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国 鉄 分 割 民 営 化 時 に お け る 配 属 差 別 の 責 任

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(1)資. 料. 水戸動労事件鑑定意見書. 佐. 藤. 昭. き継がれず︑運輸大臣が基本計画で定める人数を各社が国. でに国労だけで三八地労委︸〇九件︶︑最初から直接︑裁判. が︵採用差別事件を含む地労委の救済命令は︑九二年末ま. これに対しても多くの地労委で救済命令が出されている. た︒. いは出向に出すとかの差別が行われ︑その後もこうした差 別的な転勤等がひんぱんに命じられるなどの状態が続い. 除等それと関係のない職場︑遠隔地の職場に配属し︑ある. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任. はしがき 一九八七年四月に︑日本国有鉄道改革法以下の諸法によ り︑国鉄のいわゆる分割民営化が行われた︒そのさいに︑. 鉄職員から募集し︑採用するものとされた︒そのためこの. 地裁判決︵国鉄水戸動力車事件︶は︑こうした事件につき︑. れた事例もあった︒一九九二︵平成四︶年三月一七日水戸. 転勤命令は無効としたが︑四月一日の配属については︑国. 所でその配属等の発令の無効︑地位確認請求の訴訟が行わ. た数は一八件にのぼり︑そのすべてにおいて救済命令がだ. 採用をめぐって大規模︑ろこつな採用差別が行われ︑これ. された︒だがそれだけでなく︑採用された者についても︑. 五三. 鉄の行った人事異動の内容を尊重すべきであるとして︑そ 国鉄分割民営化時における配属差別の責任. 運転部門等その専門の技術職場からはずして︑駅売店や掃. が不当労働行為として全国各地の地方労働委員会で争われ. 鉄道事業は新しい各社に引き継がれながら︑労働関係は引. 夫.

(2) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. の請求をしりぞけた︒この判決に対して双方が控訴︑事件. 五四. し︑国鉄と設立委員はいかなる関係にあったか︒. おいて事業を円滑に開始するために必要な﹂職員配属の準. 国鉄は︑設立委員のために︑﹁当該会杜がその成立の時に. 結論. この事件につき︑私は﹃審原告側の依頼をうけ︑鑑定意. 〇七四号︑同一コニ一号︶︒. は現在東京高裁民事八部に係属中である︵平成四年㈲一︑. 見書を作成した︒以下に掲げるのが︑その鑑定意見である︒. 備行為を行うべき関係にあった︒. 一般的関係. 由. 昭和六二年︵一九八七年︶四月に実施された 一. 理. 鑑定事項一 いわゆる国鉄改革における新会杜の職貝の配属に関し︑. いて不当労働行為が存在した場合︑その配属先にそのま. 年︵一九八七年︶四月以前に国鉄が行った人事異動にお. 時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行う. 関する法律﹂附則二条二項により︑﹁当該会社がその成立の. のほか︑﹁旅客鉄道株式会社および日本貨物鉄道株式会社に. 設立委員は︑国鉄改革法二三条による職員の採用手続き. 国鉄と設立委貝はいかなる関係にあったか︒. ま新会社成立時に採屠した職員を配属させた会社に︑不. 新会社に採用された職員について︑昭和六二. 当労働行為責任が生じるか否か︒. ことができる︒﹂ものとされている︒そして︑職員の配属先 があらかじめ決められていなければ︑労働契約の履行とし. 鑑定事項二. 鑑定事項三 前項の国鉄が行った人事異動における不当労. 本国有鉄道は︑日本国有鉄道の改革が国民生活及び国民経. 他方︑国鉄に関しては︑国鉄改革法二条二項により︑﹁日. するために必要な業務﹂としてなされたものである︒. に伴う当然の権限の行使ないしはこの﹁事業を円滑に開始. 設立委員による職員の配属先決定とその発令は︑職員採用. いて事業を円滑に開始する﹂ことはできない︒したがって. ての労務の提供も不可能であり︑﹁会社がその成立の時にお. 右の鑑定事項について︑良心に従い︑日本国憲法およ. 働行為の責任は︑新会社もまた負うべきであるか否か︒ び法律に基づき︑つぎのように鑑定いたします︒ 一九九二年一月五日. 昭和六二年︵一九八七年︶四月に実施され. たいわゆる国鉄改革における新会社の職員の配属に関. 鑑定事項一.

