1 .はじめに
移動に関するイノベーションが起きようとしている。産業 革命以降,新しい発明は移動手段を進化させ,その進化は都 市や社会の仕組みを変えてきた。産業革命の原動力になった 蒸気機関は,鉄道という大量輸送が可能な交通手段を生み出 した。内燃機関を活用した自動車という発明と大量生産によ る低価格化は,自動車を個人の足として普及させ,現在の大 量生産・大量消費に支えられた豊かな社会をもたらした。ま さに移動は人間社会の下部構造であり,移動の進化は社会や 国土の使い方を変えていくのである。 しかしながら,自動車という大発明はさまざまなメリット を社会にもたらしたが,一方で交通事故,渋滞,環境という 問題も社会にもたらした。近年では地球規模の環境問題とい う制約も加わり,世界的な課題となっている。新しいイノベー ションとは,21 世紀の大発明である情報通信技術を自動車 や公共交通といった移動に新結合させることで,このような 課題を解決し,新しい社会システムを生み出そうという動き である。 最先端の情報通信技術を交通に結びつける研究開発分野を 高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)と 呼ぶ。特に近年,話題となっているのが自動運転技術の実用 化である。本稿では,ITS について概説し,自動運転技術の 最新動向を踏まえ,スマートモビリティと道路インフラがど のように進化していくのかについて論じたい。2 .ITS とは
2.1 日本における ITS の歴史 (1)ITS の全体構想・アーキテクチャ 1995 年 2 月,高度情報通信社会推進本部(本部長:内閣総 理大臣)が策定した「高度情報通信社会推進に向けた基本方 針」1)の中で,道路・交通・車両分野の情報化として ITS の 推進が決定された。この指針を踏まえ,同年 8 月には関係 5 省庁が連携して ITS 推進のガイドラインとなる「道路・交通・ 車両分野における情報化実施方針」2)を策定し,統一的な方 針に基づく ITS の研究開発・実用化への取り組みがスタート した。翌年の 1996 年には,ITS のマスタープランである「ITS 推進に関する全体構想」3)が策定された(表 1)。 その後,ITS 関係 5 省庁(旧建設省,旧通商産業省,旧運 輸省,旧郵政省,警察庁)は VERTIS(現在の ITS ジャパン) の協力をえて,1999 年に ITS のシステムアーキテクチャ4) を完成させた(図 1)。ITS にシステムアーキテクチャという 設計図が必要なのは,自動車と道路が通信しながら情報をや り取りするとなると,パソコンと同じように統一的な基盤と なるデバイスやそれらを操作しアプリケーションを動かすた めのオペレーションシステム(OS)というプラットフォーム が必要なためである。 このシステムアーキテクチャ作成と同時並行で技術開発が 進み,カーナビゲーションの高度化としての VICS(Vehicle Infrastructure Communication System)が 1996 年からスタート し, 自 動 料 金 収 受 シ ス テ ム と し て の ETC(Electric Toll Collection system)が 2001 年に実現した。Keywords : ETC2.0, SMARTWAY, Automated/Autonomous Driving, Cooperative ITS
開発分野 利用者サービス 1. ナビゲーションシステムの高度化 1)交通関連情報の提供2)目的地情報の提供 2. 自動料金収受システム 3)自動料金収受 3. 安全運転の支援 4)走行環境情報の提供 5)危険警告 6)運転補助 7)自動運転 4. 交通管理の最適化 8)交通流の最適化9)交通事故時の交通規制情報の提供 5. 道路管理の効率化 10)維持管理業務の効率化11)特殊車両等の管理 12)通行規制情報の提供 6. 公共交通の支援 13)公共交通利用情報の提供14)公共交通の運行 ・ 運行管理支援 7. 商用車の効率化 15)商用車の運行管理支援16)商用車の連続自動運転 8. 歩行者等の支援 17)経路案内18)危険防止 9. 緊急車両の運行支援 19)緊急時自動通報20)緊急車両経路誘導・救援活動支援 21)高度情報通信社会関連情報の利用 表 1 日本の ITS における 9 つの開発分野と 21 の利用者サービス3)
