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不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の 価格変動

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不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の 価格変動

著者 村田 大樹

雑誌名 同志社法學

巻 60

号 2

ページ 201‑245

発行年 2008‑07‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011427

(2)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇一同志社法学 六〇巻二号

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動

村 田 大 樹

  (六二五)

                                      

       

                                    

(3)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇二同志社法学 六〇巻二号

  (六二六)

第一章  問題の所在 一  考察の契機   本稿は、最高裁平成一九年三月八日判決民集六一巻二号四七九頁

の当物体に向けられていた不利返得返還請求権が価値賠償還 (決以下、平成一九年判と有言う)を契機として、 1)

た返し動変が格価の物的目還の初当に後たし化転に権求請 2

場合の返還額算定基準について考察するものである。価値賠償を発生させる場面はいくつか考えられるが、本稿では、さしあたって平成一九年判決のような返還目的物の売却後に価格が変動した事例を念頭に置く。価格変動を問題にする

という点で、局面としては不当利得法上の一特殊問題を成すにすぎないが、不当利得法の構造を考えるに当たっては興味深い題材を提供している。

  平成一九年判決の事案の概略は以下のとおりである。株式譲受人が株主名簿の書換えを失念したことにより、株式分割による新株式が名義株主に交付された。名義株主がこの新株式を売却した後に、実質株主である譲受人が、名義株主

に対して不当利得の返還を請求した。この請求の時点において当該株式の価格が売却時よりも下落していたため、現在の新株式の価額を返還すべきなのか、それとも売却代金相当額を返還すべきなのかが問題となった。一審および原審は、

現在(事実審の口頭弁論終結時)の株価相当額を返還すべきであるとした。

  最高裁は、原判決を破棄し、次のように述べて売却代金相当額を返還すべきであるとした。﹁受益者が法律上の原因

なく代替性のある物を利得し、その後これを第三者に売却処分した場合、その返還すべき利益を事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額であると解すると、その物の価格が売却後に下落したり、無価値になった

ときには、受益者は取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになるが、これは公平の見地に照らして相当

(4)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇三同志社法学 六〇巻二号 ではないというべきである。また、逆に同種・同等・同量の物の価格が売却後に高騰したときには、受益者は現に保持する利益を超える返還義務を負担することになるが、これも公平の見地に照らして相当ではなく、受けた利益を返還す

るという不当利得制度の本質に適合しない。﹂

  この判決の判断構造には不明な部分が多い。判決は、利得物の売却後の価格騰貴と価格低下の二つの局面を想定し、

いずれの場合にも公平の見地に照らして相当ではない結果になると述べている。この事案では株価が下落しているのであり、そのような事実関係との対応から言えば、結論を導く積極的根拠になっているのは、利得物の価格低下に関する

前半部分である。そこでは、受益者が売却代金の全部または一部の返還を免れることが、公平の見地に照らして相当ではないとされている。しかし、返還を免れることがなぜ公平でないのかという点について、その理由は示されていない

3

損失者の側から見れば、売却代金相当額の返還を受けるということは、原物の返還を受けていた(またはそもそも不当利得が生じなかった)と仮定した場合の状況よりも利益を得る結果になる。当然に公平であると結論づけることはでき

なかったはずである

。掛にするのでは、水け問論に陥ってしまう題を。をその結論部分だけ取かり上げて公平か否 4)

二  分析の視角

⑴  損失者の利益状況   損失者の利益状況という観点が平成一九年判決に見られないという点は、一審および原審と比べれば明らかである。 一審・原審は、株式が代替物であり市場で調達可能であることを根拠として、口頭弁論終結時における株式価格(すなわち調達価格)を返還すべきであると判断した。そこでは、明白に、実質株主の被った﹁損失﹂が問題にされた

か。つ 5)

ては、学説においても、受益者の得た財産増加と損失者の被った財産減少とが一致しない場合、不当利得の返還範囲は、

  (六二七)

(5)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇四同志社法学 六〇巻二号

受益者の利得と損失者の損失のいずれか小さな方を上限として画されると言われていた

。このような損失要件による返 6

還範囲の限定は、確かに、衡平説の時代においても必ずしも厳格には機能しておらず

そで能機なうよの失に的般一、は説損要件にはないと考えられているは 、学の時近るす用採を察考的型類 7)