(3) の全力を挙げて︑この法律に定める方針に基づく施策が確. 済にとって緊急の課題であることを深く認識し︑その組織. び日本貨物鉄道株式会社に関する法律﹂附則二条二項によ. 採用に伴う当然の権限︑ないしは﹁旅客鉄道株式会社およ. 設立委員による職員の配属先決定とその発令は︑職員の. 疑いをいれない︒. 権限行使に伴う責任が︑すべて設立委員に帰属することも. る権限の行使としてなされたものである︒したがってその. 実かつ円滑に実施されるよう最大限の努力を尽くさなけれ ばならない︒﹂と規定されている︒. したがって︑この規定により国鉄は︑その最後の人事異. これに対して︑﹁設立委員は改革法二条二項の趣旨からさ. 動においては︑﹁国鉄改革が実施される直前の三月三一日ま. での国鉄の行う事業が滞りなく遂行されること﹂だけでは. を行ったか否かを問擬しうる立場になかった﹂︵一審判決六. の間において国鉄がなんらかの不当な意思を以て人事異動. 八丁︶という見解があるが︑それは以下述べるように︑法. れた人事異動の内容は尊重すべきであり︑新会社発足まで. 国鉄の事業が承継されるような体制を整備する﹂︵一審判決. 律と事実を混同し︑法律上の根拠なしに権限行使に伴う責. なく︑﹁国鉄改革が実施される三月三一日から四月一日にか. 二七丁︶ことはもちろん︑﹁我が国の基幹的輸送機関として. けて一切の列車運行に支障が出ないで︑円滑に新企業体に. 果たすべき機能を効果的に発揮させる﹂︵国鉄改革法一条︶. 任を否定する恣意的見解である︒. 配置を決定・発令しなければならず︑これに対して国鉄は︑. 体制のもとに﹁事業を円滑に開始するために必要な﹂人員. 送機関として果たすべき機能を効果的に発揮させる﹂経営. 当労働行為などがあれば労使関係が悪化し︑輸送の安全に. 二項の﹁趣旨に反して﹂行われる可能性もある︒そこに不. たのは当然である︒しかし事実としては︑国鉄改革法二条. 国鉄改革法二条二項の趣旨にそって行なわれるべきであっ. 第一に︑国鉄の行った人事異動が︑法律上の義務として. 経営体制の確立の準備として︑これを行う必要があった︒. 設立委員のその業務につき協力ないし代行し︑新会杜が﹁そ. となる︒従って設立委員は︑国鉄の行った人事異動を︑国. も悪影響を及ぼし︑国鉄改革の確実︑円滑な実施は不可能. いいかえれば設立委貝は︑新会社が﹁我が国の基幹的輸. の成立の時において事業を円滑に開始﹂するための準備を. 五五. ことはできない︒その人事異動が国鉄改革法二条二項の趣. 鉄改革法二条二項があるからといって︑そのまま尊重する. し︑あらかじめそれに適する人事異動を行っておくべき関. 二 設立委員の決定権限と責任. 係にあったのである︒. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(4) 五六. 正して現実の配属決定︑発令を行うべきことは当然である︒. 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 旨にそうものか︑これに反するものかをまず判断し︑これ. そのこと自体︑職員採用に伴う当然の権限ないしは﹁旅客. 設立委員は︑法の一般原則にしたがって権限行使に伴う責. かった場合︑特別の法規定による除外がされないかぎり︑. 附則二条二項による権限の行使である︒そしてそれをしな. 鉄道株式会社および日本貨物鉄道株式会社に関する法律﹂. に適切に対応する必要がある︒. その判断をぬきにして国鉄の行った人事異動の内容を尊 現実の行為を誤って混同するものである︒そして法治国家. 任や︑人事権濫用による法効果の発生等を避けることはで. 重せよというのは︑国鉄改革法二条二項の規定と︑国鉄の. どいうことのありえないことは︑あまりにも明らかである︒. 旨からされた人事異動の内容は尊重すべきであり︑新会社. また逆に︑かりにもし﹁設立委員は改革法二条二項の趣. きない︒. において︑不当労働行為となる違法行為を尊重すべきだな. 第二に︑新会社の職員の採用︵狭義︒この点について鑑 いて法の明文規定はない︒特別の規定のないかぎり︑採用. 定事項二を参照︶についてと違って︑その配属手続きにつ. 人事異動を行ったか否かを問擬しうる立場になかった﹂と. するならば︑その設立委貝と国鉄の関係は︑設立委員の人. 発足までの間において国鉄がなんらかの不当な意思を以て. 用者︶が行うべきことは当然である︒したがって国鉄の行. 事権を授権したにひとしく︑その国鉄のした行為の責任は︑. された職員の配属決定は︑労働契約において合意された範. った人事異動は︑国鉄改革法二条二項による国鉄の義務に. なければならない︒. 不当労働行為責任をふくめ当然設立委員に帰属するといわ. 囲内においては採用者︵使用者︶の権限として︑採用者︵使. 基づいて︑設立委員のなすべき職員の配属決定・発令のた. 新会社に採用された職員について︑昭和六. 令の権限を行使するに当たっては︑その準備過程において. まま新会社成立時に採用した職員を配属させた会社に︑. おいて不当労働行為が存在した場合︑その配属先にその. 二年︵︸九八七年︶四月以前に国鉄が行った人事異動に. 鑑定事項二. めの準備をし︑確実︑円滑な移行体制を作り上げようとす るものであるが︑新会社成立時の配属決定そのものではな いし︑設立委員のその決定権限を制約するものでもない︒. 不当労働行為などの違法行為が行われなかったか否かを精. 不当労働行為責任が生じるか否か︒. そうである限り︑設立委員が前記の職員の配属決定︑発. 査すべきこと︑そして違法行為があった場合にはそれを修.

