⃝特集「マンション管理の新たな展開」
法的側面から見た管理組合運営の課題と今後のありかた
弁護士吉田 修平
第 1 管理組合及びマンション管理の意義
1 管理組合の意義 管理組合とは、区分所有者全員で構成される、建物並 びにその敷地及び附属施設を管理するための団体をいう (区分所有法 3 条、管理適正化法 2 条 3 項)。そして建物 等の管理は、集会を開き、規約を定め、管理者を置くと いう方法によって行うことができる(区分所有法 3 条)。 以上の定めから、管理組合の目的は、建物、敷地及び 附属施設を管理することにあり、管理組合は、区分所有 者全員で構成されるため、加入が強制される団体である。 この点、自治会や町内会が地域のコミュニティ活動を目 的として居住者の自由意志により加入・脱退が認められ ているのと異なる。 そして、管理組合の目的が建物等の管理にあるので、そ の行うべき業務も建物等の管理に限定されることになる。 2 マンションの管理とは マンションの共用部分の管理に関する事項は、集会の 決議で決することになるが、保存行為は、各共有者が単 独で行うことができる(区分所有法 18 条)。そこで、集 会の決議により決せられることになる管理とは、「狭義 の管理」となる。 「狭義の管理」とは、概念的には、広義の管理行為から、 共用部分の「変更」、つまり共用部分の形状または効用 の著しい変更を伴うもの(区分所有法 17 条)、及び共用 部分の現状を維持する行為である「保存行為」を除いた 事項であり、両者の中間にある事項である1, 2。 従って、具体的に建物等の「管理」に関する事項とは、 共用部分の清掃や補修、建物等の管理費・修繕積立金の 負担割合・額・支払時期・徴収方法の決定や、その徴収 及び共用部分に関する税金その他の諸経費の支払いなど の建物等を維持していくために必要又は有益な事項をい うことになる。第 2 マンション管理の実際(マンション標
準規約との関係)
現在、多くのマンションの管理組合において、国土交 通省の作成したマンション標準管理規約に従って管理が なされている。 区分所有法上、前述のとおり共用部分の管理に関する 事項は集会の決定によるか、規約によることになってい るところ(区分所有法 18 条 1 項、2 項)、実際には、デ ベロッパーがマンションを建築すると同時に、自らが区 分所有者として標準規約を作り(原始規約)、それがそ の後の取得者(ユーザー)に引き継がれていく形態をとっ ている(規約については、同法 30 条以下に規定されて いる)。このような状況の下において、マンション管理 規約を作成する際の参考となるべきものとして、マン ション標準管理規約があるのである。 即ち、マンション標準管理規約とは、管理組合が集会 において任意に設定すべき管理規約について、その指針 ないし参考とするものとして、行政(国土交通省)が標 準モデルを提示したものである。 尚、2001 年(平成 13 年)にマンション管理適正化法、 2002年(平成 14 年)にマンション建替え円滑化法が施 行され、また、2003 年(平成 15 年)には前年に改正さ れた区分所有法が施行されたため、これらを踏まえ、 2004年(平成 16 年)に第 3 回目の改定が行われた(※ その際、名称も「中高層共同住宅標準管理規約」から「マ ンション標準管理規約」へ変更された)。 今回のマンション標準規約の改定は、その後の 2011 年(平成 23 年)の改定につぐものであるが、大幅かつ 抜本的な改定が行われた。第 3 マンション管理組合運営の課題と対応策
