数学的活動のための授業プラン : 新学習指導要領 をみすえた授業展開のために
著者 富田 卓之, 黒木 哲徳
雑誌名 福井大学教育実践研究
巻 33
ページ 77‑84
発行年 2009‑01‑31
URL http://hdl.handle.net/10098/1946
1. はじめに
近年,日本の子どもの算数・数学の学力は低下してい ると言われている。実際,国際的な調査の結果でもその ような傾向が見られる。また,情意面での問題も非常に 由々しきものがある(1)。これらの問題に対し,国は平成 23年度から完全実施される新学習指導要領の核として
「生きる力」をより強調した。著者は「生きる力」とは
「学習したことが生きて働く力」だととらえ,これを形 成することは重要な課題であると考える。また新学習指 導要領では主要教科の授業時間を1割増やすことを決め た(2)。しかし,算数・数学の学力低下の問題は授業時間 を増やすだけで改善されるだろうか。確かに授業時間を 確保することは,学習内容を生徒にわかりやすく教え学 力の向上につながると考える。その上で情意面の問題へ の対応をどうするかということである。情意面の問題に 対する解決策と言えるだろうか?また,教科書の問題数 の倍増という話が最近聞こえるようになってきた。これ らの方策で生徒が興味関心を持ち自ら進んで問題に取り 組むとは考えにくい。『定理』や『解き方』を教え,次 に『例題』を生徒が一緒に考え最後に『練習問題』に取 り掛かるという定型的な授業を反省する必要はないのだ ろうか。私は,生徒が自分の力で問題に取り組み考える ために必要なのは,『定理』の学習から1歩進めて,日 常生活との関連性とそれらへの活用がより一層大切なの ではないかと考えた。この考えは著者が工学部在学中に,
工学実験を行う中で,実際に定理や計算などの必要性や 有用性を感じ取ることで生まれたものである。この小論 では,PISA調査並びに全国学力調査の結果や(3),新学 習指導要領の改善の趣旨を踏まえ生きる力を培うための 授業実践を企画し,その内容を考察する研究である。
2. PISA 調査と日本の生徒の実態について
継続的な調査として2000年から3年ごとに行われて いるPISA調査は,2000年の読解力,2003年の数学的リ テラシー,2006年の科学的リテラシーを行った。PISA 調査で言う数学的リテラシーとは,「数学が世界で果た す役割を見つけ,理解し,現在及び将来の個人生活,職 業生活,友人や家族や親族との社会生活,建設的で関心 を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学 的根拠にもとづき判断を行い,数学に携わる能力。」と 定義されており(4),
・数学が世界で果たす役割を見つけ,理解する能力
・確実な数学的根拠にもとづき判断を行う能力
・数学に携わる能力
と言い換えることもできるとしている。その中で包括的 アイディア(実生活で見られるような数学的概念のまと まり。)として数学的リテラシーを「量」,「空間と形」,
「変化と関係」,「不確実性」の4つの領域に分類し,そ れぞれの調査結果を公表している。以下ではPISA調査 の結果ならびに全国学力調査結果を比較・検討し,日本 の生徒の実態と課題を考えていく。
まず,数学的リテラシー全体について,日本とOECD 平均,OECD加盟国で数学的リテラシー世界1位のフ ィンランドの得点の変化をまとめると以下のようにな る(5)。
(表内の()はその年の調査のOECD加盟国内順位)
表からわかるように,日本の数学的リテラシー全体の得 点はOECD平均やフィンランドの得点がほぼ変化して い な い の に 対 し,減 少 傾 向 で あ る。ま た そ れ に 伴 い OECD内での順位も下がっている。
数学的活動のための授業プラン
−新学習指導要領をみすえた授業展開のために−
福井大学大学院教育学研究科 富 田 卓 之 福井大学教育地域科学部 黒 木 哲 徳
原 著