スマートモビリティと道路インフラ (2)日本発のイノベーションコンセプト「スマートウェイ」 「スマートウェイ」とは,日本国内の産学官と欧米の ITS 専門家が参加したスマートウェイ推進会議(委員長:豊田章 一郎経団連名誉会長)が,1999 年 6 月,提言「スマートウェ イの実現に向けて」で打ち上げた構想である。VICS や ETC などこれまで個別に開発されてきたシステムを統合するため のシステムアーキテクチャの議論を通じ,共通基盤(プラッ トフォーム)の必要性を世界に先駆けて日本から発信したコ ンセプトである(図 2)。 この構想では,「スマートウェイは,路車間の通信システム, センサ,光ファイバーネットワーク等の必要な施設が組み込 まれている道路であり,かつこれら施設を ITS の多様なサー ビスの提供に活用できるようにする仕組み(オープンプラット フォーム)を統合的に備えている道路」という定義がなされた。 2.2 ITS を構成する要素技術 スマートウェイといった ITS を構成する技術は,図 3 に示 すように人間の目の代わりとなる知覚情報技術(センサ),位 置を把握する位置特定技術(ポジショニング),地図との関連 をつける地図情報技術(マッピング),位置情報や交通情報な どを交換する情報通信技術(コミュニケーション),センター やローカルで情報を交換する情報網技術(ネットワーク),通 信された情報を人間に伝えたり操作したりする HMI(ヒュー マンマシンインタフェース)という最先端技術である。 これらの技術を組みあわせて,人間,車両,道路を結び付 け,問題解決のためのアプリケーションを生み出すプラット フォームをいかに社会に実装するかが ITS の普及をするうえ で非常に重要である。 (1)知覚情報技術の進化による情報爆発 目や耳の代わりとなるセンサ技術の進化による情報のデジ タル化とセンサネットワーク化,移動体通信ネットワーク化 の時代は,モビリティを大きく進化させた。特に,CCD (Charge-Coupled Device:電荷結合素子)センサの登場は画期 的であった。CCD センサを活用したデジタルカメラは,人 間の目の代わりとなるデジタル情報を無尽蔵に生成し始め, デジタル画像処理技術を進化させ,画像処理によりさまざま 図 1 システムアーキテクチャ(サブシステム相互接続図)4) 図 2 スマートウェイのコンセプト図 図 3 ITS の構成要素
ためのミリ波レーダなどがある。近年は,光を活用したライ ダ(LIDAR)とよばれるセンサも開発され高精度の測位も可 能となっている。こういったセンサは,道路の渋滞や周辺車 両や歩行者の状況など周辺環境の情報収集に使われる。 (2)軍事技術から派生した位置特定技術 位置を把握することは ITS 実現の基本である。自分の位置 がわからなければ目的地までナビゲーションするという基本 的なアプリケーションが構築できない。1996 年に米国の軍 事技術であった GPS(Global Positioning System)が直接課金 なく全世界に開放することが発表され,誰でも自由に GPS の民生用信号を利用できるようになった。 カーナビゲーションに使う場合は,現在の GPS では,都市 部ではビルなどの影響により位置特定精度が落ちるため,車 載器や車両のもつコンパス,ジャイロ,ホイールパルスなど の DR(Dead Reckoning:推測航法)センサを活用した補正や地 図を活用したマップマッチングという補正が行われている。 その他,路側機から補正データを提供することで精度向上 を図る方法も,トンネルや屋内駐車場といった衛星を捕捉で きない閉鎖空間で重要となる。 (3)地図情報技術と地理情報システムの進化 位置特定とセットなのが地図情報である。位置がわかって もそれが地図上に関連付けなければ,移動体の位置の把握や 経路探索ができない。地理情報システム(GIS:Geographic Information System)の進化がこれを支えた。1988 年に設立さ れた(一財)日本デジタル道路地図協会(以下「DRM 協会」と 呼ぶ)によって,世界に先駆けてデジタル道路地図データベー スの標準化が行われ,カーナビゲーションシステムの発展に 大きく寄与した。 ITS に必要な地図情報は,表示地図情報,道路ネットワー ク(リンク・ノード)情報,両者の接続関係情報,道路属性情 報(レーン,停止線,歩道,交差点など),静的情報(ランドマー ク,注意喚起など),動的情報(交通規制,路面,気象など) である。これらの情報は,経路案内などのアプリケーション によってユーザーが使える情報となる。そのため,それぞれ の情報はアプリケーションの要求する網羅性,正確性,鮮度 が大切になってくる。 (4)ITS の肝となる情報通信技術 情報通信技術は,車と道路をつなぐ ITS の要の技術である。 ラジオ放送やワンセグ放送のような放送型,携帯電話や Wi-張り巡らされており,道路通信標準により定められたさまざ まな情報が,センサ情報,車両,道路,ローカル情報センター, 中央情報センターをつないでいる。 