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科学研究費助成事業  研究成果報告書

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Academic year: 2022

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(1)3版. 様. 式. C−19、F−19−1、Z−19 (共通). 科学研究費助成事業. 研究成果報告書 令和. 2 年. 6 月. 5 日現在. 機関番号: 34419 研究種目: 基盤研究(C)(一般) 研究期間: 2017 〜 2019 課題番号: 17K05818 研究課題名(和文)生体応用を指向した酸素応答性ランタニド錯体の開発. 研究課題名(英文)Development of oxygen‑responsive lanthanide complexes for biological applications 研究代表者 中井. 英隆(Nakai, Hidetaka). 近畿大学・理工学部・准教授. 研究者番号:70377399 交付決定額(研究期間全体):(直接経費). 3,700,000 円. 研究成果の概要(和文):酸素プローブとして魅力的な性質を有する発光性ランタニド錯体を医療・診断技術に 応用するための基礎を築くことを目的として、新規な酸素応答性ランタニド錯体の設計・合成を中心に研究を進 めた。 その結果、「生体応用を指向した酸素応答性ランタニド錯体」を開発するための配位子・錯体設計における基 礎的な知見を得ることができた。また、プロトタイプのランタニド錯体を用いて「酸素プローブ」を作成するこ とにも成功した。さらに、新規に開発した配位子を用いれば、酸素応答機能に加えて、「キラルな分子に応答す る機能」を付与できることも明らかにした。 研究成果の学術的意義や社会的意義 プロトタイプの酸素応答性ランタニド錯体を用いて、f‑f発光を利用した酸素プローブとしては世界最高の性 質を示す酸素プローブを作成することができた。また、窒素下では緑・空気下では黄・酸素下では赤色に発光色 が変化する比色酸素プローブの開発にも成功した。さらに、「キラル分子に応答する機能」を有する酸素応答性 ランタニド錯体は、生体内に存在するアミノ酸などのキラル分子を特異的に認識できる可能性を秘めた新規な化 合物である。. 研究成果の概要(英文):Our researches had been focused on the design and synthesis of new oxygen‑responsive lanthanide complexes in order to obtain fundamental knowledge in the development of new medical and diagnostic technologies using luminescent lanthanide complexes. As a result, we have obtained basic knowledge on ligand and complex designs for the development of oxygen‑responsive lanthanide complexes for biological applications . In addition, we have succeeded in creating the oxygen probes using our prototype oxygen‑responsive lanthanide complexes. Furthermore, we have found that the newly developed ligands can provide oxygen‑responsive lanthanide complexes with chiral molecule ‑responsive function.. 研究分野: 錯体化学 キーワード: 合成化学. 光物性. 酸素プローブ. ランタニド錯体. 発光. ※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。.