2008年3月に文部科学省は新学習指導要領を公表した。新学習指導要領でも「生きる力」は継承さ れており,今後より一層の教育の充実が必要となる。本研究は,数学と日常生活との関連性を踏まえた 授業を展開していこうという試みである。第一著者は自らの工学部で学生生活を送った経験から,数学 と工学実験との関連を体験していく中で自らの学習意欲と内容理解の高まりを感じた。このことから実 際の生活と数学との関連性を授業の中で取り上げることにより,生徒の学習意欲の向上や内容理解が進 むのではないかと考えた。また現在の教育問題となっている生徒の体験活動の減少や理数離れ,数学的 活用とPISAのいう数学的リテラシーとの関連について,それらを受けた新学習指導要領の「生きる力」
の実践に向けての授業プランを考えた。
キーワード:3年間を見通したカリキュラム 学びのつながり 学びの深まり
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各年毎の数学的リテラシーの得点変化
次に, PISA2003とPISA2006の正答率と無答率の変 化について比較・検討を行う(資料参照)。2006調査は 調査の中心が科学的リテラシーに移っているため,2003 年に比べ問題数が少なくなっている。また,問題内容も 非公開となっている。そのため比較は,問題の名称,包 括的内容,プロセス,出題形式で分類した。包括的内容 は,前述の4領域であり,プロセスとは「数学化」のプ ロセス(思考と推論,論証,コミュニケーション,モデ ル化,問題設定と問題解決,表現,記号による式や公式 を用い演算を行うこと,テクノロジーを含む道具を用い ること)をもとに,知識の再現を行う再現クラスター,
問題の解釈を要求し異なる表現を結びつける関連付けク ラスター,洞察,反省的思考,創造性などの様々な能力 を必要とする熟考クラスターを意味する。出題形式は,
求答,短答,選択肢,複合的選択肢,自由記述である。
まず「量」領域であるが,これは2003年調査におい て日本がもっとも順位が低く,唯一第2グループという 結果であった。今回の結果をみると,すべての問題で正 答率の低下がみられ,4領域の中で最も平均低下率が大 きく4.5ポイント低下した。これは,他の領域と比較し ても大幅な低下である。また⑤「番号のチェック」問題 を除くすべての問題で1ポイント以上低下している。さ らに,無答率に関しては13問中8問において無答率が 上昇し平均無答率は2.5ポイント上昇し,4領域の中で 最も上昇している。こちらもほかの領域と比較すると大 幅な上昇といえる。最も無答率の上昇が著しいのは,⑪
「番号のチェック」問題で,17.5ポイントも上昇してお り,48問中最も上昇が著しい。プロセス別に見ると「関 連付けクラスター」での無答率が目立ち⑪も関連付けク ラスターに属している。出題形式別でみると,無答率の 上昇している問題は,選択肢解答形式でない場合が多い。
次に「変化と関係」領域であるが,こちらも13問中 11問で正答率の低下がみられ平均正答率は2.5ポイント 低下し,「量」領域に次ぐ低下となっている。最も低下 した問題は⑬「人口ピラミッド」に関する問題で10.4 ポイント低下している。無答率に関しては13問中9問 で無答率の上昇がみられ平均無答率は1.12ポイント上 昇している。最も上昇したのは⑤「自転車」に関する問 題で6.7ポイントである。プロセス別にみるとこの領域 は熟考クラスター問題が多く,このプロセスでの正答率 の低下が見て取れる。また,無答率に関しても同様で,
熟考クラスター全てで無答率の上昇がみられる。出題形 式別でみるとこの領域は自由記述が多く,この形式での 無答率の上昇が多い。
次に,「空間と形」領域である。この領域はPISA2003 で世界1位という結果であった領域である。正答率であ るが,⑤「パイプラインの長さ」問題以外ではすべて1 ポイント以上の低下がみられる。平均正答率は2.1ポイ ントの低下で,「量」領域に次いで2番目である。無答 率に関しては,11問中8問で上昇がみられる。最も,上 昇した問題は⑦「競技用トラック」問題で8.0ポイント の上昇であった。プロセス別では,特に差は見られなか った。出題形式別では自由記述式の3問での,無答率の 増加が見られ,平均で5ポイント以上の増加がある。
