九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
農耕地域地下水系の水質形成機構に関する研究
広城, 吉成
https://doi.org/10.11501/3135208
出版情報:Kyushu University, 1997, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元力ラ ム試験)
第1節 緒論
農耕地に施肥される肥料の主要構成成分は窒素、 リン、 カリウム、 カルシウム、 マグネシ ウムなどである。 これら各成分が水の浸透に伴って土壌表面から地下に移動する過程はそれ ぞれ異なる。 畑地に施肥される窒素の形態は主にアンモニア態窒素、 硝酸態窒素であるが、
アンモニア態窒素はそのほとんどが硝化されて硝酸態窒素に変わり土壌にほとんど吸着され ることなく移動する。 一方、 リン酸は土壌に強く保持されるため地下水水質に大きな影響を 及ぼさないが、 カリウムのような陽イオンは以前から土壌に吸着していたナトリウム、 カル シウム、 マグネシウムなどと陽イオン交換反応を起こし、 相互に影響を及ぼし合いながら地 下に浸透していく。 このような輸送現象を解明するためには、 多くの土壌や土壌物質のイオ ン交換選択性の測定を行い38)、溶質輸送モデルでイオン交換を考慮する必要がある39)、40)。
このような問題を扱った最近の研究で、 籾井ら4 1)は、 地下水中における複数の化学種の化 学的な相互作用を考慮した物質輸送モデルを提案し、 飽和カラム実験でその妥当性を確認し ている。
さて、 カリウムなどのような陽イオン交換を伴う物質が土壌に負荷された場合には、 他の 陽イオンとの聞の化学反応を考慮した地下水中で、の物質輸送モテ。ルの開発が必要となる。 多 成分化学反応過程を考慮した水理化学的物質輸送解析42) を行うためにはモデルを検証する 基礎的データが必要となるが、 現在のところ多くは2成分間のみのイオン交換モデルで、 し かも選択係数については一定値を与え解析している場合が多い。 近年、 Grantら43 )は、
要な化学的要因の1つである選択係数について、 Gapon、 Vanselow、 Gain es-Thomasの選 択係数の定義の違いによる陽イオン物質輸送の予測に及ぼす影響を評価しており、 Vanselow の選択係数が最もよく一致したとしているが、 App elo & Postma 4 4) は3種類の選択係数の うち、 どのタイプの選択係数を使用するのが適当であるかについては、 研究者自身の解析上 の便宜を考慮して選ぶべきであるとしている。
本章では、 まず基礎実験としてカリウムが畑地に施肥された場合に起こる陽イオンの交換 や挙動を把握するとともに、 陽イオン交換容量や選択係数を評価するために、 不撹乱土壌に よるカラム実験を行う。
円/臼にυ
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
次に、 不撹乱土壌カラム内における陽イオンの空間分布を把握し、 陽イオン交換容量の究 開分布特性および実験で得られた選択係数の評価を行い、 これらを考慮した陽イオン輸送の 数値モデルの妥当性を検討する。
さらに、 主要陰イオンの輸送特性についても検討を行う。 陰イオンのうちリン酸イオンは 層状ケイ酸塩鉱物や酸化物鉱物表面の水酸基に化学的に結合して不動化する傾向が強く、 地 下水水質への影響は無視できる3)。 硝酸イオン、 塩化物イオン、 硫酸イオンもpHが低い場合 にはリン酸イオンと同じ吸着部位へ 吸着され るが、 その程度ははるかに小さい。 特に塩化物 イオンと硝酸イオンは比較的 吸着性の高い硫酸イオンの共存下では、 土壌の種類を問わず実 質的に吸着されず、 非吸着性の溶質として取り扱うことができる45)、46)。
硫酸イオンは、 火山灰由来の比較的若い土壌には、 リン酸イオンにはおよばないものの相 当強く吸着されることが知られている。 火山灰由来の農耕地土壌での測定結果によれば、 土 壌中の硫酸イオンの50'"'"'90%が吸着態である45)。 ところが、 非火山灰性土壌では硫酸イオ
ン吸着能は火山灰由来の土壌と比較してはるかに低い45)、47)。
