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社 会 福 祉 理 論 に お け る「 福 祉 サ ー ビス」の位 置 と意 味
一 と く に パ ー ソ ナ ル ・ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス の 拡 大 を め ぐ っ て
岩 田 正 美
〔要 約 〕
社会 福祉領 域 にお け る多 様 な概念 や用 語 の無 批 判 な氾濫 が社 会福 祉理 論 の体系 化 を妨 げて き た との 立場 に立 って、 近 年 の社 会福 祉 の 中核 に位 置 づ け られ て き
たパ ー ソナル ・ソー シ ャル サ ー ビス に一 っ の焦 点 を 当 て、 「福祉 サ ー ビス 」の位 置 と意 味 を検 討 す る。 「福 祉 サ ー ビス」の起 源 と展 開 を確 認 した上 で 、特 に貨 幣 的方 法 と非 貨 幣 的 方 法 との互 換 性 の 問 題 、 サ ー ビス に お け るハ ー ドと ソ フ トの 関係 な どを 、 市 場 化 、 自立 生 活 運 動 な どの動 向 を も展 望 しなが ら議 論 した 。
〔キ ー ワ ー ド〕
福 祉サ ー ビス、パ ー ソナ ル ・ソー シ ャルサ ー ビス、普 遍主 義 の矛 盾 、福 祉 国家 、 貨 幣的 給 付 と現 物 サ ー ビス の互 換性 、脱 商品 化 と再 商 品化
1は じ め に
社 会 福 祉 が 多 様 な価 値 、多 様 な手段 、 多様 な 目的、 多 様 な主体 にお いて 形 成 され 、 しか もそれ らが歴 史 的 に変 化 して きた とい う事 実 が 、社会 福 祉 を 「固有 」 に定 義 づ け る こ とを 困難 に し、 ま た その 境 界 を 曖昧 に して き た こ とは周 知 の と
ころで あ ろ う。 また 、 この こ と と も関 わ って 、社 会 福 祉 は、 それ を説 明 す るさ
ま ざ ま な用 語 の氾 濫 、 そ の 多様 な用 語 の互 換 的使 用 、 新 しい用 語 の発 明 に よ っ
て も特 徴 づ け られ る。新 しい政 策 手 法 や 実 践 、 それ らの プ ロパ ガ ンダや 逆 に反
対 の た あ に、 な ん と多 くの用語 が 次 々 と発 明 され 、無 批 判 に使 わ れて い る こ と
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か!し か も、 これ らを整 理 ・批 判 し、 概 念 的 に深 め る役 割 を負 って い る社 会福 祉 の研 究 領 域 に お いて も、政 策 立 案 過 程 や実 践 現場 の発 明 用 語 や 、外 国 の 用語 が 、必 ず し も理 論 的 に深 あ られ な い ま ま次 々 と導入 され、 む しろ その混 乱 を助 長 す る傾 向す らみえ る こ とが少 な くな い。 こ う した事 態 が 、 社 会 福祉 を ます ま
す体 系 だ った理 解 か ら遠 ざ けて い るよ うに思 わ れ る。
と こ ろで 、近 年 著 し く注 目 され、 頻 繁 に使 われ る よ うに な った 「 福 祉 サ ー ビ ス 」 と い う用 語 も、 実 は あ ま り深 あ られ て いな い用語 の一 つ で あ る。 この 最 も 広 い使 い方 と して は 、社 会福 祉 の 目的遂 行 の ため に、個 々人 や家 族 の ニ ーズ を 充 足 させ る貨 幣給 付 を含 め た あ らゆ る手 段 ・手 法 を総 称 して 、っ ま り社 会 福祉 とほ ぼ 互換 的 な意 味 で使 う場 合 が あ る。 しか しそ うで はな くて 、 「サ ー ビス 」 と い う部分 に特 別 の意 味 を込 め て使 う場 合 もあ る。 その場 合 は、 所 得保 障 な ど貨 幣 的 な手 段 と区別 す る ことが 多 い。 す なわ ち、 「非 貨 幣」=貨 幣 で な い もの 、 と い う制 限 だ けで あ とは不 定 な、 あ らゆ るinkindの 社 会福 祉 を指 して使 わ れ る の で あ る。 もち ろん、 この中 には 、(inkindと い って も)同 じ現 物 ・サ ー ビス で も医療 や教 育 な ど のサ ー ビス と福 祉 サ ー ビスは異 な る とい う含 意 もあ る。近 年 注 目され て い るの は、 この 「非貨 幣 」(=貨 幣 で はな い)と して の 「 福 祉 サ ー ビス」の用 法 で あ り、 さ らに この福祉 サ ー ビスが 、パ ー ソナル ・ソー シャル サ ー ビス(わ が 国 で は 「対 人 」社 会 福 祉 サ ー ビス と訳 され る こ とが 多 い)を 代 表 と す るよ うな 、「非 貨 幣 」的 な(=貨 幣 で は と らえ られ な い)ニ ー ドを基盤 に した 新 しいサ ー ビス領 域 を次 々 に拡 大 して い る とい う点 で あ る。1980年 代 の 後半 以 降 の いわ ゆ る 「社 会 福祉 制 度 改 革 」 の 流 れ の 中 で、 この制度 改革 自体 にっ いて は意 見 を 異 にす る場 合 で あ って も、 新 しい福祉 サ ー ビス に現 代 の社 会 福 祉 の特 徴 や 意 味 付 けを与 え る と い う点 で は共 通 した論 者 が 多 か った とい え よ う。
む ろん 、 す で にわが 国 の社 会 保 障審 議 会 が は じめ に行 った社 会 保 障 の分 類 で も、社 会保 険 、公 的 扶 助 とい った経 済 保 障 とは異 な る もの と して 社 会福 祉 を位 置 づ けて お り、 な ん らか のinkindの 形 態 での 生活 援 助 の領域 が 、や や 漠然 と
した もので あれ、示 されて いた。 しか も、その社 会福 祉 のサ ー ビスは同 じinkind の公 衆 衛 生 ・医療 保 障 とは異 な る とされ た。 ま た岡村 重 夫 に代 表 され るよ うに、
社 会 福 祉 の 「固 有 性 」 を生 活 者 の主 体 性 の発 揮 ・回復 に働 きか け る援 助 サ ー ビ
社 会 福 祉理 論 に お け る 「福 祉 サ ー ビス」 の位 置 と意 味 3
ス に求 め る立 場 もあ る(岡 村 、1983)。 しか し、近 年 の福祉 サ ー ビスの 強 調 は 、 高 齢 者 や 障害 者 の ケ アの 領域 に お け る社 会 福 祉 の役 割 の急 速 な拡 大 と絡 ん で い
る。 特 に高 齢 者 領域 にお け るケ アや 生 活 上 の さ ま ざ まな支 援 に関 わ るニ ー ドの 拡大 は、三 浦 文 夫 の指 摘 す るよ うな、従来 の 「自立 した生 活 が で きな い個 人 、世 帯 」=要 援護 者(needy)と しての社 会福 祉利 用者 像 を 「個 人 は原 則 と して独 立 の生 活 を営 み 、 その 生 活 の過 程 で生 ず る個 々の ニ ーズ に応 じて、 ニ ー ズ充 足 の た あの サ ー ビスを 選択 し、利 用 す る」(三 浦 、1989、pp.19‑21)と い う利 用 者像 に転換 させ 、そ のニ ー ドその もの(needoriented)に 対 応 す る福 祉 サ ー ビスの 拡大 とい う構 図 を 定着 させ た。 こ こで は貧 困 や低 所 得 が 要 件 で は な くな る こ と と、 貨 幣 給 付 や ミニ マ ム か ら解 き放 たれ た福祉 サ ー ビス、 さ らには この 福 祉 サ ー ビス が 、他 の社会 サ ー ビス と融合(高 橋、1989P31)し て拡 大 して い く傾 向 が 示 さ れて お り、 この サ ー ビスの 新 た な展 開 の 中 に現 代 の社 会 福 祉 概 念 の再構 築 が求 め られ る とい う合意 が あ る。 こ こか ら一 足飛 び に、社会 福祉 は 「 福 祉 サ ー ビス が 所 得 の 高 低 にか か わ りな く属 人 的 に、 あ る いは社 会 的 に うみ だ さ れ て くる福 祉 ニ ー ズ に個 別 的 に対 応 す る固有 な施 策 の 体 系 で あ る とみ な され て くる」(古 川 、1992p21)と い う位 置 づ け さ え現 れ て くる。 も と もと、所 得 保 障 や貨 幣形 態 と(貨 幣 で は な い と い う意 味で の)inkindの 手 法 の識 別 に社 会 福祉 概 念 を位 置 づ け よ うとす る傾 向 は、 社会 政 策 学 との識 別 、 社 会 保 障 との識 別 に こだ わ りっ っ社 会福 祉 学 が 形 成 され て きた と い うわが 国 の独 特 の い きさっ の中 で 、一 貫 して い た と もいえ るが 、 そ の意 味 で こ う した近 年 の福 祉 サ ー ビス の拡 大 とい う事 実 は、 独 立領 域 と して の社 会 福祉 学 を 的確 に示 す もの と して も 歓 迎 され て い るよ うにみ え る。 しか し、 福 祉 サ ー ビス が この よ うに特 に現 代 の 社 会 福 祉 の基 底 に関 わ った用語 と して認 識 さ れて い るに も関 わ らず 、 そ の 範 囲 や このサ ー ビス と い う手 段 の拡 大 が もっ深 い意 味 につ いて 必 ず しもi一分 な検 討 が な さ れて い る とは いえ な い。
た とえば 、 これ に関 して 次 の よ うな い くっ もの 問 を発す る ことが 出来 よ う。 そ
もそ も福 祉 サ ー ビス には何 が 含 まれ るの か?非 貨 幣 一貨 幣 で は な い と い う定 義
は、貨 幣 で な い とい う制 限が つ け られ て い るだ けで 、 そ れ だ けで は何 を指 す か
はな ん ら特 定 され て いな い。 福祉 サ ー ビス は、 「諸 サ ー ビス」 の 「ス プ ロ ール化
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さ れ た 混 合 物 」(B.Mohan,1988、p6)で あ る と い う しか な い の だ ろ うか?ま た そ れ は 、近 年 よ く使 わ れ る よ うに な った パ ー ソ ナ ル ・ソ ー シ ャル サ ー ビス(「 対 人 」 社 会 福 祉 サ ー ビス)、 ケ ア ・サ ー ビス 、 ヒ ュ ー マ ン ・サ ー ビス 、 社 会 サ ー ビ ス(socialservices)な ど類 似 の 用 語 で 示 さ れ るサ ー ビス と、 どの よ うに 同 じ で ど の よ う に 異 な る の か?
