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特 集 縦隔 胸膜疾患における画像診断の役割 2. 縦隔疾患 2-1. 縦隔腫瘍 ( 前縦隔腫瘍を中心に ) 髙橋康二 1), 三代川斉之 2) 旭川医科大学放射線科 1), 旭川医科大学病院病理部 2) Mediastinal Tumors (Anterior Mediastinum) Koji

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縦隔・胸膜疾患における画像診断の役割

特 集

前縦隔では、胸腺過形成、胸腺腫や胸腺癌などの胸腺 上皮性腫瘍、胚細胞腫瘍や悪性リンパ腫などが腫瘤病変 として認められる。本稿では、これらの腫瘍の画像所見 について、特徴となる所見とその病態・病理との関連を 中心に解説する。

胸腺過形成と上皮性腫瘍

1.胸腺過形成 胸腺の過形成は甲状腺機能亢進症や重症筋無力症に合 併することがあり、また化学療法後の萎縮に引き続いて 生じる反応性胸腺過形成(rebound hyperplasia)は、胸

Mediastinal Tumors (Anterior Mediastinum)

Koji Takahashi 1), Naoyuki Miyokawa 2)

Summary

We describe herein the clinical, pathological, and imaging findings of mediastinal tumors focusing on thymic hyperplasia, thymic epithelial tumors, germ cell tumors, and malignant lymphoma.

Chemical shift MRI is useful in the characterization of the normal thymus and differentia-tion of the hyperplastic thymus and thymic tumors. In contrast to non-invasive thymomas, invasive thymomas and thymic carcinomas show a more aggressive growth pattern. Local in-vasion and pleural spread are characteristic of invasive thymomas and mediastinal lymphade-nopathy and distant metastasis suggest thymic carcinomas.

Mature teratoma typically demonstrate various CT attenuations, and MR signal intensities depending on their contents. Fat tissue and bone within the lesions are the characteristic find-ings. Semi-nomas typically have homogeneous internal CT attenuation and MR signal inten-sity with minimal contrast enhancement. Non seminomatous malignant germ cell tumors characteristically show prominent internal degenerative changes and invasion to the adjacent structures.

In mediastinal malignant lymphomas, three major histological types are diffuse large B-cell lymphoma, classical Hodgkin lympho-ma, and Precursor T-lymphoblastic lymphoma. In lymphomas, a residual mass is common after treatment and MRI provides important information in distinguishing viable tumors and any residual benign mass.

1) Department of Radiology, 2) Department of Pathology, Asahikawa Medical University Hospital NICHIDOKU-IHO Vol.59 No.1 53-65 (2014)

2.縦隔疾患

2-1.縦隔腫瘍(前縦隔腫瘍を中心に)

髙橋 康二

1)

,三代川斉之

2) 旭川医科大学 放射線科1),旭川医科大学病院 病理部2) 腺腫瘍やその再発との鑑別が問題となる病態である。し かし、通常のCTやMRIにおける形態や吸収値、信号、 造影効果などの所見には、正常胸腺や過形成と腫瘍病変 との間にオーバーラップがあり、両者の鑑別はしばしば 難しい。 正常胸腺においては、加齢とともに退行変性による生 理的な脂肪沈着が生じる(図1)。MRIケミカルシフト画 像(グラディエントエコーT1強調像のin-phaseおよび opposed-phase)では、in-phaseで位相の一致する水と 脂肪組織のプロトンが、opposed-phaseでは位相が逆と なり相殺し合うため、脂肪と水を含むボクセルの信号は 低下し、微量の脂肪組織の検出が可能となる。

