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『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(1) : 穀物類・豆類を対象に

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(1)

『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(1) : 穀物類・豆類を対象に

著者 松森 智彦

雑誌名 文化情報学

巻 11

号 2

ページ 75‑83

発行年 2016‑03‑31

権利 同志社大学文化情報学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014725

(2)

1. はじめに

 『斐太後風土記』とは明治六年に完成した岐阜 県飛騨地方の物産誌である。この資料には飛騨地 方の3郡25郷415村落について、人口、戸数等 と共に、生産物の構成と収量が記載されている。

筆者はこれまでの研究において産物の構成を主に 分析してきた(松森2013)。本稿では次の研究段 階として、産物の生産量と地理分布、そして人口 との関係を調べていく。『斐太後風土記』に記載 されている諸産物は、同一の産物であっても、ア

ユ・鮎・年魚のような表記ゆれを持つ。この表記 ゆれを整理した後の産物数は381品目である。こ れらの記載頻度を郡ごとに集計し、103村以上に 記載があるものを図1に示した。ただし「木の実」

は栃・楢・栗をまとめている。図の30品目のう ち、食用とみなせる産物は22品目である。内訳 は穀物類が6、豆類が2、種実類が6、魚類が2、

鳥類が2、果実類が4種類である。過半数の村落

に記載があるのは穀物類、豆類、種実類の3類 11品目であり、上位7品目は穀物類と豆類である。

本稿では農作物であるこれら穀物類と豆類に注目 Journal of Culture and Information Science, 11(2), 75-83, (March 2016)

研究論文

『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(1)

―穀物類・豆類を対象に―

松森 智彦

 『斐太後風土記』とは明治六年に完成した岐阜県飛騨地方の物産誌である。この資料には飛騨地方の3 25415村落について、人口、戸数等と共に、生産物の構成と収量が記載されている。本稿では、記 載頻度・生産量ともに高く、主要な穀物類・豆類である9品目を対象に、その生産量と地理分布、そし て人口との関係について調べた。結果、次の事が示された。①米と稗が主食料であり、地域により大麦 もしくは粟・蕎麦などがそれを補った。②加工品となる大豆は換金作物であり、小麦もそれに準じた。

③小豆とキビの生産量は少なく、飯の増量材とは考えにくい。何か特定の目的や理由により生産された。

図 1 産物の記載頻度(404 ~ 103 村)

研究論文

『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(1)

―穀物類・豆類を対象に―

松森 智彦

『斐太後風土記』とは明治六年に完成した岐阜県飛騨地方の物産誌である。この資料には飛騨地方の 3 郡 25 郷 415 村落について、人口、戸数等と共に、生産物の構成と収量が記載されている。本稿では、記載頻度・

生産量ともに高く、主要な穀物類・豆類 9 品目を対象に、その生産量と地理分布、そして人口との関係につ いて調べた。結果、次の事が示された。①米と稗が主食量であり、地域により大麦もしくは粟・蕎麦などが それを補った。②加工品となる大豆は換金作物であり、小麦もそれに準じた。③小豆とキビの生産量は少な く、飯の増量材とは考えにくい。何か特定の目的や理由により生産された。

1. はじめに

『 斐 太 後 風 土 記 』 と は 明 治 六 年 に 完 成 し た 岐 阜 県 飛 騨 地 方 の 物 産 誌 で あ る 。 こ の 資 料 に は 飛 騨 地 方 の 325415村 落 に つ い て 、 人 口 、 戸 数 等 と 共 に 、 生 産 物 の 構 成 と 収 量 が 記 載 さ れ て い る 。 筆 者 は こ れ ま で の 研 究 に お い て 産 物 の 構 成 を 主 に 分 析 し て き た( 松 森2013)。本 稿 で は 次 の 研 究 段 階 と し て 、 産 物 の 生 産 量 と 地 理 分 布 、 そ し て 人 口 と の 関 係 を 調 べ て い く 。 『 斐 太 後 風 土 記 』 に 記 載 さ れ て い る 諸 産 物 は 、 同 一 の 産 物 で あ っ て も 、 ア ユ ・ 鮎 ・ 年 魚 の よ う な 表 記 ゆ れ を 持 つ 。 こ の 表 記 ゆ れ を 整 理 し た 後 の 産 物 数 は 381品 目 で あ る 。こ れ ら の 記 載 頻 度 を 郡 ご と に 集 計 し 、103村 以 上 に 記 載 が あ る も の を 図 1 に 示 し た 。た だ し「 木 の 実 」 は 栃 ・ 楢 ・ 栗 を ま と め て い る 。 図 の30品 目 の う ち 、 食 用 と み な せ る 産 物 は22品 目 で あ る 。 内 訳

は 穀 物 類 が6、 豆 類 が 2、 種 実 類 が 6、 魚 類 が2 鳥 類 が2、 果 実 類 が4種 類 で あ る 。 過 半 数 の 村 落 に 記 載 が あ る の は 穀 物 類 、豆 類 、種 実 類 の311 品 目 で あ り 、 上 位7品 目 は 穀 物 類 と 豆 類 で あ る 。 本 稿 で は 農 作 物 で あ る こ れ ら 穀 物 類 と 豆 類 に 注 目 し 、そ の 生 産 量 と 地 理 的 分 布 に つ い て 考 察 を 行 う 。

