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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

難代謝性PCBの高排泄動物種における代謝反応機構

有吉, 範高

https://doi.org/10.11501/3106931

出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(薬学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

難代謝性PCBの高排池動物種における 代謝反応機構

1995年

有吉 範高

(3)

θ

難代謝性PCBの高排池動物種における 代謝反応機構

The Mechanism of Metabolic Reaction of Persistent PCB in Animal Species with High Excretion Capacity

吉岡 ム「日u 、/ i「 5 Qノ

有 ( 士口 W

(4)

目 次

第I章 緒論 ...... . . . . . . . . . . . . . . . • . . ... ... 1

第II章 イヌにおけるPCB153代謝反応機構の解明 7 第1節概要 ・…... ... ... 7

第2節 In Vitro代謝物の同定 ………・・・……… 8

第l項 代謝物の検索および単離 ...・H・..…...・H・..……… 8

第2項 M-3の同定 ……… 11

第3項 M-lの同定 ………...・H・..… 12

第4項 M-2の同定 ……… 14

第3節 In Vitro代謝物の定量 ……… 17

第4節 SH化合物を用いた反応機構の推定 ……… 18

第5節 In Vivo代謝物の確認 ……… 19

第6節 考察 …・…... 20

第III章 イヌにおけるPCB155の代謝反応機構の解明 ……… 23

第l節 概要 ………...・H・..………・………...・H・..………・・ 23

第2節 代謝物の同定 ……… 23

第3節 考察 …... ... ... .... ... ... 28

第IV章 モルモットにおけるPCB153の代謝反応機構の解明 ……… 31

第l節 概要 ………...・H・H・H・...・H・.."..・H・-………… 31

第2節 In Vivo代謝 ………...・H・..……… 31

第1項 In Vivo代謝物の単離 ……… 32

第2項 モルモット代謝物M-l,M-2およびM・3の同定 ……… 33

第3項 モルモット代謝物GM-lの同定 ……… 35

第4項 GM-2の推定構造 ……… 38

第5項 GM-3の推定構造 …...・H・...・H・..……… 39

第6項 糞中未変化体および代謝物の定量 …...・H・..……… 41

第3節 In Vitro代謝-イヌとモルモットの代謝活性の比較ー …...・H・..…… 42

第4節 考察 …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 第V章 PCB153代謝に関与するcytochrome P450分子種 ………... 47

第1節 概要 …………・………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47

(5)

第2節 Phenobarbital処理モルモット肝ミクロソーム からの2B subfamily P450の精製

第3節 再構成系における検討

第4節 Phenobarbital処理イヌ肝ミクロソーム からの主要P450分子種の精製

第5節 再構成系における検討H 第6節 抗体 阻害実験

第7節 考察

第VI章 ヒト2B subfamily P450による検討 第1節 概要

第2節 CYP2B6発現系におけるPCB153代謝 第3節 考察

48 48

5) 7・Ethoxycoumarin O-deethylase活性 …………- 6) Testosterone hydroxylationJoxidation 活↑生

7) Es仕adiol-17ß hydroxylation 活性 9. 酵素 精製

A斗 FhJ ζJ ζJ fo ro ro fo fO 勺t 勺J 勺J 00 00 00 00 AY 00 00 nxu oo nxU 06 00 00 00 00 00 Q0 00 00 00 00 00 第VII章 総括

謝 辞

実験の部 ………・…...・H・-…・……....・H・... 70 1. 試薬 …... 70

、‘,ノ、、,/、}ノti 今,J- q3

PCBの合成と精製

PCB代謝物の合成と精製 … 補酵素 および酵素

4) 標準タンパク質 ……… 71 5) カラム樹脂 ………...・H・..………・……...・H・..……・・ 71 6) その他 ……… 72 合成化合物の機器データ ………...・H・..……… 75 2. 動物および動物処理 ………...・H・..……… 82 3. 肝ミクロソームの調製 ・・…・・……・・・…・・・・・・・・・・…・・・…・・・・・……・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82

4. タ ンパク定量 …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82 5. ミクロソームにおけるPCB代謝 ……… 82 6. PCB およびPCB代謝物の抽出および定量 ……… 83 7. PCB153代謝物の単離 ……...・H・..………...・H・..…………...・H・.. 83 8. 酵素活性測定法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 1) Cytochrome P450含量 ………-………...・H・...・H・..………・・ 84 2) NADPH-cytochrome P450 reductase 活性 ...・H・..…....・H・..…...・H・...…. 84 3) Cytochrome b5含量 ………・……...・H・・・・H・H・...………・ 84 4) Benzphetamine N-demethylase活性 ……… 84

9 2 3 5 4 5 5 5

1) Cytochrome P450 . . . 2) Cyotochrome b5 ・・・

3) NADPH-cytochrome P450 reductase 10. N末端アミノ酸配列分析

11 . 再構成系におけるPCB代謝 12. 抗体の調製および精製

13. 抗体によるPCB代謝活性の阻害 ………・・ ・

14. SH化合物によるPCB代謝活性の阻害 ………

15. 薄層クロマトグラフィー(TLC,p-TLC)……

16. ガスクロマトグラフィー(GC)

17. ガスクロマトグラフイー ・ マススベクトロメトリー(GC-MS) ...

18. 分析機器 19. その他 9

9 1 2 5 5 6 6

65 69

ハu nu -­

司J 司/

ウf

引用文献 論文リスト

. . . • . . . • • • . . . • . . . . • . . . ... ... ...

90 98

(6)

本論文においては、 次の略号を用いた。

HB B : Hexabromobiphenyl HCB: Hexachlorobiphenyl PCB : Polychlorinated biphenyl PCB 15*: 4,4'-Dichlorobiphenyl PCB 77*: 3,4,3',4'-Te甘achlorobiphenyl PCB 126*: 3,4,5,3',4'-Pentachlorobiphenyl PCB 133*: 2,3,5,2',3',5'-Hexachlorobiphenyl PCB 136*: 2,3,6,2',3',6'-HexachlorobiphenyI PCB 153牢: 2,4,5,2',4',5'-Hexachlorobiphenyl PCB155牢: 2,4,6,2',4',6'-Hexachl orobipheny 1 PCB 169*: 3,4,5,3',4',5'-HexachlorobiphenyI PCDD: Polychlorinated dibenzo-p-dioxin PCDF: Polychlorinated dibenzofuran PCQ: Polychlorinated quaterphenyl PenCB : PentachlorobiphenyI

TCDD: Te廿achlorodibenzo-p-di oxin

G-6-PD: Glucose-6-phosphate dehydrogenase P450: Cytochrome P450

G-6-P: Glucose-6-phosphate GSH: Reduced form of glutathione DLPC: Dilauroylphosphatidylcholine DEAE: Diethylaminoethyl

HEPES: 4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinethanesulfonic acid PB : Phenobarbital

SDS: Sodium dodecyl sulfate TMS: Trimethylsilyl

ECD: Electron capture detector

EI-MS: Elec甘on impact-mass spec仕ome甘y GC: Gas chromatography

GC-MS: Gas chromatography-mass spec仕ome仕y HPL C: High performance liquid chromatography NMR : Nuc1ear magnetic resonance

PAGE: Polyacrylamide gel elec町ophoresis TLC: Thin layer chromatography

tR: Retention time

* ID PACの PCB numberに基づく

第I章 結 論

19世紀後半以降、 人類の生活水準の目覚ましい向上を支えてきたものの1つとして、 お びただしい数の合成化学物質の研究、 開発があったことは周知の通りである。 そのうち、

