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専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって

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(1)1専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. 石. 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. ・. 黒. 吉次郎. 蜂須賀家旧. 専修大学図書館の蜂須賀家旧蔵本の中に、『和歌題林抄』と題するものがあるoこの写本は上下二巻1帖からな. り、伝青田兼好筆とされる鎌倉時代後期のものと推定され、その書誌的な事項は、『専修大学図書館蔵. 蔵本目録』(専修大学出版局、昭和五十九年)に、「上下一帖、鳥の子列帖装、縦二十四・八センチ、横十五・八セン. チメートル、1面10-〓行書、墨付二六丁」等々とある。そして本文のあとに遊紙1丁があって、そののち. に、「麿永廿三年(一四二ハ)八月廿七日不慮博領之早 菅(花押)」とある。. 本書は昭和五十七年、専修大学図書館蔵古典籍影印叢刊刊行会よ-複製本が刊行されたが、平成元年には専修大学. 出版局よへ中田武司他霜『和歌題林抄』として出版された。これは島原文庫本『和歌題林抄』との対校を付した翻. 刻本で、テキスト版としても利用できる。巻末に中田氏による解説や索引があり、国会図書館本、青陵部本との題目. 一覧についての村照表があって便利である。この書は専修大学所蔵の蜂須賀家旧蔵本(阿波国文庫) の中では'研究. が進んでいるものに属すると思われる.『和歌題林抄』の類似の1番に『種心秘要抄』(室町時代)があり、その序文 に、. -ちかき世に、一条禅閤あつめをかるゝ和歌題林抄、かみの巻には春夏秋冬の題をいたし、しもの巻には恋雑と (-). 題して、無常釈教にいたるまて、題の心をいひかへ、-.

(2) 2 第83号 専修国文. とあることによって'本書は1条兼良(1四〇二〜八1). に至るまで一条兼良の. の刊本には'能因法師の編とあ. の編とされてきたo『国書総目録』. 編としている。しかし中田氏の解説によると'京都大学蔵の宝暦七年(一七五七). (2). り'『大日本歌書綜覧』でも能因編説が紹介されている。また兼好法師筆本と称するものがあるとするなと'編者に. ついてはなお検討が必要となる.なお中田氏は兼好筆とする専修大学本によって'1条兼良編説を否定されている.. 専修大学本が伝兼好筆としているのは'この写本が二重の箱に収められていて'外箱に「和歌題林抄青田兼好筆」. とあり'さらに箱の内部に「題林抄青田兼好筆」という貼紙があるためである。「青田兼好」という言い方は'近世 風である。. 中田氏は先の解説で'専修大学本の筆跡を前田家尊経閤文庫の「宝積経要品」紙背の庵冊和歌等'兼好の筆と比較. して'両者は似ているという見解を出されている。近世にも類似を感じた古筆鑑定家がいたのであろうか。またこの 書には、. 臨時客といふは'春のはじめに関白左大臣などの御もとに'さるべき公卿'殿上人より蔵人などにいたるま で'まうであつまるをいふ'-(春・臨時客). (3). よろこびはなに、つけても心にうれしき事をいふ'大臣をばかけなび-といふ'こむゑつかさをば'大将より しもみなちかきまもりをいふ'-(雑・慶賀). の版等がある.. など'有職故実的な言説があることも兼好を思わせる。F和歌題林抄』は近世版本が出て'流布'享受の面でも注目 されるものがある.版本としては'延宝六年(1六七八). 本書は類題集(類題和歌集) の一種である。類題集とは'和歌の指導書的なもので'古今の歌を題ごとに分類'配. 列しており'和歌の習作にも証歌検索にも便利であ-'平安時代から江戸時代まで、数多-作られた。その形式はさ.

(3) まざまであるが'﹃和歌題林抄﹄ の場合は'春・夏・秋・冬 (上巻)、恋・雑 (下巻) の部を設けて'﹃万葉集﹄ そし. て ﹃古今集﹄ から ﹃風雅集﹄までの勅撰和歌集の歌を中心に選んでいる。勅撰集の部立に似た構成である。﹃風雅. 集﹄ の成立が貞和四年 (一三四八) であるから'それから遠‑はない時期に編纂されたのであろう。その点では兼好. 編説は無理かとも思われる。書名が示すように'本書は歌題の集成にその編纂意図があり、歌合や歌会に便利なよう に作られたものであろう。. 歌数は三四九首に及ぶ。したがって本書はそれほど特色あるものではな‑'一般向けの歌学書の性格を有する。兼. 好編か兼良縮かは不明であるが、内容を検討することによって'編者像を探ることができるであろう。あるいはある. の構成を思わせる。これについては'先の中田. 歌人が書いたものを、後世兼好や兼良の編とされた可能性もある。春の部は立春・早春・小朝拝・臨時客‑と題が続 ﹃和漢朗詠集﹄. の享受史の上でも注目すべき書である。その意味では謡曲と. 無常などを含むが'﹃題林抄﹄. でも'雑の部には、恋を除いて、そうしたもの. ﹃李花集﹄も上下二巻のうち'上巻は春・夏・秋・冬、下巻は恋・雑となっている。. 静嘉堂文庫本等を調査され'これを一類本から三類本まで分別された。そして一類本から二類本と三類本が派生した. ﹃和歌題林抄﹄ については'高梨素子氏の詳細な研究がある。氏はまず宮内庁書陵部本、慶応義塾大学斯道文庫本、. 親王の家集. が見られる。本書の入門書的性格の表われでもあろう。春夏秋冬と雑の二極化は'注目される現象である。なお宗良. 雑的な項には、釈教、述懐'賀'恋う. の比較も興味深い課題であるが'後に見るように謡曲ほど ﹃朗詠集﹄ に依拠する傾向にはない。﹃朗詠集﹄ の巻下の. 伝統の下に成立しているといってよい。﹃和漢朗詠集﹄. あり'後者は和歌の題のみとなるが'ことに各部の冒頭は重なる部分があって、﹃和歌題林抄﹄ は ﹃和漢朗詠集﹄ の. 氏の解説にすでに指摘がある。﹃和漢朗詠集﹄ の巻下は ﹃和歌題林抄﹄ の 「雑」 に相当する。前者には漢詩的な題も. き'夏の部は更衣・首夏・卯花・余花‑と続‑などへ. 3 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって.

