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[ 時事解説 ] 安定した老後生活を送るための企業年金制度の活用について 年金コンサルティング部 1. はじめに 2019 年 6 月に公表された金融庁 ( 金融審議会 ) の市場ワーキ ング グループがまとめた報告書 高齢社会における資産形成 管理 ( 以下 金融庁報告 ) は 所謂 2000 万

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(1)

1.はじめに

 2019年6月に公表された金融庁(金融審議会)の市場ワーキ ング・グループがまとめた報告書「高齢社会における資産形成・

管理」(以下、「金融庁報告」)は、所謂「2000万円問題」となり 財務大臣が「正式な報告書としては受け取らない」という異例の 展開を招きましたが、この報告書には「人生100年時代」と呼ば れる高齢社会を迎えようとしているわが国における金融サービス のあり方等が提言されています。

 本稿では、この「2000万円問題」を招いた高齢期の収支状 況を確認した上で2019年8月に公表された公的年金の財政検 証結果を踏まえた将来的な老後資金状況を考察します。その上 で、高齢期に必要な資金源である退職金を退職時に一時金とし て受け取り、自身で計画的に貯蓄を取り崩す場合と、企業年金 を活用して年金給付として受け取る場合を比較することで、本人 の選択で一時金として受け取ることも可能な企業年金の活用 効果を説明します。

2.「2000万円問題」の概要

 まずはじめに、金融庁報告で「2000万円問題」として議論と なった部分を抜粋してみました。

はじめに

〔略〕

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)

〔略〕

(1)人口動態等

〔略〕

(2)収入・支出の状況 ア.平均的収入・支出

〔略〕

 しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているた め、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字 額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有 する金融資産より補填することとなる。

〔略〕

(3)金融資産の保有状況

〔略〕

 老後の生活においては年金などの収入で足らざる部分は、

当然保有する金融資産から取り崩していくこととなる。65歳 時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯、単 身男性、単身女性のそれぞれで、2,252万円、1,552万円、

1,506万円となっている。

〔略〕

 (2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が 毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約 2,000万円の取崩しが必要になる。

〔略〕

2.基本的な視点及び考え方

〔略〕

(1)長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要

 前述のとおり、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無 職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20

~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300万円~2,000万円になる。この金額はあくまで平均の 不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出 の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しな い場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ 今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資 産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要 なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余 命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外 で賄わなければならない金額がどの程度になるか、考えてみるこ とである。

〔略〕

(下線・波線は弊社が追加)

 波線部分が「2000万円問題」として議論になりましたが、そ の前段の「金融資産の保有状況」の下線部分では夫婦世帯で 2,252万円の資産を平均的に保有していると説明されているよ うに、総務省の家計調査での収支の現状は相応の金融資産を 有している世帯における支出状況になっているという見方もでき ます。つまり、収支は毎月赤字になっていますが、その赤字累計 は平均貯蓄額よりも少なく、現状では多くの世帯でやりくりができ ているわけです。

 なお、金融庁報告で使用されている総務省の家計調査

(2017年)の収支状況の明細は【図表1】のとおりです。

(2)

 一方、(公財)生命保険文化センターの調査(令和元年度  生活保障に関する調査)によると、8割以上の方が老後生活に 対して不安を抱えており、その不安の具体的な内容の割合では

「公的年金だけでは不十分」が最も高くなっています【図表2】。

図表2 老後生活に対する不安意識

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

公的年金不十分 常生活支障 退職金企業年金不十分 自助努力準備不足 仕事確保

(2)老後生活に対する不安の内容

(1)老後生活に対する不安の有無

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

19.0% 30.4% 35.0% 13.2% 2.4%

非常に不安を感じる 不安を感じる 少し不安を感じる 不安感なし わからない

(出典)(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」

(内容は上位5項目)