医薬品や食品添加物は直接人体に摂取される化合物であることから、 その安全性および有効 性等に関する審査基準が厳しく 整備されてきた。 一方、 人が積極的に摂取するものではな い化学物質に対しては、 それら規制が立ち遅れ、 1974年になってようやく 化学物質審査規 制法が制定されるに至っている。 本法律の規制対象となる性状を持った化学物質は今や地

球規模に拡散し、 今後とも数世紀以上に亘って残留し続けるものと懸念される。

Polychlorinated biphenyl (PCB ) は polychlorinated dibenzofuran (PCDF)や polychlorinated dibenzo-p-dioxin ( PCDD)と共にそうした世界的環境汚染物質として知られている塩素化芳香 族炭化水素の一種である。 Fig. 1に示すようにピフェニル環の水素原子が塩素原子に置 換されただけの極めて単純な構造であるが、 塩素の数と位置により理論上209種のconge­

nerの存在が可能である。 PCB の優れた物性は工業的には実に多くの有用性があり、 1929 年に米国で商業ベースの生産が開始されると、 産業界で多方面に使用されたが、 その物性の ため一度環境中に流出すると極めて分解され難く長期に亘って残留し続けることとなった。

国内では1954年に生産が開始きれ1972年6月に生産中止となるまで約6万トンが生産、

消費されたが、 1930-1975年における全世界での累積生産量は100万トンは下らないと推定 きれている。 生産中止と同時に使用規制、 回収等が実施されたが現在も焼却等の廃棄処理 がなされず貯蔵されている例も少なく ない。 PCB関連化合物による汚染を考える場合、

すでに環境中に流出した汚染源だけではなく、 種々の発生源、 すなわち一般家庭、 産業廃棄 物の焼却場、 製紙工場等からの汚染は現在も進行中であり、 近年特に懸念されている。

Clm Cln Clm Cln

4

φφ

4

敵対

PCB PCDF PCDD

Fig. 1 Structures of PCB , PCDF, PCDD and PCQ

- 1 -

(7)

PCBが 広く一般の人々 にも知られ、 その汚染の脅威が社会問題となった契機が 1 968年 (昭和43年)に西日本各地 に広く発生したカネミ油症事件であるl)o さら に 1 9 79年には 台湾中部においてYu-Chengと呼ばれる同様の食中毒事件が発生し2)、 この2つの事件 によっ て世界的 にもPCB関連化合物の毒性が注目をあびることとなったo 両事件 はいずれ も熱 媒体として用いられていたPCB混合物が食用油を汚染し、 それを食した人々の間に起こっ た中毒事件である。 油症 は、 当初PCBによる亜急性中毒症と考えられたが、 その後の分 析技術の進歩と精力的な研究によって、 原因ライ スオイル中 には PCBの他に微量ながら PCDF3) やPCDD4)、 またPCBが2分子結合したpo lychlorina tedquarterphenyl (PCQ) に至つて はPCBと同程度合まれること等が明らかとなった 5)o 油症の原因物質としてはPCB単独 で はなく、 毒性の強さ および存在量からPCDFが特に大きな寄与を持つものと推定されて いるの。

合するタンパク質として見出された ものであるが14)、 不安定性のためその研究は長年困難を 極めていた。 しかし最近 になって相次いで2つの グループからAh receptor cDNA のクロー ニングが報告された町九 一方、 数多くの研究努力 によってAh receptor-li gand複合体の 作用機序は現在で は およそFig. 2に示す ようなメカニズムと考えられている17)。 本質的 にはステロイドホルモンレセプターの作用機序と類似して おりAh receptor応答性の一連の 遺伝子群( Ah gene ba ttery )の5'上流域に存在するxenobi o ticresponsive e lement (XRE)と呼ば れるcis-acting e lement に結合して構造遺伝子の転写を促進する。 TCDDの レセプター

婚璽静

…亀市�

XRE

PCBには前述した通り多数のcongenerが存在するが、

その毒性の強さ は様々であり、 ピ フエニル 環のortho 12(2'), 6(6')1位 に塩素置換を有しない 20種の平面構造をとり得る (coplanar) PCBの中で も両ベンゼン環 に2個以上の塩素置換を有す 3人3',4'-te trachloro­

bipheny1 (IUPAC PCB7 7)、 3,4,5,3',4'-pentachlorobiphenyl(IUPAC PCB126) および 3,4,5,3',4',5'­

hexachlorobiphenyl (IUPAC PCB169)の3者は特に高毒性のcongenerとして知られている7)o 中で も3人5,3',4'-P enCBは 高毒性のPCDFcongenerと同等の毒性を持つとぎれており、 市販 のPCB製品にも含まれていることが明らかとなっている8)9)o また、 環境中 にはこれら coplanar PCBはPCDD やPCDFより はるか に高濃度で存在していることが明らかになりつ

つあり、 生体系への影響が危慎されている問。

PCB関連化合物の実験動物 に対 する主な毒性は、 体重増加抑制、 胸線や牌臓の萎縮、 肝

害等であるが、 動物種によって はそれら に加えてヒトと同様な 塩素座療と呼ばれる皮膚障 害、 ホルモンバランス異常、 免疫機能不全をみる場合もある11)1九 これら毒性の発現機構 は複雑であり、 動物種によって感受性や標的臓器、 病理所見や死に至る経過等が様々であ;

?とから、 現在まで、全ての動物種に適用できる統一的な機構は見

出されていないo しかし 少なくと も幾つかの毒性は細胞の可溶性画分に局在するAh陀ceptorと呼ばれる受容体タン

パク質へのPCB類の結合が引き金となっている ものと考えられているI九 Ah receDtorは もと もと最強の人工毒 物として知られている以7.8chlorodibenzo-p-di oxin(TC

が結

9 -10 s 300 K

4-5s 100 K

6・7s 200 K

Fi g. 2 Proposed mechanism of Ah receptor functi on

への結合は両ベンゼン環が同一平面上に位置 することと、 塩素置換 位置が2ム(4), 7, 8位であ ることが重要であり、 前述のcoplan訂PCBはこれら条件を満た すため に高い毒性を もつ も のと解釈される7)18)19)。

これまで述べてきた毒性 は主に急性毒性であり、 PCB自身すなわち代謝される前の母化 合物が持つ毒性であるの に対し、 以前からPCB代謝物あるいは 代謝中間体 に基づく毒性も 無視できないことが示唆されていたo Yoshimura らは2人3',4'-te町achlorobiphenylとその主

代謝物5-hydroxy体のマウスにおけるLD50値を算出したところ 代謝物が5倍も致死作用が 強かった2% Brodieらはハロ置換ベンゼンによる肝壊死の原因をエポキシド中間体と推定 しているが、 PCBにおいて も同様の活性 代謝物が生成し、 生体 高分子 に共有結合する可能 性が報告されている21)22)。 その後、 エポキシド中間体生成 は2ふ2',5'-te trachlorobiphenyl の

3,4-arene oxide 体の単離によって直接的 に証明 され、 疑う余地のないところとなった問。

これら活性中間体がPCBの変異原性や細胞毒性に関与 する可能性は否定できない24)。

ピフェニル環のortho 12(2'), 6(6')}位に塩素置換を有 する congeners (以下non-planar PCB)はcoplanarPCB様の著しい 急性毒性を示さないため毒性発現 にあまり 関与していな

