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DSpace at My University: 核軍縮に関する国際情勢(9) : イランおよび中東の核問題

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IPPNW大阪府支部だより

2006年6月30日 第9号

核軍縮に関する国際情勢(9)

イランおよび中東の核問題

大阪大学大学院国際公共政策研究科

教 授 黒 澤

現在イランの核疑惑が国際社会の大きな焦点とな っており、その成り行きが注目されている。イラン の核疑惑問題については、国連原子力機関(㎜A) が主として対応してきたが、英国、フランスおよび ドイツの欧州連合(EU)3国が実際にイラクと交 渉してきた。また問題は、国連安全保障理事会に移 され、国連憲章第7章の下における制裁の議論も出 てきている。このイランの核疑惑がどのような状況 で発生し、その後の国際社会の対応がどのようなも のであり、今後どのような推移が考えられるかを検 討する。

I 中東における核問題

イランの核疑惑が現在焦点となっているが、中東 における核問題は以前からきわめて複雑でかつ解決 が困難な問題であった。まずイスラエルは1950年 代から原子力の開発を開始し、1960年代半ばには 核兵器の製造を開始した。イスラエルは核不拡散条 約(N町)に加入せず、事実上の核兵器国として、 すでに200発程度の核兵器を保有していると考えら れている。 イスラエル自身は、「中東に核兵器を導入する最 初の国にはならない」と主張しつつ、核兵器の保有 を宣言することなく、保有を否定も肯定もしない 「あいまい政策」をとっている。また米国は、イス ラエルの核兵器について、ケネディ政権は厳しい態 度を示したが、ニクソン政権以来、それを黙認する 政策をとっている。ここでは、米国の「二重基準 (ダブル・スタンダード)」が明確に示されている。 この問題は、今日でも中東問題の解決の難しさを象 徴するものとなっている。 次にイラクに関しては、1991年の湾岸戦争の後 に国連安保理決議687により設置された国連イラク

特別委員会(UNSCOM)と国際原子力機関

(IAEA)の査察により、イラクがIAEAに申告する ことなくウラン濃縮およびプルトニウム抽出の計画 を保持していることが明らかになった。その後国連 によりそれらの計画の廃棄が進められた。 イラクが保有する大量破壊兵器が脅威であること を主要な理由として、米国および英国は2003年に イラクヘの攻撃を開始した。この戦争によりフセイ ン政権が崩壊したが、イラクの核兵器保有が脅威で あるという米国の主要な開戦理由は、その後の調査 により誤りであったことが判明し、イラクは1991 年以降、核兵器開発プログラムを保有していなかっ たことが明確になった。ここでは、国連による制裁 および核兵器廃棄作業が成功裏に実施されたことが 示されている。 第3に、リビアは、小規模な核兵器開発計画を保 持していたが、英米との交渉の後、2003年12月に その計画を放棄すること、IAEAの査察を受け入れ ることを米英両国との間で合意した。米国の保守派

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第9号2006年6月30日

IPPNW大阪府支部だより

(9) は、2003年3月に開始されたイラク戦争がリビアの 決断に決定的な影響を与えたと主張しているが、英 米との交渉はそれ以前から開始されており、またリ ビアは以前の国家テロに関する責任を認め、損害賠 償をするなど、イラク戦争のずっと前から正常な国 家への移行を進めていた。 中東の他のアラブ諸国でもしばしば核兵器開発の 疑惑が生じることがあった。イラクもリビアもイラ ンもNPT締約国であり、国際法的には、核兵器を 製造または保有しないことを約束していた。