(5) ったものである︒それが国鉄の不当労働行為による人事異. 社︵設立委員︶が自らの権限により︑その責任において行. 採用されることになったが配属先が未定の職員に対し︑会. 新会社成立時の職員の配属先の決定・発令は︑新会社に. 結論. 為︶と一体だと言ってよいからである︒そして︑現に会社. 業場所・職務への配属は︑法的には労働契約締結︵採用行. 知と配属通知が現実には分けて行われていても︑最初の就. 法的に引継ぎの根拠がなくなる︒あるいはむしろ︑採用通. 決定・発令が﹁当該承継法人がした行為﹂とされなければ︑. 国鉄から引き継いでの労働の開始ができない︒そしてその. の配属通知によって職員を勤務させており︑それ以外の配. も︑四月一日の設立時において︑三月に行われた設立委員. 動の結果をそのまま受け継いだものであれば︑会社︵設立 の責任において命じたということである︒前者が不当労働. 相当因果関係の存在. した行為﹂には︑会社がその設立の時において事業を円滑. この﹁職員の採用について︑当該承継法人の設立委員が. 当労働行為として禁止する.本件においてこの不当労働行. をもって・・これに対して不利益な取扱をすること﹂を不. ること・・若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故. 労働組合法七条一号は︑﹁労働者が労働組合の組合員であ. 一. の確立した先例︑学説に照らして否定できない︒. 不当労働行為となることは︑以下のべるように︑これまで. 行為責任を生じさせる︒そしてこの配属先の決定・発令が. 定・発令に不当労働行為があれば︑それは会社に不当労働. したがって︑その職員に対する設立委員の配属先の決. 属発令はしていない︒. 委員︶もまた︑国鉄の命じたのと同じ内容の配属を︑自ら 行為であれば︑後者もまた同じく不当労働行為としてその. 由. 責任を負うのは︑当然といわなければならない︒ 理. 新会社成立時の職員の配属先の決定・発令は︑設立委員 が行った︒そして︑﹁職員の採用について︑当該承継法人の. 設立委員がした行為﹂は︑国鉄改革法二三条五項により︑. に開始するために採用︵労働契約の締結︶と密接に関連し. は職員が国鉄で従事していた勤務箇所︑職名を機械的に新. 為の成立を否定する反対論の論拠は︑おそらく︑その配属. ﹁当該承継法人がした行為﹂とされる︒. て行う配属等を含むものと解しなければならない︒そうで. 五七. 会社の勤務箇所︑職名に読み替えたものであって︑組合所. なければ︑法の趣旨とする事業の円滑な開始が︑不可能と なる︒就業の場所︑従事する職務が決まっていなければ︑ 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(6) の証拠の一つとして︑いわゆる不当労働行為意思が問題と. 五八. されることがある︒それは︑不当労働行為意思があれば当. 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. きるだろう︒. それ以外の方法による認定を許さないという趣旨ではな. 然に相当因果関係の存在が認定されるという意味であり︑. 属等の﹁故をもって﹂したものではない︑ということに尽. だが︑その読み替えられた国鉄での勤務箇所︑職名自体. 程をみても︑人事異動における国鉄の不当労働行為意思︵差. そこでさらにこの観点から本件職員の配属決定・発令過. い︒. が組合所属等の﹁故をもって﹂なされたものである︒この. 前提に立つかぎり︑組合所属等の﹁故をもって﹂国鉄での. 務箇所︑職名への配属となったのであるから︑その過程を. いる︒設立委員は︑国鉄の不当労働行為意思による人事異. 別意思︶は︑設立委員による配属の決定・発令に直結して. 勤務箇所︑職名が決められ︑﹁それ故に﹂新会社でのその勤. 通してみれば︑組合所属等の﹁故をもって﹂の配属だとい. 動の内容をそのまま適切な人員配置として是認し︑設立委. うことになる︒. いいかえれば︑不利益な配属をうけた職員に︑組合所属. らの意思による行為として継続・完成させていった︒した. に基づく行為を適切なものとして︑自らの名における︑自. つまり設立委員は︑国鉄の不当労働行為意思︵差別意思︶. 貝の行為としてこれを発令したのだからである︒. ればそれを読み替えての不利益な配属もなかったはずであ. がってそれは︑設立委員の不当労働行為意思によるものと. れなかったはずであり︑そしてそのような人事異動がなけ. 等の事実がなければ︑国鉄による不利益な人事異動がなさ. いわゆる相当因果関係が存在する︒そしてこのような場合. して︑この点からも不当労働行為責任を︑会社に生じさせ. る︒つまり︑組合所属等の事実と不利益な配属との間には︑ には︑不利益な配属がその故をもってなされた︑あるいは︑. 設立委員自身の︑積極的不当労働行為意思も推認さ. ることは明らかだといわなければならない︒. 当時の状況は︑分割民営化に反対を続けていた労働者︵後. きたい︒. 設立委員の責任については︑さらに次の点を指摘してお. れる事情がある︒. 三. それを決定的動機としてなされたといってよく︑労働組合. 意思は︑設立委員︵会社︶の不当労働行為意思を形成. 配属決定・発令過程からみて︑国鉄の不当労働行為. 法七条一号違反が成立すると解すべきは当然である︒. 二 している︒. 不利益取扱における相当因果関係の存在を認定するため.