あ る い は 、 社 会 福 祉 領 域 で 所 得 保 障 と区 別 さ れ た の は 、 伝 統 的 に は ソ ー シ ャ ル ワ ー クで あ っ た は ず で あ るが 、 こ の ソ ー シ ャ ル ・ワ ー ク と近 年 ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ て い る福 祉 サ ー ビ ス は ど の よ う な 関 連 に あ る の か?ま た 、 福 祉 サ ー ビス が 普 遍 的 サ ー ビス と して 拡 大 した 場 合 、 他 の 社 会 サ ー ビス や 公 共 サ ー ビス との 区 別 は ど こで つ け る の か?そ れ と も、 福 祉 サ ー ビス は 、 社 会 サ ー ビス ー 般 、 公 共 サ ー ビス ー 般 の 中 に 融 合 し続 け て い くの か?
さ ら に 、 企 業 な ど の 参 入 も奨 励 さ れ て い る が 、 市 場 で 供 給 され る企 業 の サ ー ビス も福 祉 サ ー ビス な の だ ろ うか?さ らに 、 貨 幣 的 給 付 と比 べ た 場 合 、 どの よ うな 点 が サ ー ビス 給 付 の 特 徴 な の か?ま た 貨 幣 給 付 と サ ー ビス 給 付 は そ も そ も 互 換 的 な もの な の か 、 排 他 的 な もの な の か 。 現 実 に は 福 祉 領 域 で な さ れ て い る 手 当 や サ ー ビス 利 用 に 関 わ る費 用 負 担 、 費 用 減 免 の 問 題 を ど う と らえ た ら い い の か?公 的 扶 助 や 生 活 資 金 貸 付 とケ ー ス ワ ー ク、 の よ う に 所 得 保 障 と セ ッ トに な っ た サ ー ビス(cashandservices)、 介 護 領 域 に あ る サ ー ビス と現 金 給 付 の 併 存 、あ る い は お む つ の 現 物 支 給 とお む っ代 と して の現 金 支 給 の よ うな選 択(cash orservices)は ど の よ うに 整 理 す べ き か?
そ も そ も こ の よ う な サ ー ビス の 領 域 が 特 に 拡 大 す る根 拠 と して 何 が 考 え られ る か?ま た 、 この よ う な サ ー ビス 形 態 が 個 々 の 生 活 に 介 入 す る こ と の 生 活 者 に と って の 意 味 と 国 家 な い しは社 会 総 体 に と っ て の 意 味 は 何 か?等 々 。 こ う した 疑 問 点 は 、 必 ず し も十 分 理 論 的 に 深 め られ て い る と は い い が た い の で あ る 。
本 論 で は 、 福 祉 領 域 に お け る 、 非 貨 幣=貨 幣 で な い 手 段 に よ る サ ー ビ ス を と
りあ え ず 福 祉 サ ー ビス と総 称 し、 そ の 歴 史 的 現 実 に っ い て 簡 単 な ま と め を 行 っ
た 上 で 、 次 の 二 っ の 点 を 議 論 す る 。 第 一 に 、 現 物 ・サ ー ビス と い う手 段 に よ る
社 会 福 祉 の 拡 大 、 特 に 近 年 の パ ー ソ ナ ル ・ソ ー シ ャル サ ー ビス と して の 拡 大 の
もっ 意 味 と根 拠 を 明 らか に し、 福 祉 と して の そ の 範 囲 を 確 定 で き る か ど うか を
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検 討 す る。 こ こで は、主 に他 の社 会 サ ー ビス、 公共 サ ー ビス との違 い 、市 場 の サ ー ビス との 違 い、"ハ ー ド"な サ ー ビス と"ソ フ ト"な サ ー ビス との 関係 な ど が 取 り上 げ られ 、 それ らを基 礎 に福 祉 サ ー ビス供給 の体 系=社 会 福 祉 と い う位 置 づ けが で き るか ど うか を批 判 的 に検 討 す る。 第 二 に それ との関 わ りで、 サ ー ビス給 付 とい う形 態 で の 「目由 の保 障 」 と 「自由 の剥 奪 」 との ア ン ビバ レ ンッ を貨 幣的 手段 との互換 性 に焦 点 を 当て て検討 し、「自由の剥 奪 」へ の反 発 を 含 ん で登 場 して き た市 場 志 向(消 費 者 モ デル)及 び 自立 生 活 運 動 に よ る雇 用 主 モ デ ル の意義 と限 界 に言 及 す る。 な お、 あ らか じめ 述 べ て お け ば、 本 論 で は単 純 に サ ー ビス供 給 の 体 系=社 会 福 祉 とす る立 場 は と りあ えず と らな い。 す ぐ後 で確 認 す るよ うに 、 歴 史 的文 脈 と も現 実 と も一 致 しな いか らで あ る。 サ ー ビス は社 会 福祉 の多 様 な 目的遂 行 の た め の一 っ の手 段 で あ る との立 場 に立 って 、 しか し
この よ うな サ ー ビス が現 代 に強 調 され る こ との意 味 とそ の もっ 問 題 性 を あ らた め て探 るなか で 、社 会 福 祉 理 論 研 究 に今 求 め られ て い る真 の 課 題 を 明 らか に し
た い と思 う。
2福 祉 サ ー ビ ス の 起 源 と展 開
社 会福 祉 領 域 にお け る現 物 ・サ ー ビス手 法 の起 源 は む しろ貨 幣 的 手 段 よ りは 古 い。 主 に貧 困 救済 と して始 ま った この領 域 の救 済手 法 は、現物 での給 付 や 、 と りわ け施設収 容 と して展 開 され た。 その理 由 は主 に二 つ あ った と考 え られ る。一 っ は近 代 家族 の 形 成 ・展 開 と商 品 経 済 の 消費 生 活 場 面 にお け る浸 透 の程 度 の問 題 で あ る。 そ もそ も生活 の必 要 は直 接 的 には現 物 か サ ー ビス か に よ って充 足 さ
れ るの で あ って 、 貨 幣 は その調 達 手 段 で しか な いが(非 貨 幣 とい う意 味 は 、 し
たが って 貨 幣 を媒 介 と しな い この直 接 の ニ ー ド充 足 そ の もの を意 味 す る こ とは
明 らか で あ ろ う)、 一 般 的 に近 代 社 会 に お け るそ の充 足 の様 式 は、商 品 と して の
生 活 財 の市 場 か らの 貨 幣 を 介 した調 達 と、 この生 活財 を 家事 労 働 や ケ ァ な どの
一 定 の 労 働 に よ って 変 換 しっ っ生 活 を 自主 的 に運 営 して い く近 代 家族 の成 立 に
よ って特 徴づ け られ る。 この充足 様式 は、生 活財 の商品 と して の発 達 の程度 、家
事 労 働 を軽 減 す る加 工 食 品 や電 化 製 品 な どの 生 活 財 の浸 透 の程 度 、近 代 家 族 そ
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の もの の 変 化 、 あ る いは女性 の労 働 市場 へ の参 加 の促 進 、 な どの 要 因 に よ って 変 化 す るが 、 一 般 的 に は家族 内部 の労 働 へ 依拠 す る部 分 は縮 小 し、 商 品経 済 へ の組 み 込 ま れが ます ます 進 ん で い くと考 え られ て い る。 しか し、 もち ろん初 期 の段 階 に お いて は この よ うな必 要 の充 足 様 式 そ の もの は社 会 全 体 に未 成熟 で あ り、 一 定 程 度 の現 物 によ る生活 財 の調 達 や 家 事使 用 人層 へ の依 存 な ど旧社 会 の 要 素 す ら色 濃 く残 る状 況 が あ った。 特 に貧 困 層 にお いて は、家 族 その もの の形 成 自体 不 十 分 で あ り、住 居 や 家財 道 具 を 所 持 で き な い ま まに手 か ら口へ の生 活 を余 儀 な くされ、 子 ど もや 老 人 、病 人 や障 害 者 な どは 放 置 せ ざ るを え な い状況 が あ った。 したが って、 その救 済 や改 善 が まず施 設 や 食料 、薬 な ど現 物 ・サ ー
ビス の供 給 によ って 先行 され た の は 当 た り前 だ った と もいえ よ う。
第二 に、 貧 困救 済 が 、一 般 市民 や労 働 者 の 「普 通 の 生 活 」 とは 区別 され た上 で許 容 され る一 つ の 方策 と して 、貨 幣的 手 法 が 「わ ざ と」 避 け られ た とい うこ
