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明海歯科医学会

第 18 回学術大会抄録

日時:2012 年 10 月 4 日(木)9 : 00∼ 会場:明海大学歯学部第 1 会議室

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基本味における味覚機能の

スクリーニング検査法の構築

豊田 有美子

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系正常機能研究群歯科補綴学Ⅰ) 高齢者の口腔内に生じる著明な症状として,味覚障害 が挙げられる.また,的場ら(2005)の報告によると, 近年では若年者においても味覚障害が急増しており,自 覚症状がないにもかかわらず味覚機能異常を有する可能 性が指摘されている.食生活の乱れ,ストレスなど,い くつかの原因が考えられるが,メタボリックシンドロー ムの一因となる可能性も高く,味覚機能の的確な評価は 人間が健康を維持する上で重要である. 従来より実施されている濾紙ディスク法や全口腔法な どの味覚機能検査法は煩雑で長時間を要するといった難 点を有している.したがって,迅速かつ的確に 4 基本味 の味覚機能を評価しうるスクリーニング検査法を開発す ることは歯科医学上極めて重要である. 本研究の目的は,味覚機能検査の全口腔法と Visual analogue scale(VAS)値を併用し,全ての被験者が認知 し得る最低濃度を基本味ごとに 1 種類選定することによ り,一味質につき 1 種類のみの味溶液を応用した,4 基 本味における味覚機能スクリーニング検査法を構築する ことである. 実験 1 被験者は全身性疾患を認めずかつ顎口腔系に異 常を認めない健常有歯顎者 35 名(男性 22 名,女性 13 名,平均年齢 24±2.5 歳)とした.味覚機能検査の試薬 (以下,味溶液と略す)として,甘味にはスクロース(0.625 ×10−2 , 1.25×10−2 , 2.5×10−2 , 5.0×10−2 , 7.5×10−2 , 1.0×10−1 M),塩味には塩化ナトリウム(1.25×10−2 , 2.5×10−2 , 5.0 ×10−2 , 7.5×10−2 , 1.0×10−1 , 2.0×10−1 M),酸味にはクエン 酸(1.25×10−4 , 2.5×10−4 , 5.0×10−4 , 1.0×10−3 , 2.0×10−3 , 3.0×10−3 M),苦味には塩酸キニーネ(0.625×10−5 , 1.25 ×10−5 , 2.5×10−5 , 5.0×10−5 , 7.5×10−5 , 1.0×10−4 M)を使用 し,希釈には蒸留水を用いて調整した.濃度別に仕分け した 10 ml の味溶液の入ったカップを渡し,10 秒間口 腔内に含ませた後吐き出させ,感じた味質に近いものを 味質指示表から 1 つ選択させた.被験者が味質について 正答した場合に認知閾値として記録した.誤答した場合 は,錯味覚として誤った味質を記録した.また,感じた 味の強さに関しては VAS 法によりスコア化した(以 下,味覚 VAS 値と略す).なお,味質の提示は低濃度 から始める上昇法とし,検査毎に必ず蒸留水で洗口させ て残味がないことを確認し,次の味溶液に移る際は 1 分 間の間隔を設けた.検査時における味質の提示は苦味を 最後とし,甘味,塩味,酸味の順序はランダムとした. 全員が味を認識できた最低濃度は,甘味 7.5×10−2 M, 塩味 2.0×10−1 M,酸味 2.0×10−3 M,苦味 7.5×10−5 M で あった.味覚 VAS 値の平均値は甘味が 54.4±19.9,塩 味が 82.9±18.9,酸味が 67.2±28.7,苦味が 67.5±26.3 であった. 実験 2 被験者は全身性疾患を認めずかつ顎口腔系に異 常を認めない健常有歯顎者 25 名(男性 19 名,女性 6 名,平均年齢 24±1.7 歳)とし,実験 1 で求めた濃度の 味溶液を用いて味覚機能スクリーニング検査法を実施し た.検査結果の評価基準として,味溶液の味質を正しく 選択するとともに,味覚 VAS 値が平均値の±2 SD 以 内の場合を「味覚異常なし」,味溶液の味質を正しく選 択したが,味覚 VAS 値が平均値の−2 SD 未満の場合 を「軽度の味覚減退」,味溶液の味質を正しく選択でき なかった,もしくは味を感じなかった場合を「中等度以 上の味覚減退」とした. その結果,「軽度の味覚減退」が甘味で 3 人,塩味で 3人,苦味で 1 人,「中等度以上の味覚減退」が酸味で 1 人認められた. 以上より,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基 本味ごとに 1 種類選定し得ることが示され,全口腔法に VAS法を併用した本法が味覚機能のスクリーニング検 査法として有用となる可能性が示唆された.

Gefitinib

と SN-38 の併用による

口腔扁平上皮癌細胞の EGFR 発現の減弱

平野 久美

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (形態系病態形態研究群口腔外科学Ⅰ) 【目的】Gefitinib は上皮成長因子受容体(EGFR)チロシ ンキナーゼ阻害剤である.EGFR は非小細胞癌を含め多 くの悪性腫瘍で過剰発現しており,腫瘍の増殖・維持に

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関与していることが明らかになり,EGFR の発現あるい は過剰発現がみられる腫瘍は,発現の見られない腫瘍に 比べて高い増殖能および転移性を示すことが報告されて いる.Gefitinib は手術不能又は 再 発 非 小 細 胞 肺 癌 で EGFRの遺伝子変異が確認されたものに対して使用され ている. 一方,イリノテカン塩酸塩は,抗腫瘍性アルカロイド であるカンプトテシンから合成された誘導体であり,Ⅰ 型 DNA トポイソメラーゼ阻害剤として作用する.体内 では肝臓に含まれるカルボキシルエステラーゼにより活 性体の SN-38 に変換され,DNA 合成を阻害して抗腫瘍 効果を発現するプロドラッグである.現在イリノテカン 塩酸塩は大腸癌や乳癌等への化学療法剤として使用され ている.しかし,いまだ頭頸部扁平上皮癌での研究は進 んでいない.そこで,口腔扁平上皮癌細胞(HSC-2)に 対して,SN-38, Gefitinib の単独投与と比べ,SN-38 と Gefitinibの併用療法が有効であるのかを調べた. 【 方 法 】 In vitro で は , MTT assay で HSC-2 細 胞 と HaCa-Tの吸光度を測定しコントロールと Gefitinib, SN-38単独投与,Gefitinib/SN-38 併用投与の対的生細胞数を 調べた.HSC-2 細胞と HaCa-T のコントロールと Gefit-inib, SN-38単独投与,Gefitinib/SN-38 併用投与のアポト ーシスを調べるため,を Anti-bodies and Western Blotting と Annexin V analysis を行った.Cell cycle test を行い細 胞周期による停止を調べた.さらに,免疫沈降テスト, PCRの測定を行った. In vivo では,6∼8 週の雄の BALB/c ヌードマウス腹 側の皮下に 3×106 の HSC-2 細胞を播種した.400∼500 mm3 の大きさになったら,コントロール,SN-38 単独で 腹腔投与,Gefitinib 単独で皮下投与,併用で SN-38 の 腹腔投与と Gefitinib の皮下投与を週 5 日間,3 クール 行った.腫瘍計測は 3 日ごとに行い,投薬終了後も計測 を続けた.

【結果と方法】In vitro において,Gefitinib とイリノテカ ンの代謝産物である SN-38 が相乗的にアポトーシスを 誘導する事が示された.さらに,その相乗効果のメカニ ズムとして,SN-38 によって HSC-2 の EGFR の発現が 抑制され,同時に Gefitinib により EGFR のチロシンキ ナーゼが抑制された事で,強力にアポトーシスが誘導さ れる事を解明した.これらの事象はヌードマウスに HSC-2を移植したモデルにおいても,Gefitinib 単独療法 より SN-38/Gefitinib の併用化学療法により腫瘍を劇的 に退縮させるとともに,腫瘍組織の EGFR の発現が抑 制されている事が示された.これらの事から in vitro で 示された SN-38/Gefitinib の併用により,HSC-2 の EGFR 発現を抑制し,同時に EGFR のチロシンキナーゼが抑 制された事で相乗的にアポトーシスに誘導されるという 仮説が in vivo でも当てはまる事が示唆された. さらに in vivo において,Gefitinib 単独療法群は投与 終了後,徐々に腫瘍が増殖し始めたのに対し,併用療法 群では投与終了後も腫瘍が退縮し続けた.また近年,他 の研究者により Gefitinib により頭頸部扁平上皮癌幹細 胞を抑制する可能性が示唆されている事から,SN-38 と Gefitinibの併用化学療法により癌幹細胞が抑制され,が んの再発を抑制する可能性もある.今回の我々が明らか にした事象により,EGFR の遺伝子変異のない HSC-2 に対して Gefitinib とイリノテカンの併用化学療法が有 効である事が示唆された.