いと考えられていたが、 最近non-plan紅PCBやPCB代謝物 による前述した ものと は異なる

ワ臼

- 3 -

(8)

毒性の報告が見られるようになり、 PCB毒性研究は新たな展開を見せつつある別九 近年PCB関連化合物の毒性評価を統一しようとする動きがあり、 最強の急性毒性を示す 2,3,7,8-1:C:1)1)の毒性を1とした場合の毒性等価係数 toxic equ iva lence factors (TEF)が提唱さ れ31)旬、 混合物の場合は TEFを各々のcongenerの存在濃度に乗じて toxic equ iva lents (TEQ) を求め、 その託ミ和であらわされるようになっており、 以前に比べて評価しやすくなった。

しかしそのようにPC:B混合物のリスクアセスメントを各々のcongenerの相加的な毒性で評 価しようという概念の一方で、 2種あるいはそれ以上の純粋なcongenerを環境中あるいは 人体汚染の濃度比に基づいてmixture とし、 その混合物を投与することでより実際的な評価 を行なおうとする試みが重要と考えられるようになりつつある。

PC:B関連化合物の排池についてはここでは詳述を避けるが、 以上のような毒性や排池を 考える際にその生体内動態の解明は不可欠で、あり、 それを達成するためにこれまで多くの代 謝研究がなされてきた。 その結果以下のような事実が明らかとなってきた。

1 )一般に塩素置換数の少ないPCBの方が代謝されやすく、 4塩素化体以下の低塩素化 体は速やかに代謝されるのに対し、 5---6塩素化体になるとその速度はかなり低下す る。 7塩素化体以上の高塩素化体になるとほとんど代謝されない。

2 )同一塩素数を有する異性体問では、 塩素置換位置によって代謝速度が大きく異なる。

3) PCBには薬物代謝酵素誘導能を有するものがあるが自らが誘導する酵素 によって 主に代謝される。

4) PC:Bの代謝能力は動物種により大きく異なる、 等である。

本研究の中心となる PC:Bcongenerは 2人5,2',4',5'- hexachlorobiphenyl (HC:B)である(Fig.

3)。 以降は、 近年汎用されつつある IUPACのPC:Bnumberに基づき PC:B 153と略称する。 PC:B153はdiortho 塩素置換を有するnon-planarPC:Bであ

Cl

Cl Cl

るためAhreceptorへの親和性がほとん Fi g.3 S仕ucture o f 2,4,5,2',4',5'-HC:B (PC:B153) どなく犯)単独ではco・plan訂PC:B様の急性毒性を示さない。 このため、 毒性学的には軽 視される傾向にあったが、 PC:B153をcoplan訂PC:Bや1:C:1)1)と同時投与することによって

- 4 -

coplan訂 PC:B等の毒性が著しく高まることが明らかにされ34-37)、 その主要なメカニズムは PC:B153 がAh receptor を誘導するためと考えられている38)。 また、 最近著者らはヒトで 薬物代謝に主たる役割を担っている 2C: subfami ly P450 ( CYP2C:)の活性はPC:B153によって 著しく阻害されるのに対し、 最強毒性を有するcoplanarPC:B、 3,4,5,3',4'-pentachlorobiphenyl ではほとんど影響きれないことを見い出し報告した問。 しかし他方で PC:B153 が Ah recepωrのアンタコ。ニストとして作用し、 1:C1)1)の示すある種の毒性は軽減されるとの報告

もなされており40)、 その毒性学的位置は確定しているとは言い難い。

PCB153が注目されてきた主な理由は、 その蓄積性と環境中レベルの高さによるところが 大きく、 分布、 排池のモデル化合物としての研究が大部分を占める。 PCB153の高い生体 残留性は、 脂肪組織への著しい指向性および蓄積性と極めて代謝され難いことに起因する。

事実、 PC:B153 は油症原因となったライスオイル中には主成分ではなかったにもかかわら ず、 発症より四半世紀以上を経過した現在の油症患者の血液中に最も高濃度で検出される異 性体となっている41)0 PC:B153は環境中においても極めて難分解性であり、 また、 母乳を

介して胎児に移行することが明らかとなっており42)、 健常人体内においても最も高濃度に見 出されるcongenerの一つであることが報告されている43)。

しかしながら、 PCB153は実験動物において極めて難代謝性であることから代謝に関する 報告は少ない。 ヒトにおいては肝ミクロソームでの検討がなされているが、 代謝物の検出 には至っていない判。 上述のごとくPCB153の人体汚染は油症患者ばかりではなく、 健常 人にも広く浸透しており、 今後も濃縮の危険性と傾向は否めない。 毒性に関しても未知数 であり、 慢性毒性やcoplanarPC:Bとの協調毒性等の観点から、 環境中からの摂取回避およ び体内からの排池促進は重要な課題であると考えられる。

PCB153の排池促進については、 これまで研究例がなかったわけではない。 摂食制限

による蓄積部位からの遊離を利用した方法的、 難吸収性飽和炭化水素スクワランを用いた排 池促進研究崎、 そしてPC:B153に特異的な抗体を利用した排池促進47)等である。 しかしそ のいずれも効率的な方法であるとは言えず、 また著効があるものでもなかった。 こうし た背景のもと、 本研究はPCB153を効率よく代謝的に排池できる動物種において、 それがど のような代謝反応機構で可能となったかを明らかにする目的で開始された。 第2章では 他の研究グループで見出され、 現在までPC:B153を効率的に排池できる唯一の動物種として

- 5

(9)

知られていたイヌを用いて検討し、 第4章ではイヌと同じ反応機構を持つ動物種として本研 究で新たに見出したモルモットにおいて検討を行なった。 また、 前述のように排池を考え る際に代謝の知見は不可欠である。 そこで未だ代謝に関する知見がないヒトにおいて PCB153の代謝を明確にする目的で最後にヒトの薬物代謝酵素発現系を用いて検討した。

以下、 それらの結果について論述する。

- 6 ー

第11章 イヌにおけるPCB153代謝反応機構の解明

第1節 概要

緒論に述べたようにPCB153は魚類、 鳥類、 富歯類、 霊長類等で代謝研究がなされた札幼 が、 いず、れの実験動物においても極めて難代謝性であり、 そのことがPCB153の高蓄積性に 寄与しているものと考えられている。 ところが 1982年にSipesらによってイヌだけは例 外的にPCB153を速やかに体外へ排池する能力を持つことが報告された問。

ピフェニル環水酸化のメカニズ、ムは基本的に芳香環水酸化のそれと同様と考えられてい る。 提唱されている数種のメカニズムの中で古くから芳香環水酸化の主要なメカニズムは 訂ene oxide中間体を経由する反応であると言われてきた。 即ちC=C結合への酸素付加反 応により訂ene oxide (芳香環のエポキシド)中間体が生成し、 ついで、それが転移してフェノー ル体が生じるというものである。 しかし全ての芳香環水酸化反応がこのメカニズ、ムを経て はいない証拠が蓄積され、 C-H結合に活性化された酸素原子が直接挿入され、 1ステップで フェノールを生成する直接水酸化と呼ばれる機構も重要と考えられている刊。

ortho meta

Cl

meta ortho ortho meta

Fig.4 Struct ure of 2,5,2',5'-te甘achlorobiphenyl

一般にPCBの代謝はその構造中に塩素未置換のmeta-para位炭素原子が隣接していると 水酸化を受けやすいことが経験的に知られており、 たとえばそうした構造 を持つ2ふ2',5'­

t e仕achlorobiphenylは代謝されやすい congenerの代表である(Fig. 4)0 Matt hewsらによ ればPCBにmeta-para位隣接塩素未置換炭素がある場合にはareneoxide中間体生成が容易 であるため代謝され易く、 そうした炭素がない場合にはじめてmeta位の直接水酸化反応が 優位になるものと推察しているお)。 実際この経験則はヒトを含む多くの動物種で的を得て おり、 かなりの部分が説明可能である。