この情報通信技術の進化で重要であったのは情報のデジタ ル化と光ファイバの登場であった。1983 年,旧建設省が打 ち出した「情報ハイウェイ構想」も重要であった。高速道路 における光ファイバ設置により,道路管理に必要なさまざま な情報の収集,道路利用者への情報提供,料金収受システム の合理化,関係機関との情報交換など世界に先駆けて道路の マルチメディア化が動き出したのである。その後,道路に敷 設された光ファイバは VICS や ETC の路車間通信を可能に するプラットフォームとして機能している。 (6)HMI HMI(ヒューマンマシンインタフェース)は,人間が機械 を操作するために,情報を得たり指示を与えたりする技術の ことである。機械が情報を伝える手段としてはディスプレイ, スピーカ,ランプがあり,人間が指示を与える手段としては タッチパネル,マイク,ボタンなどがある。 これまで,ドライバへの情報提供に関しては,道路標識, 可変情報板,漏洩同軸ケーブルを使った路側ラジオ放送が あったが,ITS の場合は,車両のセンサ情報と位置情報を組 みあわせて収集・処理された情報や,センターなどからネッ トワークを通じて通信された情報を,人間の視覚や聴覚を 使ってドライバに伝えるための技術をいう。
3 .ITS のセカンドステージと ETC2.0
3.1 セカンドステージのはじまり 2009 年から日本の ITS はセカンドステージを迎えた。それは, ETC に使われている 5.8 GHz 帯域の DSRC の大容量・双方向性 を最大限に活用し,マルチアプリケーションを動かすことので きる機能を持った ETC2.0 車載器が登場したからである。 ETC2.0 は,「スマートウェイ」コンセプトに基づき開発された。 具体的には,ETC には 5.8 GHz の通信装置,電波系 VICS には 2.4 GHz の受信装置が別々に必要であったものを,交通専用の 電波帯域である 5.8 GHz の通信装置一つで実現し(オールイン ワン),ユーザーの負担を減らすだけでなく,大容量・双方向 通信を活用した新しい機能が追加されたのである。 道路と自動車が連携し,様々なアプリケーションが開発で きる ETC2.0 プラットフォームの実現により,これまでのスマートモビリティと道路インフラ ETC や VICS の公共サービスだけでなく,物流事業者の支援, ロードサイドのガソリンスタンドやファーストフードなどの 様々な民間レベルでもプラットフォームを活用できるチャン スが到来した。 この本格的なセカンドステージへの胎動は,2004 年 8 月, スマートウェイ推進会議の提言「ITS セカンドステージへ」5) において 2007 年に本格的 ITS 社会を構築するという目標が 示されたところから始まる。提言に基づき,2005 年 3 月, 国土技術政策総合研究所(以下,「国総研」と呼ぶ。)と自動車 メーカ,電機メーカ等の民間 23 社による「次世代道路サー ビスに関する共同研究」が開始された。それまでに国総研 ITS 研究室が進めてきた走行支援道路システム(AHS)研究開 発の成果6)を活かし,ユーザーニーズが高いサービス,必要 なときに必要な情報を絞り込んで出すための優先順位の考え 方,プローブ機能による情報収集の簡易化といった路車協調 システムを世界に通用するトータルの社会システムとして完 成するために必要な機能を徹底的に議論し,2006 年 3 月, 5.8 GHz の DSRC の技術基準7)が取りまとめられた。 3.2 ETC2.0 の特徴 ETC2.0 車載器は,表 2 に示す機能を有している。ETC の 機能は当然として,通信容量が増えていることから VICS の 渋滞情報の提供エリアが大きく拡大するという従来の機能の 強化に加え,インターネット接続,音声読み上げ,プッシュ 型情報配信,道路プローブ情報収集という新たな機能が追加 された。これらの基本機能を組み合わせることで,走行中, 停車中で様々なアプリケーションの開発が可能となったので ある。そして,2011 年から高速道路を中心に設置された約 1,600 カ所と特殊車両許可車の経路収集用の路側機約 1,800 か所の ITS スポットが設置された。 スマートウェイの基本コンセプトである官民が多様なサー ビスの提供に活用するためには,官民が連携してこの路車協 調 ITS のプラットフォームを使いこなし,ユーザーが望む サービスを提供していく不断の努力が必要であろう。究極的 には,安全運転支援情報提供を持つ車載器が広く普及するこ とで交通事故ゼロ社会という到達点がようやく見えてくる。
4 .自動運転技術の最新動向
