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HOKUGA: 日本の大学生における異文化受容態度に対する犯罪被害リスク認知と異文化接触の関連性の検討

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著者

玉井, 航太; Tamai, Kota

引用

北海商科大学論集, 3(1): 27-45

(2)

日本の大学生における

異文化受容態度に対する犯罪被害リスク認知と異文化接触の関連性の検討

Examining the Relationship between Perceived Risk of Crime, Cross-Cultural Contacts and

Receptive Attitudes toward Different Cultures among Japanese University Students

玉井 航太

Tamai Kota

Abstract

本研究は,異文化受容態度に対する犯罪被害リスク認知と異文化接触,そしてそれらの 交互作用の関連性を検討するために,大学生を対象とする質問紙調査を実施し,186 名から 回答を得た。質問紙は,異文化受容態度,犯罪被害リスク認知,異文化接触の経験頻度, 個人の自尊心で構成されていた。異文化受容態度における 4 因子(拒否的態度,対外国人 緊張,一般的受容,個人的無関心)に対する犯罪被害リスク認知と異文化接触,そしてそ れらの交互作用の効果を検討するため階層的重回帰分析をおこなった。階層的重回帰分析 は,異文化受容態度の 4 因子それぞれに分けて行われた。その結果,拒否的態度と個人的 無関心において,犯罪被害リスク認知と異文化接触の経験頻度の交互作用が示され,ネガ ティブな異文化受容態度に対する犯罪被害リスク認知の促進効果とその効果に対する異文 化接触の緩和効果が示された。

To examine the effect of perceived risk of crime, cross-cultural contacts, and interaction between these variables on the receptive attitudes toward different cultures, this study employed a questionnaire method. A total of 186 university students completed a questionnaire consisting of questions on receptive attitudes toward different cultures, the perceived risk of crime, the frequency of experience of cross-cultural contacts and the one’s self-esteem. To investigate the effects of perceived risk of crime, cross-cultural contacts, and interaction between these variables on the four factors of receptive attitudes toward different cultures (attitudes of denial, tensions about foreigners, general receptive attitudes, and personal non-interest), a hierarchical regression analysis was carried out. This analysis was conducted for each of the four factors of receptive attitudes toward different cultures. The results showed an interaction effect between the perceived risk of crime and the

frequency of experience of cross-cultural contacts on the attitudes of denial and personal non-interest. Overall, the results of this study pointed to the facilitate effect of the perceived risk of crime on the negative attitudes toward different cultures, and the moderate effect of cross-cultural contacts on the facilitate effect of the perceived risk of crime.

Key words : 異文化受容態度,犯罪被害リスク認知,異文化接触

Receptive attitudes toward different cultures, Perceived risk of crime, Cross-cultural contacts

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1. 目的

1.1 はじめに 現代のグローバル化と呼ばれる流れの中においては,人や物,情報などの様々な事柄が 広い範囲で流動的になり,自国にいながらも他国の人間や文化と接する機会が多い。また, 同時に外国での居住などの異文化の中で生活することも身近になっている。例えば,教育 分野においても,1987 年の文部省臨時教育審議会の最終答申における国際化へ対応できる 国際理解教育に関する提案が提出され,90 年代からは多文化共生をキーワードとした方向 性が示されている。メディアでも海外ドラマが人気を持つようになり,音楽やファッショ ンの流行も海外からの影響は大きい。このように異文化が身近な存在となり,海外から日 本へ,日本から海外へと人の移動が顕著になるにしたがって,異文化は学際的な分野で扱 われるようになった。 文化という用語は,学問領域によって様々に定義されてきた。文化人類学においては, Tylor(1984)が文化を「知識,信仰,芸術,道徳,法律,慣習,そして社会の一構成員と して獲得される他の能力や習慣を含むその複合的全体」と定義している。また,Kluckhohn & Kelly(1945)が文化を「明示的かつ暗黙的、理性的かつ非理性的、あるいは無理性的な人 間生活のために歴史的に創造されたすべてのもの、すなわち人間の行動にとって常に潜在 的指針として存在するもの」と定義している。この定義は,文化を社会の成員によって共 有されている生活様式の体系と見なし,先行世代から後続世代へ,社会集団から社会集団 へと伝承されていく社会行動様式と捉えている。より近年では,Berry, Poortinga, Segall, & Dasen(1992)がある 1 つの集団に属している人たちが単に共有している生き方と定義して いる。この定義はより単純に文化を捉えているが,生き方には知識や習慣といった Tylor (1984)が含んだ領域が内包され,また,Kluckhohn & Kelly(1945)が述べた社会行動様式 をも指している。これら以外にも多くの文化の定義が存在し,それは学問領域と研究者の 数だけあると言える。本研究では,これまでの文化の定義を概観し,文化を「民族や国家 などの集団に共有された生き方としての社会行動様式」と操作的に定義する。このような 定義は,必ずしも文化の全体を示すものではないが,社会心理的な構成概念として,価値 観や態度,信念,行動といった心理的現象の集団内における共有という一側面を捉えてい ると考える。このように文化を定義した上で異文化を捉えるならば,「ある集団にとっての 自分たちとは異なる文化」ということになり,それは他人種や他国家,他集団といった自 らとは異なったものに表象されるものであると言える。 1.2 異文化に関する研究 異文化に関する心理学的研究では、異文化からの滞在者や来訪者,特にニューカマーと 呼ばれる世代の人々の適応状態やアイデンティティ形成に焦点が当てられることが多かっ た。例えば,ニューカマーの学生のアイデンティティ形成に関する研究として,中国帰国 者児童の研究(大久保, 2000)や日系ブラジル人児童の研究(関口, 2003)などがある。こ

