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FAO News Summer ISSN JAICAFFAO FAO FAO / Kai Wiedenhoefer

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(1)

Summer

2010

World’s Agriculture, Forestry And Fisheries

FAO News No.819

持続可能な畜産部門

の発展に向けて

FAO

世界食料農業白書(

SOFA)

2009

年報告」

R e p o r t

経済危機は開発途上国に

どのように伝播したか

FAO「世界の食料不安の現状(SOFI)2009年報告」

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FA O News Summer 2010   通 巻 81 9 号 平 成 22 年 6 月 1 日 発 行 ( 年 4 回 発 行 )  IS SN : 03 87 ­ 43 38   発 行 : 社 団 法 人 国 際 農 林 業 協 働 協 会( JA IC A F )  共 同 編 集 : 国 際 連 合 食 糧 農 業 機 関( FA O )日 本 事 務 所 表紙写真:戦災の被害を受け家畜が不足して いる人々への支援の一環として、FAOから支 給されたヤギを放牧する牧畜民の男性(レバノン)。

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持続可能な

畜産部門の発展に向けて

FAO

「世界食料農業白書(

SOFA

2009

年報告」

開発途上国における所得の向上に伴い、畜産物の消費量は 世界的に増加を続けている。最新の

FAO

世界食料農業白書(

SOFA

)」は、 急成長を遂げる畜産部門に焦点を当て、その動向と課題を論じている。 ひょうたんを使って搾乳を行うマサイ族の女性(タンザニア)。©FAO / Giuseppe Bizzarri

The State of

Food and Agriculture

2009

03

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持続可能な

畜産部門の発展に向けて

FAO

「世界食料農業白書(

SOFA

2009

年報告」

開発途上国における所得の向上に伴い、畜産物の消費量は 世界的に増加を続けている。最新の

FAO

世界食料農業白書(

SOFA

)」は、 急成長を遂げる畜産部門に焦点を当て、その動向と課題を論じている。 ひょうたんを使って乳しぼりをするマサイ族の女性(タンザニア)。©FAO / Giuseppe Bizzarri

The State of

Food and Agriculture

2009

03

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畜産は世界の農業生産額の40%を占め、10 億人近くの人々の暮らしと食料安全保障を支 えている。所得の向上を追い風に、また技術 的、構造的変化に後押しされ、農業のなか で最も急速な成長を示す部門のひとつである (図1、図2)。こうした畜産部門の成長と変 容は、農業の発展、貧困の削減、食料安全 保障の強化のチャンスを生む反面、その急 速な変化が小規模農家を周辺的な地位に追 いやる恐れもある。また、持続性を確保する ために、畜産システムが環境と人間の健康に 悪影響を及ぼすリスクに対処する必要がある。 家畜の多面的な役割と途上国の現状 多くの開発途上国で、家畜の飼養は多面的 機能を果たしている。食料と所得を生み出す という直接的な役割にとどまらず、家畜は貴 重な資産として、蓄財方法や資金借り入れ の担保や、危機的な状況に陥った時に欠か せないセーフティネットとなる。畜産はさらに、 混合農業システムの中核を成すものでもある。 家畜は、作物や食品の生産で廃棄される部 分を消費し、昆虫や雑草の防除を助け、田 畑に栄養を与え土壌を整えるために必要な 肥やしを生み出し、耕作や運搬を担う労働力 にもなる。また一部の地域では、家畜が、放 置していれば深刻な汚染と公衆衛生の問題 を引き起こしかねない廃棄物を消費し清掃機 能を果たしている。 ■ 世界的に見ると、畜産は食物エネルギーの15 %、食事たんぱく質の25%に寄与している。 畜産物からは、植物性食品では摂取しにく い必須微量栄養素を得ることができる(図3)。 ■ 世界の栄養不足人口の80%近くが農村に 集中し(UN Millennium Project, 2004)、その 大半が畜産を含めた農業に依存して生計を 立てている。FAOがまとめた「農村所得創

出活動(Rural Income Generating Activities,

RIGA)」に関するデータによると、サンプル の14ヵ国では農村世帯の60%が家畜を飼 養している(FAO, 2009a)。農村世帯で生産 される畜産物の大部分は、販売され、世帯 の現金収入に大きく貢献している。一部の国 では、貧しい農村世帯ほど家畜を保有する傾 向が強いものの、飼養数はきわめて少ない。 畜産が、貧困削減に向けた取り組みの重要 な入口点となるのは、そのためである。 ■ 鶏卵を集める女性(エジプト)。

©FAO / Giulio Napolitano

出典:FAO, 2009b. 1─開発途上国における主要な食料の1人当たり消費量(1961­2005年) 指数(1961年=100) 300 200 100 0 400 600 500 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05年 根茎作物 穀物 生乳 卵 肉 鳥インフルエンザの検査をする ため、ニワトリを捕まえる家き ん生産者(エジプト)。

©FAO / Giulio Napolitano

家族農場で豚に餌をやる農業 者フィールド学校(FFS)の受益

者(カンボジア)。

©A.K. Kimoto

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畜産経営の場合、生計を立てるうえでの機 会と制約は男女で異なる。小規模の家畜飼 養者、とりわけ女性は、市場、モノ、サービ ス、技術情報へのアクセスのしにくさ、定期 的に発生する干ばつと家畜疾病、資源の争 奪戦、大規模な生産者や外部市場を優遇す る政策、制度の脆弱さなど、数多くの難題 に直面している。畜産と家畜生産のさまざま な面に関する知識と、それらに対して担う役 割は、通例、男女によって、また年齢層によっ て違う。例えば、女性は家で飼養している 家畜の病気の予防や治療を、男性は搾乳と 販売を、男児は放牧と給水を、女児は畜舎 にいる家畜への給餌を、それぞれ担うことが 考えられる。農村では、家畜を飼養する人 の男女比はほぼ半々であるものの、女性は家 畜の飼養頭数が少ない傾向がみられ、また、 大型の家畜よりも家きんや小型反すう動物を 飼うケースが多い。 ■ 生乳の加工を行う女性。小規 模生産者が生乳を持ち寄って 加工販売を行えるよう、FAOが NGOと協力して最新技術を導 入した工場を設立した(レバノン)。

©FAO / Kai Wiedenhoefer

牛の搾乳を行う女性(エクアドル)。

©FAO / Giuseppe Bizzarri

21人当たりGDPと食肉の消費量(2005年) 出典:1人当たり食肉生産量はFAOSTAT(FAO, 2009b)、1人当たりGDPは世銀のデータに基づく 注 1人当たりGDPは、2005年の恒常国際USドル換算の  購買力平価(PPP)で計算されている kg /年(1人当たり食肉消費量) 1人当たりGDP(USドル PPP) 0 20 40 60 80 100 120 140 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 50000 米国 日本 中国 ブラジル インド ラテンアメリカ・カリブ海諸国 東・南東アジア 旧中央計画経済諸国 3─畜産物からの1人当たりエネルギー摂取量(1961­2005年) 出典:FAO, 2009b. 注畜産物には食肉、卵、生乳および乳製品(バターを除く)を含む kcal(1人1日当たり) 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05年 サハラ以南アフリカ 南アジア その他の先進国 近東・北アフリカ 300 200 100 0 400 600 700 800 500 The State of Food and Agriculture 2009 持続可能な畜産部門の 発展に向けて 特集 05 SUMMER 2010

