大品目に対する最小自乗法(OLS)による推定結果zc)は、静 岡市については第1表、全国については第2表の通りである。食料品目に関 しては、(2)式を静岡市と全国について最小自乗法により推定し、その結果 はそれぞれ第3表、第4表の通りである。

6)ミクロ経済学によれば、当該財の需要に当たり、他の財の価格の変化が重要な  影響を与える。本稿での分析は、推定期間が15期間と短く、他の財の価格を説明  変数とすると自由度が極端に小さくなるので、他の財の価格が当該財の需要に影  響を与える効果については削除した。

7)消費支出額を所得額と見倣すのは、本稿での消費者行動分析が貯蓄を除いた所  得(消費支出額)の財・サービスに対する配分を分析することにあるからである。

8)厳密にいえば、(1)式の価格弾力性はピックスの意味での自己価格弾力性では  ない((1)式の価格弾力性はマーシャルの意味での価格弾力性である)。なぜなら  価格の変化が実質所得の変化に与える影響を考慮していないからである。

9)(2>式は、消費行動が2段階の予算制約モデルである。2段階予算制約に基づ  く消費行動理論については、例えば、Deat◎n and Muellbauer[2],chp.5を参照。

1◎)推定には、Macintosh Ilci上でlntemational社TSP ver.4.2 Aを用いた。

(69> 一4 一一

(5)

法経論集第71号 論  説

 ミクロ経済学の立場から推定結果を見るには、回帰係数の値と符号を検討 することである。ミクロ経済学によれば、回帰係数β1(所得の需要弾力性)

が、0より大きければ、その財は上級財である。特に1より大きい場合奢修品 と呼ばれ、0より大きく1より小さい場合は、必需品と呼ばれる。所得の需要 弾力性がちょうど0に等しい場合は中間財と呼ばれ、0より小さい場合は下 級財と呼ばれるm。

 他方、回帰係数焼(価格の自己需要弾力性)は、ミクロ経済学では負の値 を取ることが理論上確認されているi2)。ミクロ経済学の立場から推定結果に ついて検討を加える前に、統計上の検定結果について見ておきたい。

 統計的検定結果は次のようにまとめられる。まず、10大品目についてのO LS推定結果(第1表、第2表)について見てみると、所得の需要弾力性(β、)

のt値が1%水準で有意(臨界値は2.65)であったのは、静岡市では光熱費、

被肢履き物、教養娯楽、諸雑費で、2.5%水準で有意(臨界値は2.16)であっ たのが、家具・家事用品であった。他方全国では、1%水準で有意であったの は、光熱費、家具・家事用品、被服・履き物、保健医療、交通通信、教養娯 楽、諸雑費で、静岡市よりも有意な結果が多かった。

 価格の需要弾力性(擁)のt値が1%水準で有意であったのは、静岡市では 食料、光熱費、被服・履き物、諸雑費で、5%水準で有意(臨界値は1。771)

であったのは、家臭・家事用品であった。それ以外の品目については、有意 なものを見いだせなかった。他方全国では、1%水準で有意であったのは、光 熱費、家具・家事用品、被服・履き物、交通通信、教養娯楽、諸雑費で、こ こでも静岡市よりも有意な結果が多かった(保健医療については10%水準で 有意(臨界値は1。35)であった)。

 定数項については、静岡市では食料、光熱費が1%、諸雑費が10%で有意

11)ただし本稿での推定では、所得の需要弾力性が負となるケースは考えにくい。

 なぜならば、本稿の分析対象が集計された品目であり、かつ他の財の価格の影響  を考慮に入れていない単一方程式モデルであるために、下級財の存在は考えにく

 い。

12)ただし本稿での推定は、ピックスの意味での自己価格弾力性ではないために、

 (マーシャルの意味での〉価格弾力性が正となるギッフェン財のケースを理論上  排除できない。しかし、本稿での分析対象が集計された品目であるので、超下級  財であるギッフェン財が分析の対象に入ることは通常考えられない。

一5一 (68)

(6)

