Walking Stroop Carpet による転倒リスク評価の有用性
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(2) 220. 理学療法学 第 44 巻第 3 号. しいハイリスク徴候が注目されている 11)12)。したがっ. 長さ 5 m の歩行路(厚さ 5 mm の市販のゴムマットを. て,MCI の早期発見のために開発された WSC は,転倒. 使用)に「赤色」 「青色」 「黄色」 「緑色」という文字(MSP. リスク評価としても有用であることが考えられる。. ゴシック,フォントサイズ 100 pt)が書かれたターゲッ. そこで今回は,転倒リスクを有する者のスクリーニン. ト(横 15 cm ×縦 10 cm)を横 4 列×縦 10 列に配置し. グテストとして WSC が有用であるか検証するため,. たものであり,各ターゲット間の距離は横 10 cm,縦. WSC を用いた二重課題は転倒リスク者の検出に有効で. 35 cm である(図) 。また,ターゲットの文字は異なる. あるとの仮説の下,検討を行ったので報告する。. 色彩で印刷されており,原則として文字と色彩は一致し ないように配色した(たとえば,「赤色」という文字が. 対象および方法. 青色で印刷されている)。なお,ターゲットはパーソナ. 1.対象. ルコンピュータで作成し,プリントアウトしたものを歩. 対象は,2014 年 9 月および 2015 年 10 月に高知県香. 行路に添付した。WSC 課題は,WSC 上の指示したター. 南市において実施された運動啓発事業に参加し自立した. ゲットのみを踏み歩くものであり,以下に示す「文字条. 生活を営んでいる地域在住高齢者 126 名のうち,男性が. 件」「色条件」「白黒条件」の 3 条件より構成した。文字. 少数(16 名)であったことを考慮して男性を除き,か. 条件は,WSC 上の指示した文字のみを踏み歩く条件で. つ測定項目に欠損のなかった 100 名(平均 75.9 ± 6.5 歳,. ある。たとえば,「緑色」と書かれた文字を指示した場. 全員女性)を対象とした。同事業は,同市内に在住の. 合は,「緑色」と書かれたターゲットのみを踏み歩くこ. 65 歳以上の高齢者を対象としたもので,市の呼びかけ. とが求められるが,文字の色彩は緑色ではないことに注. に応じた者が参加するものである。本研究の課題では色. 意が必要となる。色条件は,WSC 上の指示した色彩で. の識別を行う必要があるため,対象者には WSC 課題の. ペイントされた文字のみを踏み歩く条件である。たとえ. 練習時に色の識別に問題がないか確認したうえで課題を. ば,赤色でペイントされた文字を指示した場合は,赤色. 遂行することとした。また,対象者はすべて独歩可能で. でペイントされたターゲットのみを踏み歩くことが求め. あった。今回の対象は,主として市内各地で開催されて. られるが,文字はターゲットにより異なることに注意が. いる健康増進・介護予防を目的とした自主運動教室の参. 必要となる。白黒条件は,別途文字をモノクロ印刷した. 加者という特徴を有する。同運動教室は,当初は介護予. WSC を用いて,指示した文字のみを踏み歩く条件であ. 防事業(一次予防事業)の一環として 3 ヵ月にわたり理. る。たとえば,「黄色」と書かれた文字を指示した場合. 学療法士や健康運動指導士による運動指導を受けた高齢. は,「黄色」と書かれたターゲットのみ踏み歩くことが. 者が,その後自主的かつ継続的に運営されているもので. 求められる。白黒条件は,文字条件や色条件とは異なり,. 13). 。本研究の実施にあたり,すべての対象者に対. ターゲットがモノクロ印刷されているため,文字と色彩. して測定に先立ち測定の方法や測定データの扱い等につ. の矛盾を判断する葛藤が生じない課題である。今回の. いて口頭および書面にて説明し,署名による同意を得. WSC 課題では,文字条件では「緑色」と描かれたター. た。また,本研究は事業運営自治体の承認を得たうえで. ゲット,色条件では文字が赤でペイントされたターゲッ. 