2. 産物の生産量と人口

ま ず 、 記 載 頻 度 の 高 い 産 物 に つ い て 、 そ の 収 量 を 集 計 す る 。 図 1 に お い て 過 半 数 の 村 落 に 産 物 記 載 の あ る15品 目 の う ち 、 食 用 と み な せ る 産 物 の 生 産 量 を 集 計 し た ( 図 2 ) 。 た だ し 、 栗 の 記 載 の 7割 は 収 量 不 明 で あ る た め 除 外 し 、 栗 ・ 栃 ・ 楢 を 併 合 し た 「 木 の 実 」 の み 示 し た 。 そ の た め 図 に は 穀 物 類6、 豆 類2、 種 実 類 2種 類 を 示 し て い る 。 棒 グ ラ フ に 収 量 の 合 計 ( 石 ) を 、 折 れ 線 グ ラ フ に

図 1 .産 物 の 記 載 頻 度(404103村 )

(3)

76 Journal of Culture and Information Science March 2016

し、その生産量と地理的分布について考察を行う。

2. 産物の生産量と人口

 まず、記載頻度の高い産物について、その収量 を集計する。図1において過半数の村落に産物記 載のある15品目のうち、食用とみなせる産物の 生産量を集計した(図2)。ただし、栗の記載の 7割は収量不明であるため除外し、栗・栃・楢を 併合した「木の実」のみ示した。そのため図には

穀物類6、豆類2、種実類2種類を示している。

棒グラフに収量の合計(石)を、折れ線グラフに 収量記載の頻度(収量の欠落を除いた件数)を示 している。図中の10品目の合計は約10 万石で ある。そのうち米が5万石、稗が3万石、大麦が 1万石であり、この3品目でおよそ9割を占めて いる。これらが主要な穀物であったことが分かる。

次いで大豆、小麦、蕎麦、粟が多く、3品目を併 合した「木の実」が続く。残りの小豆と荏は500 石強と、粟の3分の1程度である。収量の記載 頻度については、木の実のみ3 割程度と低くなっ ている。これを除く産物は9 割以上と、ほぼ全て に収量記載があることが分かる。

 『 斐 太 後 風 土 記 』 に 記 載 さ れ て い る 人 口 は

92,081人である。図2とこの人口から分かるこ

とは、「飛騨の人々は米を主に食べていた」とい うことである。『斐太後風土記』の記載の中で、

図1には記載頻度の高いものを、図2には収量 を示している。当時の飛騨の人々の主エネルギー 源となりうる産物は、図2に含まれており1、そ の総量は約10 万石である。このうち最大の収量

を占める米5 万石が欠ければ、飛騨の9 万人の 人口を支えることはできない2。村落、地域ごと の偏りはあるにせよ、飛騨全域で考えた場合、人々 は米を主に食べていたと考えるのが自然である。

その割合は、図2に示される通りである。

 もう一つ判明することは、木の実は食料として はそれほど大きな位置を占めていなかったという 事である。木の実、ここでは栃、栗、楢を合わせ たものであるが、木の実の収量合計は1251.64石 である。木の実は254村において記載があるが、

数量が判明しているのは76村(29.9%)である。

これらの村をもって全体の収量を推測すると、

1251.64*254/76=4183石である。この収量は、大 豆より少なく、大麦の半分以下である。これは飛 騨の人口に対して4.8%の食料を補っており、こ れは決して小さな数字ではないが、やはり飛騨地 方の人々の多くは、主に穀物を食べていたと言え る。ただし、これは飛騨全域での傾向であり、特 定地域・村落において木の実が食料として重要な 位置を占めていた可能性はある。これについては、

別稿にて考察したい。

 『斐太後風土記』記載の穀物類・豆類は14種 類ある。これらの記載頻度と生産量を図3に示す。

ただしY軸の生産量は対数目盛りとする。本稿 では、図中において記載頻度・生産量ともに比較 図 2 主要な産物の収量と収量記載の頻度

収 量 記 載 の 頻 度 ( 収 量 の 欠 落 を 除 い た 件 数 ) を 示 し て い る 。図 中 の10品 目 の 合 計 は 約 10万 石 で あ る 。 そ の う ち 米 が5万 石 、 稗 が3万 石 、 大 麦 が 1 万 石 で あ り 、こ の3品 目 で お よ そ 9割 を 占 め て い る 。 こ れ ら が 主 要 な 穀 物 で あ っ た こ と が 分 か る 。 次 い で 大 豆 、 小 麦 、 蕎 麦 、 粟 が 多 く 、3品 目 を 併 合 し た 「 木 の 実 」 が 続 く 。 残 り の 小 豆 と 荏 は500 石 強 と 、粟 の3分 の 1程 度 で あ る 。収 量 の 記 載 頻 度 に つ い て は 、木 の 実 の み3割 程 度 と 低 く な っ て い る 。こ れ を 除 く 産 物 は9割 以 上 と 、ほ ぼ 全 て に 収 量 記 載 が あ る こ と が 分 か る 。