歯科用化合物の正常口腔細胞及び腫瘍細胞

に対する細胞傷害性及び抗炎症作用の検討

高 泰浩

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系病態機能研究群口腔診断学) 【目的】ユージノール(EUG),ハイドロキノン(HQ), ベンゾキノン(BQ),フタラール(PHA)は,いずれも 歯科で汎用されている化合物であるとともに,消毒薬, あるいは医療機関専用化粧品としても使用されている. また,特に,BQ は分子内にα, β -不飽和ケトン構造を 有しているため,非常に反応性に富む.EUG や HQ が, ヒト骨髄性白血病細胞にアポトーシスを誘導することが 報告されているが,これらの薬物の腫瘍細胞に対する細 胞傷害活性の選択性,及び,口腔細胞に誘導される細胞 死のタイプを検討した論文は少ない.今回,これら化合 物を作用し,3 種のヒト正常口腔細胞(歯肉線維芽細胞 HGF,歯髄細胞 HPC,歯根膜線維芽細胞 HPLF),2 種 のヒト皮膚ケラチノサイト(HEKa, HEKn)と 3 種のヒ ト口腔扁平上皮癌細胞(HSC-2, HSC-4, Ca9-22)に対す る傷害性の検討及び,アポトーシス誘導の可能性につい て検討し,また,低濃度における増殖促進効果(ホルメ シス効果)も検討した.EUG は抗炎症作用を示すこと が報告されているので,これらの薬物が,IL-1β 刺激 HGF細胞における IL-8 産生に対する抑制効果を示すか 否かについても検討した. 【方法】HL-60 細胞は,RPMI 1640+10% FBS で培養し た.他の付着細胞は,DMEM+10% FBS で培養した.

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これらの細胞を種々の濃度の試料と 4, 24, 48 時間イン キュベートし,生細胞数は,MTT 法により算定した. 濃度依存性曲線から 50% 細胞傷害濃度(CC50)を求め た.口腔癌細胞に対する細胞傷害性と正常細胞に対する 細胞傷害性の比率(SI)は,癌細胞に対する CC50 の平 均値を,正常細胞に対する CC50 の平均値の比率で算定 した.DNA の断片化は,アガロースゲル電気泳動によ り測定した.カスパーゼの活性化は,caspase-3 の基質 (DEVD-p-nitroanilide)の切断産物 p-nitroanilide の定量 により算出した.また,Caspase-3/-7 の活性化は,western blot法を用いて,PARP の切断活性により算定した.IL-8産生の観察は刺激因子として IL-1β および LPS を用 いた.HGF, HPC の 2 種の細胞を刺激し,EUG の IL-8 産生に対する影響を ELISA 法にて観察した. 【結果と考察】4 種の化合物の傷害活性は,正常細胞お よび癌細胞で大きな差異は見出されなかった.むしろ, 正常細胞の方が感受性が高かった(SI<1).ケラチノサ イトは 24 時間の処理により傷害性がみられたが,その 他の細胞においては 4 時間の処理において 24 時間,48 時間と同様の傷害性発現が観察された.4 時間までの接 触 で は , ヌ ク レ オ ソ ー ム 単 位 の DNA の 断 片 化 , Caspase-3/-7の活性化は,誘導されなかった.しかし,6 時間以降で,BQ を除き,caspase-3/-7 の活性化が観察さ れた.後期における DNA の断片化の可能性は否定でき ないが,この段階では,アポトーシスマーカーの誘導 が,細胞死を誘導している可能性は低いと思われた.α, β 不飽和ケトン構造を有する化合物は,オートファジ ー を 誘 導 し や す い こ と が 報 告 さ れ て い る . BQ が caspase-3/-7を活性化しなかった原因として,α, β 不飽 和ケトン構造を有することが考えられた.HGF に対す る EUG の炎症抑制効果は濃度域にかかわらず観察され ることはなく,CC50 付近の濃度域では逆に IL-8 産生に 促進的効果がみられた.一方,HPC においては CC50 付近の濃度域において抑制が観察された.今回の研究の 結果は,これらの化合物を臨床応用するにあたり,細胞 傷害性及び標的組織ごとの炎症に対する反応の差異を考 慮することの重要性を示唆した.

運動エネルギーを指標とした

新しい咀嚼機能評価システムの構築

頼近 繁

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系正常機能研究群歯科補綴学Ⅰ) 咀嚼機能の客観的評価法の確立は歯科医学上極めて重 要である.客観的咀嚼機能評価法として篩分法,グミゼ リー咀嚼時のグルコース溶出量の分析法などが挙げられ るが,これらの方法は咀嚼後の試料分析であって,機能 動態として咀嚼運動を評価しているとはいえない.機能 動態として咀嚼運動を評価する場合に有効となりうる指 標の 1 つが運動エネルギーであり,1/2 mv2 で表される. すなわち,下顎の質量(m)は歯の喪失や加齢により減 少し,補綴装置の装着により増加する.咀嚼運動速度 (v)は,個人により異なるとともに,加齢や食品により 変化する.したがって,下顎の質量および咀嚼運動速度 を測定すれば,咀嚼時に消費される運動エネルギー(以 下,咀嚼運動エネルギーと略す)が算出され,この咀嚼 運動エネルギーを指標とすることにより咀嚼機能を客観 的かつ定量的に評価することが可能になると考えた.本 研究の目的は運動エネルギーを指標とした新しい咀嚼機 能評価法を構築することである. 実験 1, 2 で本評価法を構築するために下顎の運動体 要素(以下,下顎運動体と略す)の重量測定法について 検討した.なお,試料はヒトの抜去歯,ブタの下顎ブロ ック,骨,筋肉,その他の軟組織,骨髄,牛脂とした. 実験 1 各試料の CT 撮影を行い,各試料の体積・重量 から CT 値−密度に関する一次近似式 y=0.0095 x+ 1.05729(x : CT 値 y:密度)を得た. 実験 2 実験 1 で得た式を応用することによりブタの下 顎ブロック全体の予測重量と実測重量との相関関係を分 析した.その結果,両者の間には高い相関関係(r2 = 0.9774)が認められるとともに,一次近似式 y=0.95908 x(x:予測重量 y:実測重量)が得られた. 実験 1, 2 より,CT 画像からブタの下顎ブロックの重 量を予測しうる可能性が示され,本重量測定法がヒトの 下顎運動体の重量を測定をする上で有用となる可能性が 示唆された. 実験 3 被験者:健常有歯顎者 17 名.下顎運動体の重 量測定:下顎運動体の重量(M)は,実験 1, 2 で求めた 方法に従って測定した.咀嚼運動速度の測定:下顎運動 計測装置を用いて,咀嚼運動時の最大速度(V)を測定 した.被検食品:チューインガム,ようかん,かまぼ

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こ,ピーナッツ,グミゼリー.咀嚼運動エネルギーの分 析:咀嚼運動速度波形の閉口相における時間速度積分値 (F)を応用して,咀嚼運動エネルギー(以下,W)の基 準化を行った.すなわち,チューインガムの咀嚼開始後 の第 5 サイクルから第 14 サイクルまでの F の平均値 (FG), Fn FG およびチューインガム以外の被検食品の第 n サイクルにおける F の値(Fn)を算出し, Fn FG により基 準化することとした. 咀嚼開始から第 10 サイクルまでを分析対象とし,以 下の式で W[J]を求めた. WT= 10 ! n=1 1 2MV 2 n ・Fn FG その結果,かまぼこ,ようかん,ピーナッツ,グミゼ リー,チューインガムの順で WT は大きくなる傾向を 示したが,有意差は認められなかった. 各被検食品は咀嚼の進行に伴い,W が咀嚼 1 回ごと に増減しつつもわずかに減少する傾向を示すα 群と, Wがわずかに増減するも,徐々に減少する傾向を示す β 群 と に 二 分 す る こ と が で き た ( two-way factional ANOVA, Tukey-Kramer, p<0.01).特にかまぼこの W は,咀嚼の進行とともに減少し,咀嚼開始から 10 回目 で有意に減少した.したがって,かまぼこは咀嚼運動エ ネルギーを指標として咀嚼機能を評価する上において, 有用な食品となる可能性が高いと考えられる. 以上より,各被検食品の咀嚼運動エネルギーを分析し うることが示され,本法が咀嚼機能の客観的評価法とし て有用となる可能性が示唆された.

