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テオ・アンゲロプロスの作品群における時間飛躍表現の表現分析

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Academic year: 2021

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テオ・アンゲロプロスの作品群における時間飛躍表現の表現分析 

Research on the representation of time leap in the filmography of Theo Angelopoulos 

 

5112E022-1  柳田  裕平    指導教員  藪野  健  教授        YANAGIDA Yuhei      Prof. YABUNO Ken       

 

  概要:本研究はギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロス(Theo Angelopoulos)の映画の特色とさ れるワンシーン・ワンショットの演出、その中でも時間飛躍表現が用いられた作品に着目する。まずワン シーン・ワンショットやオフ・スクリーンに代表されるアンゲロプロス作品に見られる特色を確認、既存 のアンゲロプロス論を補助線に時間飛躍表現の定義を行った。この表現が用いられたアンゲロプロス作品 の各シーンを体系的にまとめ、時間飛躍表現がそれらの作品に対して、どのような効果を与えたかを分析 する。その分析とアンゲロプロスのインタビューを足がかりに、どのような意図をもってアンゲロプロス が時間飛躍表現を用いたのかを推測、考察することを本論文の目的とする。 

  キーワード:映画、時間、長回し、モンタージュ    key words:cinema, time, long take, montage 

 

1、はじめに   

  ギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロ ス(1935〜2012)の作風は 14 本のフィルモ グラフィーにおいて、一貫している。旅や国 境を主題とした作品が多く、群衆、霧、曇天、

画面を横断する地平線・水平線、黄色のレイ ンコートなどの複数の視覚的なモチーフが作 品を越えて登場する。また、物語の根底には 20 世紀ギリシャの歴史や神話が横たわって おり、作品によっては非常に複雑な構成の作 品もある。アンゲロプロスの映画において最 大の特徴は、その映画を構成するほとんどの ショットが長大なワンシーン・ワンショット であることだ。 

 

2、既往論文研究 

  ヴァルター・ルグレ(Walter Ruggle)は以前 から存在していたワンシーン・ワンショット

の方法をある点において発展させたのがアン ゲロプロスであると著作[1]で主張する。そ れはワンシーン・ワンショットの中で、生起 する出来事の順序が入れ替えられたり、映画 の上映される時間経過と、映像化された出来 事の時間経過が一致していなかったりする点 である。本論文はルグレが指摘した、一つの ショットの中に複数の時間軸を取り込こんだ アンゲロプロス特有のワンシーン・ワンショ ットに着目した。 

 

3、時間飛躍表現の分析 

  ルグレが示した、アンゲロプロス特有のワ ンシーン・ワンショットを本論文においては

「時間飛躍表現」とし、「キャメラの頻繁な動 きを含み、カットなしに、ワン・シーンすべ てが一気に撮られた複雑なショットで、その 中でも時間の非連続化、または、時間の省略

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が生じているショット」と定義した。 

  時間飛躍表現が見られるアンゲロプロスの 以下の作品、『旅芸人の記録』、『狩人』、『ユリ シーズの瞳』、『永遠と一日』において、それ ぞれの時間飛躍表現のショットが作品でどう 機能したかを分析した。その結果、時間飛躍 表現を大きく三つに分類した。長大な時間・

歴史をワンショットの中に収めて、時間を圧 縮した場合。登場人物の記憶が現実に見える 形として映像化される、人物の記憶が現前化 する場合。『永遠と一日』において、例外的に 時間飛躍表現がその時空間を生死の境界線上 のような空間へと変容させる場合。 

  また、『狩人』において本来はモンタージュ によって分断されるはずのショットで、時間 飛躍表現が異なる時間に属するはずの人物を 次のカットに食い込ませたり、次のカットに 先行する形で人物を前のカットに登場させた りした。それらのショットは次のカットとア クションや音楽でつながれることで、相互の カットの編集点が意識されにくくなる効果を もたらした。 

 

4、アンゲロプロスの発言からの考察    時間飛躍表現の分析とアンゲロプロスのイ ンタビューを参照し、本論文の目的であるア ンゲロプロスはどのような意図をもって、時 間飛躍表現を用いたかを考察した。 

  アンゲロプロスはインタビューで現実と想 像のあいだに境界はなく、境界は流動的であ ると述べた。それらの発言などから、時間飛 躍表現を用いて、現在と過去、現実と想像、

生死、といった二項対立もしくは、より多く

の要素を伴った対立の境界を越え、彼の映画 において、それらの融合を意図したことが推 測できる。 

  そして、もう一点、時間飛躍表現を用いて 相互のカットの編集点が意識されにくくなる ような箇所を作り、編集によって接続された 二つの画面の相互介入の衝撃を緩和し、モン タージュによる「一義的明確さ」から逃れ、

観客により多くの自由を与えようとした。そ うする事で、アンゲロプロスが志向した解釈 の多様性を獲得しようとした意図があったと 推測される。 

 

[1]ヴァルター・ルグレ『アンゲロプロス̶̶沈黙のパ ルチザン』奥村賢訳、フィルムアート社、1996 年。 

参照

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