5.妊
娠 に よ る生 活 の 変 化 と
対 処 力 か らみ た妊 婦 の 生 活 満 足 感
金沢大学医学部保健学科看護学専攻○島田啓子 田淵紀子 小松みどり 坂井明美
1.は じめ に 従 来か ら健 康 問題 を もつ対 象 に焦点 を あて た研 究 は多 いが1)2),順調 な妊娠 生活 を過 ご して い る妊 婦 か らみ た生活 満 足感 の報 告 は 少 な い。 近年,健 康 の 自己管 理,自己 責任 が論 議 され つ つ あ る中 で, 病 気 の有無 にか かわ らず医 療 の 質的 保 証 や 生活 の 質 的充 足が 求 め られ て い る。 本 研究 は助 産婦 の視 点 で,従 来 の医 学的 視点 か ら明 示 され な か った部 分 に焦 点 をあて,こ れ まで の報 告 に対 比 でき る基 礎 資 料 を得 るた め に検討 した 。 そ こで 医 学的 に正 常 と され る普通 の妊 婦が,ど れ くら い内 面的 な豊 か さ をも ちなが ら生 活 して い る のか,そ の実 態 と 構 成 要 素の 関連 性 を探 る こ とを課 題 に した。 健康 な 妊婦 の生活 満 足感 に関 す る概 念枠 組 み を検 討 し, 前 回 は先 行経 験 およ び期 待 感か ら分 析 して報 告 し た3)。 今回,妊 娠 して か らの 生 活の 変 化 と妊 婦 の 主 観的 生活 満 足 度の 関係 を 中心 に検 討 した。 1.研 究 目的 妊娠 してか らの生活 の 変 化お よび 生活 満 足度 の 実 態 を探 り,そ の関連 性 を明 らか に す る。 2.本 研究 の概 念枠 組 図1に 示 した本 研究 の概念 枠 組 みか ら,妊 娠 生活 を構 成 す る要 素の 一 つに,妊 娠 によ る 「生活 変化 の程 度 と対 処 力」 を あげ た。 この 妊娠 に よる 生活 変 化 の バ リエ ー シ ョ ンは個 人 に よっ て多 様 で あ る。 何 が どれ く らい変化 し,そ の変 化 に 対す る対 処力 の程 度 によ って 妊娠 生 活へ の適 応度 も異 な る こと が 考 え られ る。 結 果的 に 「生活 の 変化 の程 度 と対 処 力 」 は他 の要 素 と統 合 され て,妊 娠 期 の生活 満 足 感 に 反映 され ると考 え た。 3.作 業仮 説 「妊 娠 してか らの生 活 の変 化 が 小 さ く対 処 力が 大 き い とき,生 活満 足 感が 高 い」 こ とを検 証 す る た め に 以下 の3点 か ら分析 した 。 1)妊 娠 に よ る生活 の 変化 が 小 さ いほ ど生 活満 足 感 は 高 い。 2)生 活 の変 化 に対 す る対処 力が 大 き いほ ど生 活満 足 感 は高 い。 3)生 活 の変 化 の大 き さと対 処 力 の大 き さ は正 の相 関 関 係 にあ る。 図1妊 娠期 の女性 の生活 満足感の概 念粋 組 II.方 法 1.対 象 調 査 は 北陸,関 西地 区 に居住 す る妊 婦565名(6 40名 配 布,有 効 回 答88.3%)。 対 象 選択 に際 して は調 査 段階 で入 院加 療 を要 しな い こ とに 加 え て, 医学 診 断 名 が な いこ と更 に順 調 な妊 娠 経 過 を た ど って い る と 自己 認知 して い る妊 婦 に調 査 趣 旨 説明 文 を渡 し説 明,承 諾 サ イ ンを得 てか ら無 記 名,自 記 式調 査 用紙 を個 別配 布 して 施 設 ごと に一 括 郵 送 回収 した。 2.測 定用 具 1)「 生 活 満 足 」尺 度 はFerrar£&powersが 開 発 した 健康 と機 能 的,社 会経 済 的,心 理 学精 神 学 的,家 族 の4領 域 を包括 した35項 目か ら構 成 さ れ た 質 問紙4)を 真 田が翻 訳 した もの で,訳 者 の承 諾 を得 て 参 考 に し内 容の 一部 を妊娠 生活 に適 合 す る よ う に修 正 した(17項 目)。元 の 尺度 は 重 要度 と満 足度 の 重 み づ け をす るが,今 回 は 「満 足度 」 項 目のみ の集 計 得 点 か ら 「生活 満 足 度 」 と した 。 評 点 は5段 階 の1点(全 く違 う)か ら5点(全 く そ う思 う)に 配 点 した 。2)「 生活 の変 化 の程 度 」
生活 の変 化 の 程度 をみ る 尺度 はFHC(The Fun ctional Living Ihdex for Cancer: 以 下FLIC)の 尺度22項 目 を参考 に,妊婦 に不 適 な も の は削除 修 正 して15項 目を 用 いた。FLICはSchipper5)が 癌 患者 のQOLを 測 る もの と して 開 発 した 自己記 入 式 尺度 で あ る。 そ の特 徴 は特 定 の疾 患 を 反映 しや す く,個 人 の 生 活 の機能 面 に どのよ うな 変化 をも た らしたか を測 る た めに作 られ て い る。 また 患者 自身が評 価 で き,使 いや す く再現 性 が あ る こ と, 経 時 的変 化 の追 跡が 可能 で 臨 床 的感 度 が高 い こと 等 の特徴 が 報告 され て い る6)。評 点 は5段 階 とし1 点(全 く違 う)か ら5点(全 くそ う思 う)に 配 点 した。 3・ 統 計 的解 析 は 主 因子 分 析(Varimax回 転) ,関 係性 の有 無 はpeason's偏 相 関 係数(Fisher's の検 定)を 求 め,差 の 分析 は一 元 配 置分 散 分析 を 用 いた。 ま た各 々の 尺度 の 集計 得点 は最 小 ,最 大 値 を求 め,平 均 ±1標 準 偏 差 を 中間 群 の基準 に し て3区 分 し,高,中,低 得点 群 と して 比較 した。 III.結 果 1.尺 度 の 信頼 性 と妥 当性 因子 分 析 の結 果,「 生活 満 足度 」 は17項 目の1 因子 に,ま た 「生 活 の変 化 の程 度 」は10項 目2因 子 に集 約 され た 。 1)「 生活 満足 度 」の第1因 子 の 固有 値 は5 .83, 寄与 率 は36.4%で,生 活 の4領 域(健 康,心 理 的 ・ 精神 的,社 会 的 ・経 済 的,家 族)全 て を含 ん で い た こ とか ら 「生 活 満 足度 」と命 名 した。(第2因 子 以 降 は 因子負 荷 量 が 小 さ く削 除 した)ま た内 的 一 貫 性 をみ たCronbadach's係 数 は0.88で あ った。 この得 点 可能 範 囲 は17∼85で,高 得点 ほど 生活 満 足度 が 高 い こ とを意 味 す る。 2)「 生 活 の 変 化 の 程 度 」(表1)に つ い て 抽 出 さ れ た2因 子 の 累 積 寄 与 率 は45.7%,α 係 数 は0. 73で あ っ た 。第1因 子 の 固 有 値 は3.10,寄 与 率 は 31.0%で 妊 娠 後 の 不 快 感 や 経 過 の 順 調 さ を 含 み 「妊 娠 後 の 変 化 」 と 命 名 した 。 ま た 第2因 子 の 固 有 値 は1.47,寄 与 率 は14.7%で 生 活 の 出 来 事 や 苛 立 ち に 対 処 で き る か 否 か を 問 う て お り 「対 処 力 」 と 命 名 した 。「妊 娠 後 の 変 化 」8項 目 の 得 点 可 能 範 囲 は8か ら40,得 点 が 高 い ほ ど 妊 娠 して か ら の 変 化 が 大 き い こ と を 意 味 す る 。 同 様 に 「対 処 力 」2 項 目 の 得 点 可 能 範 囲 は2か ら10,得 点 が 高 い ほ ど 対 処 力 が 大 き く な る よ う に 逆 点 集 計 して 高 得 点 群 を 「対 処 良 好 」 に,低 得 点 群 を 「対 処 困 難 」 と し て 比 較 し た。 2.対 象 の 属 性(表2) 対 象 の 年 齢 は19歳 か ら40歳 まで の 平 均 年 齢28 歳 ±3.82,25歳 か ら29歳 ま で が 最 も 多 く282名 (49.9%)で あ っ た 。 妊 娠 期 間 別 で は,後 期(8 か 月 ∼10ケ 月)の 人 が379名(67.1%)で 最 も 多 く,初 経 別 で は,初 妊 婦 が283名(50.1%)と 全 体 の 半 数 を 占 め た 。 