       静岡窃の消費者行動に関する予備的考察

であるのみであった。他方全国では、食料、被服・履き物、交通通信、教養 娯楽が1%、諸雑費が2.5%、光熱費が10%で有意であった。

定数項 所得項 価格項 決定係数 F  値 DW値

食料 5.59735 0.44498 一〇。643947 0.418803 6.04411 2.08463

皇値 3.29727

3.24013 一2.8u?7

住居 王6.ユ17 一〇.554759 0.20875 0.009204 LO6503 1.88148

皇値 2,0ユ857 一⑪.860279 1.0715

光熱費 一3.78444 1.⑪6834 一〇.410334 0.915493 76.8335 1.21852

t値

一2.984⑪6 1G.5331 一3.5623

家具・家事用品 一4。87214 1.13221 一L74446 0.212681 2.89093 1.9244

t僅

一〇.795135

2.29152 一1.95033

被服・履き物 一6.06647 L27542 一1.70928 0.334431 4.51731 2.00511

t値

一1.王3716

2.96165 一2.74408

保健医療 1.09849 0.619128 一〇。22401 0.311◎95 4ほ6106 1.74987

t餓 O.133553 O.929138 一〇,ao⇔038

交通通信 一1.55664 ◎.925736 一〇.626479 0.5504 9.5694 2.96425 t値

一〇、319807

2.36414

一〇.919985

教育 一6.77463 L28322 一〇.535719 0.474984 7.33294 L84303

t償

一〇.657225

1.536◎8

一〇.662398

教養娯楽 2.24822 0.616804 0、三38716 0.859811 43.9325 2.07614

貿直 ⑪.455136 1.54489 ◎.235173

諸雑費 一7.79872 1.5262 一L60041 0.642471 13.5788 2.11923

t値 一L73921 4.22039 一3,28367

第1表 10大晶目のOLS推定結果(静岡宙)真3}

定数項 所得項 価格項 決定係数 F  値 DW値

食料 1⑪.9668 0.025207 一〇.030088 一〇.131949 0.18399 0.949936

t値

8.01王48

0.233843

一〇.171774

住居 2.54256 ◎.562769 一〇.491414 0.273606 3.63657 0.509907 t値

◎.298877

O.840586 一〇.68⑪168

光熱費 一1.06068 0.85003 一〇.255608 0.964222 189,648 1.55272

t値

一一

P.57777 15.?977

一4、7722

家興・家事用品 一◎.312979 0.◎770828 一1.13298 0.9006 64.4207 2,393

t値

一〇.252546

7.82967 一4,8憩62

被服・履き物 25.0359 一1。17752 L30444 ◎.8◎3729 29,665 L94779

t値

7.19755

一4,31302

3.70883

保健医療 一〇.231938 0.725997 一〇.59848 ⑪.7240ユ 19.3632 0.636366 t値 一{}.067597

2.68261

一1,54965

交通通信 一7.57482 1.41763 一〇,67462 ◎.986701 52◎.35 L42638

t醸 一5.8516

13.3164 一4.4工897

教育 1.89226 0.611801 一〇.16569 0.674808 15.5263 0.爆20999

乞値

0.135473

0.恐56256 一〇.218604

教養娯楽

一一

P5.5199 2.03354 一2.12294 0.962245 179.39 0.970055

t値 一2.91262 4.84836

一3。6216

諸雑費 一3.44329 1.17041 一1.14298 0.956108 153,476 1.48487

t値 一2.廊683

9.4088!

一7.21573

第2表 10大品饅のOLS推定結果(全国)

13)表中にある「決定係数」は、自由度修正済み決定係数である。以下の表にある  f決定係数」もまた、自由度修正済み決定係数である。

(67)       の      一6−一一

(7)

法経論集第71弩 論  説

 自由度修正済み決定係数を見てみると、静岡市では光熱費と教養娯楽を除 いて、総じて当てはまりが悪い結果となった。これは、現在の推定式では説 明されない部分が大きいことを意味するが、(1)式の説明変数が不適切なも のであったかは決定係数だけでは判断できない。そこで、F値を見てみる

と14)、1%水準で説明変数の回帰係数がすべて0であるという帰無仮設が棄 却されるのは(臨界値は9.07)、光熱費、交通通信、教養娯楽、諸雑費で、5%

水準で棄却されるのは(臨界値は4.67)、食料、教育であった。住居、家翼・

家事用品、被服・履き物、保健医療については帰無仮設を棄却できなかった。

他方全国では、食料、住居を除いて、総じて当てはまりがよく、静岡市の結 果とは対照的であるe全国のF検定については、食料、住居のみが帰無仮設

を棄却することができなかった。

 系列相関の存在については、DW値を見てみると、静岡市では5%水準(臨 界値はd, ・O.95、du=1.54)で系列相関があると判断できる品目はなかった

(ただし、光熱費、交通通信は判定不能領域にある)。全国では、5%水準で 系列相関があると判断できる晶目は食料、住居、保健医療、教育であり、判 定不能領域にある品闘は、交通通信、教養娯楽、諸雑費であった。全国の推 定結果については、系列相関の問題は大きいように思われる。

 さて、ミクロ経済学の立場から推定結果を見てみると、価格の需要弾力性 は、静岡市では、住居、教養娯楽が正の値を示している。推定結果からさら に、ピックスの意味での価格の需要弾力性を計算してみると15)、保健医療も正 の値となった。全国では、被服・履き物が正の値であった。これは、ミクロ 経済学の消費理論とは整合的ではない。また、静岡市については統計的検定 の上でも有意ではなかった(前述のt値を参照)が、全国の結果は有意とい う問題を残している。所得の需要弾力性は理論上負の値を取ることもあるが、