最後に「不確実性」領域である。この領域はPISA2003 では,「量」領域に次いで下から2番目であった。今回 の調査では,正答率に関しては4領域中最も低下が少な く,出題11問中6問で正答率の低下はあったものの,
平均正答率では0.9ポイントの低下にとどまった。最も 低下した問題は,④「身長」問題で9.5ポイントであっ た。しかし,③「身長」問題では全48問中最も正答率 の上昇がみられ,5.8ポイント上昇した。無答率に関して は,やはり4領域中最も上昇が小さく1.3ポイントの上 昇にとどまった。最も,上昇した問題は②「身長」問題 で4.4ポイントの上昇であった。プロセスごとに見ると 熟考クラスター問題が「量」領域と同程度あるが,「量」
領域ほどの正答率,無答率への影響は少ない。出題形式 別にみると,選択肢問題が多く,自由記述や短答式の問 題で無答率の上昇がみられる。
次に昨年行われた,全国学力調査について検討する。
全国学力調査は数学Aと数学Bが行われその内容は
(1)主として「知識」に関する調査
(2)主として「活用」に関する調査
に分類され,数学Aが(1)に数学Bが(2)に属 している。それぞれについて,正答率と無答率を出題形 式別でみると以下のような結果となった(6)。
数学Aにおける形式別,正答および無答率
数学Bにおける形式別,正答および無答率 富田 卓之・黒木 哲徳
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A問題では正答率に差は見られないが,無答率では 約6倍の開きがみられる。また,B問題においては正答 率で記述式とほかの出題形式と大きな開きがみられるほ か,無答率においても記述式は22.2ポイントと大きな 開きが見て取れる。さらに「A問題」の正答率72.7%
に対し「B問題」の正答率は62% と10.7% の差が見ら れる。「B問題」の問題内容は「A問題」の内容に比べ より実生活に即した問題となっており,これはPISA型 の問題を解く能力を中心として構成されている。情意面 に関しては昨年度本研究室に在籍していた,田中等の論 文(7)を参照していただきたい。
以上の結果から日本の生徒は,日常生活と数学とを関 連づける能力が年々低下している傾向が見られる。さら に関連付けることができたとしても,それを簡潔にまと め自らの考えとして表現する能力を身につける必要があ る。
3. 算数・数学の授業提案
前節によって日本の生徒の実態が明らかになった。こ れに対し田中は,学校での授業の基本的教材である教科 書を調査・分析した(8)。その結果,数学リテラシーの向 上に教科書が関係し,教科書の構成やPISA型の問題の 割合が少ないことを指摘,そのような授業研究の必要性 を述べた。本節ではそれに関連し,中学校第2学年での 学習内容である「一次関数」から実際の授業として「一 次関数の利用」の授業提案を行う。まず,「一次関数の 利用」を題材として挙げた理由である。
第1に生活の中で驚くほど多くの一次関数が潜んでい る点である。現在のほとんど教科書でも取り上げられて いるのは,「時間と道のり」などである。しかし,この 典型的な例もさることながら,「自動車とガソリンの消 費」やその費用なども一次関数として扱うことができる。
実際に後者のほうがより生活に関連したものだと考えら れる。
第2に一次関数は事象の分析・把握・処理に役立ち,
社会における数学の価値や必要性を考えることにつなが るという点である。数学的な考えや数学的な感覚を養う のに重要な点である。関数は自らの考えを述べる際に,
その根拠として利用することができ,そのような活動を 授業として取り入れることで,コミュニケーションスキ ルや自らの意見をまとめる能力の育成に良い影響を与え ると考える。
第3に,学習内容の統合や発展に有効な点である。「関 数の考え」は,関数の学習だけでなく,他の単元である 数と式,図形,数量関係,確率・統計などにも有効に働 くと考えられる。たとえば変数の変化は「量」と関連付 けてとらえることができる。また,グラフを描くことで 図形との関連も見える。これらの理由から,一次関数は 非常に魅力的な教材であり,「活用」という面から「一 次関数の利用」を研究のテーマとした。