実施した。. ト,白黒条件では「黄色」と描かれたターゲットを指示. ある. することで統一した。また,対象者間で歩行距離が異な 2.方法. ることのないようにするため,すべての条件において同. 対象者に対して,面接法により過去 1 年間の転倒歴有. じカーペットを使用した。WSC 課題は,WSC の開始位. 無を確認し,転倒歴ありの者を転倒群,転倒歴なしの者. 置に対象者が静止立位をとり,検査者が目的とするター. を非転倒群とした。なお,転倒の定義は,「歩行や動作. ゲットを告げた直後に検査者の合図で歩行を開始するこ. 時に,意図せずにつまずいたり,すべったりして,床・. ととした。条件ごとに 1 回の練習(本テストとは異なる. 地面もしくはそれより低い位置に手やおしりなどの体の. ターゲットを指示)にて課題内容が理解されていること. 一部がついたすべての場合。ケガの有無とは関係ない。. を確認したうえで,本テストを実施した。対象者には,. 暴力などなんらかの外力によるものや自転車などの乗り. 指示されたターゲットを踏み外すことのないよう,5 m. 物での事故の場合は除く」という大高らによる定義. 14). の歩行路をできるだけ速く歩行することを求め,5 m の. を採用した。. 歩行に要した時間をストップウォッチにて計測するとと. 対象者には,WSC 課題とともに,一般的な歩行能力. もに,ミスステップ数を計測した。ミスステップは,指. 評価法である 10 m 歩行時間(快適条件,努力条件)と. 示したものとは異なるターゲットを踏んだ場合,もしく. Timed Up & Go test(以下,TUG)を実施した。測定. は指示したターゲットの踏み抜かりや踏み忘れた場合と. はすべて,一般的な体育館内で行われた。まず,WSC. し,WSC 課題の条件ごとに一度でもミスステップをし. 課題について説明する。今回用いた WSC は,幅 1 m ×. た場合をミスステップありと判断した。なお,課題遂行.
(3) WSC による転倒リスク評価の有用性. 221. 図 Walking Stroop Carpet の構成 WSC の直前を計測開始位置とし,指示されたターゲットのみを踏み歩くのに要した時間 を計測する. なお,実際の WSC はターゲットの文字が赤・青・緑・黄いずれかの色で示されており, 原則として文字と色彩は一致しないよう配色されている.. 順序による交互作用を避けるため,対象者ごとに WSC. 2 スステップ有無の分割表を作成し χ 独立性の検定もし. 課題各条件の実施順序はランダムとした。. くは Fisher の直接確率法を実施した。続いて,上記統. 10 m 歩行時間(快適条件,努力条件)の計測につい. 計 解 析 に て WSC 課 題 3 条 件 お よ び 10 m 歩 行 時 間 と. ては,スタートラインとゴールラインの前後に 3 m 程. TUG について群間で有意差を認めた測定項目を説明変. 度の予備路を設け,スタートラインを通過した時点から. 数に,転倒歴の有無を目的変数とした二項ロジスティッ. 計測を開始し,ゴールラインに立ち止まることなく通過. ク回帰分析を実施し,転倒有無のオッズ比を求めるとと. するまでの時間を計測した。快適条件では普段通りに,. もに回帰式に含まれる説明変数を求めた。なお,いずれ. 努力条件ではできるだけ速く歩行することを指示した。. の統計解析も有意水準は 5% とした。. TUG は岡持ら. 15). の計測方法に準じて実施し,遂行時. 間を計測した。なお,上記の歩行を伴うすべての計測時. 結 果. には,転倒防止のために計測者と介助者との 2 名体制で. 面接法による転倒歴聴取の結果,転倒群は 30 名(平. 実施した。. 均 78.3 ± 6.1 歳) ,非転倒群は 70 名(平均 74.8 ± 6.4 歳) であった。群間の年齢差について unpaired t-test にて. 3.統計解析. 確 認 し た と こ ろ, 有 意 に 転 倒 群 の 年 齢 が 高 か っ た. 統計解析として,最初に転倒歴の有無別群間で年齢差. (p<0.05) 。