とが あ る。 す な わ ち 、貨 幣 を媒 介 と した市 場 で の交 換 の担 い手 は独 立 した平等 な市 民 、労 働 者 で あ り、貨 幣 に よ る生 活 財 の調 達 と自主 的生 活運 営 は近 代 社会 にお け る労 働 者 、 市 民 の 自立 の 実体 的 内容 で あ った。 この一 般 市 民 や労 働 者 の 自立 した 「普 通 の生 活」 を明 確 にす る上 で、 貧 困 救 済 は非貨 幣 的 な現 物 と生活 指導 を含 む サ ー ビス に限定 す る方 が望 ま しい とい う点 が 強調 され たわ けで あ る。
したが って この場 合 の現 物 ・サ ー ビス手 法 は、選 挙 権 の剥奪 等 と同 様 に、「窮民 の証 」 を意 味 した と いえ よ う。
第 一 の理 由 は、 経 済社 会 的基 盤iか ら説 明 され るが 、 第二 の理 由 は貧 困 認 識 と
政 策 判 断 と い う価 値 の問 題 を 含 ん で い る。 なお 、 この 価 値判 断 は、 貨 幣 は 「 普
通 の生 活 」 の手 段 で あ り、 それ とは 区別 され る 「貧 民 」 を救 済 す る方 法 は貨幣
以外 とされ たの で あ るが、現在 の議論 は、貨 幣 は 「 貧 困 ・低所 得」 と関わ り、サ ー
ビス は 「普 通 の生 活 」 と関 わ る と して お り、 ち ょ うど逆 にな って いる ことは興
味深 い。 この点 は後 で またふ れ る こ とに な る。 こ う した ことか ら、社 会 福祉 の
初 期 の 貧 困 救 済 段 階 にお いて は、 貨 幣 的給 付 は あ ま り歓 迎 され ず 、現 物 ・サ ー
ビスが 好 ん で 使 わ れ た。 この よ うな初期 の福 祉 サ ー ビス と して は、主 に次 の よ
うな三 っ の 内容 の展 開 が あ った と考 え られ よ う。 一 つ は施 設 にお け る貧 困救 済
に代 表 され るよ うな 、通 常 の衣 食 住 や ケ アを 直接 施 設 処 遇 の形 で 供給 す るサ ー
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ビスで あ る。 も う一 っ は居 宅貧 困者 へ の治 療 的 も しくは 自立 促 進 的 な友 愛 訪 問 サ ー ビス で あ る。 三 っ 目 は施設 処 遇 に付 随 して 、 あ る いは ス ラ ム な どの社 会 改 良 事 業 と して 地 域 で行 わ れ た保 健 医療 や教 育 、 就 労 指 導 、 あ る いは住 宅改 善 な
どの、 後 には明 確 に専 門 分 化 され て い くサ ー ビス供 給 で あ る。
第 一 の 内容 は 、 イ ギ リス新 救 貧 法下 にお け る院 内救 済 を そ の典 型 と して あ げ る こ とが 出来 る よ うに、救 済 貧 民 の在 宅 生活 や貨 幣給 付 を拒 否 す る と ころ に生 まれ た。 したが って、多 くの意 場 合 は、貨 幣 的 手 法 と互 換 的 で あ る。 もちろ ん 、 家 族 か ら放 逐 され た 子 ど もや病 人 、 障 害 者 、高 齢 者 な どの処 遇 は、 一 般 に は そ の保 護 や 発 達 を 引 き受 けて い る近 代 家 族 の機 能 を代 替 す る もの で あ るか ら、 そ の部 分 で は貨 幣 的 手 法 と互 換 的 とは必 ず しもいえ な い。 いず れ に して も、 必 要 充 足 の 大 前 提 と して の生 活財 そ の もの、 それ を介 した処 遇(家 事 や ケ ア に あ た るの も)の 給 付 と して の 福祉 サ ー ビス と考 え て 良 か ろ う(も っ と も、 救 貧 法 下 で は そ の処 遇 が 劣 等 処 遇 で あ った わ け で あ るが)。
二 っ 目のサ ー ビス の ル ー ツ と して は 、 イ ギ リスで は その救 貧 法 の対 極 を成 す 慈 善 組 織 協会(C.0.S)の 訪 問生 活指 導 、わ が 国 の方面 委 員 のサ ー ビス な どが あ げ られ る。 この 特徴 は 、衣 食 住 な どの 生活 財 、 あ るい は それ を介 した 家事 や ケ ア に代 わ る処 遇 その もの で は な くて 、 それ らを利 用 しっ っ 自主 的 に生 活 を 運 営 す る能 力 、 た とえば 生 活 財 の合 理 的 な選 択 や 調 達 、家 計 のや りく り、 臨 時 的 な 必 要 や失 業 ・疾 病 時 な ど危 機 へ の対 応 、 と い った能 力 を個 別(ケ ー ス)の 相 談 、 調 査 を 通 して 識 別 し、 そ の力 を 削 が な い よ うな救 済 に限定 しっっ 、貧 民 の 自立
=市 民 と して の 成長 を促 そ う と した もの で あ った。 近 代 社会 は、一 定 の 貨 幣 収 入 を その 眼前 に お けば 、個 々 の世 帯 は 自由 に それ ぞ れ の方 策 で 生 活 を 営 み うる とい う前提 に立 って い る。 しか し、C.0.Sは 貧民 は こ う した運 営能 力 の点 で劣 る が ゆ え に貧 困 で あ る と認 識 し、 したが って 金 銭 や 衣 食住 の サ ー ビス の均 一 的 な 給 付 に反 対 し、 この運 営 力 を高 め るよ うな個 別 ケ ース を扱 う技 術eの ち に ケ ー ス ワー ク等 の専 門技 術 とな る もの を介 した サ ー ビスを 強調 した の で あ る。 こ こ で、 サ ー ビス は、現 物 や ケ ア の供 給 で あ るば か りで な く、個 別援 助 技 術 そ の も の を示 す よ うに な って い く。
第 三 は、 も と も とは第 一 の タイ プの 中 か ら生 まれ 、後 に は専 門 サ ー ビス と し
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て分 化 して い った よ うな、生 活 の あ る局 面 で のサ ー ビス の給 付 で あ る。 施 設 か ら生 ま れ た もの と して は、病 院 、障 害 児 教 育 、 幼児 保 育 、 職 業 訓 練 ・就 労 指導 な どが あ げ られ よ う。 もち ろん ワー クハ ウスで の職 業 訓 練 は いや が るよ うな仕 事 の強 制 で あ った と い うよ うな制 裁 的サ ー ビスの要 素 が強 か った し、 わ が 国 も
含 め て 、施 設 の子 ど もた ちが工 場 や植 民 地 の労 働 力 と して次 々 に送 り込 まれ て い く就 労 指 導 が な さ れ て い た こ と も確 認 して お く必 要 が あ ろ う。
また 、 ス ラム に お け る社 会 改 良活 動 や 、 わが 国 の経 済保 護 事 業 と呼 ばれ た戦 前 の地 域 社 会 事 業 の 中で は、住 宅 、職業 紹 介 ・職業 訓 練 、公 益 質 屋 、公設 市 場 、 社 会教 育 、保育 な ど、生活 とかか わ るあ らゆ る専 門 サ ー ビスが生 ま れて い る。 こ
こで は、施 設 とは異 な って、 一 応 地 域 で の そ れ ぞ れの 私生 活 を前 提 と して 、 そ の 自立 生 活 を 支 え る社 会 資源 の 改 良 とい う視 点 か ら、 非市 場 的 サ ー ビスが 部 門 別 に成 立 し始 あ てヤ・る こ とに注 意 した い。諸 サ ー ビス は、個 々 の生 活 資源 で は な く、 地域 の 共 通 の 社 会 資源 で あ る とい う位 置づ けが な され るよ うにな って い るので あ る。 しか も この 時点 で は、 これ らの諸 サ ー ビス全体 が 、社 会 事 業 で あ り、 福 祉 サ ー ビス で あ った点 も重 要 で あ る。
さて 、 以上 の よ うなサ ー ビス の展 開 の傍 らで、 次 第 に貨 幣 的手 法 に よ る新 し い貧 困 救済 ・予 防 の形 態 が 発 達 し、 いわ ゆ る福 祉 国 家 の成 立 を促 して い った こ とは あ らた め て い う まで もな い。 社 会保 険制 度 、 居 宅 で の失 業 扶 助 や 無 拠 出年 金 な どの新 しい公的 扶 助 制 度 の 導入 は給 付 の対 象 を普 通 の労 働 者 まで い っきに 拡大 し、 「普 通 の生 活 」 にお け る危機 を回 避 す る所 得保 障 と して の整 備 が進 め ら れ た。 「 普 通 の生 活 」 にお いて は、 そ の基 本 的 自由や 政 治 へ の参 加 の と と もに、
先 に述 べ た必 要 充 足 の様 式 が尊 重 され ね ば な らなか った か ら、サ ー ビス的 手法 に よ る介 入 よ り、貨 幣給 付 が好 まれ た ことは これ ま た 自然 の成 り行 きで あ った。
も っと も、 わが 国の 救 護 法 の よ うに 、施 設 建 設 の 費用 節 約 や 、家 族 扶 養 の尊 重
な どを理 由 と して、 居 宅 にお け る貨 幣給 付 が 「わ ざ と」 導 入 され る場 合 もあ っ