(7) に水戸動労を結成した者らをふくむ︶を敵視し︑人材活用. き︑総合的かつ公正に判断すること﹂というにすぎない︒. 関する実績等を︑日本国有鉄道における既存の資料に基づ. しかし﹁当社の業務にふさわしい者﹂といったところで︑. センターなどでそれらの者の﹁意識改革﹂をせまっており︑. その事実は一般にもひろく報道されていた︒. が示されない抽象的基準にとどまるならば︑その内容は︑. 判断者によって異なってしまう.団結権を保障する憲法や. かんじんの﹁どのような者がその業務にふさわしいのか﹂. 労働組合法︑参議院附帯決議等に忠実であるならば︑分割・. 加えて︑国鉄改革法案可決の際の参議院附帯決議では︑. 定方法については︑客観的かつ公正なものとするよう配慮. 民営化に賛成か反対か︑どのような運動方針をとる組合に. ﹁各旅客鉄道株式会社等における職員の採用基準および選. 別等が行われることのないよう特段の留意をすること﹂と. するとともに︑本人の希望を尊重し︑所属組合等による差. わしい者﹂か否かの判断に︑いっさい入れてはならないは. 所属しているのかなどは︑本来︑その﹁当社の業務にふさ. ずである︒だが設立委員は︑前述のようなこれに反する労. されていた︒このことは︑新会社に引き継がれる際に差別 している︒だから附帯決議は︑単に﹁客観的かつ公正なも. あるいは判断の際考慮に入れてはならない事項をいっさい. 務政策をとり続けていた国鉄に対して︑その具体的基準︑. がなされる危険性の存在が︑公知の事実であったことを示 のとするよう﹂というだけでは足らず︑その具体的内容と. 示すことなく︑抽象的な採用基準の具体化や︑それに基づ. して︑﹁所属組合等による差別等が行われることのないよう. 特段の留意をすること﹂と念を押していたのである︒. く選定を︑すべてその判断に一任してしまった︒これでは. しかも︑設立委員が判断資料にすべきものとしてあげて. それにもかかわらず設立委員は︑﹁所属組合等による差別. いる﹁日本国有鉄道における既存の資料﹂とは︑どういう. 障はなにもない︒. 作成の際に従うべき採用基準として設立委員が示したの. ものであったか︒国鉄が資料とした職員管理調書は︑決し. 国鉄による現実の名簿作成に︑差別が含まれないという保. は︑年令︑健康状態等のいわば形式的基準のほか︑実質的. て﹁客観的かつ公正なもの﹂ではなかった︒多くの問題が. 等が行われることのないよう﹂にするための︑採用の具体. なものとしては︑﹁日本国有鉄道在職中の状況からみて︑当. あるが︑二つの点だけを指摘しておこう︒. 的基準を︑なんら示すことがなかった︒国鉄が選定者名簿. いては︑職務に対する知識・技能及び適性︑日常の勤務に. 五九. 社の業務にふさわしい者であること︒なお勤務の状況につ. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(8) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 六〇. たことである︒それは︑動労が分割・民営化賛成に方針転. も違反するものであった︒. を判断資料とした国鉄の行為は実質的にこの労働基準法に. してなされたものだと主張するであろう︒しかしそれが正. 事項としていたことである︒もちろん国鉄当局は︑その処 分は正当な組合活動が理由ではなく︑不当な組合活動に対. 換をした以後の時期にあたり︑労働処分は国労ほかこれに. 一つは︑組合活動に起因するいわゆる労働処分をも特記. 当か不当かは︑見解の相違によって判断の対立する問題で. を名簿作成の資料とすることは︑まことに意図的であり︑. 反対の労働者に集中していた︒この時期の労働処分の記録. する活動等を理由とする差別をふくむのは当然であり︑そ. ず︑それに全面的によった採用通知を出した︒採用基準の. 組合差別等なく作成されたのか否かを確かめることさえせ. それなのに設立委員は︑国鉄の提出した名簿が具体的に. これらの者に対する差別意思が歴然としている︒. もう一つは︑その調書の記録が過去三年間に限られてい. はいかない︒それだけではない︒﹁所属組合等による差別等﹂. ある︒国鉄の判断だけを﹁客観的かつ公正﹂とするわけに というのは︑所属組合の方針︑指令に従った活動︑ないし. うでなければ︑その組合の団結活動を守ることはできない︒. 提示において不当労働行為を防止するに必要な措置をとら. 組合員として組合運動方針を正しい方向にむけていこうと. だから労働基準法は﹁使用者は︑予め第三者と謀り︑労. る差別等が行われることのないよう特段の留意をする﹂ど. 化︑それをあてはめての採用者の選定に︑﹁所属組合等によ. った︒同じく設立委員である住田正二氏が社長となった東. しかも︑設立委貝である杉浦喬也氏は︑国鉄総裁でもあ. った︒. ころか︑使用者として求められる当然の注意さえ払わなか. なかったというだけではない︒国鉄のした採用基準の具体. に秘密の記号を記入してはならない︵二二条三. 証明書. 働者の就業を妨げることを目的として︑労働者の・・労働 組合運動に関する通信をし︑又は第一項の証明書 使用 項︶として︑その違反に六か月以下の懲役または一〇万円 以下の罰金で臨んでいる︵一一九条一号︶︒正当な組合活動 組合運動に関する通信﹂等をすべて禁止しているのである︒. 命令一九八八二丁一六︑中労委命令一九八八・二丁七︑. 日本旅客鉄道株式会社において︑新宿車掌区事件︵都労委. についてだけでなく︑その正当不当を問うことなく﹁労働 これが労働組合法の不当労働行為禁止規定とあい応ずる規. 東京地裁判決一九九二・七・二七︶のような不当労働行為. 定であることは︑いうまでもあるまい︒職員となるべき者 の選定︑名簿作成︑提出にあたって︑労働者の労働処分歴.