(2) 様 式 C-19、F-19-1、Z-19(共通) 1.研究開始当初の背景 酸素に応答する発光性の化合物は、環境測定などに用いる安価な酸素センサーや生体内応用 を可能にする酸素プローブの開発といった観点で活発に研究されている。その中でも、酸素に応 答する発光性のランタニド錯体は、有機化合物や遷移金属錯体とは異なる「プローブの感度等の 向上に魅力的な発光特性」を示す点で、注目されていた。しかしながら、有機化合物や遷移金属 錯体と比べるとその報告例は圧倒的に少なく、それらの性能も満足のいくものではないという のが現状であった。 このような中、申請者は、 「酸素応答性のランタニド錯体の中で、世界最高の 91%という発光 量子収率を示すテルビウム錯体(Chem. Commun. 2014, 50, 13059)」および「蛍光とリン光の二重 発光挙動を示すガドリニウム錯体(Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 8722)」を偶然発見した。さら に、これらの知見を基に、酸素に応答する発光性ランタニド錯体を合理的に設計・合成する指針 を得ることにも成功していた(Dalton. Trans. 2015, 44, 10923, Dalton. Trans. 2016, 45, 9492, Inorg. Chem. 2016, 55, 6609)。ランタニド錯体が示す f–f 発光は、 「長い発光寿命・鋭い発光スペクトル・ 大きいストークシフト」といった特性を有し、バックグラウンドの発光との分離・識別が容易と なることから高感度な酸素プローブの開発にとって魅力的である。また、蛍光とリン光の二重発 光は、単一分子からの「酸素に応答しない蛍光」と「酸素に応答するリン光」の強度比を検出に 利用できることから、信頼性の高い「検量線を必要としないレシオ型酸素プローブ」を開発する のに有利である。しかしながら、このような発光特性を有する酸素応答性のランタニド錯体を医 療・診断技術へと応用しようとする場合、酸素応答機能のさらなる向上はもちろんのこと、種々 の超えなければいけないハードルがあった。 2.研究の目的 本研究は、申請者が独自に発見・開拓してきた「酸素プローブとして魅力的な性質を有する発 光性ランタニド錯体」を医療・診断技術に応用するための基礎を築くことを目的として立案した ものである。研究期間内(3 年間)に、 「水溶性の付与」や「機能性の付与」といった生体内応用に おける種々のハードルをクリアーし、新規な酸素プローブ創製の基礎(分子設計指針)を確立す ることを目指した。具体的には、新規なランタニド錯体の設計・合成を中心にして研究を展開す るとともに、プロトタイプとなる錯体が示す「f–f 発光」および「二重発光」を利用した酸素プ ローブの開発を進めた。 3.研究の方法 目標を達成するため、研究の中心となる「新規なランタニド錯体の設計・合成」に関しては、 下記 3 つの重点項目を設定して効率的に研究を進めた。 (重点項目 1)水溶性の付与 錯体に水溶性を付与するため、 「錯体のイオン化(カチオン錯体の合成) 」および「配位子への 親水基の導入」などを検討した。 (重点項目 2)機能性の付与 機能性ユニットを「配位子の段階で導入」する方法と同時に、 「錯体形成後に導入」する方法 を検討した。 (重点項目 3)酸素応答機能の評価と分子設計へのフィードバック 上記項目 1 および 2 で合成した新規ランタニド錯体の酸素応答機能を評価し、新規な酸素プ ローブの創製に向けて新規配位子・錯体を設計した。 4.研究成果 (1) プロトタイプの酸素応答性ランタニド錯体を用いた酸素プローブの開発 背景で述べたように、ランタニド錯体が示す f–f 発光を利用すれば、高感度な酸素プローブの 開発が可能となる。申請者が見つけたテルビウム錯体は、非常に優れた発光量子収率を示し(よ く光る)、優れた酸素応答機能も有している。しかしながら、実際に酸素プローブを作製した際 に、錯体分子自身の性能をうまく引き出せないことは多い。そこで、プロトタイプのテルビウム 錯体(Tb)を用いて(図 1)、種々の酸素プローブを作製し、その酸素応答挙動を評価した。. O N O. O. Tb N. O N. N O O. プロトタイプの テルビウム錯体. O. Gd N. N. CH2 CH O n. プロトタイプの ガドリニウム錯体. ポリスチレン (PS). 図 1 「f-f 発光」を示すプロトタイプのテルビウム錯体、 「二重発光」を示すプロトタイプのガドリニウム 錯体およびポリスチレン(PS)の構造..