4.1 早かった日本の検討着手 ~オートパイロットシステム検討会 ETC2.0 により道路と自動車が連携する路車協調 ITS の仕組 みが動き出した。道路の機能向上と連動するように,自動車 の機能向上の議論もスタートした。2012 年 6 月,国土交通省 が「オートパイロットシステム検討会(座長:朝倉康夫)」を 設置した。高速道路上の自動運転を実現するシステム(オート パイロットシステム)について,その実現に向けた課題の整 理・検討等を行う目的で設置された。2013 年 10 月にまとめ られた中間とりまとめ8)では,オートパイロットシステムの コンセプト,目指すべき将来像,それに向けたロードマップ が示された。特に,オートパイロットシステム実現に必要な 検討事項・課題として,「同一車線内の連続走行(位置補完, 道路構造データの提供)」,「車線変更等を伴う走行(前方の規 制情報等の提供)」,「分合流部,渋滞多発箇所等における混雑 時の最適な走行」が挙げられ(図 4),2020 年代初頭頃までに, 高速道路本線上(混雑時の最適な走行を除く)における高度な 運転支援システムによる連続走行の実現を目指すとされた。 機能 アプリケーション ETC 料金決済(キラーアプリ) カーナビ ナビゲーション(キラーアプリ) 交通情報提供 大都市圏の全自専道の広域情報提供必要な時に必要な場所で情報表示 広域ダイナミックルートガイダンス 安全運転支援情報提供 渋滞末尾警告,カーブ警告(世界初) 道路プローブ情報 旅行時間情報が正確に急ブレーキなどの安全情報が把握可能に 情報接続サービス 観光情報,目的地設定,地図更新 文字音声読み上げ機能 簡単路側放送,観光ガイド 表 2 新車載器の機能とアプリケーションの例 図 4 オートパイロットシステムの実現に必要な検討事項分類 概要 責任関係等※注 左記を実現するシステム 情報提供型 ドライバへの注意喚起等 ドライバ責任 安全運転支援システム 自動制御活用型 レベル 1 単独型 加速・操舵・制御のいずれかをシステムが行う状態 ドライバ責任 レベル 2 システムの複合化 加速・操舵・制御のうち複数の操作をシステムが行う状態 ドライバ責任 ※監視業務及びいつでも安全運転 できる態勢 準自動走行システム 自動走行システム レベル 3 システムの高度化 加速・操舵・制御を全てシステム が行い,システムが要請した時は ドライバが対応する状況 システム責任(自動走行モード中) ※特定の交通環境下での自動走行 (自動走行モード) ※監視義務なし(自動走行モード: システム要請前) レベル 4 完全自動走行 加速・操舵・制御を全てドライバ 以外が行い,ドライバが全く関与 しない状態 システム責任 ※全ての行程での自動走行 完全自動走行システム ※注: ただし,いずれのレベルにおいても,車両内ドライバは,いつでもシステムの制御に介入できる。 情報収集技術の種類 技術の内容 特徴 自律型 自動車に設置したレーダ,カメラ等を通じて障害物等 の情報を認識 ・概ね全ての場所で機能 ・「見える範囲」に限定 ・周辺環境の影響をうける ・リアルタイム性に優れる 協調型 モバイル型 GPS による位置情報とクラウド上の地図上にある各種 情報を認識 ・概ね全ての場所で機能 ・広域の情報を収集可能 ・リアルタイム性に欠ける 路車間通信型 路側インフラに設置された機器から,道路交通に係る 周辺情報等を収集 ・設置場所にて機能 ・周辺や広域情報を入手可 ・リアルタイム性に優れる 車車間通信型 他の自動車に設置された機器から,当該自動車の位 置・速度情報等を収集 ・他の対応車が必要 ・「見えない場所」も対応可 ・リアルタイム性に優れる 表 4 安全運転支援システム・自動走行システムの情報収集技術の種類 図 5 自律型と協調型の統合に向けた戦略イメージ
スマートモビリティと道路インフラ により研究開発を実施している(図 6)。 SIP では,自律型の安全運転支援システム等の競争領域は 民間で進めるものとし,官民連携での取り組みが必要となる 基盤技術及び協調領域(協調型システム関連)についての開 発・実用化を主として推進している(図 7)。 具体的に開発,検証する技術として「地図情報高度化(ダイ ナミックマップ)の開発」「ITS による先読み情報の生成技術 の開発と実証実験」「センシング能力の向上技術開発と実証実 験」「ドライバと自動走行システムの HMI 技術の開発」およ び「システムセキュリティの強化技術の開発」を実施している。
5 .スマートモビリティと道路インフラの協調が大切