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れらは児童を扱った研究であるが,大学生を対象とした研究では,在日中国人留学生の異 文化適応扱った柳・松田(2011)の研究などが挙げられる。また近年では,在日外国人看護 師や介護士候補生の制度を受けて,彼らの異文化適応を扱った研究(畠中・田中, 2012)が 行われ,子育てという観点における在日フィリピン人の母親の異文化適応過程の研究(歌 川・丹野, 2012)なども行われている。これらは海外から日本に来た者たちを対象にした研 究であるが,日本から海外に移った者の異文化適応を扱った研究もおこなわれている(e.g. 中原, 2011; 竹内, 2012)。これらのような異文化に対してどのように適応していくのかに焦 点を当てた研究は,今日の国際的な情勢の中において,非常に重要な意義を持つ。ただし, この場合の異文化適応とは江渕(1997)が「“ゲスト”(移民や在留民)の側における“ホス ト”(受け入れ国の支配的集団)の文化に対する自己調整過程」(p. 65-67)と定義したよう に,移動をする側が求められる変化である。 多くの先進国においては,安価な労働力として外国人労働者が受け入れられてきた。そ の一方で,移民と受け入れる側の住人との間で様々な摩擦が生じているのも事実である(e.g. 田村, 1993)。日本においても,例えば,1990 年の入管法改正による労働力としての日系ブ ラジル人の増加とその後の不況による彼らの経済的困難や地域社会との軋轢の問題のよう に異文化間問題は存在する(e.g. 池上, 2001)。法務省の統計によると日本における在留外国 人の数は年々増加し, 2007 年には 200 万人を超えた。2008 年をピークとして,その後は 減少の傾向があるが,それでも 2012 年末の段階で 200 万人を超えたままである。今後も日 本における外国人数は同様の水準で推移し続ける可能性は高く,看護師・介護士などの人 材不足の分野を補う形で外国人労働者が増えていく可能性も高い。このことが意味するこ とは,社会構造上の変化だけではなく,受け入れ側の集団の社会行動様式と移動側が持っ ている社会行動様式の衝突や葛藤の可能性である。このような現状の中,社会において起 こる可能性がある異文化間の衝突を避けるためにも,移動側の異文化適応だけでなく,ホ スト側にも変化が求められる。Bochner(1982)が異文化間接触をある程度の文化化をした 個人が他の文化集団の構成員と持つ相互作用と定義したように,異文化との関わりは移動 する側とホスト側の双方に影響を与えるものである。ホスト側としての日本においても, 異文化とより良い共生をするための異文化をどのように受容していくべきかという問題は 重要な課題の一つとして位置付けられる。 1.3 異文化受容態度 この異文化受容における個人の態度は異文化受容態度と呼ばれる。日本においては,向 井・金児(2006)は,自国へ入ってくる異文化や外国人に対する好意的で積極的な態度と 定義している。この定義は極めて単純なものではあるが,向井・金児(2006)は実際の行 動の予測のためにより多角的に異文化受容態度を捉えるべきであるという観点から,異文 化を受け入れる態度が一般論として肯定と個人的な関心を伴う肯定に分かれており,移動 する側にホスト側の文化への同化を求める態度が異文化を拒否する態度と同質であること を見出している。平野(2000)は,日本文化に受容される際に,異質なモノとしての異文