セボフルラン全身麻酔下オピオイドの血圧と

心拍数,および BIS 値に及ぼす影響

小貫 和之

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系薬理研究群麻酔学) ペンタゾシンとフェンタニルは周術期に鎮痛薬として 頻用されるオピオイドである.ペンタゾシンの静脈内投 与は交感神経系を刺激して,血圧と心拍数を増加させ る.一方,フェンタニルは副交感神経系を刺激して徐脈 をきたす.ペンタゾシンの脳波への影響は 15 mg,もし くは 30 mg の静脈内投与によって低振幅速波化させる が,フェンタニルの脳波への影響は 200μg の静脈内投 与によって変化をきたさないが,200μg 以上では投与 量依存性に高振幅徐波化する.全身麻酔中にペンタゾシ ンを静脈内投与すると脳波は低振幅速波化し,麻酔深度 モニタの指標である BIS 値を上昇させることを中間報 告で報告した.今回はフェンタニルの BIS 値に及ぼす 影響について検討した. 【方法】明海大学歯学部倫理委員会において承認された. 研究内容と麻酔方法について術前患者に説明し文書で同 意を得た.全身麻酔で施行予定の歯科口腔外科手術症例 (ASA クラスⅠ)を対象とし,生理食塩液のみの対照群 (n=41),フェンタニル 2μg/kg 投与群(n=56)の 2 群 に無作為に分けた.手術室入室後,生体モニタを装着し た.また,Bispectrum Analyzer を BIS モニタに接続し, 脳波を解析した.生理食塩水,フェンタニル 2μg/kg を 全身麻酔下気管挿管 15 分後に投与した.麻酔導入はチ オペンタールとベクロニウムを用い,維持は亜酸化窒 素,酸素,セボフルランを用いた.気管挿管 15 分後を baselineとした.データについて BIS 値は気管挿管 5 分 後から,また,血圧と心拍数は導入前から気管挿管後 30 分まで 5 分間隔で測定した. データは男女比以外平均値±標準偏差で示した.統計 処理は男女比については χ2 検定を,対照群とフェンタ ニル投与群間の比較は unpaired t 検定を行った.その他 3群間以上は分散分析を行い有意差があった場合 Tukey 法を用いた.年齢と BIS 値変動の関係をみるために単 回帰分析を行った.BIS 値の変動(ΔBIS)は投与後 5 分,10 分,および 15 分の BIS 値から baseline 値を引い て求めた.危険率 5% 未満を有意差ありとした. 【結果】2 群間で患者背景に差がなかった.対照群では 導入後 15 分から 30 分まで BIS 値,血圧,心拍数は有 意の変動を示さず,脳波も明らかな影響を受けなかっ た.一方,フェンタニル投与によって血圧と心拍数は減 少し,BIS 値は投与後 5 分から有意に上昇した.フェン タニル投与後 5 分,10 分,15 分のΔBIS と年齢の重相関 係数はそれぞれ−0.54(p<0.001),−0.70(p<0.0001), そして−0.66(p<0.0001)であった.回帰直線はそれぞ れΔBIS=−0.21×年齢+15.5,ΔBIS=−0.27×年齢+ 21.5,そしてΔBIS=−0.25×年齢+21.7 であった.し かし,対照群の重相関係数はそれぞれ 0.04(p=0.82), −0.06(p=0.72),そして−0.19(p=0.22)であった. 【考察】フェンタニル 2μg/kg 投与では脳波および BIS 値に影響を与えないといわれているが,過去の報告では 比較的高齢者が多い.今回の研究では年齢とフェンタニ ル投与による BIS 値上昇の間に強い相関があることが 判明した.フェンタニル 2μg/kg 静脈内投与で BIS 値 が有意に上昇したが,その理由は被験者の平均年齢が比

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較的若かったことによると思われる.全身麻酔下でフェ ンタニル 2μg/kg 投与によっても BIS 値上昇をきたす 場合があることがわかった.

全身麻酔下ペンタゾシン投与後の BIS 値変動

に及ぼすセボフルラン濃度の影響

長尾 泰好

明海大学歯学部総合臨床医学講座麻酔学分野 【目的】1% セボフルラン全身麻酔下にペンタゾシン 0.6 mg/kg静脈内投与すると BIS 値は上昇することが知ら れている.これはペンタゾシン 0.6 mg/kg 静脈内投与に よって大脳皮質脳波が興奮することによる結果であると いわれる.セボフルランは一般的に濃度依存性に中枢神 経系を抑制するが,てんかん誘発作用もあり脳波上大脳 皮質が異常な興奮を示す場合がある.臨床的にセボフル ラン濃度は必要に応じて濃度を調節するが,ペンタゾシ ン投与後の BIS 値上昇に及ぼすセボフルラン濃度の影 響は不明である.そこで,2% セボフルラン全身麻酔下 にペンタゾシン 0.6 mg/kg を静脈内投与して BIS の変動 を観察してみた. 【方法】明海大学歯学部倫理委員会において承認された. 研究内容と麻酔方法について術前患者に説明し文書で同 意を得た.全身麻酔で施行予定の歯科口腔外科手術症例 (ASA クラスⅠ)を対象とし,セボフルラン 1% 投与群 (n=41)とセボフルラン 2% 投与群(n=24)の 2 群に 無作為に分けた.手術室入室後,生体モニタ(BP608, コーリン,岡崎市),BIS モニタ(model A-XPⓇ,Aspect

Medical Systems, Natick, MA, USA, an electrode BIS QuatroTMⓇ

, Aspect Medical Systems, Newton, MA, USA))を装着した.また,Bispectrum Analyzer を BIS モニタに接続し,脳波を解析した.ペンタゾシン 0.6 mg /kgを全身麻酔下気管挿管後 15 分に投与した.気管挿 管 15 分後を baseline とした.データについて BIS 値は 気管挿管 5 分後から,また,平均血圧と心拍数は導入前 から気管挿管後 30 分まで 5 分間隔で測定した.データ は男女比以外平均値±標準偏差で示した.統計処理は男 女比については χ2 検定を,セボフルラン投与群間の比 較は unpaired t 検定を行った.その他 3 群間以上は分散 分析を行い有意差があった場合 Tukey 法を用いた.危 険率 5% 未満を有意差ありとした. 【結果】吸入セボフルラン濃度を除いて患者背景に 2 群 間で有意差がなかった.セボフルラン 1% 投与群では baselineと比較してペンタゾシン投与後 5 分から有意に BIS値が上昇した(P<0.01).セボフルラン 2% 投与群 では baseline と比較してペンタゾシン投与後 15 分から 有意に BIS 値が上昇した(P<0.05).しかし,セボフ ルラン 1% 投与群では baseline の BIS 値が 42.8±7.0 で あったのに対してセボフルラン 2% 投与群では baseline の BIS 値が 34.7±11.3 で有意にセボフルラン 2% 投与 群の方が低かった(p<0.01).平均血圧と心拍数に関し て 2 群とも baseline と比較してペンタゾシン投与後有意 の変動はなかった.また,2 群間で平均血圧と心拍数に 有意差がなかった. 【考察】今回 1% セボフルラン全身麻酔下にペンタゾシ ン 0.6 mg/kg を静脈内投与すると BIS 値が上昇した.こ のことは過去の報告と一致する.また,新知見として 2 %セボフルラン全身麻酔下にペンタゾシン 0.6 mg/kg 静 脈内投与すると BIS 値は若干上昇したが,1% セボフル ラン全身麻酔下と比べて有意に BIS 値は低かった.血 圧と心拍数で 2 群間に有意差がなかったので両群間で BIS値に有意差が生じたことは循環動態の変動に起因す るものでないといえる.BIS モニタは麻酔深度監視装置 として有用性が認められていて本邦では広く使われてお り,麻酔使用量の減少,術中覚醒の減少に効果があると 報告されている.しかし,2% セボフルラン全身麻酔下 でのペンタゾシンの併用は麻酔深度の判定を困難にする 場合があることが明らかとなった.

低出力パルス超音波が歯周外科手術後の

創傷治癒に与える影響

西村 将吾

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系病態機能研究群歯周病学) 【背景】遊離歯肉移植術は,付着歯肉やインプラント周 囲の角化粘膜の獲得,露出根面の被覆など,歯肉歯槽粘 膜の解剖学的問題を改善する有効な方法として臨床応用 されているが,移植組織片の供給側となる口蓋粘膜は開 放創となるため,患者の日常生活に悪影響を及ぼし,さ らに術後出血,疼痛や感染などの併発症が発症する可能 性がある.低出力パルス超音波(LIPUS : Low-Intensity Pulsed Ultrasound)は,理学療法の分野では,骨折治癒 促進が認められており,臨床応用されている.また,イ ヌを用いた実験において,フラップ手術後に LIPUS を 照射することにより,新生セメント質および新生骨の形

