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中央学術研究所紀要 第47号 009出野 尚紀「『マヤマタ』第7章~第8章:和訳と註解 ―インド古典建築論書の構成と内容(3) ―」

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(1)

0.はじめに

 ヒンドゥー建築論書『マヤマタ』の第1章から第6章や制作年代などについては、 平成28年11月発行の『中央学術研究所紀要』第45号に訳出した「『マヤマタ』第1章∼ 第3章:和訳と註解」と平成29年11月発行の第46号に訳出した「『マヤマタ』第4章∼ 第6章:和訳と註解」を参照していただきたい。  サンスクリット原文からの訳出に際し、日本語訳においては、詩節ごとに訳文を作 るべきと考えるが、英訳を参照して訳出範囲を分け、サンスクリット文の前に記した。 これは、原文の詩節と文が構造的に対応しないことが見られるためである。また、使 用したテクストには、適宜、章内に小見出しが挿入されているので、その部分も訳出 している。

 テクストにはBruno Dagens ed. & trans., Mayamatam treatise of housing, architecture and iconography, Kalāmūlaśāstra series 14, Delhi, 1994. を用いた。また、フランス語訳である Bruno Dagens éd. et notes, Mayamta traité Sanskrit d’architecture, Publications de l Institut Français d Indologie No.40-1, Pondichéry, 1970. を適宜参照した。

1.第7章

 本章は、これまでの章の要件を満たしたことによって選定された土地を、マス目を 作って分割し、平面図の一種ということもできるヴァーストゥ・プルシャ・マンダラ の種類とそれに配されるヴァーストゥ・デーヴァターの構成を記す部分である。ヴァー ストゥ・プルシャ・マンダラは、建築用地に描かれるマンダラである。まずヴァース トゥ・デーヴァターと称される神格を神の祝福のある安寧な土地とするため、その決

―インド古典建築論書の構成と内容⑶ ―

出 野 尚 紀

0.はじめに 1.第7章 2.第8章

(2)

まった場所に配置する。配置した後、ヴァーストゥ・プルシャという『リグ・ヴェー ダ』の宇宙開闢の歌に範をとった巨人を画き、さらなる安寧を求める。なお、この部 分には記されていないが、32のヴァーストゥ・プルシャ・マンダラには、それぞれど のような対象に描くのか、対応するモノが決まっており、以下の章では、対応するマ ンダラを描いたという前提にたって記述が進行する。  また、文章だけで構成を視覚化することは難しいので、それぞれの構成についての 文面を図表化した。 [pada-vinyāsah4] 構成ごとの配置について 1ab

vaks4ye 'ham4 pada-vinyāyam4 sarva-vastu-sanātanam /

 私は、全ての立地条件に見合うマス目の配置を言おう。 [dvātrim4śat-padāni]

32種の構成 1cd 7

sakalam4 pecakam4 pīt4ham4 mahāpīt4ham atah4 param //1//

upapīt4ham ugrapīt4ham4 sthand44ilam4 nāma cand44itam /

mand44ūka-padakam4 caiva padam4 paramaśāyikam //2//

tathaˆsanam4 ca stānīyam4 deśīyôbhayacand44itam /

bhadram4 mahāsanam4 padmagarbham4 ca triyutam4 padam //3//

bratabhoga-padam4 caiva karn4āst4 4aka-padam4 tathā /

gan4itam4 padam ity uktam4 padam4 sūryaviśālakam //4//

susam4hita-padam4 caiva supratīkāntam eva ca /

viśālam4 vipragarbham4 ca ciśceśam4 ca tatah4 param //5//

tathā vipulabhogam4 ca padam4 vipratikāntakam /

ciśālāks4a-padam4 caiva viprabhaktika-sam4jñakam //6//

padam4 ciśveśasāram4 ca tathaivêśvarakāntakam /

indrakānta-padam4 caiva dvātrim4śat-kathitāni vai //7//

 サカラ、ペーチャカ、ピータ、マハーピータ、ウパピータ、ウグラピータ、スタン ディラ、チャンディタともいう別名のあるマンドゥーカ、パラマシャーイン、アーサ ナ、スターニーヤ、デーシーヤ、ウバヤチャンディタ、バドラマハーサナ、パドマガ

(3)

