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問題の提超

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(1)市民的権利論と労働基本権. 佐 藤 昭 二〇世紀初期における判例理論の展開. ーアメリカ判例理論の展開過程からまなんでー. ストライキ権と労働力の売止め論. 一 問題の提起 二 売止め論の発生. ストライキ権と労働力の売止め論. 夫. 一四一︵三入こ. なわち︑結局その見解は︑保障されるストライキの性格を︑一使用者ないし使用者団体にたいする労働力の集団的取. に処置しえない事項を目的とする争議行為︑いわゆる政治スト等は︑憲法第二八条の争議権の行使ではない︑と︒す. ︵一︶. ようなものである︒争議権は︑団体交渉を裏付ける手段として保障されたものであり︑したがつて︑使用者が一般的. 法性の問題である︒そして︑その合法性を否定する代表的な理論i石井教授などにみられるーは︑要約︑つぎの. 現在︑争議行為の正当性をめぐる主要な争点の一つは︑その目的に関しての問題︑とくに︑いわゆる政治ストの合. 問題の提超. 三 四.

(2) 論. 説︵佐藤︶. 一四二︵三入二︶. 引き交渉の手段としてとらえ︑それだから政治ストは︑その範囲をはずれるとするのだと思われる︒そして︑ストラ. ﹁労働者は︑本来︑い. イキを労働力の取引き手段とみることは︑歴史的にはこれを労働︵力︶の不売と構成し︑契約法理の適用によつてス トライキの合法性をみとめていつたいわゆる労働力の売止め論からはじまつている︒. ところが︑他方︑ストライキの本質を労働力の同盟売止めとされる磯田教授は︑かえつて︑. かなる理由または動機からにせよ︑個人としてもまた団体としても︑労働力を売らないことの自由をもつているので. あり︑従つて︑あえて通常の﹃経済スト﹄にかぎらず︑いわゆる﹃政治スト﹄にせよ﹃同情スト﹄にせよ︑ストライ. キ自体は︑原則として︑一般に違法とされる理由がないのである︒ただ︑ストライキが通常の場合には賃金その他の ︵二︶. 直接の経済的条件についての労・使双方の意見の不一致を原因として起ること︵いわゆる﹃経済スト﹄︶が多い︑とい. うだけのことにすぎない﹂として︑政治ストの合法性を︑もつとも端的︑簡潔な論理をもつて主張されている︒. すなわち︑両者とも︑歴史的に争議行為の合法性の承認をうるための最初の理論であつた労働力売止め論を出発点. とするかにみえながら︑その結論は︑正反対となつている︒それではこの差異は︑どうして生じたのであろうか︒わ. たくしには︑結論からいえば︑歴史的制約を負う労働力売止め論の︑初期の考え方の一面に固着しているか︑それと. も︑その理論の歴史的展開の上に︑争議権保障の意味をたずねようとされるのか︑によるものと思われる︒. 本稿は︑このような問題関心から︑その理論の系譜を︑二〇世紀初期にいたるアメリカ判例理論の展開のなかにた. 石井照久﹁労働法総論﹂三三八頁以下︒なお吾妻光俊﹁労働法﹂︵青林︶二一六頁以下参照︒. ずね︑その歴史的展望のなかで︑両説にたいする︑わたくしなりの検討をこころみたいと考える︒ ︵一︶.

(3) 売止め論の発生. ︵二︶ 磯田進﹁労働法﹂︵第三版︶二〇四頁︒. 二. 団体行動権確立の歴史は︑単純な職場放棄としてあらわれるストライキの合法性の承認ということから︑はじめら ︵一︶. れなければならなかつた︒それでは︑ストライキは︑どうして最初犯罪とされ︑それがどのような論理によつて合法 化されてきたのであつたか︒. ストライキには︑つぎの三つの要素の存在が指摘される︒その一つは︑労働者がその労働力の提供を停止すること︑. すなわち客観的にみれば仕事の停止であり︑その二は︑その労働力の提供拒否が︑労働者の集団的行動としておこな ︵二︶ われるということであり︑その三は︑それらの行為が︑一定の要求実現の手段としておこなわれるということである︒. ところで︑ストライキの仕事の停止という側面についてみるならば︑ー契約違反の問題は別としてー﹁好む人. ︵三︶ のために働らくかもしくはそう欲するならば働らかない自由﹂︵OO日日8毒①巴9.<︒頃目げ9鼻斜冒9︒巴隔=ご. ︵契約上の義務があるか︑もしくはその業務が彼になんらかの公的義務を課するのでないかぎり︶そ. 冒霧鶏9葛①ヰ︒ D︸一︒ ・ 台︶の行使にしかすぎない︒したがつて︑個人的自由という点から見るかぎり︑それはむしろ︑. ﹁なんびとも︑. の好むところにしたがつて︑他人もしくは他の人びとのために働らくのを拒否し︑もしくはこれと取引きするのを拒. 一四三︵三入三︶. 否することは︑完全に適法性をもつている︒この法理は︑人は他人の権利を侵害しないかぎりその欲する仕方におい ︵四︶ て︑みずからの仕事を遂行することができるという人問の基本的権利にもとずくものである﹂︵ω○ビピ茜Oo●ダ ストライキ権と労働力の売止め論.