妊 婦 の 教 育 背 景 は 「高 校 卒 」 が261名(46.2%),調 査 時 点 で の 職 種 は 「専 業 主 婦 」が344名(60.9%),年 間 収 入(夫 婦 で)「(約) 300万 以 上400万 未 満 」が141名(25.0%)で 最 も 多 く,次 い で 「400万 以 上500万 未 満 」 が128 名(22.7%),全 体 的 に300万 ∼500万 が 約 半 数 を 占 め た. 3.妊 娠 後 の 変 化 と対 処 力 及 び 生 活 満 足 度 の 実 態 「生 活 満 足 度 」は 最 低29.0,最 高85,0に 分 布 し平 均59.6±7.7で,満 足 群 は84人(14-9%),中 間 群 は402人(71.2%),不 満 足 群 は79人(14.0%) で あ っ た 。 ま た 「妊 娠 後 の 変 化 」 は 最 低10.0,最 高37.0,平 均23.8±4.5で あ り,妊 娠 後 の 生 活 変 化 が 大 き い 人 は 全 体 の19.5%を 占 め た 。さ ら に「対 表1「 変 化の 程度 」 をみ る尺 度の 因子 分 析(Varimax回 転) 15項 目の元 尺度か ら因子負 荷量が低 い0.45以 下の項 目を削除 して残 った もの *は 道転 項 目 寄 与 率0.310 0.147 累積 寄 与率 0.457
処 力 」 は 最 低2.0,最 高10.0,平 均6.6±1.9を 示 し,対 処 困 難 な 人 は 全 体 の14.0%を 占 め た 。 4.妊 娠 後 の 変 化 と 生 活 満 足 度 の 関 係(図2) 妊 娠 後 の 変 化 の 程 度 に よ っ て 生 活 満 足 度 に 違 い が あ る か ど うか をみ た 。 妊 娠 後 の 変 化 が 大 き い 群 (n=110)の 生 活 満 足 度 は55.1,小 さ い群(n= 83)は64.8で あ り,妊 娠 後 の 変 化 が 小 さ い ほ ど 生 活 満 足 度 が 高 く(P<0.0001),仮 説 の1)は 支 持 さ れ た 。 生活満足得点 図2妊 娠後の変化の程度 と生活満足度 5.対 処 力 と 生 活 満 足 度 の 関 係(図3) 妊 娠 後 の 変 化 に 対 す る 対 処 力 の 程 度 に よ っ て 生 活 満 足 度 に 違 い が あ る か ど う か を み た 。 対 処 力 が 大 き い(良 好)群(n=92)の 生 活 満 足 度 は62.9, 小 さ い(困 難)群(n=79)は55.5で あ り,対 処 力 が 大 き い ほ ど 生 活 満 足 度 を 有 意 に 高 く認 め(P <0.0001),仮 説 の2)は 支 持 さ れ た 。 図3対 処力の程度と生活満足度 6.妊 娠 後 の変 化 と対 処 力 及び 生 活 満 足度 の関 係 妊娠 後 の変 化 と対処 力の大 き さの 関係 を み る と, そ の 偏 相 関 係数 はr=-0.33,同 様 に妊娠 後 の変 化 と満 足度 で はr=-0.41と 弱 い が負 の相 関 を認 め た 。 つ ま り妊 娠 後 の変 化 が大 き い ほ ど対 処 力 は小 さい傾 向 に あ り仮 説 の3)は 否定 され た 。 また 妊 娠 後 の変 化 が 大 き いほ ど生 活満 足 度 は 低 い傾 向 に あ り,対 処 力 と生活 満 足度 はr=0.28で,対 処 力 が大 き いほ ど満 足 して い る傾 向 にあ った 。(いず れ もP<0.001) IV.考 察 本研 究 の対 象 は調査 段 階 で入 院 加療 を要 さ な い ロー リス ク 妊婦 で あ る。順 調 な経 過 と通 称 され る 妊婦 で あ って も,内 的,外 的 ホ ルモ ン環 境 の変 化 は 妊婦 に 生理 的 不快 感 や 苦痛 を もた らす が,医 学 的 に逸 脱 所 見 が な い限 り,外 来診 療 の 中 で 積 極 的 表2対 象 の 属 性
なケア を受 け に くい現 状で ある 。 しか し妊 娠 に と もな うマ イ ナー トラ ブル の 出現 は,順 調 に経 過 し て いる妊婦 で あ って も生 活 動静 の変 更 や 社会 的 交 流 の縮小 さ らに は仕事 の中 断 を余儀 な く され るな ど喪失感 を もた らしや す い。今 回 の調 査 で は妊 娠 してか らの 生活 面 で の変 化 を全 体の85%が 自覚 し て お り,生 活 ス タイ ル の変 更 に ともな う適 応努 力 が 潜伏 して いる と推 察 され た 。 平 山 ら7)に よれ ば,妊 娠 した ことで 生活 は変 化 し て い るが,妊 婦 は種 々 の情 報 を積 極 的 に取 り込 み なが ら主体 的 に選択 した生 活 を 送 って い る と報告 して いる。 そ うで あ る とす れ ば 本調 査対 象 の よ う に順調 な経 過 を た ど って い る妊 婦 の 場 合,そ う し た変化 に応 じた 対処 力 も高 いの で はな いか と考 え た。しか し 妊 娠 中の生 活 の変 化 が大 き く対 処 困難 で あ る と した妊 婦 は約20%存 在 し,5人 に1人 は 生活へ の不 適 応 につな が りや す い潜 在 的状 態 にあ る といえ る。 また 「対 処 力」 は 本調 査 の設 問 内容 か らみ て情 緒 的 側 面 に集約 され たが 、情緒 的 対処 に困難 を感 じて いる 人は 生活 満 足度 が 低 い と い う 傾 向 を認め た 。妊 娠 とい う新た な 生活 の 局 面で は, 個 人の もて る力 を最 大 限 に いかせ るよ う,重 要他 者 か らのサ ポ ー トが不 可 欠8)で あ る こと も従 前 よ り説か れて いる 。 した が って サ ポー トの量 や 質が こ う した妊 娠 後 の 生活 変化 に対 して どのよ うに対 処 力 を強 め る こ とに なる のか,重 ね て検 討 され る 必 要が あ る。 以上,疾 病 を もたず 順調 に経過 して い る妊 婦で あって も,生 活 に満 足 して いる 人 は14.9%に す ぎ ず 必ず しも多 い と言 えなか った 。妊 娠 生活 が こ う した充 足感 や 幸 福感 を もち に く い状 況 で は,妊 婦 の 母性意 識 の 発達 に障 害 を もた らす 可能 性 も考 え られ る。 助 産活 動 にお いて は健 診 に通 う多 くの妊 婦 に対 して,妊 娠 後 の 生活 の変 化 に適 応 で き る よ うな健 康 教 育 を は じめ,情 緒的 な 対処 力 を高 め ら れ るよ うな 家族 へ の 支援 もあ らた め て重 要 で あ る と考 え る。 以 上の 結 果 は北 陸 と大阪 の2地 域 を 対象 に,一 時 的 かつ 横 断 的 な調 査結 果 と いう限 界 を もつ 。 V.結 論 健 康 な妊 婦565名 の 生活 の変 化 の程 度 と対処 力 お よび 主 観 的 生活 満 足度 の実態 と関 係 を検 討 した 。 1.妊 娠 に よ る生 活 の変化 が大 き い 人は19.5%,, 対 処 困 難な 人は14%を 占め た。 2.生 活 に対 す る満 足 度 は満 足お よ び 不満 足 が そ れ ぞ れ 約15%づ つ で あっ た。 3.非 妊 時 に 比べ て妊 娠 後 の生 活 の変 化 が 大 き く, 対 処力 が 小 さ い ほど,妊 婦 の生 活満 足 感 が低 い傾 向 にあ っ た。 引 用 ・参 考 文 献 1. 内 藤 哲 雄 他: 出 産 育 児 に 関 す る 不 安 や 悩 み の 個 人 的 構 造 分 析, 母 性 衛 生, 33巻4号, 511, 1992. 2. 西 田 裕 子 他: 高 年 初 産 婦 へ の 援 助, 満 足 度 の 高 い 体 験 へ の 働 き か け, 母 性 衛 生, 33巻 4号, 565, 1992. 3. 島 田 啓 子, 他: 妊 娠 期 の 女 性 の 生 活 満 足 感 に 関 す る研 究-先 行 経 験 お よ び 期 待 感 別 に み た 生 活 満 足 の 実 態-, 第11回 日本 助 産 学 会 学 術 集 会 集 録 集, 10巻2号, 57-60, 1997.