(9) 五号九九〇頁︶︒. ある︵山岡内燃機事件︑ 最判一九五四・五二一八民集八巻. 前項の国鉄が行った人事異動における不. とき︑そこにはむしろ︑国鉄作成の名簿を分割民営化反対. か︒. 当労働行為の責任は︑新会社もまた負うべきであるか否. 鑑定事項三. 事件や︑その他これに類する行為が多発しているのをみる 組合所属者らを除外したものにさせ︑それに籍口してそれ 労働行為意思さえ推認しうるものである.. らの者を排除しようとする︑設立委員自身の積極的な不当. このことは︑採用された職員の配属に関しても︑同様で. 論. 一の︑自らの行った配属につき不当労働行為責任を負う︒. 結. ある︒すくなくとも使用者として労働者を雇い入れ︑採用. したがって︑本問に対する解答のいかんは︑実際上それほ. 者全員の人員配置を決める以上︑そこに不当労働行為であ. ど大きな影響をもつものではない︒しかし理論的には︑使. 前述のように新会社は︑いずれにせよ国鉄が行ったと同. のに︑こういった不当労働行為の蓋然性が予想される︑国. けるための十分な注意が必要なことは当然である︒それな. 用者としての実質的同一性という点から︑新会社もまた︑. る組合所属等による差別があってはならないし︑それを避. 鉄の行った人事異動による配属の無条件の承継を﹁最良の. その不当労働行為責任を負う︒あるいはさらにその人事異. この配属差別は︑労働組合法七条三号違反の不当労. 方法﹂と考えた設立委員は︑自らその不当労働行為を良し. 四. の禁止する︑労働組合の運営に対する支配介入にもあたる︒. 悪影響を及ぼしたことは明白であり︑労働組合法七条三号. 一である場合︑一つの企業の行った不当労働行為について. 法人格を異にする二つの企業が使用者として実質的に同. 一. 理. 実質的同一性という点からの責任. 由. 関係の点からしても︑同様の結論に達しうる︒. 動に関する国鉄と設立委員の国鉄改革関連諸法による法律. としたものにほかならない︒ 働行為ともなる︒. そしてこの点では︑﹁組合運営に対し悪影響を及ぼした事実. は︑他の企業もまたその責任を負う︒これは先例および学. こうした配属差別が︑差別をうけた組合の団結に対して. がある以上︑・・主観的認識ないし目的がなかったとして. 六一. も﹂七条三号違反は成立するとするのが︑最高裁の判例で 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(10) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 六二. 一日の職員の配属先を決定し︑通知している︒. しかしさらに︑四月一日の国鉄からの事業の引継ぎが円. 説において確立した原則である︵実質的同一性の法理︶︒そ. うでなければ偽装解散等の形式をとることにより︑不当労. のまま新会社に引継げるように配置されていることが必要. である︒そしてそのためには︑設立委員としてつぎの二つ. 滑に行われるためには︑それ以前の国鉄の人員体制が︑そ. の方法のうちいずれかをとることが必要となり︑また実際. 働行為による団結権侵害が︑使用者の思いのままとなって 本件の場合︑国鉄とその事業を分割承継した新会社間に. しまうからである︒. おいては︑実質的同一性が認められる︒新会社は︑﹁分割・. にそれを行ったと解される︒. 設立委員の権限に属するが︑設立委員自身でそれを行うの. 一つは︑本来︑四月一日の職員の配属先を決定するのは. 民営化により︑国鉄とは法人格を異にしたとはいえ︑事業 からみて︑国鉄と実質的同一性を有するものといわなけれ. 内容︑資産︑施設︑役職員︑労働条件の承継ないし継続等. の行使としてその事務の代行を包括的に国鉄に依頼すると. は︑実際上不可能である︒そこで︑やはり前記条項の権限. ともに︑設立委員のために予めその配属先に人事異動を行. ばならない﹂︵採用差別事件︑北海道地労委一九八九・一・. っておいてもらうことである︒そして国鉄は︑国鉄改革法. 一二︶といった判断が︑各地労委において一致してとられ. ているところである︒したがって︑このことが否定されな. 二条二項により︑﹁日本国有鉄道は︑日本国有鉄道の改革が. 国民生活及び国民経済にとって緊急の課題であることを深. い限りは︑国鉄の行った人事異動について新会社もまた︑. 二 国鉄との法律関係からする責任の帰属. く認識し︑その組織の全力を挙げて︑この法律に定める方. その不当労働行為責任を負う︒. 鑑定事項一で前述したように︑職貝の配属先があらかじ. 努力を尽くさなければならない︒﹂義務がある︒その関係か. 針に基づく施策が確実かつ円滑に実施されるよう最大限の. らすると︑明示か暗黙かは不明であるにせよ︑設立委員に. め決められていなければ︑労働契約の履行としての労務の 円滑に開始する﹂ことはできない︒そのために設立委員は︑. たとみるべきである︒この場合︑その人事異動は︑設立委. よるこうした依頼があった場合には︑国鉄はそれに同意し. 提供も不可能であり︑﹁会社がその成立の時において事業を. 職員採用に伴う当然の権限の行使として︑ないしは﹁旅客. 員のために︑設立委員の依頼により行った行為であるから︑. 鉄道株式会社および日本貨物鉄道株式会社に関する法律﹂ 附則一一条二項により︑会社成立前の三月一六日以降に四月.

