1
第 二 章
アジアにおける日系コンビニの展開状況 浜本 篤史
はじめに
第1章でみたように、本書の目的は、アジア諸国における「日本型コンビニエンススト ア」の展開について、その地域間比較をおこなうことにある。
セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなどの日系コンビニが、現地社会の既存 の流通、小売り、サービス業とどのような軋轢・調整を経ながら「現地化」(土着化)して いくのか、このプロセスを明らかにしていくことがここでの大きな主題である。また同時 に、日系コンビニと提携して展開する地元資本のコンビニ、あるいは日系コンビニに刺激 を受けて誕生するローカルなコンビニ(のような店)も、当該社会にとって重要な意味を 持つので、ここで「日本型コンビニ」として考察の対象に含まれる。
しかしながら、こうした日本型コンビニを検討する前に、そのための土台として日系コ ンビニを中心にみていきたい。5つの調査対象国・地域における詳細な分析は、第3章以 降で論じられるが、本章ではまず、これらの全体的な見取り図を整理しておくことにしよ う。
Ⅰ. 日系コンビニ各社のアジア展開動向
コンビニエンスストアの起源は、米国テキサス州のオーククリフという町の小さな氷小 売販売店とされる。1927年に誕生したこの店が、のちのセブンイレブン(米国サウスラン
ド社(現7-Eleven,Inc.))である。ガソリンスタンド併設型が多い米国のコンビニに対して、
この小売形態は日本では、独自の進化を遂げ、「現地化」した。
日本におけるコンビニエンスストアは、1971年にココストア(愛知県春日井市)とセイ コーマート(札幌市)、1972年のファミリーマート実験1号店(埼玉県狭山市)が端緒で ある。とりわけ、米国発祥のセブンイレブンを日本で展開しようとして、1973年11月に 設立した(株)ヨークセブンが、設立エリアサービスおよびライセンス契約を結び、翌1974 年5月に東京都江東区に第1号店(豊洲店)オープンしたことは、日本のコンビニ展開の 幕開けとも位置付けられる。
2
その後、ローソン(1975)、サンチェーン(1976)、サンエブリー(1977)、ヤマザキデ イリーストアー(1978)、スリーエフ(1979)などと続き、1980 年にはサンクス、サーク ルK、ミニストップが営業を開始するなど、以後、日本国内で急速に拡大していったこと はいうまでもない。本書ではこの過程を検討することはしないが、大手4社の都道府県別 の展開状況を確認すると以下の通りになる。津々浦々まで普及した感もある国内コンビニ であるが、地域ごとの隔たりは大きいともいえる。また、ブランドによって、進出動向の 地域差も大きく、業界首位のセブンイレブンが、すべての地域で規模的優位を保っている わけではない。同社
国内コンビニ店舗数
セブンイレブン ファミリーマート ローソン ミニストップ
北海道 959 248 [149] 628 0
青森 49 249 [172] 219 32
岩手 131 191 [67] 165 12
宮城 389 377 [99] 208 121
秋田 85 174 [87] 184 0
山形 173 161 [42] 81 0
福島 420 184 [13] 107 85
茨城 632 345 [39] 158 115
栃木 422 234 [44] 147 34
群馬 456 133 [17] 101 56
埼玉 1,140 828 [146] 532 161
千葉 1,055 665 [109] 464 198
東京 2,483 2,604 [520] 1,535 295
神奈川 1,361 1,111 [274] 835 143
山梨 207 88 [0] 119 0
長野 442 289 [121] 171 0
新潟 407 198 [91] 139 0
富山 130 180 [66] 189 0
石川 126 297 [180] 104 0
福井 67 166 [55] 106 8
岐阜 167 419 [262] 156 101
静岡 703 622 [301] 236 152
愛知 1,018 1,818 [990] 581 220
三重 138 445 [237] 121 97
滋賀 228 167 [44] 154 7
京都 320 354 [89] 322 43
大阪 1,140 1,482 [296] 1,010 89
兵庫 682 591 [139] 640 48
奈良 141 148 [32] 128 14
