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裸普通鋼材の腐食特性の相関性と腐食促進倍率に関する基礎的研究

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Academic year: 2022

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(1)

大気環境とJISサイクルD腐食促進試験における

裸普通鋼材の腐食特性の相関性と腐食促進倍率に関する基礎的研究

九州大学大学院 学生会員 ○小林 淳二 九州大学大学院 フェロー会員 貝沼 重信

1.はじめに 鋼構造物を適切に維持管理するためには,部位レベルで異なる鋼材の腐食特性やその経時性を定量的 に把握することが重要になる.これまで,鋼材の腐食挙動の基礎データを得るために,大気暴露試験や腐食促進試 験が数多く実施されてきた.しかし,実環境に対する腐食促進試験の相関性や腐食促進倍率については不明な点が 多い.そこで,本研究では裸普通鋼材を用いてJIS K5600サイクルDによる複合サイクル腐食促進試験を行い,その 腐食特性を既往の大気暴露試験のデータ1)と比較することで,それらの相関性について検討した.また,大気暴露試 験に対する腐食促進試験の腐食促進倍率についても検討した.

2.試験方法 試験体にはウェザロサイズ(150×70×6mm)の普通鋼(JIS G3106 SM490A,裸仕様)を用いた.試 験体の表面は,試験開始直後から均質な腐食生成物が生成されるように,ブラスト処理(ISO Sa2.5)した2).また,

試験体の裏面を防錆するためにシリコン樹脂を塗布した.腐食促進試験には塗装部材の塗膜が劣化・消失した後を 想定して,JIS K5600 サイクルDを適用した.この腐食サイクルは濡れ時間に比して乾燥時間が長いため,試験体 表面の付着塩が洗い流されにくく蓄積しやすい.腐食サイクルの繰返し回数は,経時性のデータを得るために,600,

1,200,1,800,2,400および3,800 cyclesとした.試験体の平均腐食深さは,腐食生成物を化学的に除去した後の試験

体の重量減少量に基づき算出した.また,腐食促進試験後における腐食生成物の除去後の表面性状は,レーザーフ ォーカス深度計(スポット径:30 m,分解能:0.05 m)を用いて,0.2mmピッチで測定した2)

本研究では飛来海塩環境で降雨による塩の雨洗効果が無い場合とある場合の大気暴露試験結果 1)を腐食促進試験 の結果と比較・検討することとした.なお,雨洗効果が無い大気暴露試験は,沖縄自動車道の高架橋下(以下,許 田(設置角度:0,対空面))(Lat.2632’N,Long.12757’E)で実施された1).また,雨洗効果がある場合について,

琉球大学構内(以下,琉大(設置角度:45,対空面))(Lat.2615’N,Long.12746’E)で実施された1).大気暴露期 間は,いずれの暴露地点においても1,2,3および4年である.

3.試験結果 腐食生成物の除去後における試験体中央部の表面性状を図-1 に示す.ここでは,3,800cycles後の試 験体表面と各暴露場で4年間暴露された後の試験体について示す.暴露試験体は暴露地点により腐食表面性状が異 なっているが,全面腐食が発生している.一方,腐食促進試験後の試験体では,局部腐食が所々発生しており,暴 露試験体とは異なる腐食表面性状となっていた.これは腐食促進試験では多量の噴霧塩が試験体表面に蓄積・濃縮 し,アノード部が局所的に固定され,腐食が進行したことが原因として考えられる.

腐食生成物除去後の各試験体の腐食深さのヒストグラム1)を図-2に示す.ここでは,3,800cyclesの腐食促進試験 後の試験体と,大気暴露試験を4年間行った後の試験体の腐食生成物除去後における表面性状について示す.暴露 試験体のヒストグラムは1つの確率密度関数で表現できるが,促進試験体は腐食特性の異なる全面腐食と局部腐食 が混在しているため,1つの確率密度関数を適用することができない3).また,変動係数は暴露試験体に比して,促 進試験体が大きくなっている.これらは,本研究の腐食促進試験で発生した局部腐食が図-1(b)や図-1(c)で示した 暴露試験では発生しないためと考えられる.以上から,腐食促進試験と大気暴露の腐食性状には,大きな差異があ るため,これらの相関性は低いと言える.

各試験体における暴露期間tと平均腐食深さdmeanの関係を図-3に示す1).腐食促進試験のtdmeanは,線形関係

キーワード 腐食 腐食促進試験 大気環境 相関性 促進倍率

連絡先 〒819-0395 福岡市西区元岡744番地 ウエスト2号館 1104号室 TEL 092-802-3392

■ 0 - 0.5 .■ 0.5 - 1.0 ■ 0 - 1.5

■ 1.5 - 2.0 ■ 2.0 - 2.5 ■ 2.5 - 3.0 (mm)

■ 0 - 0.05 ■ 0.05 - 0.10 ■ 0.10 - 0.15 ■ 0.15 – 0.20 ■ 0.20 – 0.2

■ 0.25 – 0.30 ■ 0.30 – 0.35 ■ 0.35 – 0.40 (mm)

