社会的ネットワーク理論に基づく 空間相互作用モデル
大平 悠季
1・織田澤 利守
21学生会員 神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻(〒658-8501神戸市灘区六甲台町1-1) E-mail:[email protected]
2正会員 博(工)神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻(〒658-8501神戸市灘区六甲台町1-1) E-mail:[email protected]
社会的ネットワークは主体間の結びつきを記号化した概念であり,コミュニケーション行動の動機そのもの である.その意味で,コミュニケーションに派生する交通需要は社会的ネットワークに規定される.本研究は,
交通需要の集積・分散の様子と社会的ネットワークとの関係性の解明を試みる.社会的ネットワーク上でつなが りのある相手との交流から便益を得る主体は,交通ネットワーク上の特定の経路を介してこれを実現していると し,この想定を効用最大化問題として定式化する.効用には戦略的補完性(活発に交流活動を行う相手との交 流はより高い効用をもたらす性質)と多様性選好(多様な相手との交流を好む性質)が作用するとする.上記 の設定の下,実現するナッシュ均衡解を解析的に導出する.さらに,簡単な数値事例を通じて,社会的ネット ワーク及び交通ネットワークの位相幾何学的構造と交通需要の関係を分析する.
Key Words ::social network, transportation network, travel demand, social externality
1. はじめに
近年,SNS(Social Networking Service)の急速な普 及によって注目を集めた社会的ネットワーク(Social Network)は,元来主体間の結びつきを記号化した概念 であり,コミュニケーションの動機そのものである.情 報通信技術・サービスの急速かつ著しい展延に伴う「友 人関係の構築・維持」コストの低下によって,社会的 ネットワークの動的変化はかつてないほど激しいもの なっているといえる.友人・知人関係の伸展,すなわ ち社会的ネットワークの拡大はコミュニケーションの 動機である他人とのつながりが増加することを意味し,
コミュニケーション活動の活発化を促進する.コミュニ ケーション行動の目的は,友人同士の親交・ビジネス パーソン同士の交渉等様々であるが,face-to-faceで行 われるコミュニケーションは総じて交通行動を伴う.こ のようなコミュニケーションを求めて移動する行動を,
出発点と目的地という切口から集計したものがOD交 通量であるといえ,この意味で,OD交通需要は本質的 に社会的ネットワークに規定される.ある地点が出発 点,あるいは目的地たり得るのもそこにコミュニケー ションを需要する主体の存在があるからである.交通需 要発生のメカニズムを記述するという見地からも,交 通行動の起源である社会的ネットワークの視座からの 議論が必要であるといえる.現行の交通需要予測手法 は集計レベルでの四段階推定法が中心であるが,これ
は現象から傾向を実証的に捉え直すのみで,行動論的 基盤を欠く.誰が誰とコミュニケーションをとるため にその交通行動が発生しているのかを明らかにするこ とができれば,交通行動を動機から捉えられ,OD交通 需要を抜本的に把握することが可能になる.
また,都市とは,近接に立地することで主体間の相 互作用が促進されることに起因する様々なメリットが 生んだ地理空間の一形態と捉えることができるが,都 市内の交通現象であれ都市間のそれであれ,各主体の 物理的な相対関係が交通行動に大きく影響することが 容易に想像される.よって,主体の立地点およびそれ らを結ぶ交通環境の集合体である交通ネットワークを,
社会的ネットワークと同様に交通行動の主要な構成要 素と捉えて構造化し,議論を進めることが重要である.
本研究では社会的ネットワークを考慮することによっ て人々の行動を本源的な動機から捉える理論的枠組を 構築し,これに基づいてOD交通需要の発生メカニズ ムを解明することを目的とする.その過程で,社会的 ネットワークを動機として発生した交通需要が交通ネッ トワークや交通費用からなる交通環境の干渉を受ける 構造をモデル化する.社会的ネットワークと交通ネット ワークの状況は,組合せを考慮すると膨大なバリエー ションが考えられるが,ある状況に対してどのような 環境的条件(同一の社会的ネットワークに対して最適 な交通ネットワークの形態,あるいは社会的ネットワー
クも交通ネットワークも固定の状況下での交通費用等)
がどの程度厚生に作用するのか,また,交通-コミュニ ケーション行動の量的な集積の様子を分析することを 関心の中心に置く.以下,2章では既存研究の整理と本 研究の位置づけを述べる.3章で,交通ネットワークと 社会的ネットワークの重層的な構造をモデル化し,そ の上で各主体間に発生する交通需要を効用最大化行動 として定式化し,解析的に均衡解を得られることを示 す.また,外部効果を内部化して均衡モデルを解くこ とによって社会的最適解を得ると同時に,2種類の外部 性を個別に内部化した場合の解を導出する.4章では,
簡単な数値事例を通して複数の外部効果をそれぞれ内 部化した場合に厚生改善・改悪両方の可能性があるこ とを示し,主体の社会的ネットワーク上のポジション と交通ネットワーク上の立地点,さらにこれらと交通 需要との関係について分析する.5章にまとめと今後の 展望を述べる.