1 マンション管理の問題点(※以下、従来のマンショ ン標準管理規約を「旧規約」と表示する。) 区分所有法 25 条では、集会の決議により管理者を選 任することができると定められているだけであり、区分 所有法には「管理者」を誰にするか、即ち、マンション 管理を誰が行うかについての規定はない。 ところが、旧規約において、(ア)管理者には「理事長」 がなることとされ(規約 38 条 2 項)、(イ)理事長は理 事の互選によることとされ(規約 35 条 3 項)、しかも、(ウ) 理事はマンションに現住している者とされた(規約 35 条 2 項。但し、平成 23 年の規約改定により、この規定 は撤廃された)。 その結果、ほとんどのマンションにおいて、「マンショ ンを所有し、マンションに現に居住している者の中から 選任された理事長が、マンション管理を行う」ことが半 ルール化され、常態化することとなった。しかも、通常 は無償で管理業務を行うのである。 しかし、マンションの管理を行うには、一定の能力と それなりの意欲や時間的余裕が必要である。ところが、 現在のマンションにおいては、①住人の高齢化、②賃貸 化や、③仕事が忙しく時間的余裕がない等の理由により、 「理事のなり手がいない(= 管理者不在)」という問題や、 未収管理費の放置や長期修繕の策定をしない等の管理の 形骸化という問題が発生することとなった。 また、素人である理事が、専門的知識のあるスタッフ を有する管理会社にマンション管理を丸投げにすること により利益相反等の問題が発生することとなり3 、その 結果、マンションのスラム化などの管理不全マンション が発生することとなった。 2 問題の先送りや不十分または不適切な対応について ⑴ 問題発生の原因と結果について ① 前述のとおり、現在のマンションにおいては、 理事のなり手がいないにも拘わらず、そのマンショ ンにおける区分所有者が自らマンションの管理を 行わなければならないというルール(自主的管理) があることから、必ず区分所有者のうちの誰かが 理事にならなければならず、また、一旦理事に選 任されてしまうとなかなか別の者に代わってもら えないために、同じ人達が長期間にわたり、しか も無報酬で理事を行うことになってしまった。 本来、マンションの管理を行うためには、それな りの能力とやる気がなければならないところ、この ような状況の中で選任され長年理事を続けている人 達は、管理をする能力ややる気が不足しがちになっ てしまう。 その結果、マンション管理における面倒な問題に ついては、自分が理事の間は、なるべく触りたくな いということから先送りをすることとなり、また、 能力不足の点から、よく分からない問題については 放置したり、あるいは、そもそも問題のあること自 体に気づかないこともしばしば見受けられることに なる。 そこで、現在の多くのマンションにおいて、以下 のような問題が発生することとなった。 ② まず、管理費等の滞納の問題である。判例によ れば、管理費の滞納について、かなり高額なもの になることもあることがわかる4。 これらの滞納された管理費など(修繕積立金な ども含む)について、単にマンションを所有して いるというだけの区分所有者にとっては、どのよ うな方法をとって滞納されている管理費などを回 収したらよいのか、全く分からないということも 多いであろうし、また、同じマンションを所有し、 更には居住している区分所有者は隣人でもあるた め、それらの顔見知りの者に対して弁護士を頼ん で滞納管理費の回収の訴訟等を行うことを躊躇す る人も多くいるものと思われる。これらの滞納管 理費等の負担は、結局、他の区分所有者に転嫁さ れることになるのである。 ③ 現在の多くのマンションにおいては、集会にお いて議決権を行使するときの割合については、専 有部分の床面積の割合によることが通例となって いる5。 ところで、マンションの管理行為のうち狭義の 管理行為については、民法の共有理論に従えば持 ち分の価格の過半数によることになる(民法 252 条)。すると、マンションの管理についても、専 有部分の床面積の割合によるのではなく、本来で あれば、専有部分の価値割合によるのが原則とな るはずである。 たとえば、タワーマンションの 1 階 100㎡と 40 階の 100㎡の 2 室について、全く同じ間取りであるが、1 階の分譲価格は 3000 万円、30 階は 6000 万円であったとする。 従来行われている方法によれば、床面積割合が 同じであるので、集会における議決権の割合も同 じとなるが、更に、一般的には、敷地の共有持分 割合も、専有部分の床面積割合の比率によること としているので、1 階と 30 階で、敷地について は同じ共有持分割合となる。 