『 斐 太 後 風 土 記 』 に 記 載 さ れ て い る 人 口 は 92,081人 で あ る 。図 2 と こ の 人 口 か ら 分 か る こ と は 、 「 飛 騨 の 人 々 は 米 を 主 に 食 べ て い た 」 と い う こ と で あ る 。 『 斐 太 後 風 土 記 』 の 記 載 の 中 で 、 図 1 に は 記 載 頻 度 の 高 い も の を 、 図 2 に は 収 量 を 示 し て い る 。 当 時 の 飛 騨 の 人 々 の 主 エ ネ ル ギ ー 源 と な り う る 産 物 は 、図 2 に 含 ま れ て お り1、そ の 総 量 は 約10万 石 で あ る 。 こ の う ち 最 大 の 収 量 を 占 め る 米5万 石 が 欠 け れ ば 、飛 騨 の 9万 人 の 人 口 を 支 え る こ と は で き な い2。村 落 、地 域 ご と の 偏 り は あ る に せ よ 、 飛 騨 全 域 で 考 え た 場 合 、 人 々 は 米 を 主 に 食 べ て い た と 考 え る の が 自 然 で あ る 。 そ の 割 合 は 、 図 2 に 示 さ れ る 通 り で あ る 。

も う 一 つ 判 明 す る こ と は 、 木 の 実 は 食 料 と し て は そ れ ほ ど 大 き な 位 置 を 占 め て い な か っ た と い う 事 で あ る 。 木 の 実 、 こ こ で は 栃 、 栗 、 楢 を 合 わ せ

1 図 1 に 記 載 さ れ て い な い 、記 載 頻 度103村 未 満 の 産 物 に つ い て も 収 量 の 調 査 を 行 っ て い る が ( 松 2013)、 目 立 っ て 生 産 量 の 多 い 産 物 ( 数 万 石 を 超 え る よ う な 産 物 ) は 見 つ か っ て い な い 。

2 一 石 と は 人 間 一 人 が 一 年 に 食 べ る 米 の 量 で あ る 。 一 日3合 ✕ 一 年 ≒ 一 石 。

た も の で あ る が 、木 の 実 の 収 量 合 計 は1251.65 で あ る 。 木 の 実 は254村 に お い て 記 載 が あ る が 、 数 量 が 判 明 し て い る の は76村 (29.9%) で あ る 。 こ れ ら の 村 を も っ て 全 体 の 収 量 を 推 測 す る と 、 1251.65*254/76=4183石 で あ る 。こ の 収 量 は 、大 豆 よ り 少 な く 、 大 麦 の 半 分 以 下 で あ る 。 こ れ は 飛 騨 の 人 口 に 対 し て4.8%の 食 料 を 補 っ て お り 、こ れ は 決 し て 小 さ な 数 字 で は な い が 、 や は り 飛 騨 地 方 の 人 々 の 多 く は 、主 に 穀 物 を 食 べ て い た と 言 え る 。 た だ し 、 こ れ は 飛 騨 全 域 で の 傾 向 で あ り 、 特 定 地 域 ・ 村 落 に お い て 木 の 実 が 食 料 と し て 重 要 な 位 置 を 占 め て い た 可 能 性 は あ る 。 こ れ に つ い て は 、 別 稿 に て 考 察 し た い 。

『 斐 太 後 風 土 記 』 記 載 の 穀 物 類 ・ 豆 類 は14 類 あ る 。こ れ ら の 記 載 頻 度 と 生 産 量 を 図 3 に 示 す 。 た だ し Y軸 の 生 産 量 は 対 数 目 盛 り と す る 。本 稿 で は 、 図 中 に お い て 記 載 頻 度 ・ 生 産 量 と も に 比 較 的 高 く 、五 穀 に 取 り 上 げ ら れ る3主 要 な 穀 物 類・豆 類

3 古 事 記 で は 稲 ・ 粟 ・ 麦 ・ 大 豆 ・ 小 豆 、 日 本 書 紀 で は 稲 ・ 粟 ・ 麦 ・ 稗 ・ 豆 ( 大 豆 ・ 小 豆 ) で あ る 。

0 100 200 300 400

110100100010000

図 2 . 主 要 な 産 物 の 収 量 と 収 量 記 載 の 頻 度

図 3 . 穀 物 類 ・ 豆 類 の 記 載 頻 度 と 生 産 量

( 石 )

( 村 )

大 豆 大 麦

小 麦 小 豆

蕎 麦

大 麦 /小 麦 キ ビ

大 角 豆

小 キ ビ 唐 黍

唐 稗

11に記載されていない、記載頻度103村未満の産物につ いても収量の調査を行っているが(松森2013)、目立って 生産量の多い産物(数万石を超えるような産物)は見つ かっていない。

2 1石とは人間1人が1年に食べる米の量である。13 合×1年≒1石。

(4)

77

『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(1)

Vol. 11 No.2

的高く、五穀に取り上げられる3主要な穀物類・

豆類である米・稗・大麦・小麦・粟・蕎麦・キビ・

大豆・小豆を主な分析対象とする。

3. 米・稗・大麦の生産量と地理分布  穀物類の中で生産量が最も大きい産物は米であ る。しかし、その記載村数は343村であり、17%

の村では米の記載が欠落していることが分かる。

米の生産には一般に水田が必要であり4、水田に は平坦な土地が必要である。山がちな飛騨地方で は、水田にできる平坦地は限られており、平坦地 の少ない一部の村落では、稲作を行わなかったよ うである。また米は寒さに弱く、高冷地では収量 が下がる。図4に米の記載の有る村と無い村の標 高分布を示す。米記載有りの村の最頻値は600m の階級であるのに対し、記載無しの村の最頻値は 900mと高くなっている。高冷地に米の記載の無 い村が多いことが分かる。