(4) 論. 説︵佐藤︶. 一四四︵三八四︶. 缶呂銃訟客≦こ=β憲馨霧○鼻一・︒8︶とされるものであつた︒ストライキの正当性の問題は︑それが団体行動. であり︑要求実現の手段であるという︒その第二︑第三の要素にかかわつていたのである︒. すなわち︑団体行動はそれ自体一つの威力をもつ︒この点からストライキは︑コモン・官1のいわゆる共謀︵8亭. 巷一声2︶の観念で律せられることになり︑団結の目的と︑その実現のためにとられる手段との両面が︑その法的評価. の基準とされた︒そして最初は︑たんに仕事をやめるということであつても︑ ﹁団結した多数人の行為は成功の機会. を増大させ︑そしてそれゆえに︑使用者にたいして不当な圧迫が加えられる︒これは強制であり︑そして︑一個人に ︵五︶ とつては適法な行為をなそうとする多数人の団結に︑権利侵害が存する﹂とされた︒要するに︑賃上げをはかろうと. 一・︒8︶︒そして︑. する団体行動自体が︑他人にたいする影響の面から︑営業の自由を阻害する違法な共謀とされたのであつた︒ ︵六︶. けれども︑﹁自由競争は団結を意味する﹂︵頃○ぎ$︾ぎくおΦ昼ぎく・O琶言璽一$竃器ω・貫. 使用者ないし資本の団結を是認するかぎり︑労働力の取引きにおける労働者の団結を否認するのは︑論理的にも矛盾. であつた︒やがて判例がストライキを是認しだしたとき︑一般にまず︑つぎのような論理がとられたのである︒すな. わち︑ ﹁労働条件の改善のために団結する権利がみとめられるならば︑一人が適法になしうることを行なうために︑. 団結がなされてよいのは当然である︒すなわち︑労働条件の選択に関して個人のもつ権利は︑団結した多数の者もも. つている︒もしも一人の者はその選択にしたがつて仕事をやめるというのならば︑同じ条件で働らいている多数の者︑. あるいは相互の利益のために団結した者は︑たとえ彼らがその利益を知つたのは団結をとおしてであり︑そして︑彼. らがそう欲したのはそのためであつたとしても︑同じことをなしてよい︒協同して行動することの利益は︑あらゆる.

(5) ︵七︶. 団結︑すなわち︑労働者の団結と同様に資本の︑使用者の︑そしてその他のすべての者の団結に属するところの利益 である﹂と︒. すなわち︑個人の契約の自由は︑ ﹁自由競争﹂の観念を通して︑やがて契約に関する団結の自由へと発展した︒そ. こで︑取引きにおいて条件がおりあわなければ商品を売らないということと同様に︑労働力を売らない︑働らかない. ということは︑協同してなされてよい︒ ﹁労働者らは︑その目的が悪意を満足させ︑あるいは他人の権利を侵害する. ということではなく︑みずからのために雇用条件を改善しようとすることにあるならば︑ストライキ︵すなわち︑ ︵八︶ 前以て協定し︑苦情がのぞかれるまで一団となつて仕事をやめること︶をする権利がある﹂︵<憩員︾ぎ2暮一8巴. 即o富&お︾田09暮δ昌<・O自目昌夷﹂ぎ客<・い賦︶a客国・まP68・︶ということが承認されたのである︒. ︵四︶. Oδ緯し げ こ こ や 慧 の 要 約 に よ る ︒. 090●03暮︸︾簿詳q畠Φ9︾目①誌o帥昌Oog詳ooぎい即び○目O霧oω廿G一一. OおαQO目蜜魯昌α国p言リピ餌σo円ビp毛廟O霧①9ピ緯Φ誌巴ωppαOO55①具ω廿. ℃やひ鉾9による︒野村︑ 前掲︑五〇頁参照︒. 一宝O Qりや誠による︒. 野村平繭﹁日本労働法の形成過程と理論﹂四五頁以下参照︒. ︵五︶. OおαqO曙や昌α国暮N﹂玄9サやδ一による︒拙著﹁ピケット権の研究﹂ 四二頁以下参照︒. ︵一X二︶. ︵六︶. 08暮し び 箆 こ や ま の 要 約 に よ る ︒. ︵三︶. ︵七︶. ま置こや蜜にょる︒. 一四五︵三八五︶. ︵入︶. ストライ キ 権 と 労 働 力 の 売 止 め 論.