ルバ、トリユタ、ヴラタボーガ、カルナーシュタカ、ガニタ、スールヤヴィシャーラ、 スサンヒタ、スプラティーカーンタ、ヴィシャーラ、ヴィプラガルバ、ヴィシュヴェー シャ、ヴィプラボーガ、ヴィプラティカーンタ、ヴィシャーラークシャ、ヴィプラバ クティカ、ヴィシュヴェーシャサーラ、イーシュヴァラカーンタ、インドラカーンタ の32種が〔構成の種類〕であると言われる。 8 21

sakalam4 padam ekam4 syāt pecakam4 tu catur-padam /

pīt4ham4 nava-padam4 caiva mahāpīt4ham4 dvir ast4 4akam //8//

pañcavim4śaty-upapīt4ham4 s4at4-s4ad4 evôgrapīt4akam /

sthand44ilam4 sapta-saptaˆm4śam4 mand44ūkam4 câst4 4akâst4 4akam //9//

paramaśāyi-padam4 caiva nanda-nanda-padam4 bhavet /

āsanam4 śata-bhāgam4 syād ekavim4śac-chatam4 padam //10//

sthānīyam4 syāc catuścatvārim4śac-śata-padâdhikam /

deśīyam4 navas4as4ty-am4śam4 śatam4 côbhayacand44itam //11//

s4ann44avaty-adhikam4 caiva śatam4 bharam4 mahāsanam /

sa-pañcavim4śad-dviśatam4 padmagarbham iti smr4tam //12//

s4ad4-ādhikyam4 tu pañcāśad-dviśatam4 triyutam4 padam /

dviśatam4 sa-vavāsīti vratabhogam iti smr4tam //13//

triśatam4 ca caturvim4śat-karn4āst4 4aka-padam4 tathā /

triśātam4 caika-s4ast4 4y-am4śam4 gan4itam4 pāda-sam4jñitam //14//

catuh4śata-padam4 sūryaviśālam4 parikīrtitam /

susam4hita-padam4 caikacatvārim4śat-catuh4śatam //15//

savedaˆśīti-catvārah4 śatam4 supratikāntakam /

navavim4śat-pañcaśatam4 viśālam4 padam īritam //16//

s4at4-saptatih4 pañcaśatam4 vipragarbham iti smr4tam /

viśveśam4 s4at4śatam4 paścāt pañcavim4śat-padam4 smr4tam //17//

s4at4saptatih4 s4at4śatakam4 vipulabhogam iti smr4tam /

navavim4śatikam4 saptaśatam4 vipratikāntakam //18//

viśālāks4a-padam4 vedâśītih4 saptaśatâdhikam /

saikâst4 4a-pañca-yuktam4 câst4 4aśatam4 viprabhaktikam //19//

viśveśasāram ity uktam evam4 navaśatam4 padam /

saika-s4ast4 4yām4 navaśātam4 padam īśvarakāntakam //20//

caturvim4śati-sam4yuktam4 sahasra-pada-sam4kulam /

(4)

 サカラは1マスある。また、ペーチャカは4マスである。ピータは9マスでる。そ して、マハーピータは16〔のマス〕である。ウパピータは25である。ウグラピータは 36である。スタンディラは49の部分からなる。マンドゥーカは64である。パラマシャー インのマス目は81マスである。アーサナは100の部分からなる。121の四角形がスター ニーヤである。144の四角形がデーシーヤである。169はウバヤチャンディタになる。 バドラマハーサナは196である。パドマガルバは225であると伝えられている。トリユ タは256マスである。ヴラタボーガは289であると伝えられている。そして、カルナー シュタカのマス目は324である。それから、361マスをガニタと呼ぶ。スールヤヴィシ ャーラは400マスであると言われる。そして、スサンヒタのマス目は441である。スプ ラティーカーンタは484である。ヴィシャーラは529マスであると言われる。ヴィプラ ガルバは576であると伝えられている。ヴィシュヴェーシャは625マスであると伝えら れている。ヴィプラボーガは676であると伝えられている。ヴィプラティカーンタは 729である。ヴィシャーラークシャのマスは784である。ヴィプラバクティカは841であ る。それから、ヴィシュヴェーシャサーラは900マスである。イーシュヴァラカーンタ は961マスである。インドラカーンタは1024マスである。以上のように、聖なるタント ラの智慧として言われる。 表 ヴァーストゥ・プルシャ・マンダラの名称とマス目数一覧 [sakalam] サカラ 22