 稗の記載頻度は404村と全産物で最も高い。生

産量は3万石と米に次いでいる。各村の生産量は 多様で、特に人口や標高との相関は見られなかった。

図5に米+稗の生産量と人口との関係を示す。小山 ら1982の換算値を用いて、稗の生産量を米に換算 した5。村ごとにこの米+稗の生産量から人口を減 算し、食料の充足状況を見た。主要な穀物である 米と稗の自給自足的な生産・消費では、およそ半数 の村において、人口を支持できないことが分かる。

 大麦の生産量は1万石と稗に次いで多い。記載 数は357 村と米を上回る。図9に示されるよう に大麦と小麦の地理分布は良く似ているが、生産 量の分布に大きな違いが有る。大麦は南の益田郡 に生産量が偏る特徴を持つ。郡ごとの穀物類・豆 類の生産量の割合を表1に示す。

 大麦は生産量の68%が益田郡に偏っている。

益田郡への偏りは大麦のみにおいて見られる。こ れは降雪が関係していると考えられる。高山市の 南には日本海側と太平洋側を隔てる位山分水嶺が あるが、この分水嶺より南の益田郡では、冬季も 降雪量が少ない。そのため、水田の裏作として秋 蒔きの大麦が生産できたと考えられる。大麦は稗 よりも美味であるため、米の増量材として稗より 優先されて生産されたと推察される。

図 3 穀物類・豆類の記載頻度と生産量 収 量 記 載 の 頻 度 ( 収 量 の 欠 落 を 除 い た 件 数 ) を 示

し て い る 。図 中 の10品 目 の 合 計 は 約10万 石 で あ る 。 そ の う ち 米 が 5万 石 、 稗 が 3万 石 、 大 麦 が1 万 石 で あ り 、こ の3品 目 で お よ そ9割 を 占 め て い る 。 こ れ ら が 主 要 な 穀 物 で あ っ た こ と が 分 か る 。 次 い で 大 豆 、 小 麦 、 蕎 麦 、 粟 が 多 く 、3品 目 を 併 合 し た 「 木 の 実 」 が 続 く 。 残 り の 小 豆 と 荏 は500 石 強 と 、粟 の 3分 の1程 度 で あ る 。収 量 の 記 載 頻 度 に つ い て は 、木 の 実 の み 3割 程 度 と 低 く な っ て い る 。こ れ を 除 く 産 物 は9割 以 上 と 、ほ ぼ 全 て に 収 量 記 載 が あ る こ と が 分 か る 。

『 斐 太 後 風 土 記 』 に 記 載 さ れ て い る 人 口 は 92,081人 で あ る 。図 2 と こ の 人 口 か ら 分 か る こ と は 、 「 飛 騨 の 人 々 は 米 を 主 に 食 べ て い た 」 と い う こ と で あ る 。 『 斐 太 後 風 土 記 』 の 記 載 の 中 で 、 図 1 に は 記 載 頻 度 の 高 い も の を 、 図 2 に は 収 量 を 示 し て い る 。 当 時 の 飛 騨 の 人 々 の 主 エ ネ ル ギ ー 源 と な り う る 産 物 は 、図 2 に 含 ま れ て お り1、そ の 総 量 は 約 10万 石 で あ る 。 こ の う ち 最 大 の 収 量 を 占 め る 米 5万 石 が 欠 け れ ば 、飛 騨 の9万 人 の 人 口 を 支 え る こ と は で き な い2。村 落 、地 域 ご と の 偏 り は あ る に せ よ 、 飛 騨 全 域 で 考 え た 場 合 、 人 々 は 米 を 主 に 食 べ て い た と 考 え る の が 自 然 で あ る 。 そ の 割 合 は 、 図 2 に 示 さ れ る 通 り で あ る 。

も う 一 つ 判 明 す る こ と は 、 木 の 実 は 食 料 と し て は そ れ ほ ど 大 き な 位 置 を 占 め て い な か っ た と い う 事 で あ る 。 木 の 実 、 こ こ で は 栃 、 栗 、 楢 を 合 わ せ

1 図 1 に 記 載 さ れ て い な い 、記 載 頻 度103村 未 満 の 産 物 に つ い て も 収 量 の 調 査 を 行 っ て い る が ( 松 2013)、 目 立 っ て 生 産 量 の 多 い 産 物 ( 数 万 石 を 超 え る よ う な 産 物 ) は 見 つ か っ て い な い 。

2 一 石 と は 人 間 一 人 が 一 年 に 食 べ る 米 の 量 で あ る 。 一 日 3合 ✕ 一 年 ≒ 一 石 。

た も の で あ る が 、木 の 実 の 収 量 合 計 は 1251.65 で あ る 。 木 の 実 は 254村 に お い て 記 載 が あ る が 、 数 量 が 判 明 し て い る の は 76村 (29.9%) で あ る 。 こ れ ら の 村 を も っ て 全 体 の 収 量 を 推 測 す る と 、 1251.65*254/76=4183石 で あ る 。こ の 収 量 は 、大 豆 よ り 少 な く 、 大 麦 の 半 分 以 下 で あ る 。 こ れ は 飛 騨 の 人 口 に 対 し て 4.8%の 食 料 を 補 っ て お り 、こ れ は 決 し て 小 さ な 数 字 で は な い が 、 や は り 飛 騨 地 方 の 人 々 の 多 く は 、主 に 穀 物 を 食 べ て い た と 言 え る 。 た だ し 、 こ れ は 飛 騨 全 域 で の 傾 向 で あ り 、 特 定 地 域 ・ 村 落 に お い て 木 の 実 が 食 料 と し て 重 要 な 位 置 を 占 め て い た 可 能 性 は あ る 。 こ れ に つ い て は 、 別 稿 に て 考 察 し た い 。