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成が促進されることも報告されている.しかし,口腔軟 組織を対象に LIPUS 照射を行った in vivo の研究はほと んどない.本研究の目的は,ラットにおいて口蓋粘膜を 切除した開放創を形成し,LIPUS 照射が口蓋粘膜の創 傷治癒に及ぼす影響を評価することである. 【材料および方法】実験動物には Wister 系雄性ラット (生後 8 週齢,250∼280 g)を用いた.粘膜欠損は,上 顎口蓋部中央とし,頬口蓋方向(BP)2 mm,近遠心方 向(MD)4 mm で骨膜に達しない深度の粘膜を切除し た.超音波治療器(ウルトラソニック ST-SONIC,伊藤 超短波製)を用いて LIPUS を照射した.照射条件は, 周波数 3.0 MHz,出力 30 mW/cm2 で 1 日 1 回 15 分間と した.実験期間は 10 日間とし,実験群は,3 回照射群, 5回照射群,および対照群である非照射群の 3 群とし た.口蓋粘膜欠損部は印象採得し,それをもとに作製し た石膏模型をデジタルカメラによって撮影した.得られ た画像は,画像解析ソフトを用いて 2 値化し,欠損部の MDと BP の創傷幅の最長径および口蓋粘膜欠損の面積 の縮小率を求めた.また,組織学的に評価するために, 上顎口蓋部を一塊として切り出し,10% パラホルムア ルデヒドで固定し,14 日間 10% EDTA を用いて脱灰し た.その後組織をパラフィン包埋し,厚さ約 5μm で薄 切標本を作製し HE 染色を行い,光学顕微鏡により観察 を行った.本研究は,明海大学歯学部動物実験倫理委員 会の承認を得て行った(承認番号 A 1204). 【結果】術後 10 日の創傷面積の縮小率は,3 回照射群 53.0%,5 回照射群 73.6%,および非照射群 35.7% であ り,各群間に統計学的有意差を認めた(p <0.05).MD の創傷幅の最長径は,3 回照射群,5 回照射群,および 非照射群で有意な差は認められなかったが,BP の創傷 幅の最長径は,術後 10 日で 3 回照射群と 5 回照射群, および非照射群と 5 回照射群との間に統計学的有意差を 認めた(p<0.05).組織学的観察では,3 回および 5 回 照射群は非照射群と比較し,作成した軟組織欠損に対 し,上皮や結合組織による被覆が進行している像が観察 された. 【考察】本研究の照射条件において,ラット口蓋粘膜に 形成した粘膜欠損部に LIPUS 照射を行ったところ,LI-PUS照射を行わなかったものよりも,上皮および結合 組織による被覆が進行し,軟組織欠損の回復が早いこと 示された.したがって,臨床において,LIPUS 照射は 遊離歯肉移植術などによって生じる軟組織開放創の治癒 促進に有効である可能性が示唆された.

エナメル質再石灰化に関する基礎的研究

−マイクロ CT によるミネラル密度の経時的評価−

荻原 孝

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系正常機能研究群小児歯科学) 【緒言】エナメル質初期う蝕の再石灰化にフッ化物イオ ンが与える影響に関する研究は,TMR(Transversal Micro-radiography)法や QLF(Quantitative Light-induced Fluores-cence)法による定量的評価を行った報告が数多くみら れる.しかし再石灰化反応をエナメル質表層から深層に かけて評価した基礎的な研究はほとんどみられない.ま た,エナメル質再石灰化時にフッ化物が取り込まれると 耐酸性が向上することはよく知られている.しかしその メカニズムをエナメル質ミネラル量の測定によって説明 した報告はみられない.本研究では,再石灰化溶液中の フッ化物イオン濃度が in vitro 条件にて作製したエナメ ル質初期う蝕脱灰試料の再石灰化および耐酸性に及ぼす 影響をマイクロ CT により明らかにすることを目的とし た. 【材料および方法】 1.エナメル質試料の作製 ウシ切歯 8 本の唇側エナメル質表面に着色や形成不全 などの異常が存在しないことを確認し,歯冠部エナメル 質から 3×3 mm の試料を 3 個ずつ切り出した. 2.エナメル質人工初期う蝕試料の作製 試験面以外をネイルバーニッシュ塗布後,脱灰溶液 (2.2 mM CaCl2, 2.2 mM NaH2PO4, 0.05 M酢酸,pH ; 4.4) に 96 時間,37℃ 下で浸漬し,脱灰試料を作製した. 3.再石灰化液への浸漬 3種類の異なるフッ化物イオン濃度(0, 1, 10 ppmF) の再石灰化溶液(0.9 mM CaCl2・2 H2O, 3 mM KH2PO4, 130 mM KCl, 20 mM HEPES, 0.68 mMクエン酸ナトリウ ム,pH : 7.1)に脱灰試料を計 14 日間,37℃ 下で浸漬 した.再石灰化溶液は 7 日ごとに新たに調製し交換し た. 4.耐酸性試験 再石灰化溶液浸漬後における再石灰化部位の耐酸性を 検討する目的で,脱灰溶液(上記脱灰溶液と同様の組 成)に 24 時間,37℃ 下で浸漬し耐酸性試験を行った. 5.マイクロ CT 撮影および分析 マイクロ CT スキャナ(SkyScan 1172, SkyScan)によ り初期う蝕試料の再石灰化および耐酸性の評価を行っ た.断層エックス線撮影(ピクセルサイズ 10μm,管電

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圧 100 kV,管電流 100μA)は,脱灰前および脱灰後, 各再石灰化液浸漬後,そして耐酸性試験終了後に行っ た.各断層エックス線像はデータ再構成ソフト(NRe-con, SkyScan)で処理後,数値解析ソフト(CTAnalyzer, SkyScan)でエナメル質表層から 10μm ごとの Houns-field unit値(HUV)を算出した.

6.統計的処理

脱灰前(St),脱灰後(De),再石灰化溶液浸漬後(フ ッ化物濃度に応じ Re0, Re1, Re10 と略す),耐酸性試験 終了後(再石灰化溶液浸漬時の濃度に応じ AR0, AR1, AR10と略す)の HUV の測定結果を比較検討する際の 統計学的分析は,2 群間の比較では Student の t 検定を, 多群間の比較においては多元配置分散分析を行ったのち に Scheffé の方法により分析を行った.有意水準は p= 0.05および 0.01 とした. 【結果および考察】フッ化物イオン濃度が再石灰化に及 ぼす影響を検討するために St, De, Re0, Re1, Re10 の HUVを深度ごとに比較した結果,エナメル質表層から 20μm において De が Re1, Re10 より,Re1 が Re10 よ り有意に低値を示した(p<0.01).20μm から 40 μm においては De が Re10 より有意に低値を示した(p <0.01).また,フッ化物イオン濃度が耐酸性に及ぼす 影響を検討するために Re0 と AR0, Re1 と AR1, Re10 と AR10の HUV を深度ごとに比較した結果,エナメル質 表層から 20μm において De0 と AR0, De1 と AR1, De 10と AR10 との間に有意差を認めた(De0 と AR0 およ び De10 と AR10 において p<0.01, De1 と AR1 におい ては p<0.05).20μm から 40 μm においては De0 と AR 0との間に有意差を認めた(p<0.05).以上の結果から フッ化物イオンはエナメル質表層の再石灰化を促進する ことが示唆された.また,フッ化物イオンは耐酸性を向 上させることも示唆された.

臨界 pH 下脱灰病変部におけるエナメル質

ミネラル密度の評価

落合 慶行

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系正常機能研究群小児歯科学) 【目的】エナメル質初期脱灰については pH,時間,深 さの点で不明な点が多い.本研究は,pH 5.5 および pH 4.5の乳酸溶液に,異なった時間牛歯エナメル質を浸漬 し,表層から 900μm までのミネラル密度をマイクロ CT で評価し,相互の関係を明らかにすることを目的とし た. 【方法】19 本の牛歯唇側面エナメル質から縦 15 mm,横 20 mm,厚さ 10 mm の試料を 1 つずつ作成した.資料 表面をバーニッシュし,マスキングテープを用いて唇側 面に 4 つのウインドウ(1×1 mm)を作成した.試料を pH 4.5(n=10)および pH 5.5(n=9)に分け乳酸溶液 (0.1 M 乳酸・6 wt%CMC を pH 5.5 および,pH 4.5)に 35℃ で 45 分浸漬し,浸漬開始前,15 分,30 分,浸漬 後にマスキングテープを 1 つずつ除去し,45 分脱灰,30 分脱灰,15 分脱灰および ST ウィンドウとした.試料 をマイクロ CT(SKYSCAN1172)を用いて 100 kVp, 100 μA の条件下で断層エックス線像を撮影した.各脱灰時 間において,厚さ 15μm づつエナメル質表面から 900 μm における Hounsfield unit 値(HUV)を測定し,エナ メル質表面からの深度(D):0<D!180 μm, 180<D! 360μm, 360<D!540 μm における HUV の平均を比較 した.各深度における HUV の経時的変化を検索し,pH 5.5, pH 4.5による脱灰程度の差を比較した.統計処理に は三元配置分散分析および scheffe を用いた. 【結果】三元配置分散分析ではエナメル質試料,脱灰時 間,深度で有意であった(全て p<0.01).0<D!540 の 平均 HUV は,pH 4.5 の脱灰では 15 分脱灰(1928± 986),30 分脱灰(1985±910)および 45 分脱灰(2027 ±910)は ST(2202±947)より有意に低値を示した (それぞれ p<0.01).また,pH 5.5 の脱灰においては,15 分脱灰(3504±1376)が ST(3721±1267)より有意に 低値を示した(p<0.01). 両 pH 溶液での ST の HUV 値を 100% としたときの 各深度における HUV の割合は,pH 4.5 溶液では,0 <D!180 μm で,15 分脱灰(p<0.01)と 30 分脱灰(p <0.05)および 45 分脱灰(p<0.05)が ST よりも有意 に低値を示した.360<D!540 μm においては,30 分脱 灰が ST よりも有意に低値を示した(p<0.05). pH 5.5溶液においては 0<D!180 μm において,15 分脱灰(p<0.01)が ST よりも有意に低値を示し,45 分脱灰(p<0.01)が ST よりも有意に低値を示した.360 <D!540 μm においては,30 分脱灰が ST よりも有意 に低値を示した. 両 pH 溶液の脱灰実験において,脱灰の程度は表層が もっとも高く,表層各深度とも脱灰開始 15 分で HUV が最低値を示した. 【まとめ】pH 5.5 溶液では,脱灰時間 15 分で,深さ 0∼ 360μm まで酸が浸透し,HUV は最低値(0<D!180

