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フォーカスレクチャー 図 1 肥満症診断のフローチャート (2011 年版 )( 文献 2 より引用 ) 健康障害をもたなくても内臓脂肪型肥満であれば 将来のハイリスク肥満として肥満症と診断できる 肥満 肥満 つきやすくなるということを意味している これを応用すると 内臓脂肪 / 皮下脂肪の比率によ

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 メタボリックシンドロームの概念が普及し、内臓脂肪 蓄積と高血圧、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病との 関わりが広く認識されるようになった。今回は、生活習 慣病の予防における内臓脂肪量測定の重要性について述 べる。

インスリン抵抗性と肥満

 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満から、 アディポサイトカインの分泌異常とインスリン抵抗性が 起こり、生活習慣病が発症し、動脈硬化が進展していく という経過をたどる。  アディポサイトカインの分泌異常に関しては、脂肪細 胞が肥大化することが問題であると、現在は考えられて いる。肥満の脂肪細胞からは、悪玉のサイトカインが分 泌され、善玉のアディポネクチンの分泌は減少し、これ によって生活習慣病が発症するということが1つのメカニ ズムとなっている。  インスリン抵抗性というのは、元々はマルチプルリス クファクターシンドロームという概念から出てきたもの である。その後、メタボリックシンドロームという名称 にブラッシュアップされていくが、シンドロームⅩ、死 の四重奏、内臓脂肪症候群等がまず、マルチプルリスク ファクターシンドロームとして提唱され、高インスリン 血症・インスリン抵抗性が糖尿病だけでなく、すべての 生活習慣病の根底にあるという新しい概念が構築された。  われわれの施設では、空腹時インスリン値を規定する 因子について多重解析を試みた。体格指数(body mass index;BMI)が最も大きく規定する因子であることが、 データで示されている。すなわち、血糖値も規定因子の 1 つではあるが、それよりBMIがはるかに大きな規定因 子という結果が出ている1)  この結果を検証するために、糖負荷試験を受けた3,000 名を対象に、BMI 25未満の正常範囲の群と25以上の軽 度肥満以上の群に分類し、空腹時インスリン値・インス リン抵抗性を調べたところ、軽度肥満以上の群はどの糖 尿病型であっても高値を示した1)。糖負荷試験による糖尿 病型の差以上に体格の差のほうが大きく、肥満のファク ターが大きいことが理解される。  危険因子数を横軸に取り、空腹時インスリンの実際の 値をみると、危険因子数が増えるほど、インスリン値が 上がっていき、先ほどのマルチプルリスクファクターの 考え方が正しいということがわかる1)。BMIで分類して みても、BMIが大きくなれば大きくなるほど、空腹時イ ンスリン値、インスリン抵抗性が大きくなっていく結果が 得られる。  日本肥満学会が出した最新の診断のフローチャート (図 1)2)では、これまでは健康障害のない肥満、すなわち BMIが25以上であっても健康障害がなければ単なる肥満 として放置してもよいとされていたが、内臓脂肪量が 100cm2以上あれば健康障害がなくても肥満症であるとさ れ、改善すべきものであるということが追加された。つ まり、内臓脂肪量を測定しないと、肥満の正確な診断が つかない時代に入ったといえる。  また、BMI 25未満とそれ以上と、内臓脂肪面積100cm2 未満と 100 cm2以上とに分類して、空腹時インスリン値 (fasting plasma insulin concentration;F-IRI)を検討した 結 果(744 名 )、 内 臓 脂 肪 面 積 100 cm2以 上 の 群 で は 100cm2未満の群に比較してF-IRIが有意に高値であった が、100 cm2未 満 の 群 で も、BMI が 25 以 上 の 群 で は、 100cm2未満でBMI25未満の群と比較すればF-IRIが有意 に高値であり、内臓脂肪ばかりでなく皮下脂肪もインス リン抵抗性に関与すると考えられる1)

