氏
名 授 与 した 学 位 専攻分野の名称 学位記授与番号 学位授与の 日付 学位授与の要件
堀 ノ内 鼻弓 博 士
薬学
博 甲第
4537号 平成
24年
3月
23日医歯薬 学総合研 究科創薬 生命科学専攻 ( 学位規則第
5条第
1項該 当)
学位論文の題 目 化学物質 の光毒性 ・光遺伝毒性試験 にお ける培養 ヒ トケ ラチ ノサイ ト の有用性
論 文 審 査 委 員 教授 宮地 弘幸 教授 三好 伸一 准教授 有元 佐賀恵
学位論文 内容の要 旨
この研 究の主 な 目的 は、 ヒ ト‑ の外挿性 が高い と考 え られ る培養 ヒ ト細胞 で あ り、通常光 に さらされ てお り光 に対す る機 能 が発現 してい る と思 われ るケ ラチ ノサイ ト由来 の培養細 胞 であ る
NCTC2544細胞 が光遺伝 毒性評価 に使用可能 で あるか ど うか を検討す ることである。 また、物性 か ら光毒性 や光遺伝毒性 を誘発 しない と考 え られ るに もかかわ らず は乳類 培養細胞 において光遺伝毒性 を誘発す る化学物質 を
NCTC2544細胞 で評価 し、物性 か ら予測 され る結果 を得 ることがで きるか ど うか も検討 した。
細胞 を光遺伝 毒性物質、光毒性物 質 、光線力学療法治療薬 あるいは光染色 体異常偽 陽性物 質 で前処理 し、 太陽光照射装置で照射量が
5∫/cm2となるよ う50 分 間光照射す るか、同 じ時 間暗所 に静置 したO細胞 を洗浄 した後 、新鮮培 地で
1.5‑2細胞周期 の間細胞 を培養 した。培養終 了時 、スライ ド標本 を作製 し、小核形成 の有無 を顕微鏡で観 察 した。
既知 の光遺伝 毒性物質であ る
81methoxypsoraJenは光照射条件 下で小核 を有す る細胞 を誘発したが、非照射条件 下では小核 を有す る細胞 を誘発 しなか ったO従 って、
NCTC2544細胞 は光 遺伝 毒性評価 に利用 可能 な細胞 であ ると考 え、他 の化学物質 の光遺伝 毒性誘発性 を評価す
るために用いた。
既知 の光毒性物質 である61
methylcoumarin、3,31,4',
51tetraChlorosalicylanilide及 び
protoporphyrin Ix2Sodium sal tは照射条件 下で小核 を有す る細胞 を誘発 したが、非照射条件 下では小核 を有 す る細胞 を誘発 しなかった こ とか ら、 これ らの光毒性物質 は光遺伝 毒性誘 発性 を有す るこ とが確静 され た. 光毒性及 び光遺伝 毒性 に関す るメカニズムは同様 であ る と予測 され てい るため、今 回の結果 は予測 され た もので あった。
光線力学療法治療薬 として用い られ る
tetrabenzoporphine及び
51am inolevulinjcacidは光毒性を示 した。 しか し、 これ らの物質 は照射条件 下及 び非照射 条件下 のいずれ において も小核 を有す る細胞 を誘発 しなか った。この ことか ら、 これ らの物質 は光遺伝毒性誘発性 を持たな い ことが示 され、化学物質 に よって は光毒性 と光遺伝 毒性 の作用機 序 に違 いがある可能性 が考 え られ た。
290‑700n
m に光吸収 をもたない光染色体異常偽陽性物質 の中で
cycloheximdeとdisulfbtonは光照射条件 下及び非照射 条件 下 のいずれ において も小核 を有す る細胞 を誘発 しなかった。
残 り一つの酸化亜鉛 は照射 条件 下で小核 を有す る細胞 を誘発 し、非照射 条件下 で も程度 は 軽い ものの小核 を有す る細胞 を誘 発 した。
これ らの
9化学物質 の光遺伝毒性試験の結果か ら、
NCTC2544細胞 は化学物質の光遺伝毒性
誘発性 を評価す る適切 な試験 系である と考 えられ る。