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化はそのまま受けいれられているわけではなく,日本文化自体に大きな影響を及ぼさない 形の受容であると指摘している。Greenberg, Solomon, & Pyszczynski(1997)は,異なる文化 的世界観と出会った人がとる行動において,相手への攻撃,相手を貶める,相手を同化さ せる,相手に合わせる(調節)という 4 種類があるとしており,平野(2000)は,日本に おける異文化受容が異文化を自らの文化に同化させる形であることを指摘していると言え る。それに対して,向井・金児(2006)は,自文化への同化を求める態度は異文化を拒否 する態度と同質であることを示した。つまり,向井・金児(2006)による異文化受容態度 とは,異文化の受容とは単純に好意的で積極的な態度であるのではなく,その異文化をそ のままの形で自身の文化に受け入れていくという形の受容への態度を指していると言える。 また,向井・金児(2006)は,実際に異文化受容行動が行われるためには,異文化への関 心や好意的な態度を持っているだけでは不十分であり,コミュニケーションに関する様々 な不安から緊張感や警戒心を強く感じることもあるため,外国人への緊張感や警戒心も態 度の一側面として測定することが必要であることを示している。そのため,向井・金児(2006) の異文化受容態度尺度は,拒否的態度,対外国人緊張・警戒心,一般的受容・調節,個人 的無関心の 4 因子構造からなり,それぞれの因子が異文化受容にとって重要な側面である ことが示されている。 渡部・金児(2004)は,異文化が混在し,国際化が進んだ環境においては,異文化との 接触も多く,その理解の機会も多いため,異文化受容態度が促進されると主張している。 異文化接触の効果は,日本における排外意識の研究の中で行われてきており,日本におい ても外国人との接触が排外意識を抑制する効果をもつことが確認されている(e.g. 田辺, 2001; Nukaga, 2006)。また, Allport(1954)が提唱した接触仮説では,4 つの条件である平 等性,共通の目的,社会的あるいは権威者の支援,協力関係が整えられ時,外集団との接 触が外集団への偏見を減少させるとしたものであるが,大槻(2006)の研究では顔をみる 程度の接触でも排外意識を抑制する効果があることが示されている。この接触仮説につい ては,その効果にバラつきがあるものの,一つの見解として,ステレオタイプや自文化中 心主義の低減,広い世界観の獲得などのポジティブな効果が支持されるものである(e.g. 加 藤・加藤, 1984; 星野, 1990)。 その一方で,向井・渡部(2006)は,単純に国際化が進むだけで異文化受容態度が促進 されるわけではなく,他の様々な要因の影響があることを指摘している。例えば,田辺(2002) では,教育年数が長い者ほど外国人への排他性が低い一方,年齢が高い者ほど排他性が高 いという関係性が見出されており,Bruegelmans & Van de Vijiver(2004)では教育水準の高 さと多文化主義的態度の関連性が見出されている。向井(2003)では,Greenberg, Solomon, & Pyszczynski(1997)による恐怖管理理論の観点から,安定した高い自尊心と死の恐怖の非 顕在化が異文化の受容にとって重要であることを示している。向井・渡部(2006)におい ても,異文化受容態度に対する自尊心の重要性が示されており,さらに日本においては生 育環境における都市化が異文化受容態度に影響していることを見出している。例えば,向

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井(2007)では,自尊心の低いものは定住外国人の増加に対して否定的であり,外国人が 近隣に住むことに対する抵抗感が高いことが示されている。向井(2003)や向井(2007) で得られた結果は恐怖管理理論の枠組みの中で得られたものではあるが,異文化のような 自文化の普遍性を侵害する可能性があるものとの接触に対して,個人の所属している社会 と深く結びついている自尊心が異文化に対する態度を左右するということは自然なものと して考えられる。 1.3 阻害要因としての犯罪被害リスク認知 本研究では,この異文化受容態度を促進する要因ではなく,阻害する要因の検討として 犯罪に対する認識に焦点を当てる。内閣府による治安に関する意識調査(2007)では,84.3% の回答者が日本の治安が悪くなった(「どちらかというと悪くなった」という回答を合わせ て)と回答しており,その理由として,来日外国人による犯罪が増えたからという回答を したものが 55.1%となっている。最も近年に行われた治安に関する特別意識調査(2012) では,日本の治安が悪くなった(「どちらかというと悪くなった」という回答を合わせて) と回答した者は 81.1%の微減を示し,来日外国人による犯罪が増えたからという回答は 28.2%と大きく低下している。これは近年の外国人犯罪の取り締まりの強化やその年ごとに インパクトが大きかった犯罪報道の種類によって影響を受けていると考えられる。しかし, それでも 28.2%もの回答者が犯罪被害と外国人を結び付けていることは,実際の犯罪状況 と外国人の関係性を正確に反映しているとは言えない。表 1 は警察庁による来日外国人犯 罪の検挙状況(2013)による刑法犯検挙数に対する来日外国人刑法犯検挙数の推移を示し たものである。この推移においては,暗数の存在が加味されているわけではないが,全体 の刑法犯検挙数に対して来日外国人刑法犯検挙件数の割合が低い水準であり,必ずしも多 くはないことが示されている。 犯罪統計に関しては,認知発生件数や暗数なども加味しなければ本当の意味での犯罪状 況をつかめるわけではなく,また外国人犯罪は海外への逃亡や検挙そのものが難しいなど の問題が存在するため暗数が多い傾向がある。よって,犯罪統計のみから外国人犯罪が多 い,少ないという議論は必ずしも適切ではない。しかしながら,市民の認識の側面から考 えるならば,総検挙数に対する来日外国人の検挙数の割合は小さいにも関わらず,治安の S63-H4 H5-9 H10-14 H15-19 H20-24 刑法犯検挙 件数 747,581 748,078 642,962 642,291 503,119 人員 317,106 301,620 324,423 381,082 317,582 件数 5,198 16,898 22,446 29,113 16,302 構成比 0.7% 2.3% 3.5% 4.5% 3.2% 人員 3,952 6,451 6,506 8,361 6,472 構成比 1.2% 2.1% 2.0% 2.2% 2.0% 来日外国人 刑法犯検挙 表1.警察庁統計による来日外国人検挙状況(2012末時点) http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kokusaisousa/kokusai/H24_rainichi.pdfより引用