SipesらはPCB153 の構造はそうしたmeta-para位の隣接塩素未置換炭素がないことと、

塩素置換位置の異なった数種のHCB異性体の体内消失速度の比較からイヌではmeta位に

- 7 -

(10)

酸素原子を直接導入する能力が他の動物種より著しく高いのではないかと考 察している問。

PCB においては第一相反応による二次代謝物や第二相反応による抱合 体代謝物の生成は 多くないため、 Sipes らの推測が正しいと仮定するならばイヌにおいて複数の代謝物は生成 しないものと考えられる。 それにもかかわらず、 Duignan らはイヌ肝ミクロソームを用い た代謝実験において少なくとも4種の代謝物が検出されたと報告している拘。 著者はこ の矛盾点からイヌにおいては未知の代謝反応機構が関与している可能性があるものと推察し た。 その仮定を検証するにはなりよりもまずイヌにおけるPCB153の主代謝物の構造決定 が必要である。 そこで本章ではまずその試みから開始した。

から数本のシリカゲルカラムを用い、 溶出溶媒の極性を段階的に変化させることにより3種 の代謝物をそれぞれ単一にまで精製した。

Substrate

(A)

第2節

In

Vitro代謝物の同定

2 4 6

第1項 代謝物の検索および単際

Retention time (min)

Phenobarbital (以下PB)処理イヌ肝ミクロソームを酵素源として、 NADPH 生成系の存在 下、 PCB153を370Cで好気的にインキュベーションし、 反応停止後、 有機溶媒で未変化体

および代謝物を抽出した(実験の部6参照)。 総抽出物についてシリル化およびメチル化 を行い、 電子捕獲型イオン化 検出器(ECD)付きガスクロマトグラフにおいて代謝物の検出 を試みた。 Fig.5に示すようにNADPH非存在下(A)ではいずれの誘導体化においても 未変化体のピークの他に1本のピークが認められた(メチル化体のデータ省略)が、 もとの 基質溶液には認められないことから基質中の不純物ではなく、 有機溶媒によって抽出される 生体成分と考えられた。 マススベクトルを測定した結果も塩素に特徴的な同位体ピークは 認められず、 PCBに由来するものではないことが明らかであった。 NADPH存在下ではメ チル誘導体化(C)した場合は2本、 シリル誘導体化( B)した場合は3本の新たなピークが

認められた。 シリル化した場合に検出される3本のピークについて保持時間(以下tR)

の短い方からM-l, M-2およびM・3 と命名した。 後に代謝物を単離したところメチル化 した場合 はM・2とM-3のピークのtRが近く分離しないため混合物ではみかけ上2本に見

えることカf明らかになった。

上記3種の代謝物の構造を決定するにあたり、 まず各代謝物の単離を試みた。 総抽出物

Substrate

B

Substrate

C /'E\

Silylated SíJylated

11

M・2

M-l

2 6 2

Retention time (min)

Silylated 九ι3

4

Retention time (min)

Fig.5 Gas chromatograms of incomplete (-NADP H, A) and complete (B, C) system of 2,4,5,2',4 ',5 '- HCB metabolism with liver microsomes. A and B:甘imethysilylated derivative C: methylated derivative

Fig.6に各代謝物のメチル誘導体のelectron-impact マススペクトル(EI-MS)を示す。

PCB代謝物の構造決定 にあたり、 PCB水酸化体のメチル誘導体のマススペクトルは分子量 以外に水酸基の置換位置に関してきわめて有益な情報を与えることが知られている57)58)。

QU

- 9 -

(11)

ことから母化合物がlつ水酸化されたmonohydroxy句hex achloro biphenyl (HCB)であるものと 一般にpara(4 or 4' )位にmethoxy基を有するもの

現在までに例外も見出されてはいるが、

のフラグメントイオンピークから 水酸基の位置に関してはM-2 は[ M+-50J

推定した。

12(2') or 6(6')f位にmethoxy基を

ortho [ M+ー15Jが、

はメチル基が脱離したと考えられる

OI凶o位に、 M-3は前記いずれの特徴的なフラグメントイオンピークが観察されず、 COCH3 のフラグメントイオンピー

[ M+-50J 有するものはメチル基と塩素が脱離したと考えられる

のフラグメントイオンピークが比較的 高いことから経 [ M+-43J

基が脱離したと考えられる クの相対強度が大きいのが特徴的であることが見出されている。

験的にme臼位に置換しているものと予想した。

354

(M+) [M+- 50]

Methylated M・1

M-3の同定 第2項

」ー

、,

前項においてM-3は母化合物のmeta位に水酸基が導入された代謝物と考えられたが、

350 390 3 10

270 190 230

150

の予想、代謝物である3-hydroxy-2人5,2'バ,5'-HCB はこれまでPCB153を代謝できる全ての動 物種において見出されている共通代謝物である48ぬことからイヌでも生成しうるものと考 その結果理論通り2種のmono- え、 まずその合成から試みた(実験の部lの2反応D)。

両者はガスクロマトグラフィー(GC)におけるtR、 シリカ hydroxy-HCBが生成した。

お8

(M+)

Methylated M-2

ωυロ35Aω333a

ゲルカラムからの溶出とも極めて近く、 分離が困難であったため、 薄層クロマ トグラフィー

350 390 270 310

190 230 150

(TLC)での分離条件を検討しプレパラテイブTLC(p-TLC)によって分離精製が可能となっ 388

CM+)

Methylated M・3

TLCにおけるRf値の大きい方からS-3a,S-3bと命名し、 メ (実験の部15参照)。

チル化体のEI-MSスペクトルを測定したところ、 相対強度はあまり大きくないがS-3bには の特徴的なフラグメントイオンピークが認められたことか [M+ー15 J

S-3aには認められない

後述するがこ らS-3bは4位に水酸基を有する4-hydroxy-2ム5,2',4',5'-HCBと考えられた。

390 350

270 310 230

150 190

メチル化体の の化合物はラットの糞中代謝物のーっとして同定されているものである51)。

mJz

マススベクトルおよびGCのtRが一致することからS-3aがM-3であると考えられた。

Ele ctron-imp act m ass spe c甘ao f methyl ated met abolites formed by dog l iver Fig.6

水酸基が置換した芳 Fig.7A,Bにs・3aおよびS-3bのlH-NMRスベクトルを示す。

nucrosomes

香環のプロトンの化学シフトから、 予期した通りS-3aが予想代謝物3-hydroxy-2人5,2',4',5'-

Fig. 7Cに代謝物M-3の芳香環プロトン部分を示

HCBであることが明らかとなった。

5塩素化体に特徴的な同位 M-1 のメチル誘導体は分子イオンピークを rn/z 354 に示し、

これもS-3aのそれと完全に一致した。

のフラグメントイオンピークが相対的に高いこ したが、

[ M+-50J 体ピークが観察された。 さらに

以上のことからM-3は3-hydroxy-2人5,2',4',5'-HCBであると同定された。

とから塩素がlつ脱離するとともにortho位に水酸基が導入されたmonohydroxy-pent achloro- M-2 と M-3についてはいずれもそのメチル 化 6塩素化体に特徴的な同位体ピークが観察される bipheny1 (PenCB)であるものと推定した。