(4) 4 第83号 専修国文. という見解を示されているが'その間には異同も多-見られ、この種の書がさまざまにバリエーション化し易いこと. 3ih-a. をうかがわせている。そして専修大学本は一類本に属するとされる。次いで氏は'出典から作者まで、詳細にまとめ. られ,大部分が勅撰集によること,『伊勢物語≡源氏物語』等の歌が若干見られることを指摘している。専修大学本 はこうした諸本においはて'古態に属するものとなろう。. 『和歌題林抄』は証歌に交って'解説文も多い。たとえば'春の部二止春の項には、. たつ春の心をよまば,あけゆ-そらも、いつしかかすみ、たにのこほ-うちとけて、いはもるをともしるく'. こずゑの雪も,けさははなかとおぼめかれ'あさ日のかげもうらゝかに'ときしるこゑにもおどろきみなれたる 人も'いまさらめづらしさ心などをよむ、. と平易な説明文が付されている。こうした解説は『和歌題林抄』の特色の三であって'たとえば室町時代の覇歌. 題林愚抄』には,こうしたものはない。この書は『題林愚抄』とも称し'山科言緒の編になるというが'編者は未詳. である。この書も『和歌題林抄』と同様'写本のほか'寛永十四年'元禄五年'寛政四年の版本があり'近世流布し. たものである。春・夏・秋・冬・恋・雑・公事に部類し、さらに細か-類題をし'約二六〇〇題のもとに二〇'六. ≡首を掲載する大掛かりなもので、網羅的な類題集である。辞典的な趣が強く実用的であり'教科書的な役割を. 持っている。これに比べ『和歌題林抄』は証歌を配列するのみならず、歌学上の心得や、古典に関わる知識が加えら れていて'辞典としてよ-は、読み物としての性格が強い。. この後北村季吟が『和歌題林抄』を増補して'宝永三年(一七〇六)『増補和歌題林抄』を刊行したが'これも辞. 書的なもので、三村晃功氏は増補本たる『種心秘要抄』、『増補和歌題林抄』は、『和歌題林抄』とは別個に扱うべき 書だとしている(『和歌大辞典』明治書院、『和歌題林抄』の項)0.

(5) 二. よろつのこと. ﹃種心秘要抄﹄も室町時代のものであるが'構成の上では ﹃和歌題林抄﹄ に近い。冒頭には長い序文があって'. やまと歌は人の心を種として'貫之出せける'まことなるかなや'されはひとつ心の種よりそう のはくさはもえ出にける、‑. と'この書の書名が﹃古今和歌集﹄ の仮名序を意識したものであることを述べている。立春の項では、冒頭に、. たつ春の心をよまは'いつし霞、谷の氷り水とけて、岩もる音しる‑、梢の雪もうけさは花かとおはめき、‑. ふたばのまつ. 子日の桧. かすがの. ひ‑まの. はかなり分量が多くなっている。. 人をも身をもいはふなるべし、さればひ. の内容を、以後のものを参照しながら検討して珍‑ことにする。. ひめこまつ. はるがすみたちか‑せどもひめこ松ひくまの野べにわれはきにけり. ちとせまでかざれるまつもけふよりはきみにひかれてよろづよやへん. ねのひするのべにこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし. にけりともよむへ. さしきためしにまつをひ‑とも、ちとせはのべども心はふた葉のみどりにひくとも'かすみもいつしかななび. はるのはつねの日、野べにいでて'ことのもと‑こまつをひきつ二. 子の日. ﹃和歌題林抄﹄春の部・子の日の項には'. 以下﹃和歌題林抄﹄. にけり」とは異なっている。しかも和歌にしても解説文にしても、﹃種心秘要抄﹄. ゆらん 忠琴」で、これは ﹃和歌題林抄﹄ の第1和歌「きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがの山にはやたち. と、﹃和歌題林抄﹄を模した文が置かれる。その第一和歌は'「春立つといふはかりにやみのゝ山の山も霞てけさは見 5 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって.

(6) のべみればまだふたばなるひめこまついづこにちよのかげこもるらん. 巻上⊥ハ・時節では'. 初春 (5). わかな. 千年をいはふ. 春日野. 鷺. ひ-ま野. 子の日下アラバ'正月初の子の日也。初子とも'初子の日ともいふ0 於をひく. ひげこひはり寵(同). 姫小松. 二葉の桧. 初子の松. かすかの. ひくまの. 二葉松. 姫小松. 御前の山(源). 春の初子の日野へに出て'こ桧を引つゝ人をも身をも小はふなるへし'これは久きためしに桧を引とも'霞 もいつしかたなひさにけりとみおよむ. 千年を契る桧もけふよりは君に引にとて'万代をやふへきとのいはひなり. 千年まて契れる桧もけふよりは君にひかれて万代やへむ. 子日する野にこ於なくは'千代のためしに何をひ-へきそと也'例本棟三字いつれもためしとよむ. ねの日するのへに小松のなかりせは千代のためしになにをひかまし. 子日. ここで『種心秘要抄』について'その性格を見てみよう。春の「子且にはこのようにある。. めており'ことばも多岐で'古典として固定化されがちの歌語とは異なっている。. とある。『和歌題林抄』が一条兼良の編とされたのもへ理由があるようである。勿論寄合の方が連想の範囲を広-求. 紫野. ろう。そして歌ことばの列挙は、連歌学書の寄合のそれにも似ているoちなみに1条兼良の連歌学書『連殊合壁集』. る。こうした構成は、この書を利用すれば'子の日の歌が比較的容易に作れるという実用性を重んじているためであ. とある。まず子の日に関連する歌ことばを列挙し'次いで子の日の歌の歌い方の解説がありへ次いで証歌をあげてい. 6 第83号 専修国文.