本章では、 陰イオンの物質輸送のモデル化において、 硫酸イオンの吸着の影響を明らかに する。 すなわち、 吸着の影響を受けにくい塩化物イオンや硝酸イオンに対し、 吸着する硫酸 イオンの輸送特性を把握するために、 肥料に含まれる主要な陰イオンであるこれら3成分を 混合した溶液を用い、 火山灰の影響のない実際の畑地から土壌を不撹乱状態で採取した土壌 カラムを用いて実験を行う。 次に、 これら陰イオンの土壌中における物質輸送モデルの解析 を行い、 カラム実験結果と解析モテ.ルの適合性について比較検討する。
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸返特性(鉛直l次元カラム試験) 第2節 花筒岩風化土壌における陽イオンの輸送特性
2. 1 不撹乱畑地土壌の採取方法
現実に起こ る水の浸透過程や陽イオン交換をより忠実に再現するために不撹乱土壌を用い てカラム実験を行った。 不撹乱土壌は図-4. 1 に示すS地点で採取した。 以下にその採取作
業手順を採取現場で撮影した写真、 図-4. 2 (a) '""-' (g) を用いて述べる。
図-4. 1に示すS地点はビニールハウスに挟まれた畑地 である (図-4. 2 (a))。 畑地の
部を深さ 約1m、 一辺50cm程度の矩形土柱塊になるように掘り (図-4. 2 (b))、 予め準備 しておいた塩化ビニール製の円筒(長さ5cm毎に切断し、 それらをビニールテープでつなぎ 長さ60cmにしたもので、内径は75m m )に挿入できるように丁寧に削り取り(図-4. 2 (c))、
土柱上部から徐々に差し込んだ(図-4. 2 (d)、(e))。 次に土壌からの水分蒸発を防ぎ土柱 と円筒聞の隙聞を埋めるため、 円筒上部から溶かしたパラフィンを流し込み(図-4. 2 (f))、
パラフィン が固化した時点(図-4. 2 (g)) で円筒底部の土壌を金属ヘラで切り取りビニー ル袋に入れて密封した。 この方法で長さ 60cmのカラム5本を採取した。 なお、 表-4. 1に は目視観察の結果から 、 カラム内の土壌は 上層部の畑地作土 (Top80社) と下部のマサ土
(Decom posed Granite 80il ; 8ubsoil) の2種類であるとし、 それらの土の土質特性 を示し ている。 さ らに、 畑地作土とマサ土の鉱物組成をX線回折によって調べた結果 、 畑地作 土と マサ土 は主として石英、 長石から なり、 次 いで、 パーミキュライト 、 雲母、 カオリン 鉱物の 順であった。 ま た、 図-4. 3には畑地作土とマサ土の粒径加積曲線を示す。 この図より、 5μ m以下の粘土成 分は畑地作土には約8%、 マサ土には約5%含まれており、 土質工学の三角座 標による土の分類法48)によれば、 両者ともシルト質砂に分類された。 採取した土壌の不飽 和特性についてはvan Genuchtenが提案した式3 6)を用いて不飽和特性値を決定した。 表
-4. 2 にその結果を示している。 なお、 水分移動に関し、 カラム実験 は飽和に近い状態で行 われたため土壌の不飽和特性を考慮しなかったが、 土壌中の不飽和領域を対象とする場合は、
表-4. 2に示した不飽和特性値を用いて水分移動の基礎式を解く必要がある。
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
Level Mountain
E
N可i
Scale w
。 200m
図-4.1 不撹乱土壌採取地点付近の概略図
Fhυ F」Ju
行'� 4市 イミ波乱畑地土壌'11の:l��イオンの輸j去特性(鉛11'( ] 次元カラム試験)
(a)
(b)
図-4.2 不撹乱土壊採取現場((a) , (b))
phu 戸」λu
、J''F'hv ,,I、
(d)
、1/白』fa‘、
(f)
図-4.2 不償乱土壊採取現場((c)
(g)
(g))
円ftにd
要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験) 不撹乱畑地
第4章
土の土質特性
Index Top Soil Subso i 1
Permeability (cm' S-I) 1. 59xIO-3 1. 55 x 10 3
LiQuid I imi t (児) 47. 9 43. 1
P 1 as t i c 1 i m i t (出) 35. 2 34. 9
Dens i ty (g. cm-3) 2. 690 2. 758
Water content (%) 33. 7 43. 2
Poros i ty (%) 53. 1 58. 8
表-4.1
-B-Top soil
t: l
+Subsoil
1:..;ト
100
80 1
60
40 1.