しかし、仮に首都圏直下型地震が起こり、この マンションが倒壊等してしまい、やむなく取り壊 した上で敷地を売却し区分所有者間で売却代金を 分けるとすると、1 階と 30 階で同じ金額しか取得 できないことになってしまう。1 階部分と 30 階部 分では眺望などが違うため、間取りや仕様などが 全て同じであったとしても、分譲価格は 3000 万 円と 6000 万円という差があるのであり、このよ うな価値の差を集会の議決権割合や土地の持分割 合に反映させないのは妥当とは思われない。 結局、このような従来のやり方が通用してきた のは、マンション制度がスタートした過去の時点 において、せいぜい 3、4 階立ての建物の 1 階と 4階を比べた場合に、4 階の方が多少眺望が良い としても、エレベーターがないため階段を 4 階ま で上らなければならないというマイナス面を考慮 し、そうであれば 1 階と 4 階は同じ議決権割合か つ土地の持分割合でよいとしてきたのではないか と思われる。 また、このようなやり方にすることにより、マ ンションの開発業者(ディベロッパー)において、 原始規約で集会の議決権割合を決めることについ ても、また、分譲するに際して土地の持分割合を決 めることについても容易となることから、このよう な方法が一般的になっていったものと思われる。 ④ 次に、今後、マンションの買い手として、外国 人の比率も高まってくるものと思われ、また、従 来の購入者層も高齢化していくことにより、例え ば、有料老人ホームに移るための一時金を捻出す るためにマンションを売却することも検討するこ とになるものと思われる。 このように、マンションという資産の流動化を 図るためには、また、その買い手としてグローバ ルな視点も伴ってくることも考えるのであれば、 マンションを取り巻く様々な情報を開示していな い現状は問題があるということになる。特に、個 人情報保護法などの問題もあり、一般的に、外部 の人間はそのマンションにおける管理組合の理事 の氏名すら知ることができない状況が一般的と思 われる。 ところで、マンションという資産を購入する場 合は、各区分所有権に関する情報を始めとして、 マンション全体の情報の開示は必須であると考え られる。マンション自体の老朽化の程度や、修繕 の必要性、また、過去の修繕履歴等々という建物 のハード部分の情報はもちろんのこと、修繕積立 金の積立状況なども今後マンションを購入する人 にとっては極めて重要な情報となる。 更に、区分所有権の前所有者に管理費の未納等 があるかどうかは、マンションを購入した特定承 継人がそれらの債務も承継することを考えるなら ば(区分所有法 8 条、同 7 条 1 項)、極めて重要 な問題となりうるのである。 ⑤ また、マンションにおいては、理事が会合にお いて飲食を行うという問題も指摘されている。 もとより、理事のなり手不足という状況の中、 昼間は仕事がある者にとっては、理事会に出席可 能な時間帯は夜の 7 時過ぎなどということも考え られるところ、夕食時に重なることから弁当を出 すことなどは許容されるとしても、理事の報酬が 無償だからといって、理事への報酬代わりとして アルコールを含んだ飲食が行われることは妥当と は思われない。 同様に、マンションの人間関係を良くするため という名目で、例えば一部の者だけが参加できる サークル活動やイベントなどに管理費から出費を 行うことも許されることではない。例えば、特定 のサークル活動や趣味の会を催したり、特定の宗 教の行事のために管理費から出費を行うことは、 それらのサークル活動、趣味の会や宗教と無縁な 人々にとっては、自分たちが支払った管理費が目 的外に使用されることになってしまうからである。 ⑶ 対応策について 以上のような様々な問題について、法律上、いく つかの対応策をとることが可能と思われる。しかし、 必ずしも専門的知識を有しない理事がこれらの諸問
