日本小児循環器学会雑誌 11巻4号 く委員会報告〉
585〜586頁(1995年)
基礎疾患を認めない児童・生徒の不整脈の治療適応のめやす
治療不要の不整脈について一日本小児循環器学会心電委員会 委員長 大国真彦 児童・生徒の不整脈の治療適応基準に関する小委員会
顧問:本田恵,新村一郎
小委員長:長嶋正實
委 員:浅井利夫,新垣義夫,住友直方,中村好秀,総崎直樹,松岡 優
近年,不整脈の治療の進歩にはめざましいものがあ る.しかし,小児の不整脈は無症候性のものや予後良 好なものが多く,また不整脈治療によって新たな不整 脈を引き起こすこともあるので,不整脈の治療には慎 重でなければならない.
現在,小児不整脈の治療の適応はまだ統一的なもの が示されていない.そこで日本小児循環器学会心電委 員会では不整脈を持つ児童・生徒に対し,不整脈の治 療のめやすを作成することとなった.
今回は基礎疾患を認めない主な不整脈のうち,治療 不要の不整脈を以下に列挙した.しかし治療は不要で あっても経過観察や生活管理指導の必要な症例もある ので『小児不整脈の管理基準の改訂』(日本小児循環器 学会雑誌,4:307− 9,1988)などを参考にされたい.
1.洞不整脈
洞徐脈は洞機能不全によることもあり,この場合に は洞機能不全の項に準ずる.
2.房室接合部調律,房室接合部補充収縮
房室接合部調律とは房室結節調律,冠静脈洞調律,
移動性ペースメーカー,左房調律,房室解離などをい
う.
3.上室期外収縮
4.上室頻拍(心房粗動,心房細動を除く)
以下の条件がすべてそろったもの 1)心不全がないもの
2)症状がないもの
3)頻拍時の心拍数(心室拍数)が比較的少ないも
の
4)頻拍が短時間で停止するもの 5)反復性でないもの
5.心室期外収縮,心室副収縮 以下の条件がすべてそろったもの
1)単形成,散発性
2)運動負荷によって消失または減少するもの 6.心室頻拍
以下の条件がすべてそろったもの 1)心不全がないもの
2)症状がないもの
3)単形性,かつ数拍以内で自然停止し,繰り返す ことが少ないもの
4)頻拍時の心拍数(心室拍数)が比較的少ないも
の
5)運動負荷によって消失または著しく減少するも
の
7.促進性固有心室調律(頻脈性心室調律)
8.QT延長
以下の条件がそろった場合には治療不要のことが多
い
1)失神,めまいなどの症状がないもの
2)失神,突然死,聾,QT延長などの家族歴がない もの
3)他の不整脈を合併しないもの
4)T波形が心拍ごとに変動する所見を認めない もの
9.WPW症候群,早期興奮症候群
以下の条件がすべてそろったもの 1)上室頻拍の既往がないもの2)心房粗動や心房細動の既往がないもの 10.完全右脚ブロック
11.1度房室ブロック
12.ウエンケバッハ型2度房室ブロック 以下の条件のもの
運動負荷で1度房室ブロックや正常房室伝導になる もの
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13.高度および3度(完全)房室ブロック
以下の条件がすべてそろったものは治療不要のこと が多い
1)心不全がないもの 2)症状がないもの
3)運動負荷により心室拍数が基本調律の2倍以上 に増加するもの
4)運動負荷により心室期外収縮や心室頻拍が出現 しないもの
5)正常QRS時間 6)正常QT時間
7)3秒以上の心室停止がないもの 14.洞機能不全(洞不全症候群)
以下の条件がすべてそろったものは治療不要のこと が多い
1)心不全がないもの 2)症状がないもの 3)心停止時間が短いもの
4)運動負荷により心室拍数が基本調律の2倍以上 に増加するもの
日小循誌 11(4),1995
5)正常QT時間
6)上室頻拍,心房細動,心房粗動などの上室頻脈 性不整脈を認めないもの
(注1)例外的な症例もあるので症例ごとによく検討 すること.特に心室頻拍,QT延長,高度また は3度房室ブロック,洞機能不全は慎重な対応 が必要であり,長期間の経過観察が望ましい.
(注2)ここにあげていない不整脈については個々の 症例で治療の必要性の有無を検討すること.
(注3)基礎疾患の有無の判定には病歴,診察所見を参 考にして必要な検査を行い,心疾患の有無,お よび循環器系に影響を及ぼす他の疾患,薬物の 影響などの有無を検討すること.
(注4)ここでいう不整脈治療とは薬物治療,非薬物治 療(ペースメーカー植え込み,直流通電DC,
カテーテルアブレーション,外科治療など)を いう.
(注5)不整脈に関する用語は日本循環器学会,日本心 電学会,日本小児科学会の用語集なども参考に した.
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