『 斐 太 後 風 土 記 』 記 載 の 穀 物 類 ・ 豆 類 は14 類 あ る 。こ れ ら の 記 載 頻 度 と 生 産 量 を 図 3 に 示 す 。 た だ し Y軸 の 生 産 量 は 対 数 目 盛 り と す る 。本 稿 で は 、 図 中 に お い て 記 載 頻 度 ・ 生 産 量 と も に 比 較 的 高 く 、五 穀 に 取 り 上 げ ら れ る3主 要 な 穀 物 類・豆 類

3 古 事 記 で は 稲 ・ 粟 ・ 麦 ・ 大 豆 ・ 小 豆 、 日 本 書 紀 で は 稲 ・ 粟 ・ 麦 ・ 稗 ・ 豆 ( 大 豆 ・ 小 豆 ) で あ る 。

0 100 200 300 400

110100100010000

図 2 . 主 要 な 産 物 の 収 量 と 収 量 記 載 の 頻 度

図 3 . 穀 物 類 ・ 豆 類 の 記 載 頻 度 と 生 産 量

( 石 )

( 村 )

大 豆 大 麦

小 麦 小 豆

蕎 麦

大 麦 /小 麦 キ ビ

大 角 豆

小 キ ビ 唐 黍

唐 稗

3『古事記』では稲・粟・麦・大豆・小豆、『日本書紀』では稲・

粟・麦・稗・豆(大豆・小豆)である。

図 4 村落の標高と米の記載の有無

で あ る 米 ・ 稗 ・ 大 麦 ・ 小 麦 ・ 粟 ・ 蕎 麦 ・ キ ビ ・ 大 豆 ・ 小 豆 を 主 な 分 析 対 象 と す る 。

3. 米・稗・大麦の生産量と地理分布 穀 物 類 の 中 で 生 産 量 が 最 も 大 き い 産 物 は 米 で あ る 。し か し 、そ の 記 載 村 数343村 で あ り 、18% 村 で は 米 の 記 載 が 欠 落 し て い る こ と が 分 か る 。 米 の 生 産 に は 一 般 に 水 田 が 必 要 で あ り4、水 田 に は 平 坦 な 土 地 が 必 要 で あ る 。 山 が ち な 飛 騨 地 方 で は 、 水 田 に で き る 平 坦 地 は 限 ら れ て お り 、 平 坦 地 の 少 な い 一 部 の 村 落 で は 、 稲 作 を 行 わ な か っ た よ う で あ る 。 ま た 米 は 寒 さ に 弱 く 、 高 冷 地 で は 収 量 が 下 が る 。 図 4 に 米 の 記 載 の 有 る 村 と 無 い 村 の 標 高 分 布 を 示 す 。 米 記 載 有 り の 村 の 最 頻 値 は600mの 階 級 で あ る の に 対 し 、 記 載 無 し の 村 の 最 頻 値 は 900mと 高 く な っ て い る 。 高 冷 地 に 米 の 記 載 の 無 い 村 が 多 い こ と が 分 か る 。

図 4 . 村 落 の 標 高 と 米 の 記 載 の 有 無

稗 の 記 載 頻 度 は 404村 と 全 産 物 で 最 も 高 い 。生 産 量 は3万 石 と 米 に 次 い で い る 。各 村 の 生 産 量 は 多 様 で 、 特 に 人 口 や 標 高 と の 相 関 は 見 ら れ な か っ た 。図 5 に 米 + 稗 の 生 産 量 と 人 口 と の 関 係 を 示 す 。 小 山 ら1982の 換 算 値 を 用 い て 、 稗 の 生 産 量 を 米 に 換 算 し た5。村 ご と に こ の 米 + 稗 の 生 産 量 か ら 人 口 を 減 算 し 、 食 料 の 充 足 状 況 を 見 た 。 主 要 な 穀 物

4 畑 に 植 え る 陸 稲 も あ る が 、水 田 と は 異 な り 連 作 障 害 が 起 き や す く 、 雑 草 へ の 対 応 が 大 変 で あ る 。

5 小 山 ら1982の 記 載 に よ れ ば 、米 一 石 は144kg 稗 一 石 は117.2535kgで あ る 。 ま た エ ネ ル ギ ー 量 100gあ た り 米 が338kcal、 稗 が370kcalで あ る 。そ の た め 、稗 一 石=117.2535*3700/(144*3380)

=0.89米 石 で あ る 。

で あ る 米 と 稗 の 自 給 自 足 的 な 生 産 ・ 消 費 で は 、 お よ そ 半 数 の 村 に お い て 、 人 口 を 支 持 で き な こ と が 分 か る 。

大 麦 の 生 産 量 は1万 石 と 稗 に 次 い で 多 い 。記 載 数 は357村 と 米 を 上 回 る 。図 9 に 示 さ れ る よ う に 大 麦 と 小 麦 の 地 理 分 布 は 良 く 似 て い る が 、 生 産 量 の 分 布 に 大 き な 違 い が 有 る 。 大 麦 は 南 の 益 田 郡 に 生 産 量 が 偏 る 特 徴 を 持 つ 。 郡 ご と の 穀 物 類 ・ 豆 類 の 生 産 量 の 割 合 を 表 1 に 示 す 。