14)もちろん、ここでのF検定をもってモデルの関数形の不適切さは論じることが  できない。次節を参照。

15)ピックスの意味での価格弾力性は、スルツキー方程式を用い、次式から求められる。

 (ピックスの意味での価格弾力性):(マーシャルの意味での価格弾力性)

      +(所得の需要弾力性)×(当該財の       支出額÷総消費支出額〉

  尚、本文中では、ピックスの意味での価格弾力性が正となる場合に限って、明  記する。

一7一 (66>

(8)

静岡市の消費者行動に関する予備的考察

本稿の分析では、脚注11)で説明されているように、負の値を取ることは考 えられない。しかし静岡市では、住居が負の値を示しており、この統計的検 定結果もまた有意ではなかった。さらに全国では、被服・履き物が負の値を 示す一方で、統計的検定結果は有意という問題を残している。

 10大品目についての推定結果は、全国と較べて静岡市の消費者行動モデル は統計上良好な結果を得たとはいい難い。したがって、10大品目に関しての 静岡市における消費者行動と全国平均の消費者行動を経済学的に比較するこ とは、適切ではないと思われる。また静岡市の消費者行動について、経済学 上議論の対象となるfact findingsを得たとはいえない。明確であったのは、

統計的検定結果は静岡市において悪いということである。これは、データの 問題、あるいはモデルの構造(関数形)の問題という大きな問題を残す結果

となった。この点について、次節でさらに検討する。

 次に、食料品目のOLS推定結果は次のようにまとめられる。統計的検定 結果について、まず所得の需要弾力性について見てみると、静岡市でt値が 1%水準で有意であったのは、魚介類、肉類、菓子類、調理食品、外食であっ た。油脂・調味料、飲料が、2.5%水準で有意であり、野菜・海草類、酒類が 5%水準で有意であった。他方全国では、1%水準で有意であったのは、肉類、

乳卵類、酒類。10%水準で有意であったのは、野菜・海草類、油脂・調味料、

菓子類であった。食料品冒の所得需要弾力性については、静岡市の方が全国 よりも有意な結果が多かった。

 価格の需要弾力性のt値が1%水準で有意であったのは、静岡市では、魚介 類、肉類、乳卵類、野菜・海草類、外食であった。2.5%水準で有意であった のは、油脂・調味料、菓子類、飲料、酒類であった。5%水準で果物、10%水 準で穀類が有意であった。調理食品に関してのみ、有意性を見いだせなかっ た。他方全国では、1%水準で有意であったのは、魚介類、野菜・海草類、果 物、酒類。5%水準で有意であったのは、乳卵類、油脂・調味料、外食であっ た。ここでも、静岡市の方が全国よりも有意な結果が多かった。

 定数項については、静岡市では、野菜・海草類、飲料、酒類が、いかなる 水準でも有意性を見いだせなかった。全国では、菓子類、調理食品のみが、

同じくいかなる水準でも有意性を見いだせなかった。

 自由度修正済み決定係数を見てみると、静岡市では、肉類、野菜・海草類、

果物、調理食品、外食が0.7以上であった。ここでもF値を見てみると、1%

水準で説明変数の回帰係数がすべて0であるという帰無仮設が棄却されるの

(65) 一8一

(9)

