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健康長寿に不可欠な運動器の健康

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 679 ~ 680 頁(2015 健康長寿に不可欠な運動器の健康 年). 679. 合同シンポジウム 6(日本骨粗鬆症学会). 健康長寿に不可欠な運動器の健康* ─骨粗鬆症マネージャーとしての理学療法士に期待するもの─ 太 田 博 明 1)2). り,2007 年には高齢化率が 21.5%と世界ではじめて高齢化率が. はじめに. 21%を超える超高齢社会となり,直近の高齢者人口は約 3,400. 第 50 回日本理学療法士協会学術大会におけるシンポジウム. 万人となった。. 6 は私ども日本骨粗鬆症学会が「超高齢社会における骨折予防. さらに 10 年後の 2025 年には高齢化率が 30%を超えること. の重要性と理学療法士の役割」のテーマにて共催シンポジウム. が予測され,3 人に 1 人が 65 歳以上,5 人に 1 人が 75 歳以上. の申し込みを行い,受理していただいた。. になると見こまれている。一方,他国においては 2040 年以降. 骨粗鬆症はその診療の入り口ともいえる骨検診受診率. 1). が. 米国では高齢化率 20%,スウェーデン・フランスでは 23 ~. 低く,治療率も EU25 ヵ国の平均よりも 20%近く低い 25%に. 24%,ドイツで 30%にて,高齢化率は横ばいとされているが,. 留まっている 2)。一方,2012(平成 24)年の大腿骨近位部骨. 我が国のみ 35%を超えて 40%に近づくことが予測されている。. 折数の全国集計では 175,700 人と 2007(平成 19)年の調査,. このような社会構造は医療環境の悪化とともに年金や医療な. 148,100 人と比べて高齢者人口の増加から,27,600 人も増加し. ど社会保障の財政を一層圧迫させることとなり,個人負担の増. た. 3). 。しかし,性別・年齢別調査結果のある 1992(平成 4)年. 以降,70 歳代では男女ともに発生率は過去最低値を示した。 さらに 80 歳代でも男女ともにはじめて減少を認めた。したがっ て,総数の増加は 90 歳代,特に女性の骨折の増加によるもの. 加とともに医療・介護サービスの縮小も受け入れざるを得ない 状況が予測される。. 要支援者・要介護者の増加とその現状. で,男女とも過去最高値を示し,易転倒性やサルコペニアが関. 我 が 国 は 1961( 昭 和 36) 年 に 国 民 皆 保 険 制 度 が 確 立 し,. 与していると思われる。. 2000(平成 12)年には WHO からの評価で日本の医療保険制. 我が国では 1947(昭和 22)~ 1949(昭和 24)年までに生ま. 度は総合点で世界一となった。これに加え,2000 年より介護. れた世代を「団塊世代」と呼んでいる。この 3 年間の団塊世代. 保険制度を導入し,男女とも世界一の健康寿命を達成するとと. が約 800 万人,団塊世代後の 2 年間を含めた 5 年間の拡大団塊. もに乳幼児死亡率等の健康指標もトップなど,比較的低い国民. 世代の約 1,100 万人が今後さらに高齢化していく。したがって,. 負担率の中で,世界でも類をみない高水準の医療介護制度を確. 易転倒性とサルコペニア対策が喫緊の課題となっている。その. 立している。. 対策として,ビタミン D の充足と運動の励行が不可欠なため,. 一方,要支援・要介護認定者数は介護保険制度が制定された. 今後は理学療法士の方々とのシームレスな連携が必要となる。. 2000 年の 218 万人から,年々増加し,直近の 2014(平成 26). 我が国の高齢化の現状と将来予測. 年には 580 万人を超え,約 2.7 倍も増加している。これらの要 因としては脳血管疾患と認知症および老衰と運動器の疾患が約 4). 我が国と各国における 65 歳以上の人口の割合である高齢化. 80%を占める. 率の推移と将来予測の比較をみると,我が国の高齢化率は急速. 知症(13.3%),衰弱(10.3%),骨折・転倒と関節疾患(10.0%). であり,なおかつ,将来もそれが持続することが予測されてい. であるが,女性は骨折・転倒と関節疾患(29.4%)がもっとも. る。また我が国の高齢化速度は世界的に突出しており,イギ. 多く,その後,認知症(17.1%),衰弱(15.0%),脳卒中(13.3%). リスの約 2 倍,アメリカの約 3 倍,フランスの約 5 倍である。. が続き,明らかな性差がある。すなわち,男性は脳卒中=メタ. そして,我が国の高齢化率は 2005(平成 17)年に世界一とな. ボ,女性は骨折・転倒と関節疾患=運動器の疾患=ロコモが各. *. Locomotive Organ Health Essential for Healthy Life Expectancy: Expectations for Physiotherapists as Osteoporosis Managers 1) 国際医療福祉大学臨床医学研究センター 教授 Hiroaki Ohta, Professor, Director: Department of Clinical Medical Research Center, International University of Health and Welfare 2) 山王メディカルセンター・女性医療センター長 (〒 107–0052 東京都港区赤坂 8–5–35) Women’s Medical Center of Sanno Medical Center キーワード:健康長寿,骨粗鬆症性骨折,理学療法. 。さらに男性の介護要因は脳卒中(28.4%),認. 要因となっている(図)5)。 さらに女性における要支援・要介護原因疾患の年次推移をみ ると,2013(平成 25)年には団塊世代の最終年代が高齢者の 仲間入りをして高齢者人口が増加し,運動器疾患の急増が顕著 である。加えて,要支援・要介護者数の経年的・年齢による推 移をみると,後期高齢者は前期高齢者よりも要支援が 6.0 倍, 要介護が 7.4 倍も増加することが判明している 6)。すなわち,.

