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大学生における援助要請スキルとレジリエンスがストレス反応に与える影響

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-89 474

-大学生における援助要請スキルとレジリエンスがストレス反応に与える影響

○山根 彩1)、境 泉洋2)、佐藤 健二3) 1 )徳島大学大学院総合科学教育部、 2 )宮崎大学教育学部、 3 )徳島大学大学院社会産業理工学研究部 【問題と目的】 悩みやストレスがある中でも適応的に過ごすために 重要な概念の一つに,レジリエンスがある。レジリエ ンスは,「ストレッサーを経験しても心理的な健康状 態を維持する,或いは陥った不適応状態を一時的なも のとして乗り越え,健康状態へと回復していく力や過 程」(齊藤・岡安, 2011)と定義される。レジリエン スを導く個人内要因は,持って生まれた気質と関連が 強く後天的に身につけにくい「資質的レジリエンス要 因」と,後天的に身につけやすい「獲得的レジリエン ス要因」に分類される(平野, 2010)。 先行研究においてはレジリエンスとソーシャルスキ ルの関連が指摘されており,ソーシャルスキルの中で も特にレジリエンスとの関連が注目されているものに 援助要請スキルがある。Crowe, Averett, & Glass (2015)は,援助要請が個人のレジリエンスを促進さ せる可能性があることを示唆している。しかし,この 研究結果は質的研究によってもたらされた結果である ため,援助要請とレジリエンスとの関係について,更 なる検討が必要であると考えられる。 また,本研究では,レジリエンスと日常的に経験す るストレスとの関連についても検討を行う。レジリエ ンスとストレスに関する研究は日本においても行われ ているが,先行研究では受験や実習のようにストレッ サーの種類が限定されており,日常的に経験するスト レッサーとレジリエンスとの関連については,更なる 検討が必要であると考えられる。 また,援助要請スキルとストレス反応との関連につ いて検討した研究では,援助要請スキルの中でも,「適 切な言語的働きかけ」のスキルが高い者は,ストレス 反応が低くなることが明らかになっている(岩瀧・山 崎, 2007)。しかし,岩瀧他(2007)は対象者が中学 生であり,援助を要請する相手も教師に限定されてい る。大学生は悩みの相談相手として友人や家族を選択 す る こ と が 多 い と 報 告 さ れ て い る( 木 村・ 水 野, 2004)。従って,大学生の援助要請について検討する 際には友人や家族,教師等の多様な援助者を想定する 必要があると考えられる。 以上より本研究では,大学生を対象とし,援助要請 スキルとレジリエンス,日常的なストレスとの関連に ついて明らかにすることを目的とする。具体的には, 日常生活ストレッサーの経験により,援助要請スキル と二次元レジリエンスがストレス反応にどのような影 響を及ぼすのかについて検討を行う。 本研究は,レジリエンスの機能を促進する可能性の ある要因を明らかにし,ストレス過程におけるレジリ エンスの作用機序を検討することで,個人の適応やレ ジリエンスを高めるための介入方針の考案に寄与でき ると考えられ,臨床心理学的意義があると考えられ る。 【方法】 県内 A 大学に通う大学生214名を対象に質問紙調査 を行った。回答に不備のあったものを除いた196名 (男性58名,女性138名)を分析対象とした。平均年齢 は18.96歳(SD =0.80)であった。使用尺度は,フェ イスシート,二次元レジリエンス要因尺度(平野, 2010), 援 助 要 請 ス キ ル 尺 度( 本 田・ 新 井・ 石 隈, 2010),短縮版大学生用日常生活ストレッサー尺度 (嶋, 1999),大学生用ストレス自己評価尺度(尾関, 1993)であった。共分散構造分析によるパス解析を行 い,Figureに示すモデルを得た。適合度指標は,χ2 =2.307,GFI=.938,AGFI=.873,CFI=.944,RMSEA =.087であった。 【倫理的配慮】 調査への参加は任意であり,回答した内容や個人情 報は研究目的以外には使用せず全て統計的に処理され ること等を質問紙配布時に文書と口頭で説明した。質 問紙への回答をもって調査への同意が得られたものと みなした。 【結果と考察】 1 .援助要請スキルが二次元レジリエンスに及ぼす影 響 援助要請スキルが資質的・獲得的の両レジリエンス に正の影響を及ぼしていた(β=.51, p<.001, β =.47, p<.001)。従って,レジリエンスの機能を促 進する要因の一つとして,援助要請スキルを想定する ことができることが示唆された。 2 .援助要請スキルと資質的レジリエンス要因,獲得 的レジリエンス要因との関連 援助要請スキルが各レジリエンスに与える影響力の 大きさには,大きな差があるとは言えなかった(資質 的レジリエンス要因:β=.51, p<.001, 獲得的レジ リエンス要因:β=.47, p<.001)。従って援助要請ス キルと特定の要因との間に強い関連が見られるという よりは,両要因に同程度の影響を及ぼしているという 結果となった。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-89 475 -3 .日常生活ストレッサー,援助要請スキル,レジリ エンス,及びストレス反応の関係 日常生活ストレッサーから援助要請スキルへの負の 影響(β=-.31, p<.001),援助要請スキルから二 次元レジリエンスへの正の影響(資質的レジリエンス 要因:β=.51, p<.001, 獲得的レジリエンス要因:β =.47, p<.001),資質的レジリエンス要因からスト レス反応への負の影響(β=-.23, p<.01)が認め られた。よって,「個人がストレッサーを経験し,援 助要請スキルを発揮することによってレジリエンスが 促進され,ストレス反応の低下に寄与する」という一 連のモデルを検証することができたと言える。しか し,日常生活ストレッサーから二次元レジリエンスへ の直接のパスは有意ではなく,獲得的レジリエンス要 因からストレス反応へのパスも有意な値を示さな かった。この理由として,今回収集したデータにおい て,ストレッサー尺度とストレス反応尺度の得点が, 全体的に低かったことが原因の一つとなっていると考 えられる。また,今回使用したストレッサー尺度とス トレス反応尺度では「最近 1 週間」のストレス経験の 有無とその程度を尋ねたが,対象者における過去 1 週 間でのストレス経験率の差も,今回の結果に影響した と考えられる。 4 .日常生活ストレッサー,援助要請スキル,ストレ ス反応の関係 日常生活ストレッサーから援助要請スキルへの負の 影響は認められたが(β=-.31, p<.001),援助要 請スキルからストレス反応への影響は示されなかっ た。従って,援助要請スキルは,単独でストレス反応 低減に寄与するのではなく,レジリエンス等,他の要 因の機能を促進することによって間接的にストレス反 応を低減する働きがあるのではないかと考えられる。 【今後の課題】 レジリエンスは,一時点の横断調査では,陥った傷 つきやストレス状況からの立ち直りの過程を詳しく検 討することができない。そのため,今後はストレッ サーを経験した者に対し,レジリエンスを高めるよう な介入を実施し,その効果を検討するといった縦断調 査を行う必要がある。レジリエンスの獲得的要因に は,本研究において検討した援助要請スキル以外に も,ソーシャルスキルや感情調整等が含まれるとされ ており,これらはSSTによってスキルの向上が期待さ れる。SSTを始めとした認知行動療法による介入によ り,効果的なレジリエンスの向上が見込めると考えら れる。

参照

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