20
(ほ)∞口一凶凶吋仏ω∞SロωυHω円四
} , •• 、4ZEE-
Diameter (mm)
0.01 0.001 0
粒径加積曲線 図-4.3
不飽和特性値 表-4.2
m 、EFJn 、、‘,ノ、l•••••.
。=() r+( () s-() r)/{l +(α
kr:相対透ノk係
円は、‘pa,、、.a'''、ll n 、tpJ、、.,,,LU
。s:飽和l合ノk率、
I h I ) n } .m ] 2/ { 1 +α
Cw (h) = {α ・m . n ( () s-Ð r)・(a Ihl)mn}/{l+(α
8:体積合水率、
h: 圧 力水頭、
()r:残留合水率、数、Ow:比水分容量、 a, m, n 定数 I h I )n.I{1 +(α
kr(h)=[l-(a
Ð r=3.391), 0 s=48.5(Yo α=0.023 (cm-1), m=0.457, n=1.841,
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第4章 不撹乱畑地土壊中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
2. 2 室内カラム実験(陽イオン)
2. 2. 1 実験装置と実験方法
1つのカラムに対する実験装置の概略を図-4. 4に示す。 同一の畑地で採取した 5本のカ ラムとも深さ方向における土壌の物理化学的特性は必ずしも一様ではないが、 カラム内部に おける液相中の化学種の濃度および土壌に吸着された陽イオン濃度の空間分布を測定するた め、 以下に示す手順で実験を行った。
実験の際にはそれぞれ 5本のカラム(全長60cm)の上部2セグメント(10cm)と底部1 セグメント(5cm)を切り離して除き、 カラム全長を45cmの9セグメントとした。 次にカラ ム上面から純水を約41 ml' h-1の流量で滴下させ、 カラム底部からの流出流量が一定になる まで続け、 これが定常状態になった後、 KCl溶液(KCl・K濃度で約10000 mg'l-l)を同じ流 量で 5本のカラムに対してそれぞれ3、 5、 8、 15、 26 時間継続して滴下させた。 各滴下時間 が経過した後、 即座にカラム 9 セグメントを分割解体し、 ポリエチレン製の袋に各セグメン ト内の土壌の大部分を採取し化学分析に使用した。 また、 残りの土壌を用いて解体後の含水 比を測定した。 その結果を表ー4. 3に示す。
次に、 各カラム各セグメントの解体時に目視観察を行った。 カラム!では上部3 セグメン ト(15cm)までがマサ土に比べ黒色の畑地作土が卓越した状態、 以下 、 カラム2では2セグ メント(10cm)、 カラム3では3セグメント(15cm)、 カラム4では2セグメント(10cm) までがマサ土に比べて黒色の畑地作土が卓越した状態 、 またカラム5では全セグメントとも マサ土主体の土壌であった。 なお、 カラム 3 の実験終了後の解体時における各セグメントの 状況を図-4.5に示す。 この図より、 土柱と円筒聞の隙聞がパラフィンで充填されており、 浸 透水は十分に土壌中を流れたことがわかる。
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第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
75 mm
450rnm
図-4.4 1つのカラムに対する実験装置の概略図
表-4.3 カラム分割解体後の土壌含水比
S平止がコ:?