一近成平、は方え考の時なうよのそ、しかし。 8

九年判決の事案のような場合までをも念頭に置いて主張されてきたわけではない。平成一九年判決の下級審が判断したように、返還目的物自体が損失者の手元に残っている状態を損失者側のあるべき状態(﹁損失﹂)であると考えるのであ

れば、それを上回る売却代金相当額が不当利得返還請求者に与えられることの根拠が、別途問われなければならないはずである。平成一九年判決の文面は、受益者に利益を残しておくべきではないとの価値判断が前面に押し出されている

ようにも読める。しかし、問題を上記のように捉えた場合には、その利益が損失者に帰属するだけの根拠をも示さなければ、均衡を失することになる。

  以上のような問題意識からは、返還目的物に価格変動が生じた場合の返還範囲を定めるにあたってどのような考慮要素が存在するのかを見ていく必要がある。

⑵  論理構造 要らお造構理論たし除整をれびそ、かほす示を素要慮よ不なけ必くいてしにから明をづ当置位るけおに体全法得利考的   ﹁一案事なうよの決判年九成﹁平、め含を題問の﹂失で損体う具るうりあ、はにめた行平を断判いなしと拠根を﹂公 がある。その意味では、平成一九年判決の一審・原審の判断構造――株式の代替性に着目し、市場での調達が可能であることから、口頭弁論終結時の価額の返還を指示する――は、論理としては一貫していると評価できる

。それに対して 9

最高裁の論理構造は、上で見たように必ずしも明らかではない。最高裁が検討の俎上に載せなかった反対説も存在して

  (六二八)

(6)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇五同志社法学 六〇巻二号 おり、それらを精査することなく、ただ大上段に公平を語るだけでは、不当利得法の論理構造上の発展は望めない。種々の見解を整理し、より精緻な論理を確立していく必要があるだろう。

⑶  本稿の目的と構成   上述した二つの観点から、本稿は、現在の日本の学説を含めてありうる理論枠組みを示し、その中でどのような考慮要素が働いているのかを検討することを目的とする。学説において、本稿で扱う問題についての十分な議論の蓄積はな

い。いくつかの見解は示されているものの、相互の関係を整理し不当利得法の規範構造全体の中に位置づける作業は不足している。検討の素材としては、ドイツ不当利得法における同種の議論を用いる。ドイツ法には本稿で扱う問題につ

いて一定の議論が蓄積されており、ドイツ不当利得法自体が日本法へ与えてきた影響も強い。このドイツ法の議論を紹介することも、本稿にとって副次的な目的となる。

  以下では、まず日本法の状況を概観して問題と現状を指摘し(第二章)、続いて現在のドイツの学説が形成されるまでの背景となっている議論展開を踏まえて(第三章)、そこから現在のドイツの学説による状況を整理したうえで(第

四章)、問題解決の方向性を示唆したい(第五章)。

0720)、 )、)、)( )、 )、)、 1)、) 

  (六二九)

(7)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇六同志社法学 六〇巻二号 )、vol.2)、﹂﹃﹄()、稿)。

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chösterreichisem und deutschem19 R.3419., Shtec er L don vreehgl.Dg, urilb WVng uieereich acecngruhe n Bengtrtifehter 4) 

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  (六三〇)

(8)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇七同志社法学 六〇巻二号 、﹃、﹃。﹂

9) 調

第二章  日本法の現状 一  序  論   まず、不当利得返還範囲の確定構造を粗略ではあるが確認しておく。一般に、判例においても学説においても、不当利得の返還義務は原物返還が原則であり、それが不可能な場合には価値賠償によるものとされている

。原物返還の可否 10

については、特に返還目的物が代替物である場合に受益者の調達義務の有無が問題となる。大審院時代には調達義務を

認めた判決があったが

こあ、学説の多くはりれに否定的で 11

審大にるれさ更変が例判院たのっこはで決判年九一成平、至 12

観か値等に即して算定するの、場それとも受益者自身の主価市はな値賠償義務との関係で、賠償すべき価値を客観的価 。 13

的な価値に即して算定するのかという問題が生じる

い、押の得利﹁るゆわけは付ていつに得利出支。し 14

っ利それ以外の給付利得・侵害得がに関しては、客観的価値によ、る観価めに受益者の主れな的値礎か置がに基の定算 ﹂たるす避回を 15

て算定すべきであるとされる

16

  (六三一)

(9)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇八同志社法学 六〇巻二号

  以上のような構造においては、この﹁価値﹂を算定する基準時が問題となりうる。四宮和夫博士によれば、﹁この問 題は、わが国では、受益物を転売した場合は、目的物の客観的価格について不当利得返還義務が成立するかを問題とする際に、その客観的価格を評価する基準時の問題として