内臓脂肪と生活習慣病

 内臓脂肪が増減することが現在は常識になったが、体 重を減らせば内臓脂肪が減ることもわかっている。体重 が2.3kg減った人で、内臓脂肪が113.7から57.8の約半 分に減っている一方、皮下脂肪は89.5から76.2とほと んど減っていない(図2A)。このように中高年の男性が減 量すると、内臓脂肪から有意に減り、逆に体重が増えると 内臓脂肪から増えることがわかる。7.8kg減ったほかの例 でも、内臓脂肪は136.6から60.8と半分以下になってい るが、皮下脂肪はほとんど変わっていない(図2B)。  CTで測定した内臓脂肪と皮下脂肪の比率の変化を各世 代でみてみると、男性のほうが内臓脂肪がつきやすいが、 男女ともに右肩上がりを示す。加齢に伴い、内臓脂肪が 福井敏樹(NTT西日本高松診療所予防医療センタ所長)

生活習慣病対策における内臓脂肪量測定の重要性

第13回 臨床血圧脈波研究会 フォーカスレクチャー

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つきやすくなるということを意味している。これを応用 すると、内臓脂肪/皮下脂肪の比率によって、自分が実 年齢以上に加齢が進んでいるということが推定できるか もしれない(図3)。  内臓脂肪が生活習慣病発症に実際に悪影響を及ぼして いるかどうかを、生活習慣病関連因子の検査値の違いに よって、最も平均的な総脂肪面積(内臓脂肪面積+皮下脂 肪面積)が 150 ~ 250 m2の範囲で検討した。BMI が 25 前 後、腹囲が 85 cm 前後という程度の人の集団となり、い ろいろな生活習慣病関連因子の値を比べてみると、内臓 脂肪がつきやすい集団のほうが、すべて正常範囲とはい いながら、すべての生活習慣病関連因子が有意差をもっ て高いという結果が出た。  さらに、内臓脂肪の増減によって、生活習慣病関連因 子が変化するのかどうかを調べた厚生労働省研究班の研 究では、ほとんどの生活習慣病関連因子が、有意差をもっ て変化することが明らかになった。例えば、同一人物で 血圧の変化量と内臓脂肪の変化量をみると、内臓脂肪量 が増えると血圧が高くなり、悪玉コレステロールは増え、 善玉コレステロールは低くなる。中性脂肪も、内臓脂肪 が増えれば上がる。糖尿病のファクターである空腹時血 糖値、糖負荷後2時間血糖値ともに、内臓脂肪が増えると 上がる。同一人物でも内臓脂肪が増えるとすべての生活 習慣病関連因子が悪い方向に向かうということが示さ れた 。

新しい内臓脂肪測定法としての

デュアルインピーダンス法

 内臓脂肪の従来の測定法としては、CT、 MRI、特にCT がゴールデンスタンダードと考えられてきた。しかし、 CTといえども、腹腔内の臓器の位置が変わったり、腸管 の移動などによって、かなり値が変動する。呼吸状態も 呼気か吸気かで値は変わるのでしっかり呼気状態で測定 することが大切である。どの計器を使っても、測定条件 を守らなければ大きな差が出てしまうことになる。  デュアルインピーダンス測定法による内臓脂肪測定装 置(オムロンヘルスケアより2011年に発売されたHDS-2000(以下、DUALSCAN))は、初めて医療機器として厚 生労働省に承認された内臓脂肪測定装置である。  DUALSCANは、従来のインピーダンス法に加えて、も う1つの電気経路を使うことによって皮下脂肪も測定でき るようにしたものである。除脂肪面積と皮下脂肪面積を 別々に測定することによって、結果として内臓脂肪面積 を算出できるということになる(図4)。従来のインピーダ ンス法でも、内臓脂肪面積を結果表示しているものもあっ たが、これらは何らかのロジックの式を経て数値が出て くるようにしていただけであって、実際に測定していた わけではない。