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ヤギに寄生虫の予防薬を投与

する獣医(コンゴ)。

©FAO / Giulio Napolitano

工場で生乳の加工を行う酪農

生産者(アフガニスタン)。

©FAO / Danfung Dennis

貧困層、とりわけ開発途上国の幼児とその母 親は十分に動物性食品を摂取していない(IF PRI, 2004)一方で、とりわけ先進国において 動物性食品の過剰摂取がみられるという調 査結果がある(PAHO, 2006)。農村の貧困 層において栄養不足と微量栄養素欠乏に陥 る人の比率が高いという事実は、農村では家 畜を飼養している世帯が多いにもかかわらず、 貧困層は動物性食品をごくわずかしか摂取し ていないことを示唆している。鉄分は妊娠中 や授乳中の女性の健康と、幼児の身体面、 認知面の発達に欠かせない栄養素であるが、 これが不足している人の数は世界でおよそ 40­50億人にも達する(SCN, 2004)。鉄 分をはじめとする大切な栄養素は、植物性 食品よりも食肉や乳、卵の方が摂取しやすい (Neumann et al, 2003)。したがって動物性 食品が手頃な価格で入手しやすくなれば、多 くの貧困層の栄養状態と健康を格段に向上 させることができる。その一方で、畜産物の 摂り過ぎは、肥満や心臓病などの非感染症 に罹るリスクの増加と関連がある(WHO / FA O, 2003)。さらに、畜産部門の急激な成長は、 土地など生産資源の争奪戦が、主食穀物の 価格を押し上げるとともに、天然資源基盤に 負の圧力をかけて食料安全保障に悪影響を 及ぼす恐れのあることを意味する。 急成長に伴う課題 急速な成長を遂げる開発途上国の多くでは、 経済の変化という強大な力が畜産部門を変 容させつつある。豚と家きんを中心とした家 畜の生産は、集約化、地理的な集中化、階 層的な統合化が進み、サプライチェーンのグ ローバル化につながっている。家畜衛生と食 品安全性の標準の向上は、公衆衛生を改善 させてきたが、同時に小規模の家畜飼養者 と大規模な商業畜産農家との格差を広げて いる。小規模農家が生産規模を拡大させ、 貧困から抜け出すための「ライブストック・ ラダー(畜産のはしご)」の横木がいくつか外れ ているのである(Sones and Dijkman, 2008)。

複数のケーススタディによると、小規模な商 業畜産農家は、適切な制度的支援を受ける ことができ労働の機会費用が低いままであれ ば、畜産部門の変化が速くても競争力を持 つことができる(Delgado, Narrod and Tiong

co, 2008)。また、経済協力開発機構(OEC D)加盟国の過去の経験からは、補助金や 貿易保護という形の政策支援は、多額の予 算を必要とするうえに、小規模農家が畜産 業から離れることを防ぐ効果が限定的である ことが明らかとなっている。小規模農家の生 産性の向上、取引コストの削減、技術的な 市場障壁の克服を目的とした政策介入はき わめて有益となりうるが、直接補助金や保護 は逆効果を招きかねない。 ■ 経済が成長し雇用機会が増大するにつれ、 労働の機会費用が上昇し、畜産よりも生産 性が高く負担の少ない仕事を求めて、小規 模農家が畜産を捨てるケースも少なくない。 しかしこれは経済が発展していく過程の切り 離すことのできない部分であり、マイナスの 傾向とみなすべきではない。懸念されるのは、 畜産部門の変化のスピードが速くなり過ぎ、 他の産業が代替の雇用機会を生む能力を超 えてしまう場合である。このような状況に陥っ た場合の適切な対応策としては、社会的セー フティネットの整備を含めた離農の抑制、教 育への投資、インフラ整備や成長重視の制 度改革など農村開発政策の拡充が挙げられ る。小規模農業は発展のための出発点であ り、終着点にしてはならない。 ■ 一部の家畜飼養者は、単に貧しく経営規模 が小さいがために、商業生産への進出を阻 む経済的、技術的な障壁を乗り越えることが できない。女性は一般的に、家畜のほかに、 The State of Food and Agriculture 2009 持続可能な畜産部門の 発展に向けて 特集 06 SUMMER 2010

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羊の群れを誘導する牧畜民(レ

ソト)。

©FAO / Gianluigi Guercia

成長機会を生かすうえで必要な土地、信用 供与、労働力、技術、サービスなどの資源 にアクセスしにくく、またこれらに対する支配 力も弱いため、男性よりも直面する難題が多 い。貧困層の大半は、家畜を、商業的な事 業基盤として利用するというよりはむしろ、 セーフティネットとして依存している。家畜 衛生サービスをより受けやすくし、家畜疾病 防除策に対しより強い希望があれば、短期 的にみてこれら貧困層の状況を改善させるだ けでなく、家畜に代わって外的ショックから 暮らしを守る社会的セーフティネットを整備 することができ、彼らにより大きなメリットを もたらすだろう。貧しい家畜飼養者の脆弱性 と制約、そして家畜が彼らにもたらしている 重要なセーフティネットの機能を、十分に認 識しなければならない。実際、いかなる政策 であっても、それが彼らに影響を及ぼすもの である時には、貧しい生活を送る人々の暮ら しにおいて家畜が多面的な役割を担っている ことを踏まえて決定することが求められる。 畜産と環境 農業部門は、天然資源の世界最大の利用者 であると同時に管理者であり、家畜生産は、 ほかの生産活動と同様、環境コストを伴う。 畜産部門はまた、政策の歪みや市場の失敗 をもたらすことも多く、それゆえ、しばしばそ の経済的重要性につり合わないほどの負荷 を環境にかける。例えば、畜産業は、世界 の国内総生産(GDP)寄与率が2%未満で あるのに対して、温室効果ガス(GHG)排出 量全体に占める比率が18%にのぼる(Stein feld et al、2006)。ただし、GDPには畜産 政府の育種研究機関で羊に予 防接種を行う男性(アルゼンチン)。 ©FAO / P. Johnson 07 SUMMER 2010

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業が人々の暮らしにもたらす多様な貢献の価 値が取り込まれておらず、その経済的、社 会的な寄与度が過小評価されてしまうことに 注意が必要である。それゆえ、家畜生産の 資源利用効率の向上と、畜産部門が環境に 及ぼす外部不経済の低減が喫緊の課題であ る。 ■ 放牧面積は永久凍土を除く陸地全体の26% を占め、家畜用飼料の生産に、農地の33% が使用される(Steinfeld et al, 2006)。国に よっては、畜産に用いる土地の拡大が森林 減少を招く恐れや、家畜生産の集約化が過 放牧につながる可能性がある。家畜生産の 地理的集中は、家畜ふんからの肥料がその 地域の吸収能力をしばしば超えるようになる ことを意味する。そうなれば、その肥料は、 複数の生産システムが混在する地域にとって のような貴重な資源ではなく、廃棄物となっ てしまう。だが、適切な奨励策や規制措置、 嫌気性分解などの技術を採用すれば、これ らの廃棄物を再び貴重な資源にすることがで きる。畜産業が環境に及ぼす悪影響全般の 低減も可能であるが、これには適切な政策 の実施が欠かせない。 ■ 人口密集地の近くに畜産施設が集中すると、 家畜疾病が人間の健康に害を及ぼす危険性 が高まる。家畜疾病と人間は常に影響を与 え合ってきた。例えば、インフルエンザ菌株 のほとんどは家畜に由来するとされる。また、 家畜の病原体は、生物学的見地からいうと、 動物の有益な産出物を人間と奪い合ってい るため、常に人間の生産活動に難題を突き つけてきた。貧しい家畜飼養者は、飼養す る家畜のそばで生活し、獣医療を受ける機 会も少なく、また特定の病気の蔓延を防止す る措置も、彼らの生活基盤や緊急時に頼る セーフティネットを脅かしかねないため、家 畜疾病は大きな負担となる。疾病の予防を 目的とした家畜管理の改善は、貧困層、ひ いては広義の社会に、大きな経済面、社会 面、公衆衛生面のメリットをもたらすことがで きる。ただしこの実現には、畜産施設を人口 密集地から離れた場所に移動させて、病気 が伝染する危険性をできるだけ低減させる必 要があるだろう。 ■ 今版の「SOFA」は、畜産部門はこれまで以 上に積極的に社会の目標達成に貢献しうる が、そのためには政策と制度の大幅な変更 が必要となると論じている。制度とガバナン スが脆弱な状況のもとで同部門が急激な成 長を遂げたことで、生活や、人間と家畜の 健康、そして環境に深刻な影響を及ぼしか ねないシステム上のリスクが生じている。高 まる消費者の需要を満たすとともに、環境面 と健康面の懸念を軽減するためには、投資に よって、畜産の生産性と資源の利用効率を 向上させる必要がある。とりわけ危機的状況 や変革期にあるときは、貧しい小規模農家が 何を必要としているのかを考慮に入れること が、政策、制度、技術に求められるであろう。