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 小児と若年成人を対象とした、MRIケミカルシフト画 像による正常胸腺の加齢に伴う脂肪変性による信号変化 の視覚的評価では、10歳以下では信号低下は稀であるも、 15歳以下では約50%、16歳以上ではほぼ100%で胸腺全 体に均一な信号低下が見られ、生理的脂肪変性の同定に よる正常胸腺の診断が可能である1) 組織学的には過形成を生じた胸腺においても脂肪変性 の見られることが知られており、正常胸腺と同様にMRI ケミカルシフト画像を用いることにより、胸腺腫瘍との 鑑別が可能となる2、3)。胸腺過形成23例(濾胞性過形成 18例、反応性過形成5例)と胸腺腫瘍18例(胸腺腫7例、 浸潤性胸腺腫4例、胸腺癌5例、悪性リンパ腫2例)を対 図2 胸腺過形成と胸腺過形成のMRIケミカルシフト画像 A, B 胸腺過形成症例のMRグラディエントエコーT1強調像のin-phase画像(A)とopposed-phase画像(B) 胸腺( )はびまん性に腫大しているが,実質の信号はin-phase(A)と比較しopposed-phase(B)で均一に低下しており,生理的な脂肪変性があるこ とを示している. C, D 浸潤性胸腺腫のMRグラディエントエコーT1強調像のin-phase画像(C)とopposed-phase画像(D) 前縦隔に分葉状の腫瘤病変( )があり,内部の信号にはin-phase(C)とopposed-phase(D)両画像の間で変化を認めない.胸腺過形成ではなく,腫 瘍病変と診断された. A B C D 図1 胸腺の加齢による脂肪変性 正常胸腺では,加齢に伴い脂肪変性を認める(空胞状に抜けた部分).胸腺の脂肪組織重量(%) は,10歳で20%,20歳で40%に達する.

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表1 正岡臨床期分類4,7) 20年生存率 StageⅠ 腫瘍の被膜は保たれている 89% StageⅡ 被膜浸潤,周囲脂肪/縦隔胸膜浸潤 91% StageⅢ 周囲臓器浸潤(心膜,大血管,肺) 49% Stage Ⅳa 胸膜,心膜播種 0% Stage Ⅳb 血行性転移,リンパ行性転移 0% 象としたMRIケミカルシフト画像における信号変化の評 価では、過形成群がopposed-phase画像で有意な信号低 下を示したのに対し、胸腺腫瘍ではin-phaseと opposed-phase間で有意な信号変化は認めず、両者の鑑別が可能 であった3)(図2)。 2.胸腺腫 胸腺腫は胸腺の上皮性腫瘍であり、様々な割合で非腫 瘍性のT細胞リンパ球の増生を伴っている。縦隔腫瘍と しては最も頻度が高く、通常前縦隔に発生し、特に上行 大動脈や肺動脈本幹から右室流出路の腹側に生じる。胸 腺腫は、被膜を有する非浸潤性胸腺腫と、被膜を越える 浸潤を伴う浸潤性胸腺腫とに分類され、後者が15~40% を占める。診断時の平均年齢は約50歳であり、20歳以 下での発生は少なく、特に15歳以下では非常に稀であ る。重症筋無力症との合併が多く、胸腺腫の35~40%に 重症筋無力症を、また重症筋無力症の10~23%に胸腺腫 を合併する。 胸腺腫は分葉状の形態を示すことが多く、被膜から連 続する線維性隔壁によって腫瘍内部は多数の結節構造に 分かれている。内部にはしばしば嚢胞変性や出血が見ら れ、腫瘍全体が嚢胞性となることもある。胸腺腫の臨床 病期は、被膜および周囲縦隔への浸潤程度により判定さ れる正岡分類が広く用いられている4)(表1)。MRIT2 強調像では、腫瘍内部に変性壊死を示す高信号領域や線 維性隔壁を示す線状低信号構造を認めることがあり、線 維性隔壁は胸腺腫の特徴的な画像所見の一つである(図 3)。 A B C 図3 非浸潤性胸腺腫 A 造影CT,B MRI Gd造影T1強調像:分葉形態を示す腫瘍内部には多数の隔壁構造を認める. C 切除標本:腫瘍内部に多結節構造を認める.

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 図5 胸腺扁平上皮癌 A MRI T2強調像:腫瘍内部に低信号領域を認める( ). B 病理組織HE染色:腫瘍内部に広範に線維化を認める. A B 図4 浸潤性胸腺腫 造影CT 腫瘍は上大静脈( ),上行大動脈( ),肺動脈( )を取り囲み,こ れら血管構造周囲の脂肪層は消失しており,浸潤を示している.