2. 既存研究と本研究の位置づけ
社会的ネットワークにおける個人の位置とコミュニ ケーションとを関連づけた既存研究にHelsley & Zenou
1)があり,都市への訪問行動および立地選択を社会的 ネットワークの観点から分析している.これは訪問行動 の頻度が高いほど他人とのコミュニケーションが行いや すくなるという枠組で,都市(the City)と郊外(the
periphery)からなる二地域モデルであり,交通ネット
ワークを考慮していない.都市には人や物が集中する プラットフォーム的側面があるとはいえ,現実の人々 は,道路環境に応じてコミュニケーションをとりたい 相手と自分自身の立地条件に基づく移動コストを考慮 しながら,交通行動を決定している.交通需要が実際 に観測される交通量として顕在化する過程では,交通 ネットワークの様態が大きく影響するはずである.交 通行動という観点から見たときに,交通ネットワーク が社会的ネットワークとどのような重層的構造を形成 しているのか,両者がどのような相互関係にあるのか が明らかになれば,その結果として表面化する混雑や,
誘発需要も同じ枠組で議論し得ると考えられる.
井料ら2)はOD交通需要モデリングに社会的ネット ワーク理論を適用し,それまでは外生的に与えることが ほとんどであった交通(=「目的をもった移動」)の「移 動の目的」を一部内生化している.社会的ネットワー クとは,それ自体がノードである各主体間に異質性を 定義づけるものである.社会的ネットワーク上でどの ようなポジションを占めるかということは,コミュニ ケーション活動の水準を決定づける,各主体のアイデ ンティティであるともいえる.この点を考慮すると,主
体がリンクでつながっている相手は,それぞれに異な る効用をもたらすはずである.井料ら2)において社会的 ネットワークについてはトポロジー的特徴を考慮する に留まり,交流相手の異質性に言及していない.経済 社会におけるコミュニケーション活動は,「誰か」と会 うことから価値を引き出すというよりも,「誰と」会う かによって相異なる便益を獲得するための行為と捉え られる.交通量分析においてはODペアに着眼する手 法が汎用されているが,Origin(出発地)の元に,ある
いはDestination(目的地)の先にいるのは社会的ネッ
トワーク上にリンクを張るノードとしての主体である.
これらの主体間にインタラクションが存在しなければ,
そもそも交通どころか「移動の目的」も発生しないの であり,「移動の目的」の起源である社会的ネットワー クに基づく交通需要のモデル化は現状分析および将来 的な交通需要予測の双方に有意な示唆を与えると考え られる.また,井料ら2)は特定の状況設定に対する数値 的分析に終始しており,解析的な手法に基づく知見は 得られていない.
本研究は,社会的ネットワークおよび交通ネットワー クの位相幾何学的構造とOD交通需要の関係を,モデル 分析を通じて明らかにする.ネットワーク上の各主体の 効用最大化行動の定式化の過程で,Ottaviano-Tabuchi- Thisse(2002)3)の提案する複数の異質財から主体が得る 効用を表現した関数形を用いることで,コミュニケー ション相手の異質性を表現している.井料ら2)と同様の モチベーションに基づいているがモデリングの手法は 大きく異なっており,解析的なアプローチを試みるも のである.
3. ネットワークを考慮した交通需要モデル
(1)設定
n人の主体およびそれぞれの立地点からなる経済環境 を想定する.各主体は,社会的ネットワーク上でリンク している相手それぞれとの交通を伴うコミュニケーショ ン活動から便益を得,達成されるコミュニケーションは 相手によって異質であると仮定する.主体iは予算制約 の下で,相手j (i̸=j) のところに赴く交通-コミュニ ケーション行動vijおよび相手が自分の立地点を訪れる ことで達成される交通-コミュニケーション行動vjiの 両方から得る効用を最大化するように,自身のコミュ ニケーション需要vijを決定する.Ottaviano-Tabuchi- Thisse(2002)3)は,複数の異質財から主体が得る効用を モデル化しいてるが,本章のモデルはここで提案され ている効用関数形を採用し,コミュニケーション相手 に関する多様性選好:より多くの異なる相手と交流す ることでより高い満足を得る性質を表現する.さらに,
戦略的補完性:活発にコミュニケーション活動を行って いる相手とのコミュニケーションからは大きい便益を 得る性質を効用関数形に組み込んで,主体の行動を定 式化する.主体の効用最大化行動の基盤となる要素は,
社会的ネットワーク,コミュニケーション相手に関する 多様性選好・戦略的補完性および交通ネットワークで ある.
