ii
はじめに
◆ 著者の 中 なか 満 みつ 泉 いずみ さんは、 国際連合の事務次長 として 軍 ぐんし 縮 ゅく 問 もん 題 だい を担当しています。 ◆ この本は、今、 世界で起きている課題 について 一 いっ 緒 しょ に 考える本です。 ◆ とくに 軍 ぐん 縮 しゅく 、 平和 、 環 かん 境 きょう 、 人 じん 権 けん 、 格 かく 差 さ 、 ジェンダー の 問題などについてとりあげます。iii はじめに ◆ 2019年 4月から2021年 1月まで、 その時々の 出来事について 新聞に 寄 き 稿 こう した記事をまとめたもので す。 ◆ 必要な個所には 「キーワード」 として、用語について 補足して説明が書いてあります。 ◆さあ、地球の未来のために、さまざまな課題について 一 いっ 緒 しょ に考えていきましょう。
iv
目
次
はじめに1
世界は必ず変えられる
12
NPTと核軍縮
―
条約の力をいかそう 113
世界難民の日
―
支援は小さな勇気から 194
ジェンダー平等
―
少女よ! 大志を抱け 275
核兵器禁止条約
―
被爆者の声を聞こう 356
広島、長崎の日
―
一人ひとりを感じて 417
気候行動サミット
―
世界全体の危機を前に 49v 目 次
8
前に進む軍縮
―
地道な努力が人を救う 559
未来のための軍縮
―
禁止すべき新たな武器 6110
ツツ大主教の言葉
―
希望のとりこになる 6711
広がる格差
―
早急な取り組みが必要 7312
三つの提案
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対話と勇気と信念と 8113
コロナ危機
―
みんなが安全でなければ 8914
原爆から
75年
―
未来をひらく記憶 9715
ハリスさんの姿
―
未来のための闘い 10516
リーダーとは
―
他者に心を寄せて 113 1歩踏み出したいあなた へ 関連情報マップ 1201 1 世界は必ず変えられる
1
世界は必ず変えられる
このメッセージを、私は海外 出 しゅっ 張 ちょう 中 ちゅう の飛行機の中で書いています。今回 の 出 しゅっ 張 ちょう はドイツのベルリンからはじまって、スイスのジュネーブ、ベルギー のブリュッセル、アメリカのワシントンDCをまわる少し長めのものになり ました。 上の 娘 むすめ は大学の 寮 りょう にいますし、高校生の下の娘も短期留学でベトナムにい るので、私はいつものように家族の心配をすることなく、仕事に集中できま した。 直 前 に ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で 起 き た テ ロ 事 件 (注・2019 年 3月 に ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 南 部 の ク ラ イ ス ト チ ャ ー チ で 起 き た 銃 じゅう 乱 らん 射 しゃ 事 件) な ど、世 界 で 起 こ っ て い る2 さまざまなことを考える機会にもなりました。 私は日本で生まれてごく 普 ふ 通 つう の家庭に育ち、 21歳さい までパスポートも持って い ま せ ん で し た。で も、大 学 で ア メ リ カ に 留 学 し た こ と を き っ か け に 国 連 (国際連合) で働くことを目指し、気づくと人生の半分以上を外国で暮らすよ うになりました。
○
紛争にかかわる
最初は 国 こく 連 れん 難 なん 民 みん 高 こう 等 とう 弁 べん 務 む 官 かん 事 じ 務 む 所 しょ (UNHCR) というところで、 難 なん 民 みん の人 たちを保護する仕事をしました。その後、戦場で 和 わへ 平 いこ 交 うし 渉 ょう をしたり、市民を 守ったりする 国 こく 連 れん 平 へい 和 わ 維 い 持 じ 活 かつ 動 どう (PKO) や、 開 かい 発 はつ 途 とじ 上 ょう 国 こく を豊かにするための 国 こく 連 れん 開 かい 発 はつ 計 けい 画 かく (UNDP) という機関で働きました。仕事の内容はさまざまで すが、イラクやシリアなどの中東地域や、内戦中のボスニアなど、戦争や 紛 ふん 争 そう にかかわる仕事がほとんどでした。3 1 世界は必ず変えられる このような争いを早く終わらせるように努力し、人々が平和に安全に暮ら せるように 支 し 援 えん するのが私たち国連の仕事なのです。 今は国連本部のあるニューヨークで、 軍 ぐん 縮 しゅく の仕事を担当しています。軍縮 とは、各国が持つ危険な兵器を、 交 こう 渉 しょう で減らしていくことです。 困っている 難 なん 民 みん の人たちを助ける仕事とは 違 ちが って、 軍 ぐん 縮 しゅく の仕事はすぐに目 に見える成果が出せるものではありません。でも実は国連が設立された理由 そのものにも大きくかかわっています。 世界中で少なくとも5000万人以上が 犠 ぎ 牲 せい になった歴史上最大の戦争・ 第二次世界大戦後に、二度とこのような戦争を起こさないため、世界の国々 が集まって国連は作られました。そして 広島 と 長崎 に 原 げん 子 し 爆 ばく 弾 だん (以下、 原 げん 爆 ばく ) が落とされてから、わずか 5か月後、1946年 1月に行われたはじめての 国連総会の記念すべき第 1号を核兵器の廃絶を目指す決議とし、国際社会と してこの課題に最優先で取り組んでいく決意を示しました。 し か し、そ れ か ら 70年 以 上(2020 年 で 75年) た っ た 今 で も、世 界 に は