I イランの核開発疑惑問題

イランは1974年に原発建設に着手しており、イ ラン革命で一時中断されたが、1992年以降、ロシ アの協力により原子炉の建設を進めていた。イラン の核疑惑が明らかになる以前の2002年!月に米国ブ ッシュ大統領は、イラクと北朝鮮とともに、イラン を「悪の枢軸」の一つであるとして非難していた。 イランの核開発が明るみに出たのは、2002年8月 に反体制派が、イランはナタンツなどで核施設の建 設を進めていると公表したことがきっかけである。 その後IAEAの査察の結果、輸入した核物質および その後の処理と利用、また核物質が貯蔵され処理さ れた施設が申告されていなかったことが判明し、さ らにウラン転換、ウラン濃縮、重水炉に関する疑惑 が判明した。 2003年10月21日の英国、フランスおよびドイツ の外務大臣との交渉で、イランは核計画と核活動は もっぱら平和目的であると主張し、IAEAに協力す ること、さらに、IAEA保障措置追加議定書に署名 し、批准に先立ち議定書に従ってIAEAに協力する こと、およびすべてのウラン濃縮と再処理活動を停 止することを自主的に決定したと述べた。西側3国 は、国際的な懸念が完全に解決されたならば、イラ ンはさまざまな分野において最新の技術および供給 によりたやすくアクセスできるようになると述べ た。同年12月18日にイランは1AEA保障措置協定の 追加議定書に署名し、発効以前にもその内容を暫定 適用することになった。 しかしその後イランが濃縮関連活動を再開したこ となどから、2004年9月に1AEA理事会は、イラン が停止決定を覆したことに重大な懸念を表明した。 英仏独(EU3)とイランの交渉の結果、同年!1月 15日に合意が達成され、イランは核兵器の取得を 求めないこと、批准まで自発的に追加議定書を履行 し続けることに合意し、すべての濃縮関連および再 処理活動を含む停止を継続することを自発的基盤で 決定した。停止が検証されたならば、貿易・協力協 定に関してEUとの交渉が再開されること、EU3/ EUは世界貿易機関(WTO)へのイラン加入交渉の 開始を積極的に支持することを約束した。 2005年8月に保守強硬派のアフマディネジャット 氏が大統領に選出され、イランは濃縮の前段階であ るウラン転換作業を開始したため、同年9月24日に は、イラン核問題の国連安保理への将来の付託を警 告するIAEA決議が採択された。その後欧州3カ国 との協議が再開され、またロシアとの交渉において ウラン濃縮をロシアに委託する提案も議論された が、イランは自国における核燃料サイクルの構築に 拘泥し、ロシア提案を拒否した。 2006年1月10日にイランは核研究施設の封印を解 除し、ウラン濃縮を再開した。IAEA理事会は2月 4日に決議を採択し、イランに対し、すべての濃縮 関連および再処理活動の完全かつ継続的な停止を再 構築すること、研究用重水炉の建設を再考すること、 追加議定書を批准し完全に履行することなどを要請 し、事務局長に対し、これらの措置が理事会により イランに対して要求されていることを国連安保理に 報告することを要請した。安保理での審議開始前に 提出されたIAEA事務局長報告は、「lAEAは核物質 が核兵器その他の核爆発装置に転用されたことは確 認していないが、今の時点においてイランにおいて 申告されていない核物質または活動がないと結論す ることはできない」と述べている。 その後この問題は国連安保理で審議され、2006 年3月29日に安保理は議長声明を採択し、イランに 対して濃縮関連と再処理に関する活動の全面的停止 を要請し、IAEA事務局長に対し30日以内に報告す るよう要請した。これに反発したイランは、4月11 日に、大統領が濃縮ウランの製造に成功し、核技術 保有国の一員となったと発表した。4月28日に提出 された事務局長報告は、イランがウラン濃縮を継続

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IPPNW大阪府支部だより

2006年6月30日 第9号

していること、イランで未申告の核物質や活動が存在 しないと保証することはできないことを明記していた。 5月3日には、英仏が安保理決議の原案を提示し た。これはイランの核計画が国際の平和と安全に対 する脅威であるとし、国連憲章第7章の下で行動し、 イランに対し濃縮関連と再処理に関する活動と重水 炉の建設の全面的禁止を求めるものであり、この決 議の遵守に必要な追加的措置を検討するとして、制 裁の可能性を示すものであった。しかし、ロシアと 中国はイラン制裁や軍事行動への可能性を危倶し反 対したため、この決議は採択されていない。 さらに5月15日に、E U理事会は、イランが濃縮 を停止すればその見返りとして、軽水炉技術の提供 や政治、経済面での協力などを含む英仏独の大胆な 見返り提案に支持を表明した。しかし、イランは、 17日原子力平和利用はN町締約国の当然の権利で あり、濃縮の停止を要求する見返り提案は受け入れ られないと拒否した。 このような停滞を打破する目的で、米国は5月31 日に、イランとの交渉に参加し直接対話する意思を 表明したが、それは、イランが濃縮活動を停止する ことを条件としており、イランはそれを拒否してい るため、今後の推移が注目される。

m 原子力平和利用の権利と核兵器開発

この問題の中心は、ウラン濃縮やプルトニウム抽 出に関して、イランは一貫してこれらはもっぱら平 和利用のためであり、それはNTP第4条で認められ ている奪い得ない権利であると主張しているのに対 し、米国を初めとする西側諸国は、イランの活動は 将来の核兵器開発を目指したものであると解釈して いるところにある。それは、イランがそれらの活動 をIAEAに申告せずに20年近くも秘密裏に実施して きたからである。 NPTは、非核兵器国が核兵器のオプションを放 棄する対価として、非核兵器国に原子力平和利用の 権利を認め、核軍縮に向けた交渉を核兵器国に義務 づけている。イランの現状は、N円r第2条で禁止さ れている核兵器の製造または取得には至っていない が、第3条の下で締結された保障措置協定の違反を 構成している。イランによる追加議定書の履行は、 法的義務ではなく、自主的なものであった。しかも 2006年2月以降は履行していない。 米国など西側諸国が恐れているシナリオは、北朝 鮮が実際に行ったように、NPTの当事国として原 子力平和利用で各国の協力を得て、濃縮や再処理な どの高度の技術を取得した後にNPTから脱退し、 核兵器の製造へと向かうことである。軍縮関連条約か らの脱退は一般に容易であり、NPTの場合も主権の行 使として条約から脱退する権利カ溜められている。 これに関して、2005年のN町再検討会議において は、脱退の条件を厳格化すること、脱退が宣言され たら直ちに国連安保理で審議すること、脱退以前の 平和利用計画への援助に関しては返還する義務があ ること、または脱退後も保障措置が継続されること など、さまざまな提案が議論された。 米国を中心に欧米諸国は軍事措置をも視野に入れ た強硬な手段をとることにより、イランの活動を停 止させようと試みている。他方、ロシアと中国は石 油などエネルギー問題の関連もあるが、基本的には 制裁には反対であり、外交交渉で解決すべきである と主張している。