(2)均衡モデル
主体i(∀i= 1,…, n)は,予算制約(式(3))の下でネ ットワーク構造[gij]と他の主体の交通需要vjk(∀j,∀k= 1,…, n, j ̸=i) を所与として,自身の効用Uiを最大化 するように交通-コミュニケーション需要水準vijを決 定する.
maxvij,z Ui(vij,v−i, g) =zi+ui(vij,v−i, g), (1)
ui(vij,v−i, g) =α
∑n k=1
(gikvik)
−β−γ 2
∑n k=1
(gikvik)2−γ 2
( n
∑
k=1
(gikvik) )2
+θ
∑n k=1
gik
[∑n l=1
gilvil
][∑n m=1
gkmvkm
] (2)
sub. to vi=
∑n j=1
gijvij, vii = 0
yi=zi+pT
∑n k=1
(gikvik) +
∑n k=1
[ gikvik×
∑ϕ λ=a
(pikλtλ
∑n l=1
∑n m=1
pλlmglmvlm
)] (3)
ここで,yiは所得,ziは基準財を表し,式(3)は予算 制約である.θ(>0)は社会的ネットワークのつながり の強さを表すパラメータである1).α(>0)は異質財を 分散して消費することへの選好の強さ,β, γはβ > γ の下で,消費者である主体がバラエティの分散型消費 へ偏する性質を表す.ある値のβに対してγは各異質 財間の代替可能性を表現する:すなわち,β > γが保 たれている下では,γの値がβに近付くほどそれぞれ の財同士の代替性が強い.さらに,β > γであること から,Uiはvijに関して狭義に増加関数である.
pT は単位量あたりのface-to-faceコミュニケーショ ンに要する固定費用を表すパラメータ,pijλは,主体 iと主体jを結ぶ交通ネットワーク上の経路に道路リン クλが含まれる(pijλ= 1)か否(pijλ= 0)かを表象 する(ただし,pijλ= pλij,i=jのときはp = 0).tλ は道路リンクλを通過する際に発生する交通コストで ある.
準効用関数(2)の最右項:
θ∑
k
gik[∑
l
gilvil][∑
m
gkmvkm]
は,Ottaviano-Tabuchi-Thisse(2002)3)の提案する関数 中にはないものであるが,Helsley & Zenou(2011)1) のモデルにおける効用関数で戦略的補完性を表す項
θ∑
gijvivj のアイデアを踏襲している.gij = 1で あるような(i, j)の組に対して,主体iと相手jのそれ ぞれが友人・知人全員と行う交通-コミュニケーション の総和vi, vjが,相補的に主体iの効用に貢献すること を表す.これは,「相手が自分以外の友人とも活発にコ ミュニケーションを行っている(すなわちvjiだけでは なくvjが大きくなる)ということが,その相手との単 位あたりのコミュニケーションの質を高めるように作 用し,主体iの効用も増加する」という仮定を反映して いる.この仮定は,交流関係を,特定の相手に限らず 多くの人々とコミュニケーションを行っている主体は,
話題も情報も豊富で,交流する相手に質の高いコミュ ニケーションの機会を提供するという着想に基づく.
この効用最大化問題を解くことで,各主体が社会的 ネットワーク上で直接つながりを持つ相手それぞれに 対してどれほどの交通-コミュニケーションを需要する かがわかる.ここで得られる需要量は他の主体の行動を 所与として同時手番的に決定されるものであり,Nash 均衡解であるといえる.
Nash均衡解を求めるにあたって,各個人は,交通の 外部効果(他人のコミュニケーション量選択行動が混 雑に与える影響)を考慮せずに自身のコミュニケーショ ン量vikを(kごとに)決定する.そのため,均衡にお ける交通量を求めるための計算においては,予算制約 式に下の式(4)を用いる(効用計算には上式(3)を用 いる):
yi=zi+pT
∑n k=1
(gikvik) +
∑n k=1
[ gikvik×
∑ϕ λ=a
(pikλtλ
∑n m=1
pλimgimvim
)] (4)
式(1)に2式(2), (4)を代入すると,1階条件より
∂Ui
∂vij = (α−pT)gij−2gij
∑ϕ λ=a
pijλtλ
∑n k=1
pλikgikvik
−(β−γ)gij2vij−γgij
∑n k=1
gikvik
+θgij
∑n k=1
[ gik
∑n m=1
(gkmvkm)]
=gij
{
(α−pT)−2
∑ϕ λ=a
pijλtλ
∑n k=1
pλikgikvik
−(β−γ)gijvij−γ
∑n k=1
gikvik
+θ
∑n k=1
[ gik
∑n m=1
(gkmvkm
)]}
= 0. (5)
gij = 0のとき,式(5)は常に成り立つ.gij = 1の とき,
(α−pT)−2
∑ϕ λ=a
pijλtλ
∑n k=1
pλikgikvik
−(β−γ)gijvij−γ
∑n k=1
gikvik
+θ
∑n k=1
gik [∑n
m=1
(gkmvkm)]
= 0
行列表記すると
(α−pT)1−2Λ′v−(β−γ)Gev
−γDGev+θDGeEGev=0 (6) ここで,G = [gij] を n 行 ×n 列の隣接行列と す る と ,n2 × n2 行 列 Ge = [gij,kl](∀ij, kl = 11,12, ...,1n,· · ·n1, n2, ..., nn)は,次のように表せる:
gij=
1 ( if the agentsiandj are directly connected) 0 ( otherwise)
,
gij,kl=
gij (ifij=kl) 0 (otherwise)
.