和歌山 77 127 [26] 134 0
鳥取 16 70 [0] 115 0
島根 43 66 [0] 120 0
3
は「ドミナント方式」と呼ばれる出店方針を採用していることもあり、高知県(2015)、青 森県(2015)、鳥取県(2016)などは最近まで未進出の「空白県」であった。今後予定され ている沖縄県への進出によって全国すべての都道府県への出店となる。このように、国内 では地域差をともないながらのコンビニ展開ではあるが、全体として国内市場の飽和状態 が早くから懸念されており、各社は海外進出にその発展戦略を描くようになっていった。
Ⅱ.日系コンビニ各社のアジア展開動向
海外旅行に出かけた際に、特にアジア地域では、馴染み知ったる日系コンビニをみかけ ることが多くなった。東アジア、東南アジア地域を出張や旅行で訪れると、「タイにはこん なにセブンイレブンが多いのか」、「上海や重慶、武漢ではローソンがよくあるのに、南京 ではみかけないな」などといったことに気づくだろう。現地に滞在する留学生や駐在員に とって、駆け込み寺のように利用することもあるだろう。また、ハワイやグアムでも、日 本人観光客に「ABCストア」が人気なのは、日本に根付いたコンビニ文化の延長線上にあ るものとみてとれる。そこで旅行者や駐在者は、日本的なるものにほっとし、他方では、
日本と異なる製品やサービスを目撃して、それは楽しみでもあるだろう。
しかしながら、アジア地域全体における各社の進出・分布状況はどうなっているのだろ うか。そして、いつ頃からどのように展開しているのだろうか。川邉信夫[1997; 2012]や新 聞雑誌記事、各社ウェブサイトを参照しながら、ここでは、日系コンビニの海外進出状況
岡山 295 260 [112] 155 0
広島 566 278 [33] 186 0
山口 307 99 [0] 123 0
香川 101 138 [17] 131 38
愛媛 97 261 [132] 212 10
徳島 90 93 [21] 134 21
高知 34 113 [56] 132 0
福岡 937 564 [52] 447 142
佐賀 185 80 [0] 66 17
長崎 172 161 [0] 105 0
熊本 308 204 [0] 140 0
大分 157 120 [0] 169 4
宮崎 182 123 [0] 103 0
鹿児島 184 282 [0] 192 0
沖縄 0 318 [0] 191 0
合計 19,422 18,125 12,395 2263
出所:各社ウェブサイト(2017.3.9閲覧)
[ ]内は、サークルK・サンクス。ローソンはナチュラルローソン、ローソンストア100を含む。
4
の全体像を概観していくことにしたい。下表がその全体像である。
日系コンビニ各社の海外店舗数
セブンイレブン ファミリーマート ローソン ミニストップ
米国(ハワイ含む) 8,563 0 2 0
メキシコ 1,878 0 0 0
カナダ 514 0 0 0
韓国 8,556 0 0 2,362
中国 2,357 1,875 655 64
台湾 5,107 3,071 0 0
タイ 9,542 1,138 47 0
ベトナム 0 122 0 73
マレーシア 2,122 4 0 0
シンガポール 417 0 0 0
インドネシア 155 70 38 0
フィリピン 1,995 95 16 492
オーストラリア 646 0 0 0
ノルウェー 154 0 0 0
スウェーデン 183 0 0 0
デンマーク 187 0 0 0
アラブ首長国連邦 7 0 0 0
合計 61,554 6,375 758 2,991
出所:各社ウェブサイト。セブン(2016.12)、ローソン(2016.2.29)、ミニストップ(2017.2.28)の集 計による。
一瞥してわかるように、全体としては、国内首位のセブンイレブンが海外でも圧倒的な 店舗展開をおこなっているといえる。ただしセブンイレブンは、タイをはじめとして資本 関係を結ばないライセンス契約がほとんどであり、こうした点も含めて各社ごとの動向を 確認しておこう。
1. セブンイレブン
セブンイレブン・ジャパンは、米国サウスランド社を 1991 年3 月に子会社化して、同
社は 7-Eleven,Inc.となった。セブンイレブン・ジャパン本社による海外進出は、サウスラ
ンド社時代に結んだライセンス契約に基づくものが多いが、子会社化した後も、同社が日 本とハワイを除く各国の会社にエリアライセンス権を付与している。このようにセブンイ レブンの海外展開は、各国にエリアライセンスを付与し、フランチャイージー契約によっ てロイヤリティを得る形態が大半である。