(2) 680. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 要であり,適切な運動は臨床的に重要な大腿骨近位部および腰 椎の骨密度上昇に有用である。 背筋強化訓練は腰椎骨密度を上昇させ,椎体骨折を防止す る。筋力訓練・バランス訓練を中心とした運動指導は高齢者, 特に転倒の既往のある高齢者の転倒予防に有用であり,骨折に 寄与する。運動処方は年齢・活動性・転倒リスク・椎体骨折数 等の骨粗鬆症重症度などから安全性を考慮し,選択することが 重要である。 我が国では日本骨粗鬆症学会が認定したメディカルスタッフ による骨粗鬆症マネージャー 680 名が 2015 年 4 月誕生した。 この骨粗鬆症マネージャーの 85%は看護師・薬剤師・理学療. 図 男女別介護が必要となったおもな原因の割合構成. 法士である。看護師・薬剤師の骨粗鬆症診療における役割は 各々コーディネーター,服薬指導など明確である。理学療法士. 75 歳を分岐点として,要支援・要介護者は急増する。. の役割は運動機能評価と運動指導となるが,連携における詳細 な役割については明確になっていない。. 要支援・要介護要因となる骨粗鬆症の負の連鎖 我が国の骨折者における骨折直前の骨粗鬆症治療薬内服状況 は,椎体骨折ばかりでなく,大腿骨近位部骨折者も 96%は治 療薬を服用していなかった. 7). おわりに 整形外科,リハビリテーション医はともかく,他科の骨粗鬆. 。つまり,骨粗鬆症であることに. 症診療医師は理学療法士の方々になにをどこまでお願いできる. 気づかず,いきなり骨折をしてしまうということである。さら. かについてほとんど理解していないのが現状である。今後は診. に最近の大腿骨近位部骨折 1 年後の骨粗鬆症治療状況の調査. 療医の方から専門職である理学療法士の方々へのお願いと理学. によると,約 20%しか骨粗鬆症治療は行われていなかった 8)。. 療法士の方々はこのようなことができるというご提言をいただ. 我が国における初回大腿骨近位部骨折例の 1 年後の年齢階級別. き,意思の疎通を図りたいと思う。. 大腿骨近位部骨折発生率は一般人口に比較して平均より 4 倍高. 理学療法士の方々には,一般の方々に対する運動器の健康を. 8). く,年齢別では 65 ~ 74 歳で 18.6 倍ともっとも高いという 。. 守る年齢別・活動性別運動法の普及・啓発活動をご一緒にお願. 骨折既往とその後の骨折リスクのメタアナリシス 9) では,. いしたいと思っている。運動の励行は骨粗鬆症を中心とする運. 脆弱性骨折が生じると,当該部位の骨折だけでなく,他の部位. 動器の疾患に対する発症予防・転倒予防・骨折の 1 次予防等幅. の骨折リスクも上昇するという。この中では椎体骨折の連鎖が. 広い効用が期待される。さらに骨折者に対する急性期・回復期. もっとも多く,多発するケースが多いとされ,初発椎体骨折防. におけるリハビリテーションとしての運動指導は社会復帰に不. 止の重要性が示唆される。. 可欠である。また,骨折者に対する転倒予防・骨折の 2 次予防. 以上から,骨折が起きても十分な follow がないため,骨折. に対して効果的で,しかも安全な運動法・運動処方の確率を共. の連鎖が止まらない。骨折連鎖が生じるのは上腕骨以外の骨折. 同で開発したいと思う。. で,椎体骨折後の連鎖は多いが,大腿骨近位部骨折後の連鎖は 少ない。このように骨折の種類によって連鎖が異なる可能性が ある。連鎖パターンを分析して,連鎖を起こしやすいパターン を予知することができれば,連鎖(ドミノ)骨折を予防する方 法が確立するであろう。そのためには骨折連鎖のエビデンスを 収集し,骨折連鎖の実態を把握することが必要である。. 骨粗鬆症の発症・骨折防止における運動指導の重要性 骨粗鬆症は発症と重症化防止のために生涯に亘る長期的予防 が必要である。