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点音源と球面調和関数展開による音源放射特性の推定

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Academic year: 2021

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(1)

点音源と球面調和関数展開による音源放射特性の推定

Estimation of the sound source directivity based on fundamental solutions and spherical harmonics expansion

5114E008-8

田村 有希 指導教員 及川 靖広 教授

TAMURA Yuki Prof. OIKAWA Yasuhiro

概要:電気音響設計と建築音響設計は別個に行われがちであるが,それらを統合的に扱った音響設計は重要であり,

そのためには音源放射特性を考慮した数値計算が求められる.本研究では,音源放射特性の推定を基本解近似法と球 面調和関数展開の理論を用いて境界値問題の逆問題を解く凸最適化問題として定式化し,実音源の放射特性のモデル 化を行なった.

キーワード:逆問題,凸最適化,

ADMM

,スパース推定,最小二乗法

Keywords: inverse problem, convex optimization, ADMM, sparse approximation, least square method

1.

ま え が き

室内音場を決定づける要素として音源と部屋の音響特 性があり,室内音響設計のためにそれらをモデル化し数 値シミュレーションを行なう例は数多くある.しかし実 音源の特性のモデル化の困難さゆえに,数値解析では点 音源や線音源が用いられる.一方数値計算において,点 音源の線形結合によってある点の音圧を近似することが できる

[1]

.点音源基底による音源放射特性のモデル化は 音源形状に依存せず,また数値計算における点音源の導 入の容易さから,あらゆる指向性音源を用いた室内音場 解析や立体音響技術への応用が期待される.しかしモデ ル化できる周波数が測定データの空間ナイキスト周波数 までに限られるという課題もある.そこで本研究では,

音源を囲む境界上の点での音圧の測定データから放射特 性を推定する手法を提案する.また実音源の放射特性の 測定データからモデル化を行なった.

2.

音源の放射特性のモデル化

2. 1

基本解近似法

音響問題における基本解近似法

(Method of Funda- mental Solutions, MFS) [1]

は,領域

R

3内での

Helmholtz

方程式

(

2

+ k

2

)u(x) = 0, x Ω (1)

の解

u

を,領域外に配置された

N

個の点音源すなわち 基本解

Φ

を用いて

u(x)

N

i=1

a

i

Φ

i

(x) (2)

Φ

i

(x) = exp(−jk∥x y

i

2

) 4π x y

i

2

, y

i

R

3

\

と近似し係数

a

iを求めることで問題を解くことに相当 する.基本解は

Trefftz

基底(支配方程式を満たす基底)

であり,自由度

N

を大きくとることで任意の

u

をいく

–1

球面の極座標系

Boundary value Monopole

–2 MFS

の外部問題

らでも良く近似でき,

N

が小さくても解を良く近似でき ることが知られている

[1]

2. 2

球面調和関数展開

単位球面上の二乗可積分な任意関数は球面調和関数

Y

mnで展開できることが知られている.

Y

mn

Y

mn

(θ, ϕ) =

√ 2m + 1 4π

(m n)!

(m + n)! P

mn

(cos θ) e

jnϕ

(m = 0, 1, 2, · · · , n = m, · · · , 0, · · · , m) (3)

と定義される球面上の正規直交基底である.ただし,

(θ, ϕ)

は図

–1

で定義される極座標系の偏角,

P

mn

m

n

位ルジャンドル陪関数である.式

(1)

の解

u

の球面調 和関数展開表示とその展開係数は

u =

m=0

m n=−m

µ

mn

Y

mn

(4)

µ

mn

=

0

π

0

u (θ, ϕ) Y

mn

(θ, ϕ)

sin θdθdϕ (5)

となる.ただし

Y

mn

(θ, ϕ)

は球面調和関数の複素共役で ある.

3.

放射特性の推定

3. 1

実測値を用いた推定

–2

のように

MFS

の外部問題として扱い,ある大き さの球内部に設置した複数個の点音源の線形結合で境界 データつまり放射特性の実測値を近似する.そこで実測 データについて以下の性質を仮定した.

(2)

Amplifier

Audio interface PC

Turntable 0.5 m

: Center of the turntable

–3

機器の配置

3. 1. 1

推定値の微分最小化

モデル化手法は,空間分解能の低いデータからでも良 く近似し,また測定されていない点でも良く推定できる ことが望ましい.そこで実音源の放射特性は隣接する推 定点で値がなめらかに変化すると仮定し,推定点での音

u ˆ

の微分最小化を考える.