次に実際の授業プランについて提案する。
「一次関数」の単元には
! 具体的な事象を調べることを通して,一次関数につ いて理解するとともに,関数関係を見いだし表現し 考察する能力を養う。
! 一次関数の意味を理解し,身のまわりの事象の中か ら,一次関数と見られるものを見つけることができ るようにする。
! 具体的な事象を一次関数とみなし,それを問題解決 に利用することができるようにする。
という目標が設定されている。それを踏まえて次のよ うな実際の授業プランを企画した。
内容は,学校での授業に関連した内容で,生徒はもと より教員にも意味のあるものとし数学的な厳密さよりも 数学的な意味の構成を重視し,グループ活動を取り入れ 生徒が飽きない内容を題材として考えた。その結果「自 動車のガソリンの消費とその費用」を題材とした。授業 のねらいとしては,
① 日常生活の中に使われ埋没(道具や事象の中)して いる数学を取り出すことで数学に興味を持ってもら う。
② 数学的に考える良い点,悪い点があることを理解し,
数学的に考えることで比較や分析をすることが可能 になり新しいものが見えてくる面白さを感じてもら う。
③ 自分たちが学習したこと(基礎的なこと)がいろい ろなことに発展していくことを感じてもらう。
とした。自動車を用いた問題では,自動車のガソリン量 は実際にリアルタイムで量ることはできない。そのため,
時間と走行距離に目を向けてしまいがちである。しかし,
現在の社会情勢や福井という地域特性(自動車保有台数 全国1位)を考え視点を変えてみた。また,自動車の交 換を行うことでのガソリン消費の変化をみることやほか の乗り物(電車やバス)などの公共交通機関と比較する ことは数学的に考えることで見えてくるものである。そ の場合,数式を比較するだけでは比較する意味が見えに くい。これは,数式だけで考えるのではなく,それを説 明する何らかの数学的表現が必要でありグラフの利用に 行きつく。グラフを用いて考えることは問題の意味の構 成に役立つだけでなく,他者に説明を行うときの根拠に もなりコミュニケーションツールの一部としても役立つ と考えられる。この題材はガソリンの消費と走行距離の 関係から燃料費の問題さらには自分たちの生活という経 済的な問題あるいは世界的な問題となっている環境問 題(9)へとつなげることができ,自分たちが学習してきた ことが多くの分野へ関連していくことを感じることがで きる。以上の点から「自動車のガソリンの消費とその費 用」という題材は非常に有意だと考える。
授業企画は本学1回生48名を対象に第一執筆者が行 った。
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以下は実際に授業を受けた学生の感想である。
A:「いくらかかる?」といきなり聞かれたことが意表 を突かれたが,「これから何か面白いことが起こる かも」と感じた。
B:計算の仕方を考えさせるのは良かった。
C:質問の内容が分かりにくい。
D:計算を行った式がどうして成り立つのかがわからな かった。
E:最初の問題が漠然としていてどこまで考えていいか 分かりにくかった。
F:生徒が関係ないことを話してしまうと思う。
G:これを学んでほしいというのがわかりにくかった。
H:距離は提示されているほうが分かりやすい。
これらの意見を分析し実際の授業に向けての企画改善 を行う。以下に主要部分を記載する。
① 導入部分で「ガソリン1!で何km進むか」という 部分を,燃費という言葉の説明として「ガソリン1
!で○km進む」に変更する。
② 考える費用としてはガソリンの値段だけということ はっきりと示す。
③ 変化するものとしないものを分けて書くようなワー クシートの作成をする。
④ 走行距離と消費していくガソリンの量や消費したガ ソリンの金額を記入する表を作成する。
⑤ 質問内容の精選