4 1万4000発以上 (2020年には 1万3400発) の 核 かく 兵 へい 器 き があります。 これでは 核 かく 兵 へい 器 き の 廃 はい 絶 ぜつ なんて無理ではないか、という気持ちになるかもし れません。実は私も、時々、そうやって落ち 込 こ むことがあるのです。戦争を しているような現場での仕事もそうでした。 一 いっ 生 しょ 懸 うけ 命 んめい がんばっても、たくさ んの人々が 犠 ぎ 牲 せい になっていく……。
○
落ち込んだ時は
そんな時私は、世界の歴史の中で、これまで何度も「 不 ふ 可 か 能 のう 」と思われて きたことが実現した例を思い起こします。 例えば 19世紀までは当たり前だった 奴 ど 隷 れい 制 せい 度 ど をなくした運動や、 20世紀の 初めごろまでは考えられもしなかった女性が選挙に参加することが、今は当 たり前になったこと。そして、アメリカでも1950年代から1960年代 に 公 こう 民 みん 権 けん 運 うん 動 どう という黒人差別をなくしていく大きな社会運動が起こりました。5 1 世界は必ず変えられる
コンゴ民主共和国東部の避難民キャンプで子どもと (中満さん提供)
6 どの場合も「こんなの、おかしいんじゃないの」と思った市民たちが声を 上げたのがはじまりです。 世界は必ず変えられる と私は思っています。 21世紀の世界は、 地 ちき 球 ゅう 規 き 模 ぼ でさまざまなことが起こる 「地球時代 」 に入っ たと私は思います。 そもそも 気候変動 のような課題は、全世界で考えて行動しなくてはなりま せん。 紛 ふん 争 そう や テロ の問題も同じです。地球の裏側で起こった事件が、インタ ーネットを通して全世界に伝わり、あっという間に飛び火するかもしれませ ん。だからこそ国際社会は S エス D ディ G ージ s ーズ ( 持 じ 続 ぞく 可 か 能 のう な開発目標) を作り、 貧 ひん 困 こん や 環 かん 境 きょう 、そして平和な社会を作ることに取り組んでいます。 みなさんの生活とは関係ない、遠い話だと思うでしょうか? 地球の未来を変えるあなたと 一 いっ 緒 しょ に、これから考えていけたら、と思いま す。 (2019年 4月 7日)
7 1 世界は必ず変えられる キーワード *国連平和維持活動 (PKO) 世界各地の平和と安全を前進させるための活動。 停 てい 戦 せん の 維 い 持 じ と兵力の引 き 離 はな し、人道活動の保護、和平調停の 実 じっ 施 し などを行う。 *公民権運動 アメリカでは 奴 ど 隷 れい 解 かい 放 ほう 宣 せん 言 げん 後も黒人に対する差別が続き、1950年代 から1960年代にかけて、白人と平等な権利を求める運動が展開され た。 *SDGs (エスディージーズ。持続可能な開発目標) 2015年に国連サミットで 採 さい 択 たく された、 持 じ 続 ぞく 可 か 能 のう でより良い社会を目 指すための目標。
8 ● 国際連合 1945年 10月に設立。加盟国は193か国 (2020年現在) 。 おもな活動目的は、国際平和と安全を 維 い 持 じ すること、国家間の友好関係を 育てること、国際問題の解決と 人 じん 権 けん 尊 そん 重 ちょう の 促 そく 進 しん に協力すること、そして各 国の行動を調和させるために中心的役割を果たすこと。 国 こく 連 れん 憲 けん 章 しょう は国連の主要機関として 総会 、 安 あん 全 ぜん 保 ほし 障 ょう 理 り 事 じ 会 かい 、 経 けい 済 ざい 社 しゃ 会 かい 理 り 事 じ 会 かい 、 信 しん 託 たく 統 とう 治 ち 理 り 事 じ 会 かい 、 国 こく 際 さい 司 し 法 ほう 裁 さい 判 ばん 所 しょ 、 事務局 の 6つの機関を設けている。 安 あん 全 ぜん 保 ほし 障 ょう 理 り 事 じ 会 かい の 常 じょ 任 うに 理 んり 事 じ 国 こく は中国、フランス、ロシア、イギリス、アメ リカ。 ● おもな機関 国連開発計画 (UNDP) : 貧 ひん 困 こん の根絶や不平等の 是 ぜ 正 せい のほか、人々の生活 向上を助けるため、各国が必要とする知識や経験・資源を得られるように する活動を行う。 参考資料
国際連合と
主な機関について
9 1 世界は必ず変えられる 国連児童基金 (UNICEF) :子どもの権利を 擁 よう 護 ご 、 推 すい 進 しん 、 保 ほし 障 ょう する中心 的な機関。 国連環境計画 (UNEP) : 環 かん 境 きょ 保 うほ 護 ご に指導力を 発 はっ 揮 き し、そのための 連 れん 携 けい を 働きかけている。 国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) : 難 なん 民 みん を法的に保護する。難民問 題の 持 じ 続 ぞく 可 か 能 のう な解決を図る。 国連教育科学文化機関 (UNESCO) :教育、科学、文化の分野で国際協 力と 情 じょう 報 ほう 交 こう 換 かん を 促 そく 進 しん する専門機関。 世界保健機関 (WHO) :国際的な保健活動の指示と調整、病気の予防に関 する研究の 促 そく 進 しん ・調整を行う。 他に、国際労働機関 (ILO) 、国際通貨基金 (IMF) 、世界銀行など。 (参考・国連広報センター https://www .unic.or .jp/ )