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μm : ST の約 87%∼0<D!540 μm:同 97%)を示し た.それ以降の浸漬時間,深さでは脱灰現象を示す HUV 値の低下は認められなかった.一方,pH 4.5 溶液では脱 灰時間 15 分で最低値(0<D!180 μm : ST の約 78%∼0 <D!540 μm : 90%)を示し,脱灰時間 30 分でも ST に 比較して深度 0∼540μm で HUV の 87∼93% 程度の低 下がみられた.これらのことからエナメル質への酸の浸 入は脱灰液の pH が影響し,pH 5.5∼4.5 程度の脱灰液 では深さ 540μm 程度まで脱灰されることが示された.

骨細胞による破骨細胞形成調節機構の解析

林田 千代美

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (形態系正常形態研究群口腔解剖学Ⅰ) 【緒言】骨では機械的負荷に応じて骨改造が行われ,そ の恒常性が維持される.骨改造は主に,破骨細胞(OC) による骨吸収と骨芽細胞(OB)による骨形成によって 担われている.OC の分化は,骨髄細胞(BM)から macro-phage colony-stimulating factor(M-CSF)によって OC 前 駆細胞(OCP)が形成され,さらに OCP から OB を含 む骨髄間質細胞等の細胞膜上に発現する receptor activa-tor of NF-κB ligand(RANKL)の作用によって誘導され る.また OB は,OC 形成抑制因子である osteoprotegerin (OPG)を発現し,OC 形成を負にも制御している.一 方,骨基質中の骨小腔には骨細胞が存在し,骨細管を通 して骨細胞突起同士が接触し細胞間ネットワークを形 成,それらネットワークを介して骨に対する機械的負荷 を感知し骨改造を調節していると考えられている.近 年,生理的条件下で骨細胞は OC 形成を抑制している ことが in vivo で示され,骨細胞は OB を介し OC 形成 を制御すると推測されている.また骨細胞は RANKL 及び OPG を産生し,OC 形成を直接制御することも示 唆されているが,依然として多くの点が不明のままであ る.そこで本研究では,骨細胞の in vivo における OC 形成抑制作用を反映する三次元骨組織モデル培養系を開 発し,骨細胞の OC 形成調節機構について解析を行っ た.

【方法・結果】骨細胞株 MLO-Y4 細胞(Y4 細胞)を col-lagen gel中に播き込み骨中の三次元骨細胞ネットワー クを模した.その gel 上に OC 形成支持能を有する間質 細胞株 ST2 細胞の細胞層を形成し,その上に BM を播 き込んだ.そこに ST2 細胞に RANKL 発現を誘導する 1,25(OH)2D(VD3 3)を添加し培養後,OC 形成を酒石酸 耐性酸性ホスファターゼ活性で評価した.その結果,OC 形成は gel 中の Y4 細胞数依存的に抑制された.Gel 中 の Y4 細胞に紫外線を照射し細胞死を誘導した場合,Y 4細胞による OC 形成の抑制は解除された.以上の結果 より,gel 中の Y4 細胞は in vivo と同様に OC 形成を抑 制すると考えられた.しかし本培養系では,ST2 細胞の VD3誘導性 RANKL mRNA 発現を gel 中の Y4 細胞は抑

制しなかった.さらに VD3の代わりに可溶性 RANKL (sRANKL)を加え OC 形成を誘導した場合も,gel 中の Y4細胞は OC 形成を抑制した.以上の結果より Y4 細 胞 に よ る OC 形 成 抑 制 は , ST2 細 胞 の VD3誘 導 性 RANKL発現抑制によるものではないと考えられた.次 に,Y4 細胞が液性の OC 形成抑制因子を産生している か否か検討した.培養 dish 上での BM からの M-CSF と sRANKL による OC 形成系に,Y4 細胞の培養上清 (CM)を加えたところ,OC 形成は抑制された.しかし Y4細胞の OPG 産生は検出されなかった.一方,OC 分 化 に 必 須 な c-Fos 発 現 に 対 し て , Y4 細 胞 の CM は RANKLによって誘導される OCP の c-Fos mRNA 発現 には影響を及ぼさず,c-Fos タンパク質量を減少させ た.また,タンパク質翻訳抑制作用を有する protein kinase R(PKR)mRNA 発現を促進していた.これらの CM の 作 用 は , OC 形 成 抑 制 因 子 で あ る interferon (IFN)-β の作用と一致する.そこで Y4 細胞の IFN-β 産生について検討した結果,Y4 細胞は IFN-β mRNA を発現し,また CM の OC 形成抑制効果は抗 IFN-β 抗 体により一部解除された.以上の Y4 細胞が示した OC 形成抑制作用は,EDTA/collagenase 処理で骨表面の細胞 を除去し骨細胞のみを含む骨片を調製し,この骨片と BMを接触させずに M-CSF と sRANKL 存在下で共存 培養し OC 形成を誘導した時にも確認され,その抑制 効果は抗 IFN-β 抗体により一部解除された.また,OPG ノックアウトマウスから調製した骨細胞のみを含む骨片 を共存培養に用い OC 形成を誘導した場合でも同様な 結果が得られ,初代骨細胞は OPG 非依存的に OC 形成 を抑制することが示された. 【考察・結論】骨細胞は IFN-β を産生し,その産生され た IFN-β によって OC 形成が負に制御されることが示 された.

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リン過剰摂取マウスにおけるコラーゲン

ジペプチドによる下顎骨および

長管骨の骨代謝制御

関 勇哉

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系病態機能研究群口腔診断学) 【目的】コラーゲンの熱変性タンパク質がゼラチンであ り,これを酵素などで加水分解したゼラチン加水分解物 がコラーゲンペプチドとして機能性食品素材として用い られている.ヒトやラットにおいてコラーゲンを摂食す ると,血中に複数のコラーゲン由来のジペプチドが検出 される.これらのジペプチドに関して骨組織に多く含ま れ る Ⅰ 型 コ ラ ー ゲ ン に は Pro-Hyp ( PO ) と Hyp-Gly (OG)配列ともに多く存在する.ヒトⅠ型コラーゲン 1 分子中に PO 配列は 49 ヵ所,OG 配列は 127 ヵ所存在 し,この 2 つの成分が機能性成分として注目されてい る.そこで本研究ではマウスを用いた in vivo 実験系で POおよび OG の骨代謝および下顎骨組織に与える影響 について検討した. 【材料及び方法】C57 BL/6 J 雄性マウス 10 週齢に高リン 食を摂食させたリン誘導性硬組織障害モデルマウスを用 いた.Normal 群(0.15% Pi),Control 群(1.5% Pi),PO 群(1.5% Pi+0.3% PO),OG 群(1.5% Pi+0.3% OG), 4群に分けて 3 週間飼育した.飼育終了後,血清の Ca 濃度,Pi 濃度,ALP 活性,TRAP 活性を測定した.ま た大腿骨を用い,pQCT による骨密度の測定および三点 折り曲げ法による骨強度を測定した.さらに脛骨および 下顎骨を用い,軟 X 線撮影やμCT により歯槽骨の石 灰化度や形態学的な解析を行った.また脛骨および下顎 骨のパラフィン切片を作製し,HE 染色により骨構造の 比較検討を行った.さらに大腿骨の DNA マイクロアレ イ法により骨代謝関連遺伝子の発現量を比較した. 【結果】血清の Ca 濃度,Pi 濃度,ALP 活性,TRAP 活