ādyam4 padam4 sakalam eka-padam4 yatīnām

(5)

pitryâmarâdi-yajanam4 guru-pūjanam4 ca     bhānv-ārki-toya-śaśi-nāmaka-sūtra-yukte //22//  サカラは、1つの四角形から出来ている基本の構成である。苦行者たちが望むこと は、クシャ草の寝台で大きく火を焚くこと、父祖や神々等のために犠牲を捧げること、 そして、師に願をすることである。バーヌ、アールキン、トーヤ、シャシンと呼ばれ る線で〔四辺が〕結ばれる。 図1 サカラの四辺の名称 [pecakam] ペーチャカ 23

paiśāca-bhūta-savis4agraha-raks4akās te

    pūjyā hi pecaka-pade caturam4śa-yukte /

tasmin vidheyam adhunā vidhinā vidhijñaih4

    śaivam4 tu nis4kalam alam4 sakalam4 ca yuktyā //23//

 ペーチャカの四角形は、4つの部分から成り立ち、パイシャーチャ、ブータ、ヴィ シャグラハ、ラクシャカが各部分にいる。そして、規範に精通したシヴァ神の象徴や 尊像を交点に置くべきである。

(6)

[pīt4ham]

ピータ 24

atha pīt4ha-pade nava-bhāga-yute diśi diśy atha veda-catust4 4ayakam /

vidur īśa-padâdy-udakam4 dahanam4 gaganam4 pr4thivī hy avahih4 //24//

 さて、ピータの構成は9つの部分から成り立ち、各方角の4つの正方形には、北東 の四角形から、水、火、空、風が、中央には、地が対応していることが知られている。 図3 ピータ [mahāpīt4ham] マハーピータ 25 27

s4od4aśaˆm4śam4 mahāpīt4ham4 pañca-pañcâmarânvitam /

īśo jayanta ādityo bhr4śo 'gnir vitatho yamah4 //25//

bhr4n 4

gaś ca pitr4-sugrīvau varun4ah4 śos4a-mārutau /

mukhyah4 somo 'ditiś cêti bāhya-devāh4 prakīrtitāh4 //26//

āpavatsârya-sāvitrā vivasvān indra-mitrakau /

rudrajo bhūdharaś cântar madhye brahmā sthitah4 prabhuh4 //27//

 マハーピータは16の部分からなり、25柱の神々がいる。〔北東から時計回りに〕イー シャ、ジャヤンタ、アーディトヤ1、ブリシャ、アグニ、ヴィタタ、ヤマ、ブリンガ ラージャ、ピトゥリ、スグリーヴァ、ヴァルナ2、ショーシャ、マルト、ムキャ、ソー マ、アディティ〔の16神〕が外側の神々であると説明される。アーパヴァッツァ、アー ルヤ、サーヴィトラ4、ヴィヴァスヴァト、インドラ、ミトラ、ルドラ、ブーダラ〔の 8神〕が〔その内側に〕おり、中央にブラフマーが主宰者として存在する。

(7)

図4 マハーピータ

[upapīt4hâdi]

ウパピータ以降 28 29

tat pārśvayor dvayor ekabhāgenaikena vardhanāt / upapīt4ham4 bhaved atra devatās tāh4 pade sthitāh4 //28//

tattat pārśva-dvayoś caivam ekaikām4śa-vivardhanāt /

indrakānta-padam4 yāvat tāvad yuñjita buddhimān //29//

 ウパピータは、それ(マハーピータ)より、縦横どちらも1つずつ〔マスを〕多く するべきである。その時、〔マハーピータの〕神々は〔各々の〕正方形内にいる。そし て、賢者は、どれでも〔順に〕縦横どちらも1つずつ多くして、インドラカーンタの 構成までを配列するべきである。

30 32ab

samāni yāni bhāgāni catuhs44ast4 4ivad ācaret /

asamāny api sarvān4i caikāśīti-padôktavat //30//

padānām api sarves4ām4 mand44ūkam4 câpi tat param /

cand44itam4 sarva-vastūnām āhatyam4 ca yatas tatah4 //31//

tasmāt sam4ks4ipya tantrebhyo vaks4ye 'ham api tad dvaram /

 偶数の2乗の時は64個〔の正方形の〕を基本とするべきである。また、奇数の時は、 皆、81個の正方形であると言っている。また、マンドゥーカは全ての構成の基本であ る。それから、マンドゥーカは、どこであっても全ての場所の〔ものを〕使うべきで ある。それから、タントラによって集積されるので、それでは、私はこの2つの〔構 成〕のことを言いましょう。

(8)