体の分子イオンピークをrn/z388に示し、

‘,A nu 司laA

(12)

1a. S-lbと命名し、 メチル化後マススベクトルを測定した。 両者はGCにおいて tRが異 なるもののEI-MSスベクトルにおいては区別がつかず、 いずれも[M+-50Jの特徴的なフラ グメントイオンピークを有していた (機器データ参照)。 そこで両者の区別のためにlH_

NMRスベクトルを測定した。 M-lのメチル化体の芳香環プロトン部分と S-la, S-lbのメチ ル化体のスペクトルを日g. 8に並べて示す。

CHCI3 I H6

(A)

〉ヨ, F41 (C)

r、

}

OH

ムー一一

-' 「

(B)

H6'1 rH6 H3'

七凸55: 2

C OH

句3

H

ro

H

foel

H

CHCl3

(C)

" ,---一一

(A)

8 (ppm)

I一丁寸7

dM KGH

OH

'T寸8 í'

8

8 (ppm)

B /'t、

H3・ H6・

Fig.7 lH-NMR spec汀aof S-3a (A) , S-3b (B) and M-3 (C) without derivatization

第3項 M・1の同定

Hs

M-lの構造が第1項の推定通りであると仮定した場合、 6 (または6') 位に水酸基が置換 されたとしても塩素原子が脱離する反応が同時におこるとは考え難いことから、 2 (または わ位の塩素が脱離した位置に水酸基が導入されたと考えるのが妥当と思われる。 そこ で予想代謝物の合成を試みた(実験の部1の2反応A ) 。 本反応では理論的に3種の化合 物が生成可能であるが、 単離した2種の化合物に対し、 シリカゲルカラムからの溶出順にS-

7

ö (ppm)

δ(ppm) 7

Fig.8 lH-NMR spec廿aof methylated derivatives of S-la (A) , S-lb (B) and M-l (C)

- 12 - - 13 -

(13)

この結果、 S-lbはPCB153の代謝においては生成不可能な合成副産物であることが明らか となった。 また、 M-lとS-laのメチル化体のスベクトルが完全に一致し、 データには 示さないがメチル化およびシリル化体のGCにおける tRもS- laのそれと完全に一致した。

以上のことからM-lは2位の塩素が脱離すると同時にその位置に水酸基が導入された2- hydroxy-4,5,2',4',5'-PenCBであると同定された。

Cl

笠災;

cl

H� CHCl3

3

1J C H C ‘‘.可

(A) B

第4項 M・2の同定

ノ ,pb 1 H I--J 内J H

M-2は母化合物のortho位に水酸基が一つ導入された代謝物と考えられるが、 第1項に記 したように紅ene oxide中間体の生成が困難である場合、 meta位への水酸基の導入が優位で、

ありor由。位への水酸基直接導入反応の結果と見られる代謝物の生成はほとんど知られてい ない問。 しかし、 Katoらはラットにおける2人5,2',4',5'-HCB代謝研究において、 ラット糞 中からortho位への水酸基の直接導入反応の成績体と考えられる6・hydroxy-2人5,2',4',5'-HCB を見出している51)。 一方、 Ga訂rd伽ne訂rらは2,4,5,2',4',5'一HCBの塩素が全て臭素に置き換わつ た2人5,2'バ,5'-一占heはxaぬbromoぬbi坦ph恥enyl(但HBB酌) を主成分とする難燃斉剤|リIJ Fi凶r閃emaお制S叫t町e町r BP-6伊⑧を経口投与 したイヌの糞中より唯一の代謝物として6ι-h句1ηザyd企rox)

ヌでは他の動物種では稀なOω'rt.的ho位の直接水酸化反応によって6- hydroxy体を生成する可能 性が考えられたため、 予想、代謝物の合成を試みた(実験の部1の2反応 B)。 その結果理論 通り2種の化合物が生成しTLCにおいて Rf値の大きい ほうから S-2a. S-2bと命名した。

両者についてメチル化体のマススベクトルをとったところ methoxy基がor出o位に置換して いることを示唆する[M+-50]の特徴的なフラグメントイオンピークはmethylatedS-2aのみ に見られたことからS-2aが予想、代謝物6・hydroxy-2,4,5,2',4',5'-HCBであるものと考えられた

(機器データ参照)。

Fig.9AにS-2aのメチル化体のlH-NMR スペクトルを示す。 データには示さないが、

シグナルの assignはスピンデカップリングで行なった。 Fig. 9Bには 代謝物M・2のメ チル化体の lH-NMRスベクトルを示したが、 意外なことに予想、に反して 6- methoxy- 2人5,2',4',5'-HCB (Methylated S-2a) のものとは明らかに異なっており、 最も高磁場側のプロ

トンのシグナルは溶媒(CHC13)ピークと重なっていた。

PPH

7.7 7.6 7.5 7.4 7.3 7.2

8 7 6 5

8 (ppm)

Fig. 9 lH-NMR spectra of methylated derivat ives of S-2a (A) and M-2 (B)

データには示さないがメチル化およびシリル化後の GC における tRも異なっており、

以上のことからM-2は6- hydroxy-2人5,2',4',5'-HCBではないことが明らかとなった。

ところで芳香族炭化水素の代謝物の中には母化合物の置換基の位置が隣に1 ,2- shiftしたも のがしばしば見出されており、 この現象は最初にNIHのDaleyらによって報告されたこと から以後 NIH-shift と呼ばれるようになった。 この NIH- shift は間接的ではあるが代謝中 間体として訂ene oxide中間体を経由している強力な証拠のーっとされている61)0 PCBの 代謝においても 1975年にSafeらがはじめて証明して以来、 多くのPCB congenerの代謝に おいて確認されている62-65)。 ただし、 PCBの場合オキシラン環はほぼ排他的に meta-para の位置に生成し67-69)、 塩素置換のあるピフェニル環 ではor出o位置への水酸化が抑制される との考察がなされている69)。 事実PCBの代謝において ortho-meta位置のオキシラン環生 成の報告はこれまで全くなされていない。 しかし以上のことを踏まえたとしても今回の データを説明するにはFig. 10に示すようにortho-meta (以下2, 3-)位の arene oxide中間体

ー は一

phu

(14)

生成と2位水酸化にともなう塩素原子の3位へのNIH-shift が予想された。

第3節

In

Vitro代謝物の定量

第2節においてイヌにおいてはこれまで報告された例のないPCB2,3-arene oxide中間体 を経由した代謝物が生成することが明らかとなったが、 他の動物種でも生成する共通代謝物 3・hydroxy体も生成する。 イヌで本 PCBの排池が早い理由に2,3-arene oxide中間体経由の 代謝が関与しているならば、 本中間体由来の代謝物量が共通代謝物量を凌駕しているはず である。 そこで本節では同定したイヌ肝ミクロソームにおけるPCB153 の3種の代謝物の 定量を行なった。 その結果をTable 1 に示す。

Fig. 10 Postulated metabolic pathway of M-2 formation via 2,3-arene oxide intermediate