店舗数において、韓国、タイ、マレーシア、フィリピンにおいては他の日系コンビニ各 社に大きく水をあけており、台湾、中国などはファミリーマートや現地資本との競争も激
5
化しているが、優位に立っている。ファミリーマート、ミニストップに先行されていたベ トナムでも、2017年に1号店を開店予定である。
そのなかで中国事業については、直接出資を行っている。2004年1月に合弁会社「セブ ン‐イレブン北京有限会社」を設立し、同年4月に北京東城区の東直門店を第1号店とし てオープンしている。その後、成都(2011)、重慶(2014)などにも進出しており、現時点 で出店スピードは早いとはいえないものの、店舗数拡大を企図している。北米や豪州、北 欧には日系コンビニ会社として唯一、進出している。
2. ローソン
ローソンの海外事業については、鳥羽・劉[2016]に詳しいが、やはりここでは簡潔にみ よう。中国(上海)への進出は1996年7月と早く、(串刺し)おでんは同社が中国で広め たといわれており、日系コンビニの看板商品としてニーズの掘り起しに成功しているとい える。しかしながら、ローソンの海外事業は他社と比べて全体的に出遅れ、後述するよう に上海事業の混乱も含め、低迷しているのが現状である。タイやフィリピンにも進出して いるものの、インドネシアではやや苦戦している。
こうした事態からの脱却を図るため、同社は 2009 年から海外戦略の大幅見直しに着手 し、2011年には現地企業から経営権を取り戻し、以後、日本本社の中国事業を主導する路 線となった[又吉, 同上]。そして2016年7月、2020年までに中国における3千店体制構築 を含めて、海外店舗数を現在の約6倍にあたる最大5千店に引き上げる目標を竹増貞信社 長が発表した[『日本経済新聞』2016年7月18日]。ベトナムやミャンマーへの出店も視野 に入れるという[『日刊工業新聞』2016年6月1日]。
こうした日本本社主導の方針は、セブンイレブンやファミリーマートとは一線を画した 取り組みであり、その経営上の成否のみならず、社会文化的な観点からも注目に値する。
3. ファミリーマート
ファミリーマートは 2016年 9 月に業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニー グループ・ホールディングスと合併した。これにより、国内では1万7000店舗規模となり、
首位セブン―イレブンに肉薄している。
海外市場について、1988年から台湾市場への先鞭をつけた先駆者であり、早い時期から 積極的な展開をおこなっている。タイには1993年に進出した経験が土台となっており、現 在では、ベトナム、インドネシア、フィリピンなど東南アジアでの事業を拡大している。
この間、2014年にそれまで8千店舗近くを展開し、海外店舗の6割を占めていた韓国市場 から撤退する一大転換があった(以後、CUへと店舗名を変更)。現在では、台湾が同社最 大の市場である。台湾では、日本国内よりも先にカウンターコーヒーの提供をはじめたほ か、夏期にはフラッペ商品が人気である[同社ウェブサイト]。
6
中国は同社にとって二番目に店舗数が多い。2004 年に上海へ出店を開始し、2007 年 1 月に日系コンビニとして初めて広東省へ出店した。同9月には蘇州にも出店するなど、成 長スピードを早めているが、この点は後述する。
そのほか、ベトナムに2009年12月、インドネシアに2012年10月、フィリピンには、
2013年4月にそれぞれ第1号店を開店している。とりわけ、ベトナムでは南部のホーチミ ン市において日系コンビニの先駆けとして進出しており、市場開拓レースに先行している 状況にある。日本では提供していない、ドラえもんの肉まん・あんまん類でも注目を集め た。さらに2016年末にマレーシアにおいても、現地食品大手「QLリソーシーズ」とのラ イセンス契約によりクアラルンプールで1号店を開く予定となっている。環太平洋連携協 定(TPP)発効後に、マレーシアが外資企業のコンビニへの出資を認める見通しである点 を追い風に、運営にも関わる方針という[『日刊工業新聞』2016年4月13日]。
なおファミリーマートは、2004 年に米国に現地法人の子会社を設立し、西海岸に
「FAMIMA」の店名で8店舗展開していたが、計画通りの店舗拡大を果たせず赤字も続き、
アジアでの出店に経営資源を集中するとして2016年の撤退を表明した[『日本経済新聞』