4. Ferrans. CE.: Dadevelopment of Quality of Life Index for patients with Cancer, Oncology Nursing Forrum, Vol.17, No. 3, 15-21, 1990.
5. Schipper. H and Levitt, M.: Measuri ng Quality of Life, Risks and Benefi ts, Cancer Treatment Reports, Vol. 69, No.1 0, 1115-1123,1985. 6. Schipper. H.: 癌 患 者 に お け るQuality of Lifeの 測 定, Topics/第2回 日 本 臨 床 精 神 腫 瘍 学 会 か ら,「 癌 患 者 に お け るQOL」 を 中 心 に, 月 刊 ナ ー シ ン グ, 9巻4号, 448-451, 1 989. 7. 平 山 操, 他: 妊 婦 の 生 活 の 変 化 に 関 す る 調 査, 母 性 衛 生, 35巻63号, 217, 1994.
8. SJ. Leader, et al.: New Integratial Clinical Nursing, 尾 島 信 夫, 監 修, 正 常 妊 娠 の 心 理 社 会 学 的 側 面, 182-189, 医 学 書 院, 1984.
9. Razarus. R. S, & Folkman. S: Stress, App raisal and Coping. 本 明 寛, 春 木 豊 , 他 監 訳,
ス ト レ ス の 心 理 学, 119∼182, 実 務 教 育 出 版 . 1994.
6.女
性 の 出 産 に対 す るニ ー ズ と出産 満 足 度
(第1報)
-妊 娠 中の ニ ー ズ と出産 施 設 の 決
定-日本赤十字看護大学大学院 ○ 村 上 明美 1.は じめ に 少 子化 の今 日,女 性 に とって 出産 は貴 重 な体 験 とな った。 家 族 形態 の変 化や 女 性 の 社会 進 出 ・高 学 歴 化 な どを背 景 に 出産 に対 す る女 性 の価 値観 は 多 様 化 した と言 え る。 1985年 に採 択 されたWHOの 「出産 科学 技術 に つ い て の 勧 告 」 に は,出 産 時 の ケ ア の 計 画 ・実 行 ・評価 には 女性 が 参 加す べ きで あ る こ とが述 べ られ て い る。 わ が国 で も,産 む 側 の女 性 た ちが 自 主 グ ルー プを 結成 して活 動 を行 っ てお り,「 自分 ら し い出産 の あ り方 」 を求 め て,積 極 的 に選 択 を 行 うよ う にな っ て きた。 そ の 一 つ に 出産 施設 の選 択 が 挙 げ られ る。 施 設 にお い て は母 児 の安 全 性 を最優 先 に 出産 を 支 援 す るが,出 産 す る女 性 が 安 全性 以 外 の ニー ズ に も応 えて く れ る施 設 を選 択 す る よ う になれ ば, 出産 時の ケ ア に も必 然 的 に違 いが 生 じて くるだ ろ う。 出産 す る 女性 の ニ ー ズ を理解 す る こ とは,出 産 に 関 与す る 助産 婦 の ケ アの 質 を 向上 させ る要 因 に も な る。 本 研 究 の 目 的 は,出 産 を間 近 に控 えた 女性 の出 産 に 対す る ニー ズの 具体 的 な 内容 と,出 産施 設 を 決 定 した 要 因 を,施 設形 態 別 に比較 す る ことで あ る。 II.方 法 1.対 象:東 京 近郊 の形 態 の異 な る 出産 施設19施 設 を便 宜 抽 出 し,大 学病 院4施 設,総 合 病 院3施 設,個 人病 院3施 設,助 産 院4施 設 か ら研究 協 力 を得 た。 それぞ れの 施設 に通 院 して い る妊 娠8ヵ 月以 降の 妊婦(以 下,大 学 病 院 群 ・総合 病 院 群 ・ 個 人 病 院 群 ・助 産 院 群 とす る)で,大 学 病 院 群 242名,総 合 病 院群210名,個 人 病 院 群220名,助 産 院群210名,合 計882名 を便宜 標 本 抽 出 した。 2.調 査 期 間:1997年6月 上 旬∼9月 末 日 3.デ ー タ 収 集 方 法:自 己 記 入 式 質 問紙 法 を 用 い た。 質 問 紙 は,出 産 経 験 者 の 意 見 を反映 した文 献 1)2)3)を参 考 に研 究 者 が 作 成 した。 質 問 内 容 は, 今 回 の出 産 に 対す る希 望,す な わ ち 出産 形 態 ・出 産時 の 処 置 ・出産 環境 ・提 供 さ れ る ケ アに つ いて の 希望 の31項 目 と,こ の項 目 に対 して,希 望 す る ・どち らか とい えば 希望 す る ・考 えて い な い ・ どち らか とい え ば希 望 しな い ・希 望 しな い の5段 階の 尺度 を示 した 。 他 に,出 産 施 設 を決定 した 理 由,施 設 に 関す る情 報 入 手 の 手段,対 象属 性 な ど とした 。対 象 に は,研 究 の説 明 と依 頼 及 び守 秘 義 務の 遂行 等 の倫 理 的 配 慮 を記 した文 書 を同封 し, 質問 紙 を外 来 で 直 接 配布 あ る い は郵 送 した。 回 収 は郵 送 法 に よ り,572名(64.7%)を 回 収 し,有 効 回答 率 は98.6%(564名)で あ った。 施 設 形 態 別 で は大 学 病 院 群146名(60.3%),総 合 病 院 群139名 (66.2%),個 人病 院 群134名(60.9%),助 産 院 群 145名(69.0%)を 有 効 回答 と認 め た 。 4.分 析 方法:「 今 回 の 出産 に対 す る希望 」 につ いて は,5段 階 尺 度 の うち 「希 望 す る」 「希 望 し な い」 とい う 回答 に強 い ニ ー ズ が表 わ れ て い る と 解 釈 し,回 答 を 「希 望 す る 」 「希 望 しな い 」 「ど ち ら と もい え な い 」の3段 階 に 再分 類 した 。各 質 問項 目 につ い て4群 毎 に単 純 集 計 及 び ク ロス集 計 を行 い,統 計 ソ フ トSPSS-PCを 用 い てx2検 定 あ るい はFisherの 直 接確 率 検 定 を行 った 。 III.結 果 1.対 象 属性 1)年 齢 と妊 娠 週数 対 象 の平 均 年 齢 は大 学病 院 群30.8歳,総 合 病 院 群30.5歳,個 人病 院 群28.7歳,助 産 院 群31.3歳 で,回 答時 の 平均 妊 娠 週数 は大 学病 院 群34.3週,総 合病 院33.8週,個 人病 院34.4週,助 産 院 群33.9 週 で あ った(表1)。 対 象 の年 齢 と回 答時 の妊 娠 週 数 に は,各 群 間 に有 意 な差 を認 め な か った 。 表1年 齢 と妊娠 週数 2)出 産 経 験 の 有 無 大 学 病 院 群 は 初 産 婦78名(53.4%),経 産 婦68名 (46.6%),総 合 病 院 群 は 初 産 婦93名(66.9%),経 産 婦46名(33.1%),個 人 病 院 群 は 初 産 婦69名 (51.5%),経 産 婦65名(48.5%),助 産 院 群 は 初 産 婦48名(33.1%),経 産 婦97名(66.9%)で あ っ た 。 