(7) 7 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. 春霞立か-せとも姫小松ひ-まののへに我はきにけり. 金葉. 霞の立か-せとも、姫小松をひ-まの野辺に我はきた-け-と也、(下略). かすか野の子日の松を引てこそ紙さひゆかんかけにかくれめ. 春日野の子日の松を引て末久-かけにか-れすむへきと也、(下略). 野へみれはまた二葉なる姫小松いつ-に千代の陰こもるらん. 続千. 崇徳院. 野に見ゆる二葉の姫小松には、いつ-に千代のゆか-のこもるそと也、(下略) 子冒しにしめつる野辺の姫小松ひかてや千代の陰を待まし (解説略). けふよりは子日の小松引かへて八百万代の春をこそまて (解説略). 新古. 新続古今誹詰寄. さゝ狼や志賀のはま松ふ-にけ-たか代にひける子日なるらん (解説略). 子目すと春の野ことに尋ぬれは松にひかるゝ心地こそすれ (解説略). 由緒言」. 以上のように『和歌題林抄』に対してかな-の分量を増補している。解説は平易で歌道の入門書的な性格は変わら. ないが、辞典的な趣は強-なる。内閣文庫本は冊子体四冊からなるが、巻1は春・夏、巻二は「世俗言. で'いろは順に和歌に関することばの説明がなされる。巻三は恋、巻四は雑となっている。また採用歌の範囲は室町. 時代中期の『新続古今和歌集』にまで及んでいるが、そこには『種心秘要抄』の成立時期がうかがわれる。こうして.

(8) 8 第83号 専修国文. 『和歌題林抄』. の増補本は、読み物的なものから'辞書的なものへと次第に性格を変えているのである。. さて『和歌題林抄』の「子の日」には、題に関する歌ことばが付されている。本書ですべての題に関して歌ことば. 卯花-うのはなづきに. 布さらす. うのはなふ. しらゆふか-る. かほぞうづき. 郭公. 玉川の里. うつきなどいふ。 浪. いはもとうづき. しら川の閑. かさ,ぎのはし. つまむかへぶ. が付されているわけではないが'『題材抄』の歌ことばと『連珠合壁集』の寄合の比較をもう少し試みる。 卯花 題林抄(夏) (解説略). うのはなのさかぬかきねはなけれどもなにながれたるたまがはのさと. 月. もみぢのはし. 神山. うのはなのさけるさかりはしろたへのなみもてゆへるかきねとぞみる. 雪. ひこぼし. ほしあひのそら. 卯花トアラバ、初卯花. わがやどのかきねやはるをへだつらん夏きにけりとみゆるうのはな. 垣ね. 合壁集(十五・木類). 七夕 七夕-たなばた. あまのは衣. 題林抄(秩). ね (解説略). あまのがは水かけぐさの秋かぜになび-をみればときはきぬらし ちぎりけん心ぞつらきたなばたのとしにひとたびあふはあふかは. たなばたはいまやわかるゝあまのがはかはぎ-たちてちど-な-なり.

(9) 9 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. ‑. 紅葉の槍. 玉橋. 年の渡. きよしぐれ. やすの川原. しぐれのあめ. 俊頼. 妻むかへ舟. 七夕トアラバ、ひこ星は男也。織女は女也。. はた物のふみき. かさゝぎの橋. 合壁集(二・光物) 天の川 ‑夜. たなばたのいほはたゝてゝをる布の秋きり衣誰かとり見る. むらしぐれ. 七夕のあすのおしての八重霧に道ふみまよへ又やかへると. 時雨‑はっしぐれ. 鹿. 木のは. ね覚‑. 時雨トアラバ、‑山めぐる 紅葉. 山かき‑もる. やごゑのとり. 人丸. 山のはに入日のかげはさしながらふもとのさとはしぐれてぞゆく. 良案. 合壁集(四・降物) の日かげ. 神無月ふりみふらずみさだめなき時雨ぞ冬の初也ける. とりのはつね. 時雨の雨まなし‑ふれば槙の葉もあらそひかねて色付にけり. 暁‑あかつきのかね. 年の恋. 磯枕. 手向. 雪ま. 袖つ. しぎの. 月を待. かたぶくつき. 雪気の雲. ゆふしぐれ. ありあけの月. 草葉を染る露. 山めぐるくものしたにやなりぬらんすそのゝはらにしぐれきにけり. かみなづきふかくなりゆくこずゑよりしぐれてわたるみやまべのさと. 神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめなりける. (解説略). 題林抄(冬). 時雨. 暁 題林抄(雑).