Colurnn-l Colurnn-2 Colurnn-3 Colurnn-4 Column-540.6 49.2 39. 2 41. 9 47.6 47.6 52.4 50. 0 48. 3 44. 2 52.8 46. 1 49.6 47.4 41. 8
4
52.3 45.0 48. 6 46. 3 41. 152.5 44. 2 47.3 42. 3 40. 9 52.5 45.2 48. 6 40. 3 39.7 42.8 45.6 45.5 39. 6 38. 9 42.5 44.4 43. 6 39.8 39.0 42.5 43.3 42. 2 40. 0 39.3
第4市 イミti日し畑地ヒ境中の主要イオンの愉送特性(鉛l宣l次/亡力ラム�A験)
3 - 1
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図-4.5 カラム3の実験終了後における各セグメント状況
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6 1-
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
2. 2. 2 分析方法
ポリエチレン製の袋に採取した 各セグメントの土壌の一部(150g程度)を用いて、 遠心分
離(使用機器:KUBOTA-KN-70、 最初の10分間は2000rpm、 その後の20分間は3000rpm) によりマトリックボテンシャルが-0. 31Mpa以上の上壌間隙氷を抽出し、 原子吸光法(使 用機器: Nippon Jarrell Ash AA・8500)により士壌間隙水中の陽イオン(Ca2+、 Mg2+、 Na+、
K+)濃度を測定した。 また、 塩化物イオンはイオンクロマトグラフィー(使用機器: DIONEX
QIC)で測定した。 次に、 遠心分離後の土壌を用いて、 吸着陽イオンは酢酸アンモニウム溶液 を用いた振とう浸出法49)により土壌の交換性陽イオン含量を測定し、 この方法 で得られた 交換性陽イオンの合計量を陽イオン 交換容量 (CEC)とした。 なお、 この方法は慣用のカラ ム法と同じ結果を与えることが示され ている。
2. 3 実験結果
2. 3. 1 液相中の塩化物イオン濃度
KCl溶液をそれぞれのカラムで3時間(カラム1 ) 、 5時間(カラム2)、 8時間(カラム3)、 15 時間(カラム4)、 26時間(カラム5)継続して滴下させたときの各カラム液相中の塩化物イオン の濃度分布を図-4. 6に 示す。 この図からKCl溶液滴下時間 が長くなるにつれて、 カラム底 部に向かつて 塩化物イオンが浸透しているようすがわかる。 この塩化物イオンの浸透状況か
ら、 今回用いた どのカラムにも大きな孔隙などはなかったと考えられる。
0 5
0 5 2 2
(Eυ)吉弘υQ 15
50 100
Concentration (meq'l・J)
300
図-4.6 塩化物イオン濃度の分布
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第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
2. 3. 2 液相中の陽イオン濃度
各滴下時間に対する陽イオンの濃度分布を図-4. 7 (a) '" (e)に示す。 これらによると K+の移動は塩化物イオンのそれに比べて遅れが生じていることが読み取れる。 これは、 K+が 陽イオン交換反応によって回相に保持されたために起こったもので、 はじめに固相に保持さ れていたNa+、 Mg2+、 Ca2+が高濃度のK+負荷により陽イオン交換し、 液相中に放出されたも のと考えられる。 また、 KCl溶液滴下時聞が長くなるにつれて、 Mg2+, Ca2+のピークがカラ ム底部へ移動しているが、 いずれの継続時間の場合も Na+の顕著なピークが認められないこ とから、 採取した土壌には交換性Na+があまり含まれていなかったと考えられる。
壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
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不撹乱畑地 第4章
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Concentration (meq. 1・') Column-3(8hours)
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150 200 250
Concentration (meq .1-')Column-5(26hours)
。
450
(e)
;夜相中の陽イオン濃度の分布 図-4.7
第4章 不撹乱畑地土壊中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
2. 3. 3 液相中における陰・陽イオンの当量濃度