さらに,n2×n2行列D= [dij,kl],E= [eij,kl]の各成分 は次のようになる:
dij,kl =
1 (ifi=k) 0 (otherwise)
, eij,kl=
1 (ifj=k) 0 (otherwise)
.
また,ϕ行n2列の行列P= [pλij](λ=a, b, ..., ϕ)
の成分を次の通りに定める:
pλij =
1 (if the linkλis included
in the path between agents i and j) 0 (otherwise)
.
λ×λ行列C(t)を,交通リンクλ∈[a,· · ·, ϕ]を通過す るために擁する費用tλを要素に持つ対角行列とする:
cµ,ν=
tλ (ifµ=ν=λ) 0 (otherwise)
.
ここでΛ=PTC(t)(PGe)とおくと,式(6)中のΛ′ = [λ′ij,kl]の要素は,Λ = [λij,kl]を用いて次のように表 せる:
λ′ij,kl=
λij,kl (ifj=k) 0 (otherwise)
.
式(6)より,
v∗= [
2Λ′+ (β−γ)Ge+γDGe
−θDGeEGe
]−1
·(α−pT)1 (7) が成り立つ.この行列計算は,gij = 1を満たす(i, j) の組に対してのみ適用できることに留意する.
社 会 的 ネット ワ ー ク の 構 成 メ ン バ ー そ れ ぞ れ の Bonacich中心性4)を表すベクトルbは,単位行列I,隣 接行列G,ネットワークの紐帯の強さを表すパラメー タθを用いてb=[
I−θG]−1
1と表される.式(7)によ り得た交通-コミュニケーション需要vij∗ は,Bonacich 中心性に類似する形でリンクに関する重要度に応じて 交通需要が決定することを示している.これを式(1)− (3)に代入し直すことで,均衡における効用水準を求め ることができる.
(3)外部効果と社会的最適モデル
外部効果を内部化して均衡モデルを解くことで,社 会的最適解vOを導出する.外部効果は2種類存在し,
一つは交通に関する混雑外部性,もう一つはコミュニ ケーションの戦略的補完性に基づく外部効果である.
混雑外部性について,均衡交通量を求める際には,式 (4)を用いて自分自身の交通-コミュニケーション量の みで交通費用を計量する主体の行動をモデル化したが,
これを内部化するためには交通量・効用水準ともに,予 算制約式(3)を用いて求める.
他方,コミュニケーションの戦略的補完性を内部化す ると,式(7)におけるθDGeEGeの項は2θDGeEGe
に置き換えられる.以上から,社会的最適解vOは次式 によって得られる:
vO= [
Λ′+Λ+ (β−γ)Ge+γDGe
−2θDGeEGe
]−1
·(α−pT)1 (8) vOは交通の外部効果・コミュニケーション外部性の両 方共を内部化したときに達成される交通-コミュニケー ション水準であるが,これら2種類の外部効果を一方 ずつ内部化した場合はそれぞれ次のようになる.
(a) 混雑外部性のみを内部化した場合
各主体は交通行動についてのみ,他人の追加的な 交通量の増分がネットワークを通じて自分の交通 費用に及ぼす影響を考慮して交通需要を決定する.
この結果として得られる交通-コミュニケーション 需要ve1は,次式で表される.
ve1= [
Λ′+Λ+ (β−γ)Ge+γDGe
−θDGeEGe
]−1
·(α−pT)1 (9)
(b) コミュニケーション外部性のみを内部化した場合 各主体は,他者の追加的なコミュニケーション量 の増分が社会的ネットワークを通じて自分のコミュ ニケーションの便益を高める効果を持つことを考 慮してコミュニケーション量選択を行う.(a)とは 逆に,交通に関しては他人の行動は考慮しない.結 果,交通-コミュニケーション需要ve2は次のよう になる.
ve2= [
2Λ′+ (β−γ)Ge+γDGe
−2θDGeEGe
]−1
·(α−pT)1 (10) 以上の結果の詳細な分析は,数値事例の解析を通じ て行う.
4. 数値解析
本章では,第3章(2), (3)で得られた解をいくつかの 例について適用し,数値計算結果を示す.数値計算Ex.
1 ˜Ex. 3で用いる社会的ネットワーク/交通ネットワー
クは,すべて次図1中の6種類/4種類中のいずれか の組合せである:
なお,いずれのケースにおいてもvii = 0 (i= 1,… ,5)は自明のものとして割愛している.また,各パラ メータの値にはすべての例において表1の値を用いた.