た。形 態 は反 対 で あ るが 、 貨 幣 を廃 して 施 設 処遇 を 「わ ざ と」 押 しっ けた経 緯
と同様 の価 値 判 断 が こ こに働 いて いた こ とは興 味深 い。 貨 幣 か 現 物 ・サ ー ビス
か の手 法 は、 それ 自体 に優劣 が あ るわ けで は な く、 そ の背 景 とな る社 会 経 済 的
文脈 、 お よ び単 一 で は な い価 値 基 準 に基 づ いて い た こ と確 認 して お き た い。
社 会 福祉 理 論 に お け る 「福 祉 サ ー ビス」 の位 置 と意味 9
これ らの貨 幣給 付 と諸 サ ー ビス に一 定 の 体 系 を与 え た のが 、 戦 後 の福 祉 国 家 の 公 的領 域 に お け る制 度 整 備 で あ った。 イギ リス を例 に取 れば 、 社 会 保 険 を中 心 と し国 家扶 助 を付 加 した所 得 保 障 の系 列 、 保健 医療 サ ー ビスや 教 育 の よ うな 一 般社 会 サ ー ビス の系列 、そ して残 され た様 々な特 定 サ ー ビス の系 列 の三 つが 、 財 源 や行 政 機 構 の分 業 を伴 って分 類 され た。 ただ し、 第二 の系 列 と第 三 の系 列 のサ ー ビス の区別 は、後 に も述 べ るよ うに必 ず しも明確 な もので は なか った。第 二 の もの は、 後 に も検討 す るが 、 よ り一 般 的 、 公 共 的 な生 活 基 盤 と して の性 格 を も って いた と い う こ とは で きよ う。三 番 目の もの は、T.H.マ ー シ ャル がB.ロ
ジ ャー ス とJ.デ イ ク ソ ンの著 書 か ら引用 しっ っ 「"福 祉 諸 サ ー ビス の部 門 は 、あ たか も、古 い公 的扶 助 部 門の残 余 遺産 受 取 人"の よ うな もの で あ った。"残 余 的"
とい う言 葉 は特 に適 切 で あ る。 なぜ な らば遺 産 は 「 救 貧法 」 が 解 体 した 時、 諸 専 門 機 関 に委 託 す る こ とが で きな い福 祉 サ ー ビスの寄 せ集 め の は ん ぱ な ものか ら構 成 され て いたか らで あ る。」(マ ー シャル、1990、P209)と 述 べ た よ うに、
それ 自体 の 中 に特 徴 が あ る と い うよ りは、 第 一 と第二 の もの の体 系 か ら取 り残 され た諸 サ ー ビス の不 特 定 な総 称 に過 ぎな か った。 ただ し、異 な って い るの は
「か って被 救 血窮 民 と して 分類 され た の で あ るが 、やが て一 般 に クラ イ エ ン トと 呼 ば れ そ の よ うに処 遇 さ れ るよ うにな ったの で あ る。 ・… もち ろん クラ イエ ン トの ほ とん どは 事実 上 、 あ いか わ らず 貧 困 で あ ろ う。 しか し彼 らは もはや その よ うな もの と して は 分類 され る こ とは な いで あ ろ う。 この変 化 はサ ー ビス の内 容 とその管理 方法 の双 方 に影 響 を与 えず には おか な か った」(同 上 、p211)こ と で あ った。
な お、 イ ギ リス の場 合 は、 公的 扶 助 にお け る貨 幣 給 付 とinkindの 給 付 を一 応 分 離 す る こ と によ って、 救貧 法 の 痕跡 を 消 し去 ろ う と したの で あ るが 、 ヨー
ロ ッパ の他 の 国 で は 公 的扶 助 の内 部 で の現 金 給 付 とサ ー ビス給 付 が 並 列 して残
り、所 得維 持 と多 様 な現 物 ・サ ー ビス援 助 が組 み合 わ され た形 で その 「(救貧 法
の)人 間 化 と現 代 化 」(同 上 、p105)が 試 み られ た。 わ が 国 の場 合 は居宅 保 護 に
お け る現 金 給 付 が 中 核 とは な ったが 、 施 設 保 護 や 若干 の現 物 支 給 が 加 わ り、 ま
た 「自立 助 長 」 の 目的 で いわ ゆ る 「公 的 扶 助 ケ ー ス ワー ク」 が強 調 さ れ た こ と
は周 知 の と ころで あ る。 また 、経 済保 護 事 業 に含 まれ て いた多 くの サ ー ビスは 、
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一 般 公 的 サ ー ビス と して 全 く異 な った行 政 機 関 に取 り込 まれ 、 社 会 福 祉 の範 囲 か らは除 か れ た。 た とえば 、住 宅 、職 業 紹 介 、職 業 訓 練 、 消 費 者 保 護 サ ー ビス な どが そ れ らで あ る。 敗 戦 直後 の社 会 事 業 の構想 の 中 に は、 経 済 保 護 事 業 に よ る 自立 生 活 の支 援 こそ戦 後 社 会 福祉 の使 命 と い う捉 え方 が 描 か れ て い るが 、現 実 の展 開 で は 、 それ らの資 源整 備 は他 の行 政 部 門 の業 務 とな って い き、 経 済保 護 事 業 とい う用 語 そ の ものが 戦 後 社 会福 祉 か ら削 除 され て い った の で あ る。
この よ うに所 得 保 障 と一 般 サ ー ビス、福 祉 サ ー ビスの 区分 は 、 国 に よ って さ ま ざ ま な展 開 を みせ たが 、一 っ の特 徴 は、 いわ ゆ る福 祉 サ ー ビス と して 「残 さ れ た」諸 サ ー ビスの位 置 づ けが 、必 ず しも明瞭 で は な い ことで あ った。 しか し、
そ の後 の福 祉 国 家 の展 開 、特 に70年 代 以 降 は 、 この 第三 のサ ー ビス の肥大 化 と そ の新 しい位 置 づ け を要 請 して い くこ とにな る。ILOの1984年 の報 告書 「lnto thetwenty‐firstcentury:thedevelopmentofsocialsecurity」 で
は21世 紀 の社 会 福 祉 の課 題 と して この サ ー ビス部 門 の役 割 の増大 を挙 げ、そ の 理 由 と して次 の よ うな社 会経 済 的基 盤 を指 摘 して い る。 す なわ ち 、人 口の高 齢 化 と特 に女 性 の 高齢 者 の増 大 、 女性 の雇 用 市 場 へ の参 加 の拡 大 、 ひ と り親 家庭 の増 大 、産業 構造 の変 化 や技術 革 新 に よ る就業 訓 練 や再 訓練 の必 要 性 の拡大 、失 業 者集 団 の形 成 、 都 市 化 に よ る非入 格 化 と家 族 の 縮小 で あ る。 こ う した社 会 経 済 的文 脈 の 中で 、 福 祉 国 家 の財 政危 機 と、 中 間層 まで含 ん だ高 齢 者 ケ アな どの 新 しいサ ー ビス供 給 の要 望 の 高 ま りに た いす る一 つ の価 値 判 断 の 結 果 と して登 場 した のが 、 ① コ ミュニ テ イベ ース で② 家 族 ・近 隣 や市 場 部 門 に よ るサ ー ビス 供給 を従 来 の公 的 供 給 に ミックス させ た、 ③ 「 パ ー ソナ ル ・ソー シ ャル サ ー ビ ス」 な い しは そ の 日本 版 と して の 「対 人 」 社 会福 祉 サ ー ビス、 あ るいは そ の地 域 で の展 開 を意 識 した コ ミュニ テ ィ ・ケ アの 「 普 遍主 義 的 」 か っ 「計画 的」 供 給 で あ った。
このパ ー ソナ ル ・ソー シ ャル サ ー ビス、 ま たは 「対 人 」社 会 福 祉 サ ー ビス は、
ベ ヴ ァ リッ ジの5っ の 巨悪 に対 応 す る、所得 維 持 、保健 医療 、住宅 ・都 市 環境 、
雇用 、教 育 の5っ の伝 統 的 な ソー シャル ・ポ リシー、な い しは広 義 の ソー シ ャル ・
サ ー ビス に付 け加 え られ た6番 目の サ ー ビス とも呼 ばれ る。 その内容 は国や研 究
者 に よ って ま ち ま ち に例 示 され て い るが 、 老 人 、 障害 者 、 児 童 の ケア と地 域 で
社 会 福祉 理 論 に お け る 「福 祉 サ ー ビス」 の位 置 と意 味 11
の そ の 個 別 生 活 を 支 え る た あ の 雑 多 な サ ー ビス が 共 通 に 挙 げ られ て い る 。 た と え ば わ が 国 で は 在 宅 に お け る 高 齢 者 の 生 活 を 支 え る た あ の 、 ホ ー ム ヘ ル プ サ ー