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浸潤性胸腺腫は被膜を越える浸潤を示し、進行に伴い 胸膜、心膜や縦隔大血管へ浸潤する。腫瘍周囲の脂肪層 が完全に消失している場合は浸潤を示唆する所見であり (図4)、脂肪層の消失が部分的である場合は必ずしも浸 潤を示す所見とは言えない。胸膜播種病変は、胸膜面の 結節あるいはシート状肥厚像として見られ、この所見が あれば浸潤性胸腺腫と診断することができる。

2011年にMD Anderson Cancer Centerから報告され

た外科的切除例99例を対象とした、画像所見による臨床 病期I、II期とIII、IV期との鑑別では、腫瘍の分葉形態、 腫瘍サイズ(7cm以上)、周囲縦隔脂肪の浸潤の3所見は 進行例(臨床病期III、IV期)を示唆する所見であった5) 胸腺腫の組織学的分類として、WHO分類が広く用い られている。WHO分類では、胸腺上皮性腫瘍をtype A、 AB、B1、B2、B3の5つの胸腺腫と胸腺癌に分類した6) 胸腺腫を、腫瘍の上皮性細胞の形態からtype Aとtype B に分類し、さらにtype B を腫瘍上皮成分における異形細 胞の増加とリンパ球の比率によりtype B1、B2、B3に分 類した6)WHO分類は胸腺上皮性腫瘍の臨床経過と密 接に関係し、浸潤性の程度や予後ともよく相関すること が知られている。WHO分類の予後は、type A、AB、 B1、B2、B3の20年生存率が100%、87%、91%、59%、 36%と報告されており7)、腫瘍の臨床像や予後の違いに

基づき、type A、AB、B1をlow-risk胸腺腫、type B2、

B3をhigh-risk 胸腺腫とする考え方がある。胸腺腫の

WHO分類とMRI所見の相関についてSadoharaら は、

low-risk 胸腺腫、high-risk胸腺腫、胸腺癌の3群間の比 較を行っている。3群における腫瘍の被膜を認める頻度 はそれぞれ27%、17%、0%、辺縁が不整である頻度は 3%、22%、75%、内部隔壁構造を認める頻度が57%、 44%、8%、変性壊死を認める頻度が20%、28%、67%、 信号が不均一である頻度が33%、56%、100%と、各群 のMRI所見に差が見られた8)。画像所見に基づいてtype A、AB、B1、B2、B3各群を正確に診断することは難し いが、low-risk群とhigh-risk群の判別はある程度可能 であると考える。 3.胸腺癌 胸腺癌は胸腺の上皮性腫瘍の約20%を占め、組織型で は扁平上皮癌の頻度が最も高い。胸腺癌では、縦隔大血 管や胸膜・肺・心膜などの周囲臓器への浸潤傾向が胸腺腫 よりも著明であり、予後も不良である。 胸腺癌は、浸潤性胸腺腫と類似した画像所見を呈する も、縦隔リンパ節転移や血行性転移の頻度はそれぞれ 40% vs 8%、40% vs 0%と浸潤性胸腺腫より高く、一方、 胸膜播種の頻度はより少ない9)。胸腺上皮性腫瘍64例の MRI所見の解析では、腫瘤内のT2強調像の低信号域と 縦隔リンパ節腫大は、胸腺癌に特徴的な所見であった(図 5)。病理組織学的には、T2強調像の低信号域は膠原組織・ 線維化を反映する所見と考えられた10)

胚細胞腫瘍(germ cell tumor) 

胚細胞腫瘍(germ cell tumor)には、奇形腫〔成熟奇形腫 (mature teratoma)、未熟奇形腫(immature teratoma)〕、

精上皮腫(seminoma)、胎児性癌(embryonal cell carci-noma)、卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor, endodermal sinus

tumor)、絨毛癌(choriocarcinoma)やこれらの混合型

(mixed germ cell tumor)がある。縦隔では成熟奇形腫

が最も多く全体の75%を占め、悪性では精上皮腫が最も 多い。胚細胞腫瘍は、成人縦隔腫瘍の約15~16%、小児 縦隔腫瘍の19~25%を占める。縦隔胚細胞腫瘍のほと んどは胸腺およびその周囲の前縦隔に発生し、3%は後 縦隔に発生する。縦隔原発の胚細胞腫瘍の診断を確定す るには、性腺由来のものを否定する必要がある。性腺原 発胚細胞腫瘍による縦隔転移の場合は、通常、後腹膜リ ンパ節にも転移を認めることが多く、縦隔胚細胞腫瘍と の鑑別点になる。本稿では胚細胞腫瘍を奇形腫、精上皮 腫、非精上皮腫性悪性胚細胞腫瘍の3つに分けて解説す る。 1.奇形腫(teratoma) 奇形腫は、外胚葉・中胚葉・内胚葉の各胚葉由来の組織 成分が種々の割合で混在した混合腫瘍であり、外胚葉成 分として皮膚・歯・毛髪、中胚葉成分としては骨・軟骨・筋 肉、内胚葉成分としては気管支・胃腸・膵組織が見られ、 外胚葉成分が主成分となる場合には皮様嚢腫(dermoid cyst)と呼ばれる。膵組織は縦隔奇形腫に特徴的な所見で あり、性腺由来の奇形腫に認めることは稀である。成熟 奇形腫の発生部位は、前縦隔が80%と最も多く、3~8% が後縦隔、2%が中縦隔であり、さらに13~15%が縦隔 内に多発する。 CTでは境界明瞭な嚢胞性腫瘤であり、内部に液体、 軟部組織、脂肪組織などを認める。円弧状から結節状の