表–1 パラメータ値
y α β γ pT tλ(λ=a, ..., j) θ
5 1 10 0.5 0.1 0.1 0.3
(1)均衡と社会的最適
第3章のモデルに沿って,スターネットワーク型の Social Network(社会的ネットワーク)とレーストラッ ク型のTransportation Network(交通ネットワーク)か らなる社会(n= 5,下図2)について,均衡・社会的 最適下での交通-コミュニケーション需要および社会厚 生がそれぞれどのようになるかを調べる.これは5人 の主体1,…,5と5本の交通リンクa,…, eからなる経 済環境であり,交通ネットワークは対称である.この 下で交通需要が社会的ネットワーク上の位置の違いに よって決定する様子に着目する.
本稿の数値事例はいずれも,gij = 1であるような
(i, j)の組すべてについて,交通経路を最短経路に固定
し,最短経路が複数存在する場合は外生的に配分して いる.各ODペアに対して,利用する交通経路をあら かじめ定めたものに限るという仮定は非常に恣意的で あり,今後の課題の一つである.
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図–1 Social Networks/ Transportation Networks
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図–2 Ex. 1:Social Network/ Transportation Network
Nash均衡(*),混雑外部性のみ内部化した場合
(e1),コミュニケーションに関する外部性(戦略的補 完性)のみを内部化した場合(e2),社会的最適(O)
の各場合について,交通-コミュニケーション需要vij, vi および主体ごとの効用Uiは表2(p. 6)のようになった.
まず各場合の社会的厚生W の比較より,2種類の外 部効果それぞれの内部化による社会厚生の変化が確認
できる.e2(コミュニケーションに関する外部性のみを
内部化した場合)は均衡(*)と比較して厚生が改善し
表–2 Ex.1―各主体の交通需要と効用
*∑ e1 e2 O
jvij
∑
jvij
∑
jvij
∑
jvij
i j vij
(Ui ) vij
(Ui) vij
(Ui) vij
(Ui)
2 0.108 0.104 0.179 0.166
3 0.106 0.429 0.098 0.404 0.175 0.708 0.158 0.648
1 4 0.106 (5.25) 0.098 (5.25) 0.175 (5.25) 0.158 (5.26)
5 0.108 0.104 0.179 0.166
1 0.107 0.103 0.170 0.158
3 0.109 0.322 0.105 0.303 0.173 0.510 0.162 0.466
2 4 0 (5.18) 0 (5.17) 0 (5.18) 0 (5.19)
5 0.105 0.095 0.166 0.146
1 0.105 0.097 0.166 0.149
2 0.107 0.322 0.104 0.308 0.170 0.510 0.160 0.474
3 4 0.109 (5.19) 0.107 (5.18) 0.173 (5.20) 0.165 (5.20)
5 0 0 0 0
1 0.105 0.097 0.166 0.149
2 0 0.322 0 0.308 0 0.510 0 0.474
4 3 0.109 (5.19) 0.107 (5.18) 0.173 (5.20) 0.165 (5.20)
5 0.107 0.104 0.170 0.160
1 0.107 0.103 0.170 0.158
2 0.105 0.322 0.095 0.166 0.510 0.146 0.466
5 3 0 (5.18) 0 (5.17) 0 (5.18) 0 (5.19)
4 0.109 0.105 0.173 0.162
∑
ivi 1.715 1.628 2.746 2.529
(W =∑
Ui) ( 25.98 ) ( 25.96 ) ( 26.02) ( 26.05 )
ているが,e1(混雑外部性のみを内部化した場合)は,
社会厚生が*(均衡)よりも悪化している.これは,複 数存在する外部性の内の一方のみを内部化すると,か えって厚生が改悪する可能性を示唆している.次に主 体ごとの交通需要vi =∑
jvijを見ると,社会的ネット ワーク上で中心性の高い主体1が常に最多の交通行動 を行っており,個人的な効用も高水準であることがわ かる.
さらに主体1のコミュニケーション相手jに着目す ると,主体2と5,3と4は,それぞれ1から見て社会 的ネットワークでも交通ネットワークでも対称な位置 にあるが,2や5の立地点への交通は3や4への訪問よ りも少ない交通リンクを通過するだけで達成できるた め低コストである.その結果,v12 =v15 > v13 =v14 となっており,交通環境が交通需要の規定に影響して いることが確認できる.
(2)社会的ネットワーク構造の変化
交通ネットワークが固定のとき,社会的ネットワーク の構造が異なることが社会構成にどのように影響する のかを,以下のネットワーク例Ex. 2-1〜2.6について 調べる.これらは共通の交通ネットワーク(図3:TN
2)の下で相異なる社会的ネットワーク構造(図4:SN
1∼3,図5:SN 4∼6)の社会を表しており,すべて n=5,立地点は各主体に固有のものである(なお,Ex.
2-5はEx. 1と同一のネットワークである).Ex. 2-1
∼Ex. 2-3(各々SN 1∼SN 3に対応)はリンク数4本 が共通のネットワークであり,ネットワークの位相幾 何学的構造の相違と交通需要・厚生との相関を確認で きる.他方Ex. 2-4∼Ex. 2-6(SN 4∼SN 6に対応)
は,リンクの密度が段階的に高くなっていく過程にお ける社会厚生の変化を観察することができる.