各カラム各セグメントの液相中における陰イオンと陽イオン濃度の当量関係を図-4. 8に 示す。 ここでは塩化物イオン以外の陰イオンの濃度は極端に低かったので、 陰イオンは晦化 物イオンのみであるとした。 図中のOは塩化物イオン濃度、 Aは塩化物イオン濃度から陽イ オンCNa+、 K+, Mg2+, Ca2+)の合計濃度を差し引いてプロットしたものであり、 また横軸の 1"'9までの数字はカラムセグメント番号を表している。 この図から概ね陰イオンと陽イオン 聞の当量は等しいと判断できる。 なお、 当量のずれが大きい箇所も若干見られるが、 高濃度 の塩化物イオン、 カリウムイオンなどは希釈倍率を大きくして測定する必要があり、 分析測 定に起因する誤差によるものと考えられる。
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co附ntration(meq.r1)
 Cr-(Na++K++Mg2++Ca2+
図-4.8 液相中における陰・陽イオン濃度の当量関係
-65-
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
2. 3. 4 固椙上の陽イオン濃度
図-4. 9 (a) � (e)は、 KCl溶液滴下時間ごとのカラムセグメント内における固相上の
陽イオン濃度の分布を示している。 これらの図より KCl溶液滴下時間が長くなるにつれて、
当初回相に最も多く吸着されていたCa2+がK+に置き換わっており、 この系で生じている反応 が陽イオン交換によるものであるといえる。
また、 図-4. 10は各カラムの深さ方向における陽イオン交換容量(以下、 CEC)の分布 を示している。 土壌のCECは、 単位重量の土壌におけるlmol'1"1、 pH 7の酢酸アンモニウ ム溶液からのアンモニウム吸着量として定義されている5 0)。 この図から実験に用いた畑地土 壌のCECは、 深さ約20cmまでは5'""-20(meq' 100g-1)であり、20cm以深では3""'7(meq- 100g-1 )の値を示した。 深さ約20cmまでのCECは20cm以深のCECより値が大きく、 ぱ らつきの幅も大きい。 土壌の主なイオン交換・吸着体は粘土鉱物と腐植であり5 1 )、 今回実験 に用いた畑地土壌の表層部は黒色を呈していたことから、 カラム深さ約 20cm までの部分の 腐植含量が高かったことによると考えられる。
20 要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
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20 不撹乱畑地 第4章
(a)
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Column-5(26hours) 固相上の陽イオン濃度の分布
(e) 図-4.9
第4章 不撹乱畑地
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10
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要イオンの輸送特性(鉛l宣l次元カラム試験)
。column-1(T=3hrs) 寸column-2(T=5hrs)
...... ... ∞lumn-3同
... col umn -4(T = 15 hrs) t�olumn-5(T=26hrs)
8 10 12 14 16 1
Concentration (meq '100g-1) 図-4.10 陽イオン交換容量(CEC)の分布
2. 3. 5 選択係数
選択係数は固相と液相聞における陽イオンの分配の予測を行う上で重要なパラメータで、
実用的には固相表面に陽イオンどうしがどのように選択的に保持されるかを示す数値である。
以下に選択係数の算定手順を示す。
各カラム各セグメントにおける液相中でのNa+, K+, Mg2+, Ca2令濃度と陰イオン濃度を_r.1 (3. 18)に代入しイオン強度Iを求め、 式(3. 19)から活動度係数Gjを算定する。 このGj
と各陽イオン濃度との積をとると活動度が計算される。 次に、 カラム各セグメントの土壌に よる各陽イオンの吸着量で除すことにより土壌に吸着した陽イオンのモル分率を求める。 以 上のようにして得られた値をそれぞれ式(3. 15)、(3. 16)、(3. 17)に代入しVanselowの 選択係数を算定する。
なお、 今回の実験における選択係数は静的状態で測定されるパッチ試験の選択係数とは異 なり、 カラム実験を通して動 的な状態で測定された選択係数であるため、 本論文で得られた 選択係数は実動選択係数と呼ぶべき性格のものであることを断っておく。
各陽イオン(Na+, K+, Mg2+)を基準にしたCa2+の選択係数とそれぞれのモル分率との関 係を図-4. 11、 図-4. 12、 図-4. 13に示す。 なお、 図中の記号Oゃ・に付した数字はカラ ムーセグメント番号である。 ・は表層部、 Oは下層部(マサ上)の土壌に対する選択係数である。
なお、 図-4. 11"-'図-4. 13でカラムlにおけるそれぞれの選択係数については、 液相中で の陽イオン濃度が極端に低かったため記載を省略した。
-68-
不撹乱畑地土壌中の
第4章 要イオンの輸送特性(鉛 1次元カラム試験)
この実験で用いた上壊の 11に示すようにKVCafNaとNa+のモル分率との関係では、
図-4.