表 1 . 郡 ご と の 生 産 量 の 割 合 (%

大 麦 は 生 産 量 の 68%が 益 田 郡 に 偏 っ て い る 。益 田 郡 へ の 偏 り は 大 麦 の み に お い て 見 ら れ る 。 こ れ は 降 雪 が 関 係 し て い る と 考 え ら れ る 。 高 山 市 の 南 に は 日 本 海 側 と 太 平 洋 側 を 隔 て る 位 山 分 水 嶺 が あ る が 、 こ の 分 水 嶺 よ り 南 の 益 田 郡 で は 、 冬 季 も 降 雪 量 が 少 な い 。 そ の た め 、 水 田 の 裏 作 と し て 秋 蒔 き の 大 麦 が 生 産 で き た と 考 え ら れ る 。 大 麦 は 稗 よ り も 美 味 で あ る た め 、 米 の 増 量 材 と し て 稗 よ り 優 先 さ れ て 生 産 さ れ た と 推 察 さ れ る 。

図 6 に 米 + 稗 + 大 麦 の 生 産 量 と 人 口 と の 関 係 を 示 す 。 大 麦 の 生 産 量 を 米 に 換 算 し 、 食 料 の 充 足 状 況 を 見 る 。大 麦 の 加 算 に よ り-200以 下 の 階 級 が 減 少 、 ま た-100の 階 級 が 減 り 、50の 階 級 が 増 加 し て い る 。 し か し ま だ 半 数 は 不 足 状 態 で あ る 。 小 麦 は 粒 食 し な い の で 、 他 の 増 量 材 に は 蕎 麦 と 粟 が あ る 。 し か し こ れ ら は 総 生 産 量 が1600石 程 度 と 少 な い た め 、 図 の ヒ ス ト グ ラ ム を 大 き く 変 え る こ と 0

20 40 60 80 100

300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400

米記載無 米記載有

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

(343) (404) (400) (357) (337) (257) (256) (226) (70)

吉城郡 30 28 35 14 40 39 55 52 75 大野郡 49 44 39 19 32 46 43 47 25 益田郡 21 28 26 68 28 15 1 1 0

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

図 7 .食 料 と 人 口( 米 + 稗 + 大 麦 + 繭 - 人 口 ) 図 6 . 食 料 と 人 口 ( 米 + 稗 + 大 麦 - 人 口 )

( 村 )

( 村 )

( 村 )

m

図 5 . 食 料 と 人 口 ( 米 + 稗 - 人 口 )

( 村 )

( 石 ) ( 石 )

( 石 )

4畑に植える陸稲もあるが、水田とは異なり連作障害が起 きやすく、雑草への対応が大変である。

5小山ら1982の記載によれば、米1石は144kg、稗1石は

117.2535kgである。またエネルギー量は100gあたり米が

338kcal、稗が370kcalである。そのため、稗1=117.2535*3700/

144*3380=0.89米石である。

図 5 食料と人口(米+稗-人口)

で あ る 米 ・ 稗 ・ 大 麦 ・ 小 麦 ・ 粟 ・ 蕎 麦 ・ キ ビ ・ 大 豆 ・ 小 豆 を 主 な 分 析 対 象 と す る 。

3. 米・稗・大麦の生産量と地理分布

穀 物 類 の 中 で 生 産 量 が 最 も 大 き い 産 物 は 米 で あ る 。し か し 、そ の 記 載 村 数 343村 で あ り 、18% 村 で は 米 の 記 載 が 欠 落 し て い る こ と が 分 か る 。 米 の 生 産 に は 一 般 に 水 田 が 必 要 で あ り4、水 田 に は 平 坦 な 土 地 が 必 要 で あ る 。 山 が ち な 飛 騨 地 方 で は 、 水 田 に で き る 平 坦 地 は 限 ら れ て お り 、 平 坦 地 の 少 な い 一 部 の 村 落 で は 、 稲 作 を 行 わ な か っ た よ う で あ る 。 ま た 米 は 寒 さ に 弱 く 、 高 冷 地 で は 収 量 が 下 が る 。 図 4 に 米 の 記 載 の 有 る 村 と 無 い 村 の 標 高 分 布 を 示 す 。 米 記 載 有 り の 村 の 最 頻 値 は600mの 階 級 で あ る の に 対 し 、 記 載 無 し の 村 の 最 頻 値 は 900mと 高 く な っ て い る 。 高 冷 地 に 米 の 記 載 の 無 い 村 が 多 い こ と が 分 か る 。

図 4 . 村 落 の 標 高 と 米 の 記 載 の 有 無

稗 の 記 載 頻 度 は404村 と 全 産 物 で 最 も 高 い 。生 産 量 は 3万 石 と 米 に 次 い で い る 。各 村 の 生 産 量 は 多 様 で 、 特 に 人 口 や 標 高 と の 相 関 は 見 ら れ な か っ た 。図 5 に 米 + 稗 の 生 産 量 と 人 口 と の 関 係 を 示 す 。 小 山 ら 1982の 換 算 値 を 用 い て 、 稗 の 生 産 量 を 米 に 換 算 し た5。村 ご と に こ の 米 + 稗 の 生 産 量 か ら 人 口 を 減 算 し 、 食 料 の 充 足 状 況 を 見 た 。 主 要 な 穀 物