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図–3 Ex. 2: Transportation Network(TN 2:共通)
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図–4 Ex.2-1∼Ex.2-3 Social Networks
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図–5 Ex.2-4∼Ex.2-6 Social Networks
Nash均衡下での交通-コミュニケーション需要vij∗ お よび各主体の効用Uiは表3,4(pp. 8, 9))のような結 果となった.
また,交通リンクごとの交通量について各パターン を比較する.これは式(11)より得られ,表5(p. 7)の ような結果を得る.
v[λ]=PGe·v (11)
表–5 Ex.3―各交通リンク上の交通量
Ex. 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5 2-6
a 0.186 0.181 0.364 0.189 0.637 0.748 b 0.186 0.182 0.180 0.189 0.428 0.748
c 0 0 0 0.189 0.219 0.748
d 0.186 0.183 0.180 0.189 0.428 0.748 e 0.186 0.364 0.364 0.189 0.637 0.748
∑tλ 0.744 0.911 1.09 0.947 2.35 3.74
各主体の交通-コミュニケーション需要を比較する.
Ex. 2-1において主体1, 2, 5は,それぞれ自身とつな がっている相手は2人ずつであるが,主体1のみが他 の2人よりも高い交通量水準を達成している.これは
各主体のBonacich中心性を反映した結果であり,交通
需要はBonacich中心性に類似した形で,主体間を結ぶ
リンクの重要度に応じてその和として表されることが 確認できる.Ex. 2-3においても,主体1は5主体の中 で最も交通量が大きく,その1との物理的な距離が遠 い主体ほど交通量・厚生がともに低下するといったよう に,中心性と交通量・効用の相関が見られる.Ex. 2-4
から2-5,さらに2-6への変化を見ると,新しくつなが
りを持つようになった相手との間に交通が発生しただ けでなく元々付き合いのあった相手との交通も増加し ている.これは相手に関する多様性選好とコミュニケー ションに関する戦略的補完性によって,コミュニケー ション相手の増加およびある相手とのコミュニケーショ ン量の限界的な増加が他の相手にとってもプラスに働 く,という相互作用の結果である.
コミュニケーション相手に着目し,相手ごとの交通 需要を比較すると,Ex. 2-3において,主体1とその他 の各主体との間のコミュニケーション量は,いずれも主
体1が相手の許を訪問する量よりも相手が主体1を訪 ねる量の方が多くなっており,vijとvjiの大小関係は 社会的ネットワークの中心性に従うとは限らない.Ex.
2-5における主体2∼5は,いずれも自身から物理的に 最も遠い相手への交通が少ない.Ex. 2-6においては全 主体の社会的ネットワーク・交通ネットワークとも条 件が対称であるが,地理的に離れていて単位交通量あ たりの交通費用が相対的に高価になる相手への交通需 要が少なくなっている.
また経済社会全体の交通量・厚生を比較すると,Ex.
2-1∼2-3の結果からは,社会的ネットワークの同一リ ンク数の下で位相幾何学的構造の違いに基づく結果の 差を確認することができる.Ex. 2-1 (SN 1: tandem
network)は,他の2種類のネットワークと比べて交通
量が多い結果となっているが,厚生WはEx. 2-2 (SN 2: tree network)の方が高水準である.またEx. 2-2と Ex. 2-3 (SN3: star network1)の違いは,社会的ネッ トワークにおける主体3の位置が異なる点だけである.
多様性選好から,主体3は主体2よりも主体1とコミュ ニケーションを行った方が高い満足度を達成すること が予測されるが,社会全体ではEx. 2-2との比較にお
いてEx. 2-3では厚生が低下している.これは,主体1
の交通量が増えすぎたために交通費用に基づく負の効 用が増したことによるものである.これらは,交通混 雑による費用の増大が負効用として計上された結果で あり,交通-コミュニケーション行動の増加が逆に厚生 を下げる可能性を示している.
一方Ex. 2-4 ∼Ex. 2-6について,順に社会的ネッ トワークが密になっていく変化に伴い,交通量・社会 的厚生はともに段階的に増加している.このことから,
ネットワークが密になり交通-コミュニケーション量が 増加することが,混雑による負効用を考慮した上でも 社会的に望ましいような状況が存在する,ということ が言える.
リンク上に載る交通量に関して,3パターンはいずれ も異なるリンク交通量の結果を得ており,特にEx. 2-1 とEx. 2-3とを比較したときのリンクaおよびリンクe の交通量の差が著しい.逆に,リンクb, dの交通量は 減少している.このように,交通環境に一切の変化が なくても社会的ネットワークが異なれば一部の交通リ ンク上の交通量が大きく変化することがあり,現実の 混雑現象の背景にもその交通リンクの一端となる都市 に立地する主体の中心性が関与していることが伺える.