出典:「The State of Food and Agriculture 2009」FAO, 2009(Part Iより抜粋)

※出典の詳細は原文のp.157(Reference)を参照されたい。

The State of Food and Agriculture 2009

持続可能な畜産部門の 発展に向けて

特集

The State of

Food and Agriculture

(SOFA)2009 世界食料農業白書 2009年報告 「SOFA」は、世界の食料・農 業の動向に関する年次報告書 です。地域別の最新状況を報 告するほか、2009年版は急 激な成長を遂げる畜産部門に 焦点を当て、その動向と課題 を論じています。巻末に畜産 物に関する統計データ集あり。 原文(英語ほか)はFAOウェブ サイトで公開されているほか、 FAO寄託図書館(p.32参照)で も閲覧いただけます。 www.fao.org/docrep/012/ i0680e/i0680e00.htm FAO 2010年12月発行 166ページ A4判 英語ほか ISBN:978-92-5-106215-9

牛に干し草をやる農民(エジプト)。©FAO / Giulio Napolitano

08

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World’s Agriculture, Forestry And Fisheries

FAO News No.819

Summer 2010 03 特集

持続可能な畜産部門の発展に向けて

FAO

世界食料農業白書(

SOFA

2009

年報告」 10 R e p o r t 1

経済危機は開発途上国にどのように伝播したか

FAO

世界の食料不安の現状(

SOFI

2009

年報告」 16 R e p o r t 2

FAO

貧困削減・農業投資促進に

関するシンポジウム

20 インターン報告記

国連機関で働く自信につながったインターンシップ

FASID / GRIPS国際開発大学院共同プログラム 修士課程「国際開発プログラム」修了 サミュエル・フィリ

21

Crop Prospects and Food Situation

穀物見通しと食料事情 2010.2

世界の穀物需給概況/食料危機最新情報

26

FAO

水産養殖局とは

?

 第1回 

FAO

水産養殖局とその活動

FAO水産養殖局漁業連絡調整官 渡辺浩幹

30

Food for All

FAOの活動にご協力いただいている団体 サヘル地域における住民の「生活」を重視した 環境保全活動をめざして 緑のサヘル代表 岡本敏樹 32

FAO

寄託図書館のご案内 33

PHOTO JOURNAL

FAO

のアフリカ農業開発への日本の貢献

――サハラ以南アフリカの稲作・水産養殖の生産性向上を目指して FAO技術協力局事業調整官 安原学 36

FAO

で活躍する日本人 No.20

技術は何のために

?

誰のために

?

FAOミャンマー事務所長 今井伸 38

FAO MAP

世界の栄養不足人口

――ハンガーマップ 世界の農林水産 FAO News Summer 2010 通巻819号 平成22年6月1日発行 (年4回発行) 発行 (社)国際農林業協働協会(JAICAF) 〒107-0052 東京都港区赤坂8-10-39 赤坂KSAビル3F Tel:03-5772-7880 Fax:03-5772-7680 E-mail:fao@jaicaf.or.jp www.jaicaf.or.jp 共同編集 国際連合食糧農業機関(FAO) 日本事務所 www.fao.or.jp 編集:宮道 りか、リンダ・ヤオ (社)国際農林業協働協会 編集:森 麻衣子、廣瀬 ちづる デザイン:岩本 美奈子 本誌と月刊ニュースレター 「FAO Newsletter」は、 JAICAFの会員にお届けしています。 詳しくはJAICAFウェブサイトを ご覧ください。 古紙パルプ配合率100% 再生紙を使用 09 SUMMER 2010

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経済危機は開発途上国に

どのように伝播したか

FAO

世界の食料不安の現状(

SOFI

2009

年報告」

R e p o r t 1 世界の栄養不足人口は、

2007

­

2008

年の食料価格高騰と その後の世界経済危機の影響により増加の一途をたどっており、

2009

年には

10

億人に達したと推定されている。 世界の飢餓に関する

FAO

の年次報告書「世界の食料不安の現状(

SOFI

)」の 最新版は、経済危機が途上国の貧困層に具体的に どのような影響を与えたかを論じている。 屋台で食事をとるタイの人々。 ©FAO / D.White 10 SUMMER 2010

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はじめに 経済危機は貧困水準や所得水準に深刻な打 撃を与え、ひいては食料安全保障に影響を 及ぼす恐れがある。FAOが開発途上国6ヵ 国の実態を分析した結果、1995年のメキシ コ通貨危機と1997­1998年のアジア通貨 危機をきっかけに貧困率が最大で24ポイン ト(35%から59%に)も上昇し、この上昇率 の平均が12%にのぼったことがわかった。こ うした国が貧困率を危機前のレベルに戻すま でには、5年から8年もの歳月を要している。 これら諸国のうち、アルゼンチン、メキシコ、 タイの3ヵ国の事例を図

1

に整理した。グロ ーバル化が当時以上に進む今日では、1ヵ国 あるいは1地域で起きた経済危機が、他の国、 他の地域に容易に伝播しうる。例えば、19 97­1998年のアジア通貨危機の後には、 中南米において経済規模の大きい上位17ヵ 国のうち12ヵ国で国内総生産(GDP)が下 がっている。1人当たり実質GDPの減少率 の中央値は5.4%で、中南米諸国が所得水 準を危機前のレベルに回復させるまでには、 平均で5年かかった。これら17ヵ国のうち 15ヵ国では、失業者も増え(上昇率の中央値 は4ポイント)、雇用率を危機前のレベルに戻 すのに要した年数は、平均で8年にのぼる。 最も影響を受けやすいのは巨額の経常赤字 を抱えた国、危機再発国、「食料価格ショッ ク」に見舞われた国 他の国で発生した経済危機の影響を受ける 度合いは、金融商品をはじめとするモノとサ ービスの国際市場に、その国がどの程度統 合されているのかによって決まる。巨額の経 常赤字(国のモノとサービスの輸入額と移転額の 合計が、モノとサービスの輸出額と移転額の合計 よりも大きくなると生じる)を抱え、外貨準備高 (中央銀行と金融当局が保有する外貨預金と外債) が少ない国の場合には、海外直接投資(FDI) や送金、海外援助、海外からの借入れなど、 民間資本と公共資本の流入によって経常赤 字の埋め合わせがなされるため、とりわけそ の危険が大きい。しかも、このような資金の 流入は突然ストップすることもある。中南米 で経済規模の大きい上位17ヵ国への投入資 金は、2007年の1,840億USドルから200 8年には890億USドルとほぼ半減し、2009 年にはさらに半減して430億USドルにとどま るものと予想される。資本流入の減少はすな わち消費の削減を意味する。一部の低所得 食料不足国(LIFDC)にとって、消費の調整は、 必要性の極めて高い食料と、医療機器や医 薬品といった福祉関連品の輸入の縮小につ ながりかねない。 ■ 近年、経済危機以外の危機に見舞われたこ とのある国もまた、国・地域レベルの危機が 対処システムを疲弊させ、しばしばマクロ経 済の不均衡を招くため、とりわけ打撃を受け やすい。食料危機の危険がある、または危 機的状況にある地域を毎年特定して報告す るFAOの世界食料情報早期警報システム(GI EWS)は、人災か自然災害、あるいはその 両方を過去10年間で年間1回以上受けた 国が16ヵ国にのぼるとしている※1 。このうち ほぼすべての国が、国際通貨基金(IMF)に より、「現下の危機に最も脆弱な国」に分類 早朝の市場(タイ)。 ©FAO / D.White The State of Food Insecurity in the World 2009 経済危機は開発途上国に どのように伝播したか R e p o r t 1 出典: 原文p.56を参照 1─何年にも及ぶ貧困削減の取り組みが    経済危機で無に帰すことも %(国の貧困率) タイ(1997年) メキシコ(1995年) アルゼンチン(2001年) 60 70 50 40 30 20 10 0 ­4­3­2­1 0 1 2 3 4 5 6 7 危機の前後の年数 11 SUMMER 2010