2015年8月27日]。
4. ミニストップ
ミニストップは、国内では1980年7月に横浜市に「大倉山店」を1号店とした開店し ており、コンビニ業界では後発である。ソフトクリームや店内調理商品、イートインスペ ースなど、ファーストフード店の要素を取り入れているところで差別化を図ってきた。
韓国およびフィリピンを中心に、アジア5カ国に進出しており、すでに海外店舗数が国 内店舗数を約600店上回っている。とりわけ、1990年11月の海外初進出となった韓国市 場は日本国内と同規模の店舗数を展開しており、ファミリーマートが撤退した現在、存在 感をもっている。
その後、フィリピン(2000.12)、中国(2009.7)、ベトナム(2011.12)と次々に進出し、
インドネシアにも2012年8月に「PT.BAGAGIA NIGARA LESTARI(パバギア・ニアガ・
レスタリ社)」とエリアフランチャイズ契約を結び、2013年6月に第1号店を出店してい る。前後して、2012年5月に、同社の海外店舗数は国内を上回り、海外市場へのシフトを 重視している。
Ⅲ.アジアを中心とする国・地域別のコンビニの進出 動向
以上では各社ごとの進出動向をみてきたが、次に、国・
地域別の観点からみていこう。全体としては、進出時
7
日系コンビニ主要3社の進出状況(2015)
期が比較的早く、展開が進んでいるのが韓国、台湾およびタイである。そして、中国、フ ィリピン、マレーシアは現在展開過程にあり、インドネシアとベトナムは初期段階にある。
ミャンマー、カンボジア、ラオスは未進出である。
これらのうち、本書では対象とする台湾、タイ、中国に、ベトナムとインドネシアを加 えて5カ国・地域に焦点を絞り、以下にみていこう。
台湾 中国 タイ インドネシア ベトナム
進出時期 S:1979/1987 F:1988
S:1981(香港)/2004(北 京)
F:2004(上海)
L:1996(上海)
S:1989 F:1993
S:1990/2009 L:2011
F:2009
特徴的商 品
串刺しおでん 仏教グッ ズ
ハラル商品 ドラえも ん中華ま ん(F) 普及中の
サービス
ポイントシール/
宅配受取り
公共料金支払い代行 体重計 二階建て店舗 のイートイン
*S=セブンイレブン(2015年12月)、F=ファミリーマート(2015年3月)、L=ローソン(2015 年11月)
1. 進出の早かった台湾とタイ
現在、タイにおいて、コンビ二といえばセブンイレブンであると代名詞のような存在で あるが、米サウスランド社がライセンス供与して、初出店したのは1989年のことであった。
タイでの経営会社は大財閥 CP グループが親会社であり、セブンイレブンといえば、すな
わちCP ALLのことを意味している。これまでにセブンイレブン・ジャパンによる経営関
与の実態はこれまでにほんとんなく、タイの人々のあいだでは日系コンビニとはまったく 認識されていない。2016年現在で9,542店あり、1万店突破が視野に入っている。なお、
店舗が増えたのはアジア通貨危機から立て直した 2000年以降であるという[ソンポップ・
マナランガン・石田正]。二番手のファミリーマートは1993年の進出であるが、1,108店で ある。当初の現地委任型から、現在では、日本の手法を導入しようとしている。後発のロ ーソンは、日本流のサービスで勝負しようとする方針である。
台湾は、セブンイレブンがやはり米サウスランド社のライセンス制約により、統一超商 との連携しながら、事業展開していった。ファミリーマートは、国産汽車股份有限公司と の合弁会社「全家便利商店股份有限会社」が1988年に設立され、経営主導権は現地パート ナーに引き渡すことで、黒字で成長を続けている[鐘2015]。
8 2. 現在展開中の中国
アジア各国のコンビニのなかでも、中国はいま爆発的拡大の前夜にあるが、その歴史を 遡れば、1981年の香港が端緒になる。これは、米国セブンイレブンによるライセンス供与 の形であった。
日系コンビニとして中国大陸に初進出したのは 1996 年のローソンである。舞台は上海 である。しかしながら2000年以降に地場コンビニとの競争が激化し、出店数の停滞を余儀 なくされた後、ローソンの中国事業の経営権を持っていた現地企業が、国策の一環で再編 されてしまったことにより、日本からの駐在員が大幅に減らされた[又吉2016]。その結果、