(10) 第83号10 専修国文. はねがき. しのゝめ (解説略). 鳥. のこ-のともし火. 山かづら. ね党. 別. しぢのはしがき. いなのめともいふ。. 鴫の羽がき. (暁の雲也). 横雲. あかつきのなからましかばしらつゆのおきてわびしきわかれせましや. 在明. 合壁集(七・時分)暁トアラバ'しのゝめ 残月 さしぐし. かね. をく. やみ. 衣々. うしほ. 黒髪. 霜. これらは二者が比較的共通する箇所を抜き出しているもので、全体的には相違している場合が多-、両者の関係は. 薄いと思われる。証歌もまるで異なるものである。ただ「時雨」の証歌「神無月ふりみふらずみさだめなき⊥は共. 通する。これは『後撰集』冬の読人不知の歌であるが、世阿弥の能『忠度』の後場に'. (6). 痛はしやかの人の,おん死骸を見奉れば'その年もまだしき'長月ごろの薄曇り、降りみ'降らずみ定めなき'. 時雨ぞ通ふ紅葉葉の'とあり、中世には好まれた和歌であることが知られる。. 三. 『和歌題林抄』は勅撰和歌集を中心に歌を多-採っているが'三村晃功氏によれば、類題集にはこうしたものと、. 『和歌題林愚抄』のように,勅撰集'私撰集'私家集'定数歌'歌合'歌会と幅広-採っているものがある。前者の. (7). 例では『二四代集』,『八代集秀逸』,『正風体抄』'『閑居抄』、『二八明題集』、『続五明題和歌集』等があり'勅撰集歌. に他の資料からの歌を加えたものには,『藤葉集』(別本)'『後葉集』'『続現存六帖』へ『五葉集』等があるという。.

(11) 先述のように ﹃和歌造林抄﹄ は ﹃和漢朗詠集﹄ の影響が強く'上巻‑春・夏・秋・冬'下巻‑恋・雑の部からなっ. ている。これに近い構成のものを探ると'まず﹃二八明選集﹄ がある。これは今川了俊撰といわれる類題集で (﹃続. (8). 五明題和歌集﹄序文)'﹃古今集﹄から﹃続後拾遺集﹄ に至る十六代集から証拠歌を集めている。書陵部蔵桂宮本によ. ると'第一冊が春夏、第二冊が秋冬'第三冊が恋う第四冊が雑上'第五冊が雑中'第六冊が雑下となっている。すな. が恋の部を立てないのに対. わち前半部が春夏秋冬恋'後半部が雑で、これも﹃和漢朗詠集﹄ の春夏秋冬と雑の二部構成に近い。ただし雑上の内 容は、雑春・雑夏・雑秋・雑冬となって'もう一度四季を繰り返している。﹃朗詠集﹄. し、類題集ではこれを立てるのは'恋は朗詠の題材としてあまりふさわし‑ないのに対し'作歌の上では恋は欠かせ. ない題だからであろう。なお ﹃朗詠集﹄ では、雑の部に恋の題が一つある。﹃二八明選集﹄ の歌蓮は'たとえば春は. を採っている膨大なもので、「全集」. (9). ﹃和歌題林抄﹄とも共通するものがある。. の名はその表われのようである。編者は不明で'成立については、三村氏が永. による類題集であるのに対し、前者はそれを受けながらも、さらに私家集・私撰集こ疋数歌・歌合等から題ごとに歌. 次に ﹃明題和歌全集﹄ がある。これは ﹃二八明選集﹄と同一視されていたが (﹃国書総目録﹄等)'後者が十六代集. 築も意図されていることが指摘されており、これも読み物的な. 抄﹄は ﹃二八明選集﹄とは異なり'恋の部の各巻が一つの主題を展開すべ‑和歌が配列されていて、文学的世界の構. が'三村氏はこの類題集は鎌倉時代末期にな‑'しかも ﹃二八明選集﹄ とは'無関係にあるとしている。﹃二八要. 更衣・卯花‑となってお‑、こちらの方が ﹃朗詠集﹄ に近い。なお同類の書に ﹃二八要抄﹄ が尊経閣文庫等にある. ﹃和漢朗詠集﹄ の構想により近‑戻っていることになる。雑上の雑春は年内立春こ止春・初春⁚‑、雑夏は首夏藤・. ‑と続‑。解説文はな‑'古歌が次々と列挙されていって、これも辞書的であるといえる。別の言い方をすると、. 年内立春・立春・春日未来・春風春水l時来二刀日宴・臨時客・初春‑、夏は首夏・更衣・送春如昨日・残花・余花. 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって ll.

(12) 享十1年(1四三九)六月二十七日から文安元年(l四四四). ・い.. 三月下旬の間としている.内閣文庫本によると'その. 構成は巻1・春上、巻二・春下、巻三・夏上、巻四・夏下、巻六・秋上'巻七・秋下'巻八・冬上'巻九・冬下'巻. 十・恋上'巻十一・恋下'巻十二・雑上、巻十三・雑上'巻十四・雑下、巻十五・公事となる。すなわちここでは. のような構想からやや遠のき、春夏秋冬や恋を重んじる古典的なみやびの世界が求められているかの. ようである。題については'春上を見ると'年内立春二止春・春従東来・春風春水一時来・立春天・立春目し夏は. の影響を受けながらも'これから離れる傾向に. 『連珠合玉集』 のような連歌の寄合集となると、さらに『朗詠集』から離れ、昼寝や竹の子'山梨など'用語の種類. 抄』はこの種の類題集としては'古い性格を示している。題の簡明さもそれを表わしていると思われる。ちなみに. 歌題林抄』で'それ以外は『朗詠集』から離れる傾向にあるといえるであろう。この意味からしても'『和歌題林. の点では必ずしも忠実に受け継いでいるわけではない。すなわち『和漢朗詠集』 の構成意識にもっとも近いのは『和. 風・初秋・初秋風-)'雑冬(初冬時雨・時雨・暁時雨)となっている。≡入明題集』を継ぐといいながらも、歌題. 上も≡入明選集』を引き継いで'雑春(年内立春こ止春・初春-)'雑夏(首夏藤・更衣・卯花・・・)'雑秋(立秋. 春・初春待花・早春・早春霞・早春柳'夏は首夏・首夏風・更衣・尋余花・新樹・山新樹-と続-。なおこの書の雑. る。すなわち分量的にはやは-春夏秋冬等と雑が半々程度となっている。春は立春こ止春水・小朝拝二冗日宴・初. (‖). としている。内閣文庫本によると'第一巻から第三巻まで春夏秋冬恋を収め'第四巻から第六巻に雑の上中下を収め. 類題集で'題は『二八明題集』 の後を受けて'『風雅集』から『新続古今集』 の五代の勅撰集から証歌を集めたもの. 次いで『続五明題和歌集』六巻は序文によると'永正十二年(一五1五)八月今川氏親が素純法師とともに編んだ. ある。ことに『朗詠集』 に見られず'『和歌題林抄』 に見られた故実的な臨時客は'ここでは消えている。. 首夏・首夏朝・首夏藤・送春如昨日・更衣-と続-。『二八明題集』. 『和漢朗詠集』. 第83号. 12. 専修国文.