若年期は好ましい日常生活(運動・栄養)を心 がけることで高骨密度の獲得につながる。さらに閉経周辺期に おける骨密度減少を薬物療法および日常生活(運動・栄養)の 改善で抑制する。加えて,老年期における薬物療法,転倒防止, 日常生活(運動・栄養)の改善によって骨折を抑制する。これ らライフサイクルのどの時期にあっても運動と栄養の日常生活 は基本となる。 運動指導のおもな目的は骨密度の上昇,背筋強化,転倒予防 などにより骨粗鬆症と骨折の予防に寄与することである。閉経 後女性における骨密度の維持・上昇にはウォーキング,太極拳 をはじめ,有酸素荷重運動や下肢筋力訓練による複合運動が重. 文 献 1) 山 内 広 世, 西 川 憲, 他: 骨 粗 鬆 症 検 診 の 現 況 に つ い て. Osteoporosis Japan. 2007; 15(4): 649–655. 2) Kanis JA, McCloskey E, et al.: Goal-directed treatment of osteoporosis in Europe. Osteoporos Int. 2014; 25(11): 2533–2543. 3) 八 重 樫 由 美, 坂 田 清 美, 他: 日 本 の 大 腿 骨 近 位 部 骨 折 発 生 率 ~ 2012 年 に お け る 新 発 生 患 者 数 の 推 定 と 25 年 間 の 推 移 ~. Osteoporosis Jpn. 2014; 22: 262. 4) 厚 生 労 働 省. 平 成 19 年 国 民 生 活 基 礎 調 査.http://www.mhlw. go.jp/toukei/list/20-19-1.html(2015 年 11 月 11 日引用) 5) 厚生労働省大臣官房統計情報部.平成 26 年国民生活基礎調査(平 成 25 年)の結果から グラフでみる世帯の状況.http://www. mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h25.pdf(2015 年 11 月 11 日引用) 6) 厚 生 労 働 省. 介 護 保 険 事 業 状 況 報 告( 年 報 )( 平 成 22 年 度 ). http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/10/(2015 年 11 月 11 日引用) 7) Sakuma M, Endo N, et al.: Incidence and outcome of osteoporotic fractures in 2004 in Sado City, Niigata Prefecture, Japan. J Bone Miner Metab. 2008; 26(4): 373–378. 8) Hagino H, Sawaguchi T, et al.: The risk of a second hip fracture in patients after their first hip fracture. Calcif Tissue Int. 2012; 90(1): 14–21. 9) Klotzbuecher CM, Ross PD, et al.: Patients with prior fractures have an increased risk of future fractures: a summary of the literature and statistical synthesis. J Bone Miner Res. 2000; 15(4): 721–739..

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図 男女別介護が必要となったおもな原因の割合構成

参照

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