義で還返は﹂値価﹁るれさ定算ここ、おな。たきてれらじ論﹂ 17

務を終局的に確定するものではない。最終的な返還義務は、受益者の善意・悪意に応じて、さらに増減する余地を残している。しかし、これは別の問題である。

  本章では、上記の構造を基礎にして学説を検討し、その後に判例理論との比較を試みる。 二  学  説⑴  損失者の仮定的状態を基準とする見解――谷口説

  まず、平成一九年判決と異なる立場をとる見解として、谷口説を取り上げる。谷口知平博士は、まず、損失者が自己の意思に基づいて原物を引き渡した場合とそうでない場合を分けて扱う。自己の意思に基づいて引き渡した場合には、

不当利得返還の請求時までは損失者はその財産を処分することを考えていなかったはずであるため、返還請求時の原物の客観的価値が返還額となる。このとき、請求時の客観的価格よりも売却額の方が大きい場合に差額が受益者に残るこ

とについては、﹁多少問題﹂であるとしながらも、受益者の手腕や特別の取引関係に基づくものと解してこれを肯定する。次に、自己の意思で引き渡したのではない場合には、損失者が常に処分しえたのを妨げられていたと言えることから、

返還額を返還請求時の額に固定することは﹁価額が上下した場合には時に酷であることもある﹂として、返還請求時まで受益者が占有していた間の客観的価値の中で最高額を請求できるとする。もっとも、いずれの場合にも、売却額が客

観的価値を下回るときには、売却額の返還を請求できるにとどまる

18

  (六三二)

(10)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二〇九同志社法学 六〇巻二号   谷口説は、算定基準時の問題と同時に売却額と客観的価値とに差がある場合の差額の帰属の問題を考慮に入れているため、やや複雑である。売却額と客観的価値が一致することを前提として整理すると、結論としては次のようになる。

まず自己の意思に基づく引渡しの場合は、売却時から請求時までの原物の価格が上昇した場合以外は請求時の価格相当額が返還額となり(上昇時は売却代金相当額が上限となる)、自己の意思に基づかない引渡しの場合は、常に売却代金

相当額が返還額となる。ここでは、不当利得がなければ損失者が置かれていたはずの仮定的状態をつくりだすことを基本線として、かつ、受益者の利得を返還の上限とするという二段階の評価が行われている。

⑵  取得時の価格を基準とする見解①――我妻説   それに対して谷口説以外のには、不当利得がなければ損失者が置かれていたはずの仮定的状態をつくりだすという視点は見られない。我妻栄博士は、まず、受益者が利得物を﹁消費﹂した場合の価格算定の基準時について次のように述

べる。﹁原物が残存すれば原物を返還すべきであることからいうと、返還する時の原物の相当価格、消費して原物返還が不能となった時の相当価格なども考えられる﹂が、そうではなく﹁取得した時の時価(客観的価格)を返還すべきこ

とを出発点とし﹂、﹁返還すべき時における目的物の価格の高低などは、返還すべき範囲を増減するファクターとして斟

酌することが適当﹂である

Bあし得取、がB、﹁てっで時﹂きべす解と額るすたの相き――は額差のそ、はと時たし売転く高りよ価当に価時の時 場︹、﹁もていつに合請た返売転、でえうのし求還益たし得取が︺者受。︹B、は囲範︺のそ 19

の才能の結実として――Bの利益に帰し、取得した時の時価より廉く転売したときは、その不足額は――Bは自分の財産の管理を誤ったものとして――Bの不利益に帰する

﹂。 20

  基準時を取得時に置く理由については、消費の場面での記述において、﹁そうすることが、不当利得返還請求権の成

  (六三三)

(11)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二一〇同志社法学 六〇巻二号

否及びその内容を決定するに当って、利得者の利得物についての管理・利用、不当利得の原因たる事実についての両当

事者の関与の大小・態様などを考慮して公平の原則に従って判断しようとするのに適当だから﹂との考えが示されている

両、るれさ酌斟が等様態の者事当うに言様同、もていつに合場の売転。と 21

時説準基定算ていおに妻吾、てっがたし。 22

はあくまで最終的には返還額を決するための出発点にすぎないのだが、取得時から売却時までに生じた返還目的物の価格変動の影響については受益者に帰属させる立場である。

⑶  取得時の価格を基準とする見解②――四宮説   四宮博士によれば、まず、利得物が売却された場合、﹁︹返還すべき客観的価格の︺評価基準時を(α)不当利得成立時と(β)価格償還義務発生時のいずれによるべきか﹂が問題になる。そして不当利得成立時を評価の基準とすべきで あるとし、その理由を、﹁価格償還は﹃受ケタル利益﹄の返還に代わるものだから