4 畑 に 植 え る 陸 稲 も あ る が 、水 田 と は 異 な り 連 作 障 害 が 起 き や す く 、 雑 草 へ の 対 応 が 大 変 で あ る 。

5 小 山 ら1982の 記 載 に よ れ ば 、米 一 石 は144kg 稗 一 石 は 117.2535kgで あ る 。 ま た エ ネ ル ギ ー 量 100gあ た り 米 が 338kcal、 稗 が370kcalで あ る 。そ の た め 、稗 一 石=117.2535*3700/(144*3380)

=0.89米 石 で あ る 。

で あ る 米 と 稗 の 自 給 自 足 的 な 生 産 ・ 消 費 で は 、 お よ そ 半 数 の 村 に お い て 、 人 口 を 支 持 で き な こ と が 分 か る 。

大 麦 の 生 産 量 は 1万 石 と 稗 に 次 い で 多 い 。記 載 数 は 357村 と 米 を 上 回 る 。図 9 に 示 さ れ る よ う に 大 麦 と 小 麦 の 地 理 分 布 は 良 く 似 て い る が 、 生 産 量 の 分 布 に 大 き な 違 い が 有 る 。 大 麦 は 南 の 益 田 郡 に 生 産 量 が 偏 る 特 徴 を 持 つ 。 郡 ご と の 穀 物 類 ・ 豆 類 の 生 産 量 の 割 合 を 表 1 に 示 す 。

表 1 . 郡 ご と の 生 産 量 の 割 合 (%

大 麦 は 生 産 量 の 68%が 益 田 郡 に 偏 っ て い る 。益 田 郡 へ の 偏 り は 大 麦 の み に お い て 見 ら れ る 。 こ れ は 降 雪 が 関 係 し て い る と 考 え ら れ る 。 高 山 市 の 南 に は 日 本 海 側 と 太 平 洋 側 を 隔 て る 位 山 分 水 嶺 が あ る が 、 こ の 分 水 嶺 よ り 南 の 益 田 郡 で は 、 冬 季 も 降 雪 量 が 少 な い 。 そ の た め 、 水 田 の 裏 作 と し て 秋 蒔 き の 大 麦 が 生 産 で き た と 考 え ら れ る 。 大 麦 は 稗 よ り も 美 味 で あ る た め 、 米 の 増 量 材 と し て 稗 よ り 優 先 さ れ て 生 産 さ れ た と 推 察 さ れ る 。

図 6 に 米 + 稗 + 大 麦 の 生 産 量 と 人 口 と の 関 係 を 示 す 。 大 麦 の 生 産 量 を 米 に 換 算 し 、 食 料 の 充 足 状 況 を 見 る 。大 麦 の 加 算 に よ り-200以 下 の 階 級 が 減 少 、 ま た-100の 階 級 が 減 り 、50の 階 級 が 増 加 し て い る 。 し か し ま だ 半 数 は 不 足 状 態 で あ る 。 小 麦 は 粒 食 し な い の で 、 他 の 増 量 材 に は 蕎 麦 と 粟 が あ る 。 し か し こ れ ら は 総 生 産 量 が1600石 程 度 と 少 な い た め 、 図 の ヒ ス ト グ ラ ム を 大 き く 変 え る こ と 0

20 40 60 80 100

300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400

米記載無 米記載有

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

(343) (404) (400) (357) (337) (257) (256) (226) (70)

吉城郡 30 28 35 14 40 39 55 52 75 大野郡 49 44 39 19 32 46 43 47 25 益田郡 21 28 26 68 28 15 1 1 0

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

図 7 .食 料 と 人 口( 米 + 稗 + 大 麦 + 繭 - 人 口 ) 図 6 . 食 料 と 人 口 ( 米 + 稗 + 大 麦 - 人 口 )

( 村 )

( 村 )

( 村 )

m

図 5 . 食 料 と 人 口 ( 米 + 稗 - 人 口 )

( 村 )

( 石 ) ( 石 )

( 石 )

表 1 郡ごとの生産量の割合(%)

で あ る 米 ・ 稗 ・ 大 麦 ・ 小 麦 ・ 粟 ・ 蕎 麦 ・ キ ビ ・ 大 豆 ・ 小 豆 を 主 な 分 析 対 象 と す る 。

3. 米・稗・大麦の生産量と地理分布

穀 物 類 の 中 で 生 産 量 が 最 も 大 き い 産 物 は 米 で あ る 。し か し 、そ の 記 載 村 数343村 で あ り 、18% 村 で は 米 の 記 載 が 欠 落 し て い る こ と が 分 か る 。 米 の 生 産 に は 一 般 に 水 田 が 必 要 で あ り4、水 田 に は 平 坦 な 土 地 が 必 要 で あ る 。 山 が ち な 飛 騨 地 方 で は 、 水 田 に で き る 平 坦 地 は 限 ら れ て お り 、 平 坦 地 の 少 な い 一 部 の 村 落 で は 、 稲 作 を 行 わ な か っ た よ う で あ る 。 ま た 米 は 寒 さ に 弱 く 、 高 冷 地 で は 収 量 が 下 が る 。 図 4 に 米 の 記 載 の 有 る 村 と 無 い 村 の 標 高 分 布 を 示 す 。 米 記 載 有 り の 村 の 最 頻 値 は600mの 階 級 で あ る の に 対 し 、 記 載 無 し の 村 の 最 頻 値 は 900mと 高 く な っ て い る 。 高 冷 地 に 米 の 記 載 の 無 い 村 が 多 い こ と が 分 か る 。