そこで予想代謝物2-hydroxy-3人5,2',4',5'-HCBの合成を試みた(実験の音1) 1の2反応、C)。

生成した2種の化合物のうち、 メチル化体のマススベクトルにおいて[M+-50Jのフラグメ ントイオンピークが認められるS-2cのみを単離精製した。 Fig. 11にS-2cのメチル化体 のマススペクトルおよびlH-NMRスベクトルを示す。 両者は代謝物のそれら(Fig. 6 &

Table 1 Detennination of three major metabolites of PCB 153 produced with liver microsomes of dogs

Fig 9B)と完全に一致しており、 またメチルおよびシリル誘導体のGCにおける tRも完全 民1etabo!ites n 、‘,ノ d bL 児NUY-arE np hg 一州 pルm 汁引 油加 AL-'A ,M Mm

ny 〆,‘‘、

に一致していた。 以上のことからM-2は2-hydroxy-3人5,2',4',5'-HCBと同定された。

M - l 80.5士1.50

ωUGdhuR3Aω

388 (M+)

M-2 M-3

41.5:t 1.00 55.5:t 2.00

山〉Zd可出

150 190 230 270

m/z

Each value represents the mean :t S.D. of three dete口ninations.

310 350 390

ところで NIH-shift 成績体であるM-2 が2,3-arene oxide中間体由来の代謝物であることは 疑う余地のないところであるが、 他の2種の代謝物が2,3-arene oxide中間体由来であるか否 かは明らかでない。 M-lは水酸化を受けていると同時に塩素原子が脱離した代謝物であ り、 このような脱塩素水酸化体の生成は以前から知られていたにもかかわらず、 現在もその

生成機構については解明されていない。

しかし、 areneoxide中間体由来とする説が現時点 では有力視されており、 脱塩素水酸化代謝物の生成を訂ene oxide中間体生成の間接的証拠 と考えている研究者は少なくない仰め7Q.72)0 PCBの代謝においても脱塩素水酸化体の生成 はしばしば確認されてきたが、 興味深いことに脱塩素化を伴う水酸化の位置はこれまでmeta あるいはpara位に限られており、 今回のようにortho位への水酸基の導入の例はなし373)o 2ふarene oxide中間体生成の証明と同時にortho位への脱塩素水酸化成績体が初めて確認さ

れたことはM-lが2.3-arene oxide中間体由来の代謝物である可能性を強く示唆しているも

H3' uハ ハb uH 内b C H C -U

(A)

- 16 - - 17 -

7.7 7.6 7.5

PPH 7.4 7.3 7.2 7.1

C1 0CH3 Cl

l 一一一一ー/

C

E '

t

' a

a;-

-

--j

E -

i

z E '

j

8 (ppm)

Fig. 11 EI-MS and lH-NMR spec廿um of methylated derivetive of S-2c

E 一一一一一一一一一ーー一一一一一一一

; ご一一一ー一一一 一一一一-一一一一

コ|

(15)

のと思われる。 一方M-3のようなmeta位の monohydroxy体は同位体効果54)や合成訂ene oxideを用いた検討74)からarene oxide中間体由来であるとは考えられておらず、 第1節に記 したように直接水酸化反応により生成するとの考え方が支配的である54)0 M-lとM-2 はこれまで検討された全ての動物種でイヌのみに検出きれる代謝物であり、Table 1の結 果、 その合計は共通代謝物M-3の2倍強を占めることが明らかとなった。 本節で推察し たようにM-lも2,3-arene oxide中間体由来の代謝物であるならば、 イヌにおいては本中間 体の生成能力こそがPCB 153の体内消失に大きく寄与している可能性が高いと考えられる。

予想通りNIH-shift成績体であるM-2は5 mMのGSH添加によってその生成活性が著し く低下した。 一方、M-3の生成活性も低下したがその程度はM-2のそれに比べて大きく なく、M-3は主に非紅ene oxide中間体経由で生成している可能性が示唆された。 しかし ながらM- 1 については予想外に抑制の程度が小さく、 著者の推測とは矛盾する結果であった が、 これまでM-1のような脱塩素水酸化体について同様な検討がなされた例がないため、

この解釈には、 さらなる検討が必要である。 今後、 脱塩素水酸化反応機構の解明と共に解 決すべき点のーっと考えられる。

第4節 SH化合物を用いた反応機構の雄定 第5節 In Vivo代謝物の確認

前節において3種の代謝物のうち、M-lおよびM-2はいずれも2,3-arene oxide中間体由 来の代謝物であると仮定して論述してきた。 本節ではその仮定を検証するためにin vitro 反応系へのSH化合物添加の代謝物生成に及ぼす影響を検討した。 PCBの生体高分子へ の結合は種々のSH試薬添加によって減少することが知られている22)。 このことはPCBの 生体高分子への結合に反応性の高い代謝中間体が関与しており、 この中間体にSH等の求核 置換基が結合するために反応性が消失することを意味している。 従って臼的の水酸化代謝 物が arene oxide中間体を経由しているならば、SH試薬の添加によりその生成は低下する ことが予想される。 今回の検討では細胞内での濃度が高く、 酵素的および非酵素的に arene oxideに結合可能な還元型グルタチオン(GSH)を用いた。 その結果をTable 2に示す。

-1 弓ノ』

司3

M M

M

85.0:t 0.50 28.0士2.50 48.5 士2.00

56.5 ::t 2.50 *** (67) 8.00士0.50*** (28) 36.0 ::t 1.00本本 ( 74)

第2節においてイヌ肝ミクロソームにおける本PCBの3種の主代謝物を同定し、 第3節 においてはin vitro系で 2.3-arene oxide中間体由来と考えられる2種の代謝物の生成量が共 通代謝物の生成量を上回ることが明らかとなった。 しかし、in vitro代謝の結果が必ず しも常に生体内での代謝を反映しているとは限らない。 例えば、 今回行なったmVl廿o代 謝実験系ではグルクロン酸抱合など第2相反応は無視した系である。 そこでここではイヌ における本PCBのin vivo代謝を検討した。

PB前処理を行なったイヌ(8ヶ月齢、 体重8.0kg)にゼラチンカプセルに封入したPCB153 を100 mg/kg あて一回経口投与し、PCB投与日から5日間の糞 および尿を全量採取した。

分析の結果、 尿中からは遊離、 抱合型いずれの代謝物も検出されなかった。 一方糞中から はin vitroで同定された3種の代謝物が検出された。 その定量結果をTable 3に示す。

薬物代謝研究においてはしばしば見られることであるが、in vitro, in竹voの両系におい て、 得られた代謝物の構造は同じであるが、 その生成比は異なっていたO 即ち3種の代謝 物の内 in vitro系では常にM-1の生成活性が高かったのに対し、in vivo系ではM-1の生成 量は最も低く、 むしろM-2の生成量が多かった。 この事実は2,3-arene oxide中間体から の転移反応、が、 両実験系で異なるのか、M-lが生体内ではさらに代謝を受けるのか、あるい は何らかの理由で生体残留性を獲得して排准され難いのか等の原因が考えられるが、 本検討 Table 2 Inhibitory effect of glutathione on three metabolites formation

Metabolites

Metabolite formed (pmoVminlmg protein) Control GSH (5 rr由1)

Each �alu.e �epresents the Il!ean:t S.D. of three determinations,組d figure in P訂enthesis is percentage of control.