を、原、は説宮四て返し対にのるせ物還還務係関な的法の義義還償値価と務さ返者とを態様を根拠のし取得時の価格て るいう点に求め説。我妻が受益﹂と 23

自説の根拠としている。しかし、次の藤原説を見ると、この立場が必然であるかは疑わしい。

⑷  価値賠償義務発生時の価格を基準とする見解――藤原説   藤原正則教授は、給付利得と侵害利得については売却時すなわち価値賠償義務の発生時の価値を基準とすべきである

とする。給付利得に関して、次のように述べる。﹁不当利得が発生したのが給付時だという点を重視すれば、算定基準時は給付による利得移動時﹂であり、﹁反対に、原物返還が可能な時点までは利得債権者はその価値を保有していたと

考えると、価値賠償が成立した時が算定の基準時﹂になる。両見解の分岐点は、﹁有体物が給付されたときに、価値賠

  (六三四)

(12)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二一一同志社法学 六〇巻二号 償義務の発生までの物の価格の上昇・下落が給付者・受領者のいずれに帰属すべきかという評価﹂の点にある。﹁価値賠償を原物返還の効果にできる限り近いものとしようと考えるなら、それまでは原物返還が可能であったのだから、価 値賠償義務の発生時点が算定の基準時とさるべきであろう

侵、﹁できべす解と時害うはろてし関に得利害侵﹂。あ 24

発捉価値賠償とをパラレルにえ還るからこそ価値賠償義務のと返は物るが、それ以上の記述見られない。ここでは、原 ﹂すと 25

生時が算定の基準時になると考えられている。なお、費用利得については、﹁利得移動時からではなく、物の所有者が物を回復するか、物の価値上昇から利益を受けた時が、利得の算定の基準時になる﹂とのドイツ法の立場を支持する

26

⑸  整理と分析   まず、取得時を出発点としてその後に生じた諸要素を加味するという我妻説の枠組み自体は、算定の基準時の問題を決するにあたっては実質的な意味をもたない。なぜなら、我妻説の枠組みに立っても、その後の評価において藤原説の

ような立場を支持するならば、結果的に売却時を算定の基準時に置いたのと同じことになるからである。したがって、藤原説・我妻説・四宮説の各見解を比較するために重要になるのは、我妻説に即して言えば﹁返還すべき範囲を増減す

るファクター﹂をどのように考えるかであり、藤原説に即して言えば﹁価値賠償義務の発生までの物の価格の上昇・下

落が給付者・受領者のいずれに帰属すべきかという評価﹂に求められる。

  我妻説は、当初の返還目的物を取得した時点からその売却時(返還不能時・価値返還義務発生時)までに生じた価格

変動の影響を受益者に帰属させる理由として、受益者の財産管理上のリスクを持ち出している。そこでは、価格変動によって生じた差額は、価格上昇の場合には受益者の手腕であり、価格低下の場合には管理の失敗と評価されている。し

かし、そのような評価には疑問がある。前者については、まず価格変動自体は受益者自身の能力によるものではないし、

  (六三五)

(13)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二一二同志社法学 六〇巻二号

仮に価格の高い時点で売り抜けたことを手腕と評価するのだとしても、売却時以後も価格が上昇し続けた場合等を考え

ると、取得時から売却時までの価格上昇分をもって受益者の手腕の価値と評価できるのかという疑問が生じる(この疑問は谷口説にも当てはまる)。また後者についても、廉売したのではなくその時点での客観的価格で売却した場合に、

自己の財産の管理の失敗と評価することは無理があるように思われる(場合によっては、価格が下落し続けている状態でそのまま所持し続けていれば更なる損害を被りかねない)。このように考えると、たとえ算定の出発点を取得時に置

いたとしても、その後の価格変動のリスクを受益者に負担させる理由は我妻説には見出しがたい。

  それに対して四宮説では、価格低下の場合の評価が我妻説と異なる。四宮説では、善意の受益者は、代位物(これに は客観的価値を上回らない範囲での売得金も含まれる)が客観的価値を下回る場合であってもこれを返還すれば足りるからである

