円分塔の非可換類体論
藤原 一宏∗
2001
年5
月21
日1 導入
F をQ上g 次の総実代数体とする。素数pを固定し、F の円分Zp拡大をF∞⊂F(ζp∞) と書く。この F∞ の絶対 Galois 群の p 進表現 ρ : Gal( ¯F∞/F∞) →GL(N,Q¯p) を分類記 述したい。もう少し正確に問題を述べよう。
Γ := Gal(F∞/F)→∼ Zp と書く。この円分塔の n-th. layerFn は部分群pnZp ⊂Zp に対 応する部分体である: Gal(Fn/F)Z/pnZ (n ≥1)。F∞ およびF の整数環を各々 OF∞, OF と書き、それぞれのスペクトルを C = Spec(OF∞), C = Spec(OF) と書く。C は C の Γ 被覆になっている。
C の閉点の有限集合 Σ ⊂C で p を割る素点を含むものを取る。簡単のためにΣ は F 上定義されている、すなわちC の閉点の有限集合Σの C での逆像になっているとする。
F∞ の Σ の外では不分岐な極大 Galois 拡大のGalois 群を GΣe :=π1(C\Σ) で表せば、完全列
1−→GΣe −→GΣ −→Γ−→1
から準同型 Γ→Out(GΣe) が得られる。この Γ対称性を用いて Gal( ¯F∞/F∞)の代わりに GΣe の p進表現を記述したい。
2 F
∞上の Ordinary 表現
既約 p進表現 ρ:GΣe →GL(N, Ep) が ordinary とは (ord) p を割る任意の素点 ˜v で ρ˜v =ρ|G˜v は ordinary。
∗名古屋大学多元数理学研究科
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を満たすことだった。ただしGv˜ は v˜での分解群である。局所 ordinary 表現の定義はこ こでは説明しないが、例えば N = 1 ならば ρv˜ が不分岐なことであり、N = 2なら
ρv˜
χ1,v˜ ∗ χ2,˜v
かつχi,v˜ たちが不分岐なことである。
目標: 上のような ordinary表現 ρ/F∞ を分類したい。
これは依然としてコントロール不能な問題である。
3 Ordinary 表現の例 ( 肥田理論 )
N = 2の場合を考える。
肥田氏は80年代後半に nearly ordinary Hecke 環を構成した。それは可換な完備局所 NoetherZp 代数TF で Λ 代数になっているものである。ただし p を割るF の素点v に 対して Ov× の pro-pパートをΓv (局所変数の群)、π1(OF[1/p])ab の pro-p商を ΓF (大域 determinant 変数 の群) としたとき、Λ は
v|p Γv×ΓF の群環である。よく知られて いるLeopoldt 予想はΓF の Zp 上のランクが 1 であること、言い換えればΓ の Zp ラン クが g+ 1であることと同値である。従って例えば F が Q 上アーベル拡大である場合に はこれが知られている。
TF は Hilbert保型形式に作用するHecke作用素Tv (v /∈Σ)たちで生成されている。そ して Hecke 固有値f :TF → Op (準同型) で
v|p Γv ×ΓF の位数有限指標に対応するも のに対して、Op に係数を持つウェイト (2, . . . ,2)の Hilbert new formが対応する。
さらに、巨大な Galois 表現
ρT :GΣ −→AutΓF(L), L はTF2 内のTF 格子 で nearly ordinary:
ρT|Gv
∗ ∗
χv
, χv :Gv → Op[[Γv]]× 普遍指標, ∀v|p
なものがある。ρT は Hilbert 保型形式に付随するGalois 表現たちをinterpolate してい る。これから F∞ の ordinary 表現を得るには、変数制限
Γv −→γv −→∼ Zp, γv は局所Zp 拡大に対応する Zp 拡大 ΓF −→0
をすればよい。このとき、Γcycl:=
v|p γv とおけばこれはランクがS ={v|p} の Zp 加 群である。Λ =Zp[[Γcycl]] として、局所円分変数付きnearly ordinary Hecke環を
TF,cycl := (TF ⊗ΛΛ)red 2
と定める。これにより Galois 表現ρTF,cycl が対応するが、この F∞ の Galois 群への制限 ρBig は ordinary 表現になる。
こうして肥田理論から ρBig を制限することで GL(2) に値を持つ ordinary 表現の例が 得られる。
注意 3.1. こうして得られる表現の大部分は motivic でない。
ここで基本的な問題は
全ての ordinary 表現は上のようにして構成されるか。
ということである。これはF∞上の ordinary 表現で有限のlayerFn 上には決して落ちな いものがあるので正しくないことがすぐわかる。そこで次の基本問題は、
問題 3.2. 既約 ordinary 表現 ρ:GΣe →GL(2, Ep) が局所 descent 条件 (†)p v˜|p では ρ˜v は Fv (v ∈SpecOF) の nearly ordinary 表現に落ちる。
(†)-p v˜p では ρ˜v は Fv に落ちる。
を満たせば、ρ はある有限 layer 上定義されているか。
ということになろう。すなわち ρ に対して ρ : GFn → GL(2, Ep) があって ρ ρ|F∞
ということになる。これができれば、F∞ 上の ordinary表現の分類を各有限 layerFn 上 のそれに帰着できる。後者の問題は Serre の予想のようなものであり、例えば N = 2な らば私自身による R=T 定理によって攻略できる。
問題 3.2 は強すぎることをいっているよう見える。しかしN = 1 で F が Q 上アーベ ルな場合を考えると、GL(1) に対する問題3.2 は岩澤-Greenberg予想 (1973) : 「F が総 実ならばπ1(C) abp は有限。」に同値である。すなわち上の問題は岩澤-Greenberg 予想の一
般化(非可換版) と考えられる。
4 主定理
問題 3.2 はもちろん難しいが、その根拠を証明することができる。
p は奇素数、F が Q 上アーベルであるとする。Totally odd な2次指標 χ :GF →Q¯×p で
(1) χはv|pで不分岐かつ、χ(v)= 1。χはTeichm¨uller指標ωのべきでない。H1f(F, χ) = 0 (Fχ/F の相対類数がp で割れない)。
(2) 素点y で χ(y)= 1, χω(χ) = 1。
なるものを取る。F を固定したとき、p を十分大きく取ればこのような χ が存在するこ とは内藤、百瀬氏らによって知られている。また p = 3 ならばこのようなものは常に存 在する。このとき ρ˜:GF →GL(2, k), k= ¯Fp であって
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• 0→k→ρ˜→χ→0;
• ρ˜|Iv は v =y で split し、y では split しない。
なるものがある。
定理 4.1. n ≥0 に対して ρ˜の deformation ρ で ρ|G˜v が Fn,v に落ちるものたちを統制す
る極小 deformation 環を R∞,n と書く。このとき次の2条件は同値である。
(1) n >>0 ならば R∞,n =TFn,cycl,ρ˜ (問題3.2 が成立)。
(2) 岩澤-Greenberg 予想が F に対して成立。
(2) から (1) は Taylor-Wiles系を使って証明される。(1) から (2) は Eisensteinイデア ルの解析による。
ある一つのχについて(1) (GL(2)ケース)を示すことで、岩澤-Greenberg予想(GL(1) ケース)が従う点が重要である。
(今野 拓也 記)
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