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平面作品における表現空間

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Academic year: 2021

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平面作品における表現空間

教科・領域教育専攻 芸術系コース(美術) 土 井 麻 利 江

作品の要旨

Iはじめに 学部,大学院での制作活動を通して,日本 画,油絵,彫刻,デザインといったジャンルの 固定概念に捉われない作品制作を行って来た。 素材や技法が変化しても,作品制作において, 共通している普遍的な概念を追及してきたとも 言える。素材や技法は様々に変化したが,空間 表現と,そこに内在する概念の可能性について は,一貫して追求してきた。空間表現とその内 在性という概念は,デ、ッザンにおける,主体と 客体の認識から始まり,学部時代の日本画の表 現から,空間重視の構図を学び,それを半立 体作品に転嫁させた作品制作へと推移していっ た。修了制作においても空間表現における作品 が,制作者(自身)鑑賞者という,作品から 見て“他者"という位置づけから見た場合,空間 表現への意識がどの様に平面作品と関連して いるのかという考察を継続して行っているこ とから,制作の主題を「平面作品における表 現空間」とし,作品の区分としては,半立体 作品を制作した。具体的には,長方形の合板 を重ね合わせて,厚みをつけた支持体(表面) の任意の範囲を挟り,なだらかな凹みを造る。 その支持体の表面を,凹面と平面部の境界線が 限りなく無くなるように滑らかに仕上げた。こ の作品の展示方法を壁掛け,或いは,壁に平行 して自立させる形式にすることで,平面作品と 立体作品の間という意味合いで,半立体作品と 指導教員 鈴 木 久 人 呼称している。次に,修了制作に取り組むに当 たって,主題の「平面作品における表現空間」 という概念について3つの観点からもう少し詳 細に述べたいと思う。 II I平面作品における表現空間」について 1 まずlつ日は「平面作品における表現空間」 と言えば,字面だけ見ると平面作品の特性であ る平面性を意図しつつ,表現方法に"空間"を用 いているという"矛盾"を字んでいる。その意図 としては,完全に平面的とも,完全に立体的と も分類されない表現を行うということである。 「平面作品における表現空間」を主題とした半 立体作品の表面は,一見すると,実際に凹んで いる物質を支持体として使用しているのか,凹 んでいる様に見える影を 表面に描いているだ けなのかが判別しづらい。そういった,絵画と しての2次元の表現か,立体としての3次元の表 現なのかが判断しづらい空闘を表現すること で,具体的な色や形では表現しきれない高次の 抽象的イメージの表出を試みている。

2

そして.

I

平面作品における表現空間」の 2つ自の観点は. 1-1で述べた様な,平面的で ありながら,立体的でもあるという“矛盾"を作 品に取り入れることにより,平面作品の平面性 とはどの様な事柄をいうのかという概念を浮彫 にするということである。その事を考えるには まず、我々の視覚的機能がどの様に平面作品を 認知しているのかという事に目を向けてみなく (1枚目)

(2)

− 346 − てはならないだろう。我々の視覚は眼で捉えた 対象を網膜に焼き付ける事で,

2

次元の"像"とし て感知している。我々が立体的であると認識し ている事柄も, 2次元として得たイメージを元 に脳内で,或いは両日の距離感による 3D構造 によって, 3次元の情報として再構築し,その 情報をあたかも今この瞬間,立体的な状態のま ま,眼で見たかの様に錯覚しているだけ,とい うことになる。これは人間の意思ではどうする ことも出来ない,思考と感覚との誤差である。 「平面作品における表現空間」を主題とした作 品では,凹面であるという3次元性を有してい るという事から,壁掛け・壁に平行させて自立 させ展示させるという,ある限られた方向より 作品を一望するよう,設定している。他者に平 面作品であるという概念を想起させる条件を満 たしながら,実際には画面上に凹みの空間が存 在することから,どこまでを平面作品として捉 えるべきなのかという疑問を呈している。 3 最後の「平面作品における表現空間」の観 点は, 1-1・1-2で述べた観点の延長で、もあ る。その観点とは,平面的でありながら立体的 でもあるいった“矛盾"が生じている際に,脳内 で生成されていると考えられる“像"の対象的位 置づけではなく,概念的位置づけに関するもの である。この半立体作品を鑑賞者が見た瞬間, いくら概念的に平面作品でも立体作品でもない 高い抽象性を意図したからとはいえ,脳内で生 成されている

1

象"は

2

次元には変わりないだろ う。それ故に,この作品の場合,主題として設 けた「平面作品における表現空間」の視点で概 念的な“像"として,視覚構造を捉え直そうとす るならば,視覚の生理的作用よりもその"像“が 鑑賞者の意識に下った時にそこにある概念が

2

次元としてのイメージなのか,それとも3次元 のイメージとして判断されるべきなのか,と いう観点が重要なのである。そして,より特 筆すべき点は,その観点が,言語や色,形と いった具体的対象を伝達手段として用いたので は,他者にほぼ同様の覚知を抱かせる事が困難 である点である。

N

おわりに ここまでの記述で,修了作品において「平面 作品における表現空間Jを主題とした理由 と,その詳細について述べて来た。非常に抽象 的な地点を志していることから,表現と概念と の連関の強度や伝達性が伴っていない部分が見 受けられ,今後の課題のーっと言えよう。ま た,本来芸術作品は作品のみで鑑賞する場面が ほとんどである。今回の様に作品に文章を付随 させる場合においては 作品自体と文章との整 合性が必要となってくるだろう。その事を視覚 的表現の制限と捉えずに,文章により視覚的 作品の概念をも広げることを表現全体の可塑 性として,肯定的に考えた上で,それでは, 作品の境界線とは何か。表現とは何か。と いった,より奥まった地点へ主題を掘り下げ ていく事も重大な課題であると言えよう。 図1 半立体作品の凹みの部分を拡大したもの (2枚目)

参照

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