C A N C E R
19 (2010), p.53-55
シオマネキ類の採集方法について
伊 藤 はじめに シオマネキUca arcuata
とハクセンシオマネキι
lactea
は,干潟や河口域に生息しているスナ ガニ科のカニである (三宅, 1983). 両種は,分 布域が限られており,まとま った個体群が維持 されているのは有明海沿岸や徳島県吉野川河口 域,宮崎県本城川河口に限られている (和田ら, 1996) . 生息地となる干潟の減少に伴い,準絶滅 危│ 其種 (環境省, 2006) とされている. 著者は,北限域に当たる伊豆半島で両穫の調査 を行い,その中でカニの大きさを測定するために 採集を行 っている . 両種は活動時以外には巣穴内 で生活している. また警戒心の強いカニで活動中 も採集を試みると穴に入ってしまう. とはいえ巣 穴を掘り起こしての採集では,生息状況に影響を 与えることは容易に想像される. 特に個体数が少 ない場所においてその影響は大きいと思われる. そこで可能な限りカニに影響を与えないように, 採集道具を用いた採集を行 っている . この方法は 巣穴を堀 って生活する他のカニにも適用できると 思われるので,その採集方法を紹介する . 1 . 採集道具 観賞魚用の小さな手網の中央に穴を開けて,そ の穴の周りに針金で枠をつける. 次に手網の枠と 針金の枠を針金で繋げて 動かしたときに両枠が 同じように動くようにする (図1 ). 最後に手網 に2 - 3 m のひもを取り付ける . なお,穴の大き さは採集するカニの巣穴の大きさに合わせて開け ればよいMadoka
l'叩:Col
1ection method of
出e fiddler crabs
Uca arcuata
andU lactea
円
2 . 採集方法 採集方法は以下の通りの手順で行う (図2) . ①カニの巣穴を確認する (図2 - A). ②カニの巣穴に採集道具の穴が合うように,巣 穴の上に採集道具を置く( 図2 - B ). ③採集道具の中に巣穴の部分を除き生息場所の 砂( 泥) を敷く (図 2 - C). ④手綱のひもを伸ばして,離れた位置でカニが 巣穴から出てくるのを待つ (図2 - D ). ⑤ カニが巣穴から出てきたら ,採集道具のひも を引く (図2 - E , F ). ⑥ カニを採集し,ノギスで甲幅を測定する. ⑦測定した後,カニを巣穴に返す. 以上の方法で採集した場合,巣穴を壊すことは ほとんどない. また,活動が活発な時期には,採 集後5
- 10分で,カニが巣穴から出てきて摂餌行 動を行うこともあり,採集による大きな影響はな いと思われる. 採集に当たっての注意点は,以下の通り. ①シオマネキの場合,泥場に生息しているた め,ひもをヲ│ いたときに採集道具がスムーズ に引けないことがある. ②シオマネキの場合,巣穴出口にチムニーを形 成するため,チムニーの周りに一時的に泥を 盛って,採集道具を安定させる必要がある . ① シオマネキの場合,ハクセンシオマネキと比 ベサイズが大きく,動きが速いため,ひもを ヲ│ いた後に泥を敷いた採集道具の穴から抜け だし,採集道具の外に移動してしまうことが あるため,採集後速やかにカニを確保する必 要がある. ④両穫とも小さいカニの場合,採集道具の下に 入り込んで¥ 逃げ出す可能性がある. 複数の巣穴がある場合, 1 個体ずつ採集してい てはその度にカニが巣穴から出てくるのを待つ必54
シオマネキ類の採集方法について 図1 採集道具.A,表側;B,裏倶1]. 要 が あ る . そ こ で,巣 穴 が 複 数 あ る 場 合 に は採 集 道 具 を 複 数 用 意 し て , 同 時 に 巣 穴 の 上 に 設 置 す れ ば , 同 時 に 複 数 の カ ニ を 採 集 す る こ と も 司 能 で あ る. 著 者 の 経 験 で は , 同 時 に4個 体 採 集 で き た こ とがある . 稀 少 な カ ニ の 生 息状 況を継続的に観察していく た め に は , 可能 な 限 り生息場所,特 に 巣 穴 に 影 響 を与えない ことが必要で あ ろう 今 回 紹 介 し た 採 集 道 具 お よび採 集 方 法 は非常 に 簡 単 な も の で あ る ので是非試していただきたい. 文 献 環境省,2006. I : : l 本の絶滅のおそれのあ る野生生物ー レッドデータブ ック 7 クモ形類 Ijli'&類等 (環 境 省自然環境局野生生物課編). 財団法人(1然環境研究 センター,東京, p. 86 三宅貞祥, 1983.原色日本大型甲殻類図鑑 (II ) 保育杜, 大阪 277 pp. 和田忠次・西平守孝・風呂田利夫 ・野島 哲 ・LlI西良子・ 真 ・島村' f !.il" . 稲 田 宏, 1996 日本に おける干潟海岸とそこに生W W F ]apan Science R eport, 3・
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伊 藤 円
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図2 シオマネキ類の採集方法 A. ハクセンシオマネキの巣穴; B . 巣穴の上に道具を置く; C. 採集道具の中に