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装置に組込可能なFTIRを実現、世界初の超小型FTIRエンジンを開発

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RELE A SE

装置に組み込み可能、小型で安価な FTIR を実現する 世界初、MEMS 技術で指先サイズにまとめた超小型 FTIR エンジンを開発 2013 年 1 月 29 日 本社:浜松市中区砂山町 325-6 代表取締役社長:晝馬 明(ひるま あきら) 当社は、世界で初めて MEMS(微小電気機械システム)技術で、光干渉計と赤外線検出 素子の光学機構を指先サイズにまとめた「超小型 FTIR エンジン」を開発しました。新たな 応用の可能性を見つけるため、本エンジンを装置に組み込み可能な小型で安価なフーリエ 変換型赤外分光器(以下 FTIR)にまとめ、6 月から国内外の各種装置メーカーにサンプル 出荷を開始、今年秋には「MEMS-FTIR」として製品化を予定しています。 なお、本開発品は、2 月 5 日(火)から 3 日間、米国カリフォルニア州サンフランシスコ で開催される光学部品、装置の世界最大級の展示会「フォトニクス・ウエスト(Photonics West)2013」に出展します。 また、本装置の開発にあたり(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のイ ノベーション助成事業を利用しました。

<開発品の概要>

超小型 FTIR エンジンは、マイケルソン干渉計と赤外線検出素子の光学機構を MEMS チ ップにまとめたもので、FTIR を小型で低価格にするものです。本開発品は、電気制御系と 共に装置に組み込める筐体にまとめた FTIR で、パソコンに USB 接続することで、赤外分 光器としてスペクトル測定や吸光度測定が可能になります。1.1 マイクロメートル(以下μm) から 1.7μm 範囲において波長分解能 10 ナノメートル(以下 nm)を達成しています。今後 は、2μm 帯から 10μm 帯まで感度波長を伸ばし、信号雑音(S/N)比などの基本性能も高め ていく予定です。 FTIR では複雑な信号処理を必要としますが、近年では、低価格なパソコンで十分な信号 処理速度が得られるようになり、価格やサイズを決定する要素は、信号処理以外の部分に 大きく依存するようになりました。これまで FTIR は、据置き型で高価な分析装置でしたが、 本技術により、自動車運転時での飲酒などの呼気判別やスーパーマーケットでのプラステ ィック選別、農業分野等では農作業現場でリアルタイムな成分測定が可能になるなど、こ れまで大型プラントや研究室で行われていた測定が、身近な場所で簡易に行えるようにな ることが期待されます。

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本技術は、アナログや混合信号 IC のファブレス企業であるエジプトのシリコン・ウエア・ システムズ社(Si-Ware Systems)と提携し、MEMS 技術をライセンス契約して共同開発し たものです。 MEMS- FTIR エンジンの内部構成 超小型 FTIR エンジン 静電アクチュエータの動作原理 マイケルソン干渉計部の SEM 画像 *デモ機には、波長範囲の異なる検出素子に変更できるように、赤外線検出素子を FTIR エンジンの外 側に接続しています。 静電気力 (クーロン力) Si弾性力 (バネ) + - アクチュエータ 制御端子 検出器信号端子 赤外線検出素子 コリメートレンズ ビームスプリッタ 固定ミラー 可動ミラー マイケルソン干渉計 静電アクチュエータ 入射光 光ファイバ 静電アクチュエータ 入射光 ビームスプリッタ 固定ミラー 可動ミラー 赤外線検出素子