法経論集第71弩 論  説

定数項 所得項 価格項 決定係数 F  値 DW値

殻類 7.60058 0.14◎409 一〇.425531 ◎.438484 6.46624 1.20473 t値 22919 0.469629

一1,4392

魚介i類 3.02979 0.54学558 一◎.673742 0.53743 9.三3286 2.工5293 t値 L66899 3.34946

一4.08634

肉i類 1.70466 ◎.638358 一〇.754268 0.807835 3◎.4271 2.26192

t値

1.76131

735441

一3.61581

乳卵類 8.53816 一〇.38384 一〇.8⑪442 0.351963 4.80185 2.18288

之値

9.13495

一〇、458997

一2.99354

野菜・海草類 3.52692 0.499335 一〇.67664 0.721858 19,167 0.813155

t値

1.19832 1.8921

一3.57363

果物 9.27554

一一

Z.115286 一〇.710315 0.7ユ6837 18.7207 2.6ユ203

毛値

2.24736

一〇.309109

一2.14383

油脂・調味料 3.93768 0.356526 一〇.62914 0.188873 2.62997 2.52188

t嫡 2.19113 2.20316 一2.26223

菓子類 一7.846王9 L45231 一L45878 0.562594 1◎.003崔 0.588604

も値

一L64545 3.37203 一2.25411

調理食品 一4.51917 1.17639 0.179966 0.939987 110,641 1.6266 t値 一L57534

4.5515

0.600298

飲料 一3。45859 1.00913 一1.11369 0.237367 3.17873 2.39508

t値

一〇.762294

2.45635

一2.4799

酒類 一8.09007 L43988 一1.40904 0.2◎852 2.84419 1.ヱ487烹

t値

一1.04◎81

2.◎5332

一陰.34254

外食 一14.9284 2.1670工 一L31136 0.787369 26.9209 2.0452

t値 一2.78734 4.49104 一2.82917

第3表 (2)式を用いた食料品鶏のOLS推定結果(静岡市)

定数項 所得項 価格項 決定係数 F  値 DW値

殼類 ユ0.5315 一〇.119053 一〇.342048 0.642501 ユ3.5805 ◎.335684 t値 L46941

一〇.186991 一〇,604799

魚介類 7.80049 0.125604 一〇。489243 0.946974 126.01 0.563166

t値 6.66501 1.2◎?2三 一5.32363

肉類 購,48731 0.400◎64 一〇.316437 ◎.741635 21,093 ◎.591114

t値

4.3071 4.315S 一1.0634ユ

乳卵類 6.41407 0.162785 一〇,2ユ2229 0.50932 8.2665 1.16261

t値 ユ4.0898 3.99295 一L97155

野菜・海草類 7.77688 0.126◎08 一〇.438045 0.976247 288,698 2.20984

t値

7.6a◎35 1.39754

一6.97938

果物 10.30ユ6 一◎.186844 一◎.614856 0.9◎2346 65,681 0.989824

t値 4.34892

一◎.89445

一3.22413

油脂・調味料 1◎,009 一〇。175288 0.380886 0。1三109 L87499 1.41829

記値

7.64128 一1.50669 1.78?93

菓子類 一〇.7◎0763 0.822503 一〇.712136 0.395321 5.57623 0.310263

t値

一〇.114447

1.51503 一1.08623

調理食品 0.073784 0.766501 ◎.937162 0.947376 127,014 0.657956

之値

O.00826971 0.969695 1.1◎944

飲料 2.◎5238 0.522182 一◎.976731 0.◎22895 1.16399 0.914049

t値 O.431202 1.23ユ38 一1,43367

酒i類 一6.04036 1.26994 一〇.950912 0.81693 32.2382 2.92354

皇値

一3.2932

7.78801

一8.02935

外食 6.61936 ◎.255832 0.523322 0.967415 208,823 2.08769

t値 1.77913 0.776088

1.96392

第4表 (2)式を用いた食料品冒のOLS推定結果(全国)

一・−

X・一 (64)

(10)

      静岡市の消費餐行動に関する予備的考察

は、魚介類、肉類、野菜梅草類、果物、菓子類、調理食品、外食で、5%水 準では穀類、乳卵類が棄却された。油脂・調味料、飲料、酒類については棄 却できなかった。他方全国では、油脂e調味料、菓子類、飲料を除いて、決 定係数は高い値を示している。ここでもF値を見てみると、1%水準で帰無仮 設が棄却されるのは、穀類、魚介類、肉類、野菜・海草類、果物、調理食品、

酒類、外食で、5%水準では乳卵類、菓子類が棄却された。油脂・調味料、飲 料については棄却できなかった。

 系列相関の存在については、DW値を見てみると、静岡市では5%水準で系 列相関があると判断できる品目は、野菜・海草類、菓子類であった。穀類、

果物、油脂・調味料、酒i類については判定不能領域にある。全国では、5%水 準で系列相関があると判断できる品目は、穀類、魚介類、肉類、菓子類、調 理食品、飲料と静岡より多い。乳卵類、果物、油脂・調味料、酒i類について は判定不能領域にある。ここでも、全国の推定結果については、系列相関の 問題は大きいように思われる。

 さて、ミクロ経済学の立場から推定結果を見てみると、価格の需要弾力性 は、静岡市では調理食品のみが正の値を示している。ミクロ経済学の消費理 論とは整合しない結果であるが、統計的検定においても非有意な結果を示し ている。全国では、油脂e調味料、調理食品、外食が正の値を示しており、

統計的検定結果において非有意であったのは調理食品のみであった。

 食料品目の推定結果は、部分的に問題はあるにせよ、先の10大品目の推定 結果より良好である。その点、経済学的にも意味あるfact findingや\全国

との比較が第3表、第4表より可能かと思われる16)e

4.回帰診断

前節での静岡市における10大品目の推定結果は、全国の結果に較べて、全

16)推定結果が良好に見えるのは、モデルが10大品目の場合よりも適切であった  ことが推測される。しかし厳密には、データが持つ問題(多重共線性、系列棺関)