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 A B C 図6 成熟奇形腫 A 単純CT:前縦隔に厚い被膜を有する嚢胞性腫瘤があり,内部に液体,脂肪( ),歯牙( )を認める. B,C 病理組織HE染色:腫瘍内部に呼吸上皮を有する気管支組織(B)や,骨,軟骨(C)を認める( ). A B 図7 成熟奇形腫 A 造影CT:前縦隔に嚢胞性腫瘤を認める.内部に脂肪組織は認めないが,厚い被膜 は奇形腫の特徴的所見である. B 病理組織HE染色:厚い被膜は扁平上皮( )と線維性被膜( )からなる.

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様々な形の石灰化を認めることもあり、稀に歯牙や骨を 認める。これらの様々な成分の中でもCTでは、軟部組 織が100%、液体が88%、脂肪が76%、石灰化が53%で 認められ、症例の39%で軟部組織・液体・脂肪・石灰化が、 24%で軟部組織・液体・脂肪が認められる(図6)。成熟奇 形腫の15%の症例は、病巣内に脂肪や石灰化は見られ ず、非特異的な嚢胞として見られる。しかしこのような 場合でも、肥厚した被膜は奇形腫に特徴的な所見であり (図7)11)、他の縦隔嚢胞病変の被膜は通常、非常に薄い。 MRIでは病巣が含む成分によって様々な信号を示し、 その信号パターンは胸腺腫や悪性リンパ腫などとの鑑別 点となる。軟部組織は筋肉と同様の信号を示す。脂肪成 分は脂肪抑制画像での信号低下で確認でき、また組織内 の脂肪が微量である場合は、グラディエントエコーT1強 調像のin-phaseとopposed-phaseの信号を比較し、後者 での信号低下を確認することで脂肪の存在を確認するこ とができる(図8)。 縦隔奇形腫による二次的な所見として、気道の圧排に よる無気肺や閉塞性肺炎、肺への破裂による肺炎、胸膜 腔や心嚢への破裂による胸水や心嚢水貯留を認めること がある(図9)。縦隔奇形腫の30%で、肺や胸膜腔、心膜 腔への破裂が見られる12)。腸管や膵組織から分泌される 図8 成熟奇形腫  A MRグラディエントエコーT1強調像のin-phase画像 B Opposed-phase画像 奇形腫内で水成分と脂肪成分の両者を含む部位は,in-phase画像(A)と比較しopposed-phase画像(B)で信号の低下を示している. A B 図9 成熟奇形腫の心膜腔破裂 単純CT 右側前縦隔に厚い被膜を有し,内部に脂肪・水・軟部組織を含む嚢胞性 腫瘤を認める.腫瘤腹側の軟部組織の辺縁は不整で縦隔脂肪内へ連続 し,また心嚢液貯留( )もあり,心膜腔への穿孔を示す所見である. 図10 奇形腫内の膵外分泌組織 HE染色 膵組織は卵巣奇形腫では稀で,縦隔奇形腫に特徴的な成分である.