*本 , *** ; Significantly differnt from control, p<O .Ol, pく0.001, respectively

では明らかにできなかった。 しかしながらin vivoにおいても2,3- arene oxide中間体由来 と考えられるM-1とM-2の生成量の合計は、M-3の量を上回っており、 イヌにおいては2,3・

QU QJ

(16)

訂ene oxide中間体を生成する能力が、 PCB153の高排池をもたらしている可能性をさらに支

持していた。 Cl Cl

Cl

Cl Cl

Table 3 Excretion of unchanged PCB and three metabolites in feces of the dog Days after administration

Compounds Total

2 3 4 5

PCB153 N.D. 3 63 64 1.7 4.2 433

M-l N.D. 950 4 92 377 190 200 9

M-2 N.D. 1654 4350 192 9 1850 9783

M-3 N.D. 783 42 4 9 2578 110 1 8 9 11

Cl Cl 0 Cl

Cl Cl di陀ct insertion of

hydro巧'Lgro甲 2,3-3.1モne oxide intennediate

Values representμmol for unchanged HCB and pmol for metabolites N.D. ; not detected

Cl �/"

"〆〆

P Cl OH

R 'n iih--v N 、 、、 、 、、

re釘何?ment

、 、 、 、

Cl OH Cl

第6節 考察 Cl Cl Cl

Cl M -1 Cl

M- 2 Cl

M-3 Cl

本章ではイヌにおいてPCB153の代謝が速い理由を解明するべく、 イヌにおけるin vitro in vivo代謝実験を施行し、 3種の主代謝物の構造決定と反応機構の推定を行った。 その 結果興味深いことにイヌにおいてはPCB2,3-arene oxi de 中間体という極めて稀な中間体を 生成し得る能力があることが明らかとなった。 この中間体がこれまでの様々なPCBcon­

generと動物種を用いた数多くの代謝研究でも証明された例がなかったことは、 イヌにおけ るPCB代謝の特殊性を反映しているものと思われる。 Fig. 12にイヌにおいて推定され るPCB153 の代謝経路を示す。 このうち脱塩素水酸化代謝物 M-lが確かに2,3・arene oxide中間体由来であるか否かの疑問は先送りとなったが、 その可能性は否定できず以後は 本中間体由来であるとの仮定に基づいて論述する。 また、 M-3 に関しても今回の検討

からは一部紅ene oxide中間体由来である可能性も完全に否定することはできなかった。

仮に2ふarene oxide中間体生成反応とmeta位への直接水酸基導入反応という全く異なるメ カニズムで反応が進行する場合、 一般的にはそれぞれの反応を触媒する酵素があるものと考

(Two novel metabolites) (Common metabolite)

Fig. 12 Prop osed metabolic pathway of PCB 153 in dogs

えられている刊行)76)。 従ってこの疑問に対する解答はこれら反応を触媒するcyt ochrome

P450 の精製によって得られるものと考えられる(第V章参照)。

ところで次のTable 4に示すようにPCB153の代謝研究は1 972年のHutzingerらの研究 を皮切りに10 例程度行われ、 幾つかの代謝物が同定されている48-52)。 その内、 マス、 ハ トおよびヒト以外の動物種では僅かながら代謝が進行し、 それら動物種において3-hydroxy 体(今回の検討におけるM-3)は共通に生成される代謝物である。 しかしながら今回イヌ

で同定したM-lとM-2は検討された全ての動物種の中でイヌにしか検出きれない新規代謝 物であり、 共通代謝物M-3に対する相対生成活性やin vivo代謝における排池量から考えて も、 これら2種の代謝物の生成能力こそがイヌでの本PCBの体内消失の速さに貢献してい ることは疑う余地のないものと考えられる。

- 20 -

-ふつ臼

(17)

Table 4 Summary of the metabolites of PCB 153

Species

Sample

元ぬ�三

与野。

ずるOH

* ; % of the administered dose excreted during the first 7 days.

# ; % of the administered dose excreted in 90 days.

Nl

44

None

None ; no metabolite was detected, N.D. ; not detected, N.I. ; not identified

Dog liver Ms

feccs this study

島1-3

N.D

N.D

お1-2

N.D

N.D

恥1-1

Authentic compound

S-3a

S-3b

S-2a

S-2c

S-4b S-4a

S-l a

次章においてはイヌにおけるPCB 代謝の特殊性をさらに評価する目的でcongenerを換え てさらなる検討を行った。

- 22 -

第111章 イヌにおけるPCB155代謝反応機構の解明 第1節 概要

第II章でイヌにおいてPCB153は新規2,3-arene oxide中間体経由で主に 代謝されるこ とが排池の速い 理由である可能性を明らかにした。 この事実はイヌで本PCBの排池が 速いことを最初に見出し、 その理由として隣接した塩素未置換炭素がない場合のme臼位 水酸化が イヌでは他の動物種より 速いためではないかとするSipesらの考察とは全く異 なっていた。 Sipesらがこの考察に至った過程には数種のHCB isomers の排池速度の比 較を行った研究に因るところが大きい。 即ちピフェニル環の4箇所全てのmeta位が塩素 で置換されていない 2人6,2',4',6'-HCB

(PCB 155, Fig. 13 )のイヌでの排池速 度は、 2箇所の meta位が塩素置換さ れているPCB 153より大きく、 逆に 全てのmeta位が 塩素置換されている

2,3,5,2',3',5'-HCB (PCB 133)の排池速 度はPCB153に対して著しく小さ い問。

Cl Cl

Fig. 13 Structu re of 2,4,6,2',4',6'-HCB (PCB155)

仮に第II章で著者が見出した 2,3-arene oxide中間体生成が、 PCB155の代謝において も可能であるならば、 その代謝速度は理論的にはPCB153の2倍になるはずであり、 事 実 排池速度は約2倍であると報告されている77)。 しかしな がら同じイヌであっても PCB153の代謝で見出した反応機構がそのまま他のcongener の代謝に適用できるとは限 らない。 従って本章ではPCB 155のイヌでの代謝反応機構を明らかにし、 2,3- arene

oxide中間体生成がイヌにおいて一般的な反応であるか否かを明確にする試みを行った。

なお、 現在までにPCB 155の代謝はラットのみで検討されており 、 代 謝物としては直 接水酸化の成績体とされている 3-hydroxy体しか同定されていない幻)78)。

第2節 代謝物の同定

まず基質となるPCB155の合成を行った(実験の部1の1参照)。 合成したPCB 155

は融点、 uv、 massおよびlH-NMRスベクトルで構造を確認し、 純度が99 .8%以上であ ることを確認して実験に供した。 PCB 153と同様に PB処理イヌ肝ミクロソームを用

- 23 -

工富国圃圃圃圃園圃圃圃圃圃・・・・・E量田園圃圃圃圃圃圃圃圃圃圃圃圃園田直

(18)

いたin vitro代謝実験系で代謝実験 を行い、 GC-MS にて代謝物の検索を行った。

その結果、 少なくとも4種の代謝物が生成することが明らかとなった。 Fig. 14に検 出された4種の代謝物のメチル化体のEI-MSスベクトルを示す 。 メチル化体のシリカ

ゲルカラムからの溶出順にM-l --- M- 4と命名し、 以下構造決定を行った。

なり高い フラグメントイオンピークが認められること、 さら にメチル化体のlH-NMRス ペクトルにおいて methoxy 基が置換したフェニル環のプロトン(H5)の 化学シフトが低磁

場側に移動するといった2つの例外的特徴を有しており、 経験則と異なるため構造決定 には注意を要する79)。 メチル化体のlH-NMRスペクトルをFig. 15に示す。