総 合 病 院 群 は,他 の3群 に 比 べ 有 意 に 初 産 婦 が 多 く,助 産 院 群 は,他 の3群 に 比 べ 有 意 に 経 産 婦 が 多 か っ た 。 大 学 病 院 群 と 個 人 病 院 群 間 に は,有 意 な 差 を 認 め な か っ た(表2)。 表2出 産経験 人(%) 3)前 回 まで の出 産施 設(表3) これ まで に経 験 した施 設 と同 形態 の 出産 施 設 を 選択 した 女性 は,大 学病 院 群 で47名(61.9%),総 合 病 院 群 で34名(73.9%),個 人 病 院 群 で50名 (76.9%),助 産 院群 で56名(57.7%)で,以 前 出産 した施 設 と同形 態 の施 設 を選 ぶ 女 性が 多 か った。 大学 病 院 群 ・総 合 病院 群 ・個 入病 院 群 で は助 産 院 で の 出産 経 験 を も つ女 性 は 一 人 も い な か っ た が,助 産 院 群 で は3名 が 大学 病 院 で,18名 が 総 合 病 院で,35名 が 個 人病 院 で 出産 を経 験 して いた 。 表3以 前出産した施設形態 延べ人数(%) 2.今回 の出産 に 対する希望(図1) 「希 望 す る 」 「希 望 しな い」 の 回 答 は,適 合度 検 定 によ り,そ れぞ れの 質 問 項 目 に43%以 上 の 回 答 が認 め られ た場 合 に,そ れぞ れ 「希 望す る人 が 多 い」 「希望 しな い人が 多 い 」 と解 釈 した 。 1)出 産形 態 につ いて 「自然 出産 」 を希 望 す る女 性,「 帝 王 切 開 」 を 希 望 しな い女 性 は4群 と も多 か った。 「フ リー ス タ イ ル 出 産 」 を 希 望 す る女 性 及 び 「計 画 分 娩 」 「無痛 分 娩 」 「仰 臥 位 分 娩 」 を 希 望 しな い 女 性 は,大 学病 院 群,総 合 病院 群,個 人病 院 群 よ りも 助 産 院群 に有 意 に多 か った。 2)出 産 時 の処 置 につ いて 「陣痛 促 進 剤 の使 用 」 を希 望 しな い女性 は4群 と も多 か った 。 「分 娩 監視 装 置 の 装着 」 を希 望 す る女 性 は,助 産 院群 よ り も大 学 病 院群,総 合 病 院 群,個 人病 院 群 に 有意 に多 か った。 「血管確 保 」 「分 娩 監視 装 置 の装 着 」 「剃 毛 」「浣 腸 」 「会 陰 切 開」 を希 望 しな い女 性 は,大 学病 院 群,総 合 病 院群,個 人病 院 群 よ りも助産 院 群 に有 意 に多 か っ た。 3)出 産 環 境 につ いて 「施 設 に常 時 助 産婦 が い る」 「同 じ医 師 の継 続 診 療」 「家庭 的 な 雰 囲気 」 「同 じ助産 婦 の継 続 診 療 」 を希 望す る女 性 は4群 と も多 か った 。 「救 急 医療 体 制 」 「施 設 に常 時 医師 が い る」 を希望 す る 女 性 は,助 産 院 群 よ りも 大 学病 院 群,総 合 病 院 群,個 人病 院群 に 有意 に多 か った 。 「母 児 同室」 「家族 の宿 泊が 可 能 」 を希望 す る女性 は,大 学 病 院 群,総 合病 院群,個 人病 院群 よ り も助 産 院 群 に 有 意 に多 か っ た。 「夫 の立 ち合 い 」 を希 望 す る女 性 は,大 学 病 院 群,個 人 病 院 群 よ り も総 合 病 院 群,助 産 院 群 に有 意 に 多 く,さ らに 助産 院 群 は 総 合 病 院群 よ りも有 意 に多か った。 4)提 供 され るケ アへ の希望 「母 児の 安 全 を 第一 に考 える 」 「十 分 な説 明 」 「意思 の尊 重 」 「プ ライバ シー の 保 持」「 呼 吸 の 指 導や マ ッサ ー ジ」 「相 談 相手 にな る」 「そ ば に 付 き添 う」 「優 しい言 葉か け 」 「叱 咤 激励 」 を希 望 す る女 性 は4群 とも に多か っ た。 3.出 産 施 設 の決 定理由(表4) 出産 施 設 を決定 した 理 由 の上位3項 目 を初 経 産 別 にみ る と,全 て に共 通 して い た の は 「施 設 へ の 信頼 」 で,経 産婦 で は 「以 前 も出産 」 した 経 験 で あ った 。そ れ 以外 は,大 学 病院 群 で は 「他科 との
図1出 産に対 す る希望 *p<.05 **p<.01 表4出 産施設の決定理由(複数回答)上 位3項 目 表5施 設情報の入手手段(複数回答)上 位3項 目 連携 」,総 合病 院群 では 「通 院 しや す さ」,個 人 病 院 群 で は 「施 設 の 評 判 」,助 産 院 群 で は 「母 乳 ・育 児相 談 がで き る」 とい う理 由が多 か っ た。 4.施 設情 報 の入 手 手段(表5) 施 設 情 報 の入 手 手段 の 上位3項 目を初 経 産 別 に み る と,経 産 婦 で は4群 と もに,自 分 や 知 人が そ の施 設 で 出産 した経 験 や,知 人か ら評 判 を 聞 く こ とに よ り情 報 を入 手 して い た が,大 学 病 院 群 で は,か か りつけ の医 師の 紹 介 に よ り情 報 を得 て い る女 性 も多か っ た。 初 産 婦 で は経 産婦 同様,知 人 の 出産 経 験 や 知 人 か ら評 判 を聞 く こと に よ り情 報 を入 手 して い る女 性 が多 か った.施 設 形態 別 には,大 学 病 院 群 で は か か りつ け の医師 の 紹介,総 合 病 院群 で は 親族 が そ の施 設 で 出産 した こ と,個 人病 院群 で は看 板 や 表札 を見 て,助 産 院群 で は雑 誌や 新 聞 の記 事 か ら 情報 を得て い た 。 IV.考 察 1.医 療 的な 管理 と出産 施設 どの施 設 を選 択 した 女性 も,妊 娠 中 か ら安 全 で 自然 な 出産 を強 く望 んで いた。 しか し,大 学病 院 ・総 合 病院 ・個 人病 院(以 下 病院)を 選 択 した女 性 の 多 くは,分 娩 監 視 装置 を 装 着 す る こ と,病 院 の 救 急 体 制 が 整 っ て い る こ と,常 に医師 が い る こ とな ど,異 常事 態 に備 え た 出産 時 の 医療 管 理 を妊娠 中か ら希 望 して いた 。 そ れ に比 べ,助 産 院 を選択 した 女性 の 多 く は, 血管 確 保 や 会 陰切 開,剃 毛や浣 腸 な どの 医 療介 入 は希望 して お らず,家 族 と共 に過 ごす 家 庭 的 な雰 囲 気 や 自由 な姿 勢 で の出 産 を希望 して い た 。