においても吸着 が低かったので、 KCl滴下時間に関わりなくどのカラムのどの位
Na+含
Na+のモル分率は0.08を超えることはなかった。 KVCaJNaは0.007---0.4の範囲に分布しNa+r及 部分の間の差も みられなかった。
また腐植に富む層位とマサ 着量との問に相関はなく、
の相対 の測定{I
つには濃度、 吸 KVCa/�aの値にこのような大きなばらつきがあるのは、
のみでなくその他の陽イオン 選択係数の値が Na+吸着
きかったことによるほか、
誤差が
の吸着量に復雑に依存していることによる可能性もある。
ここで同じモル分窄で比較すると、
12にKVCa/KとK+のモル分率との関係を示す。
図-4.
これはCa2+に対する選択性カマ 腐植に富む層位のKVCa/K値の方が明らかに大きい傾向がある。
壌有機物のCa2+に対する選択性が高いこと この傾向は 一般に
より高いことを意味するが、
から説明できる52)。 マサ土を主体とする部分では、K+のモル分率が0---0.5の範囲ではKVCa/K は比較的一定で0.001---0.01の範囲にあり、 それ以上で急に増加している。KVc泌がK+吸着
Ca-Kの2成分の 鉱物について、
量の変化に伴って大きく変化することは多くの土壌や粘
このよう イオン交換実験でも報告されている38)。 本論文では4種の陽イオンが共存するが、
しかもその変化はKVCa/Kの値が K+の の変化に伴って変化し、
な場合でもKVCalKがK+吸着
K+のモル分率のみの関数とし モル分率に対して指数関数的に増加する傾向があることから、
て近似できることを示唆している。
で0.15まで Mg2+のモル分率は最
1 3のKVCafMgとMg2+のモル分率との関係では、
図-4.
これに対してKVCafMgは1---2.5の範囲内の値をとっていて、 変動は非常に小 増加している。
この値は一般的に言われているKVCalMgの値である1.2に符合3)している。
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第4章
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KV Ca/MgとXMgの関係 図-4.13
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
2. 4 数値シミュレーションのための計算条件
ここでは、 陽イオンの室内カラム実験で得られた結果について考察し、 数値計算の際に必 要となる各種パラメータについて述べる。
2. 4. 1 陽イオン交換容量
図-4.14(a) � (e)には、 各カラムセグメント内における陽イオン交換容量(以下、 CEC) の分布を示している。 こ の図から実験に用いた畑地土壌のCECは、 カラム内深さ約20cmま では5'""20meq'100g.1、20cm以深では3'""7meq'100g-1の値をとることがわかる。深さ約20cm までのCECは20cm以深のCECより値が大きく、 ぱら つきの幅も大きい。 土壌の主なイオ ン交換・吸着体は粘士鉱物と腐植であり、 今回実験に用いた畑地土壊の表層部は黒色を呈し ていたことから、 CECが表層部で大きな 値をとるのはカラムの深さ約 20cm までの腐植合軍 が高いためと考えられる。
また、 表-4.4には、 表-4.1に示した土の炭素と窒素の含有率分析結果を示す。C/N原子 比が下層部のマサ土では25.1、 表層部の畑地作土では13.5であり、 c、 N含有率の絶対量は 畑地作土の方がマサ土に比べて大きく、 有機物含量が多いことがわかる。
以上の結果を踏まえ、 CEC は土壌に含まれる粘土鉱物や腐植の量などによってカラムごと に違った空間分布を示し、 計算に用いる際には個々のカラムに対してCECの分布を考える必 要がある。 図-4.14中にはそれぞれのカラムにおけるCECの分布の近似式を示しており、
計算するにあたってはこれらを採用した。
表-4.4 土の炭素と窒素の含有率
content(%)
C/N
C N
Top soil 1.39 0.12 13.5
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第4章 不撹乱畑地
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円ノ臼門It
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
2. 4. 2 選択係数
本章の2 . 3. 5で述べた選択係数はVanselowの選択係数である。 しかし、 ここでは数 値計算を実行する際、 固相上の陽イオン濃度を当量濃度で表現するため、Vanselowの選択係 数の定義で用いられているモル分率を当量分率で表現する。以下、選択係数(KGωTCa州斤川J匂aν、KGσ1九I KGT九Ca刷/Mg)とはGaむines-'I、homaωSの選択係数でで、ある。