10mm 10mm

(a) 促進試験 (b) 琉球大学1) (c) 許田1)

図-1 腐食生成物の除去後の表面性状 10mm

土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

‑845‑

Ⅰ‑423

(2)

になっている.このことは,本研究で用いたJIS サイクルDのように塩が蓄積しやすい環境で生成される腐食生成 物層には,腐食要因物質に対する保護性がほとんど無いことを示している.腐食促進試験と同様の塩蓄積の環境に 相当する許田の結果についても,tとdmeanは線形関係にある.一方,付着海塩が雨洗される琉球大学のtdmeanは 累乗関係にあり,塩蓄積の環境である促進試験と許田とは傾向が異なっている.図-3中における促進試験の回帰式 の係数を,各暴露場の回帰式の係数で除して求めた腐食促進倍率を図-4に示す.塩蓄績環境の許田は試験期間によ らず促進倍率が一定となっているが,付着海塩が雨洗される琉球大学では非線形の関数系で増加している.このよ うに,促進倍率の傾向には差異があるが,本研究で算出した関係式を用いれば,実環境に対する腐食促進試験の促 進倍率を簡便に算出できると言える.なお,鋼構造物の対象部位にける腐食深さの経時性は,そこに設置した裸普 通鋼板の腐食生成物層の厚さあるいは1年間の平均腐食深さを文献1)の手法に適用することで推定できる.ただし,

前述したように,本研究の腐食促進試験と大気暴露試験における鋼材の腐食性状は大きく異なるため,大気環境に 対する腐食促進試験の裸普通鋼材の腐食促進倍率は,dmeanに基づき検討することが望ましいと言える.

4.まとめ 本研究では,裸普通鋼板の腐食促進試験(JIS K5600 サイクルD)と大気暴露試験の腐食特性の相関性 を検討した上で,それらの腐食促進倍率について検討した.本研究で得られた主な結果を以下に示す.

1) 腐食促進試験した鋼板の腐食表面性状は,局部腐食が発生することなどにより,大気暴露試験体と著しく異なる.

2) 腐食促進試験では保護性の低いポーラスな腐食生成物が形成されるため,裸普通鋼板の平均腐食深さは海塩が付 着・蓄積する環境と同様にその経時性は線形になる.

3) 大気環境に対する腐食促進試験の鋼材の腐食促進倍率は,塩蓄績の有無により傾向が大きく異なる.腐食促進倍 率は海塩が付着・蓄績する環境では一定となるが,付着海塩が雨洗される環境では非線形の関数系で増加する.

4) 大気環境に対する腐食促進試験の鋼材の腐食促進倍率は,平均腐食深さに基づき評価する必要がある.

参考文献

1) S.Kainuma, Y.Yamamoto, Y.Itoh, H.Hayashi and W.Oshikawa : Evaluation Method for Corrosion Depth of Uncoated Carbon Steel and Its Time-Dependence Using Thickness of Corrosion Product Layer, Corrosion Engineering, Vol. 61, No.7, pp.483-494, 2012.

2) S.Kainuma, Y.Yamamoto, H.Hayashi, Y.Itoh and W.Oshikawa : Practical Method for Estimating Time-Dependent Corrosion Depth of Uncoated Carbon Steel Plate under Atmospheric Environment using Fe/Ag Galvanic Couple ACM- Type Corrosion Sensor, Corrosion Engineering, Vol.63, No.2, pp. 44-53, 2014.

3) S.Kainuma and N.Hosomi : Fatigue life evaluation corroded structural steel members in boundary with concrete, International Journal of Fracture, Vol.157, Issue1-2, pp.149-158, 2009.

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

0 0.5 1 1.5 2 2.5

Corrosion depth, d / mm

Relative frequency / %

Mean : 0.881 Maximum : 2.74 Coefficient of variatoin : 0.605 Skewness : 1.11

Kurtosis : 0.348

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0

0.5 1 1.5 2 2.5

Corrosion depth, d / mm

Relative frequency / %

Mean : 0.142 Maximum : 0.320 Coefficient of variatoin : 0.327 Skewness : 0.210 Kurtosis : −0.563

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0

0.5 1 1.5 2 2.5

Corrosion depth, d / mm

Relative frequency / %

Mean : 0.19 Maximum : 0.305 Coefficient of variatoin : 0.142 Skewness : 0.159 Kurtosis : −0.120

図-2 腐食深さの頻度分布

(a) 促進試験(3,800cycles) (b) 琉球大学(t = 4yrs)1) (c) 許田(t = 4yrs)1)

0 1 2 3 4

0 5 10 15 20

Test period, t / year

Acceleration rate

University of the Ryukyus

Kyoda

図-3試験期間tと平均腐食深さdmeanの関係 図-4 腐食促進倍率

0 1 2 3 4

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

Test period, t / year Mean corrosion depth, dmean/ mm

dmean=0.344·t (R=0.962)

dmean=2.74×10−2·t0.558 (R=0.990)

University of the Ryukyus 1) Kyoda1)

dmean=4.56×10−2·t (R=0.978) JIS K5600 Cycle D

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