以上のように,社会的ネットワークと交通ネットワー クの様々な組合せに対する主体間の交通需要および社 会的厚生の変化が,
• コミュニケーション相手に関する多様性選好
• コミュニケーション量に関する戦略的補完性
表–3 Ex.2-1∼2-3―各主体の交通需要と効用
Ex. 2-1∑ Ex. 2-2 Ex. 2-3
jvij
∑
jvij
∑
jvij
i j vij
(Ui) vij
(Ui) vij
(Ui)
2 0.0944 0.0888 0.0856
3 0 0.189 0 0.265 0.0839 0.339
1 4 0 (5.09) 0.0888 (5.16) 0.0839 (5.09)
5 0.0944 0.0870 0.0856
1 0.0920 0.0925 0.0982
3 0.0920 0.184 0.0906 0.183 0 0.0982
2 4 0 (5.09) 0 (5.08) 0 (5.05)
5 0 0 0
1 0 0 0.0963
2 0.0937 0.0937 0.0918 0.0918 0 0.0963
3 4 0 (5.04) 0 (5.04) 0 (5.04)
5 0 0 0
1 0 0.0942 0.0963
2 0 0.0937 0 0.0942 0 0.0963
4 3 0 (5.04) 0 (5.04) 0 (5.04)
5 0.0937 0 0
1 0.0920 0.0942 0.0982
2 0 0.184 0 0.0942 0 0.0982
5 3 0 (5.09) 0 (5.04) 0 (5.05)
4 0.0920 0 0
∑
ivi 0.744 0.728 0.728
(W=∑
Ui) (25.36) (25.41) (25.35)
• ネットワークとコストからなる交通環境 によって説明できることがわかる.
(3)社会的ネットワークと交通ネットワークの相互関係 前節(2)では,交通環境は同一の下で社会的ネット ワーク(SN)のみが変化した場合を調べたが,ここで は交通ネットワーク(TN)も同時に変化させ,厚生の 変化の度合いを比較する(図6, 7).SN, TNそれぞれ について,番号が同じネットワークの幾何学的構造は 一致している(1:tandem型,2:circle型,3:star型,
4:complete型).
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図–6 Ex. 3: Social Networks
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"図–7 Ex. 3: Transportation Networks
これは,社会的ネットワークの状態によって,交通 ネットワークの変化(例えば,現実社会における道路 の幅員増加といったような変化に対応するコスト低下 や,航空直行便の新設等に相当する交通リンクの追加)
の効率性が異なることを,社会的厚生の観点から確認 するものである.本節の例もすべて,交通経路は最短 経路に固定しているが,SNがcomplete型・TNがstar 型の組合せの場合に最短経路を複数もつ主体の組が存 在する.この場合は各経路に交通量を均等に配分して いる.
表–4 Ex.2-4∼2-6―各主体の交通需要と効用
Ex. 2-4∑ Ex. 2-5 Ex. 2-6
jvij
∑
jvij
∑
jvij
i j vij
(Ui) vij
(Ui) vij
(Ui )
2 0.0947 0.108 0.126
3 0 0.190 0.106 0.429 0.124 0.500
1 4 0 (5.09) 0.106 (5.33) 0.124 (5.33)
5 0.0947 0.108 0.126
1 0.0947 0.107 0.126
3 0.0947 0.190 0.109 0.322 0.126 0.500
2 4 0 (5.09) 0 (5.18) 0.124 (5.33)
5 0 0.105 0.124
1 0 0.105 0.124
2 0.0947 0.190 0.107 0.322 0.126 0.500 3 4 0.0947 (5.09) 0.109 (5.19) 0.126 (5.33)
5 0 0 0.124
1 0 0.105 0.124
2 0 0.190 0 0.322 0.124 0.500
4 3 0.0947 (5.09) 0.109 (5.19) 0.126 (5.33)
5 0.0947 0.107 0.126
1 0.0947 0.107 0.126
2 0 0.190 0.105 0.322 0.124 0.500
5 3 0 (5.09) 0 (5.18) 0.124 (5.33)
4 0.0947 0.109 0.126
∑
ivi 0.947 1.72 2.50
(W =∑
Ui) (25.47) (25.98) (26.67)
次のグラフ(図8)は,それぞれの社会的ネットワー ク(SN)の下で交通ネットワーク(TN)が変化した場合 の社会的厚生の変化を縦軸に取ったものである.
社会的ネットワークが疎なとき,社会的厚生は,交 通リンクが追加されても下がりはしないものの全く変 化しない,これは,一番疎な状態の交通ネットワーク
(tandem型)で既に,gij = 1であるすべての(i, j)の 組について,交通リンク1本で相互の立地点に到達でき る最短経路が確保されているため,追加的な交通リン クは不経済な存在になってしまうことを意味している.
すなわち既存の交通リンクのコスト低下は,SN, TNの 形によらず一定の便益をもたらすが,リンクの新設は,
場合によっては完全に無駄になってしまう可能性があ る(今回の数値事例では,SNとTNそれぞれの構造を 完全に対応させているので,その点が顕著に現れてい る).逆に社会的ネットワークがstar型(SN 3-3)や complete型(SN 3-4)のとき,交通ネットワークが密 になるに伴って厚生が大きく改善している.