図-4.15 (a) � (c) には、 K+を基準にしたCa2+の選択係数 (KGωTCa凶乃瓜)と K+の当量分率 (侶EKρ)との関係を示している。 なお、 カラム1 (実験関始後3時問後にカラムを分割したも の、 以後T=3 hと略記)におけるKGσ,τ九I
濃度を測定する際にも希釈倍率を高く設定したため、 濃度が極端に低くなったので記載して いない。 また、 KG1ムfNaやKG九州Eについてはそれぞれの当量分率の変化に対し変動が小さか ったので、 これらに関しては平均値(KGTCafNa二0.35、 KGT CalMg = 1. 6 )を数値計算に用いた。
前述のように KGTCa/KがK+吸着量の変化に伴って大きく変動することは、 Ca-Kの2成分の イオン交換実験に基づいた多くの土壌や粘土鉱物について報告されている38). 5 3)。 また、
KGTCa!KがK+の当量分率のみの関数であることを経験的に示した論文としてWada& Seki 54)
がある。 本実験では4種の陽イオンが共存するが、 この場合でもKG1ムIKが K+吸着量の変化 に伴って指数関数的に増加する傾向になっている。 従って、 K+の当量分率のみの関数として 近似できることを示唆している。
(a心)にはカラム2 (げT=5hω)におけるKG1九I
とカラム2 (作T=5hω)における数イ値直計算では、 この図に示した近似式を用いた。 (b)はカラム 3 (T=8h)とカラム4 (T=15h)のKGTC出とEKとの関係を示している。 これらは共に似た 変化を示したのでまとめて近似した。 また、 (c)はカラム5 (T=26h)のKGTCa/KとEKとの関 係を示しており、 計算するにあたっては図中の近似式を用いた。
第4章 不撹乱畑地土嬢中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
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図-4. 15 KG\a/KとEKの関係
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第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
2. 4. 3 縦方向分散定数
層状ケイ酸塩主体の土壌では、 塩化物イオンは土壌吸着などに対し不活性な陰イオンであ り、 塩化物イオンの輸送は水そのものの浸透過程を表すと考えてよい。 従って塩化物イオン の測定結果を利用して、 不撹乱土壌の分散定数を評価することができる。 表-4.5には、 各カ ラムで底部からの流出流量が定常状態になった時の断面平均流速を記している。 また、 縦方 向分散定数αLについては、 表-4.5 に示した各カラム毎の断面平均流速を実験終了後に測定 した体積合水率で除した実流速を与え、 各カラム内の塩化物イオン濃度の実測値と計算値の 差の二乗和が最小となるように求めた。 これらの値を用いて、 塩化物イオン濃度の実測値と 計算値を比較したものが図-4.16である。 KCl溶液滴下時間が長くなるにつれて、 カラム底 部に向かつて塩化物イオンが浸透しているのがわかる。 なお、 濃度の高い領域で塩化物イオ ン濃度の実測値にバラツキが見られるが、 高濃度の塩化物イオン測定の際、 高倍率の希釈を 要することから生じた分析測定誤差と考えられる。
数値シミュレーションを行う際には、 表-4.5に示した縦方向分散定数αLと実流速との積 で与えられる流速依存型の分散係数を用いている。
表-4.5縦方向分散定数
カラム番号 断面平均流速 縦方向分散定数
(cm・8.1) αL(cm)
カラム1 (T=3 h) 2.62X10-4 2. 5
カラム2 (T=5 h) 2.89 X 10-4 1.4
カラム3 (T=8 h) 2.75X10-4 2.8
カラム4 (T= 15 h) 2.86X10-4 2. 5 カラム5 (T=26 h) 2.97 x 10-4 3. 5
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第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
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図-4.16 塩化物イオン濃度の計算値と実測値の比較
2. 4. 4 初期濃度
各化学種の初期濃度は以下のように仮定した。 すなわち図-4.16のカラム2 (T=5h)での 塩化物イオンの分布からもわかるように、 カラム2では最下部のセグメントにまだKCl溶液 滴下の影響が現れていない。 そこで、精製水通水後の状態が確保されているとみなせるカラム
2 (T=5h)の最下部のセグメントにおける液相中の化学種の濃度と土壌に吸着している陽イ オン濃度の実測値を初期濃度として与えることにした。 それらを表-4.6に示す。
表-4.6 初期濃度
Liquid phase Solid phase
(meq '1-1) (meq'l∞g-I)
Ca2+=5.78 Ca2+=4. 17 Mg2+=
1.