(11) 付論. もう一つは︑設立委員が前記条項の権限の行使として国. が提出された︒この意見書は︑結論的に新会社の責任を否. いて︑平成元年六月三〇日付けの園部逸夫氏の鑑定意見書. 第一審乙第三〇号証として︑四点にわたる鑑定事項につ. 園部逸夫氏の鑑定意見書における主張︵反対論︶. 鉄から配属に関する人事権の委譲を受け︑そのような人事. について. 異動を行っておくことである︒設立委員からこうした委譲. として行政法の観点から﹂とのべているが︑実は﹁もっぱ. 定するものとなっている︒しかしそれは︑園部氏自ら︑﹁主. 帰属する︒. それにともなう不当労働行為責任は︑設立委貝︵会社︶に. 要請があった場合には︑それに対する国鉄の承諾により︑. ら自己の行政法理論の観点から﹂といったほうが正確と思. 両当事者間において権限の委譲が行われたと考えられる︒. しかしこの場合でも︑その人員配置を実際に設立委員自身. に︑憲法や労働法との関連をなんら考慮することなく︑ま. た条文の文言さえ無視して国鉄改革法二三条の解釈論をの. われる︒つまり︑問題は不当労働行為責任の有無であるの. べたものである︒. が適切に行うことは不可能である︒そこで︑そのための実. 日の入事異動はこのようなものとして行われることとな. 式がとられたとみるべきである︒そうした場合︑三月一〇. 意見書中に一箇所︑﹁このように解することによって国鉄 改革法二三条が憲法二八条違反を問われる余地はないと見. 際上の事務は︑やはり包括的に国鉄に代行させるという方. り︑したがってその場合にも︑前者の場合と同様に︑その. り︑理由も全く述べられていない︒いわば︑新会社に責任. 人事異動における不当労働行為の責任は︑これを国鉄に代. こうして︑いずれの場合においても︑その人事異動にお. はないという結論にあう︑氏からみての行政法論を︑それ. るべきである﹂という言葉はあるが︑それだけのことであ. ける不当労働行為責任は︑設立委員︵会杜︶に帰属すると. や︑労働法をも含む我が国の全法秩序の観点からの判断と. 行させた設立委貝︵会社︶に帰属する︒. いうことである︒あるいは結局同じことであるが︑こうし た具体的依頼の有無を問わず︑国鉄改革法二条二項が︑配. しては︑到底受け入れがたいものである︒. 六三. り︑新会社がその成立時に職員を配属した行為における不. またその鑑定事項は︑本鑑定意見書のそれと異なってお. として孤立させ演繹するにとどまる︒憲法のもと︑行政法. 属に関しても︑国鉄に設立委員の代行を命じていると言っ てもよい︒. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(12) ﹁採用に関する設立委員の権限﹂を行使するにつき︑不当. 六四. 当労働行為責任の有無を論ずるものではない︒しかし一審. た︒この場合︑その採用通知の﹁効果﹂が新会社に帰属す. 労働行為として禁止された差別を行い︑その権限を濫用し. 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 判決には︑一部その鑑定意見書とおなじ文言を用いている. 一 設立委員は何をなしたか. 連で︑権限の行使による効果の帰属を認めながら︑責任に. は︑使用者権限の行使に伴う責任である︒この規定との関. ることは︑だれも争っていない︒しかし不当労働行為とし ての差別待遇禁止︵労働組合法七条一号︶が定めているの. 箇所もあるので︑以下園部意見書の各論点につきそれが維. 持できない理由を述べることにより︑私の意見との関係を. 園部意見は︑﹁設立委員による社員採用手続の法的性格に. ついてこれを否定するには︑それなりの合理的根拠と︑そ. 明瞭にしておきたい︒. ついて﹂問われた鑑定事項第一で︑﹁採用に関する設立委員. 的に解﹂するのは︑有効な法体系の一部を︑恣意的に無効. れに基づく法文上の根拠を必要とする︒それなしに﹁限定. とするに等しい︒改革法は︑そのような限定︑不当労働行. の権限は︑特に国鉄改革法二三条によって付与されたもの. 定める新会社の採用に関する設立委員の行為及びこれに対. 効果の帰属にとどまらず︑﹁設立委員がした行為﹂が﹁当該. 為規定適用除外の根拠を示していない︒むしろ意思表示の. である︒そして︑同条第五項は︑二三条一項ないし三項に. する意思表示につき︑その効果を新会社に帰属させること. が示すところである︒従って︑その行為が採用差別という. 承継法人がした行為﹂とされることも︑⁝二条五項の明文. を明確にするための特別規定である︒従って︑ここにいう ﹁設立委員がした行為﹂又は﹁設立委員に対してなされた. 不当労働行為であれば︑それが﹁当該承継法人がした行為﹂. 行為﹂とは︑これを右のように限定的に解さざるをえず︑. 設立委員の採用に係る作為及び不作為のすべてのものが含. も︑文言から当然のことといわなければならない︒. として︑その不当労働行為責任が承継法人に帰属すること. この労働組合法の定める責任を排除する規定はないし︑. まれるという解釈を容れる余地はないというべきである︒﹂. だが︑設立委員が﹁職員の採用について﹂何をしたかと. のような規定を置くとすれば︑憲法二八条の団結権保障に. またそのようなことをすべき合理的根拠もない︒かりにそ. とする︒. いえば︑採用差別事件が争われた各地労委すべての一致し. 反する違憲の立法となる︒またかりに︑二三条五項の明文. た認定によると︑差別的な採用通知︵採用差別︶をしたの である︒つまり︑﹁国鉄改革法二三条によって付与された﹂.