 総務省の家計調査はあくまでも現在の状況を調査した実績 値ですが、こちらの調査では老後生活に関する意識調査も行わ れており

「夫婦2人で老後生活を送るために必要な最低必要生活費」

 ⇒平均約22万円

「ゆとりある老後を送るための上乗せ額」

 ⇒平均約14万円(合計約36万円)

となっています。平均実績である家計調査の社会保障給付(主 に公的年金)19万円では最低必要生活費の平均をやや下回っ ており、生活費を切り詰めても何らかの蓄えを取崩すことが必要 になる可能性が高いことや、ゆとりある老後のための上乗せ額を 65歳から85歳まで20年間分として単純計算すると、約3,400 万円程度が必要になることが読み取れます。

 今回の「2000万円問題」の議論は、「良くも悪くも多くの人に 資産形成について真剣に考えるきっかけを作った」との意見も聞 かれます。家計調査による足元の収支状況だけではなく、老後 収入の大きなウエイトを占める公的年金が今後どのような水準に なるかの見通しが5年毎の財政検証結果として2019年8月に 公表されたところであり、次は、それを踏まえた将来像を見ていき ます。

図表1 高齢夫婦無職世帯の収入・支出 (単位:円)

勤め先収入 4,232

事業収入 4,045

その他の収入 9,041

実収入

64,444食料食料 64,444

住居 13,656

光熱 19,267水道

光熱 19,267水道

家事用品家具 9,405 被服 及び履物6,497

被服 及び履物6,497

保健医療 15,512

交通通信 27,576

教育15 教育15

教養娯楽 25,077

その他の 消費支出54,028 その他の 消費支出54,028

非消費支出 28,240 非消費支出

28,240

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000

実支出 実支出

263,718円

社会保障給付 191,880 社会保障給付

191,880

貯蓄等 での対応 54,520円差額

実収入 209,198円 高齢夫婦無職世帯

の平均純貯蓄額 2,484万円

総務省統計局「家計調査(2017年)」を元に弊社で作成

(3)

3.公的年金の財政検証結果

 2004年(平成16年)に構築された現在の公的年金のフレー ムワークでは、保険料と国庫負担を固定した財源の範囲内で年 金給付を行うため給付水準を自動調整する仕組み(※)になり、

少なくとも5年毎に、いつまで給付水準の調整を行う必要がある かの見通しの作成を行うこと等により年金財政の健全性を検証 することになっています。

(※)「マクロ経済スライド」と言われ、賃金・物価に基づく公的年金の改定 率から、保険料を負担する現役被保険者の減少率を基本とした「調整 率」を控除して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。この

「調整率」は「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均 余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」で算定されます。

<マクロ経済スライドによる調整の仕組み>

賃金︵物価︶の上昇

マクロ経済 スライド

改定率

この調整は

・現役世代の保険料負 担が過重にならない

・将来の高齢世代の給 付水準を確保する ために充てられる

【マクロ経済スライド 調整率の算式】

「被保険者減少率」

「平均余命の伸びによる 一定率(0.3%)」

 なお、公的年金の給付水準を示す「物差し」として、所得代替 率という指標が用いられ、将来にわたって50%を上回る水準を 確保するものとされています。

 この所得代替率とは、次の算式で求められます。

所得代替率 =

夫婦二人の基礎年金と夫の厚生年金の合計年金額 現役男子の平均手取り収入額

 公的年金は基本的には賃金(物価)変動に基づいて改定 されます。それだけであれば、分子・分母とも同程度に変動する ため所得代替率は変わりませんが、マクロ経済スライドの仕組 みでは、分子の年金額は、賃金(物価)変動に基づく改定率から

「調整率」を控除するため、この自動調整を行う必要のある期 間は所得代替率が低下します。

 2019年8月に公表された財政検証での財政見通しは、複数 の経済等の前提で作成されていますが、給付水準が高くなる経 済成長と労働参加が進むケースⅠ~Ⅲにおいても所得代替率が 現在の約62%から約50%近くまで低下することになっています