また,認知機能について MMSE が実施でき. がないかを unpaired t-test にて確認するとともに,WSC. た転倒群 30 名中 13 名(平均 75.6 ± 5.9 歳) ,非転倒群. 課題は認知機能を反映する特性を帯びていることから,. 70 名中 41 名(平均 76.1 ± 7.2 歳)の MMSE 得点差に. 認知機能テスト(Mini-Mental State Examination:以下,. ついて Mann-Whitney 検定を行った結果,転倒群の中. MMSE)を実施し転倒歴の有無別群間で MMSE 得点差. 央値 27(範囲 18 ∼ 30)点,非転倒群は 28(範囲 20 ∼. に つ い て Mann-Whitney 検 定 を 実 施 し た。 続 い て,. 30)点であり有意差を認めなかった。. WSC 課題の遂行時間について転倒歴有無と WSC 課題 3. WSC 課題遂行時間について二元配置分散分析を実施. 条件間で 2(転倒要因:転倒歴あり,なし)× 3(条件要. した結果,交互作用は認めず,転倒要因(F1,98 = 4.89,. 因:文字条件,色条件,白黒条件)の二元配置分散分析. p<0.05)と条件要因(F2,196 = 136.1, p<0.01)ともに主. を実施し,各要因の主効果と交互作用について検討した。. 効果を認めた(表 1)。転倒要因について post-hoc test. 主効果を認めたときは,post-hoc test(Bonfferonni 法). を実施したところ,色条件と白黒条件ともに転倒群が有. を行った。10 m 歩行時間(快適・努力条件)と TUG に. 意に遅延していた(いずれも p<0.01) 。文字条件は,有. ついては,転倒歴有無の群間で unpaired t-test を実施し,. 意差を認めなかった。次に条件要因については,転倒群. ターゲットのミスステップについては,転倒歴有無とミ. と非転倒群ともに色条件,白黒条件,文字条件の順に.
(4) 222. 理学療法学 第 44 巻第 3 号. 表 1 WSC 課題 3 条件の条件間および群間比較結果 WSC 課題 色条件 転倒群 非転倒群. 白黒条件. 7.1 ± 2.3. a. 5.5 ± 1.2. a'. **. 文字条件. 13.1 ± 3.3. b. 11.8 ± 2.8. b'. **. post-hoc test. 15.5 ± 3.5. c. 14.9 ± 3.9. c'. a<b<c. ††. a' < b' < c' ††. 平均値±標準偏差(秒) ** :p<0.01,色条件と白黒条件において転倒群の WSC 課題遂行時間が遅延. †† :p<0.01,転倒群,非転倒群ともに色条件<白黒条件<文字条件の順に有意に WSC 課題遂行時間が速い.. 表 2 歩行能力テストの群間比較結果 10 m 歩行(快適). 10 m 歩行(努力). TUG. 転倒群. 8.8 ± 2.9. 6.9 ± 2.1. 10.4 ± 2.8. 非転倒群. 7.6 ± 1.4. **. 6.0 ± 1.1. **. 8.4 ± 1.7. *. 平均値±標準偏差(秒) **:p<0.01,*:p<0.05. 表 3 転倒歴有無を説明する二項ロジスティック回帰分析の結果 オッズ比の 95% 信頼区間 標準偏回帰係数. P値. オッズ比. 下限値. 上限値. WSC 課題(色条件). 0.85. p<0.05. 1.62. 1.00. 2.60. WSC 課題(白黒条件). 0.26. 0.47. 1.09. 0.86. 1.39. 10 m 歩行(快適). 0.42. 0.45. 1.23. 0.72. 2.10. 10 m 歩行(努力). ‒ 0.45. 0.43. 0.75. 0.36. 1.54. TUG. 0.51. 0.26. 1.25. 0.85. 1.84. 年 齢. 0.19. 0.55. 1.03. 0.94. 1.13. モデル χ 2 検定:p<0.01 R2 = 0.19,判別適中率:79.0% WSC 課題:Walking Stroop Carpet 課題,TUG:Timed Up & Go test. WSC 課題遂行時間が有意に短かった(色条件<白黒条. 79.0% であった(表 3) 。. 