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運動技能学習に対するミラーセラピーと経頭蓋直流電気刺激法の併用療法の有効性

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 168 43 巻第 2 号 168 ∼ 169 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 26 年度研究助成報告書. 極;5 cm × 5 cm)と左眼窩上の前額部(陰極:10 cm × 5 cm) に電極を貼付し,弾性包帯で固定した。M1 の位置は,介入前. 運動技能学習に対するミラーセラピーと経 頭蓋直流電気刺激法の併用療法の有効性. の経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation:以下, TMS)計測にて同定した。刺激条件は,臨床神経生理学会の 脳刺激に関する委員会報告に則り,刺激強度 2 mA,刺激時間 20 分間と安全域内に設定した。一方,sham 刺激は一旦 2 mA. 1). 1). 堀場充哉 ,清水陽子 ,佐橋健斗. 1). ,野嶌一平. 2). ,. 川嶋将司 3),植木美乃 4),和田郁雄 4). まで漸増した直後,漸減,停止した。 評  価  評価は,介入前後に実施した。主要評価項目としてボール回. 1). 転課題の遂行回数,副次的評価として,母指運動の加速度と. 2). TMS による運動皮質の興奮性の定量を行った。. 3). 1.ボール回転課題の遂行回数(回転数). 4).  各被験者は,前腕回外位で 2 個のコルクボールをできるだけ. 名古屋市立大学病院リハビリテーション部 名古屋大学大学院医学系研究科理学療法学講座 名古屋市立大学大学院医学研究科神経内科学 名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学. 速く回転(左手:左回り,右手:右回り)させるよう指示され キーワード:経頭蓋直流電気刺激,ミラーセラピー,運動学習. た。30 秒間の課題遂行を 2 回実施し,5 ∼ 25 秒での遂行回数 の平均値を代表値とした。. はじめに. 2.母指加速度の計測.   経 頭 蓋 直 流 電 気 刺 激(transcranial direct current stimu-.  回転数の評価と同時に,三次元動作解析装置(アニマ社,. lation:以下,tDCS)は,微弱な直流電流を経皮的に持続通電. ローカス 3D-MA3000)を用いて母指の加速度を計測した。母. することで,大脳皮質の神経活動を調整する 1) 非侵襲的手法. 指先端背側に貼付した直径 5 mm の反射マーカーを 30 cm 間. である。. 隔で配置した 5 台のビデオカメラで撮影し,その位置変化を.   近 年, パ ー キ ン ソ ン 病(Parkinson’s disease: 以 下,PD). PC で記録した。三軸方向(矢状軸:X,前額軸:Y,垂直軸:. に対しても tDCS による運動症状の改善効果が検討されてい. Z)の加速度に変換後,MATLAB(MathWorks 社)を用いて,. る 2)3)。しかし,その効果に一定の傾向はみられておらず,ま. ピーク加速度(Peak Value of Acceleration:以下,PVA)を. た tDCS と運動療法の併用療法の効果についても明らかにされ. 算出した。課題遂行時の加速度指標として,PVA の平均値(以. ていない。. 下,mean-PVA)と変動係数(以下,CV-PVA)を算出した。.  一方,健常者での運動技能学習. 4). や脳卒中後の運動機能改. 3.TMS を用いた運動皮質の興奮性の定量. 善 5) を目的としたミラーセラピー(Mirror Therapy:以下,.  対象とする筋は短母指外転筋(Abductor pollicis brevis:以. MT)の有用性が報告されている。MT は PD においても実施. 下,APB) と し た。 筋 電 図(Electromyograms:EMG) は,. 可能と考えられるが,報告例は見あたらない。また,tDCS は,. 10 kHz のサンプリング周波数で AD 変換し,PC で記録した。. 1).  TMS(Magstim 社,Magstim200) 計 測 に は,8 の 字 型 コ. 能改善に対する治療手段として期待されている。. イル(各翼外径 9 cm)を使用した。コイルは頭蓋骨に対して.  今回,基礎的研究として,健常高齢者を対象に tDCS と MT. 接線方向で中心線より外側 45 ゜になるよう徒手にて固定した。. の併用による運動技能獲得の即時効果を検討した。また,PD 症. 刺激部位は M1 とし,対象筋の運動誘発電位(Motor Evoked. 