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生活を支える理学療法とはなにか!

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Academic year: 2021

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生活を支える理学療法とはなにか! 471  理学療法士が誕生したのは 1966(昭和 41)年であり,第 1 回目の国家試験合格者は 183 名であった。その中の 110 名に よって日本理学療法士協会(以下,PT 協会)が設立された。 理学療法士の PT 協会登録者は 2013 年 6 月現在で 85,127 名に 増加し,今日にも 10 万人に届こうとしている状況である。  1965(昭和 40)年に制定された理学療法士および作業療法 士法 第二条には,以下のように理学療法が定義されている。 『「理学療法」とは,身体に障害のある者に対し,主としてその 基本動作能力の回復を図るため,治療体操,その他の運動を行 なわせ,及び電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段 を加えることをいう』。この定義は,理学療法の歴史が半世紀 を経過しようとしている現在,理学療法の実態にそぐわない, 旧態依然とした定義ではないだろうか。  そこで,過去からの理学療法学術大会や全国研修会における おもなテーマの推移を振り返ってみると,1966 ∼ 1975(昭和 50)年頃には,疾患別理学療法の内容にかかわる検討が主なる ものであった。「理学療法」「理学療法士」自体に関して医師を 中心とした医療関係職種に啓蒙をし,理学療法士がどのような 役割を遂行できるのかをアピールしていた時代である。1970 年代の日本には,早期からリハビリテーション(理学療法が主 体)を実施できる環境が十分に整っていなかったともいえ,ま た都市部でもリハビリテーション(以下,リハビリ)を行う施 設は,ごく少数であった。そのため,安静臥床による関節の拘 縮,筋力低下などの廃用症候群,褥瘡や異所性骨化などの合併 症を起こす患者さんが多数存在していた。  1970(昭和 45)∼ 1982(昭和 57)年頃は,理学療法におけ る評価法の標準化をめざしていた時代である。病院の数だけ存 在したともいえる様々な ADL 評価表は,徐々に国際的標準化 された Barthel Index や FIM へと切り替わっていった。また, 医療分野と隣接学際領域の歩み寄りが進み,筋電計・呼気ガス 分析装置・歩行分析装置・床反力計・三次元動作解析,等を理 学療法の評価手段として導入が進み,いわば客観的評価法の拡 大・確立が進んだ時代であった。  1980(昭和 55)∼ 1998(平成 10)年代には,理学療法の専 門性とはなにか,また理学療法の領域拡大をめざし,さらに日 本の大きな潮流でもある人口の高齢化に向けて理学療法として どう対応していくのか,模索が進んだ時代であった。理学療法 士が人口の高齢化への対策を進める意識が高まり,リハビリ全 般での医療環境は急速に充実していった。いわゆる「機能訓 練」が重視され,老人保健法の制定や診療報酬の整備などに繋 がり,早期からリハビリが開始されることによって,合併症や 廃用症候群の二次障害が確実に減少した。一方で,この頃から セラピストの量的拡大が進み,理学療法士の質的向上を担保す ることが必須となっていった時代である。リハビリ医療の流れ の中で,医学的アプローチの開発だけでは解決できないことも 多く,社会環境や住環境の整備,福祉用具やロボットの開発な ども同時に進める必要が生じ,いわば医学モデルと社会モデル を統合したアプローチが求められていった時代である。  1999(平成 11)年には,横浜に於いて 13th WCPT 世界理学 療法連盟大会(第 34 回日本理学療法学術大会合同開催)が開 催された。開会式には天皇皇后両陛下のご臨席を賜り,大変な 名誉を得た大会にもなった。  2000( 平 成 12)∼ 2014( 平 成 26) 年 で は, 理 学 療 法 に 関 する知識・技術の向上,エビデンスの構築と利用,最新医学 と理学療法の統合,人間性・生活機能への考慮,理学療法の Science and Art を考慮して,理学療法学として成熟していく 過程を踏んでいる時代となってきたといえよう。  現在における理学療法の課題を 3 点提示して「生活を支える 理学療法」を考えてみる。1.急激に増加している理学療法士 の知識や技術は,質的に担保されているのか。2.「理学療法学」 としてのエビデンス構築と,その利用は達成されているのか。 3.超高齢社会を迎え,高齢者保健福祉政策や,診療報酬改定 への対応は十分か,の 3 点である。  1.では,卒前教育は十分かという課題があり,学生側には, 理学療法士としての資質の多様化が拡大していること,膨大な 教育内容を消化し,学習が達成されているかという課題があ り,教育者側では,理学療法学の教員として,教育内容の質を 担保できているのかが問われている。また卒後教育の課題とし ては,PT 協会における生涯学習制度,認定理学療法士・専門 理学療法士制度にのって自己実現への努力を継続しているの か,さらに中堅となった理学療法士の学習意欲が低下傾向に なってきていないか,等である。  諸々の課題解決のために,協会の生涯学習システムの充実化 も必要条件であり,また PT 協会会員個々の努力を信じるもの である。 理学療法学 第 41 巻第 8 号 471 ∼ 473 頁(2014 年)