(6) 面冊. 説︵佐藤︶. 三 二〇世紀初期における判例理論の展開. 違法論. 一四六︵三入六︶. ストライキが︑団結して不法な目的を追求するものとして︵民事共謀︶︑あるいは︑違法阻却事由. の判例などによつて代表されていた︒勺蜀耳首名8岳﹂ま竃霧ω. おN. ︵甘ω菖旨暮δ昌︶なしの故意の加害として︑不法行為になるとする立場である︒これは︑マサチュセッツ州最高裁判所 ︵三︶ 鴇客日8二︵おOo︶を例にとろう︒. ︵一︶. ず︑いくつかの代表的意見を例示しよう︒. ︵二︶. の展開過程は︑実は労働者の団結にたいする法的評価の︑一つの基本的転換点をしめしていると思われる︒つぎにま. ズド・ショップ要求のストライキであつた︒そして︑二〇世紀初期の判例理論にみられる︑その違法論から合法論へ. この点で︑もつともしばしば争そわれたものの一つは︑組織の強制と労働力供給機能の独占化を意味する︑ク戸ー. いて︑見解の対立と発展がみられるのである︒. あるという理由でただちに違法視する考え方は克服されたが︑それがいかなる目的の範囲において適法となるかにつ. ライキが労働条件の改善を直接の目的としない場合には︑問題がのこされていた︒ストライキを︑それが団体行動で. Oo毒o芦瀦勺8﹂○ミ・Op臣○旨すお○○︒︶とされるものであつた︒だがそれだけに︑こうした論理をもつては︑スト. つてさえも容認されないようなものは︑なにも含んでいない﹂︵国$ヰざO●︾言勺巽匹霧9<︒劇9一象お岸器窃. ︵一︶. のもつとも保守的な陳述である︒それは︑今日において︑ストライキの原理にたいするもつとも決定的な反対者によ. 契約法理を適用し︑労働条件の改善を目的とするストライキは合法だとする前述く讐b判事の見解は︑当時の﹁法. 芸ム.

(7) 一入九七年に︑ボルチモアに本部をもつペンキ・装飾工の組合が分裂し︑ラファイエヅトに新組合ができた.翌年︑. 旧組合は︑その組合に加入していないペンキエは非組合員とみなす旨を宣言し︑新組合員を雇う使用者にたいして︑. 彼らが旧組合に復帰するように勧めることを要求した︒そのさい旧組合は︑新組合員の解雇は要求しなかつたけれど. も︑もし旧組合に復帰しない者が解雇されない場合︑その使用者にたいしストライキとボイコットをすることがあき. らかとなつた︒そのため使用者は︑旧組合員だけを雇うことにした︒こうした旧組合の運動にたいし︑新組合員がそ. の差止めを求めた事件である︒判決の多数意見は︑原告の主張をみとめて︑つぎのようにいう︒. ﹁被告らの目的は︑原告らが被告組合に加入するよう強制することであり︑そしてそのために︑彼らは原告らの業. 務を侵害し︑かつ︑原告らがその職業において働らこうとする努力を妨害した︒⁝⁝彼らの脅迫のなかには︑あきら. かに︑意思にたいする影響において強制的なものがあつた︒身体の自由が拘束されるということは︑必要でない︒精. 神にたいする拘束は︑それが︑人をその意思に反して要求を承諾するように強制しそうであり︑かつ実際にその効果 をもつものであるとするならば︑本件のような事件に十分存在する︒. 被告らは︑みずからの行動を規律するために︑その欲する適法な規則をつくつてよい︒しかし彼らは︑他の人びと が彼らに加わることを強制する権利は︑もたなかつたのである︒. 原告らがこの組合に加入する必要は︑原告らが妨害から自由である権利に匹敵するほど大きくはなく︑また︑被告. らの行為を営業競争︵#器Φ8日需暮一8︶の原則の保護の下におくような︑被告らの権利にたいする関係をもたない︒. 一四七︵三入七︶. かかる行為は違法性を阻却せず︑そしてそれ喰えに悪意の︑かつ不法のものであり︑原告らを強制するかかる共謀は ストライキ権と労働力の売止め論.