性はいずれの群においても有意な差は認められなかっ た.骨密度を海綿骨(関節軟骨下骨,一次,二次)と皮 質骨(関節軟骨下骨,骨端部,骨幹部)に分けて測定し た結果,PO は海綿骨(関節軟骨下骨,一次)を増加さ せ,OG はすべての部位の骨密度を増加させていた.ま た高リン食摂取で低下していた骨強度も OG 摂取によ り増加していた.さらに下顎骨軟 X 線写真では,根分 岐部において PO および OG 摂取により歯槽骨石灰化 度が増加していた.また脛骨および下顎骨μCT におい ても骨梁が増加していた.さらに脛骨および下顎骨組織 像においても PO および OG 摂取により骨梁幅が増加 していた.DNA マイクロアレイ解析では PO 群で発現 上昇した遺伝子に Htr2b, Htr3a, Fgf2, Msx1, Has3, Itga1 があった.PO 群で発現減少した遺伝子に Rarg, VDR, RANKL, Phexがあった.OG 群で発現上昇した遺伝子 に Fgf2, Msx1 , Has3, Gata4, Cdh10 があった.OG 群で 発 現 減 少 し た 遺 伝 子 に VDR, RANKL, Phex, ERα, RANK, Bmp2, Ctskがあった. 【結論】以上の結果から PO および OG などのコラーゲ ンジペプチドは骨を保護する機能性因子である可能性を 明らかにした.これまで全く歯科領域では利用されるこ とのなかったコラーゲンジペプチドを骨疾患の予防ある いは治療法の開発へ繋がることが期待され,本研究に基 づき PO および OG の臨床研究への応用も期待される. この結果を踏まえて現在,PO および OG の骨代謝メカ ニズムを明らかにするため,マウス骨髄細胞由来破骨細 胞およびマウス頭蓋由来骨芽細胞株である MC3T3 - E1 を用いた in vitro 系で研究を行なっている.

ポリフェノール類の紫外線に対する

細胞保護作用

南部 俊之

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (形態系病態形態研究群口腔外科学Ⅰ) 紫外線(UV)は殺菌作用,ビタミン D 合成,新陳代 謝促進,皮膚抵抗力亢進などの有益作用を示す反面,活 性酸素種(reactive oxygen species : ROS)を生成して DNAやタンパク質などを損傷する有害作用を示す.損 傷を受けた DNA 塩基は修復されないと遺伝子突然変異 を誘発し癌や老化などの疾病を発生させる.グアニンは UV照射で生成したヒドロキシラジカルにより酸化さ れ,老化マーカーである 8-オキソグアニンを発生させ, 遺伝子突然変異を誘発する.リグニン配糖体は自然界に 存在する代表的なポリフェノールであり,そのポリフェ ニルプロペノイド部分が卓越した抗ウイルス活性を,そ の配糖体部分が免疫増強活性を示すことが示唆されてい る.我々は最近,リグニン配糖体を含むシイタケ菌糸体 培養エキス(LEM),クマザサ抽出液(SE,葉アルカ リ)が,お茶抽出液,タンニン類,フラボノイド類より UVに対する細胞保護作用(抗 UV 活性)が強いことを 報告した(Nanbu et al, In Vivo 25, 733−740, 2011).今 回,リグニン配糖体が抗 UV 活性の主たる原因物質で

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あることを確認するため,各種植物から分離したリグニ ン配糖体や置換基を導入した多糖体の抗 UV 活性を, 抗酸化剤と比較して検討した. 【方法】UV に対して高感受性を示すヒト口腔扁平上皮 癌細胞(HSC-2)を DMEM+10% FBS 中で培養した. 細胞を 96-microwell plate に播き,48 時間培養してプレ ートに付着させた.様々な濃度の被検物質を含むリン酸 緩衝液 PBS(−)100μl に置換後,プレートの蓋を外 し,プレートを UV ランプ(波長 260 nm)から 20.5 cm 離れた位置に置き,1 分間 UV 照射した.新鮮培地に置 換して 48 時間培養後,相対的生細胞数は MTT 法によ り検討した.検量線より,未照射細胞におけるサンプル の 50% 細胞傷害濃度(CC50)と,UV 照射した細胞を 50 %生存率まで復帰させる濃度(EC50)を求め,抗 UV 活 性(SI)を次式で求めた.SI=CC50/EC50.リグニン配糖 体は,熱水抽出後,酸沈殿,エタノール沈殿により調製 した. 【結果】リグニン配糖体の硫酸基を導入した P-201, P252 は抗 UV 活性を示したが,硫酸基を導入した paramylon あるいは dimethylaminoethl 基を導入した laminarin, pul-lulan, dextranは抗 UV 活性を示さず,硫酸基と DMEM 基は抗 UV 活性に関与しないことが示唆された.Lignin 前駆体である vanillin はビタミン C と同等の高い抗 UV 活性を示した.多糖体が多い LCC(Fr.VII)は多糖体の 少ない LCC(Fr.VI)よりも抗 UV 活性が低いことから 多糖体構造は抗 UV 活性に関与しないことが示唆され た. 【考察】LEM, SE は LCC が多く含まれているため強い 抗 UV 活性が発現したと思われる.今回研究した天然 界のポリフェノールの中で LCC が最大級の抗 UV 活性 を持つことが明らかとなった.今後,LCC の分子量と 抗 UV 活性の関係,老化マーカーである 8-オキソグア ニン産生を低下させる活性について種々の系で検討す る.

トモシンセシスによるデジタル回転

パノラマ断層撮影法の応用

流石 麻由

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (理工系歯科器材研究群歯科放射線学) 【目的】近年,Computed Radiography(CR)が放射線医 療において主流を占めるようになってきた.CR システ

ムは Charged Coupled Device(CCD), Imaging Plate(IP), Flat Panel Detector(FPD)などの各種センサーからデジ タルエックス線画像データを取得し,各データをコンピ ュータで再構成し画像を得る方法である.歯科領域でも エックス線写真は口内法撮影装置,回転パノラマ撮影装 置,歯科用 CT などのデジタル化が進んでいる. センサーが大型化された FPD の登場によりエックス 線画像のデジタル化は新しい時代を迎えている.それに 伴い,回転パノラマ撮影装置は,従来使用されていたフ ィルム方式からラインセンサーを利用したデジタルデー タからの再構成断層像方式を利用するようになってき た.ハード面の開発と共に臨床アプリケーションの新た な処理法の開発も同時に行われ,回転パノラマ撮影断層 撮影装置もトモシンセシス画像形成法が利用されるよう になってきた.トモシンセシスは,Tomography(断層) と Synthesis(合成)からできた造語であり,断層撮影 データからコンピュータを使用し任意の断層面を再構成 する手法である. 本実験は,トモシンセシスの原理を利用したデジタル パノラマエックス線撮影装置について,その得られた画 像から断層面の応用について研究をしたので報告する. 【材料と方法】実験にはデジタルパノラマ装置 QR マス ター(テレシステムズ,大阪)を使用した.画像解析ソ フトは Image diff(ionForge, California)を用い,撮影に はヒト乾燥頭蓋骨をファントムとして使用した.撮影は フランクルト平面と平行に撮影を行った.撮影条件は管 電圧 80 kV,管電流 2 mA,総濾過 2.5 mm Al,撮影時間 12秒に設定し撮影を行った.画像再構成は付属の断層 面描出プログラム TS3DPanoTool にて顎骨中心部から頬 舌方向に 20 mm,スライス間隔 1 mm, WW256, WL128 にて抽出した. 解析は装置内部アプリケーションにより自動的にピン トがあった画像を描出することから,その断層面を探る ために自動描出される画像からトモシンセシスで得られ る任意の断層面とのサブトラクション法を用い画像解析 を行った. 【結果】サブトラクション画像の傾向は①内方向の断面 画像より外方向の画像の方が差分値は大きくなった.② 前歯部は臼歯部と比較しより大きな変化を示した.③第 1大臼歯周囲は大きな差分値は見られなかった.④第 2 大臼歯から下顎枝にかけて大きな値を示した. 【今後の課題】今後トモシンセシスによる任意断層画像 形成法を利用し下顎管の成長発育の解析に応用を考えて いる.