件<文字条件,いずれも p<0.01) 。. WSC 課題各条件におけるミスステップについては,. 10 m 歩行時間については,快適条件,努力条件とも. 色条件についてのみミスステップと転倒歴が関連してい. に 転 倒 群 が 有 意 に 遅 延 し て い た( い ず れ も p<0.01) 。. ることが示され,ミスステップがあった者は転倒群で. TUG についても,転倒群が有意に遅延(p<0.05)して. 30 名中 3 名,非転倒群ではミスステップを記録した者. いた(表 2)。. はいなかった(表 4)。. 以上の統計解析結果から,post-hoc test により群間差 を認めた WSC 課題の色条件と白黒条件,単変量解析に. 考 察. より群間差を認めた 10 m 歩行時間(快適および努力条. 本研究結果から,WSC 課題(色条件)は,非転倒群. 件),TUG および年齢を説明変数に,転倒歴有無を目的. より転倒群の遂行時間が有意に遅延していること,転倒. 変数として二項ロジスティック回帰分析を実施した。多. 歴有無を分ける回帰式に含まれる変数の中で唯一有意な. 重共線性を考慮し,Variance Inflation Factor 統計量を. 変数であり遂行時間が 1 秒遅延すると転倒する可能性が. 算出しすべての説明変数について検討したところ,多重. 1.62 倍高くなること,ミスステップが転倒歴と関連して. 共線性の指標となる 10 を超える変数は認めなかった。. いることが示された。したがって,WSC 課題(色条件). 変数増加法の変数選択により得られた回帰式にはすべて. は転倒リスク評価として使用可能であると考えられた。. の説明変数が含まれたが,WSC 課題(色条件)のみが. 本研究目的と同様の転倒リスクを判別する検討は,こ. 有意な説明変数として抽出され(オッズ比 1.62,オッズ. れ ま で に 多 数 報 告 さ れ て い る。TUG を 用 い た. 比の 95% 信頼区間 =1.00 ‒ 2.60,p<0.05),判別適中率は. Shumway-Cook ら. 16). の報告によると,転倒リスク者を.
(5) WSC による転倒リスク評価の有用性. 223. 表 4 WSC 課題 3 条件におけるミスステップの出現率 転倒群(n=30). 非転倒群(n=70). P値. 3(10.0). 0(0.0). p<0.05. 文字条件. 13(43.3). 24(34.3). 0.39. 白黒条件. 12(40.0). 26(37.1). 0.79. 色条件. 各群における WSC 課題 3 条件のミスステップを記録した対象者数(%)を示す.白黒条 件および文字条件は χ 2 独立性の検定,色条件は期待度数が 5 を下回るものがあったため Fisher の直接確率法を実施.. 判別する感度・特異度がともに 87% という高い判別力 17). WSC 課題は,本来机上のテストとして用いられるス. は TUG と. トループ課題を歩行路に模したものである。一般にスト. 併用した二重課題では転倒歴有無による群間で差を認め. ループ課題は,自動的に生じる優勢な反応(文字を読む. るものの,TUG のみの計測では群間で差を認めなかっ. こと)を抑制する必要がある. たと報告している。また,TUG による転倒リスクの予. 時における非侵襲的脳活動計測研究の知見として,背外. 測精度は対象者の運動機能の高低により異なり,たとえ. 側前頭前皮質(Dorsolateral Prefrontal Cortex:以下,. ば移動能力が高い者(TUG 所要時間が 11 秒未満)に対. DLPFC, BA46)と前部帯状皮質が活性化することが知. を示したと報告している。一方,森下ら. しては二重課題処理能力が転倒予測指標として有用. 18). とされ,TUG のみによる転倒リスクの予測には課題が 残る。本研究は歩行を主課題とし,副次課題に認知課題. 20). 。ストループ課題遂行. られており,多くの研究で共通して同部位の活性化が 報 告 さ れ て い る( た と え ば Botvinick ら ら. 21). や Kerns. 