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 消化酵素・蛋白分解酵素が腫瘍の破裂や周囲への炎症の 波及に寄与している(図10)。 2.精上皮腫(seminoma) 縦隔原発精上皮腫は10~30代の男性に発症し、縦隔 胚細胞腫瘍では奇形腫についで多く、悪性胚細胞腫瘍の 40%を占める。気道や大血管などの周囲縦隔臓器へ浸潤 した場合には、胸痛・呼吸困難・上大静脈症候群などの症 状を認める。精上皮腫は、化学療法や放射線治療によく 反応し予後は比較的良好である。 CTでは、前縦隔の辺縁が明瞭で分葉状の腫瘤として 見られる。内部は均一な吸収値を示し、出血や凝固壊死 による変性を認めることがあるも、範囲は限られている。 また石灰化を認めることは稀である13)。中縦隔や後縦隔 へ進展することがあるも、周囲臓器への浸潤を認めるこ とは比較的少ない13)。ただし浸潤を伴う場合には、通常、 平滑な辺縁も不整となる。腫瘍内部の造影効果は乏しい ことが多い(図11)。 MRIでは、内部の信号は比較的均一でT1強調像で低 信号、T2強調像で高信号となり、限られた範囲で変性壊 死を認める。精上皮腫では、化学療法終了時に残存腫瘤 を認めることがあり、FDG-PETが腫瘍の残存と壊死組 織との鑑別に有用である14) 3.非精上皮腫性悪性胚細胞腫瘍(nonseminomatous malignantgermcelltumor) 非精上皮腫性悪性胚細胞腫瘍には胎児性癌(embryonal

cell carcinoma)、卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor, endoder-mal sinus tumor)、絨毛癌(choriocarcinoma)やこれら の混合型(mixed germ cell tumor)があり、悪性度の高 い腫瘍である。頻度は非常に稀であり、通常若年成人の 男性に発症し、進行が速く診断時には巨大な腫瘤となる ことが多い。腫瘍は胸痛・発熱・呼吸困難などの症状を呈 することが多い。非精上皮腫性悪性胚細胞腫瘍では、

hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、human chorionic

gonadotropin)やAFP(α-fetoprotein)などの腫瘍マー 図11 精上皮腫 造影CT

前縦隔に腫瘤病変を認める.内部は均一で変性壊死は目立たず,造影

効果は乏しい. 図12 非精上皮腫性悪性胚細胞腫瘍(卵黄嚢腫瘍) 造影CT

前縦隔に不正な腫瘤病変を認める.内部には著明な変性壊死を示す 低吸収域を認める.

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カーの上昇を高頻度に認める。hCGは絨毛癌の成分があ る場合に、AFPは卵黄嚢腫瘍や胎児性癌で上昇する。非 精上皮腫性悪性胚細胞腫瘍では、予後は精上皮腫よりも 不良である。 CTで不整形の腫瘤として見られ、内部には嚢胞変性 や出血を示す低吸収域を多発性に認め、低吸収域の範囲 は病巣の50%以上となることが多い13)。周囲脂肪層の消 失や周囲臓器への浸潤所見がしばしば見られ、胸水や心 嚢水の貯留を認めることも多い。造影後は病巣の辺縁部 や不均一な造影効果を示す(図12)。胸壁への直接浸潤・ リンパ節転移・他臓器への遠隔転移を認めることもある。 MRIにおいても病巣内部の信号は不均一であり、T2 強調像では変性壊死による高信号領域を認める。また MRIは周囲臓器への浸潤評価に優れており、胸壁・胸膜・ 心膜・縦隔・大血管などへの浸潤評価に有用である。

悪性リンパ腫

縦隔で見られる悪性リンパ腫の約90%は他臓器のリン パ腫からの波及であり、縦隔原発のリンパ腫は約10%程 度とされている。WHO分類において縦隔原発悪性リン パ腫という概念はないが、縦隔病変を主体とする悪性リ ンパ腫のほとんどは前縦隔の胸腺・リンパ節から発生し、 次いで中縦隔リンパ節での発生が多い。縦隔に発生する リンパ腫は、成人では縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫

(primary mediastinal diffuse large B-cell lympho-ma)、古典的Hodgkinリンパ腫(classical Hodgkin

lym-phoma)が主要な組織型であり、小児では前駆Tリンパ

芽球性リンパ腫(precursor T-lymphoblastic

lympho-ma)が多い。 1.縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(primarymediastinal diffuselargeB-celllymphoma) 縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫は、本邦における成人 の縦隔悪性リンパ腫では最も多い組織型であるが、他の びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫とは区別して考えら れている。20~30代の若年成人に発症し、女性により好 発する。前縦隔に巨大な腫瘤を形成し、気道・食道や大 血管などの周囲構造を圧排浸潤し、呼吸困難、咳嗽、嚥 下困難、上大静脈症候群などの症状を呈する。初発時に は胸郭内にとどまっていることが多いが、治療後の再発 時には腎、副腎、肝、卵巣や中枢神経系など節外病変を 認めることが多い15) 診断上の大きな問題として、縦隔Hodgkinリンパ腫と の鑑別が挙げられる。発症年齢・性別の類似性、結節形 成、Reed-Sternberg細胞やlacunar cell類似細胞の出現、