論文審査結 果 の要 旨
本論文は,培養 ヒ トケラチ ノサイ ト由来培養細胞NCTC2544細胞が,光遺伝毒性評価 に使用 可能であるか どうかを検討 した ものである。従来光毒性試験お よび光遺伝毒性試験にはげっ歯類 由来培養細胞が用い られてお り,結果の外挿 には課題 があったQ実際従来法では物性か ら光毒性 や光遺伝毒性 を誘発 しない と考 え られ るに もかかわ らず,ほ乳類培養細胞において光遺伝毒性 を 誘発す る化学物質が存在す る。NCTC2544細胞 で評価 し,物性か ら予測 され る結果 を得 ることが できるか どうかを研究 した ものである。
細胞 を光遺伝毒性物質,光毒性物質,光線力学療法治療薬,光染色体異常偽陽性物質で前処理 し,太陽光照射装置で照射量5∫/cm2となるよ う一定時間光照射 し,細胞 を洗浄後新鮮培地で1.5
‑2細胞周期間細胞 を培養 した。培養終了時ス ライ ド標本 を作製 し,小核形成の有無 を顕微鏡で 観察 した。その結果,既知光毒性物質で光遺伝毒性物質である8‑MOPは光毒性 を示 し, さらに 光照射条件下で小核 を有す る細胞 を誘発 したが,非照射条件下では小核 を有す る細胞 を誘発 しな いことか ら,NCTC2544細胞が光遺伝毒性評価 に利用可能な細胞であることをまず明 らかに した。
次 に3種類の既知光毒性物質がNCTC2544細胞で も光毒性 を誘発す ることを確認 した。 さらに これ らの物質は照射条件下で小核 を有す る細胞 を誘発 したが,非照射条件下では小核 を有す る細 胞 を誘発 しなかった ことか ら, これ らの光毒性物質は光遺伝毒性誘発性 を有す ることを NCTC2544細胞で確認で きた。これ らの結果 を踏 まえ,化学物質 によっては光毒性 と光遺伝毒性 の作用機序に違いがある可能性 を提示 した。一方 これ まで,光染色体異常偽陽性物質 と認識 され た化合物の内cycloheximdeとdisulfbtonはNCTC2544細胞 においても光毒性 を示 さず,さらに光 照射条件下及び非照射条件下のいずれ において も小核 を有す る細胞 を誘発 しないことを明 らか に した。他の光染色体異常偽陽性物質である酸化亜鉛 も光毒性は示 さなかったが,照射条件下で 小核 を有す る細胞 を誘発 し非照射条件下で も程度は軽い ものの小核 を有す る細胞 を誘発 した こ
とか ら弱い光遺伝毒性が認 められ ることを明 らかに した。これ らの9化学物質 を用いた光遺伝毒 性実験 の結果か ら,NCTC2544細胞 は化学物質の光遺伝毒性誘発性 を評価す る適切な試験系であ
ることを結論付 けている。
口頭試 問は主査 ・副査の三人で実施 した。前回 (昨年10月時点)の 口頭試 問では補 うべき内 容 として.1)何故 ヒ ト由来ケラチノサイ トは動物細胞 と異なる結果 を示 したのかの考察。2)光刺 激で ヒ ト細胞 とげっ歯類細胞で,どんな遺伝子発現プロファイル に変化 を来すか ?3)そのメカニ ズム ?等エ ビデ ンスに基づいたNCTC2544細胞 の,光遺伝毒性試験系‑の提案 とい う本来 当該 研究で 目指す ゴール を設定 した。今回の 口頭試 問では,実験的エ ビデ ンスの追加 はな されていな いが前回以上に基礎的考察な らびに先行技術 に対す る記述 を加 え,また基礎実験での容量設定に 至った予備的な実験結果の開示 を追加 している。また今後の展望 として,NCTC2544細胞の有用 性 をよ り明確 に示すための指針 に関 して も新たに記述 されている。博士論文 としての完成度 は決 して十分ではないが,最低限の質お よび量を今回の改定追加 にて確保す るに至った と,審査委員 会では判断す るに至った。本審査委員会 として,堀 ノ内真弓提出の論文 を,博士論文 として合 と 判定 した。