ビス 、 食 事 サ ー ビス 、 入 浴 サ ー ビス 、 住 宅 改 善 、 移 送 サ ー ビス な ど の 他 、 緊 急 通 報 サ ー ビ ス 、 情 報 提 供 サ ー ビス 、 福 祉 機 器 な ど の サ ポ ー トサ ー ビス 、 あ る い は 財 産 管 理 サ ー ビス な ど ま で 含 ん で 、 多 様 な 形 で 拡 大 さ れ つ つ あ る こ とが 指 摘 さ れ て い る(高 橋 、pp28‑36)。 先 に 述 べ た 言 葉 で 言 え ば 、通 常 の 衣 食 住 や 家 事 ・介 護 と い った か っ て 施 設 の 直 接 処 遇 と して 供 給 さ れ て い た サ ー ビ ス が 、 地 域 で の 居 宅 生 活 を 基 盤 に 「単 品 化 」 さ れ た もの が 、 そ の コ ア に あ る と 考 え られ る。 な お 、 特 に 施 設 で は な く、 地 域 で の 居 宅 生 活 を 支 え る サ ー ビス 展 開 に 重 点 を 置 く と い う意 味 を こめ た もの と して 、 パ ー ソ ナ ル ソ ー シ ャ ル サ ー ビス に か わ って 、 コ ミ ュニ テ ィ ・ケ ア と い う用 語 も頻 繁 に つ か わ れ て い る。 た だ し コ ミ ュ ニ テ ィ ・ケ ア で は 、 保 健 医 療 サ ー ビ ス も含 ま れ る こ とが 多 い 。
イ ギ リス で は 、1970年 の 地 方 公 共 体 社 会 サ ー ビス 法 に よ って 、 こ の パ ー ソ ナ
ル ・ソ ー シ ャル サ ー ビス の 統 一 的 な供 給 が 計 画 さ れ て 以 来 、 ホ ー ム ヘ ル プ 、 ホ ー
ム ケ ア 、 デ イ ケ ア 、 給 食 サ ー ビス な ど の サ ー ビス が 発 展 し、 福 祉 サ ー ビス へ の
公 共 支 出 は1955年 か ら1975年 ま で の 間 の 、 特 に後 半 期 に 大 成 長 した と い わ れ
て い る。(ジ ャ ッ ジ 、pp3‑4)ま た 、 ニ ー ル ・ギ ル バ ー トは ア メ リカ で の この
サ ー ビス の 発 展 が 、 従 来 の ソー シ ャ ル ・ワ ー ク と して の"ソ フ ト"な サ ー ビス
か ら 、 ケ ア や 家 事 サ ー ビ ス 、 移 送 、 余 暇 活 動 な ど の 「手 に触 れ る こ と の で き る
サ ー ビス の 提 供 」 す な わ ち"ハ ー ドな"サ ー ビス の供 給 の 方 に 重 点 を 移 し た こ
と を 指 摘 して い る(ニ ー ル ・ギ ル バ ー ト、1995P77)。 た と え ば1974年 の 社
会 保 障 法 修 正 タ イ トルXXに お い て は 、 家 事 や 了 ど もの デ イ ケ ア が 一 貫 して そ の
リス トの 上 位 に あ り 「そ れ は過 去 に お い て 公 的 援 助 に依 存 す る人 々 に対 す る ソー
シ ャ ル ・ケ ー ス ワ ー クの 主 要 な 事 業 を 特 徴 づ け て い た 人 格 的 な 欠 陥 あ る い は 資
格 の 欠 如 と い っ た 考 え 方 と は 関 連 し な い 」(p79)と 述 べ て い る 。 つ ま り、 福 祉
サ ー ビ ス は 、 こ の 新 しい形 態 に お い て 貧 困 の 解 決 で は な く、 一 般 的 な 「人 間 的
発 展 お よ び 生 活 の 質 の 向 上 を 目指 す 」(同 上 、p78)と い う大 そ れ た 計 画 に入 り
込 ん で しま っ た の で あ り、 した が って 人 間 生 活 の 向上 に役 に 立 つ と思 わ れ るサ ー
ビス は ど ん な もの で も取 り込 あ る ほ ど広 範 で 多 様 な もの と して 位 置 づ け られ る
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こ とにな った。 しか もこれ らの サ ー ビス の 「普 遍 主 義 的 」 供 給 は、 中 間層 の利 用 を 促 して い った の で、 ます ます 高 度 で 洗練 され た ものが 多 様 に要請 され るよ
うに な った とい うの で あ る。
だが 、 こ う したパ ー ソナ ル ・ソー シ ャル サ ー ビス の急 速 な拡 大 や それ へ の期 待 は 、次 第 に次 の二 つ の 矛盾 を露 呈 させ て い か ざ るを え な か った。 一 っ は、 そ の範 囲 の拡 大 が 福 祉 サ ー ビス と して の境 界 を む しろ曖 昧 に しなが ら進 んで い る こ とで あ り、二 っ 目 には貨 幣 給 付 と絡 み なが ら、 それ との互 換 性 を深 めつ つ 展 開 され て い る とい う ことで あ る。 第 一 の点 に関 して は、 まず これ らのサ ー ビス が 、 中 間 層 まで 広範 に含 ん だ地 域 で の 「普 通 の居 宅 生 活 」 を基 盤 と して い るが た め に、 医 療 や 住 宅 な ど他 の社 会 サ ー ビス との融 合化(高 橋)が 進 ま ざ るを え ず 、 したが って福 祉 サ ー ビス とそれ らの境 界 は ます ます 曖昧 化 して い る とい う 現 実 が あ る。 これ ま で分 業 と して理 解 され て い た社 会 政策 の 他部 門 との現 場 レ ベ ル にお け る直接 的 関 わ りが 拡 大 し、福 祉 サ ー ビスの 独 自性 は ます ます ぼん や
りと して い る。 も と もと、 「パ ー ソナ ル ・ソー シャルサ ー ビス」 とい う用 語 は、
「福祉 」 と い う言 葉 の曖 昧 性 を避 け、 「対 象 とな る諸 サ ー ビスの 共 通 の実 施 方 法 に照 ら して定 義 さ れ た」(マ ー シャル 、1990P208)と いわれ て い るが 、 この 手 法 を強調 す れ ば 、 同様 に 「パ ー ソナ ル」 なサ ー ビスが 同 種 の もの と して 出現 して くる。 そ こで わ が 国 で も福 祉 サ ー ビスで は な く社 会 サ ー ビス とか 、 ヒュー マ ン ・サ ー ビス とい うよ うな別 な用 語 で これ らの 融合 化 現 象 を捉 え る傾 向 もで て きて い る(高 橋 、1989、 栃 本 、1989)。
さ らに、以 」 二の よ うな居宅生 活 を支援 す るた めのパ ー ソナ ル ・ソー シャル サ ー ビス は、 「普 通 の生 活 」が む しろ前 提 に して い た家族 や 近 隣 の無 償 サ ー ビス や、
市 場 部 門 の 商品 な ど、む しろ 「本 来 」 の 「パ ー ソナ ル 」 な サ ー ビス との関連 性 を も拡 大 させ て い る。 それ は、 イ ギ リス で の この サ ー ビス の導 入 が 、 地域 レベ ル で の イ ンフ ォーマ ル な ケ アや市 場 の サ ー ビス との共 同 を は じめ か らね らって いた こ と にみ られ る よ うに、 福 祉 国 家 の財 政 問題 を一 っ の判 断材 料 と しなが ら 登場 した とい う側 面 か ら も説 明で き るが 、同 時 にそ もそ も 「普 通 の生活 」 とは、
こ う した市 場部 門 と貨幣 、 家 族 の無 償 の サ ー ビス に よ って成 立 して い る、 とい
う ことを あ らた めて 思 い起 こさせ た と もいえ よ う。 ま た、 市場 に お け る一 般 的
社 会 福 祉理 論 に お け る 「福 祉 サ ー ビス」 の位 置 と意 味 13
なサ ー ビス 商 品 の 発展=サ ー ビス経 済 化 が この 間著 し く発 展 した と い う こ と と も深 く関 わ って い る。 「普通 の生活 」を否定 す ると ころ に生 まれた施設 収 容的 サ ー ビス給 付 で は な く、 その 「普 通 の 生 活 」 の 一 定 の 質 の維 持 や 向上 を支 え るサ ー ビスが 積極 的 に期待 され た とす る と、 ニ ーズ 充足 は、 そ れが 「パ ー ソナル 」 で あ れ ば、福 祉 サ ー ビスで も、市場 のサ ー ビスで も、家 族 の サ ー ビスで もよ い、 と
い うこ とにな る。 「 諸 専 門 機 関 に委託 す る こ とが で きな い福 祉 サ ー ビス の寄 せ 集 め の は ん ぱ な もの 」 と して の福 祉 サ ー ビスは 、 国民 の すべ て に開 か れ たパ ー ソ ナ ル ・ソー シ ャル サ ー ビス と して 変 身 した後 も、 あ いか わ らず その 「固 有 」 の 意 味 は不 明 瞭 で 、 また そ の位 置 づ け は ます ます不 安 定 な もの に な って い る と考 え られ るの で あ る。