導入に関しては,学生に予想させるため,展開にある質 問をした。これに関しては多くの学生が興味を示してい た。燃費について意味が分かっていない学生がいたり金 額計算の際の有効桁数での混乱が見られた。燃費に関し ては中学生も理解できないことも考えられる。したがっ て,授業の際には1!当たりのすすむ距離や1km進む のに○!使う車であるなどの生徒にわかりやすい表現に して授業を進める必要がある。ガソリンの費用の計算で は線分図を使ったり,割り算の計算の意味を説明したこ とで学生がわかりやすかったようである。しかし,それ らの説明した内容をノートに取ることは難しく,次時と のつながりを考える場合ワークシートなどを作成した方 が生徒が学習内容を理解するのに役立つのではないかと 考えられる。この模擬授業では,多くの時間をグループ での相談の時間にあてたが,意見交換が活発に行われる グループとそうでないグループに分かれた。また受講者 からの指摘にもあるようにグループでの活動を行う場合,
場面の内容と関係ない話をしてしまうことがある。これ は,問題の意味やグループで話し合う内容がしっかり理 解できていなかった為だと考えられる。金額についての 話し合いなどはガソリンについて考えてもらうことを意 図していたが,高速道路などの道路料金にまで考える枠 を広げていた学生が見られた。これは自発的に考えを巡 らす点で非常に良いことではあるが,問題を複雑化し中 学生が考える問題としては非常に難しくなってしまうと 考える。よってこのような失敗から,質問事項を精選し 生徒が理解しやすい質問にしなければならないと思う。
また,一次関数の学習に重要な「関係しながら変化する 量」を生徒から引き出すことに時間がかかるため,その 点でも発問内容をよく吟味する必要がある。以上のこと を踏まえ授業実践を行う予定である。
富田 卓之・黒木 哲徳
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4. 学習指導要領について
前節では著者の授業提案を行ったが,最後に新学習指 導要領との関連について述べる。これは,著者の行った 授業提案が新学習指導要領に対しての位置づけを考える うえでも必要なものである。
平成10年改訂の中学校学習指導要領(10)では「数学的 活動の楽しさを知る」とされていたが,今回の中学校新 学習指導要領の目標には,「数学的活動」を通して数学 を学習していくこと,活用することだけでなく考えや判 断の基礎となることが明記された。そして,内容を「A 数と式」「B 図形」「C 数量関係」の3領域から,
新たに「A 数と式」「B 図形」「C 関数」「D 資料 の活用」の4つの領域に分類している。新たに追加され た「D 資料の活用」であるが,この学習内容は主に,
確率や統計などを指しており,PISA調査の「不確実性」
領域に合わせたものと考えてよい。また,D領域では,
資料の内容や傾向を読み取り,考察の根拠とすることな ども盛りこまれており生徒の思考や判断にかんする能力 の発達を培うことも目的としている。
「A 数と式」では文字式の必要性を理解させ,数量 の関係を文字を使って表したりその内容を読み取る能力 の育成について明記された。例えば,第1学年の(2)
エには「数量の関係や法則などを文字式を用いた式に表 わすことができることを理解し,式を用いて表したり読 み取ったりすること」と明記されている。
「B 図形」では従来の証明に頼った論証ではなく観 察や操作,実験などを通して論理的に考察し表現するこ とが各学年を通じて書かれている。特に第3学年(2)
エでは,「基本的な立体の相似の意味と,相似な図形の 相似比と面積比および体積比の関係について理解するこ と。」とあり,生活での具体的な操作を意識した形とな っている。
「C 関数」は10年改訂指導要領では「数量関係」
となっていた。この変更は,関数の本質的な意味である
「関係しながら変化する」あるいは「因果関係のある変 量の間の一定法則を研究する」ことに重点を置いたため であると考えられる。第1学年では,目標に2つの数量 関係を取り出す,あるいは関数関係を見出し表現し考察 する,第2学年では表,式,グラフの相互の関連付けや 一次関数を用いて具体的な事象をとらえ説明すること,