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<FTIR の仕組み>

FTIR で重要となる要素は、光干渉計(マイケルソン干渉計)、赤外光源、検出器、パソコ ンとなります。一般的な FTIR では、赤外光源からの光を光干渉計で干渉光信号に変換し、 その干渉光を測定試料に入射して、試料により吸収あるいは反射された光を検出器で電気 信号にして、パソコンで信号処理することで、吸収スペクトルを得ます。動作原理は以下 の通りです。 赤外光源より出射された赤外光は、レンズにより平行光に変換され、光干渉計に入射さ れます。光干渉計内部では、入射された赤外光がビームスプリッタにより 2 つの光に分け られ、一方は、固定ミラーへ、もう一方は、可動ミラーへ向かい、反射されてビームスプ リッタに戻ってきます。ビームスプリッタに戻ってきた 2 つの光は、再び、一つの光とな り、出射光として試料に向かいます。この出射光は、光干渉計内部の可動ミラーの位置に より、変化する干渉光となっており、試料には、この干渉光が照射されることになります。 試料を透過あるいは反射した干渉光は、検出器で電気信号に変換され、干渉光の強度信 号としてパソコンに送られます。一方、光干渉計内部の可動ミラーの位置は、レーザー光 を利用した変位計でモニタされ、その位置情報もパソコンに送られます。パソコンでは、 可動ミラーの位置情報と干渉光の強度信号をフーリエ変換することで、スペクトルの強度 分布を得ます。 赤外分光分析では、被測定光の光路に存在する大気や水蒸気等により吸収を受けるため、 光源のスペクトル分布の補正の目的だけでなく、光路上の光吸収も補正するために、試料 のない状態でのスペクトル分布と、試料挿入時のスペクトル分布の差分を計算して、試料 のみの吸収スペクトルを分析する差スペクトル法が一般的に用いられています。

<MEMS-FTIR の各部構造と特長>

本 FTIR エンジンは、光干渉計(マイケルソン干渉計)と干渉信号を検出する近赤外線検 出素子(InGaAs フォトダイオード)がシリコン・ウェハ・レベル・パッケージング技術に より気密封じされています。 一般的な FTIR とは異なり、先に赤外光源からの光を試料に照射し、試料で吸収あるいは 反射された光を本 FTIR エンジンに導入して光干渉信号を得る構成です。試料への光照射が、 干渉光かそうでないかの違いはありますが、スペクトル測定の基本原理としてはどちらも 同じです。 マイケルソン干渉計は、静電アクチュエータと、入射ミラー・ビームスプリッタ・固定 ミラー・可動ミラーの光学系で構成し、半導体リソグラフィプロセスによる MEMS 技術で 形成されており、位置調整が不要で安価に作成されています。 静電アクチュエータは、可動ミラーを駆動するもので、静電気力を発生させる 2 組のく し歯電極と呼ばれる平行に並んだ複数の平板と、静電気力とバランスさせて可動ミラーを 任意の場所に安定させる薄く長い板で作られたバネから構成した、電気制御可能な微小機 械となっています。MEMS 技術の深堀りドライエッチング技術を用いて、1 枚のシリコンウ ェハ上にモノリシックに形成しています。本 FTIR エンジンのミラー可動距離は 250μmです。 本 FTIR エンジンの各光学系は、250μm に深堀りされたシリコンの側壁面を利用し、コア 径 200μm の光ファイバに対応した光学サイズにしています。今後は、S/N 比を高めるため、 500μm 程度の深さを目指しています。 FTIR では、干渉信号と連動した可動ミラーの位置精度が分光性能を大きく左右します。 本 FTIR エンジンでは、静電アクチュエータの静電力発生部分がコンデンサと等価であるこ