第 二 に、 この よ うなパ ー ソナ ル なサ ー ビス の提 供 は 、貨 幣 給 付 とサ ー ビス給 付 との 決定 的 な分離 を前 提 に進 ん だ わ けで は 決 して な か った 。 も と も と、 北 欧 や イ ギ リス な ど とは異 な って 、大 陸 の 国 々で は社 会 扶 助 と して 「人 問 化 」 され た扶 助 は 、現 物 扶 助 、現 金 扶 助 の 両方 の形 態 を ミックス させ て き た。 イギ リス の よ うに両 者 の 分担 を は っき りさせ た 国 にお いて も、 サ ー ビス給 付 は さ ま ざ ま な 「貨 幣」 との絡 み合 いの 中で 進 ん だ こ とが知 られて いる。 この 矛 盾 を詳 細 に 検討 した ミッシ ェル.ヒ ル は、サ ー ビス供 給 が、① 所 得 にかか わ りな く 「普遍 的」
に供 給 され る無 料 の社 会 サ ー ビス、 ま た は② これ らの サ ー ビスの 市 場 価 格 で の 供給(サ ー ビス の シス テ ム それ 自体 と して は 、 これ らの サ ー ビス価 格 を支 払 え な い人 々は考 慮 しな い と い う含 み で)と い う二 っ の両 極 のモ デル と して は進 ま ず 、その 中間 の さ まざ まな絡 み合 い と して な され た ことを指 摘 して い る(MHill,
1990pp111〜143)。 す なわ ち、所 得 保 障 を 分担 して い る中央 政府 の 下 で介 護
手 当 な どの所 得 保 障 が進 ん だ だ けで な く、 地 方 政 府 にお いて も、 サ ー ビス利 用
者 へ の費 用 徴 収 、 ミー ンズ テ ス トに よ る料 金 減 免 に よ って 「お金 」 の 問題 に敏
感 に な り、 従 来 「お 金 」 を扱 う こ とを忌 み嫌 って きた ソー シ ャル ワー カ ー た ち
も、 そ の ケ ア マ ネ ジメ ン トを賄 う費 用 を委 ね られ るな ど、 さ まざ ま な形 態 で の
貨 幣 との絡 み 合 いが あ り、 さ らには利 用 者 へ の直 接 の貨 幣給 付 、切 符(バ ウ チ
ャー)給 付 な どさえ も実 施 され て きた とい う(GaryCraig,1992)。 特 に近 年
は障 害 者 の グ ル ー プ な どか ら、彼 らの 自立 生 活 に お け る選択 権 の保 障 の た め に
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貨 幣給 付 が 望 まれ て お り、 この こ とは イギ リス の 「CashとCareに っ いての二 分法 が失 敗 した ことを示 して い る と思 わ れ る」とG.ク レッグは指摘 して い る(同 上P47)
わ が 国 で ももち ろ ん 、 サ ー ビス は さ ま ざま な貨 幣 給 付 や 費 用徴 収 、料 金 制度 を伴 って 展 開 されて いる。各 地 方 自治 体 は、 ま った く無 料 の サ ー ビス供 給 の他 、 費 用徴 収 を 伴 った ホ ーム ヘ ル プサ ー ビス や デ イ サ ー ビス、 ミー ンズ テ ス ト付 き
のお む っ の 支給 あ る いは そ の貨 幣 給 付 との選 択 、 な どの制度 を導 入 し、 さ らに 介 護 手 当 、 見舞 金 、 祝 い金 な どの直 接 貨 幣給 付 や、 タ ク シー券 な どバ ウチ ャー 制 度 を も、 それ ぞ れ の不十 分 性 を不 問 に しつっ いわ ば 「手 あ た り次第 」 に試行
して きた 。 これ らの サ ー ビス と貨 幣 との絡 み合 いは 、① サ ー ビス の 「普遍 主義 的 」 拡 大 が 必然 化 す る利 用者 分 担 金 の問 題 、② 利 用 者 の現 実 的 貧 富 の差 へ の考 慮 、 ③ サ ー ビス 資源 の不 足 や ア クセ ス の不 公平 の是 正 問 題 、 ④ 施 設 か ら居 宅 ま で の間 の 中間 的居 住 形 態 を 含 あ た各 形 態 で の ケ ア サ ー ビスの 利 用 料 、 負担 額 の 格 差 。 た とえ ば 日本 で は施 設 と病 院 、 保 健施 設 、在 宅 で の利 用 者 負 担 の格 差 問 題 、 ⑤ 利 用 者 か ら見 た選択 権 の問 題 、 と くに 中 閻層 を母 体 とす る消 費者 の権利 の主 張 、 な どの矛 盾 の是 正 を、 貨 幣 を通 して な されね ば な らなか った た め に生 じた と解 釈 で き る。 特 に最後 の点 は、「普 通 の生 活 」の ど こまで が 社会 によ って 援 助 され るべ きか、 その手 法 と して 、 サ ー ビス な のか 貨 幣 な の か 、 そ れ と も両 者 の最適 ミ ックスが あ りうるの か とい う基本 的疑 問 を投 げ か けた もの と して 、注
目 に値 す る とい え よ う。
3パ ー ソ ナ ル ・ソ ー シ ャル サ ー ビ ス と し て の 福 祉 の 意 味
(1)パ ー ソ ナ ル ・ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス と し て の 福 祉 の 境 界 は ど こ か 福 祉 サ ー ビスが 、貧 困者 へ の 「普 通 の生 活 」を否 定 す るた め の サ ー ビスか ら、
貧 困 者 で は な く、一 般 カ テ ゴ リー に よ る 「普 通 の生 活 」 を支 え るため の サ ー ビ
ス に転 換 し、 その 目的 で はな くそ の実 施 方 法 に よ って特 徴 づ け られ る=つ ま り
パ ー ソナ ル ・サ ー ビス で あ る、 とす るな らば 、今度 は その よ うに拡 張 され たサ ー
ビス を 同種 の市 場 の サ ー ビス や他 の公 共 サ ー ビス 、 あ る いは戦 後 の福 祉 国 家の
社 会福 祉理 論 にお け る 「福祉 サ ー ビス」 の 位置 と意 味 15
サ ー ビス の 整 理 に お い て 示 さ れ た 一 般 サ ー ビ ス の 系 列 と区 別 す る基 準 は な ん だ ろ うか 。 既 に 見 て き た よ う に 、 「パ ー ソ ナ ル 」 と い う 「実 施 方 法 」 は 、 医 療 や 教 育 と も共 有 す る もの で あ る し、 も ち ろ ん 家 族 の ケ ア や 家 事 サ ー ビス は 、 も と も
とパ ー ソナ ル な もの で あ る。 こ う した 文 脈 に お け る 「ニ ー ズ の 充 足 」 と は 、個 々 人 や 家 族 の あ らゆ る生 活 の 側 面 を 網 羅 して と め ど もな く拡 人 す る傾 向 を も た ざ
る を え な い で あ ろ う。
こ の 点 に 関 して は 、 ま ず テ イ トマ ス の 公 共 サ ー ビス と社 会(福 祉)サ ー ビス との 古 典 的 整 理 を 見 る こ とか ら始 め よ う。 「 私 た ち は集 合 的 に組 織 さ れ た ソ ー シ ャル ・サ ー ビス(socialservices)と 、 集 合 的 に 組 織 さ れ た パ ブ リ ッ ク ・サ ー ビス(publicservices)と の 問 に 、 どの よ うな 区 別 を して よ い の か 一 ま た 区 別 を す べ きで あ ろ うか?つ ま り 『ソ ー シ ャ ル ・サ ー ビス 』 と は 何 か 、 ま た パ ブ リ ッ ク ・サ ー ビス と は 何 か?」(テ イ トマ ス 、1981P151)と テ イ トマ ス は 設 問 す る。 む ろ ん 「あ る点 で 、 これ らの 二 っ の 語 句 は 殆 ど相 互 に 置 き換 え る こ と が で き るで あ ろ う。 ・… 過 去 に お い て 英 国 で は 「social」 と 「public」 と い う ラ ベ ル は 、 お お む ね 手 当 た り次 第 にっ け られ た もの で あ る」(同 上 、p151)が 、 理 論 上 お お ま か に は そ の 区 別 が で き る と い う。 す な わ ち 、 これ らの サ ー ビ ス は 次 の4っ に 分 類 さ れ う る。
① 個 人 の ニ ー ドに応 じて 、 そ の 便 益 の た め に な さ れ 、 そ れ が 地 域 社 会 を 利 す るか 否 か は 問 わ な い で 提 供 され る 。 例 と して 老 人 の ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビス が 挙 げ られ る。
② 個 人 と社 会 の双 方 が 便 益 を 得 る。 例 と して 性 病 患 者 の 医 療 ケ ア が 挙 げ ら、 こ の よ う な病 気 の 蔓 延 を 防 ぐ こ と は 明 らか に コ ミュ ニ テ ィ の 関 心 事 で あ る。
③ 社 会 に は 有 益 だ が 個 人 に は 必 ず し も有 益 とみ な さ れ な い よ うな サ ー ビス 。 例 と して 保 護 観 察 サ ー ビス な ど 「個 人 の ケ ー ス ワ ー クの 用 意 と結 び つ け られ た[法 と 秩 序]の 関 心 事 」 と して の サ ー ビ ス(同 上P154)が 挙 げ ら れ る 。