Methyla ted M -1 388 (M) +

Cl Cl OCH;1 H3・& Hs・

11

Cl CI

H5・ Cl CJ Methylated M-2

354 (M+)

_- Hs

Q) 11

仁J

口吋 PU C 3

Methylated M-3 384 (M+)

..0 cu

... ω p〉-4

PPt1

1I

). ð

(Ij

,11,

,1,111"

"

1,1,1,1, 1111111,

,ノ 7 �

FQ- 『J

bm

,,,,,1'1 1'1111

11111" ,1111

"川II

WJ|

「川川|川中中判判�いM川州11川仙内11山向�ト. .ijLj

hぺ中恥川川|い十パJいJ11,心川1"

expandecl 仁己

Methyla句dM-4 388 (M+)

CHCI.3

150 190 230 270

mJz

310 350 390 8 (ppm)

Fig. 14 EI-MS spec甘aof methyl ated met abolies of PCB 1 55 for med wi th

liver ITÚc rosomes of dogs Fig. 15 JH-NMR spectrum of 3-methoxy-2,4ム2',4',6'-HCB

第1節に記したように本PCBの代謝物としてはラットにおいて唯一3-hyd roxy体が同 定されているのみである 。 そこでこの代謝物が今回検出された代謝物のいずれかに一

致するものと考え、 まずこの代謝物の合成から試みた(実験の部lの 2 反応F)。 本反 応、では理論上l種の 化合物しかできないため、 生成した化合物 ( S-l)を精製し機器分析に 供 した。 その結果メチル化体のマススベクトルお よびGCにおける t RはM-1のそれと 完全に一致しており、 M-1が3-hyd roxy 体であることが明らかとなった (機器データ参 照) 。 本化合物についてはこれまで機器データが報告されていなかったがpara位に 水 酸基が置換していないにも拘わらずメチル化体のマススベクトルにおいて[M+-15]にか

この例外的な化学シフトの妥当性は 1ム5-凶ch lorobenzeneと 2人6-凶ch loroani soleのlH­

NMRスベクトルの比較に よって確認された(データ未記載)。

次にM-2の構造はメチル化体のマススペクトルにおいて、 分子イオンピーク をm/z 3 54 に示し5塩素化体に 特徴的な 同位体ピークが認められることから、 脱塩素水酸化代謝物 であるものと予想された。 この代謝物の 場合水酸基の導入位置に有益な情報を提供す る特徴的なフラグメントイオンピークは全く見出されなかった。 ここで第II章で記 述したよう に脱塩素水酸化体がareneoxide中間体経由で生成すると仮定した場合、 理論 上Fig. 16に示す4種の脱塩素水酸化体の生成が可能である。

- 24ー つ臼 Fhd

一一一ー

ーーーー ! .� ーーーーーーーーーーーーーーーーョ

(19)

Fig. 16 Postulated pathways of M-2 formation via訂ene oxide intermediate

いて[M+-15Jのフラグメントイオンピークがほとんど認められない例外であった明。

最後にM-3の構造であるが、 メチル化体のマススベクトルにおいて、 分子イオンピー クを m/z 384 に示し5塩素化体に特徴的な同位体ピークが認められることから、

dihydroxy-PenCBであるものと推定された。 水酸基の置換位置に関しては[M七15Jに 比較的高いフラグメントイオンピークが認められるものの、 PCB155の代謝物において は経験則とことごとく反するので、 有益な情報であるとは考えられなかった。 そこで M-3はM-l あるいはM-2がさらに代謝された2次代謝物であろうと仮定し、 これらの 合成標品S-1およびS-2bを基質として肝ミクロソームで代謝実験を行った。 その結 果、 いずれの化合物を基質とした場合も速やかに代謝消失し、 メチル化およびシリル化 体のGCにおけるtRがM-3のそれと同じである1種の主代謝物を与えた。 得られた各 2次代謝物のメチル化体のマススベクトルおよびlH-NMRスベクトルをFig.17に示す。

一…

ω/ |\ボ

同〉? -o-

そこでこれら全ての化合物を合成した(実験の部1の2反応G, H)o S-2a -S-2dと 命名した化合物中唯一S-2bのメチル化体のGCにおけるほおよびマススベクトル(機器

データ参照)がM-2のそれと完全に一致した。 詳細な記述は避けるが、 S-2bの構造は メチル化体のlH-NMRスペクトルから 4-hydroxy-2ム2',4' ,6'-PenCBであることが明らかに なった(機器データ参照)。 この化合物はpara位に水酸基を有しているにも拘わらず、

メチル化体のマススペクトルにおいて[M+ー15Jのフラグメントイオンピークが全く認め られない例外であるので注意が必要である79)。

次にM-4の構造はメチル化体のマススベクトルにおいて、 分子イオンピークを m/z388 に示し6塩素化体に特徴的な同位体ピークが認められることから、 M-lと同様 monohy­

droxy-HCBであると考えられるが、 PCB155の場合完全な対称構造であるため、 塩素原 子の置換していない位置への水酸基導入はどれもM-lと同じ代謝物しか与えない。 従っ て M-4 の構造はNll-I-shiftによっていずれかの塩素が隣の炭素にシフトし、 移動した塩 素がもともと置換していた位置に水酸基が導入された代謝物であると考えられた。 こ の場合、 先の代謝物M-2の構造が3,4-arene oxide中間体由来の脱塩素水酸化代謝物S-2b (Fig. 16参照) であったことから、 M-4 の構造は同じ 3,4-arene oxide中間体由来の NIH­

shift体であると考えるのが道理にかなっている。 そこで予想、代謝物の合成を試みたと ころ、 理論通り2種の化合物が生成しS-4aおよびS-4bと命名した(実験の部1の2反 応1 )。 両者の内S-4bのメチル化体およびシリル化体のGCにおけるほおよびメチ ル化体のマススベクトルがM-4のそれと完全に一致した。 lH-NMRスベクトルからS-

4bの構造は 4-hydroxy-2,3ム2',4',6'-HCBであり、 先に推測した通り 3,4-arene oxide中間体 由来のNIH-shift成績体であることが明らかとなった。 なお、 この化合物についても M-2同様para位に水酸基を有しているにも拘わらず、 メチル化体のマススペクトルにお

190 230 270

rrJz 350

Ql にJ てコ ぷコ ro Q)

... ....,

� 150 Q)

Methyl derivative of further metabolite of M-2

Methyl dcrivative of further metabolite of M・l

384 (M+)

150 310 190 230 270

rrJz

310 350

pU qu

H

Ill-- ρiv にd

& H H qd

JH ナ CHC13

Hs トー

一一一一-^--一一一一一JL

7.5 7.3 7.1 ppm 7.5

expanded

expanded

dU

A

o (ppm)

Fig.17 EI-MS and lH-NMR spec位a of methylated derivatives of further metabolite of M-l (left) and M-2 (right)

ò (ppm)

非常に興味深いことに両者は完全に一致し、 M-3が M-l と M-2 の共通の2次代謝物 であることが明らかとなった。 従って両l次代謝物から生成可能であることとlH-NMR から2つの水酸基は片方の芳香環に置換していると考えられることを考慮するとM-3の 構造は必然的に3,4-dihydroxy-2ム2' ,4',6'-PenCBであると決定された79)。

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ーーー--EE--一ーーーーー ーーー-ーー

参照

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