(13) ﹃摘題和歌集﹄を見ると'これも春・夏・秋・冬・恋・雑の六巻からなる。編者は未詳である。採用歌は十三. が増えている。これらの語は日常的な風俗をも反映しており、俳語の語の世界にも近づいているといえる。 次に. 六月二十七日以降という。解説文はなく、書陵部三冊本では'春の部は年内立春二冗日立春・海辺立春・湖. 代集からが多‑、また﹃新続古今集﹄からのものが大量にある。成立はこれも﹃新続古今集﹄成立の永享十一年二 四五九). ( ̲ 2 ). 上立春・初春待花‑と続き'夏の部では竹亭夏来・はしめの夏郭公をまつ・更衣惜春・都部更衣‑と続いて、歌合・. に近い構想があるが'題を受け継ぎながら'ある. の構成からはさらに遠のいている。. ﹃和歌題林抄﹄は、解説文を除けばもっとも﹃和漢朗詠集﹄. 歌会の題のようなものが多‑、﹃和漢朗詠集﹄. さて. ﹃朗詠集﹄を補って説明しているように見える。ここでその題について'両者の相違をもう少し詳しく見て. 見える題をあげ'その中で ﹃題林抄﹄ にないものは、< >で示す。( )内は ﹃題林抄﹄ での題名である。. (梅花)・<紅梅>・柳・花. (桜)・<落花>・藤. (藤花)・瀞濁・款冬. (以上、春)、更衣・首夏・. 立春・早春・<春興>・<暮夜>・子日・若菜二二月三日・暮春・<三月尽>・<閏三月>・鷺・霞・雨 雨).梅. (以上、夏)、立秋・早秋・七夕・. (以上、秋)。初冬.<冬夜>・歳暮・<炉火>・霜・. (以上、冬)'<風>・<雲>・<晴>・暁・松・竹・<革>鶴・猿・管絃・<文詞>.. (故郷)・<故宮>・<仙家>・山家・田家・隣家・<山寺>・. <仏事>・<僧>・閑居.眺望・餓別・行旅 (旅)・<庚申>・<帝王>・<親王>・<丞相>・<将軍>・. <酒>・山・<山水>・<水>・禁中・古京. 雪・氷・寮・仏名. 栽>・紅葉・<落葉>・雁・虫・鹿・露・霧・梼衣. <秋興>・<秋晩>・<秋夜>・<十五夜>・月・<九日>・菊・<九月尽>・女郎花・萩・蘭・橿・<前. <夏夜>・<端午>・納涼・<晩夏>・<花橘>・蓮・郭公・蛍・蝉二屈. (香. みよう。﹃朗詠集﹄は御物の伝藤原行成筆本(講談社学術文庫に翻刻)、﹃題林抄﹄は専修大学本とする。﹃朗詠集﹄ に. 意味では. 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって 13.

(14) 第83号14 専修国文. <刺史>・<詠史>・王昭君・<妓女>・遊女・老人・交友(友)・懐旧・述懐・慶賀・祝・<恋>・無常・ <白>(以上、雑) そして ﹃題林抄﹄ にのみある題は、次のようになる。. (以上'春)'卯花・余花・葵・新樹・昌蒲・薬玉・早苗・照射・鵜河・五月雨・虚橘・嬰. 小朝拝・臨時客・余寒・残雪・若草・早蕨・春月・春曙・遅日・遊糸・春駒・帰雁・薙・呼子鳥・苗代・主 菜・杜若・河津. (以上、秋)、落葉・時雨・寒産・寒草・冬月・. 麦・水鳥・蚊遣火・夏月・夏草・夕顔・城・氷室・夕立・泉・荒和欣(以上、夏)、草花・荻・薄・苅萱・野 分・秋夕・駒迎・鵠・嶋・秋田・稲妻・稲負鳥・残菊・暮秋. 千鳥・水鳥・網代・神楽・鷹狩・炭竜・埋火・五節・臨時祭(以上へ冬)'(恋の部の題)、夕・夜・峰・岡・. 勅・林・杜・野・原・海・海路・海上・湖・浦・浜・磯・島・崎・潟・江・船・海人・池・沼・河・滝・橋・. ﹃題林抄﹄が﹃朗詠集﹄をはるかに増補したものとなっている。実は. ﹃題林抄﹄は. 道・関・社頭・寺・亡屋・山館・村・煙・雨・椙・苔・客・塊偏・賀算・夢・閑中・遠情・上陽人・場景妃 (以上、雑). このように見ると'題の上では. ﹃朗詠集﹄を最初だけ意識し'次いで自由に題を設定する傾向がある。例をあげると'. 春の部 ﹃朗詠集﹄‑立春・早春・春輿・春夜・子日・若菜二二月三日付桃・暮春‑ ﹃題林抄﹄‑立春・早春・小朝拝・臨時客・子日・若菜・七日・霞・鷺‑. 夏の部 ﹃朗詠集﹄1更衣・首夏・夏夜・端午・納涼・晩夏・花橘・蓮・郭公・蛍‑.