④ 地 域 社 会 に は 有 益 だ が 、単 一 の 個 人 の 便 益 に は 帰 し得 な い もの 。 例 と して 、 都 市 計 画 や 公 園 が 挙 げ られ る 。
こ こ で テ イ トマ ス は 、 そ の サ ー ビス が 特 定 化 さ れ た 個 人 の 重 点 的 便 益 と か か
わ る機 能 を 有 す る の か 、 非 個 人 的 な(イ ンパ ー ソ ナ ル な)無 差 別 サ ー ビ ス な の
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か と い うサ ー ビ ス の 機 能 が 区 別 の 基 準 に あ る と い う。 だ が こ の 区 分 は む しろ 一 般 に 公 共 経 済 学 に お いて 用 い られ る公 共 財 の 概 念 に近 く、 複 数 の 人 々 の 便 益 か 特 定 個 人 の 便 益 か と い う基 準 を 色 濃 く含 ん で い る よ う に もみ え る。 ④ は あ き ら
か に イ ン ・パ ー ソナ ル な サ ー ビス で あ り利 益 も社 会 全 体 に あ る か ら、 公 共 性 が 高 く、 公 共 サ ー ビス とか 、 一 般 的 な 生 活 基 盤 サ ー ビス と して 整 理 しや す い 。 ②
③ は 、 個 人 的 方 法 を 採 るが 、 利 益 は 社 会 に あ る。 ① は 方 法 も便 益 も特 定 個 人 に 帰 す る。 した が っ て 社 会(福 祉)サ ー ビス が 、 「パ ー ソナ ル 」 を 中 心 に置 く とす れ ば 、 ① だ け で な く② ③ を 含 ん で も理 解 さ れ るが 、 便 益 と い う意 味 で は 、 ① と
い う こ と に な ろ うか 。
こ れ と 同 様 な 議 論 と して 、 マ ー シ ャ ル は 、 権 利 と義 務 の 問 題 を 持 ち 出 して い る 。 マ ー シ ャ ル に よ れ ば 、 福 祉 サ ー ビス と は 、 医 療 、 金 銭 給 付 以 外 の 扶 助 と し て 与 え られ る サ ー ビス で あ り、 こ の 特 徴 は 、 「実 施 方 法 に 照 ら して 定 義 さ れ た 」 パ ー ソ ナ ル サ ー ビス だ と い って い る が 、 他 方 で 同 じパ ー ソ ナ ル サ ー ビス で あ る 教 育 や 医療 と は 異 な って い る こ と も指 摘 して い る。 す な わ ち 、健 康 と教 育 は、個 人 に と って 重 要 で あ るば か りで な く、 社 会 に と っ て も重 要 で あ る 。 そ れ は 市 民
の 権 利 で あ るだ け で な く 「そ れ に よ って 市 民 が 形 成 さ れ る プ ロセ ス 」(Marshal, 1981,P90.邦 訳 マ ー シ ャル 、1989、PP.161‑162)な の で あ り、 義 務 と混
じ り合 って い る 、 と い う。 「 現 代 の 教 育 と医 療 に 対 す る権 利 は 、 た ん に す べ て の 人 に よ って そ の 起 源 が 社 会 的 な も の で あ る と認 め られ て い る ば か りで な く、 同 時 に そ れ に よ って 個 人 が 社 会 に 同 化 さ れ(そ こか ら孤 立 しな い よ う に)、 そ して そ の集 合 的 福 祉 に頼 りか つ 貢 献 す る と い うメ カ ニ ズ ム の一 部 な の で あ る」(同 上 、 p91、 邦 訳p163)し か し、 「社 会 が 教 育 を う け 、 あ る い は 健 康 な 人 口 を 必 要 とす
る の と同 じ よ う に 、 幸 福 な 老 人 を 必 要 とす る と い う こ と は で き な い」。(同 上 、 p91、 邦 訳pp163‑164)「 これ らの 人 々 に与 え られ る サ ー ビス を 示 唆 す る動 機
は 、 利 害 で な く同 情(compassion)で あ る 。 ・… そ こ で 、 こ の 福 祉 に 対 して の 特 定 の 権 利 は 、 そ れ を 迫 ま り、 支 持 して い く力 と して 、 そ れ が 一 っ の 道 徳 的 権 利 で あ る と い う事 実 に 、他 の 権 利 よ り もよ り依 拠 せ ね ば な らな い」(同 上 、p92、
邦 訳p164)と い う。
マ ー シ ャル は こ こ で 権 利e義 務 が 貫 徹 す る世 界 を 「 社 会 」 あ る い は 「 一 般 」 の
社 会福 祉 理 論 に お け る 「福 祉 サ ー ビス 」 の位 置 と意 味 17
領域 と し、必 ず し も社 会 が 社 会 自身 に と って 不可 欠 とは しな い世 界 、 つ ま り本 来 は家 族 や近 隣 が な すべ き義 務 を社 会 が肩 代 わ りす るサ ー ビス を 福 祉 サ ー ビス と仕 分 け して い る とみ る ことが で きる。 っ ま り社会 自身 に と って の義 務 とは、テ イ トマ スや 公 共 経 済学 の い う社 会 に と って の便益 で あ るが 、 マ ー シ ャル は それ を もっ と強 く意 識 し、単 な る便 益 とい うよ り、社 会 と市民 の形 成 に不可 欠 なサ ー ビス と、 必 ず しもそ うで はな いサ ー ビス を 区別 したの で あ る。 結 局 、 マ ー シ ャ ル にお いて は、 「(初期 の)貧 民救 済 の場 合 、 そ の義 務 は一 人 の 人間 の他 の人 問 に対 す る もので あ り、社 会 保 障 や 医療 や 教 育 サ ー ビスの場 合 は、 国家 の市 民 に 対 す る、 あ るい は社 会 の 社 会 自身 に対 す る義 務 で あ ったの に対 し、老 人 や被 差 別 者 や 障害 者 に対 す る福 祉 を増 進 す る義 務 は、 人 々の 隣 人 に対 す る義 務 に基 づ いて い るので あ る」(同 上p92、 邦 訳p165)と い うこ とに な る。 あ るいは 「 人 間 の市場 で の価 値(資 本 主 義 的価 値)、 そ の市 民 と して の価 値(民 主的 価値)、 そ の 自分 自身 に対 す る価値(福 祉 的 価値)」(同 上p119邦 訳p209)と い う表現 が あ る点 も興 味 深 い。
テ イ トマ ス もマ ー シャル も福 祉 サ ー ビス は その利 益 が個 人 に帰 属 す る、 とい って い る点 で は共 通 して い る。 また、 そ の個 人 の 生 活 は、本 来 この社 会 に お い て は軽 々 し く社 会 や 他 人 が 干渉 しな い、 ユル ゲ ン ・ハ ーバ ー マ ス の い う私 的 生 活 領 域 の さ らに親 密 圏 域 にお け るパ ー ソナ ル な決 定 に よ って な され て い る もの で あ る。 そ こで 、 この領 域 で の 本 人 や家 族 の決 定 に よ って は充 足 され な いニ ー ドを 、 社 会 が援 助 す る こ とに よ って 、市 場 一市 民 一家 族 の バ ラ ンス が とれ て い くと認 識 され た といえ よ う。 この意 味 で 、 パ ー ソナ ル とは、 こ う した私 的 生 活 領 域 内 の家 族 や 近 隣 に よ る相 互 行 為 を示 し、 ま た こ う した私 生 活 領 域 へ の介 入 の技 術eパ ー ソナル ・スキ ル と して の サ ー ビス を媒 介 とす る こ とを 示 して い る
と解 釈 で き る。
今 、 この よ うな解 釈 を、 私 的 生 活領 域 とそ こか ら切 り離 され 、 異 な った原 理 を持 つ に至 った二 っ の近 代 的 な社 会 シス テ ム=生 産 領 域(労 働 と生 産:媒 体 と
して の貨 幣 に よ って 生 活 と連 結 す る)と 公 的 領 域(国 家 と行 政:媒 体 と して の
権 力 に よ って 生 活、経 済 と連 結す る)と の 関係 枠 組 みで 示せ ば、図1の よ うにな
ろ う。 生 活 領 域 に属 す るの は、根 源 的 に は人 間 の誕 生 か ら死 に いた るま で の生
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活 過 程 とその必 要 その もの 、っ ま り貨 幣 によ って制 限 され な いニ ー ド、 あ るい は次 代 の 人 間 の再 生 産 と社 会 化 、 人 格 、文 化 、規 範 な ど とい う要 素で あ る。 こ の領 域 に お け る必 要 の充 足 は、 公 的 領 域 や生 産 領 域 が モ デ ル と して期 待 す る independentな 市 民 、労働 者 ・顧客 だ けで な く、 赤 ん坊 や老 人 、病人 や 障害 者 な どの全 面 あ る いは部分 的 にdependentな 存 在 を 当然 視 野 に入 れて な され る こ