【図表3】。

 将来の年金額(分子)そのものは、賃金上昇を見込み現役収 入が上昇するため増加する見通しにはなっていますが、所得代 替率が低下するということは、調整率によってその上昇率が抑え られるため、分母の現役収入の上昇率には届かないことを意味 します。世間の生活水準が現役の手取り収入に基づいて形成 されると考えた場合、所得代替率の低下は実質的な年金給付

水準の低下を意味するものと考えられます。

 財政検証で示された所得代替率の低下見通しを元にして高 齢期の収支状況を再確認すると、収支の差額は「2000万円問 題」で使用された毎月の不足額の平均約5万円が更に拡大す ることになります。また、財政検証で用いられた将来人口推計に 図表3 出生年度別の65歳時点の所得代替率と平均余命

36.4% 35.6% 34.0% 32.0% 29.5% 27.1% 26.2% 26.2%

25.3% 24.6% 24.6% 24.6% 24.6% 24.6% 24.6% 24.6%

16.00 18.00 20.00 22.00 24.00 26.00 28.00 30.00(年)

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

1954年度生

(2019年度) 1959年度生

(2024年度) 1964年度生

(2029年度) 1969年度生

(2034年度) 1974年度生

(2039年度) 1979年度生

(2044年度) 1984年度生

(2049年度) 1989年度生

(2054年度)

61.7% 60.2% 58.6% 56.6%

54.1% 51.7%

50.8% 50.8%

19.85 20.24 20.61 20.95 21.27 21.57 21.84 22.10

夫婦2人分の基礎年金(満額) 夫の厚生年金部分 男性平均余命(右軸) 女性平均余命(右軸)

24.72 25.20 25.63 26.04

26.41 26.75

27.07 27.36

2019年公的年金財政検証(経済ケースⅢ、人口:中位)所得代替率 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」将来生命表(中位仮定)の65歳平均余命

(4)

よると、65歳の平均余命(男女平均)が2019年度の22.3年から 2054年度には24.7年まで延びる見通しとなっています【図表3】。

【所得代替率低下と長寿化による老後の不足額】

2019年(現状)

実収入20.9万円−実支出26.4万円=▲5.5万円

⇒×65歳平均余命(男女平均)22.3年=約▲1,470万円

2054年(推計)

所得代替率低下で実質的な実収入が減少

⇒20.9万円×所得代替率の低下率(50.8%÷61.7%)=17.2万円

⇒17.2万円−実支出26.4万円=▲9.2万円

⇒×65歳平均余命(男女平均)24.7年=約▲2,730万円  上は、平均的な数値を単純に使用したものですが、公的年金 の実質的な減少と長寿化に伴って、公的年金だけでは不足す る資金の見込みが1,500万円から2,700万円にほぼ倍増する ことになります。

 65歳を迎えた方が80歳・90歳・100歳まで長生きする割合 は将来的に上昇する(長寿化する)ことになっており【図表4】、

現役時代に老後資金の蓄積を図ることだけでなく、老後生活に 入った後も、資産寿命を延ばすことが今後益々重要になることが わかります。

図表4 65歳を迎えた方が特定の年齢まで生存する確率

94% 86%

74%

58%

37%

17% 5%

95% 89%

79% 65%

44%

22%

6%

0%

50%

100%

65 70 75 80 85 90 95 100(歳)

97% 94% 88%

78%

62%

39%

16%

98% 95% 91% 83%

69%

46%

20%

0%

50%

100%

65 70 75 80 85 90 95 100(歳)

〔男性〕

〔女性〕

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より試算したもの 点線は2019年に65歳を迎えた方(1954年生)の生存確率 実線は2054年に65歳を迎えた方(1989年生)の生存確率

 例えば、90歳まで長生きする見込みを見てみると、2019年 に65歳を迎えた方(1954年生まれ)でも既に男性37%、女 性62%の確率になっていますが、2054年に65歳を迎える方