3. 1. 2

係数のスパース推定

ノイズを含まない放射特性の形は単純であり,少数の 基底で近似できることを仮定する.そこで多数の基底の うち特性を表すのに必要な基底のみを選択することを考 え,基底の係数のうち必要ないものを

0

にし行列

a

をス パースにする問題として捉えなおす.

3. 2

最適化問題の定式化

以上より,音源の放射特性の推定手法を

minimize

12

|| DY

wT

Φ

Y

a ||

22

+ || Λa ||

1

subject to a argmin

ξ

|| Φξ u ˆ ||

22

(6)

という凸最適化問題として定式化した.制約条件は解

a

が線形方程式の最小二乗解となることを意味する.目的 関数の第

1

項は推定値の微分最小化項であり,第

2

項は 点音源基底の係数のスパース推定の凸緩和問題とした.

3. 3

再定式化と求解アルゴリズム

(6)

を解く凸最適化アルゴリズムとして

Alternating Direction Method of Multiplier

ADMM

)を用いた.

ADMM

は目的関数を微分可能な項と微分不可能な項に 分離し変数を更新していく解法である

[2]

.提案手法を この形に当てはめるために再定式化すると,

3

つの変数

α, β, γ

の更新式は

α

n+1

= argmin

α∈CN

1

2 || DY

wT

Φ

Y

α ||

22

+ ρ

2 || P α +

n

γ + r

n

||

22

β

n+1

= argmin

β∈CN

|| Λβ ||

1

+ ρ

2 || P α

n+1

+ γ + r

n

||

22

r

n+1

= r

n

+ P α

n+1

+

n+1

γ (7)

P = Φ

T

Φ

I

, Q = O

I

, γ = Φ

T

u

O

である.

α

の更新式は微分可能なので勾配を求めること ができるが,

β

の更新式は微分不可能な項を含むので

prox

λf

(y) = argmin

z

f(z) + 1

|| y z ||

22

(8)

0.5 0 1 -0.5 0.5 0 -0.4-0.20.20.40

0.5 0 1 -0.5 0 0.5

-0.20.20 -0.4 0.4

(b) 8000 Hz (a) 1000 Hz

–4

スピーカの放射特性の推定結果

で定義される

proximal operator [2]

を用いる.これは関

f(x)

1ノルムのとき,

prox

κ||·||1

(z) = max

0, 1 κ

| z

i

|

z

i

である.式

(7)

β

の更新式を定義の式に当てはめるた めに適当に変形し,最終的に各変数を

α

n+1

=

TY

Y

w

D

T

DY

wT

Φ

Y

+ ρP

T

P )

1

× ρP

T

(Qz γ + r

n

) α ˆ

n+1

= τ P α

n+1

(1 τ )(Qβ

n

γ) β

n+1

= prox

λ

ρ||·||1

α ˆ

n+1

+ r

n(2)

r

n+1

= r

n

+ ˆ α

n+1

+

n+1

γ (9)

と更新することで式

(6)

を解くことができる.

4.

提案手法の実音源への適用

スピーカ(

BOSE 101MM

)から半径

0.5 m

の球上の 点での音圧を測定した.使用機器の配置を図

–3

に示す.

測定場所は西早稲田キャンパス

61

号館の無響室,使用機 器は騒音計(

RION NL-32

,パワーアンプ(

YAMAHA A100a

I/O

MOTU Ultra Lite mk3 Hybrid

,ステッ ピングモータ(

NSK ESA23

型),使用音源は

2

周期の

TSP

である.スピーカをターンテーブルの上にのせ,周 方向の測定はステッピングモータにより自動制御した.

測定データに対して提案手法を用い放射特性の推定を行 なった結果を図

–4

に示す.提案手法を用いることでなめ らかな放射特性のデータを推定することができた.

5.

む す

音源の放射特性を点音源基底でモデル化する手法を凸 最適化問題として提案した.また実際にスピーカの放射 特性の測定データから提案手法を用いてモデル化を行 なった.今後は異なる構造のスピーカや音声についても モデル化を試み,音源と部屋の特性の包括的な設計につ いてさらに検討を加える所存である.

参 考 文 献

[ 1 ] E. Kita and N. Kamiya, “Trefftz method: an overview,”

Adv. Eng. Softw., vol.24, no.1–3, pp.3–12, 1995.

[ 2 ] S. Boyd, Distributed Optimization and Statistical Learning via the Alternating Direction Method of Multipli- ers, Found. Trends Mach. Learn., vol.3, no.1, pp.1–122, 2010.

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