(15)

されている(危険が低いとされたウガンダを除く)。 実際、これらの国は、IMFが最も脆弱な国 に分類する26ヵ国の大部分を占めている。 ■ 低所得国の多くは食料の純輸入国でもある ため、これらの国では、多くの貧困層が世界 的な食料危機による国内の食料価格高騰の 影響を大きく受けた。だが、低所得国におい て日常的な食品の価格がどの程度上昇した のか――そして、その後2008年下旬に下落 したのか――については、最近まで完全には 把握されていなかった。FAOがまとめた国内 の食料価格のデータベースをみると、開発 途上国の穀物と豆類の国内価格に関する12 7件近くのケーススタディのうち、前年同期 と比較した価格上昇が(例えば、2007年1月 と2006年1月を比較して)一般的インフレーシ ョンの影響を調整した後でも48%を超える 事例が、半分にのぼることがわかる。2008 年後半には国内価格がほとんどの国である程 度下がったとはいえ、大部分の事例、そして すべての地域で、その下落率は国際価格の 下落のペースに追いついていない。2008年 末時点で、主食の国内価格はいまだに2年 前に比べると実質ベースで17%高く、これ は主要な食料品全般に当てはまる(図2)。 移住と送金 今回の経済危機をきっかけに送金が減ってお り、これが今後、所得の低下と、それに伴う 問題を多くの人々にもたらすことは明らかであ る。開発途上国に暮らす多くの住民にとって、 移住とそれに続く送金は、生計を立てるため の大きな方策であり、母国に残った家族の 貴重な収入源でもある。公式に記録されて いる送金額はおよそ3,000億USドルで、開 発途上国全体のGDPの2%を占める。しか し、低所得国に限ると、この数字はGDPの 6%に達する。また、すべての送金が、記録 可能で公式のルートからなされるとは限らず、 実際の金額はこれを上回る可能性が高い。 ■ 2005年に国際移民とされた後発開発途上 国(LDC)の出身者は7,500万人であった。 全体的にみて、移民に占める女性の比率は、 1960年が47%、2005年が50%(推計)と、 あまり変わっておらず、男女比も長年にわた りほぼ半々という状態が続いている。 ■ 世界全体の数字を見ただけでは、数多くの 個人、世帯、国、地域にとって移住がいか に重要な役割を果たしているのかが分からな い。例えば、ヨーロッパ、北米、ロシア連 邦の移民の主要なルート近辺に位置する小 国では、送金が資金流入の主流をなす傾向 がみられる。世界銀行がまとめた2007年の データによると、GDPに占める送金の割合は タジキスタンで46%、ホンジュラスで25%、 レバノンで24%に相当する。アフリカの主要 国の一部(エジプト、エチオピア、モロッコ、ナ イジェリア、セネガル)では、送金がGDPの5 ­10%を占めている。国内での分布を見る と、送金は多くの場合、一部の地域に集中 している。 ■ 多くの開発途上国では、かなり多くの世帯が 移民からの送金を主たる収入源としている。 注数値は価格(インフレ調整後)の上昇率の中央値 出典:FAO 2─国内の食料価格は依然として危機前よりも    高い(200812月と200612月の比較) %(増減率) 30 25 20 15 10 5 0 豆類・ レンティル 豆 キャッサバ・ ジャガイモトウモロコシ ソルガム・ミレット・ 大麦 コメ 小麦 かんがい溝を掘る農民(ホンジュ ラス)。 ©C. Sanchez 12 SUMMER 2010

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例えばフィリピンでは、17%の世帯が海外 から送金を受けている。ほぼ同程度の比率 が、アルバニア、アルメニア、エルサルバドル、 ハイチでも見られ、一方でペルーでは、何ら かの形で私的な譲渡(主に移民の送金)を受 けている世帯が25%にのぼる。また、ドミ ニカ共和国の貧しい地域のひとつであるシエ ラでは、家族に移民のいる世帯が40%を占 め、これら移民の約半分が送金を行っている。 ■ 送金は直接各世帯の収入となり、その金額 がFDIや政府開発援助(ODA)をはるかに超 える国や地域(例えば南アジア。図3を参照) もある。多くの開発途上国では、上位20% の富裕層の所得に送金の占める割合が他の 層に比べて大きいものの※2 、送金の減少から 受ける影響は、所得の低下への対処能力に 欠ける貧しい層の方がおしなべて大きい。 ■ 他の収入源と同様に、送金も地元の経済に 乗数効果をもたらす。例えば、送金された 資金が住宅の建設に使われると、半熟練労 働者の需要が高まり、送金を直接受け取っ ていない人たちの利益にもなる。こうした乗 数効果を踏まえると、送金の減少による全体 的な影響は、送金額の減少幅よりも大きいと いえる。複数の実証研究から、この乗数の 値が1.5から2にのぼるケースも少なくないこ とが分かっている。 ■ アフリカと中南米では、GDPに占める送金の 比率が1ポイント上昇したことで、貧困ライ ン以下の生活を送る人の数が、それぞれ0.2 9%と0.37%減った。また送金は概してFDI よりも変動が少なく、これまでの危機では、 景気循環に逆行することが多く、母国の経済 成長が鈍化する(あるいは母国が災害に見舞わ れる)と、増える傾向にある。とはいえ、今 出典: 世界銀行 3─南アジアにおける送金の重要性    %(相対的規模) バングラデシュ インド ネパール パキスタン スリランカ 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 送金 海外直接投資 政府開発援助 左:かんがい溝で働く農民。

©FAO / Giuseppe Bizzarri The State of Food Insecurity in the World 2009 経済危機は開発途上国に どのように伝播したか R e p o r t 1 13 SUMMER 2010