(15) 15 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. 『題林抄』-更衣・首夏・卯花・余花・葵・郭公・新樹・昌蒲・薬玉・早苗-. 秋の部 『朗詠集』-立秋・早秋・七夕・秋輿・秋晩・秋夜・十五夜付月・菊・九月尽『題林抄』-立秋・早秋・七夕こ草花・荻・萩・女郎花・薄・苅萱・蘭・雁-. 冬の部 『朗詠集』-初冬・冬夜・歳暮・炉火・霜・雪・氷付春水・霞・仏名 『題林抄』-初冬・落葉・時雨・霜・寮・雪・寒置・寒草・冬日・千鳥これらに対して、「雑の部」はたいへん相違している。. l暁・朝・夕・夜・山・峰・岡・柚・林・杜・野原・海・海路・・・-. 『朗詠集』Ⅰ風・雲・晴・暁・松・竹・草・鶴・猿・管絃付舞妓・文詞付遺文-『題林抄』. となる。ちなみ『朗詠集』の和歌二1六首と『題林抄』三四九首の中で'共通するものは四十八首である。このうち. には「あまつかぜ-ものかよひぢふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめん」を前者では遊女の題のもとに入れ、後. 者では五節の題のもとに入れているように、必ずしも同題ではない場合もある。また「なつ山のみねのこずゑのたか. ければそらにぞせみのこゑはきこゆる」のように、前者に見える歌が後者にもある場合があるが、1万後者には出典 未詳の歌もある。. すなわち『和歌題林抄』の編者は『和漢朗詠集』を直接参考にしたわけではな-、これを適当に思い出しながら題. を考えていったのであろう。最初の部分だけ1致していることが多-、後になって『朗詠集』の題からまた採ってい. ることもよくあり、この場合は順序不同である。『朗詠集』では春秋の部が充実してお-、王朝的なみやびの意識が.

(16) 16. あるのに対して、『題林抄』では夏冬の部も大幅に増補されており'中世の美意識をよ-反映している。また『題林. 峯. 洞. 浪. 尾上. 水. 氷. 他准之)海. (13). 流. そば. 谷 渚. 鳩. 坂 堤. 麓 湊. 入江 蔑. 千鳥. 浦 水鳥類. 蝦. 塩. 奥磯. 真薦. 嶋. 梅松. 干潟. 汀 和布. 河. 山の関(以上山体な-). 滝 池 藻塩草. 沼. 梯. 海人. 浮木. 塩屋-(巳上如此類水辺. 泉(己上水辺体なり). 仙木. で、これは連歌の寄合の世界を思わせる。たとえば二条良基の『連歌新式』 の体用事では、 岡 なり 船. にもそれが及んでゆ-のである。. 天. 日. 月. 雲. 風. 暁-山. 山路. これに対し'『二八明題集』 の雑中は'. 1つ○. 山中雨-河. 河水久澄. 池. 池水-. て,竹本幹夫氏のものがある。氏は世阿弥の『五重等に見える「ばうお-」について'この言葉は「亡臆」とも当. これまでは『和歌題林抄』と他の中世文芸との関わりを述べてきたのであるが'この点に関する論の早い例とし. 四. と続き'むしろ字書的な性格を示している。この意味でも『題林抄』には文芸的な意識が見られるといえるであろ. 山夕風. とあって,両者の類似を思わせる。連歌寄合の世界は'こうして和歌の入門書にも影響し'さらに世阿弥の能の詞章. 用なり)-。. 炭竃(巳上如此類山の用. をことさらに維持しょうとする'中世人の意識の表われであろう。さらに注目されるのは『題林抄』における雑の部. 抄』では小朝拝、臨時客、駒迎'五節、臨時祭など宮廷行事に関する題が昌につ-ところで'これは公家文化の伝統. 第83号 専修国文.

(17) 17 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. て字をされ、「亡国の音」の靴-という説もあったが、専修大学本の. (_4). 『和歌造林抄』雑に見える「亡屋」がそれであ. において「関寺小町」について「ばうお-」としているのであるが、これは小町が亡屋に住んでいると. る、としている。また、この語は『和漢朗詠集』 や『新撰朗詠集』 にある「故宅」「破宅」と同意の題で、世阿弥は 『音曲口伝』 いうイメージと関わるものである、としている。. 『音曲口伝』を見ると、この語は音曲論の用語で、. ( 1 5 ). 一、音曲に、祝言・ばうお-の声の分目を知る事。これは、呂・律二より出たり。呂といふは、喜ぶ声、出る. 息の声な-。律といふは、〔悲しむ〕声、入る息と云-0. とあって、御伽草子「玉藻の前」にあるような雅楽理論を能の音曲に改変したものであった。これによると世阿弥. は、呂-畠ロぶ声-祝言'律-悲しむ虫7ばうお-、と考えてお-、両者には長調と短調のような意味があるのであろ. う。呂から祝言が出たとするのは、猿楽らしい発想で'そうすると「ばうおく」は祝言の反対の概念、人の不幸を悲. しむような'哀悼を表わすような曲調をいうことになる。したがって必ずしも荒れ果てた家屋のイメージを喚起する. 用語とは限らないように思われる。けれどもこの語は仮名で伝わって秦-、世阿弥は「ばうおく」に祝言とは反対の. 言葉の意味を感じたものの'用語として十分熟させることができなかった、あるいは確かに「亡屋」の語から来てい. るとしても、自分本位に解釈した、等のことが考えられる。ちなみに亡屋は、『二八明題集』 『明題和歌全集』 『続五. 庭の千草. の「神無月ふり. よ-きの柚」の歌ことばがついている。この書では、亡屋は古京・故郷と系列をなす題であると. 明題和歌集』には見えず'『和歌題林抄』 の系列にある『種心秘要抄』雑(内閣文庫本) に亡屋があり、これに「軒 しのふ. 考えられている。. しかし『和歌造林抄』と中世文芸との比較はさまざまに興味深い問題を提起する。先に『題林抄』.