この こと か ら,病 院 を選 択 した女 性 は,出 産 を 医 師 の管 理 が 必 要 な 医療 的 な出 来事 と して 考 え, 反 対 に,助 産 院 を選 択 した女 性 は,出 産 を医 療 的 に は捉 え て お らず,む しろ 生理 的 で プ ライ ベ ー ト な 出来 事 と して 考 え る傾 向 が あ る と推 測 され た 。 病 院 と 助 産 院 で は 施 設 の もつ 機 能 が大 き く異 な って い る。病 院で は,医 学 的 立場 か ら妊娠 や 出 産 が 異 常 で あ る か 否 か を判 断 し,異 常 の 早 期 発 見 ・早期 治 療 の た め に医 療 的 な 管理 が行 わ れ て い る。一 方,助 産 院で は,生 理 的 現象 と して の 妊娠 や 出産 に視 点 が 当て られ,よ り安全 で安 楽 な 出産 に 向け て,助 産 婦 に よ る 女性 の健康 レベル を高 め るた め の支 援 が 行わ れて いる。 以 上 よ り,対 象 とな っ た女 性 の多 くは,出 産 に 対 す る 自 己 の 考 え 方 や 施 設 の 機 能 を考 慮 した 上 で,ニ ー ズ に 合 った 出産 施 設 を選 択 し,そ の 環 境 下 で安 全 に,か つ 自然 に 出産す る こと を望 んで い る と考 え られ た。 2.出 産 に関す る情 報 と出産 施 設の 決定 どの施 設 を選 択 した女 性 も,自 己 の出産 経 験 や 身 近 な 人の 情 報 か ら,そ の施 設 が信 頼で き るか 否 か を検 討 し,出 産 施 設 を 決定 す る傾 向が あ った 。 個 々 の女 性 が“ 満 足 で き る い いお 産 だ った” と 感 じ られ る よ うな 出 産体 験 が,い ず れ情 報 とな っ て 妊娠 ・出産 予 定 の 女性 の信 頼 を深 め,そ の 出産 施 設 を選 択 す る こ と につ なが って い くもの と思わ れ る。 施 設 にお いて は,一 つ 一 つ の出産 を如 何 に 大 切 に で き るか が 大 き な カ ギ とな ろ う。 この こ と は少子 化 の 今 日にあ って,施 設 の経 営 を維 持 して いく 上 で大 変 重 要 で あ る。 3.自 然 な出 産 と勉 産婦 の支 援 どの施 設 にお いて も,母 児 の 安全 の確 保,自 然 な 出産 に対 す るニ ー ズ は 高 く,出 産 時 に医 療 的 な 管 理 を 希望 して い る女 性 で も,ほ とん どが 自然 に 出 産 した い と望 ん で いた 。 同様 に,ど の施 設 にお いて も,施 設 に常 時 助産 婦 が い る こと,呼 吸 の 指 導や マ ッサー ジ,相 談相 手 に な る,そ ば に 付 き 添 う,優 しい 言 葉 か け な ど,精 神 的 な安 定 が 得 られ,緊 張緩 和 が促 進 され る よ う な 医 療 的 では な い 助産 婦 の ケ ア を求 め る女 性 が 非 常 に多か った 。 この こ とか ら,自 然 な 出産 をす るた め には,助 産婦 によ る支 援 が不 可 欠 で あ る と考 えて いる女 性 が多 い と言 える だ ろ う。 特 に,医 療が 介 入 しな い助産 院 で の 出産 を選 択 した女 性 は,自 分 自身 の健 康 と助産 婦 によ る支 援 に対 して 絶 大な 信 頼 をお いて い な けれ ば,母 児 と も に安 全 な 出 産 は 迎 え る こ と は 難 しい 。 助産 院 は,「 出 産 す る女性 を尊 重 し,安 全 ・安 楽 で 自然 な出産 を支 援す る」 助産 婦 の 専 門性 が 十 分 に発揮 され る場 で あ る。 どの施 設 を選択 した と して も,安 全 で 自然 な出 産 を した い とい う女 性 の ニー ズ が か な え られ るよ う,助 産 婦 と して 支 援 して いき た い。 そ の た め に は,助 産 院 で行 わ れ て い る出 産 支援 の 内容 やそ の 深 さ を追究 し,病 院 の ケ ア に反 映 させ て い くこ と も必 要 だ ろ う。 VI.ま とめ 本 研 究 によ り以 下 の こ とが 明 らか に な った. 1。 出 産時 の 医 療的 な 管 理 に関 して は,病 院 を選 択 した 女 性 と助産 院 を選 択 した 女 性 の ニー ズ に相 違 が認 め られ た 。前 者 は,異 常 事 態 に備 えた 出産 時 の 医療 管理 を希望 す る傾 向が,後 者 は,医 療 の 介 入 を希 望せ ず,家 庭的 な環 境 下 で 自 由な姿 勢 で の出産 を希 望 す る傾 向が あっ た。 2。 安 全 で 自然 な 出産 と,出 産 時 の精 神 的 な安定 や 緊 張 の緩和 を もた らす 非医 療 的 な 助 産婦 のケ ア へ の ニー ズ は,ど の 施設 を選 択 した女 性 にも共通 して いた 。 3.ど の施 設 を選 択 した 女性 も,自 己 の 出産 経 験 や 身近 な人 か らの 情 報 を も とに,信 頼 で き る出産 施 設 を決 定す る傾 向が あ った 。 参 考文 献 1) 藤 田真 一: お産 革命, 朝 日新 聞社, 1979. 2) 農文 協編: いい お産 が した い, 農 山漁村 文 化 協会, 1995. 3) ぐるーぷ ・き りん編: 私 た ち のお 産 か らあ な た のお 産へ, メ デ ィカ 出 版, 1997. 本 研 究 は,東 京 女 性 財 団 自主研 究 助成 金 を受 けて 行 った研 究 の一 部 で ある 。
7.切
迫 流 産 妊 婦 とか か わ る看 護 者 の
不 確 か さ と対 応
高知赤十字病院 ○ 尾 崎 暢希 1.序 論 1.は じめ に 切 迫 流 産 は 流 産へ の 移行 状 態 と考 え られ,正 常 妊娠 へ の 復 帰 が可 能 な 状態 で もあ る 。切 迫流 産 と 診断 され た 妊 婦 は流 産 の可 能性 と妊 娠 継 続の 可能 性 との 狭 間 で 揺れ 動 きながら 不確 か な 時期 を過 ご して い る。 一 方で は,切 迫流 産 妊婦 とかか わ る 看 護者 も,流 産 と妊 娠継 続 の 可能 性 とい う不 確か さのた め に,妊 婦 へ の対 応 の 難 しさがあ るこ と も 指 摘 され て い る1).そ こで,今回 は切 迫 流産 妊婦 とかか わ る看 護 者側 に 焦点 を 当て,看 護 者の もつ 不 確か さ と,そ の不 確 か さに おい て どの よ うな対 応 を行 って い る のか を質 的に 明 らか にす るこ とを 目的 と し,研 究 を行 った。 2.用 語 の 定義 本研 究 で は 不 確か さ とい う概念 を扱 った研 究1) 3)を 検 討 し,不 確 か さを次 の よ うに定 義 した 。 不 確 か さ;出 来 事や 状 態 が何 を意 味 し,ど の よ う な 結 果 とな るの か,今 後 どの よ うな こ とが起 こ る の か が明 確 で な い こ と 。 II.方 法 1.対 象;都 心 に 位 置す る一総 合病 院 の 産科 棟 に 勤 務 し,入 院 中の 切 迫流 産 妊婦 とかか わ って い る 臨床 経験3年 目以 上 の看 護 者20名。 2.期 間;平 成8年5月28日 ∼平 成8年9月18日 3.デ ー タ収 集方 法;半 構 成 的な イ ン タ ビュー ガ イ ドに 基 づ いた イ ン タビ ュー を行 い,同 意が 得 ら れた 場 合 に はテ ー プ に 録音 した 。 4.