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回の危機が地球規模であること――そして、 危機が最初に訪れ、最も深刻な被害を受け たのが、移民先の国であること――から、世 界銀行は、2005年から2007年に年間15 ­20%の伸びを示した送金額が、2009年 には逆に5­8%減少するとみている。 ■ 送金の減少がその国に与える影響の度合い は、通貨の為替レートの変動にも左右される。 この変動による影響は、まず母国への送金 額の決定、次に、送金を現地通貨に換えた 際の、受領者の購買力に及ぶ。ロシア連邦 からの送金が多い東欧と中央アジアは、ロシ ア経済の失速と通貨ルーブル安により、送 金額の急減に直面することが避けられない。 貿易、借入れ、海外直接投資、海外援助 先進国の景気後退は貿易や借入れ、FDI、 海外援助に深刻な悪影響を及ぼしている。2 009年は国際貿易が最小で5%、最大で9 %縮小する見通しである。輸出額の減少幅 は、先進国よりも途上国の方が大きく、主た る外貨獲得源として輸出に依存する国がとり わけ大きな打撃を受ける。 ■ 経済危機が進むにつれて、開発途上国に対 する融資のリスクプレミアムが0.25%引き上 げられたため、海外の民間部門、公共部門、 いずれから資金を借り入れる場合であっても、 途上国は与信費用の上昇に直面している。 また、銀行が信用割当を行い、最も信頼で きる借り手とみなした相手にしか資金を貸し 出さないため、資金をまったく借り入れること のできないケースも多い。マイクロファイナン ス機関(MFI)も、その多くが確固たる財務 基盤を持ち、今後さらなる拡大を図る態勢を 整えているにもかかわらず、現在苦境に立た されている。 ■ FDIは、一貫して変動しやすい傾向がみられ るが、今回の危機では、先進国の民間企業 の業績不振が顕著なことから激減した。グル ジア、ガンビア、ヨルダン、レバノンなどでは、 FDIが平均で年間GDPの10%を超えている ことがわかる※3 。IMFは2009年4月に、20 09年のFDIの減少率がアフリカで15%、開 発途上国全体で32%にのぼるとの予測を発 表した。FDIは、主な対象が鉱業、工業、 サービス業で、(農産物の加工に関連したものも あるとはいえ)農業向けはごくわずかしかない。 だが、その減少に起因する雇用の縮小は、 経済全体に波及効果を及ぼし、状況によっ The State of Food Insecurity in the World 2009 経済危機は開発途上国に どのように伝播したか R e p o r t 1 右:試験農地にコメの苗を植 える女性の農民(インド)。

©FAO / Giuseppe Bizzarri

14

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ては今後、都市部から農村部へのUターン が増えるとみられる。 ■ 海外援助は、一部最貧国にとって資金の主 たる流入源である。サハラ以南アフリカでは、 ODAがGDPの大部分を占めることが少なく ない(例えば、ブルンジやリベリアでは40%以上)。 ハイチ、ラオス、ニカラグアでも、この比率 は10%を超える。食料の価格高騰を受けて、 2008年にはODAが世界的に顕著な伸びを 示した。しかし、ドナー国のGDPが低下する と通常、開発援助は減る。そのためIMFは、 2009年はドナー国の予算の制約が一段と厳 しくなっていることから、最貧国71ヵ国に対 するODAは、2007年の水準を下回ること はないものの、全体的に25%前後減少する ものと予想している。 マクロ経済の緩衝材としての農業 経済危機が産業部門に与える影響は、危機 の性格や部門の雇用規模、貿易構造によっ て変わってくる。だが、農業部門に関しては、 特定のパターンが見られる。まず、農業部門 の成長率は、危機前、危機後ともに、国全 体のGDP成長率よりも低い。次に、すべて の事例で、農業部門の成長率は、危機の間、 GDP成長率よりも高い。すなわち、農業部 門は、他部門よりも安定した成長を示す傾 向にあるといえる※4 。 ■ 1997­1998年に経済危機に陥ったインド ネシアの例が物語っているように、農業部門 は危機の間も就業人口が増える傾向にある。 インドネシアでは、1997­1998年の経済 危機で、工業部門で13%、電機部門で27 %、それぞれ就業人口が減ったが、農業就 業人口は他部門の減少分を補って余りある 伸び(15.2%)を示した。マレーシアと韓国 でも、農業就業人口がそれぞれ9.1%と5.4 %増加した反面、製造部門で就業人口が減 っているなど、1997­1998年の経済危機 で打撃を受けたアジアの他の国でも同様のパ ターンが見られる。 ■ なぜ農業部門は、他部門に比べて成長が影 響を受けにくいのか。まず、所得が減少して も、農産物、とりわけ食料に対する需要がそ れに比例して減退することはない――人々は 工業製品やサービスなど、農産物以外の消 費を減らして、食料を十分に(あるいは、自 分の所得が許す限り多く)購入するための資金 を確保する。また、供給面から見ると、他部 門は資金の借り入れに強く依存するのに対し て、農業部門は、とりわけ小規模農家が主 流をなす場合自己資金で事業を運営する傾 向が強く、そのため突然の信用不安による影 響を受けにくい。ただし、借入金が重要な資 金となる大規模商業農場の場合、2番目の 論拠はあまり当てはまらないと考えられる。ま た、都市部からUターンした新規就農者の 増加で、資金の借り入れが今後増える可能 性もある。 ■ 経済危機は、通貨安を伴うケースが多い(例 えば、1995年のメキシコ、1997­1998年のイ ンドネシアやタイ)。サービス部門の提供物に 比べると農産物は市場性が高いとされること が多く、通貨安はともすると農業にプラスに 働く。とはいえ、すべての経済危機に同じこ とが言えるわけではない。今回の危機では、 景気減速とそれに伴う国際市場の商品価格 の下落が世界規模であることによって、通貨 安が農業にもたらすプラスの効果は薄まるで あろう。世界規模という性質はまた、通貨の 下落がその国の輸出拡大を促すという可能 性も低下させている。 ※1­4 原文には対応する図表があるが、本稿では省略して いる。このほか、本文の脚注も割愛している

出典:「The State of Food Insecurity in the World 20 09」FAO, 2009(pp.13-20より抜粋)

The State of Food Insecurity in the World(SOFI)

2009 世界の食料不安の現状 2009年報告 「SOFI」は、1996年の世界食 料サミット(WFS)および国連ミ レニアム・サミットで定められ た飢餓削減目標への進捗状況 をモニタリングするFAOの報告 書です。2009年版は、世界 的な経済危機が開発の途上国 の貧困層に与えた影響と教訓 を、5ヵ国のケーススタディを 交えて紹介しています。原文(英 語ほか)はFAOのウェブサイト で公開されているほか、FAO 寄託図書館(p.32参照)でも閲 覧いただけます。 www.fao.org/docrep/012/ i0876e/i0876e00.htm FAO 2009年10月発行 56ページ A4判 英語ほか ISBN:978-92-5-106288-3 15 SUMMER 2010

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参加者(敬称略) 歓迎の辞 リチャード・チャイナ FAO技術協力局政策・プロ グラム開発支援部長 開会挨拶 郡司彰農林水産副大臣 基調講演世界の食料安全保障と農業投資」 スパチャイ・パニチャパック UNCTAD事務総長 1セッション貧困削減に向けた民間の取組」 モデレーター:岩永 勝(独)農業・食品産業技 術総合研究機構作物研究所長 パネリスト:キース・ウィーブ FAO経済社会局農 業開発経済部次長/ジョセフ・シュミットフーバー FAO地球規模展望研究室長/マーティン・ブワ ルヤ NEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ) 事務局、CAADP(包括的アフリカ農業開発プログラム) 持続的土地・水管理シニア専門家/カマレシュ・ アディカリ南アジア貿易・経済・環境ウオッチ(SA WTEE)調査部長/宇田川僚一(株)生活の木専

務取締役/安東迪子(特活)TABLE FOR TWO Intenational 2セッション海外農業投資の促進に向けて」 モデレーター:伊熊幹雄読売新聞東京本社編 集局編集委員 パネリスト:デービッド・ハラム FAO経済社会局 貿易・市場部次長/チミムバ・デービッド・フィ リ FAO技術協力局政策・プログラム開発支援部 課長/アブドッラー・アル・オバイドサウジアラビ ア王国農業省副大臣/マーティン・ブワルヤ NEP AD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)事務局 CAADP(包括的アフリカ農業開発プログラム)持続的土 地・水管理シニア専門家/ジョン・ラム世界銀 行農業・農村開発局アグリビジネスチームリー ダー/藤田正孝 UNCTAD投資傾向問題部部長 代理/中田智洋(株)ギアリンクス代表取締役/ 宮原章人農林水産省大臣官房審議官(国際)/ 平松賢司外務省経済局審議官