DUALSCANの実際

肥満(BMI≧25kg/m2 病因が不明 病因が明白 原発性肥満 内臓脂肪面積≧100cm2 内臓脂肪型肥満 高度肥満 肥満 ・内分泌性肥満 ・遺伝性肥満 ・視床下部性肥満 二次性肥満 健康障害なし 健康障害あり BMI≧35kg/m2 (内臓脂肪面積≧100cm2含む) 耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、 高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞、 脂肪肝、月経異常、肥満関連腎臓病 整形外科的疾患 (変形性関節症、腰痛症)、 睡眠時無呼吸症候群(SAS) 脂肪細胞の質的異常 肥満症 ←←←→→→ 脂肪細胞の量的異常 図1 ● 肥満症診断のフローチャート(2011年版)(文献2より引用) 健康障害をもたなくても内臓脂肪型肥満であれば、将来のハイリスク肥満として肥満症と診断できる。

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120 100 80 60 40 20 0 (%) 20歳代 (32名) 40.0 30歳代 (152名) 51.6 40歳代 (149名) 68.7 50歳代 (293名) 81.8 60歳代 (112名) 102.2 男性 全平均 74.2±1.5% 50 40 30 20 10 0 (%) 20歳代 (25名) 20.1 30歳代 (70名) 24.0 40歳代 (49名) 27.3 50歳代 (79名) 38.3 女性 全平均 29.4±1.0% 図3 ● 加齢に伴う内臓脂肪/皮下脂肪面積比の変化 (福井敏樹, ほか. 第52回日本人間ドック学会学術大会. 2011. より改変引用) 減量トライアル前 体重 70.0kg BMI 25.4 腹囲 85.0cm 総脂肪面積 203.2cm2 内臓脂肪 113.7cm2 皮下脂肪 89.5cm2 体脂肪率 24.1%  減量トライアル後 体重 67.7kg BMI 24.6 腹囲 80.5cm 総脂肪面積 134.0cm2 内臓脂肪 57.8cm2 皮下脂肪 76.2cm2 体脂肪率 21.9%  減量トライアル前 体重 77.0kg BMI 25.1 腹囲 88.0cm 総脂肪面積 299.8cm2 内臓脂肪 136.6cm2 皮下脂肪 163.2cm2 体脂肪率 25.4%  減量トライアル後 体重 69.2kg BMI 22.6 腹囲 80.5cm 総脂肪面積 191.5cm2 内臓脂肪 60.8cm2 皮下脂肪 130.7cm2 体脂肪率 23.1%  A B 図2 ● 運動習慣は内臓脂肪優位に脂肪を減少させる(文献1より改変引用)

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数が0.879と非常に強い相関関係がみられる。若干肥満 気味の人ではDUALSCANのほうが低く、やせ気味の人で はDUALSCANのほうが高く出る傾向がみられる(図5)4)  DUALSCANとCTによる内臓脂肪面積、腹囲、BMIの 相関をみると、いずれも有意な正の相関を示しているが、 相関係数は、すべてDUALSCANのほうがCTを上回って いる。インスリン抵抗性、空腹時インスリン値も症例数 は少ないながら、DUALSCANのほうが相関関係が大きい という結果が得られ、より優れた結果が出ている4)  肥満を表す指標としては、BMI、内臓脂肪、皮下脂肪、 総脂肪などいろいろあるが、メタボリックシンドローム の関連因子のなかでも、脂肪肝をはじめとする肝臓機能 障害が最近注目されるようになってきている。それらす べての因子を入れて、解析し直したところ、空腹時イン スリン値・インスリン抵抗性と最も独立して関連があっ たのは、総脂肪面積であった。2番目に大きな因子となっ たのがALT(GPT)となり、非常に興味深い結果が得られ た(図6)1)。従来ALT(GPT)は40U/L未満が正常範囲と考 えられているが、正常範囲内でも階段状に上がっていく ことがわかる。  DUALSCANは、実際は皮下脂肪量を測定しており、数 値としては内臓脂肪面積を表示しているが、装置内部に 内臓脂肪面積の算出 内臓脂肪面積 腹部全断面積 除脂肪面積 皮下脂肪面積 腹部の全断面積から、除脂肪面積および皮下脂肪面積を除くことで、内臓脂肪面積を算出する。