現在の自動運転の研究動向を踏まえると,自動運転の定義 に は,( 協 調 型 )自 動 運 転(Automated Drive)と 自 律 運 転 (Autonomous Drive)に分けられる。自動運転は,道路側や他 車の情報を組み合わせて,必要な情報を「協調」しながら把 握することで,安全で快適な自動運転を実現するものである。 自律運転は,自動車が自車から検知できる可能な限りの情報 を収集し,センターに問い合わせるなどして状況を認知し, 最適な自動運転を行うシステムである。 自動車交通という社会システムで使う場合は,自動運転と 自律運転の活用方法は大きく異なってくるのではないだろう か。特に重要なのは高速道路での走行の快適性の確保である。 現実の走行環境を考えると,自動車の自律機能で対応できな い以下のシーンが存在するからである。 5.1 前方の障害事象を回避するには急ブレーキしかない 100 km/h で走っている乗用車の停止距離について考えて みよう。0.5 G のフルブレーキをかけた場合の制動距離は約 80 m,0.2 G を超えると急ブレーキといわれるが,この場合 は約 200 m となる。自動運転の場合,ブレーキは車のセンサ の性能に依存することになるが,現在のところ 200 m 程度の 前方しか検知できないといわれている。もし,自律走行の車 が 100 km/h で走行した場合は,停止車両等の障害物があっ た場合は,0.2 G 以上の急ブレーキが作動することになる。 一日の乗車中に,数回も急激な自動ブレーキが作動するよう では,ドライバにとって非常に不快なシステムとなり,消費 図 6 自動走行システムの実現期待時期 図 7 事故低減のための SIP 自動走行システム ロードマップを活用して位置を確認し,車線等の道路標識・標示を認識して 走行位置を特定し,自動で走行するものである。大きな視点で 考えれば,道路地図や道路標識・標示といったインフラと協調 しながら AI(Artificial Intelligence)が運転をしているということ になる。道路の改修があり実際の道路構造が変わっている,路 面標示がかすれている,標識の位置がずれているなどのインフ ラの変化があった場合には,自動運転,自律運転にも支障が出 てくる可能性がある。そういったインフラの変化をどのように 把握し,情報の補正,リアルなインフラの補修を行っていくの かという社会的な仕組みづくりが必要である。
6 .次世代型路車協調システムの検討方向
自律運転では対応できないシーンの存在を考えると, 100 km/h 以上での走行となる自動車専用道路では,道路側が 収集した情報を活用する(路車協調)自動運転が不可欠である。 一方,速度が 30 km/h 以下でよいゾーン 30(30 km/h の区 域での速度規制)や中心市街地の場合は,0.5 G での制動距離 は約 7 m であり,車載のセンサを活用することで,歩行者を 含む外的要因を理解し,必要に応じて停止する自律運転は有 効に機能することが考えられる。特に,自動車や歩行者が少 ない地方部や工場などの管理された空間では有効に活用され る可能性がでてくる。これらの自動車のセンサ情報は,これ まで不足がちであった道路管理のための情報としても活用さ れ,安全で快適な道路走行環境の確保につながり,結局のと ころ自動運転の車両が安全に快適に走行できることになる。 安全で快適な自動運転の実現は,ドライバに『とても便利 だ』と思わせる機能と認識され,自動車の販売促進につなが る。自動運転車両の普及は,事故や渋滞の大幅な削減につな がるため,事故による死傷がもたらす社会損失,渋滞による 膨大な時間損失をなくし,社会問題を解決することが出来る。 まさに「車」「道路」「社会」の 3Win の関係が成り立つのが 路車協調 ITS という研究開発コンセプトである。 6.2 路車協調 ITS 官民共同研究への期待 国総研では,2015 年 4 月から官民共同で次世代型路車協 調 ITS に関する研究をスタートさせた。研究項目として,路 側サービス(車両から路側への情報提供による道路交通円滑 化・道路管理の向上に資するサービス)の検討,車側サービ ス(路側から車両への情報提供による安全運転支援・道路交 通円滑化支援に資するサービス)の検討,共通プラットフォー ム(路側・車側サービスに共通する通信メディアや情報処理 システム等の横断的なプラットフォーム)の検討の 3 項目を 研究開発している。 図 8 次世代型路車協調システムの検討方向スマートモビリティと道路インフラ そのなかでも特にニーズの高い重要なサービスとして,分 合流部における先読み情報の生成・提供による運転支援サー ビスの研究,位置精度や車線別データ,高度 DRM データ等 を用いた地図の高精度化に関する研究,路車間や車車間を見 据えた無線通信技術の高度化や通信フォーマット共通化に関 する研究などを進めている。