第3学年では2次関数での表,式,グラフの相互の関連 付けなどが書かれている。特に第3学年では2次関数に ついて具体的な事象をとらえ説明すること,いろいろな 事象の中に関数関係があることを理解することが指摘さ れている点からも関数領域の指導の重要性がうかがえる。
新学習指導要領ではもう1つ新たに「数学的活動」が指 導すべき内容として明確に位置づけられたことである。
これはPISA調査で明らかになった日常生活と数学とを 関連付ける能力が年々低下している点や内容をまとめ自 らの考えとして表現する能力を培うことを目的にしてい
ると考えられる。
この小論での授業提案の内容は,今回の新しい学習指 導要領に提案された方向性とも合致しておりPISA型問 題を踏まえたものである。
5. 最後に
本研究では,実際の生活と数学との関連性を授業の中 で取り上げることにより,生徒の学習意欲の向上や内容 理解の向上を目的とした授業プランの開発を考えてきた。
またそれを実施することで,数学的活用とPISAのいう 数学的リテラシーとの関連について考え,新学習指導要 領の中で言われている「生きる力」を培うことができる のではないかと考えている。今回は中学校第2学年の
「一次関数の利用」という小単元のみに焦点を当てて行 ったが,学習指導要領にある学年を通した取り組みや必 要に応じ関連する内容を意図的に再度取り上げ学び直す ことも考えた工夫が必要である。また,提案した授業は PISA型としているが,計算力などの基礎的な能力の育 成についての問題点もある。計算力は計算の反復などに よって向上することもあり,反復するための時間数が今 回の改訂でどの程度確保できるのかという問題もある。
それらを考えた上で今後の課題をまとめる。
① 単元を通した授業プランの提案と実践
② 小学校における生活面での活用を考えた授業プ ランの提案と実践
③ PISA型の授業と基礎的な能力の育成に必要な対 応の検討
引用文献
(1).国立教育政策研究所編:生きるための知識と技能
−OECD生徒の学習到達度調査(PISA)−2003年 調査国際結果報告書,2004。
(2).文部科学省:中学校学習指導要領http : //www.
mext.go.jp/a̲menu/shotou/new-cs/youryou/chu/
index.htm,(平成20年3月).
(3).文部科学省:全国学力調査http : //www.nier.go.
jp/tyousakekka/tyousakekka.htm,2007
(4).国立教育政策研究所編:生きるための知識と技能
−OECD生徒の学習到達度調査(PISA)−2006年 調査国際結果報告書,2007.
(5).(1)(4)に同じ
(6).(3)に同じ
(7).田中裕人・黒木哲徳:「PISA調査からみた算数
・数学の教科書の調査研究−PISA型の数学的リテ ラシー向上を目指す授業改善のために−」福井大学 大学院教育実践研究2007,第32号,pp7−15.
(8).田中裕人:「PISA調査からみた算数・数学の教 科書の調査研究−PISA型の数学的リテラシー向上 を目指す授業改善のために−」福井大学大学院教育 学研究科修士論文2008.3
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(9).小寺隆幸著,銀林浩編:「数学ワンダーランド⑥
−地球を救え数学探偵団−[一次関数]」,1996
(10).文部科学省:中学校学習指導要領(平成10年12 月)
A suggestion of class for mathematical activity.
Takayuki TOMITA and Tetunori KUROGI
Key words :PISA research,an achievement test,the revised edition of government guidelines for teaching,class,utilization of a linear function,ability to use knowledge
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