32cd 33ab

catuhs44ast4 4i-pade caikāśītau sakala-nis4kale //32//

sūtre ca pada-madhye ca brahmâdyāh4 sthāpitāh4 surāh4 /

 64個の正方形でも、81個の〔正方形〕でも全て〔のマス〕に象徴となる神格がいる。 中央部分の線の内側でのブラフマーを始めとして、諸神格が配置される。

[devata-sthānāni] 神格の配置場所 33cd 37

prāgudag-dik samārabhyaivôcyante devatāh4 pr4thak //33//

īśānaś caiva parjanyo jayantaś ca mahendrakah4 /

ādityah4 satyakaś caiva bhr4śaś caivântariks4akah4 //34//

agnih4 pūs4ā ca vitatho rāks4asaś ca yamas tathā /

gandharvo bhr4n 4

garājaś ca mrs4 4aś ca pitr4-devatāh4 //35//

dauvārikaś ca sugrīvah4 pus4padanto jalādhipah4 /

asurah4 śos4a-rogau ca vāyur nāgas tathaiva ca //36//

mukhyo bhallāt4akaś caiva somaś caiva mr4gas tathā /

aditiś côditiś caiva dvātrim4śad-bāhya-devatāh4 //37//

 北東の方角から〔一番外側の〕諸神格の場所は、〔以下のように〕言われる。イーシ ャ、パルジャンヤ、ジャヤンタ、マヘーンドラ6、アーディトヤ、サティヤ、ブリシ ャ、アンタリクシャ7、アグニ、プーシャン、ヴィタタ、ラークシャサ、ヤマ、ガンダ ルヴァ、ブリンガラージャ、ムリシャ、ピトゥリといった神々、そして、ダウヴァー リカ、スグリーヴァ、プシュパダンタ、ヴァルナ8、アスラ、ショーシャ、ローガ、ヴ ァーユ、ナーガ、ムキャ、バッラータ、ソーマ、ムリガ、アディティ、ウディティの 32柱が〔一番〕外側にいる神格である。 38 39

āpaś caivâpavatsaś caivaˆntah4 prāguttare smr4tau /

savindraś caiva sāvindraś cântah4 prāgdaks4in4e sthitau //38//

indraś caivêndrarājaś ca daks4in4āparatah4 sthitatu /

rudro rudrajayaś caiva paścimottarato diśi //39//

 アーパとアーパヴァッツァがその1つ内側の北東に〔いる〕と記憶した。サヴィン ドラとサーヴィンドラが南東にいる。インドラとインドララージャが南西にいる。ル ドラとルドラジャヤが北西の方角に〔いる〕。

(9)

40

brahmā madhye sthitah4 śambhus tan-mukha-sthāś catuh4-surāh4 /

āryo vivasvān mitraś ca bhūdharaś caiva kīrtitah4 //40//

 中央にブラフマーがおわし、シャムブとも〔呼ばれる〕。その四辺に4神がいる。 アールヤ、ヴィヴァスヴァト、ミトラ、ブーダラであると言われる。

41

carakī ca vidārī pūtanā pāparāks4asī /

īśānâdi bahih4 sthāpyāś catus4kon4e striyah4 smr4tāh4 //41//

 チャラキー、ヴィダーリー、プータナー、パーパラークシャシーといった女神が、 イーシャなどの四角形の外側にいると伝えられている9

42

na padā bali-bhoktārah4 śes4ān4ām4 padam ucyate /

vim4śat-sūtraih4 sandhibhih4 sapta-vedaih4

    s4at4-s4at4-sam4khyābhiś catus4kaiś ca s4at4kaih4 /

arkaih4 śūlair veda-sam4khyāh4 sirābhih4

    sam4yuktam4 syād ast4 4akenaikam etat //42 1/2//

 残ったマス目に供物を受ける神々の場所はないと言われる。20本の線と28ヶ所の交 点、4本の杭、対角線で、36、24、12、8、1という〔81個の〕正方形を1つの図面 となる。 [mand44ūka-padam] マンドゥーカの構成 43 47ab

catuhs44ast4 4i-pade madhye brahman4aś ca catus4-padam //43//

āryakâdi-catur-devatāh4 prāg-ādi-tri-tri-bhāginah4 /

āpâdy-ast4 4âmarāh4 kon4es4v ardhârdha-pada-bhāginah4 //44

mahendra-rāks4aŝdyāś ca pus4pa-bhallāt4akâdayah4 /

diśi diśy atha catvāro devā dvi-pada-bhoginah4 //45//

jayantaś cântariks4aś ca vitathaś ca mrs4 4as tathā /

sugrīvo roga-mukhyaś ca ditiś caikaika-bhāginah4 //46//

īśâdy-ast4 4âmarāh4 śes4āh4 kon4es4v ardha-padêśvarāh4 /

(10)