 を明らかにした上で、推定値の評価をすることが望まれる。尚、本稿ではこの問  題の処理は行っていない。

17)ここでのデータ上の問題とは、前注で述べた多重共線性や、系列相関のことで

 はない。

(63) 一一 P0一

(11)

法経論集第71号 論  説

般的によい結果を得たとはいい難い。そこで、その原因がデータ上の問kH V>か モデルの構造上の問題かを検討するために、10大品目に対し残差を用いた回 帰診断を試みた18)。回帰診断を行うために、推定結果より、ハット行列の対角 要素(HAT)、基準化された残差率(NSR)、ステユーデント化された残差

(SRE)を計算した19)。その結果は、第5表から第14表にまとめられている。

 ハット行列の対角要素は、大きければ大きいほど、その観測点(本稿では 年)の説明変数の値が平均より離れ、被説明変数の推定値が観測値に近付く

ことを示す。これは、最小自乗法による推定はハット行列の対角要素がもっ とも大きいところにモデルを適合させようとすることを意味する。したがっ て、ハット行列の対角要素がもっとも大きくなる観測値が外れ値である場合 には、推定結果の信頼性は損なわれることになる。そこで、一般には、ハッ ト行列の対角要素が2(k+1)/nを越えるものは危険な観測値であると考え られている(kは説明変数の数、nはデータの個数)20)。また、 Huberの基準 によれば、ハット行列の対角要素がG.2を越える観測値は危険であるとも考

えられている21)。

 ハット行列の対角要素が0.4{:(2(2十1)/15)}を越えるものは、被服・

履き物(1976年、1990年)、交通通信(1976年)、教育(1977年)、諸雑費(1979 年)であった。また、Huberの基準を用いると、すべての品冒で危険と判断

18)本稿で行う回帰診断は、基礎的な分析である。回帰診断については、例えば、

 蓑谷[8]を参照。特に本稿で行う園帰診断については、蓑谷[8]、第1章を参照。

19)基礎的な回帰診断をするとき、残差一非説明変数推定値のプロット図により、不  均一一 一分散や関数の不適切性についての情報を得ることができる(例えば、蓑谷  [8]、pp。2e−24を参照)。しかし、本稿での分析結果からは、有益な情報を得るこ  とができなかった。したがって、本稿での推定に、不均一分散があったかどうか  は不明であり、また関数が不適切であったかどうかは不明である。これは、明確  な情報(プロット)を得るためにはさらに多くのデー一タが必要である、と推測さ  れる。

20)クロス・セクションデータの場合には、この基準を越えるデータを外して推定  することが考えられる。しかし本稿での分析は、時系列データを用いているため  に、この方法は適用されない。

21)詳細については、蓑谷[8]第1章に紹介されている。

一 11 一一

(62)

(12)

       静岡市の消費者行動に関する予備的考察

される観測値(年)が多数ある。これは、本稿で採用したモデルに静岡のデー タを当てはめて推定することが危険である、ということを意味する。

  ステユーデント化された残差(SRE)は、次のように定義される。

      e?

SRE :

        s瀟

   ここで、eiは残差、 sは誤差分散σ2の不偏推定量の平方根である。SREは、

残差が大きいほどハット行列の対角要素が1に近いほど、大きくなる。ス

食料 NSR HAT

SRE

住居 NSR HAT

SRE

1976 0.◎0469 0.36255 一〇2856 1976 ◎.11488 0.37229 三.56972

1977 0.02275 0.32799 一〇。6208 1977 ◎.03963 0.36599 0.85643 1978 0.23532 0.18006 2.10418 1978 0.◎178 0.16393 一〇.4892 1979 ◎.01536 0.2◎669 0.4661 1979 ◎.18939 0.14464 一1.7687 1980 0.31546 0.13148 一2,5048 1980 0.00027 0.09783 一〇.0579

1981 0.00447 O.09054 一G.2331 1981 0.00543 0.24018 一〇.2813 1982 0.17969 0.09857 L65487 1982 0.01075 0.◎6748 0.35825

1983 ◎.00472 0.15058 0.248G4 1983 0.23252 G.092G1 一1.9459 1984 0.00164 0.26389 一〇.1568 1984 0.00041 0,2ユ9 一G.0764 1985 0.00519 O.14845 一〇.2597 1985 0.07865 0.13266 一1。0474 1986 0.⑪0073 0.10491 一〇.0951 1986 0.◎5937 0.1U1 0.88729 1987 0.15691 0.115◎2 一1.5397 1987 0.01966 0.25406 0.54567 1988 0.◎0933 0.27378 0.37833 1988 0.◎1817 0.25057 一〇.5227 1989 0.◎0051 0.35495 一◎.0931 1989 0.20296 0.29571 2.ユ1027 199◎ 0.◎4323 0.19054 0.78775 1990 0.0工01 0.19255 0.37335