また一部の腫瘍細胞でCD30(Ki-1)が陽性になるなど、 縦隔Hodgkinリンパ腫との鑑別が困難であることがあり、 さらに両者が混在した腫瘍も知られている。近年の遺伝 子プロファイリングからは両者の共通性を示唆する遺伝 子発現パターンも報告されており、現在この両者は一連 のスペクトラムの腫瘍である可能性が考えられている。 こういった事情から、WHO分類では、この両者の鑑別 が困難な症例については縦隔のグレーゾーンリンパ腫 (mediastinal gray zone lymphoma)という分類の枠を

設定している16) CT上の平均サイズは10cmに及び、病巣内には50%の 症例で出血、壊死、嚢胞変性を示す低吸収域を認め、8 %で石灰化が見られ、造影後は40%に不均一な造影効果 を認める。胸壁、胸膜、心膜などの周囲への浸潤所見を 認めることもあり、32%で心嚢水貯留を認める。67%の 症例で縦隔リンパ節の腫大を認め、部位は前縦隔や傍気 管部に多く、他には気管分岐、肺門、内胸、心膜周囲リ ンパ節などが続く(図13)17) MRI で充実部分は、T1強調像で脂肪より低く筋肉な どからやや高い信号を示す。T2強調像では、筋肉より高 く脂肪に近い高信号を示し、内部に壊死による著明な高 図13 縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫 造影CT 前縦隔の大動脈弓外側に,多結節構造を示す分葉形態の腫瘤病変を認 める.腫瘤の背側には圧排による部分的無気肺がある( ).

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日獨医報 第59巻 第1号 2014

信号や隔壁様の低信号を認めることがある。

2.古典的Hodgkinリンパ腫(classicalHodgkinlymphoma) 古典的Hodgkinリンパ腫(classical Hodgkin

lympho-ma)の組織型(リンパ球豊富型・結節硬化型・混合細胞型・ リンパ球減少型)のうち、縦隔原発はそのほとんどが結 節硬化型(nodular sclerosis)である。結節硬化型は若年 成人に多く,性差はない。前縦隔、特に胸腺に好発する。 40%の症例でB症状(発熱、盗汗、体重減少)が見られる が、健康診断の胸部単純X線写真で偶発的に発見される ことも少なくない。結節硬化型は他の組織亜型よりも予 後が良いとされている18) CTでは、典型的には多数のリンパ節が癒合した辺縁 分葉状(69%)の腫瘤が見られる。サイズの小さい病変で は造影効果は軽度で均一だが(図14)、サイズが大きくな ると壊死や出血、嚢胞形成を反映して不均一(62%)とな る。石灰化は治療前には稀であるが、放射線治療後に石 灰化を伴うことがある。縦隔リンパ節腫大(97%)、肺門 リンパ節腫大(34%)、頸部リンパ節腫大を伴う頻度が高 い。血管浸潤(7%)や胸水貯留(21%)の頻度は低い17) MRI上、T1強調像では筋と同程度の比較的均一な低信 号を示す。T2強調像では脂肪と同程度の高信号を示すか、 高信号と低信号が混在する。T2強調像での高信号の要因 としては、浮腫や炎症、未熟な線維組織、肉芽組織が関 与している。胸腺に発生したHodgkinリンパ腫では、胸 腺上皮に裏打ちされた嚢胞が見られることがある(21%) (図15)。 鑑別診断としては、縦隔原発のHodgkinリンパ腫では しばしば腫瘍内に巻き込まれた胸腺が嚢胞化したり、胸 腺上皮が反応性に過形成性変化を来すため、多房性胸腺 嚢腫や胸腺腫との鑑別が問題とされる。また、前述した ように縦隔びまん性大細胞型Bリンパ腫との鑑別が困難 な症例がある。 3.前駆Tリンパ芽球性リンパ腫(precursorT-lympho-blasticlymphoma) 前駆Tリンパ芽球性リンパ腫は、未熟なT細胞の表現 型を示す造血幹細胞由来の腫瘍である。急性リンパ性白 血病におけるT細胞性腫瘍の割合は20%程度と低いが、 リンパ芽球性リンパ腫ではその約85~90%を占め、ほと 図14 結節硬化型Hodgkinリンパ腫 A 胸部単純X線写真:右上縦隔に突出する腫瘤陰影を認める( ). B 造影CT:腫瘤内部は比較的均一で変性は乏しい.気管や大動脈弓分枝,左右腕頭静脈を巻き込んで進展している. A B