題につき的確に対応することは期待できない。法律 や、制度の仕組みを知らない素人である人達が持ち 回りで理事になっている現状において、これらの問 題に直面しても適切な解決策を見い出せないまま問 題を先送りしたり、あるいは、そもそも問題が生じ ていることすら気づかないという事態が生ずるの も、ある程度やむを得ないものと思われる。 しかし、それでは、マンションの資産価値はどん どん減ぜられていくことになる。まして、行うべき 修繕をしないことにより管理不全のマンションが危 険性を持つことになれば、首都圏直下型地震などへ の対応も十分行えないことになりかねないのである。 そこで、以上の問題についての実効性のある対応 方法について、このたび改定された新しいマンショ ンの標準管理規約においては、以下のような対応策 が具体的な指針として明示されることとなった6。 ① 抜本的な解決方法としての外部の専門家の活用 について 新しい標準管理規約において、外部の専門家の 活用がすすめられることになったが、前述のとお り区分所有法上の問題はないので、管理規約の改 正だけで可能となったものである。 まず、第一に、理事・監事外部専門家型、また は理事長外部専門家型というものがある。これは、 管理者になる理事長を外部からの専門家に就任し てもらい、他の組合員は理事となって監督してい くというものである。理事長だけではなく理事ま たは監事にも外部の専門家に就任してもらおうと いうパターンもこの中に入ってくる。更に、理事 長はもともとの組合員に就任してもらうが、理事 または監事の中に外部の専門家を入れるというパ ターンのものもある。 この方式は一般的に多くのマンションに適用で きるが、主に、タワー型などの大きな住戸の多い マンションなどで、この方法をとれば理事のなり 手不足の解消に非常に役立つと考えられる。 次に、第二として、外部管理者理事会監督型が あるが、これは区分所有法上の管理者に、外部専門 家が就任してもらい、理事会や理事長が、外部の専 門家を監督していくというものである。更に理事ま たは監事の中にも外部の専門家を入れて、外部の管 理者を監督していくパターンのものもある。 第三として、外部管理者の総会監督型があるが、 これは小規模なマンションを想定しており、理事 会はなく、外部から招いた管理者である専門家を 総会自体で監督していくものである。 ② 滞納管理費などの回収の方策について 管理者の滞納問題については、3 つの解決手段 が、新しい標準管理規約において明確に整理され た(標準管理規約 25 条、26 条、60 条及び同コメ ント並びにフローチャートとその解説)。 第一は、区分所有法 7 条の先取特権である。区 分所有法 7 条の先取特権は、滞納者の持っている 専有部分についてだけ担保権として機能し、そこ から優先的に回収できるのであるが、専有部分に は抵当権が設定されていることが多く、その場合 は、抵当権が優先することになるので、区分所有 法 7 条で専有部分の競売の方法を取って回収しよ うとしてもあまり効果がない。 そこで、第二に、マンション以外の財産からの 回収をすることになる。この場合は、通常訴訟を 行って、債務名義を取った上で強制執行をかけて いくことになるが、その場合は、財産がどこにあ るか分からないという問題が生ずる。そこで、マ ンション管理組合が区分所有者から、事前に管理 費の未納、修繕積立金の未納について調査をする ことについて協力する旨の同意を取っておくこと が有効な手段となる。 更に、第三の手段として、区分所有法 59 条に よって、区分所有権そのものの競売請求ができる。 この場合、区分所有者が区分所有法 6 条 1 項に 規定する行為(共同利益相反行為)をしたこと及 び共同生活上の障害が著しいことを立証し、更に 他の方法によっては解決できないことまでも立証 した上でないと区分所有法 59 条による区分所有 権の競売請求は認められない。 即ち、区分所有法 59 条は、いわば最後の手段 となるのであるが、そのような区分所有法 59 条 を滞納管理費等の回収の為に使うことができるの かが、従来はあまり明確ではなかったところ、今 回、管理費の未納の場合でも 59 条によることが できることが明確にされた。 即ち、通常の訴訟における競売についてはオー バーローンという問題があり、競売物件に他の担