中国戦略が迷走し、消費者ニーズに応えられず、ブランドイメージは低下してしまったと いう[又吉, 同上]。同社は一時、現地の合弁会社の上海華聯羅森に経営を委ねていたが、現 在では、ローソンの持ち株比率を引き上げ、現在は出店速度を落としても日本式サービス の重視に回帰して立て直しを図っている。上海では現地企業とパートナー契約を結んで運 営している店舗と直営店があるが、新規出店地域では現地企業とパートナー契約を結んだ 店舗を中心として、より地域に合わせた店舗や商品の開発を進める方針だという[『日刊工 業新聞』2016 年6月1日]。同時に、上海エリア以外にも、特に武漢および重慶などの内 陸市場をターゲットとして、すでに店舗展開を加速化している状況にある。2016 年現在、
上海458店、重慶110店、大連53店、北京34店となっている。
他方、ファミリーマートは、食品大手として知られる台湾の頂新グループと提携した出 店戦略をとっている。ローソンとは対照的に出資比率を下げ、日本式のこだわりよりも中 国事業のノウハウをもつ台湾資本の頂新グループに任せてシェア拡大を急いでいる。とり わけ、ファミリーマートの出店速度は早く、上海の1150店ばかりでなく、広州215店、蘇 州169店、杭州115店、無錫69店、成都64店、深圳57店、北京21店、東莞15店と出店 エリアとその規模の拡大を図っている。ファミリーマートの中国事業は黒字化も果たして いるところから、「中華系資本とのパートナーシップでうまく成果を出したファミマはより 現地化を進め、一方で思ったような成果を出せなかったローソンは、出資比率で過半を取
北京 青島 上海 重慶 広州 その他 小計 セブンイレブン 187 32*1 81 25 1727*2 130 2182 ローソン 34 0 458 110 0 53 655 ファミリーマート 14 0 980*3 0 185 351 1530 ミニストップ 0 61 0 0 0 0 61
計 235 93 1519 135 1912 534 4428
出所:各社IR情報 *1山東省のデータ *2広東省,香港,マカオの合計 *3上海市,江蘇 省,浙江省,湖北省の合計
9
り、自社主導の商品開発や出店戦略に舵を切った」とみられている[白壁 2014]。
セブンイレブンも、上海市場においては、やはり台湾の食品大手である統一超商にフラ ンチャイズチェーンを委ねる形をとっている。2008年4月に「セブン‐イレブン中国有限 公司」、2010年12月に「セブン‐イレブン成都有限公司」、2013年12月には重慶市で開店 するなど、上海、香港以外では、東南アジアとは異なる出店戦略を採っている。また、ミ ニストップは、青島エリアに特化した出店戦略をとっている点で特徴的である。
ところで、日系コンビニに限らず、中国のコンビニ市場は成長余地が大きいとみられて いる。中国経済の成長減速と電子商取引の影響を受けたスーパーや百貨店の苦戦に対して、
コンビニは過去 3 年で年平均 15-17%の販売額伸び率を示しており、ただし、中国全土で 62社8万3004店あるコンビニのうち、上記4社は4428店と全体のわずか5.3%を占めて いるに過ぎない[中国連鎖経営協会, 2015年末現在]。日系コンビニ各社は、「美宜佳」、「天 福」、「快客」などのローカル・コンビニチェーンを競合相手とはみなしておらず、日本の 経済誌などでも日系コンビニの動向のみに焦点をあてており、その実態はほとんど知られ ていない。
3. これからのインドネシアとベトナム
インドネシアでも、やはり米セブンイレブンがライセンス契約をしたのが 1990 年のこ とであるが、セブンイレブン・ジャパンとしては2009年であり、現在187店である。ロー ソンは2011年で38店、ファミリーマートは29店である。現地の個人商店保護のために飲 食業としての許可しか下りず、やむをえずイートインフロアを併設すると、これが人気と なってカフェやレストランに近い存在として定着している[『日本経済新聞』2013 年7 月 10日]。ほかに現地コンビニとして、アルファマート(Alfamart)、インドマレット(Indomaret) がある。インドマレットの系列店であるインドマレット・フレッシュ(Indomaret Fresh)
では、果物の皮をむいてカットして提供してくれるサービスもある。
ベトナム市場は現在、ファミリーマートとミニストップが先行している。特にファミリ ーマートは、ベトナムの WTO加盟により、小売りへの外資参入が容易となったことを受 け、同社は、同年に早くも初進出しており、現在、100 店舗超に拡大している。フータイ とファミマは2009年に提携したが失敗。経営悪化でタイのTCCに身売り。ファミリーマ ートはビーズ・マートへ衣替えした。ベトナムでは、2013年にエコノミック・ニーズ・テ スト(ENT)によって、外資出店ガイドラインが明確化しており、参入しやくなっている。