(8) ︵四︶. 論. 説︵佐藤︶. 不法である﹂と︒. 一四入︵三入八︶. 要するに︑この立場は︑労働組合による加害が︑一定の場合に﹁競争﹂としてー通常の営業団体の場合と同様に ︵五︶. ー違法性を阻却されることをみとめる︒しかし︑その競争の範囲について︑組合運動に関しては︑極端にせまい見. 解をとつた︒その結果︑直接の労働条件の維持改善を目的としないようなほとんどの団体行動を︑違法阻却事由なし. ︵六︶ としたのであつた︒いわゆる︑違法目的理論︵目お包陰も○ω①α○︒良ま︶としで知られる立場である︒ ︵二︶ 適法論. 第一例前述プラント事件には︑すでにホームズ判事の有名な反対意見がつけられている︒すなわち︑彼は︑スト ライキが︑普遍的な生存闘争における適法な手段だとして︑つぎのようにいう︒. ﹁わたくしは︑直接に賃上げを意図するボイコットまたはストライキが︑その計画または意図のなかに︑暴力︑契. 約違反もしくはその他のたんに被告らの行為が団結してなされたという事実とはかかわりのない理由で不法となる行. 為をふくまないならば︑わが同僚の多数はこれを適法とみとめるものと考える︒⁝⁝端的にいうならば︑争点は︑あ. る目的が違法性を阻却するものとして︑本件においてなされようとしたボイコットの目的が︑その脅迫の違法性を阻. 却するようなものであつたかどうかの問題にしぼられる︒その目的は︑直接には賃金にかかわつていなかつた︒それ. は︑一段だけ︑より間接のものであつた︒その直接の目的および動機は︑賃金問題やその他利益の衝突する事柄につ. き︑よりよく闘かいうるための準備および手段として︑被告らの組合を強化することであつた︒わたくしは︑その脅. 迫が︑組合の強化はその手段であるところの終局的目的のためにと伺様に︑この準備的目酌のためにも適法であつた.

(9) と考える点に蔚いて︑わが同僚と意見を異にする.わたくしは︑組織の統一は労働争議を効果的にするために必要で. あり︑そして労働者の組合は︑彼らが終局的争そいにおいて用いてよい手段を︑その準備において適法に用いうるも のと考える︒. ⁝⁝わたくしは︑ストライキが︑普遍的な生存闘争における適法な手段だと考える⁝⁝わたくしは︑一群の労働者. が︑彼らが現にうけつつあるより多くのものを︑団結により得ようと努めること︑そしてそのために︑ボイヲットや ︵七︶. ストライキにより彼らの組合を強化することは︑たとえ彼らがその仲間め損失においてそうするのであつたとしても︑ さきにのべた条件の下で︑適法だと考える﹂と︒. 2日旨おり嵩o客イω賦︵お8︶においてー前述ホームズ料事の意見が書かれて二年後i四対. ︵九︶. 第二例 ニュー・ヨーク州最高裁判所は︑一八九七年︵9員きく●O緯窪﹂総客イ鴇︶まで︑マサチュセッツ ︵八︶ 州とおなじく違法目的理論にょつていた︒しかし︑その裁判官にわずかの移動があつたのち︑乞p試9巴ギ○富&お. ︒8翼一9. ︾の︒. 三を以てその立場をあらためた︒b帥爵臼裁判長は︑<きb判事の反対意見を引用したのち︑これにたいする多数意 見の立場を︑つぎのようにのべたのである︒. ﹁換言すれば︑ここに引用した︵ヴァン判事の︶主張は︑一人の人間が︑その十分と思うどんな理由によつてでも︑. 他人のた誇に働らくのを拒否しうる権利をみとめており︑そして使用者は︑その理由をたずねる権利をもたないので. 一四九︵三入九V. ある︒しかしそれは︑わたくしの考えでは︑被用者がある理由をつげるtもし彼が理由をもつならばー−ことにた いして︑法律上反対するものではない︒・ ストライキ 権 と 労 働 力 の 売 止 め 論.