(18) 18. みふらずみさだめなき-」(一九六、『後撰集』冬). の歌が謡曲『忠度』に見えることを指摘したが'はたして『題林. る。これを参照しながら、以下両者が重なる例を示す。 <春の部>1 7例 としのうちにはるはさにけりひとゝせをこぞとやいはんことしとやいはん. 山二一人静・野守・求壕 きみがためはるのゝにいでゝわかなつむわが衣でにゆきはふりつゝ. 静. (古今)-朝長・放下僧. (拾遺)-江口・右近. (古今)I西行桜. 月やあらぬはるやむかしのはるならぬわが身ひとつはもとの身にして. (古今)-井筒・雲林院・小塩・杜若・賀. みやま木のそのこずゑともわかざりしき-らははなにあらはれにけり(詞花)-実盛・春栄・卒都婆小町二大. さくらばなさきにけらしなあしひきの山のかひよ-みゆるしらぐも. あさみどりいとよりかけてしらつゆをたまにもぬけるはるのやなぎか(古今)-絵馬・遊行柳・吉野天人. わがやどのむめのたちえやみえっらんおもひのほかにきみがきませる. はるの夜のやみはあやなしむめのはないろこそみえねかやはか-る,(古今'朗詠)-東北. ゆきの中にはるはきにけりうぐひすのこほれるなみだいまやと-らん. (古今)-和布刈・求塚. かすがのゝとぶひのゝもりいゞて見よいまい-かあらばわかなつみてん(古今)-春日龍神・小袖曽我・佐保. ねのひするのべにこまつのなか-せばちよのためしになにをひかまし(拾遺、朗詠)-鶴亀. (古今'朗詠)-絵馬. 田存氏の詳細な調査が有用である。これは二十一代集の和歌が現行謡曲の詞章に影響している例を網羅したものであ. p旧「. 抄』の証歌と謡曲における引き歌と重なるものはどれほどあるであろうか。謡曲と勅撰集和歌の関係については、松. 第83号 専修国文.

(19) 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって 19. 茂物狂・東北・夕顔. てりもせず-ち-もはてぬ春のよのおぼろづきよにし-ものぞなき(古今)-釆女・屋島. はる-れば雁かへるな-しら-ものみちゆきぶ-にことやつてまし(古今)-隅田川. ぅすゞみにか-たまづさとみゆる哉かすめるそらにかへるか-がね(後拾遺)-高野物狂. ぉちこちのたつきもしらぬ山なかにおぼつかな-もよぶこど-かな(古今)-一角仙人・清経・当麻・田村・唐. 船・雲雀山・紅葉狩・山姥. はるのゝのすみれつみにとこしわれは野をなつかしみひとよねにけ-(万葉)-求塚. いひそめしむかしのやどのかきつばたいろばか-こそかたみな-けれ(後撰)-杜若. <夏の部>5例. はなのいろにそめしたもとのおしければ衣かへうさけふにもあるかな(拾遺、朗詠)-雲雀山. なつ山のあをばまじ-のをそざ-らはつはなよ-もめづらしきかな(金菓)-大原御幸. さつきまつはなたちつばなのかをかげばむかしの人のそでのかぞする(古今'朗詠)-浮舟・通小町・蝉九・雲 雀山・藤. はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかはつゆをたまとあざむ-(古今'朗詠)I誓願寺・当麻. みなづさのなごしのはらへする人はちとせのいのちのぶとこそさけ(拾遺)-水無月顧. <秋の部>8例. をみなへしうしろめた-もみゆるかなあれたるやどにひと-たてれば(古今)I女郎花. なにめでゝおれるばか-ぞをみなへしわれおちにきと人にかたるな(古今)-女郎花・小督.

(20) 20 第83号 専修国文. あふさかのせきのいはかどふみならし山たちいづるもちづきのこま(拾遺)-関原与市. あふさかのせきのしみづにかげみえていまやひ-らんもちづきのこま(拾遺)-蟻通・烏帽子折・蝉丸. このまよりもりくる月のかげみれば心づ-しのあきはきにけり(古今)-阿漕・綾鼓・金札・玄象・皇帝・玉等. -. (古今)・よ屯田. しらつゆもしぐれもいたくもる山はしたばのこらずもみぢしにけり(古今'朗詠)-烏帽子折・飛雲こハ浦 このたびはぬさもとりあへず手向山もみぢのにしき神のまに. さりともとおもふ心もむしのねもよはりはてぬる秋の-れかな(千載)-砧・清経. <冬の部>6例. 神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめな-ける(後撰'朗詠)1息度. かみなづきふか-なりゆくこずゑよりしぐれてわたるみやまべのさと(後拾遺)-大社. たかさごのおのへのかねのをとすな-あかつきかけてしもやを-らん(千載)-高砂二二井寺. つのくにのなにはのはるはゆめなれやあしのかれ葉にかぜわたるなり(新古今)-芦刈. あはぢしまかようふちどりのなくこゑにい-よねざめぬすまのせきもり(金葉)-阿漕・敦盛. あまつかぜ-ものかよひぢふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめん(古今、朗詠)-西王母・泰山府君・定. 家・寝覚・羽衣・青野天人 <恋の部>4例 しのぶれどいろにでにけりわが恋はものやおもふと人のとふまで(拾遺)-定家. あかつきのしぢのはしがきもゝ夜がささみがこぬ夜はわれぞかずか-(古今)-卒都婆小町. まつよひのふけゆくかねのこゑきけばあかぬわかれのと-はものかは(新古今)-初雪二二井寺.