方形をブラフマーにする。アールヤ等々の4神が東西南北に3マスずつ占めている。 アーパ等々の8神が四つ角の正方形を半分ずつ占めている。〔東は〕マヘーンドラか ら、〔南は〕ラークシャサから、〔西は〕プシュパダンタから、〔北は〕バッラータから であり、〔ブラフマーの周りの〕各方角で四神が二つのマスを占めている。ジャヤン タ、アンタリクシャ、ヴィタタ、ムリシャ、スグリーヴァ、ローガ、ムキャ、そして、 ウディティが一マスずつ占めている。イーシャ等の8柱が残った角地に正方形の半分 ずつとなっている。 47cd 48

evam4 kramen4a muñjīran mand44ūke vāstudevatāh4 //47//

svasva-pradaks4in4a-vaśāt pada-bhukti-kramam4 viduh4 /

brahmān4am4 ca nirīks4yaite sthitāh4 svasva-pade 'marāh4 //48//

 ヴァーストゥ・デーヴァターは、マンドゥーカでの順番に置かれるべきである。各々 左から右であることが望まれ、構成上望ましい部分にあると知れている。そして、ブ ラフマーに向かって、これらの神々が各々のマス目にいる。 [vāstupurus4a-vidhānam] ヴァーストゥ・プルシャの配置 49

s4ad4-vam4śam eka-hr4dayam4 catur-marmam4 catuh4siram /

medinyām4 vāstu-purus4am4 nikubjam4 prāks4iram4 viduh4 //49//

 ヴァーストゥ・プルシャは、地面の上で、背を丸めていて、東側を頭にして、6本 の骨(線)、1つの心臓、4つの弱点、4本の脈を持って横たわっていると知れてい る。

50 54 tasyôttamân4

gam4 vijñeyam āryako nāma devatā /

savindro daks4in4a-bhujah4 sāvindrah4 kaks4am ucyate //50//

āpaś caivâpavatsaś ca sakaks4o vāmato bhujah4 /

vivasvān daks4in4am4 pārśvam4 vāma-pārśvam4 mahīdharah4 //51//

madhye brahma-mayah4 kāyo mitrah4 pum4stvam4 vidhīyate /

indraś caivêndrarājaś ca daks4in4ah4 pāda īritah4 //52//

rudro rudrajayo vāma-pādah4 śete tv adhomukhah4 /

vastu-tribhāga-madhye tu vam4śāh4 s4at4-prāg-udan 4

(11)

vastu-madhye tu marmān4ī brahmā hr4dayam ucyate /

nis4kūt4âm4śāh4 sirā jñeyā ity es4a purus4ah4 smr4tah4 //54//

 その〔図形の〕一番上の部分はアールヤという名前の神格であると知れている。サ ヴィンドラが右腕であり、サーヴィンドラが右手であると言われる。アーパが左腕で あり、アーパヴァッツァが左手である。右の体側がヴィヴァスヴァトであり、ブーダ ラ10が左体側である。中央にあるブラフマーが身体全体であり、ミトラが性器に置かれ る。インドラとインドララージャが右足であると言われ。ルドラとルドラジャヤが左 足であり、逆向きで横になっている。また、中央の3部分に東から北に向かって6本 の骨がある。また、中央の場所にあるブラフマーの心臓が急所であると言われる。角 の部分が脈で〔結ばれて〕あると知れている。と、このようにヴァーストゥ・プルシ ャは伝えられている。 図5 ヴァーストゥ・プルシャ概念 55 56

gr4he gr4he manus4yānām4 śubhaˆśubha-karah4 smr4tah4 /

tasyân4

gāni gr4hân 4

gaiś ca vidvān naivôpapīd4ayet //55//

vyādhayas tu yathâsam4khyam4 bhartur an 4

ge tu sam4śrītāh4 /

tasmāt parihared vidvān purus4ân 4 gam4 tu sarvathā //56//  建物ごとに人々に吉運や、悪運をもたらすと記憶される。賢者は建物の部分で悪運 をもたらす部分に、決して、何も置くことはない。また、数え切れないほどの病気が それらの各部分と結びついている。賢者は、いつでも、ヴァーストゥ・プルシャのそ のような部分を避けるべきである。