保が付いてしまっていて、競売を申し立てた債権 額を競売代金から回収できないときには、競売を 申し立てても却下されてしまうことになる。しか し、区分所有法 59 条による競売は、その場合で も可能となるのである7 。 そうすると共同利益に相反する行為として管理 費の未納が位置付けられることになり、区分所有 権は競売され、所有者はマンションから退去させ られることになり、オーバーローンの場合には、 特定承継人から未納分の回収ができることになる。 ③ 集会の議決権割合及び土地の持分割合について 集会の議決割合についても、専有部分の価値割 合によること及び土地の持分割合についても同様 にすることが新しい選択肢として示されることと なった(新標準管理規約 46 条コメント)。 ④ 旧規約は、文書の管理の主体が管理組合と理事 長に分かれる複雑な規定内容となっており、また、 組合員や利害関係人にだけ、しかも、理由を付し た書面による請求があった時のみ閲覧をさせると いう規定があるのみであり、現在のような情報の 開示が必要とされている時代にそぐわないものと なっていた。 たとえば、新たに中古マンションを購入しよう としている者にとっては、そのマンションの設計 図書や修繕などの履歴情報は、購入をするか否か の決定についての重要な情報となるし、きちんと した修繕等が行われているマンションであれば、 必要な修繕が行われていないマンションに比べ て、当然、市場において高く評価されるのである から、情報の開示は中古マンションを売却したい と考えている現所有者にも大きなメリットをもた らすことになる。 さらには、情報の開示がなされないことを良い ことにして、行うべき修繕等を行わないで放置す るような怠惰な管理組合の存在を許すことにもな りかねない。 上記のような問題があるため、標準規約が見直 され、会計情報や管理に関する情報を開示するこ とを各マンションが選択できることとなった。 長期修繕計画書、設計図書及び修繕等の履歴情 報について、組合員又は利害関係人の請求に基づ く閲覧の規定が新たに設けられ、更に、この規定 の趣旨と理事長の書類の保管責任(文書を再作成 する等のために要した費用の賠償責任)について 新たに解説された(標準管理規約 64 条)。 閲覧の対象とされる管理組合の財務・管理に関 する情報(帳票類、長期修繕計画書等、規約原本 等)については、組合員又は利害関係人(専有部 分等に対する担保権者、差押債権者、及び賃借人 などの法律上の利害関係を有する者)の請求に基 づき、当該請求した者が求める情報を記入した書 面を作成し、交付することができる旨が新たに規 定され(標準管理規約 64 条)、更に、この規定の 趣旨が解説されるとともに、情報提供の対象範囲 を具体的に細則で定めるに際し参考となる情報項 目の例についても明示された(同コメント)。 また、これらの情報提供の対象者にマンション の購入予定者を含めて規定することも考えられる が、一方で、防犯上の懸念等もあることから、各 マンションの個別の事情を踏まえて検討すること が必要である旨が解説された。 なお、文書の種類によって管理主体が「管理組 合」と「理事長」とに分かれている旧標準規約の 規定ぶりについても、実態を踏まえ、保管の責任 者は「理事長」に統一された(標準管理規約 64 条)。 このように、マンション管理組合の財務や管理 に関する情報がマンション市場に広く開示される ことによって、マンションの購入を検討している 第三者によっても管理の状況等がモニタリングさ れることとなり、それを通じて、役員による適切 な業務執行の推進が図られ、財産管理の面での組 合員の利益の増進につながることが期待される。 また、マンション管理に関する情報が公開され ることにより、各組合員が役員の業務執行に対し て強い関心を持つこととなり、これを通じた管理 の適正化が期待できるため、結果的には、組合員 全体の利益の増進につながることになる。 更に、少なくとも中古マンションとして購入し ようとする希望者に対して情報が公開されること により、優良な管理が行われているマンションほ ぼ価格が高くなるというメリットも生ずることに なるものと考えられる。 ⑤ サークル活動、趣味の会などへの出費について マンション管理組合は、強制加入団体であり脱