第5表 第6表

光熱費 NSR

HAT

SRE 家具・家事罵品 NSR HAT

SRE

1976 0.01963 0.36619 0.59298 1976 0.01216 0.356壌6 0.46◎36 1977 0.09891 0.29052 1.33487 1977 0.00219 0.3◎279 一◎.1862

1978 0.◎0579 0.21789 一〇.2864 1978 0.01348 0.25765 一◎.45U 1979 ◎.工7647 0.20582 一1.7727 1979 0.00291 0.26156 一〇.2087

1980 0.25639 ◎.U517 一2.U84 1980 ◎.00159 0.0?248 一◎.1373

1981 0.02515 0.14543 一〇.5775 1981 0.04731 0.06808 0.767◎1

1982 ◎.06754 0.18703 一〇.9983 1982 0.00908 0.13989 0.34254 1983 0.06105 ◎.18059 0。9徽02 ユ983 0.00449 ◎.15387 一〇.2422

1984 0.U779 ◎.18013 1.3585 1984 0.12547 ◎25565 1.49339 1985 0.0013 0.13634 一〇.1289 1985 0.02411 0.12121 0.55705 1986 0.0069 0.10357 一〇.292 1986 0.40124 0.11499 一3.0205 1987 0.10714 0.091◎2 1.21233 1987 0.12214 ◎.14665 一1.3555 ユ988 0.00◎65 0.23457 一〇.0968 1988 0.21339 ◎.19417 1.99051 1989 0.◎0148 0.32227 一〇.1554 1989 0.00222 0.32489 0.19◎38 1990 0.05381 0.22345 ◎.90501 1990 0.01822 0.22966 一◎.5162

第7表 第8i表

(61> 一12一

(13)

法経論集第71弩 論  説

テユーデント化された残差は、説明変数、被説明変i数の両方向からの残差を 反映している。

 ステユーデント化された残差は必ずしもt分布に従わないが、絶対値で2 を越えるものは大きな残差の発生と考えることができる。本稿での計算結果 は、すべての品目において2を越える年があった。しかし、各晶目において 大きな残差が発生したと見られる年が一一ecでないのが特徴である。

 基準化された残差平方は、ハット行列の対角要素と、ステユーデント化さ れた残差と共に、外れ値の存在について判断することができる。基準化され た残差平方(NSR)は、次で定義される。

被服・履き物 NSR HAT SRE 保健医療 NSR HAT

SRE

1976 0.04984 ◎.40248 ユ.00049 ユ976 0.OOO26 0.34943 一〇.066 1977 0.00178 0.36965 一〇.1764 1977 0.00046 0.3◎896 0.08543 1978 4E−05 0.24039 0.02414 1978

◎.◎◎41工

0.18739 一〇。2365 1979 0.15206 ◎.31758 1.77586 1979 029877 0.10291 一2.3437 1980 0.0403 0.0817 一〇.7106 1980 0.◎1512 0.18562 0.45613 1981 0.0532 0.10157 一〇.832 叉981 0.Ol589 0.35畦83 0.5271 1982 ◎.07478 0.06847 一〇.9799 1982 0.◎◎03 0.U679 一〇.0615 1983 ◎.02224 0.07796 一〇.5214 1983 0.◎◎783 0.1128 0.31302 198淫 ◎.13512 O.07◎09 一1.3675 1984 0.40594 0.06909 2.9ユ648 1985 0.03412 0.093雛 0.65571 1985 0.04445 0.1307 0.7699ユ 1986 ◎.05089 0.10222 一◎.813 1986 0.03969 0.14003 一〇.7296 1987 0.0⑪◎95 0.13328 一〇,1097 1987 ◎.OGO76 0.39771 0ユ1821 1988 0.18988 0.23264 1.90178 1988 0.00963 0.15333 一〇.3557 1989 0.Ol929 0.19827 一〇.52◎7 1989 ◎.1483 020866 一1.5928 1990 0.17554 0.5107 2.48076 199◎ ◎.00848 0.18176 ◎.33949

第9表 第10表

交通通信 NS狼

HAT SRE

教育 NSR HAT

SRE

1976 0.00171 0.68971 0.24655 1976 0.10173 0.34877 L42709

1977 0.00022 ◎.3672 ◎.G6156 1977 ◎.◎075 ◎.40◎1 一〇.3732

1978 0.0ユ86ユ 0.15928 一〇.4991 1978 0.02048 0.14976 0.52106 1979 0.01951 0.09784 一◎.4931 工979 ◎.00793 0.15789 0.32337 1980 0.18713 0.◎7922 1.67502 198◎ G.0032 Q.22Q76 一◎2131