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んどが前縦隔原発である16)。約21で男性に多く、小児 から青年期に発症し小児での中央値は8~10歳であるが、 成人での発症も知られている。 臨床的には、腫瘍の急速な増大、巨大縦隔腫瘤の形成、 胸水貯留などによる急性呼吸窮迫が特徴とされ、血管や 心膜浸潤により上大静脈症候群や心タンポナーデを生じ ることもある。また縦隔以外には、骨髄、中枢神経、皮 膚、性腺にリンパ芽球の浸潤を認めることもあり、骨髄 や精巣への浸潤と中枢神経浸潤との間には強い相関が見 られる。骨髄内の芽球が25%以上である場合には、Tリ ンパ芽球性白血病とされる。Tリンパ芽球性白血病では、 Tリンパ芽球性リンパ腫と比較し表在リンパ節の腫大は * 図15 胸腺嚢胞を合併した結節硬化型Hodgkinリンパ腫 A MRI T1強調像:前縦隔の腫瘤(*)は筋肉と同程度の信号を示している. B MRI T2強調像:腫瘤(*)は筋肉よりやや高い信号を示し,周囲の嚢胞( )は 著明な高信号を示している. C MRI Gd造影T1強調像:腫瘤(*)に強い造影効果を認める. D FDG-PET画像:腫瘤にFDGの高度の集積を認める. A B C D *

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 稀で、縦隔腫瘤の発現も20%と少ないが、末梢血中のリ ンパ芽球の割合や脾腫を認める頻度は高い。 胸腺やリンパ節浸潤により前縦隔に巨大な腫瘤を形成 することが多く、気道や大血管への圧排・浸潤所見を認 めることも多い(図16)。腫瘤の内部には変性壊死による 低吸収域を高頻度に認め、特に造影後に変性壊死は明瞭 となる。胸水や心嚢水の貯留も高頻度に見られる。急速 な進行増悪を来すことが多く、その場合には胸郭外リン パ節、骨髄、中枢神経、性腺などへの浸潤を認める19) 4.悪性リンパ腫治療後の残存腫瘤の評価 縦隔悪性リンパ腫、特にサイズの大きな病変では、 治療による縮小の後に残存腫瘤を認めることが多く 〔HL(hodgkin lymphoma)の88%、NHL(non-hodgkin lymphoma)の40%)〕20)、残存・再発腫瘍と治療後変化(瘢 痕・線維化)の鑑別が重要となる。これらの鑑別には造影 MRIが有用とされており、完全寛解症例では治療前と比 較して造影効果が著明に減少するのに対し、再発例では 治療前と同等の造影効果を示す。またT2強調像の信号も 両者の鑑別に有用であり、完全寛解例では治療前と比較 し、T2強調像の信号が著明に低下したとの報告があるが、 治療後の炎症や壊死によりT2強調像の信号が上昇するこ とがあり(特に治療終了後6ヶ月以内)、造影効果の方が より信頼できるとされている21)(図17)。悪性リンパ腫は FDGの集積が高い場合が多いため、 FDG-PETは病期診 断のみならず治療効果判定において重要な役割を果た す。治療効果判定の撮像時期は、治療後の炎症性変化の 影響が消退してからが望ましい。化学療法単独の場合は、 治療終了から少なくとも3週間、放射線治療を用いた場 合は、少なくとも8~12週間おいてからの検査が推奨さ れている22) 図16 前駆Tリンパ芽球性リンパ腫 造影CT 前縦隔に巨大な腫瘤病変があり,大血管や気管を背側へ圧排している. 図17 縦隔悪性リンパ腫化学療法後の残存腫瘤 A MRI T2強調像:前縦隔の腫瘤( )は均一な低信号を示している.

B MRI T1強調像(3D-fast GRE,造影前),C T1強調像(3D-fast GRE,造影早期相):造影早期相で腫瘤( )に造影効果は見られない.これら の所見は,残存腫瘤が瘢痕組織であることを示している.

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参照

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