83 Mg2+=O. 88Na+=O. 97 Na+=O. 33
K+=O.44 K+=O.36
円hU司It
第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験)
2. 5 数値計算の実行と結果
2. 5. , 数値計算の実行
第3章第4節で記述した方法により数値計算を行う。 計算領域は、 鉛直下方に45cm とし、
差分格子間隔1cm、 および安定条件を考慮して差分時間間隔300秒で行う。 また、 表-4.5
に示した断面平均流速、 縦方向分散定数をカラム1---カラム5についてそれぞれ使用した。
初期濃度については、 表-4.6に示した値をそれぞれのカラムの初期濃度とした。 陽イオン交 換容量は、 図-4.14 (a) ,_ (e)中に示した近似式をそれぞれのカラムに用いた。 選
択
係数のKG1ムlNaやK仁GσT九IムIMgについてはそれぞぞ、れの当量分率の変化に対し変動が小さかつたの で、
これらに関しては平均値(K仁G'τ九I
吸着量の増加に伴つて指数関数的に増大する傾向になつているため、 カラムlト、 2でで、は図一 4.1日5(a心)中の近似式、 カラム3、 4では(b)の近似式、 カラム5は(c)の近似式を用いた。
2. 5. 2 CECの空間分布を考慮した数値モデル適用結果
図-4.17 (a) '_ (e)には、KCl溶液の連続滴下時間(3時間、 5時間、 8時間、 15時間、
26時間)に対する陽イオンの濃度(実験結果と数値計算結果)分布を示している。 高濃度の KCl溶液の注入により、K+が固相吸着サイトに吸着し、 固相に保持されていたNa+ 、 Mg2+ 、 Ca2+ は高濃度のK+負荷により陽イオン交換し、 液相中に放出され、 時間の経過とともにそ の空間分布は下方に移動している。 なお、 (d)では、 実験値濃度のピークと数値計算による濃 度のピークと で大きな相違が見られ、 数値計算によってうまく再現することができなかった。
この相違の理由については、 濃度測定の際、 高濃度の陽イオンは希釈倍率を大きくして分析 測定する必要があるため、 それによって生じた分析誤差と考えられる。
次に、 図-4.18 (a) ,_ (e)には、KCI溶液の連続滴下時間(3時間、 5時間、 8時間、 15 時間、26時間)に対する固相上の陽イオンの濃度(実験結果と数値計算結果)分布を示して
いる。 これらの図より、 KCI 溶液滴下時間が長くなるにつれて、 当初、 固相に最も多く吸 されていたCa2+ がK+に置き換わっていることがわかる。 また、 本実験 で用いた畑地から採 取した花闘岩風化土壌には交換性Na+ があまり含まれていなかったことがわかる。 以上、 図 一4.17、 図-4.18とも(d)のケースを除き、 実験結果と数値計算結果とも概ね良好な一致をノハ しており、 本数値モデルが陽イオンの輸送解析に適用できることを示している。
要イオンの輸送特性(鉛直1次元カラム試験) 撹乱畑地土壌中の
第4章
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液相中の陽イオン濃度の計算値と実測値の比較 図-4.17
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第4章 不撹乱畑地土壌中の主要イオンの輸送特性(鉛直l次元カラム試験)
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図-4.18 国相上の陽イオン濃度の計算値と実測値の比較