22). ) 。なかでも DLPFC は,ワーキングメモリ(Working. (ストループ課題)を課した二重課題であることから,. Memory)に関与することが知られており,また前頭連. 比較的歩行能力が高い者に対する転倒リスク評価として. 合野損傷患者はストループ課題に障害があることも報告. 有用といえる。また,WSC 課題に類似した報告も散見. されている. 4). 23). 。WSC 課題においても,被験者が指示さ. により開発された. れた文字や色彩のターゲットを選択しながら歩行する際. multitarget stepping task(以下,MTST)は,歩行路. に DLPFC が賦活していることが考えられる。以上のこ. に 3 色のターゲットを配置し指示された色のターゲット. とから,WSC 課題は歩行を主課題としながら,副次課. を踏み歩くテストであり,転倒を説明する回帰モデルの. 題にワーキングメモリを要する認知課題を課した二重課. 独 立 変 数 と し て 踏 み 誤 り( オ ッ ズ 比:19.4) と TUG. 題とみなすことができる。. さ れ る。 た と え ば,Yamada ら. (オッズ比:1.9)が抽出されたと報告している。一方, Melzer ら. 19). はストループ課題を遂行しながら合図と. WSC 課題の中でも色条件のみが選択された要因につ いては,ターゲットの選択が他の条件よりも容易であっ. 同時にできるだけ早く前方にステップする課題を行い,. たことが挙げられる。今回の検討では,色条件と比較し. 単純にステップのみを行う課題時は転倒リスクの有無に. て白黒条件と文字条件は WSC 課題遂行時間が遅延して. よる相違はなかったものの,二重課題条件下では転倒ハ. いた。これは白黒・文字条件が色条件よりも副次課題に. イリスク高齢者のステップ動作が有意に遅延することを. よる負荷が大きかった(副次課題の難易度が高かった). 示した。また,これらの先行知見では,著しい認知機能. ため,主課題である歩行遂行を妨げたことが考えられ. 低下がなく,独歩可能である高齢者を対象としている点. る。このことは,ミスステップの出現率にも反映してい. で今回の対象と類似している。しかし,今回対象となっ. る。Yamada ら. た高齢者は「運動習慣を有する」という特徴をもつ。ま. 倒リスクと関連することを報告している。我々の結果も. 4). 4). は MTST でミスステップの有無が転. の対象としている高齢者の転倒 High-. 色条件ではミスステップが転倒歴有無と関連していたこ. Risk( 以 下,HR) 群 と Low-Risk( 以 下,LR) 群 の. とから,Yamada らの知見を支持する結果であった。し. 10 m 歩行時間(快適)がそれぞれ 21.6 ± 10.7 秒,12.8. かし異なる点として,Yamada ら. 秒± 3.6 秒であったのに対し,今回の転倒群,非転倒群. い者の約 60%にミスステップがあったと報告している. は 8.8 ± 2.9 秒,7.6 ± 1.4 秒である。同様に TUG にお. が,我々の検討では転倒群のミスステップ出現率が 10%. いても,HR 群,LR 群が 20.2 ± 6.3 秒,11.6 ± 3.4 秒で. と低い。一般に,ストループ課題の遂行時には優勢的・. あるのに対し,転倒群と非転倒群は 10.4 ± 2.8 秒,8.4. 自動的な反応を文脈に応じて抑制し,課題遂行に必要の. ± 1.7 秒であり,本研究対象の方が明らかに歩行能力は. ない反応を抑制する必要がある. 高いといえる。したがって,このような高い歩行能力を. も同様の抑制機能が試されるが,色条件は他の条件と比. 有する高齢者の転倒リスクを評価する場合において,. 較して課題遂行時間が短かったため,求められたター. WSC 課題は有用であると考える。. ゲットを選択する葛藤が小さかったと推測される。この. た,Yamada ら. 4). は転倒リスクが高. 24). 。WSC 課題において.