図 4 . 村 落 の 標 高 と 米 の 記 載 の 有 無

稗 の 記 載 頻 度 は404村 と 全 産 物 で 最 も 高 い 。生 産 量 は3万 石 と 米 に 次 い で い る 。各 村 の 生 産 量 は 多 様 で 、 特 に 人 口 や 標 高 と の 相 関 は 見 ら れ な か っ た 。図 5 に 米 + 稗 の 生 産 量 と 人 口 と の 関 係 を 示 す 。 小 山 ら1982の 換 算 値 を 用 い て 、 稗 の 生 産 量 を 米 に 換 算 し た5。村 ご と に こ の 米 + 稗 の 生 産 量 か ら 人 口 を 減 算 し 、 食 料 の 充 足 状 況 を 見 た 。 主 要 な 穀 物

4 畑 に 植 え る 陸 稲 も あ る が 、水 田 と は 異 な り 連 作 障 害 が 起 き や す く 、 雑 草 へ の 対 応 が 大 変 で あ る 。

5 小 山 ら1982の 記 載 に よ れ ば 、米 一 石 は144kg 稗 一 石 は117.2535kgで あ る 。 ま た エ ネ ル ギ ー 量 100gあ た り 米 が338kcal、 稗 が370kcalで あ る 。そ の た め 、稗 一 石=117.2535*3700/(144*3380)

=0.89米 石 で あ る 。

で あ る 米 と 稗 の 自 給 自 足 的 な 生 産 ・ 消 費 で は 、 お よ そ 半 数 の 村 に お い て 、 人 口 を 支 持 で き な こ と が 分 か る 。

大 麦 の 生 産 量 は1万 石 と 稗 に 次 い で 多 い 。記 載 数 は 357村 と 米 を 上 回 る 。図 9 に 示 さ れ る よ う に 大 麦 と 小 麦 の 地 理 分 布 は 良 く 似 て い る が 、 生 産 量 の 分 布 に 大 き な 違 い が 有 る 。 大 麦 は 南 の 益 田 郡 に 生 産 量 が 偏 る 特 徴 を 持 つ 。 郡 ご と の 穀 物 類 ・ 豆 類 の 生 産 量 の 割 合 を 表 1 に 示 す 。

表 1 . 郡 ご と の 生 産 量 の 割 合 (%

大 麦 は 生 産 量 の68%が 益 田 郡 に 偏 っ て い る 。益 田 郡 へ の 偏 り は 大 麦 の み に お い て 見 ら れ る 。 こ れ は 降 雪 が 関 係 し て い る と 考 え ら れ る 。 高 山 市 の 南 に は 日 本 海 側 と 太 平 洋 側 を 隔 て る 位 山 分 水 嶺 が あ る が 、 こ の 分 水 嶺 よ り 南 の 益 田 郡 で は 、 冬 季 も 降 雪 量 が 少 な い 。 そ の た め 、 水 田 の 裏 作 と し て 秋 蒔 き の 大 麦 が 生 産 で き た と 考 え ら れ る 。 大 麦 は 稗 よ り も 美 味 で あ る た め 、 米 の 増 量 材 と し て 稗 よ り 優 先 さ れ て 生 産 さ れ た と 推 察 さ れ る 。

図 6 に 米 + 稗 + 大 麦 の 生 産 量 と 人 口 と の 関 係 を 示 す 。 大 麦 の 生 産 量 を 米 に 換 算 し 、 食 料 の 充 足 状 況 を 見 る 。大 麦 の 加 算 に よ り-200以 下 の 階 級 が 減 少 、 ま た-100の 階 級 が 減 り 、50の 階 級 が 増 加 し て い る 。 し か し ま だ 半 数 は 不 足 状 態 で あ る 。 小 麦 は 粒 食 し な い の で 、 他 の 増 量 材 に は 蕎 麦 と 粟 が あ る 。 し か し こ れ ら は 総 生 産 量 が1600石 程 度 と 少 な い た め 、 図 の ヒ ス ト グ ラ ム を 大 き く 変 え る こ と 0

20 40 60 80 100

300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400

米記載無 米記載有

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(343) (404) (400) (357) (337) (257) (256) (226) (70)

吉城郡 30 28 35 14 40 39 55 52 75 大野郡 49 44 39 19 32 46 43 47 25 益田郡 21 28 26 68 28 15 1 1 0

0 50 100

350 300 250 200 150 100 50 0 50 100 150 200 250 300 more

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図 7 .食 料 と 人 口( 米 + 稗 + 大 麦 + 繭 - 人 口 ) 図 6 . 食 料 と 人 口 ( 米 + 稗 + 大 麦 - 人 口 )

( 村 )

( 村 )

( 村 )

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図 5 . 食 料 と 人 口 ( 米 + 稗 - 人 口 )

( 村 )

( 石 ) ( 石 )

( 石 )

図 9 米・稗・大麦・小麦の地理分布
図 10 大豆・蕎麦・粟・小豆の地理分布

参照

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