(1989年生まれ)では、男性44%、女性69%まで長寿化が進 む見込みであり、更に、女性については20%の方が100歳まで 長生きする見込みとなっています。

4.自助努力

 金融庁報告によると、「寿命が延び活動し続けるということは それだけお金がかかるということ」、「長寿化に応じて資産寿命を 延ばすことが重要」であるが、「75歳を超えたあたりから認知症 有病率は大きく上昇する」とされているため、「認知能力・判断能 力の低下は誰にでも起こりうるという認識」を踏まえた備え・対応 が必要になることが述べられています。

 老後の生活において公的年金では不足する部分は、所謂

「自助努力」で準備することになりますが、その大きなウエイトで ある退職金について、その使い道の世間動向を見てみると、一 時金として受け取ったものを「貯蓄」や「投資」に回し、すぐに消 費する部分は限られることが分かります【図表5】。

図表5 退職金の使い道

退職金の使い道として貯蓄が多くを占める 退職金の使い道(2013年調査結果)

ローンの

13返済

投資運用

11

% 17消費

(博報堂 新しい大人文化研究所「新大人研究レポートⅧ」)

59

貯蓄%

退職金の7割は、受給後すぐに 使っているわけではない

必ずしも「一時金」である 必要はない

(5)

 退職金は、一時金として受け取る場合にも、企業年金に移行 して年金として受け取る場合にも、公的年金では不足する老後 生活費等を補う重要な資金源となりますが、一時金で受け取っ た場合、自らで計画的に貯蓄・投資から取崩して賄うことを数十 年に亘り継続して行うことが必要です。一方、企業年金として受 け取る場合には、年金給付という形態で定期的に受け取った資 金を老後生活費にその都度充てることになるため、安定的な老 後生活に有意義ではないかと考えられます【図表6】。

図表6 退職金受取りの一時金と年金のイメージ

多額の一時金収入を数十年単位で自ら貯蓄・投資していく必要あり

退職一時金制度の場合

公的年金

退

公的年金で不足する生活費を 自ら貯蓄・投資(数十年単位)

定年

<全部一時金>

年金として受け取れば定期的かつ安定的収入が得られる

企業年金の場合

公的 年金

企業年金原資 企業年金による 定期的な収入

定年 一時金

イベント不測の

不測の事態に備え 一部を年金に代え 一時金給付とする

ことも可

<一部を年金・一部を一時金>

給与(賞与)による定期的な収入を見込んで生活設計 給与

必要生活費

従業員時代

給与で生活費が不足する 場合、賞与で補填

(参考)従業員(現役)時代

 金融庁報告には高齢期の認知能力・判断能力の低下を踏ま えた対応が必要になることが述べられていますが、一時金で受 け取る場合、多額の一時金を自らが管理し計画的に取崩すこと を行わないと資産寿命が維持できません。一方、年金制度では 支給期間を20年と設定すれば、20年間は現役期の給与受取り と同様に定時に定額の資金を受け取ることが可能になります。

また、資産運用という点でも、一時金の場合自らが運用を考える 必要がありますが、年金制度では予め決められた利息を付与し た金額を年金として受け取れることになります。老齢期に自身で 運用することを想定した場合、一般的に大きなリスクを取れない 為リターンも限られ、企業年金として付与される利息の有効性も 感じられます。

 【図表7】は、退職金1,000万円を企業年金化した場合に年 金給付利率と支給期間の違いで年金総額がどのようになるかを 試算したものです。

図表7 退職金1,000万円を年金化した場合の年金額 給付利率・支給期間別の年金月額〔年金総額〕 (単位:万円)

支給期間

給付利率 10年 15年 20年

1.5% 9.0

〔1,078〕 6.2

〔1,117〕 4.8

〔1,158〕

2.5% 9.4

〔1,131〕 6.7

〔1,199〕 5.3

〔1,270〕

3.5% 9.9

〔1,185〕 7.1

〔1,284〕 5.8

〔1,387〕

 給付利率が高いほど、また、支給期間が長いほど、年金額に 含まれる利息相当が大きくなるため、年金総額は増加します。

企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料(平成30年度 版)」の最新データ(平成29年度)による年金給付利率の平均 は2.85%であり、この平均給付利率と、足元の65歳平均余命