1V 中東の核問題の将来

イランの核問題が、外交交渉により平和裏に解決 されることが期待されるが、その場合にはイランに 対してどのような条件でアメを提供し、イランから の譲歩を引き出すかが問題になるだろう。この問題 を政治的圧力のみによって早期に解決するのは不可 能であろう。イランが協力しない場合、今後、資産 凍結や政府高官の渡航禁止など部分的な制裁の導入 が安保理で検討されることになるだろうが、さらに 進んで全面的な経済制裁に進むかどうかについては 可能性は極めて低いと考えられる。中国とロシアの 賛成を得るのが極めて困難であるし、イランの譲歩 を引き出すのに効果的なものになるかどうかなど不 確定要素が多くあるからである。さらに進んで軍事 的な措置が安保理によって決定される可能性につい ては、その実効性および国際社会による支持や各国 の参加の可能性からして大きな疑問が存在する。米 国を中心とする有志国家による武力行使も今の段階 では疑問視されている。

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第9号2006年6月30日

IPPNW大阪府支部だより

(11) イランの核の脅威に対しては軍事的に対応すべき だとする見解もあり、また大規模な経済的報奨を与 えることにより核兵器開発への進展を停止させ、違 反した場合には大規模な罰則を課すべきだとの見解 もあるが、イランの核問題を他の諸問題と切り離し て単独で解決できると考えることはできない。 「イランの核兵器開発に反対する国際行為体のす べてを動員するためには、米国は、イランの拡散問 題、ペルシャ湾の安全保障、中東での米国の役割、 イスラエルの核の地位、パレスチナ・イスラエル関 係がすべて関連しており、もっとバランスのとれた 米国の態度なしには解決されえないことを理解すべ きである」と主張されているし、「テヘランは威嚇 といいかげんな制裁の発動によりその予定コースの 推進を抑止されるとは考えられないし、軍事行動は 逆効果になるだけであろう。米国とその同盟国は、 イランの安全保障上の懸念に真面目に取り組み、実 質的な経済的動機を与えるような多国問の対話を提 案すべきである」と主張されている。したがって、 この問題の根本的な解決には中東問題全体を取り上 げ、その中で解決する方法しかないように思われる。 また長期的には、中東非核兵器地帯または中東非 大量破壊兵器地帯の設置なども視野に入れるべきで あろう。イラクの核およびリビアの核問題が消滅し た現在において、イランの核問題と並んで、最も重 要なのはイスラエルの核である。したがって、米国 を初めとする5大国とドイツを中心として、中東地 域のすべての国を含む中東和平のための全体的なプ ロセスが早期に開始されることは、困難に思われる が、長期的な問題解決には不可欠であり、6カ国を 中心に積極的に取り組むことが必要であろう。 平成18年4月15日(土)IPPNW日本支部理事会・総会(広島県医師会館)に各府県(広島、長崎、岐阜、 京都、大阪)から32名が参画。総会に先駆けて日本支部理事会が開かれ、日本支部総会への付議事項等に ついて協議がされた。大阪府支部から要望している「被爆二世(三世)の問題について」も意見交換され たが、結論がでないため今後も検討することになった。 理事会終了後、日本支部総会を開催。柳田実郎国際副評議員の司会進行のもと、碓井静照日本支部支部 長が「昨年広島で開催された第5回IPPNW北アジア地域会議の協力に対して謝辞が述べられるとともに、 本年ヘルシンキ(9月7日∼10日:フィンランド)で開催される第17回IPPNW世界大会の参加要請がされた。’ また、米国がイランに核攻撃をする報道にIPPNW本部から各国支部に米国大使館に対し抗議文の要請 があったが、ホワイトハウスも否定しているため経過をみて判断したい。」と挨拶。議事では、(第1号議 案:平成17年度事業報告の件、第2号議案:平成16年度収支決算書の件、第3号議案:平成16年度決算書 監査の件、第4号議案:平成17年

度収支中問報告の件、第5号議

案:役員人事の件、第6号議案: 平成18年度事業計画案の件、第7

号議案:平成18度収支予算案の

件)以上の議案全てが承認。次期 IPPNW日本支部支部長に引続き、 現支部長の碓井静照氏(広島県医 師会長)に決定した。

参照

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