(13) らないことは︑憲法秩序のもと︑事柄の性質上明らかであ. がなかったとしても︑JRの職員選定︑採用手続に差別が. ぜられた電力会社分割に関する事案の裁判例の判旨とその. 関するこのような結論は︑本件におけると同様の措置が講. 2.園部意見は︑前引箇所に続けて︑﹁︵名簿不記載者に. の承継﹂の問題であって︑新会社による﹁採用通知﹂の問. 第一に︑電力会社事件は︑﹁雇用契約上の雇用主たる地位. 本件と事案も結論も︑全く違っている︒. 高裁判決により確定した︶︒﹂と述べているが︑この事件は. 判例タイムズニ五三号二二一頁参照︶︒なお︑同判決は︑最. 趣旨を同じくする︵東京地裁昭和四五年六月三〇日判決︑. ある限り︑JRがその不当労働行為責任を負わなければな. る︒. 一一差別名簿による採用通知の責任はどうなるのか ー.鑑定事項第二は︑﹁採用候補者選定に係る日本国有鉄. 道及び右会杜設立委員の法的関係について﹂ということで は︑この要件︵名簿に記載されていること︶を充足してい. ある︒この点につき園部意見は︑﹁新会社の設立委員として. 題ではない︒. 得するに至ったものと認めるに足り﹂ない︑という結論で. 第二に︑同事件は︑﹁原告らが被告の従業員たる地位を取. ない者に対して採用通知を発することはできなかったと解 記載された国鉄職員については︑現実にはすべて採用通知. あり︑それが不利益取扱かどうか︑といったことは︑まっ. される︒また︑設立委員は︑国鉄が選定し作成した名簿に を発しているとされているのであるから︑その限りにおい. たく判断されていない︒. 3.園部意見はまた︑国鉄と設立委員との関係について︑. て︑設立委員が採用について特定の者に対し何らか不利益 な取扱をしたと判断する余地はないと見るべきであろう﹂. どまる﹂とし︑﹁法律的に考察すれば︑﹃履行補助﹄とは︑. 説明上の便宜として用いられたものとして理解しうるにと. ﹃代行﹄というような表現も使用されているが︑これらは︑. ﹁法案審議の過程において﹃履行補助﹄︑﹃準委任﹄ないし. なかったといえる︒けれども︑﹁職員の募集﹂に対し応募の. しかし︑なるほど名簿に記載された者の間では︑差別は. とヤ㌧う の. 意思を表示した国鉄職員の間で︑差別名簿が作られ︑それ. を有する者の選任︑指揮︑監督等を受けて事実行為を行う. 通常︑当該行為に関する自らの権限をなんら有せず︑これ. 六五. 場合をいうのであるし︑また︑﹃準委任﹄というためには︑. に基づいて採用通知がされたとしたら︑同じく応募しなが ったことは︑否定のしようがないではないか︒. ら︑名簿に記載されなかった者を採用について不利益に扱. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(14) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 六六. われなければならない︒それは﹁履行補助﹂者︑﹁準委任﹂. とすれば︑これらの概念に共通する﹁法律的性格﹂こそ問. を受けた者︑ないし﹁代行﹂者の行為が︑本人の行為と同. 本来︑委任者が当該行為に関する権限を有することが前提 しうる権限を付与された﹃代行﹄者が︑独自の判断に基づ. ﹁の責任を生じさせるということである︒つまり︑﹁国鉄が. とされるし︑さらに︑﹃代行﹄という場合は︑当該行為をな. いてこれを行い︑その責任は当然に右代行者が負うことに. としても︑それは︑法律上設立委員の示した﹁採用の基準﹂. に従った範囲内のことであるし︑またその選定行為の責任. 候補者選定行為について裁量権を行使しうる地位にある﹂. は︑設立委員自身の行為と同一の責任を生じさせるという. なる︵取締役と取締役代行者との関係を考えれば容易に首 補助﹄︑﹃準委任﹄ないし﹃代行﹄等は同一の法律的性格を. 肯しうることであろう︒︶ことを考えれば︑そもそも﹃履行. 有するものではなく︑国鉄と設立委員との法的関係を法律. 余地のないことからすれば︑﹂法律的に設立委員がその権限. 上国鉄の専権に属し︑設立委員の権限に由来すると解する. 4.園部意見は︑﹁採用候補者の選定は︑前記の通り規定. ことである︒. 設立委員の権限に由来すると解する余地のないことからす. 用候補者の選定は︑前記の通り規定上国鉄の専権に属し︑. 的に解明しているものとはいえないからである︒むしろ採. れば︑右説明は︑国鉄が候補者選定行為について裁量権を. のようである︒しかし︑改革法という特別法がなかったと. したら︑一般に職員の採用︑したがってその人員の選定が. の行使を国鉄に代行させることはありえない︑と考えるか. 械的に従う地位にあり︑または設立委員が国鉄を指揮監督. だから︑園部意見が認めるように︑﹁国鉄改革当時の状況を. 会社の固有の権利に属することは︑いうまでもあるまい︒. 選定行為につき︑国鉄が設立委員の提示した採用基準に機 し︑名簿作成の是非を論ずる地位にあることを意味するも. 行使しうる地位にあることに着目した概念設定にすぎず︑. のではない﹂とい う ︒. 鉄改革法二三条二項は︑これを明確に国鉄の権限と責任に. 用手続を進めることはおよそ期待しえないところから︑国. 帰せしめたもの﹂︵二二︑一四頁︶だとすれば︑改革法自身. 考えれば︑設立委員が短期間に多数の社員を選定して︑採. 行為によるのと同一の責任を︑代行者にではなく会社に生. が︑採用行為にかくべからざる採用候補者選定の代行を国. しかしこの議論は︑恣意的なものにすぎないし︑明確な. じさせるものである︒そして︑﹁履行補助﹂︑﹁準委任﹂ない. 誤りも含んでいる︒取締役代行者の代行行為は︑取締役の. し﹁代行﹂等が﹁説明上の便宜として用いられたもの﹂だ.