(6) 224. 理学療法学 第 44 巻第 3 号. ことがミスステップの出現率が低値であったことに反映 しているものと思われる。したがって,WSC 課題にお いては色条件の課題負荷の程度が歩行能力を判断するう えでもっとも適した負荷量であったと推察される。 今回の検討の限界として,対象者が定期的な運動教室 参加者であり自主的に参加を判断したことによる選択バ イアスの影響,対象者数の少なさや性差を加味できな かったこと,さらには後方視的調査であることなどが挙 げられる。一方で,WSC 課題は特別な機器を必要とせ ず課題遂行時間が短いことから,比較的歩行能力が高い 高齢者に対する実用的な転倒リスク評価法として期待で きる。今後は,前向き縦断研究により,WSC 課題がよ り信頼性の高い転倒リスク評価であることを確認する必 要がある。また,WSC 課題は実施場所さえ確保できれ ば比較的安全に遂行可能で,条件および選択する文字や 色を変更することで多彩なヴァリエーションを構築でき る。したがって,WSC 課題による転倒リスク評価とと もに,転倒予防エクササイズとしての活用も期待さ れる。 結 論 地域在住高齢者に対して WSC 課題による転倒リスク 評価の有用性について検討した結果,転倒歴有無を説明 する回帰式に含まれる説明変数の中で WSC 課題(色条 件)のみが有意な変数として抽出され(オッズ比 1.62, 95% 信頼区間 =1.00 ‒ 2.60),転倒リスク評価に利用可能 であることが示唆された。 謝辞:本研究の実施にあたり,ご理解とご協力いただい た参加者の皆様,自治体事業の開催と運営の両面でご配 慮とご協力をいただいた高知県香南市高齢者介護課の 大石久美氏と門田美和氏に深く感謝をいたします。 文 献 1)Lundin-Olsson L, Nyberg L, et al.: “Stops walking when talking” as a predictor of falls in elderly people. Lancet. 1997; 349(9052): 617. 2)Toulotte C, Thevenon A, et al.: Identification of healthy elderly fallers and non-fallers by gait analysis under dualtask conditions. Clin Rehabil. 2006; 20(3): 269‒276. 3)山田 実,上原稔章:二重課題条件下での歩行時間は転倒 の予測因子となりうる─地域在住高齢者を対象とした前向 き研究─.理学療法科学.2007; 22(4): 505‒509. 4)Yamada M, Higuchi T, et al.: Measurements of stepping accuracy in a multitarget stepping task as a potential indicator of fall risk in elderly individuals. J Gerontol A. Biol Sci Med Sci. 2011; 66(9): 994‒1000. 5)Yamada M, Higuchi T, et al.: Multitarget stepping program in combination with a standardized multicomponent exercise program can prevent falls in community-dwelling older adults: a randomized, controlled trial. J Am Geriatr Soc. 2013; 61(10): 1669‒1675. 6)Perrochon A, Kemoun G, et al.: Walking Stroop carpet: an innovative dual-task concept for detecting cognitive impairment. Clin Interv Aging. 2013; 8: 317‒328. 7)鈴木隆雄:超高齢社会の基礎知識.講談社,東京,2012, pp. 128‒158. 8)Perera S, Patel KV, et al.: Gait Speed Predicts Incident Disability: A Pooled Analysis. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2015; 71(1): 63‒71. 9)Studenski S, Perera S, et al.: Gait speed and survival in older adults. JAMA. 2011; 305(1): 50‒58. 10)Verghese J, Wang C, et al.: Quantitative gait dysfunction and risk of cognitive decline and dementia. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007; 78(9): 929‒935. 11)Verghese J, Wang C, et al.: Motoric cognitive risk syndrome and the risk of dementia. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2013; 68(4): 412‒428. 12)Ayers E, Verghese J: Diagnosing motoric cognitive risk syndrome to predict progression to dementia. Neurodegener Dis Manag. 2014; 4(5): 339‒342. 13)滝本幸治,宮本謙三,他:介護予防事業を通した町づく りに貢献する理学療法士の視点.PT ジャーナル.2009; 43(11): 983‒988. 14)大高洋平,里宇明元:エビデンスに基づいた転倒予防.リ ハビリテーション医学.2006; 43(2): 96‒104. 15)岡持利亘,飯田 裕:Up & Go テスト.理学療法.2005; 22(1): 129‒136. 16)Shumway-Cook A, Brauer S, et al.: Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults using the Timed Up & Go Test. Phys Ther. 2000; 80(9): 896‒903. 