分 析 方 法;得 られ た デー タか ら,切 迫流 産 妊 婦 との か か わ りにお け る体験 や,か か わ りの プ ロ セ ス,切 迫 流 産妊 婦 の 受 け止 め 方,看 護観 な どが 表 現 され て い る現 象 に着 目 し,そ の 現象 が どの よ うな 意 味 を も って い るの か を質 的に 分析 した 。そ して 切 迫 流 産妊 婦 とのか か わ りにお け る看 護 者 の 不 確 か さ と対 応 に関連 した カ テ ゴ リー を抽 出 し, 分 類 した 。 III.結 果 1.対 象 者 の 背景;対 象 者 の年 齢 は25歳 か ら49歳 で あ り,平 均31.25歳,経 験 年 数 は3年 か ら24,5年 で あ り,平 均 経 験 年数 は 約9.03年 で あ った。 2.分 析 結 果;看 護者 は切 迫 流産 妊 婦 との か かわ りの 中で 《看護 者 に と って の 不確 か さ》 を体 験 し て お り,そ の中 で 《看 護者 の よ りど ころ とな るも の 》 に基 づ き,《 妊 婦 への 対 応 》 を して い る こ と が 分 か った。 1)《 看護 者 に と って の 不確 か さ》 これ は,看 護 者 に と って 妊 婦 が どの よ うな 対 象 な の か と ら え られ な か った り,関 係 を深 め る こ と が で きな い,あ るい は 妊婦 の切 迫 流産 に 関す る出 来 事 の意 味 づ け がで きな い こ とで あ る。 (1)<妊 婦 の全 体 像 を つか む ことが で き な い>ケ ー ス13は 「お りもの 範 囲 の もの(出 血)な の に,(心 配 そ うな 口調 で)『 こん なの が 出 て るん で す 』 って い う感 じは あ ります ね 。 この 人 ど うしち ゃ った ん だ ろ うって い うか 」 と話 して い る 。 これ は看 護 者 に とって,出 血 の 状 態 と妊 婦 の 訴 え方 に つ な が り が な く,妊 婦 に とって そ の 出血 の もつ 意 味 が 見い だ せ ず<妊 婦 の 全体 像 をつ か む こ とがで きな い> とい う不確 か さ を体 験 して い る。 (2)<妊 婦 との 関係 性 の 不確 か さ>ケ ー ス7は 「(妊娠)初 期の 人 って 入院 期 間 も短 か った り,深 くか か わ って お話 す るこ とが 少 な いん で す よ ね 」,ケ ース17は 「そ うい う(切 迫流 産 の>人 って,心 音 聞 く機 会 もな い し,ス キ ン シ ップ とい うか,な か な かな い ん で す よね 」,ま た ケー ス19は 「心 音 聞 か な い人 だ と症状 を聞 いて それ で 終 わ りって い う ふ うにな る こ と も多 い です よね。 だ か らち ょっと つ な が りが 薄 くな っち ゃ うか な とい う気 は します 」 と話 して い る 。この よ うに看 護者 は 妊 婦 と接 す る 時間 の短 さや,接 す る内 容 の少な さ に よ って<妊 婦 との関 係 性 の 不確 か さ>を 体 験 して い た 。 (3)<切 迫 流産 に関 す る診 断 や治 療 の不 確 か さ> ケー ス18は 「結 局半 々 く らいだ め か も しれな い っ て い うのが あ るから 」,ケ ース3は 「初 期の 方 だ ったか ら,ぺ た ー ん って い うお 腹 で,は って るは ってな い っ てい う段 階 じゃな くて … か た い,か た くな い って,そ こまで くお腹が)大 き くな って な い から,本 人の 自覚 に頼 る しか な い って い う時 期 が あ って 」,「 安 静 に して た か ら妊 娠が 継 続 した ってい い きれ な い部 分 もあ ります から ね 」 と話 し て い る。 こ れら の よ うに看 護 者は 妊 娠の 経 過が 予 測 で きな い こ とや,妊 娠 初 期 で観 察 の手 段 が ない こ と,安 静 とい う治 療で は 必 ず しも流 産予 防 にな らない こ とな ど,<切 迫 流 産 に関 す る診 断や 治 療 の不 確 か さ>を 体 験 して い る。 2)《 看 護 者 の よ りど こ ろとな る もの 》 看 護 者 は 切 迫流 産 妊 婦 とか かわ る中 で様 々な不 確 か さ を体 験 してい た が,そ の状 況 で の妊 婦 への 対 応の 支 え とな る よ うな,確 か な もの を もとに, 妊 婦 とか か わ ろ うと して いた 。 く1)<妊 婦 を理 解 し関 係 を作 ろ うとす る技>ケ ー ス11は 「夜 で も,ち ょっ と トイ レな ん かで 会 って も 『ど う?大 丈 夫?』 なん て 一声 掛 け て あげ る と, それ で 症 状 言 って く るか ら。そ うい う きっか け を 作 って あ げ な い と,患 者 さん か らめ った に言 わな い もん ね 」 と話 して い る。 これは 妊 婦 の部 屋 に訪 室 す る とき に限 らず,日 常 の あ らゆ る場 面 を利 用 し,妊 婦 が 話せ る場 面 を設 定 す る と と もに,看 護 者 が い つ で も話 せ る存在 で あ る こ と を示 そ う と し て い る。 ま たケ ー ス1は 「(何か ため て い る よ うな 妊 婦 に対 して>ロビ ー に呼 んで きて,と に か く話 を 聴 いて。 本 人 も話 した こ とに よ って 解決 で きる と い うか 」 と話 して い る。 これ は,看 護 者 がか かわ りの 中で 妊 婦 か ら何 かの サ イ ンを感 じ,そ の タ イ ミン グをの が さず に,妊 婦 の気 持 ち の 表出 を促 し てい る。 また ケー ス11は 「こ ち らか ら アプ ロー チ して も本 人 が あ ま り乗 り気 じゃな い とか,言 葉 数 が少 な い とか,の って こない とか,あ る じゃな い です か 。 この人 は 何 か あ りそ うなん だ け ど,介 入 して い けな い って い う とこ ろ 。 じゃ,今 はや め と こ うとかね 。 ち ょっ とず つ,そ の土 台 を くず して い く しか な いで す よね 」 と話 して お り,妊 婦 に近 づ くこ とを 目的 と しな が ら,妊 婦 との 適切 な 距 離 を保 と うと して い る 。これ らの よ うに 看護 者は く妊 婦 を理 解 し関 係 を作 ろ うとす る技>を よ り ど こ ろ と して,妊 婦 とか かわ ろ う と して いた。 (2)<今 ま での 体験 の 振 り返 り>ケ ー ス8は,こ れ か ら流産 が 進行 す るので は な いか と予測 した妊 婦 に,出 血 や 腹痛 の 増 強 につ い て伝 えた時 の こ と を話 してい る。 その 妊 婦は ケー ス8の 勤務 の後, 流 産に至 った が,症 状 が現 れ た時 に も説明 を聞 い て いた こ とから,混 乱 せず に対 応で きた と看護 者 に 感謝 の気 持 ち を述 べ て いた。 