また、日系各社が扱うキャラクターとして、ファミリーマートはドラえもん、ミニストッ プはピカチュウを宣伝広告の活用している。
ベトナムでは後発となるセブンイレブンは、やはり他の東南アジア諸国での進出形態と 同様に、マスターフランチャイザーである米子会社7-Eleven, Inc.が「Seven System Vietnam
Co.,Ltd.と契約を締結し、ホーチミン市での1号店開店準備をおこなっているところである。
10 小括
以上、日系コンビニの進出動向を確認した。ここでは、各社の出店戦略の詳細や、商品 開発、物流、各国政府の規制などはあえて掘り下げずに、その輪郭だけをたどっていった。
ここで考慮しなければならないのは、現地資本のコンビニやスーパーなどの競合小売店と の関係である。日系コンビニがマーケットの主導権を握っているところもあれば、中国や 韓国のように、地元資本のチェーン展開がそれを凌駕しているような経営環境の国・地域 もある。これについては、金[2007]などの先行研究があるものの、これまでに十分に考察 されているとはいえない状況にある。また、コンビ二のみならず、日本資本のスーパーや 百貨店によるアジア進出との比較によって、コンビ二事業も立体的に捉えることができる だろう。この点で、開店数や総店舗数のみならず、閉店・撤退にも着目した小川・青木[2008]
のような研究も参考となる。
また、本書の関心に立ち戻れば、「現地化」を洗い直さなければならない。日系コンビ ニが海外進出した際、日本と同じ店舗経営とはならないばかりか、同じ社会的機能を担う とも限らない。日系コンビニ各社は、国によって異なる制度的障壁やインフラ面での制約 を乗り越えながら、地域ごとの嗜好性や生活文化にあわせた「現地化」に取り組むことに なる。
しかし問題なのは、「日系コンビニ各社」が、果たして「現地化」するのかどうかでは ない。なぜなら、日系コンビニ各社の進出形態は、程度の差はあれ、まず、すべからく「現 地化」するからである。それは契約上の問題や、流通システム、商品力など、「日本型コン ビニ」の強みを発揮できない制約条件による場合も多い。
それゆえ、本研究で問うのは、日系コンビニがどのように、どの程度「現地化」してい くのかである。さらにいえば、ひとまず「現地化」した後に、日系コンビニがそのアイデ ンティティとしてこだわる「日本化」志向にも着眼していく必要がある。ここにおいて、
「日系コンビニ」と「日本型コンビニ」は区別されなければならない。「日系コンビニ」の アジア進出は、まずもって「日本型コンビニ」の完全移植とはならず、むしろ現地社会へ の適応力こそが「日系コンビニ」の強みであるため、この「現地化」過程が本研究第一の 分析対象である。
これらの点については、第3章以降でさらに細かい分析がおこなわれているので、みて いただきたい。
参考文献
11
小川孔輔・青木恭子 2008.「東アジア地区に進出した多国籍企業のマーケティング:(1) コ ンビニエンス・ストアin East Asia」『経営志林』45(2)69-92.
川辺信雄1997.「アジア諸国におけるコンビニエンス・ストアの生成と発展-セブン-イレブ
ンの事例を中心として-」『早稲田商学』373, 1-37.
川邉信雄2012.「日系コンビニエンス・ストアのグローバル戦略─2005 年以降のアジア展
開を中心に─」『経営論集』22-1 /1-23.
金亨洙2007.「日本型コンビニエンスストアの移転と戦略に関する研究―韓国と中国の実証
調査を中心に―」『久留米商学』13(1)61-96.
白壁達久 2014.「ファミマ海外展開好調は『脱日本流』にあり」1.21 日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140120/258490/?rt=nocnt
鍾淑玲 2015.「日本型コンビニの現地化プロセス : ファミリーマートの台湾進出を例に」
『イノベーション・マネジメント』 (12), 133-155.
鳥羽達郎・劉偉 2016.「日系コンビニエンス・ストアの国際戦略:株式会社ローソンの中国 展開に関する事例研究」『富大経済論集』62(2), 225-251.
又吉龍吾2016.「ローソンが中国で取り組む『先進店舗』の正体」『東洋経済』7.23