1981 0。00ユ王 0.06842 一〇.1141 1981 ◎.22623 0.2875 一2.2622

1982 0.◎◎154 0.21512 一〇ユ473 1982 0.OO21 0.07694 一〇、1582

1983 0.◎3183 0.12377 一◎。644 1983 ◎.018◎4 0.06913 一◎。4662

1984 0.⑪0677 0.13279 0.29415 1984 0.U745 0.12142 一L3028

1985 0.G◎779 0.1◎2◎6 一〇.3工G3 1985 0.08524 ◎.0873 1.06448 ユ986 0.08692 0.10257 LO8608 1986 0.09474 0.10349 一1.1401 1987 0.13572 0.11621 一L4127 1987 0.05814 0.26663 0.9732 1988 0.02848 0.23762 0.65335 王988 0ユ5279 ◎.17775 L58445

1989 0.26099 0.33639 一2.6703 1989 0.05687 0.20889 0.92308 1990 0.21168 0.1718 L9434 1990 O.04757 0.32367 0.91222

第11表 第12表

一ユ3−一 (60)

(14)

静岡市の消費者行動に関する予備的考r察

教養娯楽

NSR

HAT

SRE

諸雑費 NSR HAT SRE

1976 0.00148 ◎.34765 一〇.1582 1976 0.02483 0.34982 一◎.6609 ユ977 ◎.00132 0.36495 一〇.1511 1977 0.0014 0.32036 一〇.1508 ヱ978 4.7E−05 0.18129 一〇.0252 1978 0.01202 0.24231 一〇。4211 1979 0.03291 0.22926 0.70048 1979 ◎.00085 0.41289 0.12634

ユ98◎ 0.08641 0.12495 一LO978 1980 ◎.08612 0.07286 1.06131 1981 0.0◎642 0.1563 一〇.2904 1981 ◎.08829 ◎.08566 LO8427

1982 0.38911 0.07021 2.81361 1982 O.04136 ◎.10085 一〇.7282 1983 0.02985 ⑪.09514 0.61259 1983 0.02636 O.15251 0.59424 1984 0.00154 0.16238 一〇.1423 1984 0.01449 0.2316 一G.4598 ユ985 ◎.183工5 0.◎9486 一1.6704 1985 0.00203 0.10168 一G.1578 叉986 0.04185 0.10123 ◎.73298 1986 0.0王609 0.1012 0.44784 1987 0.13648 0.23521 一1.5457 1987 0.19999 0.王6062 1.8549 ユ988 0.04042 0.2909 一〇.8154 1988 0.◎7689 0.22779 一ユ.1029 ユ989 0.01856 0.24188 ◎.52536 1989 0.◎4067 0.27491 0.80846 1ggo 0.03046 ◎.30381 0.7◎946 1990 0.36862 0.16494 一2。948護

第13i表 笛1蝿叢 第14…表

       e?

   NSR=n

      ざ多、 e 1・

 ここで、eiは残差である。仮に、基準化された残差平方がもっとも大きな 観測点でハット行列の対角要素もまた大きい場合(併せてステユーデント化 された残差も大きい:場合)、最小自乗法は、推定されるモデルが外れ値にもっ とも適合するように計算される。

 本稿での計算結果を見てみると、すべての品目において、基準化された残 差平方とステユーデント化された残差がもっとも大きな観測点(年)でハッ ト行列の対角要素が最大となることはなかった。その結果、本稿のモデルを 推定するに当たり外れ値が存在するとは推測することができない。しかし基 準化された残差平方とステユーデント化された残差が大きいこれらの観測点

においては本稿のモデルが不適切である、と推測することができる。

 以上の回帰診断による結果は、静岡市における消費者行動を分析するとき、

本稿で採用したモデル((1)式)は不適切であるとまとめることができる。

5。結びに代えて

 本稿の分析は、主として(1)式を用いて所得の需要弾力性と価格の需要弾 力性を推定することにより、静岡市の消費者行動のfact findingを目的とし

(59) 一14−一

(15)

法経論集第71号 論  説

た。分析の結果、10大品目について、統計的に有意な関係を見いだせなかっ た。これは大きな問題を今後残すものである。明らかな問題は、第4節で分 析したように、モデルの構造(関数形)、あるいはモデルの定式化であった。

 モデルの改良は再検討しなければならないが、(1)式を基礎としたモデル として、(相対価格を考慮して)説明変数が消費者物価指数でデフレートされ るモデルが第1に考えられるが、今回用いた静岡市のデータを当てはめ推定 しても良好な結果は得られなかったことは確認している。また、他の品目(財)