17)森下将多,島岡秀奉,他:Timed Up & Go Test に認知課 題を付加した場合の動作遂行時間への影響─転倒群と非転 倒群での比較.PT ジャーナル.2013; 47(3): 259‒264. 18)Yamada M, Aoyama T, et al.: Dual-task walk is a reliable predictor of falls in robust elderly adults. J Am Geriatr Soc. 2011; 59(1): 163‒164. 19)Melzer I, Kurz I, et al.: Application of the voluntary step execution test to identify elderly fallers. Age Ageing. 2007; 36(5): 532‒537. 20)渡邊正孝:行動の認知科学,認識と行動の脳科学.田中啓 治(編),東京大学出版会,東京,2008,pp. 203‒263. 21)Botvinick MM, Cohen JD, et al.: Conflict monitoring and anterior cingulate cortex: an update. Trends Cogn Sci. 2004; 8(12): 539‒546. 22)Kerns JG, Cohen JD, et al.: Anterior cingulate conflict monitoring and adjustments in control. Science. 2004; 303(5660): 1023‒1026. 23)Perret E: The left frontal lobe of man and the suppression of habitual responses in verbal categorical behaviour. Neuropsychologia. 1974; 12(3): 323‒330. 24)諏訪部和也,征矢英昭:前頭前野の実行機能と運動.体育 の科学.2014; 64(5): 339‒344..
(7) WSC による転倒リスク評価の有用性. 〈Abstract〉. Usefulness of a Walking Stroop Carpet in Evaluating Fall Risk among the Community-Dwelling Elderly. Koji TAKIMOTO, PT, PhD, Hideaki TAKEBAYASHI, PT, PhD, Takahiro OKUDA, PT, Yutaka TAKUMA, PT, PhD, Yoshikazu INOUE, PT, MEd, Shoko MIYAMOTO, PT, MA, Takao OKABE, PT, MEd, Kenzo MIYAMOTO, PT, PhD Tosa Rehabilitation College Purpose: The purpose of this study is to examine the usefulness of a Walking Stroop Carpet (WSC) in evaluating fall risk among the elderly. Methods: The participants were thirty faller subjects (mean age: 78.3 ± 6.1 years) and seventy nonfaller subjects (mean age: 74.8 ± 6.4 years). The WSC was 1 m wide and 5 m long with “red,” “blue,” “yellow” and “green” written on targets arranged in four rows laterally and 10 rows lengthwise. The text on the targets was printed in various colors with none of the colors matching the name of the color written on any given target. The WSC tasks were done under three conditions: for example, under the color condition, the participants were instructed to step only on targets with text printed in a certain color. Participants walked on the WSC and the time required was measured. Results: The time taken to perform the WSC trials differed significantly between the groups under the color condition (7.1 ± 2.3 s for fallers vs. 5.5 ± 1.2 s for non-fallers, p < 0.01). A logistic regression analysis demonstrated that the color condition was independently associated with falling (odds ratio = 1.62, 95% confidence interval = 1.00 ‒ 2.60; p < 0.05). Conclusion: The color condition of the WSC appears to be useful for evaluating the risk of falling, as the fallers were significantly slower than the non-fallers under this condition, and its capability to discriminate fallers from non-fallers was high. Key Words: Walking Stroop Carpet, Falls, Community-dwelling elderly. 225.
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