例に対する tDCS と MT の併用治療の効果についても報告する。. Potential:以下,MEP)の反応がもっともよい至適部位を被. 対象と方法. 験者毎に計測した。安静時運動閾値(rest motor threshold:. 神経可塑性を促通することが報告されており. ,PD の運動機.  右利きの健常高齢者 16 名(平均年齢 68.9(65 ∼ 73)歳,男. 以下,rMT)は,10 回中 5 回以上 APB の MEP 振幅が 50 µ V. 性 14 名)を対象とした。デザインは二重盲検法によるランダ. を超える最小の刺激強度と定義した。皮質脊髄路の興奮性の指. ム化比較試験で,tDCS の陽極(anodal)刺激群(a-tDCS)8. 標として,rMT の 120%の刺激強度で MEP 振幅を計測した。. 例および sham 刺激群(s-tDCS)8 例に割りつけた。また,右. 4.その他の指標. 利きの PD 患者 2 名についても同様に割りつけし,12 時間以上.  歩行能力,筋力,認知機能に関する評価も実施した。. 休薬したオフ条件で実施した。なお,本研究は当院倫理委員会. 統計解析. で承認を受けた後,説明と文書による同意を得て実施した。.  健常高齢者の回転数,加速度パラメータ,MEP の介入前後. 介入方法. と群間比較に反復測定二元配置分散分析法を用いた。回転数と.  右大脳半球の M1 に対する tDCS(陽極刺激または sham 刺. mean-PVA および CV-PVA の関連は,ピアソンの相関係数,. 激)の試行中に,MT を 20 分間実施した。介入は右手による. スピアマンの順位相関係数を用いた。危険率 5%を統計的有意. ふたつのコルクボール回転課題(直径 30 mm,重さ 5 g,右回. とした。. り)とし,右手の鏡像を視覚的にフィードバックした。この際,. 結  果. 左手は鏡の背面で安静を保つよう指示した。課題実施 30 秒と. 1.tDCS による有害事象. 休息 30 秒を 1 セットとし,16 セット実施した。.  健常者,PD 症例ともに tDCS による副作用,有害事象を認.  tDCS(neuroConn 社,DC-STIMULATOR)は,右 M1 上(陽. めなかった。.

(2) MT と tDCS 併用療法の有効性. 169. 2.ボール回転の遂行回数. 考  察.  健常者は,群内,群間要因の交互作用を認めなかった。両.  tDCS による有害事象は発生しておらず,適切な刺激方法を. 群ともに介入後の左手による回転数は増加し主効果を認めた. 用いることで簡便かつ安全に治療が実施できたと考える。ま. (a-tDCS:介入前 14.8 ± 3.6 回,介入後 17.6 ± 3.6 回,p < 0.05,. た,上肢巧緻性以外の運動機能や認知機能には変化が見られて. s-tDCS:介入前 12.7 ± 3.7 回,介入後 18.0 ± 3.2 回,p < 0.01)。. いないことから,本法の効果は課題特異的な変化をもたらすこ. 一方,群間の回転数には差がみられなかった。. とが示唆された。. 3.加速度指標とボール回転数の関連.  健常高齢者に対する tDCS と MT の併用(a-tDCS 群)は,.  健常者のボール回転数は,垂直軸(Z)方向の mean-PVA お. 効果量は小さいものの即時的に運動技能学習を促進する可能性. よび CV-PVA と有意な関連性を認めた(mean-PVA;r = 0.69,. が示唆された。介入後のボール回転数は両群に差がないもの. p < 0.001,CV-PVA;r = ‒ 0.67,p < 0.001)。. の,左母指のピーク加速度や変動係数は,a-tDCS 群のみで有. 4.mean-PVA と CV-PVA. 意に変化した。特に a-tDCS 群のピーク加速度は,s-tDCS 群よ.  健常者の加速度パラメータはいずれも群内,群間要因の交. りも高値であった。しかし,加速度のパラメータと回転数に関. 互作用を認めなかった。介入後の mean-PVA(Z)は a-tDCS. 連があるにもかかわらず,介入後の回転数は両群に差がなかっ. 群で増大し,群内(a-tDCS 群:介入前 80.6 ± 28.3 cm/s2,介. た。複数回の介入効果を検討することや,疲労また陰極刺激の. 2. 入 後 96.8 ± 30.6 cm/s ,p < 0.05,s-tDCS 群: 介 入 前 60.2 ±. 影響など他の要因についても検討する必要がある。大脳皮質の. 11.3 cm/s2,介入後 69.0 ± 15.8 cm/s2,p = 0.13)と介入後の. 興奮性変化に関しても,介入後の左 M1 の MEP 振幅は a-tDCS. 群間要因(p < 0.05)に主効果を認めた。. 群で増加しているが,両群の差は認められなかった。これらの.   一 方, 介 入 後 の CV-PVA(Z) は 両 群 と も 低 下 し た が,. 