健康長寿に不可欠な運動器の健康
2
0
0
全文
(2) 680. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 要であり,適切な運動は臨床的に重要な大腿骨近位部および腰 椎の骨密度上昇に有用である。 背筋強化訓練は腰椎骨密度を上昇させ,椎体骨折を防止す る。筋力訓練・バランス訓練を中心とした運動指導は高齢者, 特に転倒の既往のある高齢者の転倒予防に有用であり,骨折に 寄与する。運動処方は年齢・活動性・転倒リスク・椎体骨折数 等の骨粗鬆症重症度などから安全性を考慮し,選択することが 重要である。 我が国では日本骨粗鬆症学会が認定したメディカルスタッフ による骨粗鬆症マネージャー 680 名が 2015 年 4 月誕生した。 この骨粗鬆症マネージャーの 85%は看護師・薬剤師・理学療. 図 男女別介護が必要となったおもな原因の割合構成. 法士である。看護師・薬剤師の骨粗鬆症診療における役割は 各々コーディネーター,服薬指導など明確である。理学療法士. 75 歳を分岐点として,要支援・要介護者は急増する。. の役割は運動機能評価と運動指導となるが,連携における詳細 な役割については明確になっていない。. 要支援・要介護要因となる骨粗鬆症の負の連鎖 我が国の骨折者における骨折直前の骨粗鬆症治療薬内服状況 は,椎体骨折ばかりでなく,大腿骨近位部骨折者も 96%は治 療薬を服用していなかった. 7). おわりに 整形外科,リハビリテーション医はともかく,他科の骨粗鬆. 。つまり,骨粗鬆症であることに. 症診療医師は理学療法士の方々になにをどこまでお願いできる. 気づかず,いきなり骨折をしてしまうということである。さら. かについてほとんど理解していないのが現状である。今後は診. に最近の大腿骨近位部骨折 1 年後の骨粗鬆症治療状況の調査. 療医の方から専門職である理学療法士の方々へのお願いと理学. によると,約 20%しか骨粗鬆症治療は行われていなかった 8)。. 療法士の方々はこのようなことができるというご提言をいただ. 我が国における初回大腿骨近位部骨折例の 1 年後の年齢階級別. き,意思の疎通を図りたいと思う。. 大腿骨近位部骨折発生率は一般人口に比較して平均より 4 倍高. 理学療法士の方々には,一般の方々に対する運動器の健康を. 8). く,年齢別では 65 ~ 74 歳で 18.6 倍ともっとも高いという 。. 守る年齢別・活動性別運動法の普及・啓発活動をご一緒にお願. 骨折既往とその後の骨折リスクのメタアナリシス 9) では,. いしたいと思っている。運動の励行は骨粗鬆症を中心とする運. 脆弱性骨折が生じると,当該部位の骨折だけでなく,他の部位. 動器の疾患に対する発症予防・転倒予防・骨折の 1 次予防等幅. の骨折リスクも上昇するという。この中では椎体骨折の連鎖が. 広い効用が期待される。さらに骨折者に対する急性期・回復期. もっとも多く,多発するケースが多いとされ,初発椎体骨折防. におけるリハビリテーションとしての運動指導は社会復帰に不. 止の重要性が示唆される。. 可欠である。また,骨折者に対する転倒予防・骨折の 2 次予防. 以上から,骨折が起きても十分な follow がないため,骨折. に対して効果的で,しかも安全な運動法・運動処方の確率を共. の連鎖が止まらない。骨折連鎖が生じるのは上腕骨以外の骨折. 同で開発したいと思う。. で,椎体骨折後の連鎖は多いが,大腿骨近位部骨折後の連鎖は 少ない。このように骨折の種類によって連鎖が異なる可能性が ある。連鎖パターンを分析して,連鎖を起こしやすいパターン を予知することができれば,連鎖(ドミノ)骨折を予防する方 法が確立するであろう。そのためには骨折連鎖のエビデンスを 収集し,骨折連鎖の実態を把握することが必要である。. 骨粗鬆症の発症・骨折防止における運動指導の重要性 骨粗鬆症は発症と重症化防止のために生涯に亘る長期的予防 が必要である。若年期は好ましい日常生活(運動・栄養)を心 がけることで高骨密度の獲得につながる。さらに閉経周辺期に おける骨密度減少を薬物療法および日常生活(運動・栄養)の 改善で抑制する。加えて,老年期における薬物療法,転倒防止, 日常生活(運動・栄養)の改善によって骨折を抑制する。これ らライフサイクルのどの時期にあっても運動と栄養の日常生活 は基本となる。 運動指導のおもな目的は骨密度の上昇,背筋強化,転倒予防 などにより骨粗鬆症と骨折の予防に寄与することである。閉経 後女性における骨密度の維持・上昇にはウォーキング,太極拳 をはじめ,有酸素荷重運動や下肢筋力訓練による複合運動が重. 文 献 1) 山 内 広 世, 西 川 憲, 他: 骨 粗 鬆 症 検 診 の 現 況 に つ い て. Osteoporosis Japan. 2007; 15(4): 649–655. 2) Kanis JA, McCloskey E, et al.: Goal-directed treatment of osteoporosis in Europe. Osteoporos Int. 2014; 25(11): 2533–2543. 3) 八 重 樫 由 美, 坂 田 清 美, 他: 日 本 の 大 腿 骨 近 位 部 骨 折 発 生 率 ~ 2012 年 に お け る 新 発 生 患 者 数 の 推 定 と 25 年 間 の 推 移 ~. Osteoporosis Jpn. 2014; 22: 262. 4) 厚 生 労 働 省. 平 成 19 年 国 民 生 活 基 礎 調 査.http://www.mhlw. go.jp/toukei/list/20-19-1.html(2015 年 11 月 11 日引用) 5) 厚生労働省大臣官房統計情報部.平成 26 年国民生活基礎調査(平 成 25 年)の結果から グラフでみる世帯の状況.http://www. mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h25.pdf(2015 年 11 月 11 日引用) 6) 厚 生 労 働 省. 介 護 保 険 事 業 状 況 報 告( 年 報 )( 平 成 22 年 度 ). http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/10/(2015 年 11 月 11 日引用) 7) Sakuma M, Endo N, et al.: Incidence and outcome of osteoporotic fractures in 2004 in Sado City, Niigata Prefecture, Japan. J Bone Miner Metab. 2008; 26(4): 373–378. 8) Hagino H, Sawaguchi T, et al.: The risk of a second hip fracture in patients after their first hip fracture. Calcif Tissue Int. 2012; 90(1): 14–21. 9) Klotzbuecher CM, Ross PD, et al.: Patients with prior fractures have an increased risk of future fractures: a summary of the literature and statistical synthesis. J Bone Miner Res. 2000; 15(4): 721–739..
(3)
図
関連したドキュメント
医薬保健学域 College of Medical,Pharmaceutical and Health Sciences 医学類
金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院
工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科
東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上
It seems that the word “personality” includes both the universality of care and each care worker ’s originality with certain balance, and also shows there are unique relations
17 委員 石原 美千代 北区保健所長 18 委員 菊池 誠樹 健康福祉課長 19 委員 飯窪 英一 健康推進課長 20 委員 岩田 直子 高齢福祉課長
大曲 貴夫 国立国際医療研究センター病院 早川 佳代子 国立国際医療研究センター病院 松永 展明 国立国際医療研究センター病院 伊藤 雄介
防災課 健康福祉課 障害福祉課