(10) 論. 説︵佐藤︶. 一五〇︵三九〇︶. おなじ原則は︑彼らにとつて有益と思われる目的のために団結し︑働らくのを拒否する一団の人びとにたいしてあ. てはまる︒彼らの理由とするところは︑他の人びとには不十分だとみえるかもしれない︒しかし︑つずいて働らくの. を拒否することが︑団体の構成員として彼らの利益だと思われるならば︑働らくのをやめることは︑彼らの法的権利. である︒その理由は︑権利としては︑個人にたいする場合と同様に︑団体にたいしてもたずねられることはない︒し. かし︑もし彼らがその理由をのべることをえらんだとしても︑彼らの仕事をやめる権利は︑その理由が使用者あるい. は組織された社会にとつて不十分であり︑もしくは利己的だと思われたからといつて︑減殺されることはない︒・・. さきに︵ヴァン判事の反対意見から︶引用した諸原理は︑団体の成員のストライキをする法的権利︑すなわち︑前. もつて協定し︑苦情がのぞかれるまで一体となつて仕事をやめる権利をみとめており︑そして︑苦情の原因としてと. りあつかわれてよい幾つかのことをあげている︒すなわち︑賃上げ︑労働時間の短縮あるいは使用者らとの諸関係の. 改善を達成しようとする希望である︒しかし︑この列挙は︑団体の成員が一体となり︑かつ前もつて協定して仕事を. 拒否することを適法に正当ずける︑すべての理由にわたろうとしたのではない︑とわたくしは考える︒その列挙は︑. 包括的であるよりは︑むしろ例示的である︒というのは︑かかる団体の目的は︑その成員すべてを利することであり︑. そして︑団体の多くの成員にたいするなんらか適法な利益を確保するために︑もし必要ならばストライキするのは︑. 彼らの権利だからである︒たとえば︑彼らが不当に解雇されたと考える成員の再雇用を確保するため︑また︑たとえ︑. その結果が成員でない他の被用者の解雇をひきおこすとしても︑失業している団体の成員の雇用を使用者から確保す るための場合のごときである︒.

(11) そして︑組合員が非組合員とともに働らくのを拒否することが︑多くの組合員のためかもしれぬと裁判所のみとめ ︵一〇︶. うるかぎり︑反対の事実認定が存しない場合には︑かかる拒否の目的がたんに悪意を満足させ︑かつ︑.かかる非組合 員に侵害を加えることにあつたとはいいえない﹂と︒. また︑原告らが解雇されなければストライキをするとの通告が︑﹁脅迫﹂︵菩お暮︶だとの主張にたいしては︑つぎ のようにいう︒. ﹁人は︑ある店をひらき︑そして︑短期間に近辺の他の店主たちを商売から駆逐しうるような安売りをする権利を︑. 法のもとにおいてもつ︒そして︑商売を支配したならば︑彼はすぐに︑他の者を破滅させる間にうけた損失を回復し. うるようになるのである︒これが︑何世紀間もの法であつた︒その理由は︑もちろん︑自由競争は社会にたいして︑. それが失なわせるものよりも︑より多くの価値をもつという理論が一般に承認されてきたからであり︑そして︑この. 理由にもとずいて︑損害を加えることが免責される︵喰三一お&︶からである︒︵コモンウェルス対ハント︑轟冒Φぎ鐘 =ど一象︶︒. また︑この商店主は︑その目的をかくしておかず︑公然と他の商店主たちにたいして︑自分があとで利益をうるた. めに︑他らを商売から駆逐するつもりだということを宣言したからといつて︑彼の計画の実行を妨げられることはで. きない︒また︑安売りによつて彼らを破滅させることを禁ずるための訴えをおこした場合︑事実審裁判所に︑その通. 告を﹁脅迫﹂として特色ずけさせることは︑これらの商店主たちにとつて︑利益とならない︒というのは︑再審理に. 一五一︵三九一︶. おいて︑その答は︑つぎのようであるだろう︒すなわち︑これらの判例で定められた原則の範囲内において︑その動 ストライキ権と労働力の売止め論.