この 経 験か らケ ー ス8は 「み ん な に言 うわ け じゃな くて,自 分 の 中 で あ る程 度(流 産 が)予 測で きた もの は,本 人(妊 婦) が あ ま り期 待す る こ とのな い よ う接 してい るか な とい うところ は ある 」 と話 して い る。 つ ま りこの ケ ース では,今 後 起 こ りうる状 況 を話 した こ とで 妊 婦から 肯 定 的な 評 価 が 得ら れ た とい う<今 まで の 体験 の振 り返 り>が,対 応 の よ りど ころ とな っ て い る。 (3)<不 確 か な時 期 を耐 え よ うとす る看 護者 の 姿 勢>ケ ー ス4は 「 『これ か らど うな って い くん だ ろ うね 』 って 患者 さん と考 えられ る よ うにな っ た の かな。 前 は ナー バ ス に な って る患 者 さん に対 し て あ あな るの よ,こ うな るの よ って教 えな きゃ っ て 構 えて た と思 うん で す よ 。 それ がな くな って き て,-緒 に『 そ っかー 』 って言 える 分,楽 には な りま した 」 と話 して い る 。これ は,看 護 者 が不 確 か な時 期 を耐 えよ うとす る姿 勢 を持 つ こ とに よ り、 妊 婦 と共 に今 の状 況 を考 え る こ とがで きて い る と い え る。 (4)<妊 婦 の もつ 強 さ>ケ ー ス4は 前 回流 産 した 妊 婦で 、流 産 した週 数 が 近 づ いて き た時 の 様子 に つ い て 「ち ょっ と した 言 葉 掛 けで 涙 を みせ るこ と は あ った け ど,わ 一つ て 爆 発す るこ とはな か った 。
す ご く コ ン トロー ル され た な って 思 った 」と話 し て い る 。そ して ケー ス4は 「よく頑張 って るね 」 と支 持す る対 応 を して いた。 つ ま り,妊 婦が 自分 の気 持 ち を コ ン トロー ル し,今 の 状況 を乗 り越 え よ う とす る<妊 婦の もつ強 さ>を 看護 者 は理 解 し, それ が よ り どころ とな り対 応 してい る とい え る。 (5)<妊 婦 との関 係 の強 さ>ケ ース11は,妊 婦 が 今 後 の 見 通 しな どにつ い て 尋ね て きた とき,妊 婦 と 自分 が お 互 いに分 か り合 えて い る,表 裏が な い とい う関 係 の強 さを感 じて い る ときには,あ る程 度 の 見 通 しを話 す が,初 め て接 した妊 婦 な どに は しな い と話 して い る 。つ ま り看 護者 に とって 妊 婦 との 関 係 が 良好 でお 互 い に 分か り合 えて い る とい う感 覚 が もて た り,継 続 的 なか かわ りの 中で 信 頼 して も らえ て い る とい う関 係の強 さが よ りど ころ とな って い る。 (6)<切 迫 流 産 の状 態 の判 断>ケ ー ス5と13は 妊 婦 の 症 状 に つい て,出 血 の 色が 薄い ピ ン クで あ っ た り茶 色 で あれ ば,新 しい 出血や 流 産の 進行 を示 す よ うな 出 血 では ない と判 断 してい た 。 また 多 く の 看 護 者 が 腹痛 や 出血 とい う症 状 と,薬 との 関 係 や 症 状 の 出 る時間帯 な ど,症 状 が何 と関 係 して い るの か をこ れ まで の経 過 から 判 断 しよ うと して い た 。 ケー ス8は 「切迫 流 産 で入 って きた 人の 場 合, 私 の 中で,紙 面上 の と ころ を見 た とき に,今 まで の 自分 の 体 験 と学 習 して きた こ とを重 ね て,妊 娠 継 続 の 可 能 性が どの く らい あ るか とい うとこ ろ を 自分 の 中 で 把握 す る 」 と話 してい る。 これら の よ う に,看 護者 は,症 状 や 今 まで の経過 な ど,様 々 な 視 点 か ら<切 迫流 産 の 状 態の 判断>を し,こ の 判 断 が よ りど ころ とな り,妊 婦 に対 応 して いた 。 (7)<医 師 か らの 説 明>ケ ース11は 「医師 の説 明 が そ こま で い って ない とき に,そ こまで 介 入 しち ゃ って い い もの か ど うか 」,ケ ー ス15は 「ドク タ ー が 言 っ てな い部 分 まで、 こっちは どこ まで言 っ た らい い か難 しい 」と話 して い る。これ は,看 護 者 が 妊 婦 か ら診 断 的な こ と を聞 かれ た り,看 護者 が 答 えに くい こ とを きか れ た と きに,医 師 に それ を 委 ね る こ と を よ りど ころ と して対 応 して い た 。 (8)<決 ま りご と>ケ ー ス13は 「初 期 とい った ら 出 血 とつ わ り,中 期 だ った ら子 宮 口開 いて な いか とか 、お腹 が は って るの か とか....や る こ とは 決 ま るん で す よね 」と話 して い る。 また ケ ース1は 「だ め に な った とき の シ ョックは 大 きい 」,ケ ー ス2は 「変 な期 待 は持 た せ て は い けな い 」 とい う 理 由で 、妊婦 に は 「大 丈 夫 」 とい う言 葉 を使 わ な い と決 め てい た 。こ の よ うに,切 迫 流 産 妊婦 へ の 看 護基 準 な どの よ うな,病 棟 の決 ま りや,看 護 者 自身 が 切 迫流 産 妊婦 とか か わ る上 で 決 め て い る < 決 ま りごと>が よ りど ころ とな って い た 。 3)《 妊 婦 へ の対 応 》 看 護 者 は不 確 かな 状 況 に お かれ な がら も,そ の 状況 で よ りど ころ とな る もの を基 盤 と して,妊 婦 に対 応 してい た 。 (1)<妊 婦 に確 か さを与 え る対応>ケ ー ス13は 「<出血 が>よ っぽ ど茶 色 っぽ い とか そ ん なの だ っ た ら,今 は 大 丈 夫 って い い ます ね 」 と話 して い る 。 これ は,妊 婦 に 今の 状 況 が どの よ うに 判 断で き る のか を示 して い る。 ケー ス18は 出 血 に つ いて 「流 産が 進 ん じゃ うか も しれ な い って い う場 合は,と りあ えず安 静 に して,量 が増 えた りす れ ば教 えて ね って 」 と話 して い る。 これ は流 産 が 進 行す るか も しれ な い とい う看 護 者 の判 断 そ の もの は伝 えて いな い が,妊 婦 にで き る こ とを伝 えて い る。 この よ うに看 護者 は 専門 的 な 立 場 か らの 判 断 や,知 識, 指導 的 な こ と を伝 えて,妊 婦 を安 心 させ よ うと し た り,今 の状 況 に 関す る正 しい理 解 を妊 婦 に求め るた め,こ の よ うに対 応 して いた 。 (2)<妊 婦 に 添 お う とす る対 応>ケ ー ス5は 検 査 につ い て,結 果 が 良 い と きに は 「良か ったね,ま た 少 し頑 張 って 安静 だね 」 と一緒 に喜 び 、妊 婦 が 不安 そ うな時 には 「 『うー ん 』って 言 うしかな い よね。 見 守 る しか な い 」 と話 して い る 。 ケー ス17 は 「今 ど うな るか 分 か らな い 時 期 だ か ら,自 分の 気 持 ちが 落 ち着 い て … プ ラス と して受 け 止め ら れ るよ うに … 命の こ とを考 えて こ うい う機 会 を 与 え られ た こ とを大 切 に して 過 ご して もらい た い な って 」と話 してい る 。 これ らの よ うに看 護 者は 妊 婦 とと もに,妊 婦 を支 えな が ら不 確 か な時 期 を 共 有 しよ うと した り,妊 娠 継 続か 否 か の 結果 に と らわ れ ず,意 味 が見 いだ せ る よ う対 応 して いた 。 (3)<方 向性 の定 ま らな い対 応>ケ ー ス15は 妊 婦 に保 証 を求 め られ た時 に 「希 望 を持 た せ た い,あ きら め て ほ しくな い 部分 もあ る し頑張 って ほ しい