の価格を加法的に付け加えるモデルも考えられるが、今回分析に用いた品目 数とデータ数の関係で自由度が極端に小さくなってしまう。モデルの改良に 当たり、データ不足が大きな問題としてある。

 今回用いたデータは、年次データであった。データ不足の解消は、月次デー タで解消することが考えられるが、これには季節調整の問題が残る。価格の 月次デー一一…タに関しては、センサス局法(x−11)により季節調整がなされてい るが、消費支出に関する月次データは分析に当たり季節調整を施さなければ ならない。データ不足解消の別の手段は、分析する対象晶目を絞り込み長期 の時系列データ(年次データ)を作成することが考えられる22)。これは、季節 調整という厄介な問題を回避することができる上で有益な分析が期待され

る。

 データ不足の問題が解消され、モデルの改良もなされたときに、次に予想 される問題はデータが持つ多重共線性の問題がある。この問題は、消費需要 の計量分析がなされた初期の頃より指摘されている問題である。多重共線性 が存在するかどうかの判断は、推定期聞を代えることにより回帰係数が不安 定になるかどうかで推測することができる23)。ちなみに、本稿の分析で推定期 間を代えて計算すると、多くの贔目で不安定となった。しかし4節で明らか なように、これはモデルの不適切さによる。その意味では、今後の分析の中 で、回帰係数の不安定性がデータの多重共線性の問題なのか、モデルの構造 の問題なのか、明確にする必要がある。

 最後に、本稿の分析結果は、地域の消費者行動は、全国の平均的な家計消

22)例えば、食肉需要の計量分析をしたものに、内山[12]がある。

23)例えば、Maddala[7]、邦訳pp.198−202を参照。

一一

P5−一・一 (58)

(16)

      静岡市の消費者行動に関する予備的考察

費行動と平行的に考えることはできないことを明らかとした。その意味で、

地域の消費者行動についての計量分析の意義は大きいと考えられる。残った 多くの問題は、今後の課題としたい。

参考文献

[1]Brown, A and A. Deaton, SURVEYS IN APPLIED ECONOMICS;

   MODELS OF CONSUMER BEHAVIOUR , Economic/burnal,

   vol。82, December 1972.

[2〕Deaton, A and J. Muellbauer, Economics and consumer behavior,

   Cambridge University Press,1980。

[3]橋本紀子、「多晶目消費支出関数の計測と比較」、『六甲台論集』ag 31巻

   第2号、昭和59年7月。

[4]    、「勤労者世帯の支出行動、1963−1983−−AIDSによる分析    一」、『六甲台論集』第33巻第2号、昭和61年7月。

[5]    、「ロッテルダム・モデルによる需要理論の検証一日本の場    合:1963〜1983−」、『季刊理論i経済学(The Economic Studies

   Qorarterly)』,vo1.37, N o.3, September 1986。

[6]黒田昌裕、『一般均衡の数量分析』、岩波書店、1989年。

[7]Maddala, G.S.,12>TRODU()TIOi>TO ECONOMETRICS, Macmil・

   1an Publishing Company,1988.(邦訳『計量経済分析の方法』和合    肇訳、マグロウヒル出版、1992年〉

[8]蓑谷千鳳彦、『計量経済学の新しい展開』、多賀出版、1992年。

[9]斎藤光雄、『一般均衡と価格』、創文社、昭和48年。

[10]Suruga, T., Testing the Rotterdam demand model on Japanese    expenditure pattern , Economic Review, vol.31,1980.

[11]辻村江太郎、『消費構造と物価』、動草書房、1968年。

[12]内山敏典、『消費需要の計量的分析一一食肉消費を事例として一』、晃    洋書房、1992年。

(57) 一Z6一

参照

関連したドキュメント

経済学・経営学の専門的な知識を学ぶた めの基礎的な学力を備え、ダイナミック

私たちの行動には 5W1H

を塗っている。大粒の顔料の成分を SEM-EDS で調 査した結果、水銀 (Hg) と硫黄 (S) を検出したこと からみて水銀朱 (HgS)

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

トリガーを 1%とする、デジタル・オプションの価格設定を算出している。具体的には、クー ポン 1.00%の固定利付債の価格 94 円 83.5 銭に合わせて、パー発行になるように、オプション

ᄑᛵ᝭ȾɕᤛȶȲǾᒲऺ࣊ɁᯚȗǾȗɢəɞαᭅॴȟᯚȗʬʑʵȺȕɞȦȻȟɢ ȞɞǿȦɁျᝲᄑᛵ᝭Ɂᆬᝓͽഈȟާ஧ȾȺȠɞȦȻȟǾÌÅÓ ʬʑʵɁТɟȲཟ ɁˢȷȺɕȕɞǿ

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

①正式の執行権限を消費者に付与することの適切性