(12) 論. 説︵佐藤︶. 凶五二︵三九二︶. 機が自助にあるならば︑人は︑法がするのをみとめていることを︑すると脅迫してもよい︒. 労働団体は︑個人が適法になしうることをなすと脅迫する︑個人にあたえられている権利と︑まさにおなじ法的権. ︵一︶. ク戸ーズド・ショップ法理の展開の詳細は︑園部秀信﹁米法における勤労権﹂︵司法研究報告書三5︶︑松岡三部﹁アメリ. 08暮﹂ 露 貸 ︾ ︾ 3 に よ る ︒. ︵二︶ 利をあたえられている﹂と︒. ︵二︶. カにおけるd巨8ω①2試な組合保障規定についてーク戸ーズドショップ︑ユニオソショップを中心としてー﹂︵法律論. 四入頁以下参照︒. 叢三〇3︶︑広政順﹃﹁アメリカにおけるショップ制思想の変遷﹂︵季刊労働法29︶︑本多淳亮﹁アメリカにおけるショップ制 の機能と法理﹂︵法学雑誌六3︶など参照︒. 掲. による︒. による︒. ・参. 一び凶αこ℃唱.一〇♪一〇q●. 茜月召 剛ハ 5. 9①αQO曙晋α国暮Nし獣αこ℃﹂oN①げωΦρ.. ○お吸○曙き畠国緯N﹂獣9一やひo︒簿︒︒β● 3一αこ℃や一〇辞一〇9. 0おのo蔓﹂玄αこや慧●. ま崔こ℃℃●=ρ一軍︒. OおαQo 蔓 p ロ α 国 鉢 N ﹂ げ 5 ● 噛 ℃ ● ご ω 霧 ω β ●. ︵一〇︶. ま置こ や = ひ ●. ). ︵二︶. 拙銀 著. ハ パ パ ノヘ. パ パ. 9①σq・蔓︸霊げo目彗α9①国ヨG凱・︒︶や. 九八七六五四三 ) ) ) ) ) ). ハ.

(13) 四. 市民的権利論と労働基本権. さて︑上述したところから︑ストライキ法理の展開過程につき︑つぎのような指摘ができるだろう︒. すなわち︑ストライキは︑労働者の要求を実現するための集団的圧力行動として︑使用者に損失を加える︒あるい. は︑その要求の実現そのものが︑団結した労働者と対立する使用者︑その他の者にとつて不利である︒そして︑労働. 力の売止め論は︑この故意の加害を︑市民法の構成のなかにおいて合法化していく論理であつた︒つまりそれは︑ス. トライキを︑労働力の取引きにおいて商品を売らない自由︑働らかない自由の共同的行使として︑これ をあたかも︑. 資本家の売買におけるかけひき︑共同売止めと対においた︒そして︑そうすることによつて︑ストライキに︑違法阻 却事由となる営業競争の法理を適用しようとしたのである︒. ところで︑この論理は︑まず値段のおりあいのつかない場合の売止めに対比して︑直接の労働条件についてのスト. ライキによる加害を︑競争として承認させた︒しかし︑この段階では︑団結を危険視︑違法視し︑団結の威力をもつ. て個人の自由や権利を侵害するもの︑とみる従来の考え方は︑労働組合に関して︑原則的に失なわれていない︒つま. り︑それは︑争議権確立の歴史において︑個人的取引きから団体的取引きへ︑自由の観念の最初の転換・飛躍であつ. た︒しかし︑団体行動は︑依然として︑一般的には違法であり︑ただ例外的に︑労働条件の維持改善を目的とするス. 一五三︵三九三︶. トライキだけが︑違法性を阻却するとされたにとどまるつこれが︑前述違法目的理論の︑一般的態度である︒だから それは︑いわば﹁例外的違法性阻却説﹂とでもなずけられるであろう︒ ストライキ権と労働力の売止め論.