(21) 21専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. 山しなのこはたのさとにむまはあれどかちよ-ぞゆ-君をおもへば(万葉、拾遺)-通小町・谷行 <雑の部>11例. しらなみのよするなぎさによをつ-すあまのこなればやどもさだめず(新古今、朗詠)-胡蝶. これやこのゆくもかへるもわかれつゝしるもしらぬもあふさかのせき(後撰)-安宅・蝉九・第六天・盛久. みやこをばかすみとゝもにたちしかどあきかぜぞふ-しらかはのせき(後拾遺)-班女・遊行柳. 山ざとはものゝかなしき事こそあれよのうきよ-はすみよか-け-(古今、朗詠)-大原御幸. たかきゃにのぼりてみればけぶ-たったみのかまどはにぎはひにけ-(新古今、朗詠)-難波・放生川. ゎがきみはちよにましませさゞれいしのいほほとな-てこけのむすまで(古今、朗詠)-老松・呉服・春栄・TD. 八幡・養老. 王朝的な雰囲気を. ぉきなさび人なとがめそか-ごろもけふばか-とぞたづもな-なる(後撰)-大社美学代主・鉢木. としふればかしらのかみはしらかはのみIJoは-むまでな-にけるかな(後撰)-槍垣. ゎがやどのむめのたちえやみえっらんおもひのほかにきみがきませる(拾遺)-右近・江口. きみが世はつきじとぞおもふ神かぜやみもすそがはのすまんかぎりは(後拾遺)‥御裳濯 ひさかたの月のかつらもおるばか-いゑのかぜをもつかせつるかな(拾遺)-鱗形. 全体に春の歌の例が多-、『造林抄』で分量の多い雑の例が少ないのは、謡曲における古歌は,. かもすのに利用しようとする意図が強いためであろう。従来謡曲の韻文からの引用は、『和漢朗詠集』からのものが. 多いような印象があったが、必ずしもそうではな-、あま-著名ではない歌の場合もある。「みやま木のそのこずゑ. ともわかざ-し⊥(春)や「さつきまつはなたちばなのかをかげば⊥(夏)のごと-、ある〓疋の古歌に集中する.

(22) 傾向もあり'謡曲作者達に共通の好みとなっていた歌もあったようである。また「これやこのゆ‑もかへるもわかれ. (雑)のように、謡曲では関といえばこの歌を出すなど'決まり文句化し'記号化している場合もある。古歌. の謡曲への利用は一首をそのまま出すこともあるが'「千代のためしの数々に。何を引かまし姫小松の。緑の亀も。. つ、‑」. 材抄﹄春・子日). いては'後日の論にしたい。. の三四九首のうち'謡曲と関. の編者と謡曲作者の和歌意識は、かなり離れているものと見ることができ. ﹃二八明選集﹄雑下では、楚屈原・王昭君・場貴妃・上陽人・陵園. 和歌におけるこの間題については'三村晃功氏に王昭君について述べた論がある。これら漠故事と演劇との関係につ. ( ̲ 7 ). が金春禅竹の作であることが知られている。漠故事の流行は、中世の演劇では延年の風流に見えるものである。また. ら'この点でも本書は ﹃二八明選集﹄ の系列にはないようである。能では ﹃昭君﹄ が金春座系の古作で'﹃場景妃﹄. とすると'漠故事もまた王昭和君以外に増えていったのである。しかし ﹃題林抄﹄ は上陽人と場景妃のみであるか. 人・王昭君・屈原・四暗・反魂香が見え'類題集での流行であった。一般に類題集が﹃朗詠集﹄ の増補の性格がある. 下では、屈原・四時・上陽人・陵園妾・李夫人・返魂香が、﹃摘題和歌集﹄雑では、場景妃・李貴人・陵園妾・上陽. 妾が'﹃明題和歌全集﹄雑中では、場景妃・李夫人・王昭君・上陽人・陵園妾・四時・屈原が、﹃続五明題和歌集﹄雑. いるのはう謡曲との関わりで注目される。これは. しかし ﹃和漠朗詠集﹄ では王昭君のみが漠故事であったが、﹃和歌題林抄﹄ では上陽人・王昭君・場景妃に増えて. る。それぞれの和歌観ということになるであろう。. 係するのは五一首であるから'﹃題林抄﹄. のように、うま‑謡曲の詞章に溶け込ませる場合もある。﹃題林抄﹄. 舞ひ遊べば。」 (﹃鶴亀﹄'「ねのひするのべにこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし」 ﹃拾遺集﹄春、﹃題. 第83号. 22 専修国文.

(23) 23 専修大学図書館蔵『和歌題林抄』をめぐって. 注(-)以下'内閣文庫蔵の写本による。. (2)「和歌題林抄編者存疑」『専修人文論集』25号、昭和五十五年六月). (3)以下、中田武司他編『和歌題林抄』(専修大学出版局'平成元年)による。. (4)「和歌造林抄の基礎的研究」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』別冊・第九集'(昭和五十八年三月) (5)以下、中世の文学『連歌論集一』 (三弥井書店)による。. (6)日本古典文学大系『謡曲集・上』 (岩波書店)による。 (7) 『中世類題集の研究』 (和泉書院、平成五年) 1貫. の書一八三賞. (8)図書寮叢刊による。 (9)注(7). (10)『明題和歌全集』解配(福武書店、昭和五十一年) (11〓二村晃功編『続五明題和歌集』(和泉書院、平成四年)による。 (S)成立時期の解説と本文は、古典文庫による。. (S)古典文庫『良基連歌論集二』による. (S)『観阿弥・世阿弥時代の能楽』(明治書院、平成十1年)五〇1-五〇二貫 (ほ)日本思想大系『世阿弥・禅竹』による。 (S) 『和歌と謡曲考』 (桜楓社、昭和六十二年). (5)「漠故事類題和歌からみた中世類題集の系鎌2-「王昭君」の場合-(『中世類題集の研究』所収). この論文は、専修大学日本語日本文学会の平成十九年度研究助成による「専修大学図書館蔵の写本・版本の調査」.

(24) 24 第83号 専修国文. の研究成果の一部である。 【.

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