生活を支える理学療法とはなにか!

長 澤   弘

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大会長基調講演

What is Physical Therapy that Supports Life ! **

神奈川県立保健福祉大学

(〒 238‒8522 神奈川県横須賀市平成町 1‒10‒1)

Hiroshi Nagasawa, PT, PhD: Kanagawa University of Human Services

キーワード:生活を支える,理学療法,エビデンスとアート

Japanese Physical Therapy Association

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理学療法学 第 41 巻第 8 号 472  2.では,2011(平成 23)年に PT 協会主導でつくられた「理 学療法診療ガイドライン」をいかにして有効に活用できるか, ということがある。多くの PT 協会会員が関与し,世界のデー タベースを中心につくり上げたガイドラインを,臨床の場でい かに展開できるかを会員それぞれが確認していくことが重要で ある。また,エビデンスをつくるという観点では,一人ひとり が「症例研究」からはじまる理学療法の原点を忘れず,それら の蓄積により,自分がエビデンスをつくっていく役割があるの だという自覚が必要である。統計学的手法や疫学・質的研究手 法などを学びながら,日本の文化や慣習等を考慮したうえで, 日本人としてのエビデンス構築を増やしていく必要がある。さ らには国際学会や英語での論文発表など,世界に発信していく ことも視野に置いておきたい。今回の学術大会の市民公開講座 で取り上げた「iPS 細胞が変えるリハビリテーションの未来  ─臨床応用の可能性─」で解説されたように,医学の進歩に伴 い理学療法も劇的に変わる時代を迎えようとしていることも, 大いに意識すべきであろう。  3.では,超高齢社会を迎え,高齢者保健福祉政策や,診療 報酬改定への対応も含め,社会全体の動きに関心をもち,適切 な対応をしていかなければ,明日の理学療法士としての職業的 危機に陥る可能性もでてきていることを自覚すべきである。い わゆる 2025 年問題として知られているように,超高齢社会で は,疾患の多様性とともに高齢という条件が修飾する複雑な病 態があり,それをもつ「人」を対象として,理学療法士の立場 から,生活を支える視点が重要になる。全体の人口が減少する なかで,75 歳以上の人口は増加し続け,全人口の約 2 割に達 する(図 1)。特に,大都市圏の急性期病院は,入院患者の急 増で機能停止する恐れがある。つまり,通院困難な虚弱高齢者 に対して,病院だけでなく,生活の場で高齢者を支える在宅医 療が必要になる。医療の在り方自体が問われることになり,こ の関連の中で理学療法分野も適切な対応が求められる。  平成 26 年度診療報酬改定にあっても,注目すべきこととし て掲げられたものは,「廃用予防のための早期リハビリテー ションが大切」,「入院早期から生活支援に軸を置くリハビリ テーションを推進すべき」という厚生労働省第 64 回社会保障 審議会医療保険部会における委員の発言もあり,また,入院医 療について在宅復帰の促進を図る(図 2)という国の施策も示 された。さらに「急性期病棟におけるリハビリテーション専門 職の配置に対する評価」ということで,病棟に専従のリハビリ テーション専門職等を配置した場合の評価を行うという「ADL 維持向上等体制加算」が新設された。もちろん,ADL が入院 中低下した者の割合が 3%未満であることや,院内で発生した 褥瘡患者の割合が 1.5%未満であることというアウトカム評価 をクリアしなくてはならないが,理学療法士にとっては嬉しい 挑戦の要素になることだといえる。さらに,平成 25 年の第 2 回社会保障制度改革国民会議資料で示された「2025 年の地域 包括ケアシステムの姿」(図 3)も,ますます居宅での生活支 援や介護予防が重要になってくることが強調され,理学療法士 の適切な対応が望まれる。  地域包括ケア病棟の新設も大きな転換である。現在の「回復 期病棟」は,急性期病棟からの受け入れが中心であるが,「地 域包括ケア病棟」は,急性期病棟からの受け入れに加え,在宅 等で急変された方の対応や,在宅医療の提供も行い,急性期・ 回復期・在宅をつなぐ地域に根ざした医療を提供することとし て示されている。それぞれは理学療法士として大変重要な方向 性であるといえる。このような国の施策に敏感に反応し,適切 な理学療法提供ができるように,常に考慮すべき時代であるこ とを認識すべきである。  日本理学療法士協会 半田一登会長からのメッセージにもあ るように「運動による自助」を提供すること,「予防理学療法 の確立」が急務であること,そして「互助」としての地域のイ ンフォーマルな助け合いを基本としながら,「共助」としての 医療機能の分化と連携を推進して,「治す医療」から「治し支 える医療」への転換を図っていくことが重要であろう。  以上のような理学療法学としての基盤のうえに,社会的な視 点を加えると,新たな「理学療法の定義」が見えてきそうであ 図 1 人口ピラミッドの変化(厚生労働関係部局長会議 平成 23 年 1 月 21 日資料より)