(14) 論. 説︵佐藤︶. 一五四︵三九四︶. ﹁悪意を満足させ︑他人の権利を侵害するため﹂のス. しかしながら︑労働組合は︑一般に労働者の自助的組織である︒ストライキは︑ことに賃金面︑組織面への影響を ︵一︶. 考えるならば︑決して軽々におこせるものではない︒だから︑. トライキなどというものは︑実際にはほとんどありえない︑かなり観念的なものであるにすぎない︒つまり︑現実の. 社会関係を分析するならば︑ストライキは︑直接間接︑労働者の自利追求の行動であることがみとめられよう︒ク眞. ーズド・シ︒ップ要求も︑団結の目的を達成するため︑まず団結を強めようとするものである︒そして︑資本にたい. ﹁もしもわれわれの法のもとず. しては︑自由競争の名のもとに︑自利追求において︑団結して他人に害を加えることが許されている︒そうだとする ならば︑それと同様の自由は︑労働組合にたいしてもみとめられなければならない︒. 前述ホームズ説の立場は︑およそこのようなものであろう︒そ. いている政策が︑自由競争という言葉によつて︑あまりにも狭く表現されているのであるならば︑われわれは︑生存 ︵二︶. のための自由闘争を以て︑これにおきかえてよい﹂︒. して︑こうみてくるならば︑多数人による故意の加害は原則として違法だとしても︑こと労働者の団体行動に関する. かぎり︑それは原則として︑違法性を阻却されることになる︒しかもこのことは︑労働者の団結なるがゆえの特殊の. 権利としてそうなのではなく︑資本の団結にたいしてみとめられるのとおなじ︑市民の権利としてそうなのである︒ ︵三︶ そこでこの立場を︑かりに︑﹁原則的違法性阻却説H市民的権利論︵9邑鼠讐富9︒蕊ま︶﹂とよんでおこう︒. そして︑この点は︑パーカー説においてもかわらない︒前述のように︑それは︑労働団体の目的が︑労働者の利益. 増大にあることをみとめ︑そしてそれゆえに︑労働団体が目的達成のためにストライキする権利を︑原則としてみと. める︒だから︑ストライキが使用者その他の者に損害を加えるものであるにかかわらず︑それが適法であるために︑.

(15) もはや個々の場合において︑限定された特定の目的により︑その違法性を阻却されることの立証を要しない︒逆に︑. ストライキを違法とするためには︑その目的がたんに悪意を満足させるにあるとするような事実が︑明白に認定され. なければならない︑ということになるわけである︒要するに︑原則的違法性阻却説疑市民的権利論は︑組合を原則的. に違法視し︑特定の目的活動のみを例外的に適法とするのではなく︑組合︑したがつてその全面的な目的活動を︑原. 則的に適法とするにいたつた︒それは︑争議権確立の過程において当然生ずべぎ︑第二の飛躍・転換であつたと考え る︒. さて︑以上のような判例理論の発展を念頭におきながら︑最初にのべたわが国の学説の問題にたちかえろう︒. 石井説は︑その発想︑考え方の系譜において︑違法目的理論にちかいと思われる︒すなわち︑それは︑ストライキ. という︑用いられた手段自体としては非難されるところのない団結の目的活動を︑原則として正当とみるのではない︒. 使用者として一般的に処置しうる事項を目的とする場合にかぎつて︑すなわち︑団結の目的活動の一部分のみを︑正. 当とするにすぎないからである︒そして︑それ以外の場合には︑労働者の自利追求における団体行動すらも︑正当で. 市民的権利論により︑歴史的に克服され. ないとする︒つまり︑特定の使用者との取引きということに例外的違法阻却事由をみ︑ストライキの正当性をその範 囲に限定するのである︒しかし︑こうした考え方は︑原則的違法性阻却説. てきたところだと考える︒労働者の団結による自利追求にとつて︑石井説のような区別・限定は︑合理的根拠をもた. 一五五︵三九五︶. ない︒ ﹁一見政治的性格をもつストライキも︵例えば単独講和反対︶すでに労働者の生活そのものと裏側では結び付 ︵四︶ いている︒従つて政治的目的・経済的目的という区分は本質的なものではない﹂ということは︑今目︑否定しがたい ストライキ権と労働力の売止め論.