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とを利用し、その静電容量値をリアルタイムに測定することで、可動ミラーの正確な変位 を求めています。定期的にデータ取得することで MEMS アクチュエータを校正し、高精度 な分光スペクトルを取得できます。 本 FTIR エンジンの赤外線検出素子は、当社製非冷却 InGaAs フォトダイオードで、波長 0.9μm から 1.7μm に感度を持ち、低暗電流、高感度が特長です。検出波長範囲は、1.1μm か ら 1.7μm を保証波長範囲としています。光ファイバなどを経由せずに干渉光を直接検出す ることで、出力側のロスを低減しています。 FTIR は、回折格子型分光器と異なり、検出器に高価なイメージセンサが不要で、波長に 応じた回折格子も不要です。そのため、単素子の検出器を置き変えるだけで、感度波長範 囲を容易に変更できます。当社には、幅広い波長域に対応した各種検出器があり、将来的 には、ガス分析等で有用となる、波長 2μm から 10μm の範囲に対応できる MEMS-FTIR を 製品化していく予定です。 MEMS-FTIR は、測定時間として 50 ミリ秒から 2 秒を選択でき、測定時間を長くするこ とで、S/N 比を良くできます。通常の測定では、500 ミリ秒または 1 秒での測定時間を採用 します。 赤外分光分析に不可欠な光源の開発も進めています。光源としては、高輝度な量子カス ケードレーザー(QCL)や、波長範囲の広い熱型光源の 2 種類を用意し、様々なアプリケ ーションに対応できるようにします。今後、MEMS-FTIR と光源をセットにした赤外分光分 析器として製品提供できるよう開発を進める予定です。 本 FTIR エンジンは、ファイバからの光を効率よくコリメートしているため、入射光用光 ファイバを直接、本 FTIR エンジンに取り付けることが可能で、組立コストを低減します。 光ファイバの仕様は、コア径 200μm のステップインデックスタイプの石英光ファイバです が、光学サイズの改良により、コア径 400μm にも対応していく予定です。 なお、サンプルは、MEMS-FTIR の可能性を探ることを目的としているため、検出器を FTIR エンジンに内蔵せずに、赤外線検出素子(1.1μm ~1.7μm)を FTIR エンジンの外側に 接続して、変更できるようにします。

<用語解説>

■赤外分光法 測定する物質に赤外線を照射し、透過光または反射光を回折格子などで分光することで、 波長ごとの強度の分布(スペクトル)を得ます。参照光から分子の振動や回転の状態遷移 によって分子に吸収されたエネルギーの差を検出し、物質の分子構造や状態を知る方法で す。赤外吸収スペクトルは、分子に固有の形を示すため、他の分光法に比べて感度が高く、 特に有機化合物の特定に用いられます。 ■FTIR:フーリエ変換赤外分光法 赤外分光法の一つで、2 光束干渉計で得た干渉信号をフーリエ変換することでスペクトル を得る方法です。回折格子を用いた分光器と比べて以下の特長があります。 ・全波数域の信号を同時に測定できるため、高 S/N 比を実現できる ・分散型分光(回折格子を使用する分光)と比較し、同じ分解能を得るための入射瞳(入射ス リット)のサイズを大きくでき、光の利用効率が高い ・波数軸をレーザー光の波長安定性を利用してモニタしているため、波数の精度および再 現性が高い

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主な仕様

項目 仕様 単位 感度波長範囲 1.1 ~ 1.7 μm 波長分解能(FWHM) 10(1.7μm) nm 入力換算雑音電力 0.2 nW・cm 光ファイバコア径 φ200 μm 動作温度 +5 ~ +40 ℃ 保存温度 -20 ~ +70 ℃ サイズ 10(縦)×10(横)×3.5(高さ) cm ●発売時期 本年秋頃 ●製品予定価格 20 万円程度 ●販売目標金額 3 年後 5 億円/年

開発したMEMS-FTIRの筐体内

この件に関するお問い合わせ先 ■報道関係の方 浜松ホトニクス株式会社 広報室 海野賢二 〒430-8587 浜松市中区砂山町 325-6 日本生命浜松駅前ビル TEL053-452-2141 FAX053-456-7888 E-mail:k-unno@hq.hpk.co.jp 時間外は、携帯電話 090-4080-3501 へお願いします

■一般の方 浜松ホトニクス株式会社 固体事業部 営業推進部 渥美利久 〒435-8558 浜松市東区市野町 1126-1

参照

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