(3) その結果、プロトタイプの錯体をポリスチレン(PS、図 1)の薄膜に担持した酸素プローブが、 感度・応答速度において、f–f 発光を利用した酸素プローブとしては世界最高の性能を示すこと を見出した。この酸素プローブにおいては、テルビウム錯体に起因する緑色の発光強度が、窒素 下(N2)・空気下(Air)・酸素下(O2)となるに従って弱くなり(図 2 左)、0%から 100%の酸素濃度 領域で直線的な応答挙動を示した。さらに、新規に合成した「酸素に応答しない赤色の f–f 発光 を示すサマリウム(Sm)錯体(図 1)」 とプロトタイプのテルビウム錯体とを組み合わせることで、 窒素下(N2)では緑・空気下(Air)では黄・酸素下(O2)では赤色に発光色が変化する比色酸素プロ ブが構築できることを明らかにした(図 2 右)。この比色酸素プローブにおいては、サマリウム錯 体に起因する酸素濃度に影響を受けない「647 nm の発光強度」を内部標準とする「検量線を必 要としないレシオ型酸素プローブ」としても機能することもわかった。. Air. N2. O2. 400. Air. O2. Intensity. Intensity. N2. 500. 600 Wavelength / nm. 700. 800. 400. 500. 600. 700. 800. Wavelength / nm. 図 2 (左)プロトタイプのテルビウム錯体を用いた酸素プローブおよび(右)テルビウムとサマリウム錯体を 組み合わせた比色酸素プローブの発光スペクトル変化(赤:窒素下(N2)、黒:空気下(Air)、青:酸素下(O2)) と発光の様子.. 背景で述べたように、二重発光挙動を示す化合物を利用すれば、信頼性の高いレシオ型酸素プ ローブの開発が可能となる。すなわち、単一の分子でレシオ型のプローブが作製できれば、上述 の 2 つの錯体を用いたレシオ型プローブ(図 2 右)を用いたときに生じる「2 つの錯体間の安定性 が異なることに起因する信頼性の低下」を回避することができる。申請者が見つけた二重発光を 示すガドリニウム(Gd)錯体を用いて(図 1)、種々の酸素プローブを作製し、その酸素応答挙動を 評価した。 その結果、プロトタイプのガドリニウム錯体をポリスチレン(PS、図 1)の薄膜に担持した酸素 プローブが、酸素に応答しない蛍光の発光強度を内部標準とする高精度なレシオ型酸素プロー ブとして機能することを明らかにした。この酸素プローブにおいては、ガドリニウム錯体のリン 光に起因する発光強度が酸素に応答して弱くなり、0%から 20%の比較的低い酸素濃度領域で直 線的な応答挙動を示した。 このように、作製した酸素プローブはいずれも錯体分子の基本性能や特徴を反映しており、プ ロトタイプの錯体の発光特性・酸素応答機能をベンチマークとして、新規錯体を開発すればよい という貴重な方針が得られた。 (2) 新規な酸素応答性ランタニド錯体の開発 水溶性を付与するため、 「錯体のイオン化(アニオン/カチオン錯体の合成)」を視野に入れて 研究を進めた。プロトタイプである「ランタニドのトリカチオンを含む中性錯体」を与える配位 子はトリアニオンであり、そのプロトン付加体は H3L である(L は配位子)。具体的には、アニオ ン錯体を与える可能性のあるテトラアニオン配位子を種々設計し、それらのプロトン付加体 (H4L)の合成を検討した。また、カチオン錯体を与える可能性のあるジアニオン配位子を種々設 計し、それらのプロトン付加体(H2L)の合成を検討した。 その結果、目的とする新規プロトン付加体(H4L・H2L)の合成法を確立することができた。ま た、H4L からは、新規な酸素応答性のテルビウム錯体や新規な二重発光挙動を示すガドリニウム 錯体が合成できることもわかった。新規に合成した錯体は、いずれも水への高い溶解性は示さな かった。例えば、H4L より得られる錯体においては、化合物中にプロトン(H+)を取込んで中性錯 体となっていることを示唆するデータが得られている。 生体応用においては、脂溶性の錯体もターゲットの臓器などへの集積に優位な点もあること から、水溶性の付与には固執せずに、さらなる酸素応答機能の向上等を目指して研究を進めた。 具体的には、新規に合成したプロトン付加体(H4L・H3L・H2L)を用いて種々のランタニド錯体を 合成し、それらの酸素応答挙動を評価するとともに、新機能発現の可能性について検討した。 その結果、H4L より得られる 8 配位構造を有するテルビウムおよびガドリニウム錯体が、プロ トタイプである H3L より得られる 7 配位構造の錯体と比べて、光捕集能力・酸素応答性の面で 優れた性能を示すことを明らかにした。また、本課題で開発した H4L を用いることで、大変珍.

