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ブリ類の難治癒疾病対策研究について

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Academic year: 2021

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(1)

ブリ類の難治癒疾病対策研究について

水産食品部 研究専門員 柳 宗悦

【目 的】

べこ病(原因:微胞子虫

Microsporidium seriolae

)は,これまでブリ類稚魚期の限定 的な疾病で,成長とともに自然治癒すると考えられてきたが,近年,稚魚期に重篤感 染する事例が多く認められるようになり,成魚段階に至っても寄生の痕跡が確認され 商品価値が低下する等の経済的被害が発生しており,本病に感染する時期・場所の把 握や原因虫の生活環・感染機序の解明及び対処法の確立が強く求められている。そこ で,本研究では養殖環境水や魚体に含まれるべこ病遺伝子等を調査・分析し,その感 染・発病傾向を把握するとともに,環境生物の採集を行い,原因虫の中間宿主候補の 探索を試みた。また,本症に有効な治療法を開発するため,

qPCR

法による感染初期 の診断とフェバンテルの経口投与により治療試験を行い,その有効性を検討した。

【材料及び方法】

1.疫学調査

(1) 感染状況調査(感染時期・場所の把握)

県内の主要な蓄養場,養殖場の海水や魚体の

M. seriolae

遺 伝子量等を調査し,

µm

べこ病の感染時期・場所の把握を試みた 海水中の遺伝子量は1Lの海水を1。 のフィルターで吸引ろ過後,

DNA mini Kit

を 用いて核酸抽出を行い,

qPCR

法で 定量検出を行った 魚の感染状況は 肉眼観察によるシスト保有率(シスト確認個。 , 体数/検査尾数)と

qPCR

法による感染率(感染個体数/検査尾数)により調査し た。また,カンパチ人工種苗(尾叉長約6㎝)を5月と7月に海面生簀に収容し,

1週間毎に20尾ずつを取り上げ,シスト保有率,感染率等の推移を調べた。

(2) 寄生メカニズムの解明(生活環の解明に向けた調査・研究)

べこ病発生漁場において環境生物を採取し,

qPCR

法で遺伝子の定量検出を行 い,検出された遺伝子量から微胞子虫の中間宿主候補を探索した。

(外観と筋肉シスト数の相関,シストの体内分布把握) (3) 寄生レベル判定基準の策定

現場における感染強度の判断基準策定のため,外観症状と筋肉中のシスト数の 相関を調査した。また,罹患魚のフィレを6分割して体内分布状況を調査した。

(※水産研究・教育機構 近畿大学 愛媛県 鹿児島県の4機関共同試験)

2 治療試験. , , ,

カンパチ人工種苗(尾叉長約12cm)をべこ病発生漁場の海面生簀内で一定期間飼 育し,感染初期段階で供試魚を陸上水槽に移槽し,フェバンテルの経口投与により 治療試験を行った。感染状況,治療効果はqPCR法等で判定した。

【結果及び考察】

1.疫学調査

(1) 感染状況調査(感染時期・場所の把握)

(2)

調査を実施したほとんどの海域で,4〜11月の期間に海水から

M. seriolae

遺伝 子が検出され,ピークは6月頃と推察されたが,9〜10月の秋季にも検出される 傾向にあり,水温が22〜25℃の範囲となる時期に感染期があるのではないかと推 察された。また,蓄養場におけるブリ天然種苗の調査では,蓄養開始後3〜4週 間で感染したものと推察された。カンパチ人工種苗を用いた感染試験では,5月 沖出群は25日目でシスト保有個体が確認されたが7月沖出群は確認されなかった ことから,べこ病感染には沖出時期が影響するものと推察された。試験期間中の 水温と海水中の遺伝子量との相関では,水温が

22

24

℃の範囲で最も検出量及 び検出頻度が高い傾向が窺われ 図1( ),これらの水温帯を避け高水温期に人工種 苗を沖出しすることで,べこ病感染の軽減が可能となるものと考えられた。

(2) 寄生メカニズムの解明(生活環の解明る+に向けた調査・研究)

採取した複数の中間宿主候補から

M.seriolae

遺 伝子が検出され,中間宿主の可 能性が示唆された。

, )

(3) 寄生レベル判定基準の策定(外観と筋肉シスト数の相関 シストの体内分布把握 外観のべこ症状と筋肉中のシスト数には高い相関 外観のべこ症状×2.9≒筋肉(

( )。 , , ,

中のシスト数)が見られた 図2 また べこシストの体内分布調査では ブリ カンパチともに背肉の前方部分に最も多くシストが分布していることが確認され

データは 検 査時の

た。これらの 現場におけるべこ病感染強度の判断基準と

q PCR

サンプル採取部位の参考資料になり得るものと思われた。

2.治療試験

フェバンテル投与区は,シスト保有率,感染率,筋肉1

mg

当たりの平均遺伝子 量とも,対照区に比べ有意に低い値であった。これらのことから,感染初期の筋肉 中における微胞子虫の増殖の抑制や胞子の形成阻止に,フェバンテルの経口投与が 有効であることが明らかとなった。

一方,本試験とは別に実施した試験において,感染初期を過ぎた供試魚(既にシ ストを形成してしまったもの)に対しては同様の治療効果が認められなかったこと から,感染初期段階での投与が重要であるものと考えられた。

本研究は,農林水産業の革新的技術緊急展開事業及び水産防疫対策委託事業の助成 により行われた。

0.00E+00 5.00E+03 1.00E+04 1.50E+04 2.00E+04 2.50E+04 3.00E+04

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 図1 水温とM.seriolae遺伝子の検出量の関係

中の子量copies/L)

水温(℃)

1.30E+05

y = 2.8715x R² = 0.4517 0

10 20 30 40 50 60

0 5 10 15 20

図2 外観のべこ症状と筋肉中のシスト数の関係

のシ(個

外観のべこ症状

参照

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