(15) のではない︒しかしそれが代行行為であるかぎり︑新会社. 鉄に命じたもの︑と解すべきであろう︒従って︑もとより 名簿作成につき︑国鉄自身の不当労働行為責任が消えるも. かどうか︑事実により質すべきであったのに︑それをせず. を聞き︑それを了承して. する法律﹂附則二条二項によりあたえられた権限の行使で. に. 採用通知を出している︒そのことによる差別の責任. 組合所属等による差別がない. ある.現に設立委員は︑提出された名簿につき国鉄の説明. もまた同一の責任を負うというのが︑この法律の帰結であ る︒. 差別名簿作成はだれの責任か. .を会社が負うべきことは︑なおさら明白ではないか︒. ー.鑑定事項第三は︑﹁採用候補者名簿作成行為に関する. 三. そして︑﹁設立委員が短期間に多数の社員を選定して︑採 用手続を進めることはおよそ期待しえない﹂という事情は︑. となるべき者の選定と名簿作成が︑国鉄の﹁専権として規. 責任の帰属について﹂問うものである︒園部意見は︑職員. 実は国鉄と承継会杜が︑実質的に同一であるという事実に っても︑使用者として同一の責任を負うというのが︑労働. 定されている﹂ということから︑﹁従って︑国鉄の採用候補. 由来する︒この場合︑法形式上︑両者が別個の法人格をも 法の実務上︑理論上︑確立した先例︑原則である︒改革法. 法的実体を同一にする事業団にぢいてその責任を負う余地. 者名簿作成に関する諸般の行為について︑国鉄及びこれと. 5.また園部意見は︑﹁新会社の設立委貝による採用行為. があるか否かはともかくとして︑新会社は何らの責任を負. 二三条の構造は︑この原則に照応するものである. が︑新会社の自主的判断による新規の採用である﹂︵一五頁︶. うものではないと解する﹂という︒. 鉄︵清算事業団︶が不当労働行為責任を負うべきことは︑. この点では︑先にのべたように︑差別名簿作成につき国. ということを認めている.それならば︑名簿作成が自己の. 知を出すべきことは︑当然ではないか︒その確認︑そして. であるから︑設立委貝︵会杜︶もまた︑責任を免れること. 当然である︒だがその行為は︑法律の規定による代行行為. 示した基準に従ったものか否かを確認したうえで︑採用通. じ﹂て﹁職貝の募集を行う﹂ことに伴う当然の権限︑ない. 必要な場合その修正をもとめることは︑﹁日本国有鉄道を通. 2.のみならず︑設立委員は採用の基準を示す際︑﹁当社. はできない︒. 六七. の業務にふさわしい者﹂という抽象的基準しか示さず︑そ. しは設立委員は﹁当該会社がその成立の時において事業を いう︑﹁旅客鉄道株式会社および日本貨物鉄道株式会社に関. 円滑に開始するために必要な業務を行うことができる︒﹂と. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任.

(16) の具体的内容として﹁組合所属等により差別が行われるこ. しえないものと解する︒﹂﹁設立委員は︑新会社発足までの. 定意見に述べたのと同じ理由により︑新会社にその責を帰. 六八. とのないよう﹂にするための留意をしなかった点において. 行ったか否かを設立委員が問擬しうる立場になかったこと. 間において国鉄が何らかの不当な意思をもって人事異動を. 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. も︑差別名簿作成の不当労働行為に︑故意またはこれに準. その責任を新会社に帰すべき根拠は見当たらないというべ. も明らかである︒所詮︑国鉄による前記人事異動について. ずる重大な過失の責任を負うといわなければならない︒ 3.付言すると︑﹁国労組合員らを︑昭和六二年四月一日. らない﹂という労働委員会の救済命令が出される決定的根. 付けで社員として採用したものとして取り扱わなければな. 定的問題は︑﹁日本国有鉄道が昭和六二年三月に行った人事. 批判したので︑再論は略する︒ただ︑本件の配属差別で決. ﹁鑑定事項第三に関する鑑定意見﹂については︑すでに. きである︒﹂という︒. たことにある︒そしてかりに︑そのさいの差別意思を問題. 拠は︑設立委員が︑差別名簿に基づいて︑採用差別を行っ. にするにしても︑職員となるべき者の選定は︑設立委員に. で設立委員の行った配属決定︑発令における差別の責任で. 異動﹂そのものの責任ではなく︑それをそのまま引き継い. ある︒したがって︑設立委員は︑﹁日本国有鉄道が昭和六二. よるその採用者決定のための意思形成に︑不可欠な有機的 その採用行為そのものを不当労働行為とするに十分な差別. して﹂︑自らの職員の配属決定︑発令にあたっては︑﹁新会. 年三月に行った人事異動﹂についての責任は﹁ともかくと. 一部をなしている︒こうした採用過程における差別意思は︑. して︑﹁採用候補者選定及びその名簿の作成自体について. 意思だということである︒この採用行為との関連をぬきに. て人事異動を行ったか否かを問擬し﹂︑国鉄の行った人事異. 社発足までの間において国鉄が何らかの不当な意思をもっ. 追記. ばならなかったことを指摘しておく︒. 動の内容をそのまま引き継いでよいか否かを判断しなけれ. は︑設立委員の意思を介在させる余地がない﹂︵一六頁︶と. ない︒. 配属差別の責任. いってみても︑それは設立委員の責任排除の理由とはなら. 四. た人事異動と右会社の責任の有無について﹂ということで. 本鑑定事項に関連して︑総体的には︑佐藤昭夫著﹁国家的不. 鑑定事項第四は︑﹁日本国有鉄道が昭和六二年三月に行っ. ある︒この点につき園部意見は︑﹁鑑定事項第三に関する鑑.

(17) 以上. 国鉄民営化批判の法理﹂ ︵早稲田大学出版. 部︑一九九〇年︶ をご参照いただきたい︒. 当労働行為論. 国鉄分割民営化時における配属差別の責任. 六九.

(18)

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