FAO

貧困削減・農業投資促進に

関するシンポジウム

FAO Symposium on Poverty Reduction /

Promotion of Agricultural Investment

R e p o r t 2 食料価格高騰や経済危機の影響で世界の飢餓人口が

10

億人を突破 し、世界の食料生産の増大が緊急に求められているなか、

G8

ラクイ ラ・サミットや

FAO

食料安全保障サミットなどの国際的な場で、農 業投資増大の必要性が合意されている。この取り組みを考えるため、

2010

3

10

日、内外の国際機関の専門家や民間部門からの参 加を得て、

FAO

主催による国際シンポジウムがホテルニューオータ ニにて開催された。本稿ではその概要を報告する。 共催:農林水産省 協力:読売新聞社 基調講演世界の食料安全保障と農業投資」 ――スパチャイ

UNCTAD

事務総長 シンポジウムはFAOのチャイナ技術協 力局政策・プログラム開発支援部長に よる歓迎の辞、郡司農林水産副大臣に よる開会挨拶により開会し、続いてUN CTAD(国連貿易開発会議)スパチャイ 事務総長より基調講演が行われた。 スパチャイ氏は、昨今の新興国におけ る食料需要増やバイオ燃料向けの作物 需要増等により、農業分野の海外直接 投資が1990年から2007年の間に3 倍に増加したことを報告。最近は、海 外直接投資(FDI)が主要食料生産に流 入する傾向がみられることを挙げ、FDI が被投資国と投資国双方の食料危機の 緩和に貢献する可能性がある一方で、 大規模な農地獲得に関しては、双方が 利するような行動原理を考案することが 重要であると指摘し、UNCTADがFAO、 16 SUMMER 2010

(20)

IFAD(国際農業開発基金)、世界銀行と の協力のもとで進めている「責任ある国 際農業投資の促進」イニシアティブを 紹介した。また、多国籍企業の農業生 産への関与を強めるには、関税や農業 補助金といった先進国の努力も必要で あることを強調した。

1

セッション貧困削減に向けた民間の取り組み 貧困削減の鍵は農業、ただし機会の不 平等が課題 続いて行われた第1セッションは(独) 農業・食品産業技術総合研究機構作 物研究所の岩永所長の進行により議論 が進められた。 まずFAOのウィーブ農業開発経済部次 長より、「貧困削減と農業投資」に関す る最近の動向が報告され、2009年に 飢餓人口が急増し10億人を越えた現 状の報告があった。ウィーブ氏は、貧 」 2─世界の穀物生産量    出典:FAO 100万トン 2007年 2008年 先進国 開発途上国 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 +10.8% +2.6% 困削減の鍵は農業であるが(図1)、機 会の不均衡が課題であり(図2、2008 年は世界的に記録的な穀物生産増がみられ たが、先進国と開発途上国の実績は大きく 異なっている)、非力な大多数の小規模 農家が市場の状況に対応しつつ将来の 需要に応えていくためには、開発途上 国の農業への投資増加が不可欠である と述べ、そのためには政府と市民社会 の連携が欠かせないことを強調した。 ■ 具体的な取り組みを紹介 続いて岩永氏から「民間セクターの活 動には貧困削減にどのような可能性が あるのか」というポイントが提示された。 ガーナ、エチオピア、ケニアで活動を 行っている(株)生活の木の宇田川専務 取締役は、ビジネスで行う活動である 以上は、生産するモノにいかに付加価 値を付けられるかを追求することが重要 であると発言。また、社員食堂やレスト 基調講演を行うスパチャイ氏。 1─農村世帯における所得源    出典:FAO % 農家所得 農業賃金 その他所得 エクアドル マラウイ ベトナム 0 20 40 60 80 100 17 SUMMER 2010

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ばれる大規模農地取得に対する懸念、 国際機関が作成中の行動原則について 説明があった。 ■ 途上国には

ODA

も必要 続いてFAOのフィリ氏より、農業生産 性の成長は資本形成の量と種類に左右 されること、農業セクター向け資金の主 たる原資は国内資金、海外直接投資、 送金であること、ただし、途上国は必 要な資金源(貯蓄)を作り出せないため ODAが不可欠(FAOの試算では年間44 0億ドルが必要)であること、農業の資 本形成を持続的に増大させるために最 も効果的な方法等を検討する必要があ ること等の説明があった。 ■ 他国、民間企業の事例 NEPADのブワルヤ氏は、アフリカ各国 は自国予算の10%以上を農業・農村 開発に配分することについて合意済みで あると紹介した(マプト宣言、2003)。サ ウジアラビア農業省のオバイド副大臣は、 乾燥地域に属し水資源など農業生産条 件に制約のある当国は食料を輸入に依 存せざるを得ないと述べ、サウジアラビ アからの農業投資は、投資受入国政府 との合意・協定の締結、輸送等につい てサウジ政府の関与がある場合がある ものの、基本的に民間ベース(ただし政 があると指摘。特に途上国農家による (改良種子等の)知的所有権へのアクセ スについては、政府による制度整備が 不可欠であると述べた。 FAOのウィーブ氏は、先の2人のパネ リストの意見に同意を示したうえで、他 にも社会の安定性、土地を含む自然資 源開発、能力開発などが重要であると 述べた。 ■ 最後に岩永氏が、議論の取りまとめとし て、①食料・貧困問題は複雑で悪化し ており、従来のODAだけでは効率性が 落ちている、②より現場向きの協力のた めに、多くのセクターの連携が求められ る、③力量や関心の異なる民間・NGO が協働できる場の創造とともに、仕組み づくりについて話し合っていくことが重 要であると述べ、第1セッションを締め くくった。

2

セッション海外農業投資の促進に向けて」 海外農業投資のリスクと機会 第2セッションは読売新聞社東京本社 編集局の伊熊編集委員の進行により議 論が進められた。まずセッションのテー マの背景説明として、FAOのハラム氏 より農業セクターへのFDIの現状とその 拡大の必要性、いわゆる農地争奪と呼 ランで低カロリー食を提供し、その一部 を途上国援助のための寄付金に充てる 活動を行っている(特活)TABLE FOR TWO Internationalの安 東 氏は、 昨 今の企業はマーケティングの一環で社 会貢献できる商品開発が相次いでおり、 民間の活動はマーケティングと絡めた形 で増えていくと見ていると述べた。FAO のシュミットフーバー地球規模展望研 究室長は、開発途上国が現代技術から いかに利益を得るかについて、官と民が パートナーシップを組む連携の在り方に 言及した。 ■ 官と民の連携に向けて 次に提示された「公的セクター、民間 企業、NGO等の連携はどのように進め られるか」というポイントについて、NE PAD事務局のブワルヤ氏は、アフリカ の成長に係る富の形成や貧困削減、成 長のためには官民の連携が必須であり、 民間投資をアフリカ農業へ誘致すること や、官、民、NGOの連携は、それぞ れの得意なフィールドを持ち寄ることが 重要と述べた。 ネパールのNGO、SAWTEEのアディカ リ調査部長は、民間企業は利潤の追求 が行動原理であり、民間企業が行わな い基盤整備や社会開発等については、 それぞれ政府、NGOが対応する必要 第1セッションのパネルディスカッション。左から、岩永氏、安東氏、宇田川氏、アディカリ氏、ブワルヤ氏、シュミットフーバー氏、ウィーブ氏。 SUMMER 2010

(22)