結果は,高齢者に対して a-tDCS に MT を加えることによる付. a-tDCS 群のみの群内要因に主効果を認めた(a-tDCS 群:介入. 加的効果が低い可能性を示している。その要因としては,MT. 前 0.49 ± 0.11, 介 入 後 0.39 ± 0.06,p < 0.05,s-tDCS 群: 介. のみでも有意な運動機能の改善および興奮性の増大が見られて. 入前 0.46 ± 0.09,介入後 0.39 ± 0.08,p = 0.07)。. いたことが挙げられる。特に高齢者における運動機能学習の効. 5.MEP 振幅. 果は,運動課題の難易度や介入期間など様々な要因が効果に影.   健 常 者 の MEP 振 幅 は, 介 入 後 に 両 群 と も 増 加 し た が,. 響を与えることが知られている。今後は,評価項目を再検討す. a-tDCS 群の群内要因のみに主効果を認めた(a-tDCS 群:介入. るとともに,調整された難易度の課題に対する効果や長期的な. 前 0.97 ± 0.90 mV,介入後 1.98 ± 1.68 mV,P < 0.05,s-tDCS. 介入の効果などを検討していく必要がある。. 群:介入前 0.82 ± 0.57 mV,介入後 1.07 ± 0.63 mV,交互作用.  PD 症例では,a-tDCS によってわずかながら回転数やピーク. なし)。. 加速度の増加を認めた。現在,症例数を増やし,PD に対する. 6.その他の運動機能および認知機能. 本法の有用性を検討中である。.  両群とも介入による有意な変化は認めなかった。. 文  献. 7.PD への介入例 ・症例 1(a-tDCS)  60 歳台の女性。罹病期間 2 年。ヤールの重症度 3,左手の寡 動が優位。Unified Parkinoson’s Disease Rating Scale(以下, UPDRS)6)の part3 はオフ時 19 点,オン時 15 点。  介入後に,左側の回転数は 2.5 回から 3.5 回に微増した。また, 左側の mean-PVA(Z 軸)も 18.0 cm/s2 から 21.0 cm/s2 に増 加した。さらに,MEP 振幅も 0.96 mV から 1.24 mV に増大し た。一方,UPDRS は改善しなかった。 ・症例 2(s-tDCS)  60 歳台の男性,罹病期間 4 年,ヤールの重症度 2,軽度の振 戦,固縮,寡動を認めいずれも左側優位である。UPDRS part3 はオフ時 19 点,オン時 13 点。   介 入 後 に, 左 側 の 回 転 数 は 5.0 回 か ら 6.5 回 に 増 加 し た。 し か し, 左 側 の mean-PVA( 介 入 前 65.7 cm/s2, 介 入 後 62.0 cm/s2)や MEP 振幅(介入前 0.80 mV,介入後 0.82 mV) には変化を認めなかった。. 1)Nitsche MA: Excitability changes induced in the human motor cortex by weak transcranial direct current stimulation. J Physiol. 2000; 527: 633‒639. 2)Fregni F, Boggio PS, et al.: Noninvasive cortical stimulation with transcranial direct current stimulation in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2006; 21: 1693‒1702. 3)Benninger DH, Lomarev M, et al.: Transcranial direct current stimulation for the treatment of Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010; 81: 1105‒ 1111. 4)野嶌一平,美馬達哉,他:ミラーセラピー運動学習にお けるヒト一次運動野機能の役割.理学療法学.2012; 39: 82‒89. 5)Thieme H, Mehrholz J, et al.: Mirror therapy for improving motor function after stroke. Stroke. 2013; 44: e1‒e2. 6)Movement disorder society task force on rating scales for Parkinson’s disease: The unified Parkinson’s disease rating scale (UPDRS): status and recommendations. Mov Disord. 2003; 18: 738‒750..

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