(12)

[punar mand44ūka-padam]

再びマンドゥーカの構成 57

catvārim4śac ca pañcaite devatānām4 samuccayah4 /

ast4 4aˆst4 4aˆm4śe kasya dhas tan mukhānām ist4 4am4 gâm4śam4 vyañjanam4 s4od4aśānām /

ast4 4ānām4 kah4 s4od4aśānām4 kha-bhāgam4 mand44ūkâkhye sthind44ile taitiles4u //57//

 45柱の神格が集まって、64のマスを構成する神々を降ろす範囲をマンドゥーカと呼 ぶ。ブラフマー〔の部分が4で〕あり、それに面しているものに3マス分が望まれる。 16柱が2つ分で、8柱が1つ分、16柱が1/2分である。 図6 マンドゥーカ [paramaśāyi-padam] パラマシャーインの図面 58

paramaśāyi-pade nava-bhāga-bhāk kamalajo mukhatas tu catuh4-srurāh4 /

rasa-padā dvi-padā hi vidik-sthitā bahir athaika-padāh4 sakalâmarāh4 //58//

 パラマシャーインの形態では、ブラフマーは9マス分であり、また、その周囲の4 神は、6マスである。それの両者の間(の角の部分)は2マスである。外側のヴァー ストゥ・デーヴァターは全て1マスある。

(13)

図7 パラマシャーイン

iti mayamate vastu-śāstre pada-devatā-vinyāso nāma saptamo 'dhyāhah4

 以上、〔ヴァーストゥ・プルシャ・マンダラの〕構成ごとの〔ヴァーストゥ・〕デー ヴァターの配置と呼ばれる『マヤマタ』の第七章。

2.第8章

 本章では、前章で配置したそれぞれのヴァーストゥ・デーヴァターにどのような供 物を捧げるかと、種々の神のいずれにも用いることができる一般的な供物の捧げ方が 記される。 [bali-karma] 奉献行為 1

devānām4 sva-pada-sthānām4 bali-karma vidhīyate /

sāmānyâhatya-mārgen4a brahmâdīnām4 yathākramam //1//

 ブラフマーを始めとする自分自身のマス目のいらっしゃる神々にたいして、すべて に個別の方法で、奉献行為が規定されている。

[āhatya-balih4]

(14)

gandhamālyaiś ca dhūpena payasā madhusarpis4ā /

pāyasaûdana-lājaiś ca brahma-sthānam4 samarcayet //2//

 ブラフマーの場所は、いくつもの芳香のする花輪、香煙、乳製品、蜂蜜を入れた ギー、そして、ミルク粥と炊いた飯と焼き飯が指示されている。

3 4a

āryake phala-bhaks4yam4 syān mās4ânnam4 ca tilāni ca /

vivasvti viniks4iptam4 dadhi dūrvā ca mikrake //3//

mahīdhare bhaved dugdham evam antar balih4 smr4tah4 /

 アールヤには、切り分けた果実、食べられるようにした豆、そして、ゴマがあり、 ヴィヴァスヴァトには凝乳が、ミトラには雑穀が置かれる。ブーダラ11には、牛乳が

〔指示されている〕。以上のように〔ブラフマーの〕まわりの〔ヴァーストゥ・デーヴ ァターの〕奉献物は伝えられている。

4b 7

parjanyasyâjyam aindrasya navanītam4 sa-pus4pakam //4//

indre kost4 4ham4 ca pus4pam4 ca madhu kandāś ca bhāskare /

satyake madhukam4 dadyād bhr4śāya nava-nītakam //5//

mās4am4 rajani-cūrn4am4 ca gaganasya balim4 dadet /

dugdhâjyam4 tagaram4 vahneh4 śimbânnam4 pūs4n4i pāyasam //6//

kan4

kv-annam4 vitathe śīdhu rāks4ase balir is4yate /

śimbânnam4 kr4saram4 yāmye gandharve ‘khila-gandhakam //7//

 パルジャンヤの〔場所は〕溶かしバターが、ジャヤンタ12のところには、花を添えて 新鮮なバターが〔供えられる〕。インドラには臓物と花が、アーディトヤ13には蜂蜜と いくつもの球根が、サティヤには蜂蜜が〔供えられ〕、ブリシャに新鮮なバターを供え る。アンタリクシャ14の奉献物に豆とラックの粉を与えるべきである。アグニ15には牛 乳、溶かしバターと抹香が、プーシャンには莢のついた食べ物とミルク粥が〔供えら れる〕。ヴィタタにはインドビエが〔供えられ〕、ラークシャサにはラム酒が奉献物に 望まれる。ヤマには莢のついた食べ物とクリサラを、ガンダルヴァには混じり気のな い香水を〔供えるべきである〕。 8 12