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生活を支える理学療法とはなにか! 473 る。元日本理学療法士協会長・(現 金城大学医療健康科学部) の奈良勲氏の提案している定義が私も賛同できるものである。 『「理学療法」とは,心身の機能・身体構造に変調のある者に対 し,それらの回復を目的にして,運動,治療体操,徒手的治療 および電気,温熱などの物理的介入を適用し,活動と生活機能 の向上を図るとともに健康を増進し,社会参加を支援すること をいう』というものであるが,会員諸氏はいかに考えるだろ うか。  理学療法士として,知識や技術の質を担保し,向上し続ける 努力が重要であり,理学療法士の生涯学習制度,認定理学療法 士・専門理学療法士制度を十分活用しながら,エビデンスをつ くり・取り入れ・実践すること,さらに日本理学療法士学会 (12 分科学会+5 部門)への参加へ努力すること,「予防理学療 法」など新分野での展開へも興味をもって取り組むこと,これ らはいわば学問としての「縦糸」の部分がある。そして,高度 専門職業人として,他職種との連携協働を実践し,「予防」か ら「治し・支える医療」への一貫した理学療法の提供と,対象 者への「全人的アプローチ」,個々の人生を尊重し,テーラー メイドな理学療法の提供を行い,地域で生きていくこと,生活 を支えることを忘れない。そのためにも「人」として,「ひと りの人間」として,幅の広い充実した“自分磨き”への努力を 怠らないことも課題になる。いわば Art として「横糸」の部分 である。この「縦糸」と「横糸」が織りなす“成熟した理学療法” これこそが「生活を支える理学療法」であると結んでおきたい。 図 2 在宅復帰の促進(厚生労働省 平成 26 年度診療報酬改定資料より) 図 3  厚生労働省 2025 年の地域包括ケアシステムの姿(平成 25 年第 2 回社会保障 制度改革国民会議資料より)

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参照

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