(男女平均22.3年)を概ねカバーできる年金支給期間を20年 にすることで、年金総額は一時金1,000万円の3割増し程度に なっていることが分かります。

 ただし、退職金を一時金として受け取る場合には税制上は退 職所得となり現在の税制では優遇されている(※)と言われます が、企業年金に移行し年金で受取る場合には税制上は公的年 金等の雑所得となるため、老後の年金収入が増加する一方で、

税金や所得に応じた健康保険料・介護保険料の負担も増える ことに留意する必要があります。

(※)退職金への課税は、勤続年数に応じた退職所得控除以下であれば非 課税であり、超過した場合も、超過額に1/2を乗じた額を退職所得とし て所得税等が課せられる。この退職所得控除は、勤続20年までの期 間に対しては年40万円、20年超の期間に対しては年70万円として計 算する。

(例えば、勤続30年で退職した場合、退職所得控除は「40万円×20年

+70万円×(30ー20)年=1,500万円」となり、退職金がこの金額以下 であれば非課税)

 つまり、一時金と年金では所得税等や社会保険料の負担に 差が生じることに留意が必要です。企業年金の場合、退職者の 選択により年金に代えて一時金を受け取れるような制度にする ことが一般的であり、退職金を企業年金に移行することが必ずし も年金受取りへの変更を意味しませんが、年金受取りを選択し

(6)

た場合の手取りベースの総受取額を考察してみました。税金は その他の所得等で異なることや、健康保険や介護保険はお住ま いの市町村によって保険料が異なるため、一定の前提で概算し てみたところ、給付利率を世間平均程度とし支給期間を20年と した場合は、税・社会保険料を控除した受取総額で見ても一時 金と概ね同等な水準になり、受取金額としても年金が一時金よ りも一概に不利というわけではないようです。

5.おわりに

 公的年金は少子高齢化においても制度を継続するためにス ライド調整率により実質的な給付水準である所得代替率が低 下することが見込まれています。これは、長期化する老齢期間の 生活費を賄うには自助努力がより必要になってくることを意味し ます。老齢期の資金である退職金を一時金で受け取った場合、

老後に自身で管理・運用しつつ計画的に取崩し資産寿命を延 ばすことが必要です。これを企業年金に移行した場合、退職時 に一時金での受取りを希望する場合は一時金選択も可能であ り、退職時にローン返済等の一時金ニーズがない場合、年金給 付を選択し、自身が管理することなく定時定額の給付を年金支 給期間にわたり受け取る安心感を得つつ老後の生活費を補助 することが可能になります。その意味では、長寿化に伴って老後 期間の長期化が進んでいるため、年金支給期間もなるべく長期 なものを用意することがより有効です。この支給期間を長くする 効果は、税金や社会保険料の負担を考慮しても年金給付によ る利息の恩恵を多く受け取る傾向になるため、より有効な年金

制度になることが期待できます。

 退職金を企業年金に移行した場合、年金と一時金との選択 肢を設けることが一般的なため、従業員にとって不利益なことは ありません。一方で、企業年金制度を設ける企業としては年金制 度を運営するために一定の運用責任を負いますが、退職金のま まとしても退職時までに原資を準備する責任があり、企業年金 化することでその退職金原資を平準的に準備できるという効果 も期待できます。

 人生100年時代を考えた場合、長寿化に応じて資産寿命を 延ばすことが重要です。一方、老齢期の各人の置かれる状況や ライフプランは様々ですが、公的年金を補完する退職金に対し て、企業年金制度を活用し年金受取りという選択肢を設けるこ とは有用ではないでしょうか。

以上

参照

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