図4 ● 内臓脂肪の評価方法(デュアルインピーダンス法) デュアルインピーダンス法は、唯一厚生労働省から承認を得た内臓脂肪蓄積のスクリーニング手法。 300 250 200 150 100 50 0 (cm2 DUALSCAN内臓脂肪面積 400 300 CT内臓脂肪面積 y=0.6728x+18.949 n=678 r =0.879 p<0.0001 200 100 0 (cm2 図5 ● DUALSCANとCTによる内臓脂肪面積の相関 (文献4より改変引用)

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(IU/L) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 ALT (GPT) 300 DUALSCAN内臓脂肪面積 100 200 0 (cm2 n=673 r =0.519 p<0.0001 (IU/L) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 ALT (GPT) 300 CT内臓脂肪面積 100 200 0 (cm2 n=673 r =0.453 p<0.0001 図8 ● ALT(GPT)とDUALSCANおよびCTによる内臓脂肪面積の相関(文献4より改変引用) ALT(GPT) 16.0 12.0 8.0 4.0 0.0 10 以下 11∼20 21∼30 31∼40 41∼50 51∼60 61∼70 71 以上 n=95 919 630 287 118 77 42 55 空腹時インスリン値 (μU/mL) (n=2,223) (n=381) 図6 ● 空腹時インスリン値(インスリン抵抗性)を規定する因子(文献1より引用) 標準回帰係数 総脂肪面積(CT) 0.324 ALT(GPT) 0.277 γ -GTP − 0.206 空腹時血糖値 0.149 心拍数 0.130 HDL − 0.130 中性脂肪 0.125 700 600 500 400 300 200 100 0 (cm2 DUALSCAN総脂肪面積 700 600 500 400 300 CT総脂肪面積 y=0.877x+42.174 n=678 r =0.950 p<0.0001 200 100 0 (cm2 図7 ● DUALSCANとCTによる総脂肪面積(内臓脂肪+皮下脂肪面積)の相関(文献4より改変引用)

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測定することができる。総脂肪面積との相関係数をとっ てみると、相関係数は0.955と内臓脂肪よりも高い(図7)4) ALTに関しても、DUALSCANのほうがCTより若干高く、 上回っているという結果が得られている(図8)4)

 DUALSCAN内臓脂肪面積と上腕—足首間脈波伝播速度 (brachial-ankle pulse wave velocity;baPWV)で は、

0.437と十分な有意差をもって相関関係がある(図9)4) 内臓脂肪が多いほど血管が硬くなるということがわかる。  先ほど示した総脂肪面積が150~250m2の対象者で比 べてみると、同程度の肥満度であっても男女ともに内臓 脂肪型のほうが、有意差をもって血管が硬いということ がわかる。やはり、内臓脂肪型肥満のほうが動脈硬化が 進行しているということがいえる。  筆者の研究分野は動脈硬化であり、主に日本人間ドッ ク学会などで仕事をしている。2012年に開催された第53 回日本人間ドック学会学術大会ランチョンセミナーにて、 「人間ドック・健診並びに日常診療におけるメタボリック シンドロームおよび動脈硬化の評価」というテーマで講演 を行った(講演内容はオムロンコーリン(株)のホームペー ジ上で動画配信中5))。そちらも参照していただけると幸 いである。

1) Fukui T. Importance of measurement of fasting immunoreactive

insulin and interpretation of its results. Ningen Dock 2011; 25(6): 7-14. 4) 福井敏樹, ほか. DUALインピーダンス法による内臓脂肪足底の有用性量の関係についての検討. 人間ドック2010; 25: 638-43. 文献 2,500 2,000 1,500 1,000 500 (cm/sec) baPWV 300 250 200 150 DUALSCAN 内臓脂肪面積 n=678 r=0.437 p<0.0001 100 50 0 (cm2 図9 ● DUALSCAN内臓脂肪面積とbaPWVとの相関(文献4より引用)

参照

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