く、責任ある農業投資の推進を図るべ く行動原則を策定。 続いて外務省の平松審議官より、日本 政府がFAO等と国際的行動原則作りを 主導しつつ、企業の海外投資の促進を 図っていることの紹介があり、これは投 資を規制するものではなく、民間が安 心して投資できる環境を作るための独 自の取り組みであり、高く評価されてい るとの報告があった。 ■ 会場には民間企業や国際協力関係機 関、大学研究機関、NGO、在日大使館、 メディア、学生を含め、200名を超え る聴講者が集まった。各セッションの終 わりには、聴講者からもさまざまな意見 や質問が寄せられ、5時間にわたるシン ポジウムは盛会のうちに閉会した。 農業投資を基本的に奨励されるべきで あるとの考えであり、農業投資に係る 現状調査を実施していることを紹介(対 象21ヵ国:結果は本年4月の世銀/ IMF総 会時に公表)。今後行動原則が作成され る予定で、作成すること以上にその実 施が重要であると述べた。また、世銀が 作成中のKnowledge Exchange Plat-form(各種情報、農業投資を促進するツ ール、意見交換の場などをあらゆる関係者 に提供するもの)が4月に公開予定であ ることを紹介した。 ■ 日本の取り組み 最後に日本政府の取り組みとして、農 林水産省の宮原審議官より、日本から の農業投資を促進するための施策が検 討されていることについて紹介があった。 これは世界の食料供給力強化および日 本への食料供給ルートの多角化を目的 としたもので、昨年公表した指針では、 投資環境の整備、ODAとの連携、公 的金融や貿易保険の活用、農業技術 支援・専門家派遣、農業投資関連情 報の整備、輸入の安定化、官民連携 プランのための現地調査等のツールを 総合的に活用するとともに、今後とも支 援策の充実につき検討を進めることにつ いて紹介があった。また、被投資国や 投資先住民とのWin-Winの関係を築 府系持ち株会社を通じた民間企業への資金 供与が行われている)であり、投資の決 定には、投資先の政情安定性、透明性、 投資誘引策、資源(土地、水、労働力)、 インフラの利用可能性等を考慮している ことが報告された。 日系農家との契約栽培によりアルゼンチ ン産大豆の輸入を行っている(株)ギア リンクスの中田代表取締役は、大規模 商社とは違うビジネスモデルとして、 個々の大豆の品質を踏まえ、庭先価格 の相場より高い値段を提示し、その分 は流通コストの縮減で対応していること を紹介した。 ■ 投資ガイドラインの策定が必要 UNCTADの藤田投資傾向問題部部長 代理は、農業投資(FDIおよび契約農業等) を途上国の開発の文脈に位置付ける必 要があり、そのためには、多国籍企業(T NC)の誘引と、TNCの関与による恩恵 の享受が課題であると述べた。投資受 入国政府においては投資側と農家との 連携強化、施策、国際社会においては TNC の関与に関する国際的なガイドラ インの策定がそれぞれ求められる。 世銀のラム農業・農村開発局アグリビ ジネスチームリーダーは、「World De-velopment Report(世界開発レポート) 2008」で示されているとおり、世銀は ※本シンポジウムは、農林水産省が拠出するFAO事 業(食料供給力強化に資する国際的な枠組み検討事業)の一 環として開催されたものです 関連ウェブサイト FAO日本事務所:FAO貧困削減・農業投資に関す るシンポジウム:www.fao.or.jp/media/sympo100 310/J_index.html(日本語) www.fao.or.jp/media/sympo100310/E_index. html(英語) FAO Symposium on Poverty Reduction / Promotion of Agricultural Investment FAO貧困削減・農業投資促進に 関するシンポジウム R e p o r t 2 第2セッションのディスカッション。左から、伊熊氏、ハラム氏、フィリ氏、宮原氏、オバイド氏、ブワルヤ氏、平松氏、ラム氏、藤田氏、中田氏。 19 SUMMER 2010

(23)

FASID / GRIPS

国際開発大学院共同プログラム修士課 程の必修である

5

ヵ月のインターンシップを、

2009

10

月 から

2010

2

月まで、横浜にある国際連合食糧農業機 私は、

FAO

がその加盟国、特に母国であるジンバブエに 対して、既存のプログラムの中でどのような農業生産性向 上のための支援を実施しているのかを学ぶことができまし た。そして、今回のインターンシップを通じて、

FAO

がジ ンバブエで実施している多くの開発プロジェクトについて学 ぶことができましたし、

FAO

が現在または過去において数 多くの農業生産性を向上させるプログラムをさまざまな国々 で成功させてきており、それらはジンバブエでも再現でき そうであることを知りました。さらに、例えば南南協力や、 アジアからアフリカへのコメ技術の移転可能性等、授業コ

報告記

国連機関

自信

サミュエル・フィリ

Samuel Phiri

FASID / GRIPS 国際開発大学院 共同プログラム 「国際開発プログラム」 修了 関(FAO)日本事務所に て行いました。これは

1

年間のコースワークに続く、 プログラムの最終段階に 当たるものです。世界で 飢えに苦しんでいる人々 の数が

10

億人を超えると いう時期に、国連システ ムにおける農業分野の主 導機関に勤務することが できたというのは、大変恵 まれた機会でした。

FAO

がその加盟国の農業生産 と生産性をどのように高め る支援を実施しているの ースでの知識を

FAO

の 実際の活動と関連づける こともできました。加えて、 さまざまなフォーラム等に 参加して、自分の学術・ 専門的関心の農業・開 発研究に関する知識の豊 富な多くの専門家と出会う ことができました。 ■ 今回のインターンシップは、 国際機関で働くことについ て自分に自信をつけてくれ ました。世界の主要経済 にその農業を依存しなけ か、特に技術支援や政策形成、農業生産性、世界の 食料安全保障向上のためのキャパシティービルディング等 について学びたいと期待を持っていました。 ■ 国際機関での勤務は今回が初めてであったため、初日は 不安でしたが、

FAO

日本事務所スタッフのたゆまぬ支援 もあって、時間とともに自信を取り戻せていきました。私の 仕事は、ワークショップやイベント、セミナー、シンポジウム の準備など管理的業務が中心でした。また、スタッフのリ サーチのサポートや、ジンバブエの食料安全保障に関す るリサーチペーパーを書いたりもしました。 ■ ればいけない開発途上国の一市民として、今回得られた 知識は、開発政策形成における帰国後の自身の仕事に 役立つと考えています。        翻訳:武本直子 研究レポート「ジンバブエの食料安全保障」を発表する筆者。 横山FAO日本事務所所長と。 20 SUMMER 2010

(24)

www.fao.org/giews/english/cpfs

FAO「Crop Prospects and Food Situation」は、

世界の穀物需給の短期見通しと世界の食料事情を包括的に報告するレポートです。 地域別の食料事情や付属統計など、全文(英語)は

ウェブサイトでご覧ください。

Crop Prospects

and

Food Situation

穀物見通しと食料事情

2010.2

世界の穀物供給は増大するが、 市場は依然として慎重 最新の指標は、2009 / 10市場年度に おける穀物需給状況が全般的に改善し つつあることを示している。2009年の 世界の穀物生産の予測は、すでに良好 の見通しを立てていた前回の報告を上 回っており、穀物在庫は8年ぶりの高 水準になると予想される。しかし、こう した豊作予想にもかかわらず、主要な 穀物の国際価格の低下は緩慢で、コメ の価格は2009年末に上昇さえした。こ のことは、当面は見通しが混在している 2010年の穀物収穫期に関して、依然 として市場が慎重な見方をしていること を意味する。天候不順と価格低下予想 の結果、2年続きの豊作だった小麦は 耕作面積が減少し生産量も縮小すると 予想される一方、主要な生産国でトウ モロコシ生産の大幅増を示唆する早期 指標があることから、粗粒穀物は世界 的に生産量が拡大するとみられる。コメ に関しては、2009年には一部で不安 定な降雨の被害があったが、モンスー ン期の天候パターンが通常に戻ったこと から2010年の生産量は回復が見込ま れる。とはいえ、世界の生産量に関す る最初の予想が明らかとなるのは、2­ 3ヵ月先のことである。 これらの要因にもかかわらず、今期開 始以降の穀物の平均国際価格の低下と 輸入需要の大幅な減少は、多くの国々、 とりわけ低所得食料不足国(LIFDC)の 輸入コスト引き下げにつながり、今期の 穀物輸入費総額は2008 / 09年度に比 べ最大25%の減少が見込まれる。