(4) しい「酸素応答性の発光性ディスプロシウム錯体」が合成できることも見出した。さらに、ビフ ェニルユニットを導入した配位子より得られるテルビウムおよびガドリニウム錯体は、酸素応 答機能に加えて、 「キラル分子に応答する機能」を有していることも見出した(図 3)。この結果 は、生体内に存在するアミノ酸などのキラル分子を特異的に認識できる可能性を示すものであ る。. OH. OH N HO. OH. N N. OH. N. N. N. N. HO. HO. 図 3 「キラル分子に応答する機能」を有する酸素応答性ランタニド錯体を与えるビフェニルユニットを導 入した配位子のプロトン付加体(左:H3L,右:H4L)とそれらを用いて得られたテルビウム錯体の単結晶 X 線構 造解析より得られた分子構造.. 以上、当初予定していた「生体応用を指向した酸素応答性のランタニド錯体」を開発するため の分子設計における基礎的な知見を得ることができた。本研究を通して得られた成果は、日本化 学・錯体化学会の討論会を含めた学会等で発表した(8 件)。また、上述の成果を、1 報の学術論 文にまとめた。.

(5) 5.主な発表論文等 〔雑誌論文〕 計1件(うち査読付論文 1件/うち国際共著 0件/うちオープンアクセス 0件) 1.著者名 Nakai Hidetaka、Kuyama Masafumi、Seo Juncheol、Goto Takahiro、Matsumoto Takahiro、Ogo Seiji. 4.巻 46. 2.論文標題 Luminescent Tb(III) and Sm(III) complexes with a 1,4,7‑triazacyclononane‑based tris‑aryloxide ligand for high‑performance oxygen sensors 3.雑誌名 Dalton Transactions. 5.発行年 2017年. 掲載論文のDOI(デジタルオブジェクト識別子) 10.1039/c7dt01388d. 査読の有無. オープンアクセス. 国際共著. 6.最初と最後の頁 9126〜9130. 有. オープンアクセスではない、又はオープンアクセスが困難 〔学会発表〕 計8件(うち招待講演 1.発表者名 横山直紀、中井英隆. 0件/うち国際学会. −. 5件). 2.発表標題 1,4,7,10‑テトラアザシクロドデカン骨格およびビフェニル基を有するガドリニウム錯体の合成と構造および発光特性. 3.学会等名 錯体化学会第69回討論会 4.発表年 2019年 1.発表者名 北村拓也、中井英隆. 2.発表標題 ビフェニル基を有する酸素応答性テルビウム錯体の合成と構造および発光特性. 3.学会等名 日本化学会第99春季年会 4.発表年 2019年 1.発表者名 横山直紀、中井英隆. 2.発表標題 1,4,7,10‑テトラアザシクロドデカン骨格およびビフェニル基を有する酸素応答性テルビウム錯体の合成と構造および発光特性. 3.学会等名 日本化学会第99春季年会 4.発表年 2019年.

(6) 1.発表者名 北村拓也、中井英隆. 2.発表標題 ビフェニル基を有するガドリニウム錯体の合成と構造および発光特性. 3.学会等名 日本化学会第98春季年会(国際学会) 4.発表年 2018年 1.発表者名 Nakai Hidetaka. 2.発表標題 Development of high‑efficiency photo‑responsive metal complexes. 3.学会等名 International symposium on chemistry for solar energy applications 2017(国際学会) 4.発表年 2017年 1.発表者名 Kitamura Takuya、Nakai Hidetaka. 2.発表標題 A photo‑responsive gadolinium(III) complex having biphenyl groups. 3.学会等名 International symposium on chemistry for solar energy applications 2017(国際学会) 4.発表年 2017年 1.発表者名 Yoshimura Seiya、Nakai Hidetaka. 2.発表標題 Development of high‑performance oxygen sensors using a luminescent terbium(III) complex. 3.学会等名 International symposium on chemistry for solar energy applications 2017(国際学会) 4.発表年 2017年.

(7) 1.発表者名 Yokoyama Naoki、Nakai Hidetaka. 2.発表標題 A photo‑responsive gadolinium(III) complex having 1,4,7,10‑tetraazacyclododecane skeleton. 3.学会等名 International symposium on chemistry for solar energy applications 2017(国際学会) 4.発表年 2017年 〔図書〕. 計0件. 〔産業財産権〕 〔その他〕 − 6.研究組織 氏名 (ローマ字氏名) (研究者番号). 所属研究機関・部局・職 (機関番号). 備考.

(8)

参照

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