とにな る。公 的 サ ー ビス 、 あ る いは一 般 的 社 会政 策 は 、 この よ うな生 活領 域 の 中 の 、市 民 と して の要 素 、 労働 者 な い しは顧 客 と して の要 素 だ け を 「切 り取 っ て 」 国 家 や経 済 シス テ ムの 関心 事 とす る過 程 で形 成 さ れ て い く。 つ ま り 「社 会 が利 益 を う る」 とい う根 拠 で 、 その範 囲 の 必要 充 足 だ けが 公 的 領 域 の生 活 保 障 の シス テ ム に接 合 され て い く。 しか し、 マ ー シャルが 鋭 く見 抜 い たよ うに、 そ の他 の要 素 は、 あ くまで私 的生 活 領 域 の 中 の 、人 々 の同 情 心 や それ を揺 り動 か す諸 活 動 に委 ね られ る と い うわ けで あ る。
図1生 産 領域 ・公的領域 か らの生活 の切 り取 り
生産領域 財の生産 価値最大化
で蕊 騨 麟 ・ 嶺 饗離 ㌔ ㍉'
公 的領 域 官僚制 ・租税
、 網 繍 乳勲'
嶺驚 灘驚
社 会 福祉 理 論 に お け る 「福 祉 サ ー ビス 」の 位 置 と意 味 19
しか し、 テ イ トマ ス や マ ー シ ャル が例 示 した あ くまで パ ー ソナ ル な サ ー ビス にお いて も、次 の点 か らその一 般 性 や普 遍 性 、 あ るい は福祉 サ ー ビス の受 益 者 は 当該 個 人 だ け だ とは限 らな い こ とが強 調 され る場 合 が あ る。一 っ は ニ ー ドの 一 般 性 で あ る 。 その 便益 が 個人 に帰 属 す るよ うなサ ー ビスや 財 で あ って も、 そ う したサ ー ビスへ のニ ー ドが 多数 の人 々 に共 有 され て い る と見 な され る場 合 は、
そ の一 般 性 、 普 遍性 が 全面 に出 て 、 教 育 や 医 療 と類 似 の扱 い を受 け る こ とが あ る。 た とえ ば、わが 国で は保 育 へ のニ ー ドや近 年 の高 齢者 ケ アへ のニ ー ドは、通 常 その よ うに扱 わ れ やす い。
第 二 に、 ニ ー ドそ の ものが 社 会 に よ って作 られ た点 が 強 調 され る場 合 、 本 来 社会 全 体 が 「補 償 」 と して負 担 す べ き費 用 を、 福 祉 サ ー ビスが 代 替 す る、 と い う意 味 で公 共 的 性格 が 強 い とみ な され る ことが あ る。 高度 な産 業 組織 や都 市 化 、 戦争 や公 害 な どの 「被害 者 」が もっ さ まざ まな ニ ー ドへ の対 応 が それ で あ る。 ク ,リス トフ ァー ・ピア ソ ンは この点 に つ いて環 境 保 護 の立 場 か らの福 祉 国 家批 判
を と りあ げ、 そ の一 っ の論 点 と して 「福 祉 国 家 は また 、 資本 主 義 的 形 態 の産 業 組 織 に よ って 生 み だ され た、余 計 な ニ ー ズ に もこた え な け れ ば な らな い(た と え ば、 資 本 主 義 的 な強制 の もとで の就 労 の ス トレスに よ って 生 み だ さ れ た、 神 経 症 や アル コー ル中 毒 な ど)。」(ピ ア ソ ン、1996、P181)と い う見解 を紹 介 し て い る。 テ イ トマス も、 同 じ足 を失 った こ とか ら発す るニ ー ドも、戦 争 で足 を 失 う とい うよ うな 「補 償 」 な い しは労 災 の よ うな 「 業 績 へ の評 価 」 へ の対 価 と して な され る場 合 と、 ま った く個 人 的理 由 に よ る場 合 で は、 意 味 が 異 な る こ と こ とを 示 唆 して い る。 っ ま り、 この場 合 、 福 祉 サ ー ビス の受 益 者 は本 来 そ の費 用 負 担 をす べ きだ った社 会 にあ る、 とい う見 方 で あ る。
第 三 に次 の よ うな こ と も考 え られ る。 障 害 者 や高 齢 者 、子 ど もな どへ のパ ー
ソナル ・サ ー ビスは 、 当該 本 人 のニ ー ドに こたえ るだ けで な く、 む しろ家 族 が
負 担 して いた そ の重 荷 を 、一部 か全部 か 、社 会 が肩 代わ りす る こ とによ って 、ま
ず 家 族 に と って の利 益 を もた らす 。 さ らに その 家族 は、 これ らの サ ー ビス に よ
って 労 働 市 場 で の義 務 を果 た し、 ま た地 域 にお け る市 民 と して の義 務 も果 たす
こ とが で き る。 した が って 、 マ ー シ ャル の い うよ うな 、市 民 と国 家 の権 利 義 務
は、 や や 迂 回 的 な形 で 、 ケ ア の必 要 な 当該 個 人→ 家族 の負 担 の軽 減 → 社 会 の利
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益 と い う連 鎖 を実 現 させ ると考 え る こ と もで き る。 つ ま り、 マ ー シ ャル の 述べ た 同情 に基 づ く 「道 徳 的 権 利 」 で は な く、家 族 の市 民 と して の 、 あ る いは労働 者 と して の権 利 義 務 の 円滑 な行使 に と って福 祉 サ ー ビス は有益 で あ り、 その意 味 で は 、他 の社 会 サ ー ビス と異 な る こ とが な い。 この よ うな見方 が可 能 で あれ ば 、保 育 が 子 ど もの ニ ー ドに基 づ いて とい うよ り、母 親 の労 働 との 関連 で制度 化 され て い った側面 や 、 障害 児 ・者 へ の ケア の要 求 が 家族 に担 わ れ て きた経 緯 は きわ め て理 解 しや す い。 その意 味 で は 、福 祉 サ ー ビス 、特 にそ のパ ー ソナ ル ・ ソー シ ャル サ ー ビス へ の 転換 は、 家 族 成 員 の 市民 あ る いは労 働 者 と して の位 置 づ け と、家族 扶 養 の義 務 との矛盾 を、中 間 的 な形 で 解 決 しよ うとす る ものだ と、
考 え る こ と もで きよ う。
以 上 の よ うな見 解 を基 礎 と し、公 的領 域 の関 心 事 は、 パ ー ソナ ル な もの の核 心 にま で広 が って い くこ とにな る。 す な わ ち、 これが 福 祉 サ ー ビス のパ ー ソナ ル ・ソー シャルサ ー ビス と しての拡大 であ り、その制度化 で あ る。 ここで は、パ ー ソナ ル なサ ー ビス を生 活 領 域 の 同 情 心 や 道徳 権 と い った イ ンフ ォーマ ル な規制 に委 ね て お くの で は な く、 そ の権 利 の制 度化 が促 され るよ うに な る、 とい う と
ころ に その 意義 が あ る。ハ ーバ ーマ ス は この よ うな福 祉 国 家 の 拡 大 を社 会 国 家 的 介 入 の 高 度 な段 階 と呼 び、 特 に金 銭 保 障 だ けで な く、 さ らに治 療 的 な支 援 を 行 う社 会 サ ー ビス の制 度 化 に よ って 生 活 領域 へ の 国 家介 入 は総 仕 上 げ され る と 指 摘 して い る(ハ ーバ ー マ ス、1982、P368)。 こ う した介 入 は、ハ ーバ ーマ ス に と って は生 活領 域 にお け る人 間 の 自 由の保 証 と自由 の剥奪 の ア ン ビヴ ァ レ ン ツ と して 写 るわ けで あ るが、 いず れ にせ よ、 パ ー ソナ ル ・ソー シ ャル サ ー ビス の 拡 大 の意 味 は、パ ー ソナル な もの の 出 自 と して の生 活 領 域 の最 も核 心 的 な部 分 へ の 公 領 域 の 本格 的介 入 で あ る こ とは 間違 い なか ろ う。 子 ど も も老 人 も、女 性 も障害 者 も、家 族 か ら解 放 され て 、そ の人 格 を 「自立 」 させ て い くたあ に は、
国 家 の 協力 を求 め ざ るを え な い ので あ るが 、 同 時 にそ の こ とに よ って 自由で 自 律 的 な生 活 領域 の要素 は公 的領 域 に隷 属 して い くこ とに な る危 険 を秘 めて い る、
とハ ーバ マ スは指 摘 して い る。
この よ うに、 パ ー ソナ ル ・ソー シ ャル サ ー ビス が 、公 的 領 域 の 本格 的関 心事
とな るに したが って 、 そ して そ の介 入 を 宣言 して しま った後 に は、福 祉 サ ー ビ
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