bhr4garāje 'bdhi-matsyah4 syān mrs4 4e matsyaûdanam4 viduh4 /

(15)

sugrīve modakam4 pus4padankate pus4pa-toyakam /

verun4e pāyasam4 dhānyam4 śon4itenâasure balih4 //9//

sa-tilam4 tand44ulam4 śos4e roge syāc chus4kamatsyakam /

svinnam4 hāridrakam4 vāyau nāge madyam4 ca lājakam //10//

dhānya-cūrn4am4 hi mukhyasya dadhi sarpiś ca sammatam /

gulaûdanam4 tu bhallāt4e some dugdhaûdanam4 dadet //11//

śus4kamām4sam4 mr4ge dayāt devamātari modakam /

uditau tila-bhaks4yen4a ks4īrānnam4 sarpir īśake //12//

 ブリンガラージャには海の魚があり、ムリシャには魚と炊いた米と知られており、 ピトゥリ16には絞り油が、ダウヴァーリカには種が奉献物である。スグリーヴァには砂 糖菓子が、プシュパダンタには花を入れた水が、ヴァルナにはミルク粥とモロコシが 〔供えられ〕、アスラには血で奉献物が〔作られる〕。ショーシャにはゴマと一緒に穀物 粒が、ローガには干し魚が、ヴァーユには煮出したカダムバ樹が、ナーガには酒と焼 き飯があるべきである。ムキャの〔場所には〕モロコシの粉、凝乳とギーが考えられ る。バッラータには糖蜜と炊いた飯を、ソーマには牛乳と炊いた飯を与えるべきであ る。ムリガには干し肉を、アディティ17には砂糖菓子を与えるべきであり、ウディティ には食べられるようにしたゴマ、イーシャには乳と調理した米とギーが〔供えられる〕。 13 14

lājam4 dhānyam4 savindrasya sāvindre gandhatoyakam /

basta-medhas tathā mudga-cūrn4am indrêndrarājayoh4 //13//

rudre rudrajaye mām4sam4 svinnam āpâpavatsayoh4 /

kumudam4 matsya-mām4sam4 ca śan 4 kha-kacchapa-mām4sakam //14//  サヴィンドラの〔場所には〕焼き飯とモロコシが、サーヴィンドラには良い香りが する水が、それからインドラとインドララージャにはヤギの油とインゲン豆の粉が〔供 えられる〕。ルドラとルドラジャヤには煮た肉を、アーパとアーパヴァツァには白睡 蓮、魚肉、巻貝や亀の肉を〔供えるべきである〕。 15

madyam ājyam4 carakyās tu vidāryā lavan4o balih4 /

pūtanāyās tilam4 pist4 4am anyāyā mudga-sārakam //15//

 チャラキーの〔場所には〕酒と溶かしバターを〔供えるべきであり〕、ヴィダーリー の〔場所では〕塩が奉献物であり、プータナーの〔場所には〕ミロバランの実を、残 り(パーパラクシャスィー)の〔場所には〕インゲン豆が入った水を〔供えるべきで ある〕。

(16)

図8 パラマシャーインにおける奉献物

[sādhāran4a-balih4]

一般的な奉献物 16 17

sādhāran4a-balih4 śuddha-bhojanam4 saghr4tam4 dadhi /

sarves4ām api devānām4 gandhâdīni dadet kramāt //16//

kanyakā vā tha veśyā vā bali-dhāran4a-yogyakāh4 /

an4

ga-nyāsa-kara-nyāsaih4 pūta-cetāh4 yathākramam //17//

 すべての神々に一般的の奉献物は、清浄にした食べ物、ギーを混ぜた凝乳、香など で、順々に供えるべきである。そして、乙女たちまたは神の侍女たちが奉献物を捧げ 持つのに適している。清浄な心が、腕や足の所作と手の所作によって、次第に〔高ま る〕。 18 19 on4 kārâdi-namo-antena svasva-nāmâbhidhāya /

datvā pūrvam4 jalam4 paścāt sādhāran4a-balim4 dadet //18//

tattad-yogya-balim4 paścād deyam4 toyam4 tathā budhaih4 /

grāmâdīnam4 tu mand44ūka-pade paramaśāyike //19//

 「オーム」という音から「ナマス」で終えるように、個々の〔ヴァーストゥ・デーヴ ァターの〕名称を〔間に挟んで〕言い、始めに水を捧げ、次に共通の奉献物を供える べきである。賢者によって、あらゆる適した奉献物が供えられ、それから、水が〔供 えられる〕。また、村などがマンドゥーカの構成やパラマシャーインで〔計画されるべ きである〕。