2010

年の生産予測

小麦の収穫予想は 混在 2010年の世界の小麦収穫の予想は、こ れまでのところ混在している。北半球で は、米国の冬小麦の耕作条件はおおむ ね良好だが、作付け時期の天候不順と 低価格予想が重なったため、播種地域 は激減し、この100年間で最低レベルで ある。ヨーロッパでは、以前の指標と異 なり、農民が作付けに適した耕作条件を 活用し、また好条件が続いているため、 ヨーロッパ連合(EU諸国)での冬小麦 作付けは若干拡大すると見込まれる。 ヨーロッパの独立国家共同体(CIS)諸 国の多くでは、乾燥気候の後に大雨に 見舞われ、2010年に収穫となる冬作 穀物の作付けが遅れた。ロシア連邦で は、2010年収穫の冬小麦の栽培面積 は前年とほぼ同じレベルになると予想さ れる(作付けは拡大したと報告されているも のの、今年に入ってからの低温と小雪が凍 害の割合を増大させているとみられる)。ウ クライナでも栽培面積は前年と同じレベ ルと報告されているが、シーズン初期の

世界の穀物需給概況

2─世界の穀物の生産と利用 出典:FAO 100万トン 利用 生産 1800 1900 2000 2100 2200 2300 2009年 2007 2005 2003 2001 1999 1─世界の穀物生産量 出典:FAO 100万トン コメ 粗粒穀物 小麦 2009年予測 2008年推定 2007年 ­2.4% ­1.5% 0 200 400 600 800 1000 1200 ­0.1% 21 SUMMER 2010

(25)

Cr op Pr ospects

and

Food Situation

穀物見通しと食料事情 乾燥気候と投入財の減少が悪影響を及 ぼす可能性がある。 アジアでは、中国(本土)の冬小麦の 栽培面積が、政府の積極的な小麦生 産支援を受けて、前年の記録的な水準 に並ぶものと予想される。これまでのと ころ主要な産地の気候は好条件だが、 南西部の一部では厳しい乾燥状態が報 告されている。極東の他の地域につい ては、インド、パキスタン、バングラデ シュの2010年冬小麦収穫予想(多くは かんがい栽培)では、シーズン初期から 乾季が長引き降雨が不安定なため、か んがい設備のない地域の生産に悪影響 を及ぼすだけでなく、かんがいのための 水資源が減少する恐れもあり、見通し が立っていない。 北米では、乾燥気候により作付けが遅 れ、小麦の栽培面積は、例年並だった 昨年よりも若干縮小すると予想される。 しかし、2010年に収穫される世界全体 の小麦の栽培面積は、2010年後半に 作付けされるいくつかの産地によって決 まることになる。その中には、主要な輸 出国であるアルゼンチン、オーストラリ ア、カナダが含まれており、すべての国 で、十分な在庫および(もしくは)他の作 物の収穫が良好と見込まれることから、 早期指標は小麦の栽培面積が縮小する としている。確度の高い予想をするには 早すぎるが、すでに利用できる情報に 基づけば、2008年の記録的豊作と昨 年のそれに次ぐ豊作の後、2010年の世 界の小麦収穫は減少するとみられる。 南米のトウモロコシ生産は 増加の見通し 南米では、南部地域の一部で2010年 の一期作トウモロコシの収穫が始まって おり、他の地域では3月に始まる。アル ゼンチンでは、収穫面積が、前年の縮 小と打って変わり急増が確実視されて おり、また、生長条件もおおむね良好で、 今年の生産は大きく回復する見込みで ある。ブラジルでは、栽培面積は前年 よりも縮小が予想されているが、条件は 良好で、現時点での予想では、前年と ほとんど変わらない収穫となり、5年平 均を上回るとみられる。南部アフリカで は、一部の国々で乾季が長引いたこと が悪影響を及ぼしているものの、4月か ら始まる主要な粗粒穀物(主としてトウモ ロコシ)の収穫は、全体として満足でき る見通しである。地域最大の生産国で ある南アフリカでは栽培面積が前年より 8%増え、史上最高の生産量を記録し た2008年に近い水準であること、さら に生長条件もおおむね良好であることか ら、この地域で生産量の少ない国々の 損失は相殺されるとみられる。 南半球では コメの収穫が近づく 南半球のコメ生産地では2010年の作 期がだいぶ進んでおり、3­4月には収 穫が始まる。南半球において飛び抜け たコメ生産国であるインドネシアは、20 09年のコメ栽培面積は史上最高だった ものの、エル・ニーニョに伴う干ばつに よって収穫面積が縮小する可能性があ る。南米では、一部地域の干ばつや他 地域での大雨による雨季の播種の遅れ の影響で、早期指標はやや不良である。

2009

年の生産実績

2008

年を少し 下回ったものの豊作 2009年の世界の穀物生産は22億2, 400万トン(精米を含む)と推定され、 史上最高だった前年を1.5%下回った。 小麦生産は前年並だったが、粗粒穀物 生産は2.4%、コメ生産は1.5%減と 推定される。地域別に見ると、北米では、 米国のトウモロコシ生産が2007年の 例外的な高水準まで再度上昇したこと から穀物生産は増加した。近東、CIS のアジア諸国、そして2008年の干ば つの影響による低水準から回復した北 アフリカでも、生産が伸びた。オセアニ アでは、オーストラリアの冬穀物生産が 降雨に恵まれたシーズンを反映して増 加した。これに対し、極東アジア諸国 では、中国、インドの粗粒穀物生産が 縮小し、インドのコメ生産も、不安定な モンスーンにより、豊作だった小麦生産 で相殺できないほどの不作となったこと から、生産の総計は減少した。ヨーロ ッパでも2009年の穀物生産は減少し たものの、前年の大豊作に続いて比較 的高水準だった。南米では、トウモロ コシの収量は5年平均並みであったも のの、小麦の収量が15年来の低水準 となったため、穀物全体の生産は大きく 落ち込んだ。

貿易

国際貿易は前年の記録を 大きく下回る 2009 / 10年度の世界の穀物の貿易量 は、2008 / 09年度の(高水準の)記録 から8%、2,200万トン減少した2億 6,100万トンと予想される。粗粒穀物 およびコメは前年に近い貿易量を保つと の予想だが、小麦の貿易が大幅に減少 したことが今期の縮小につながった。現 時点での予想では、LIFDC全体の輸入 22 SUMMER 2010

図 2 ─ 1 人当たり GDP と食肉の消費量 ( 2005 年) 出典: 1 人当たり食肉生産量は FAOSTAT ( FAO, 2009b )、1 人当たり GDP は世銀のデータに基づく注 1人当たりGDPは、2005年の恒常国際USドル換算の   購買力平価( PPP )で計算されているkg /年(1 人当たり食肉消費量) 1 人当たり GDP ( US ドル  PPP )020406080100120140050001000015000200002500030000350004000045000

参照

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