とも思 う し,で も必 ず し もそ うな る とも限 らない し。で もそれ を言っ た らこ の人は シ ョックだ ろ う し。そ うや っ てた ら何 もい えな くな っち ゃ うので 」 と話 してい る。 これは 看 護 者 に よ りどこ ろ とな る ものが な く,切 迫 流 産の 転 帰 が どの よ うにな るの か,結 果 その ものに 左右 され,妊 婦 の 置 かれ て い る今の状況 で 妊 婦 に どの よ うに 添 え るの か が見 い だせ ていな い。 (4)<妊 婦 に深く 入 り込 ま ない 対応> ケース12,13は ラウ ン ドの 時 に 出血 や腹 痛 な どお 決 ま りの こ とを聞 き,観 察 す る こ と を話 して いた 。 また ケース12は 「症状 が あ る とか,ハ ー トビー ト 見えな い とか,そ うい う人 に こっ ち もお そ るお そ る聴い て ます ね。 何 がで き るわ けで もな い し… 『安静 に して 今は 様 子見 る しか な いで す ね 』 って さ一つ と戻 って くる 」と話 して い る 。 これ らの よ うに,看 護 者 は 決 ま りご と が よ り どころ とな り, 妊婦 に対 して 個 別的 な かか わ りが ない,表 面 的な 対応 を して い た 。 IV.考 察 切 迫流 産妊 婦 との か か わ りにお い て,看 護者 は 《看 護者 に とっての 不 確 か さ》 を体 験 して い るこ とが 明ら か にな った。 そ の 不確 か さの 中で 看護 者 は知 識,判 断 力,技,経 験,看 護 に対す る姿勢 に 関 した よ り どこ ろを持 つ こ とに よ り,妊 婦 に対 応 して いた 。 この 《看 護 者 の よ りど ころ とな る もの 》 をどれだ け もち得 るか,ど の よ うな よ りど ころ を 重視 して かか わ るか に よ って,対 応 が 限 られ た も の とな った り,多 くの 状 況 に 応 じて 柔 軟 に対 応で きて い る場合 が あ る こ とが 分 か った。 つ ま り,妊 婦の おかれ た 状 況 を統 合 的 に と らえ られ る よ うな, よ りどころ とな る もの を もつ こ とが,看 護 者 に と って重 要 で あ る ことが 示 唆 され る。 この 《看 護 者 に とって の よ り どころ とな る もの 》 にあ る<妊 婦 を理解 し関 係 を作 ろ うとす る技>は, 妊 婦 との 日常 生 活援 助 に お け る相 互 作用 の 中 で妊 婦 の もつサ イ ンに気 づ く こ とや,タ イ ミング をの が さず,話 せ る場面 を作 り,気 持 ち を明 らか に し て い く とい う特 徴 を も って い た。 臨 床で は,多 く の 施設 で看 護 目標 と して 「切 迫流 産 の不 安 の訴 え を聞 く,表 出 」 とい う項 目 を挙 げ て い る4)も の の, 看 護 者 の傾 聴 技 術の 不 足 や 時 間の 不 足の ため に, 妊婦 の 気 持 ちは 受 け止 めら れ て い ない とい う問 題 が あ る5)。 しか し,た だ 単 に傾 聴 技術 や カ ウ ン セ リ ング技 術だ け で な く,看 護 者 と して<妊 婦 を 理 解 し関係 を作 ろ う とす る技>を 磨 いて い くこ と も 必 要 な こ とでは な い だろ うか。 また 《妊 婦へ の 対 応 》に あ る<妊 婦 に添 お う と す る対応>で は,妊 娠が 継 続す るか流 産 に 至 る か ど うか とい う不 確 か な状 況 を 妊婦 と共 有 し,そ の 状況 に対 して 妊婦 が 意味 づ け で き るよ うに 対 応 す る とい う特 徴 が あ った 。臨 床 で あげ られ る看 護 目 標 と して 「妊 娠の 継 続 」や 「流産 へ の移 行 の 予 防 」 とい った こ とは あ る4)が,こ れは 切 迫流 産 の 結 果 に焦 点 が あた った 目標で あ る とい える 。 この 現 状 に対 して,<妊 婦 に添 お うとす る対 応>の 特 徴 か ら,妊 娠 が継 続す るか流 産 に 至 るか ど うか とい う 不 確か な 状況 に 対 して 妊婦 な りに意 味 づ けが で き る とい う 目標 を上げ,対 応 して い く こ とが で き る と考 える 。 V.結 論 1.看護 者 は切 迫 流 産妊 婦 との か かわ りの 中で, 《看 護者 に とって の不 確 か さ 》 を体験 して いた 。 2.看 護者 は 不確 か さを体 験 しな がら も 《看護 者 の よ りどこ ろ とな る もの 》に 基づ い て,妊 婦 に対 応 しよ うと して いた 。 3.《 看護 者 の よ りどこ ろ とな る もの 》 に基 づ い て され る 《妊 婦 への 対 応 》に は,<妊 婦 に確 か さ を 与 え る対 応><妊 婦 に添 お うとす る対 応><方 向 の定 ま らな い 対応><妊 婦 に深 く入 り込 まない 対 応>が あ った 。 引 用文 献
1) Budner, S.; Intolerance of ambiguity as a personality
variable. Journal of Personality, 30, 29-50. (1962)
2) Mclntosh, J.; Processes of communication, information
seeking and control associated with cancer. Social Science and
Medicine, 8, 167-187.(1976)
3) Mishel, M. H.;The Measurement of Uncertainty in Illness.
Nursing Research, 30(5), 258-263. (1981) 4) 内藤直 子他; 切迫 流産妊 婦に 対す る心 理 ・社会的 ケア の検 討I-全国の 実態調 査か ら-日 本助産学 会誌, 8(2), 41-44, 1994. 5) 篠田恵 見他: 切迫 流産 妊婦に 対す る心 理 ・社会的 ケア の検 討2-看護 ケアの実 施状況 とそ の必要性 の認識-日 本助 産学会 誌, 9(2), 88 -91, 1996.