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明海歯科医学会

第 19 回学術大会抄録

日時:2012 年 12 月 6 日(木)9 : 00∼ 会場:明海大学歯学部第 1 会議室

療養型病床群入院患者への

口腔保健評価手法に関する研究

流石 知佳

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (環境生態免疫系歯科疫学研究群口腔衛生学) 要介護高齢者の肺炎の予防のために器質的口腔ケアの 重要性が明らかにされているが,その必要度を簡便に測 定する方法は現在十分な検討がなされていない.そのた め,口腔ケアの必要性や効果の評価に関して,簡便な要 因評価手法が必要と考えられた. そこで,私は,中間発表にて某療養型病床群にて実態 調査を行い,口腔ケアの評価項目の検討と口腔内状態の 特性の把握を行った.その結果,口腔ケアに関して要因 相互評価として,現在歯数が多いほど,義歯を使用して いるほど,口腔乾燥状態にあるほど,舌苔が多いほど, 器質的口腔ケアが必要ではないかと考えられた.しか し,口腔乾燥の評価法は,口腔内での操作を行うものが 多く,歯科医療従事者以外では判断が困難と考えられ た.そのため,口腔乾燥については口腔水分計ムーカスⓇ (株式会社ライフ社,以下ムーカス)を用いて,口腔乾 燥評価をすることにした. ムーカスは,口腔粘膜水分量を測定し評価する器具で ある.ムーカスの基準では,29−30% 以上が健康な口腔 粘膜とされている.しかし,測定値設定が高く,乾燥傾 向の老人にはあまり向いていない.また,療養病床で介 護度の高い患者では,意思疎通,筋力低下による舌の沈 下にて測定が困難などの問題があるため,要介護者高齢 者向けの測定方法と基準が必要であると考えられた. 某療養型病床群入院患者に入院している患者のうち, 調査に協力を得られた 279 名を対象とし,測定方法及び 基準の検討を行った.最初に調査開始から平成 23 年度 末までに実態調査を行ったグループにて口腔内診査を行 い,平成 24 年 4 月から同年 9 月までに実態調査を行っ たグループにて口腔内の状態と水分計での測定値につい て検証し,口腔ケアの必要性を検討・解析を行った. (明海大学倫理審査会第 A 1107) 【結果と考察】調査結果から,口腔乾燥状態ではムーカ スの数値は低く,舌苔の付着が多く,栄養摂取形態は経 口より経管が多く,清掃状態不良の場合が多かった.ま た,今回の対象でのムーカスの平均値は舌背で 17.9%, 頬粘膜で 21.0% であった.しかし,ムーカスの基準に て診断した場合,98% が口腔乾燥状態となった.口腔 ケアへの優先度の順位付けが困難であり,舌背・頬粘膜 平均値,標準偏差を参考に 17% 未満,17 以上 19% 未 満,19 以上 21% 未満,21% 以上の 4 つを区分に設定し た. この口腔乾燥状態および 4 つのムーカスの区分にてス クリーニングの精度を求め,舌背,頬粘膜の水分量を測 定したが,舌背において療養病床では測定が困難であ り,相関性が高い頬粘膜の数値にてスクリーニングの精 度を求めた.設定基準にて,ムーカスで 17 未満を症状 (+),21 以上を症状(−),視診にて口腔乾燥中程度以 上を疾病状態(+)とした場合に,スクリーニングの有 効性は敏感度が 0.56,特異度が 0.87,陽性反応的中率が 0.50,陰性反応的中率が 0.84 と特異度,陰性反応的中率 が高かった.しかし敏感度が低いため,既存検査法,他 覚所見,自覚症状など組み合わせて症状を判断する必要 があると考えられた. 【結論】療養型病床群入院患者において,ムーカスの基 準であったため,多くが口腔乾燥状態と判断され,口腔 ケアへの優先度の順位付けが困難であり,測定結果・標 準偏差をもとに,4 つの区分を設定した.スクリーニン グとしての有用性を検討した結果,特異度,陰性反応的 中率が高かった.よって要介護高齢者ではムーカスをス クリーニングとし,歯の欠損状態,義歯の状態,口腔乾 燥状態,舌苔の付着状態により口腔ケアの優先度の順位 付けが実施可能ではないかと考えられた.

不織布フィルターを用いた

閉鎖系システムによる顎骨骨髄からの

間葉系幹細胞分離に関する研究

落合 幸彦

明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野 【背景】近年,歯周組織やインプラント周囲組織の再生 を目的として,患者の骨髄液から間葉系幹細胞(mesen-chymal stem cell, MSC)を分離し,体外で培養した後に 移植する再生医工学的手法の臨床応用が検討されてい る.しかしながら,この方法は大規模な細胞培養センタ ーを必要とすること,骨髄液を患者の腸骨骨髄から採取

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する必要があることなどから,一部の限られた施設でし か行えないという難点を有する.一方,患者骨髄液から MSC画分を,閉鎖系デバイスを用いて簡便に分離する 方法が検討されている.このデバイスは,MSC に親和 性が高い不織布フィルターを応用したもので,少量の骨 髄液からでも MSC を効率よく分離することが期待され ている.MSC の供給源として,歯髄組織や歯根膜組織 が検討されているが,歯を抜去する必要があるという欠 点がある.また,腸骨骨髄からは,大量の MSC を回収 することが可能であるが,外科的侵襲が大きいという欠 点がある.他方,顎骨の骨髄は,採取できる骨髄液は少 量であるが,抜歯,歯周外科手術,およびインプラント 外科手術等,アクセスが容易で,外科的な侵襲も比較的 小さいという利点がある. 本研究の目的は,不織布フィルターを用いた閉鎖系デ バイスを用いて,顎骨骨髄から MSC を分離することを 試みることである. 【材料および方法】明海大学歯学部付属明海大学病院歯 周病科に来院した患者 35 人から 44 検体を採取した.被 験者の平均年齢は 56.1±12.6 歳で,男性 12 人,女性 23 人であった.顎骨の骨髄液は,インプラント埋入手術時 に採取した.骨髄液採取は,骨面に起始点を形成した後 に,骨髄穿刺針を用いて採取する方法,またはインプラ ント埋入窩を形成した後に 18 G の注射針を用いて採取 する方法により行った. 検体は滅菌生理食塩水にて希釈し,MSC 分離デバイ ス(株式会社カネカ製)に通液した.デバイスのフィル ターを滅菌生理食塩水にて洗浄した後,逆方向からα -MEM(10% ウシ胎児血清)培地を注入することによ り,フィルターに付着した細胞を回収した.回収した細 胞は,細胞培養用シャーレに播種した.また,コントロ ールとして,デバイスを用いず,検体を 500 g にて 5 分 間遠心分離して上清を除き,そのままシャーレに播種し た(全骨髄播種法).培養 14 日後に顕微鏡観察にてコロ ニー形成を確認した.本研究は明海大学歯学部倫理委員 会の承認(A 0904)のもと行った. 【結果】MSC 分離デバイスを用いて間葉系幹細胞の分離 を試みたところ,30 検体中 10 検体(33%)からコロニ ー形成細胞を樹立することができた.一方,全骨髄播種 法によりコロニー形成が確認されたのは,14 検体中 3 検体(21%)であり,コロニー形成細胞を樹立できた検 体の割合は,統計学的に有意な差ではなかったものの, MSC分離デバイスを用いた方が高かった. MSC分離デバイスを用いて分離した検体において, 骨髄液を採取する際に骨髄穿刺針を用いた方法では,15 検体中 6 検体(40%)からコロニー形成が確認されたの に対し,注射針を用いた方法では 15 検体中 4 検体(27 %)であった.また,全骨髄播種法により分離した検体 においては,骨髄穿刺針を用いた方法では 7 検体中 2 検 体(29%),注射針を用いた方法では 7 検体中 1 検体(14 %)であった. 【考察】本研究結果から,不織布フィルターを用いたデ バイスにより,顎骨から MSC を閉鎖系で分離できるこ とが示された.また,骨髄穿刺針を用いて骨髄液を採取 し,本デバイスを用いることにより,顎骨から MSC を より効率よく分離できる可能性が示唆された.

2

次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発

佐藤 祐介

明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野 医療で用いられるデジタルエックス線撮影系の解像限 界は,エックス線管の焦点サイズ,エックス線センサー の画素サイズ,そして,焦点・被写体・エックス線セン サーの幾何学配置によって決定される.どんなに微小焦 点のエックス線管を用いても,被写体をセンサーに密着 して撮影しても,エックス線写真には画素サイズより小 さな物体を画像化するのは不可能である. 理論計算から求められるデジタル撮影系の解像限界 は,まず画素の感度形状をあらわす関数と,幾何学配置 で決まる焦点のエックス線強度分布関数のコンボルージ ョン積分からボケ関数を求める.次に,このボケ関数の フーリエ変換によって求まる modulation transfer function (MTF)のカットオフ周波数によって決定される.この 解像限界を超えてより微細な構造の像を得る方法を「超 解像」と呼ぶ.

エックス線センサーを撮影中に移動させて,画像を採 取しながら合成するという新しい超解像技術 detector moving and frame additional technique(DEMOT 法)によ り,従来の撮影系の持つ解像限界を 2 倍に向上できると されている.しかし,この技術は,1 次元方向に応用さ れた画像再構成法である. 本研究は,2 次元の超解像画像再構成,および DEMOT 法の解像限界の 2 倍を超える画像再構成を行うアルゴリ ズムの開発を目的として研究を行った. 実験は,画像センサーのモデルを作製し,モデル実験 系を構築して行った.その結果,次のような結論を得

(13)

た.

1.実験に使用した Flat Panel Detector(FPD)モデル は,理論と実験結果の一致から,超解像の実験に使用で きることが確認された. 2.1 次元方向の移動で 2 次元の超解像画像を得ること が,理論的また実験的に解明された.2 次元の超解像画 像は,従来の XY 直交座標系を 45°回転させた XY 直 交座標系で成立することが理論的に判明した. 実験による検証では,45°XY 直交座標系の 2 次元方向 に超解像の成立することが確認された.この超解像技術 は,従来法の解像限界を 2 倍に向上することが明らかに なった.