取方のと同じになる。他でし、価格上昇の場合にはたとし時の場合には、結果とて。売却時を算定の基準こ 27

得時が算定の基準時となるが、価値上昇分を受益者に与える理由を受益者の手腕とは考えていない。もっとも、取得時以後の価格変動を受益者に帰属させる理由が明確に述べられているわけでもない。四宮説と藤原説は、上述の通りいず

れも原物返還と価値賠償の関係を根拠にしているが、その結論は異なっている。

  以上のような構造の中での谷口説の位置づけは、次のようなものとなる。谷口説は、不当利得がなかった場合の損失

者の仮定的状態を考察の起点とした。そこでは、第一章で問題提起した損失者側の利益取得根拠が明白なかたちで考慮されている。我妻説・四宮説・藤原説には、この考慮に対する決定的な反論は見出せない。我妻説は、不当利得成立時

以後の諸要素を加味するために取得時説をとるが、この枠組みの中で谷口説のような評価を考慮要素として採用することは不可能ではない。また、藤原説の言う、取得時から売却時までの価格変動が受益者・損失者のいずれに帰属するか

という問題と、売却後の原物の価格変動が両当事者にとってどのような意味をもつのかという問題は別に考えることが

  (六三六)

(14)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二一三同志社法学 六〇巻二号 できる。したがって、これまでの日本法の議論では、判例も含めて、谷口説(そして平成一九年判決の下級審のような考え方)に対して十分な回答は与えられていないのである。

三  判例理論との比較

⑴  大審院昭和一一年六月三〇日判決   平成一九年判決以前で価値算定の基準時が問題となった判決としては、大審院昭和一一年六月三〇日判決全集三輯七

号一七頁がある。裁判上の和解に基づく代物弁済として、債務者所有の甲不動産が債権者に譲渡されることになっていた。ところが、債務者の後見人の錯誤により、別の乙不動産の所有権移転登記がされ、さらにこれが債権者から第三者

に売却されそこで登記も完了した。債務者は債権者に対して価値賠償の形式で不当利得の返還を主張したが、その後、乙不動産の価格が上昇したため、不当利得の成否のほか、その価格上昇分が返還額の範囲に含まれるかが争われた。大

審院は、不当利得の成立を認めたうえで、返還の範囲について、民法七〇三条が﹁利益の存する限度に於て﹂返還義務を負うと規定していることを根拠に、﹁其の受けたる利益の限度は特別の事情なき限り其の不動産の売却代金なりと謂

ふべく其の後の不動産の価額の昂低に因り左右せらるべきものに非ず﹂と判示した

28

  ここでは、売却によって受益者の﹁利益の存する限度 00﹂が確定することから、その後の返還目的物の価格上昇は返還義務の範囲に影響を及ぼさないとの判断がされている。

⑵  最高裁平成一九年三月八日判決   そして第一章で既に紹介した平成一九年判決において、上記大審院判決の射程が及ばない局面についても判例が積み

  (六三七)

(15)

不当利得法における価値賠償請求権と返還目的物の価格変動二一四同志社法学 六〇巻二号

重なることとなった。すなわち、売却後に返還目的物の価格が低下した場合である。このような場合には、大審院判決

が示した理論は当てはまらない。平成一九年判決は、﹁取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになること﹂が公平の見地に照らして相当ではないと考え、価格が下落している場合にも、結果として売却代金相当額の返還を

命じた。この論拠が十分でないと考える点については、既に述べたとおりである。

⑶  分析と比較   以上の二つの最上級審判決から、返還目的物が売却されて返還不能となった事案については、現在、次のような判例

理論が確立していることになる。①売却後に返還目的物の価格が上昇した場合には、民法七〇三条の定める﹁利益の存する限度﹂の要件により、売得金相当額以上には返還義務は及ばない。②価格が低下した場合であっても、売得金の返

還を免れてしまうことは公平ではなく、売得金相当額を返還しなければならない。もっとも、どちらの判決文にも、﹁特別の事情なき限り﹂、﹁原則として

重て公平を基準とし事所案ごとの処理をは判現裁いった留保表が﹂置かれている。と 29

視する傾向にあるため、上記の整理が具体的事案との対応を超えて完全に一般化可能な判例理論であるとまでは言えない。ただ、現段階では、相対的には藤原説に近い立場であると言える。

)、 10)、) 

8

11) 

  (六三八)

参照

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