退の自由はない。また、その目的は、前述のとお りマンション管理を行うことによるマンションの 財産的価値の維持と増進である。もとより、マン ションにおいて居住者間のコミュニティ関係が促 進されることは良いことであるが、それ以上に、 マンションの財産的価値の維持・増進に直結しな い一部の人の為の趣味の会やサークル活動や宗教 活動に管理費からの出費がなされるべきではな い。そこで、今回の新標準管理規約では、いわゆ るコミュニティ条項が排除されることとなった (旧規約 34 条 15 項など)。 3 従来は存しなかった新しい問題の発生について ⑴ 内容 従来は想定されなかったり、十分に議論されな かった問題が、最近のマンションを取り巻く新しい 問題として出現してきている。 マンションを第三者に賃貸するときに暴力団関係 者が入居してしまうとマンションの価値が減ぜられ るという問題が生ずる。売買のときも同様である。 これらについて、従来、個々の区分所有者の行う 賃貸や売買をマンションの管理組合が制止すること は想定されていなかったが、地方自治体において暴 力団排除条例が施行され、売買契約や賃貸借契約に おいて暴力団排除の条項を設けることが一般となっ ている現在においては、マンションにおいても管理 組合が主導して実質的な暴力団対策を行う必要があ るものと考えられる。例えば、暴力団に区分所有建 物を貸さないようにしよう、売らないようにしよう、 などといくら言っていても、現実にそれを守らない 区分所有者が出現したり、暴力団と気づかずに売却 または賃貸してしまったことを後で気づいた区分所 有者が何も手を施さないでいることも十分考えられ るのである。 このようなときに、管理組合は何も手を打てない ということになれば、他のマンションの住人達に とって脅威ともなるし、何よりもマンションの価値 が大きく減ぜられることになるのである。 ⑵ 対応策 新しい標準管理規約では、以下のような対応策 が示されている。 区分所有者が区分所有権等を賃貸(貸与)する 場合には、区分所有者(貸主)と借主の間で締結 する賃貸(貸与)契約の中に、以下のような条項 を入れることが区分所有者の義務として規定され た(標準規約 19 条の 2)。 (ア) 契約の相手方が暴力団員ではないこと及び 契約後において暴力団員にならないことを確 約すること。 (イ) 借主が暴力団関係者であることが判明した 場合には、貸主は当該賃貸(貸与)契約を解 約することができること。 (ウ) 貸主が解約権を行使しないときは、管理組 合は、貸主に代わって解約権を行使すること ができること。 区分所有者が、上記のような暴力団排除条項を 含んだ賃貸(貸与)契約を締結した場合に、借主 が暴力団関係者であることが明らかになったとき は、管理組合は貸主に対して違約金を請求するこ とができる。すると、管理組合が区分所有者に対 して、その違約金という債権を持つが、他方、区 分所有者は入居させてはならない暴力団を入居さ せることで約束に違反しているので、管理組合が 損害賠償請求権(違約金)を区分所有者に対して 持つことになる。 そこで、賃貸人(区分所有者)は、入居させて しまった暴力団員に対して、暴力団員であること を隠して入居したことを理由として賃貸借契約を 解除し退去を求めることになるが、それを区分所 有者自身がやらないときには、管理組合が持って いる損害賠償請求権(違約金)に基づいて、債権 者代位権(民法 423 条)により暴力団員に退去を 求めることを管理組合が行うことができるように なるものと考えられる。ただ、債権者代位権を行 使するには、債務者が無資力であることが必要で あるが、区分所有者が無資力であるとは限らない 等の問題もあるので、管理組合が区分所有者から 代理権を授与してもらい、その上で、代理権の行 使として賃貸借契約を解除することができること とされた(同条 1 項 3 号)。 なお、暴力団員への区分所有権の譲渡の場合に ついても、賃貸契約の場合と同様の対応をするこ とができることとなった。