下顎枝矢状分割術後のミニプレート固定の

固定性と接合部骨組織の治癒に関する研究

吉川 秀明

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (形態系病態形態研究群口腔外科学Ⅰ) 【緒言】下顎枝矢状分割術(以下 SSRO)は,最も多く 用いられる顎変形症手術である.SSRO 後の骨片固定に は,チタンミニプレート(以下プレート)固定が広く行 われている.また,術後はプレートによる骨片固定が行 われていても,骨片の変位防止と骨癒合促進のために一 定期間の顎間固定が併用される.長期の顎間固定は顎関 節部の拘縮や筋力低下による開口障害を来たし機能回復 は遅延する.顎間固定が不用でかつ骨癒合が確実に行わ れる固定法の解明が望まれる.これまでにプレートの固 定力に関する力学的研究や鋼線固定による SSRO 後の 骨の構造変化が個別に報告されているのみで,顎間固定 を必要としない固定のために,如何なる形状のプレート を如何に使用すべきかについては検討されていない.本 研究は,始めに力学的に強固な固定性が得られるプレー ト固定のプレート形状と枚数を矢状分割モデル上で明ら かにし,ついでその固定法によって固定したビーグル犬 下顎骨の分割固定部の骨治癒状態と骨構造変化を組織学 的およびエックス線学的に比較検討し,顎間固定不用な 骨片固定法を確立することを目的に行った. 【材料および方法】基礎実験として,プレートの形状の 違いによる固定性を比較するため,アクリルレジンによ り作成した矢状分割モデルを用いて荷重試験を行った. ストレート型とオルビタ型の 2 種類のプレートを 1 枚な いし 2 枚用いて試験体を固定し,近位骨片を絶対静止系 とした片持ち梁荷重試験により,静的荷重下でのプレー トの変形量をひずみゲージを用いて測定し,また同時に 弾性限界荷重量を計測した.次に,基礎実験の結果を元 に,体重 7∼10 kg で成犬雄のビーグル犬に SSRO を施 行し,骨片をストレート型,オルビタ型のプレート各 2 枚で固定し,術後 6 週,10 週における骨接合部の組織 学的観察およびマイクロ CT によるエックス線学的観察 を行った.尚,術後顎間固定は行なわず,軟食摂取とし た.また,本研究は,明海大学歯学部動物実験倫理委員 会の承認のもと実施した(承認番号;A 0902). 【結果】力学的実験の結果,ストレート型 2 枚固定が 101.6±14.8[N]で最も強固であり,オルビタ型 1 枚固 定が 11.8±3.0[N]で最も強度が劣っていた.動物実験 の組織学的観察において,ストレート型 2 枚固定が,6 週,10 週においてオルビタ型よりも骨組織による治癒 が良好であることが観察された.また,骨治癒状態を単 位骨量,骨梁幅で比較した結果,ストレート型 2 枚固定 が 10 週で単位骨量 53.3±10.1[%],骨梁幅 217.7±8.0 [μm]と最も高い値を示した.オルビタ型 2 枚固定が 6 週 で 単 位 骨 量 41.1 ± 12.7 [ % ], 骨 梁 幅 111.2 ± 34.4 [μm]で最も低い値であった.マイクロ CT によるエッ クス線学的観察から得られた骨塩量も組織学的観察とほ ぼ一致していた. 【考察】これまでの報告によるとプレート 1 枚固定では, 咀嚼筋の筋肉機構から応力が集中し,破折や後戻りのリ スクが高いとされてきた.本研究の結果からはストレー ト型 2 枚固定が固定性で優れていた.他の有限要素法を 用いた研究からもプレート 2 枚固定は著明に応力が分散 されると報告されている.本研究のビーグル犬による実 験では顎間固定されていない条件下においても,これま でに報告されているワイヤー固定に顎間固定を行った雑 種犬による研究報告結果と比較して骨治癒は進んでいる ことが観察できた.本研究によりストレート型プレート 2枚固定を行うことにより従来必要とされていた顎間固 定を併用しなくても,矢状分割術後の十分な骨性治癒が 期待できることが示唆された.

(14)

ラット島皮質における

parvalbumin

陽性細胞の分布特性

別府 祐次

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (形態系病態形態研究群口腔外科学Ⅰ) 【目的】島皮質は,味覚や内臓感覚,痛覚をはじめとす る多様な感覚を処理している.他の大脳皮質感覚野と異 なり,島皮質は顆粒層をもたない特殊な層構造をもつ領 域(無顆粒皮質)が存在する.最近の研究によって,GABA 作動性ニューロンのマーカーである parvalbumin 陽性細 胞の分布が島皮質内でも大きく異なっていることが明ら かになってきた.本研究は,島皮質を顆粒皮質(GI), 不全顆粒皮質(DI),無顆粒皮質(AI)の 3 つに区分 し,(1)それぞれの領域における parvalbumin 陽性細胞 および対照として他の GABA 作動性ニューロンのマー カーである somatostatin 陽性細胞の密度および分布の特 徴について定量解析した.さらに,(2)陽性細胞の分布 している層を正確に区分するため,逆行性トレーサーを 用いてⅤ層とⅥ層のニューロンを標識し二重染色を行っ た. 【方法】 (実験 1)体重 320−420 g の SD ラットを通法に従って 灌流固定し,厚さ 30μm の連続切片を作成した.免疫 染色法によって parvalbumin および somatostatin 陽性細 胞を DAB ( 3,3 ’ -diaminobenzidine tetrahydrochloride hy-drate)で可視化した.隣接する切片を Nissl 染色し,GI, DI, AIの境界線を設定した.免疫陽性細胞の定量解析 には Neurolucida(MicroBrightField 社製)を用いた.par-valbuminおよび somatostatin 陽性細胞の密度,平均細胞 間距離について AI, DI, GI のそれぞれの領域で測定し た.

(実験 2)Venus trans genic ラットの右側島皮質もしくは 左側視床腹後内側核にハミルトンシリンジにて Fluoro-Gold(FG)を注入し,1 週間おいた後,灌流固定して par-valbuminの免疫染色を行った.発色には Alexa Fluor 568 goat anti mouseを用いた.共焦点レーザー顕微鏡にて観 察し,FG 陽性細胞との位置関係を明らかにした. 【結果】

(実験 1)AI における parvalbmin 陽性細胞は DI, GI と 比較して濃染されているものが多い一方,その密度は 131.8±8.4 個/mm2 であり,DI(217.7±29.4 個/mm2 )お よび GI(237.3±28.4 個/mm2 )と比較して有意に低かっ た.また,AI に存在する parvalbumin 陽性細胞間の平 均距離(42.8±1.8μm)は DI(35.8±1.9 um),GI(36.0 ±2.9μm)と比較して有意に大きかった.somatostatin 陽性細胞の密度,平均細胞間距離については領域間で有 意な差はなかった. (実験 2)反対側島皮質に注入した FG はⅤ層の錐体細 胞に取り込まれ,視床腹後内側核に注入した FG はⅥ層 の細胞に取り込まれた.AI における parvalbumin 陽性 細胞の分布には著しい偏りが認められ,特にⅤ層深部に 密度の高い領域が存在することが明らかとなった. 【考察】Parvalbumin 陽性細胞の多くは,発火頻度が非常 に高く自発性興奮入力を多く受ける fast-spiking 細胞で ある.この細胞は,興奮性細胞である錐体細胞に密に投 射しており,局所回路における興奮性を制御する極めて 重要な細胞である.したがって,AI における parvalbumin 陽性細胞の密度の違いは,AI と DI, GI 間における興奮 性の違いに反映されると考えられる.また,parvalbumin 陽性細胞は,軸索走行の特徴により basket 細胞や chan-delier細胞と呼ばれる抑制性ニューロンが含まれてお り,いずれも極めて強力にシナプス後細胞を抑制するこ とが明らかとなっている.したがって,AIⅤ層におけ る parvalbumin 陽性細胞の集団は,効果的に周辺領域を 抑制し,疼痛などの機能を調節している可能性が考えら れる.

歯槽骨の高さの低下が複根歯の

抵抗中心に与える影響について

−三次元有限要素法を用いて−

駒澤 大悟

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (理工系歯材応用研究群歯科矯正学) 【諸言】矯正歯科治療における歯の移動のメカニクスを 理解するために,従来より歯の抵抗中心という概念が活 用されてきた.歯の抵抗中心とは,力の作用線の通過に より歯体移動をみる点と定義される.これまで,実験的 解析や数値解析などにより抵抗中心の位置が検討されて きた.しかしながらその多くは単根歯を対象とした二次 元的な解析であり,複根歯を対象とし,かつ三次元的な 抵抗中心の位置を解析した研究は少ない.さらに近年, 矯正歯科を受診する成人患者が増加している.患者の高 年齢化に起因した歯の支持骨減少は,抵抗中心の位置に も影響すると考えられ,歯槽骨による骨植減少が複根歯 の抵抗中心へ与える影響を三次元的に解析することは極

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