(16) 論. 説︵佐藤︶. 一五六︵三九六︶. 現実であるだろう︒経済的動機を政治的動機から︑また︑経済活動を︑政治活動から分離できないということは︑制 ︵五︶ 定法上争議の目的を重視しているイギリスの︑労働法学者の みとめるところでもある︒石井説を支持するためには︑. 団結権を保障する憲法下においてなお︑団結活動は原則として違法であるとする違法目的理論晒例外的違法性阻却説. の系譜をうけつぐーもとより違法目的理論そのものと歴史的段階を異にしていることは︑後述するーことが︑前 提となると思われる︒. これにたいして︑磯田説は︑市民的権利論の考え方にちかいといえるだろう︒ ﹁労働者は︑本来︑いかなる理由ま ︵六︶ たは動機からにせよ︑個人としてもまた団体としても︑労働力を売らないことの自由をもつている﹂という言葉だけ. を抽象的にみると︑その自由の行使が争議権として特別の保障︵とくに民事免責︶をあたえられるのはなぜか︑とい. ︵七︶. う疑問が生ずるかもしれない︒しかし︑磯田教授は︑労働者がストライキをなし得ることは︑ー資本主義社会にお. いては労働力が商品として売買されるということとー労働者が団結権を有することの︑当然結果だとされている︒. すなわち︑団結の目的達成のためのストライキは︑権利として保護される︑とするものだとも考えられる︒そうだと. するならば︑それは︑団結の原則的正当性の承認の上に立つ︑原則的違法性阻却説H市民的権利論の系譜をつぐもの であろう︒. 市民的権利論は︑団結の原則的正当性の法認されないかぎり︑支配的となれなかつたかもしれない︒しかし︑労働. 基本権の保障は︑すくなくともその法認をふくむとしなければならないであろう︒争議権は︑市民的権利を一つの契. 機とする︒そこで︑磯田教授は︑その観点から正当とされるストライキにたいして︑たんに市民の自由としてではな.

(17) く︑ー一面からいえばその労働者に即しての展開であるー争議権としての保障︵民事免責など︶をみとめようと. されるのだろう︒そして︑市民的権利から労働基本権への発展を︑どう理解するかについて問題はのこるにもせよ︑. 市民的権利論を基礎的なものとする点においては︑磯田説は︑その他の多くの政治スト合法論ーわたくしもまた合 法論を支持するがーと︑その基盤をおなじくするものだと考える︒. なお︑市民的権利から労働基本権への発展に関連して︑ストライキと債務不履行責任についての問題は︑より詳細. なとりあつかいを必要としよう︒そして︑この点に関しては︑石井説も︑歴史的にあらわれた前述違法目的理論その. 野村︑ 前 掲 書 ︑ 八 六 頁 以 下 参 照 ︒. ままではない︒だが︑この問題の検討は︑つぎの機会にゆずりたいと考える︒. ︵一︶ <①αQ o 一 書 p <. Ω轟pgoび一翁目霧ω.露︵あ8︶におけるホームズ判事の言葉である︒Oおσqo曙醤α民暮N︾ま5こ℃やろρ. ︵二︶. ●拙著︑前掲︑四一頁以下参照︒. O器碧蔓﹂三9︾℃・o ︒Nは︑ニュi・ヨーク州判例の立場を9託一はσqげ富α8鼠ま︵市民的権利論︶とよび︑ホームズ判. イギリス労働法の基磯理論﹂九八頁以下︒. ノ. 一五七︵三九七︶. ρ国︒悶お信昌9ピ品巴男声ヨ①毒含F︵首↓げ⑦ω毬器ヨ9冒α扇馨ユ巴菊①5註o霧日○器鉢田目一梓巴算9●げ図司σ昌号冨. ストライ キ 権 と 労 働 力 の 売 止 め 論. きαΩ①αq鮫︶や旨ざ松岡三郎訳﹁フ胃イント. ︵五︶. ︵四︶ 野村︑前掲書︑九〇頁︒. 両者を一括して﹁原則的違法性阻却説 市民的権利論﹂とよんでおく︒. 事の立場を①8ま葺8言器お簿巷隅Op9︵経済的利益説︶とよんでいる︒しかし︑わたくしは︑本文にのべたような意味で︑. ︵三︶. δ一.

(18) 磯田︑. 論 ︵六︶. 説︵佐藤︶ 前掲書︑二C四頁︒. ︵七︶磯田︑ 前掲書︑二〇三i四頁︒. 一五八︵三九八︶.

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