この傾向から,密な社会的ネットワークは交通ネット ワークの充実化を求める,ということが言える.
また,グラフ9は交通ネットワークがそれぞれ固定 の場合に社会的ネットワークの構造変化によって厚生 が変化する様子を追ったもので,グラフ8を縦に見た ものに相当する.
社会的ネットワークが固定の下では交通整備の効果
は逓減しているが,これは同時に,社会的ネットワー クが密であればあるほど交通ネットワーク拡充の意義 が高まることを意味する.すなわち,交通整備は密な 社会的ネットワーク形成のインセンティブになると言 える.
ただし,一方のネットワークトポロジーの変化が起 こったときの他方のネットワークの反応がどのような ものであるか,すなわち交通ネットワークの稠密化が 社会的ネットワークを拡大したり,逆にインターネット やソーシャルメディアを通じて拡大した社会的ネット ワークが交通ネットワークの拡充を求めるというよう な前後関連については,現在のモデルでは表現できて おらず,2種類のネットワークの相互的成長の内部化は 今後の課題の一つである.
(4)まとめ
3, 4章で行ったモデル分析および3種類の数値事例 分析の結果,以下のような結論を得た.
(a) 社会的ネットワーク・交通ネットワークの両方を 形成する主体からなる経済において,交通需要は Nash均衡解として解析的に求められる.ある主体 の,社会的ネットワーク上でリンクを持つ別の主 体との交通-コミュニケーション需要は,Bonacich 中心性に近い形で,自分をoriginとするリンクに 関する重要度に応じて決定する.
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図–8 交通ネットワーク構造の変化に伴う社会的厚生の変動
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図–9 社会的ネットワーク構造の変化に伴う社会的厚生の変動
(b) 混雑外部性・戦略的補完性に基づくコミュニケー ションに関する外部性の2種類の外部性が存在す る.複数存在する外部効果の内一種類のみを内部化 した場合,かえって厚生が低下する可能性がある.
(c) 交通需要の多少は,社会的ネットワークの幾何学 的構造に大きく依存する.
2種類のネットワークの様々な組合せに対する交 通需要および社会的厚生の差は,1. コミュニケー ション相手に関する多様性選好,2. コミュニケー ションに関する戦略的補完性,3. ネットワークと コストからなる交通環境によって説明できる.
(d) 社会的ネットワークが密であれば,交通整備の追
加的な便益を増大させる.同時に,交通整備は密な 社会的ネットワーク形成のインセンティブになる.
5. おわりに
本研究では,社会的ネットワークと交通ネットワーク を同時に考慮することによって交通需要を本源的な動 機から捉えるモデルを構築し,解析的に解を得た.その 過程で,交通需要はBonacich中心性に類似する形で,
リンクの重要性のに応じて決定することを示した.数 値事例において,社会的ネットワークがOD交通需要 に多大に影響する過程を確認し,社会的ネットワーク の位相幾何学的構造の相違と交通需要・社会的厚生の 変化の関係を説明することができた.また,社会的ネッ トワークと交通ネットワークの組合せを様々に変化さ せることで,両者の間に相乗的な関係がある可能性を 示した.
本モデルを,複数ノードの地理的な立地点を同一に した枠組に拡張することで,地域間の交通需要を捉えら れる可能性がある.また,解の安定性の確認・Wardrop 均衡の概念の導入・立地選択行動の記述といったモデ ルの精緻化,両ネットワークの動的な相互関係の記述,
社会的ネットワークの成長の内生化も,今後の課題で ある.
SPACE INTERACTION MODEL
BASED ON THE THEORY OF SOCIAL NETWORKS
Toshimori Otazawa and Yuki OHIRA
Social networks affect activity-travel behavior. People and firms make trips in order to have the face- to-face communications with friends and business partners who are embedded in social networks. Their locations in geographical space also affect activity-travel behavior. Physical proximity enhances joint activeties of agents and increase frequency of traveling each other. In this paper, we incorporate both social and transportation networks into equilibrium model of social interactions and examine how activity- travel behavior depends on topology of these networks. By analyzing the model and conducting simple simulations, it is revealed that both networks greatly influences on agents’ travel demand.
参考文献
1) Helsley, R. W. and Zenou, Y. (2002).Social Networks and Interactions in Cities, CEPR Discussion Paper No. 8244.
2) 井料隆雅,岡崎有吏子,朝倉康夫(2010).社会ネットワー クとゲーム理論による交通需要のモデリング,土木計画 学研究発表会・講演集, 41, CD-ROM.
3) Ottaviano, G., Tabuchi, T. and Thisse, J. F. (2002).
Agglomeration and Trade Revisited, International Economic Review, Vol.43, No. 2, pp. 409-435.
4) 例えば,Jackson, M.O.(2008). Social and Economic Networks. Princeton: Princeton University Press.
(平成24 年7月31日 受付)