(17)

20

santarpya devatā hy evam4 pūrvokta-vidhinā kramāt /

visarjayet tato devān vinyāsârtham4 tu mantravat //20//

 前述の規則どおりに神々を喜ばせ、そして、神々を配置するために、マントラの規 則どおりに誦させるべきであり、

21 22a

brahmān4am4 bāhya-devām4ś ca tatad ukta-pade nyaset /

devālaya-vidhānârtham4 dvārârtham4 te prakīrtitāh4 //21//

śes4āś ca nis4padāh4 sarve raks4ārtham4 tu niveśitāh4 /

 ブラフマーと多くの神々をあらゆる言及された部分に配置するべきである。それら は、寺院の配置、楼門〔の配置〕のために、伝えられている。そして、残りのすべて の乗り物も、守護を受けるために、固定されている。

22b

evam4 grāmâdis4u proktam4 rahasyam idam īritam //22//

 同様に、村落などにおいて指示された秘密のことが伝えられている。 23

kr4tôpavāsah4 sthapatih4 prabhāte viśuddhadeho vikalam4 gr4hītvā /

viśes4a-sāmānya-balim4 surname yathokta-nītyā vidadhīta samyak //23//

 日の出時に、断食をした棟梁は、清浄なからだになり、足りないものなく所持して から、神々への残るすべての供物を同じのように儀礼をしてから、すべてに配るべき である。

iti mayamate vastu-śāstre bali-karma-vidhāno nāma ast4 4amo dhyayah4 /

 以上、建築論書『マヤマタ』における奉献行為と配置という名称の第8章 ――――――――――――― 1 同義語のためバースカラ(bhāskara)と記される場合がある。 ジャラーディパ(jalādhipa)と記される場合がある。 ヴァーユ(vāyu)と記される場合がある。 サーヴィトリ(sāvitr 4)と記される場合がある。 5 マヒーダラ(mahīdhara)と記される場合がある。 アインドラ(aindra)と記される場合がある。

(18)

 同義語のためガガナ(gagana)と記される場合がある。 註2参照。 この4神は、ヴァーストゥ・プルシャ・マンダラの外に配されるので、厳密にいえ ばヴァーストゥ・デーヴァターには入らない。 10 註5参照。 11 註5参照。 12 註6参照。 13 註1参照。 14 註7参照。 15 vahni- の意味に「火」があるので、ここではアグニを指す。 16  原文の nirr 4tau は「東南の」という意味の nairr4ta と関連するもので、ヴァーストゥ・ デーヴァターの位置としては、ピトゥリが相当するので、ピトゥリを指すと考えられ る。 17  アディティには、「アーデティヤの母」という意味があるので、このdevamātr 4-は位 置からアディティを指すと考えた。 《テクスト》

Bruno Dagens ed. & trans., Mayamatam treatise of housing, architecture and iconography, Kalāmūlaśāstra series 14, Delhi, 1994.(底本)

Bruno Dagens éd. et notes, Mayamta traité Sanskrit d’architecture, Publications de l Institut Français d Indologie No.40-1, Pondichéry, 1970.

《参考文献》

出野尚紀「建築論書 Samarān4

gan4a-sūtradhāra における Vāstupurus4amand44ala の構成」『印

度學佛教學研究』第53巻1号、日本印度学仏教学会、2004年、pp.185 187。

出野尚紀「ヒンドゥー古典建築論書における Vātupuruśamand44ala の形態の展開」『東洋

大学大学院紀要』第42集、東洋大学、2006年、pp.123 135。 Shankar Gopal JOSHI, Medicinal Plants, Delhi, 2000.

Michio YANO, Knowledge of Astronomy in Sanskrit Text of Architecture Oritentation Methods in the Īśān4aśivagurudevapaddhatī , Indo-Iranian Journal 29, Brill, 1986, pp.17 29.

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