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悪化に対して,「来日外国人の犯罪が増えたから」という回答の割合は高く,偏見の様相を 呈している。ここには,メディアの影響なども考えられ,同時に,普段から外国人の人々 に接していることが少ないことによる影響も考えられるが,犯罪などの諸問題を起こす可 能性が高い個人や集団は外国人であるという認識が日本社会に根強く存在していることを 示していると言える。 このような点から考えた場合,異文化受容態度に対して犯罪への認識はネガティブな効 果を持つように考えられる。犯罪への認識は,犯罪被害に対して生じる認知的・感情的・ 行動的反応として捉えられてきた(Lavrakas & Lewis, 1980)。そして,犯罪に対する認識は, 犯罪不安という用語の下での問題として多くの研究が行われてきたが,近年では,Ferraro (1995)による感情的側面と認知的側面を分けるべきであるという主張から感情的側面を 犯罪不安,認知的側面は犯罪被害リスク認知として分けて考えられている。犯罪不安は Ferraro(1995)と Ferraro & LaGrange(1987)による,犯罪や人間が犯罪に関連付けるシン ボルに対する恐れまたは不安といった感情的反応,として定義され,犯罪被害リスク認知 は,自身が将来どの程度の確率で犯罪にまきこまれるかの見積もりとして定義される(島 田, 2011)。本研究では,この犯罪被害リスク認知に焦点を当て,異文化受容態度への影響を 検討するものである。つまり,犯罪被害リスク認知が高い状態の者は,自身の安全のため に犯罪の原因について考えることが多く,犯罪と外国人を結び付けることにより,結果と して異文化や外国人に対して否定的な態度を持ち,異文化受容態度は低くなると考えられ る。 1.4 本研究の目的 本研究は,これまで述べてきたように異文化受容態度に対して犯罪被害リスク認知が影 響しているかを検討することを目的とし,また,犯罪被害リスク認知が偏見の様相を持ち ながら,異文化受容態度に影響しているかどうかを検討するために,異文化接触頻度との 交互作用を合わせて検討するものである。上述したように,異文化接触は異文化や外国人 に対するステレオタイプを低減するため,異文化接触が多くなれば,異文化受容態度は促 進されると考えられる。ここで,同時に犯罪被害リスク認知による異文化受容態度へのネ ガティブな影響が偏見の側面を持つならば,異文化接触によってそのネガティブな影響が 緩和されるという形で交互作用が見られると考えられる。本研究では,異文化受容態度を 測定するために向井・金児(2006)の異文化受容態度尺度を用い,より詳細な検討を行う ために異文化受容態度の因子を基準変数として個別に扱い検討する。また,向井・渡部(2006) が異文化受容態度に他の様々な要因の影響があることを指摘し,その中でも重要な変数と して指摘している自尊心と個人属性変数としての性別を統制変数として加えて分析するも のである。よって,本研究の分析的枠組みは,異文化受容態度の各因子をそれぞれ基準変 数とし,性別と自尊心を統制変数とした上で,犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度,犯 罪被害リスク認知と異文化接触頻度の交互作用を説明変数として階層的重回帰分析により 検討するものである。

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2. 方法

2.1 調査参加者と手続き 2012 年 5 月に東京都内にある二つの大学に匿名形式での質問紙を配布し,学生 186 名(男 性 58.1%,女性 41.9%)から回答を得た。回答者の平均年齢は 19.520(SD=1.045)であっ た。分析にあたり,使用した以下の変数において欠損値があった 8 つのデータを除き,178 名のデータを用いた。分析においては,Windows SPSS15 を使用した。 2.2 尺度の構成 本研究の質問紙において用いた尺度を以下に示した。本研究で用いた尺度は,それぞれ 先行研究ですでに検討がなされているものであり,その表現や評定法も先行研究と同様に なるようにした。ただし,異文化受容態度と異文化接触頻度においては,本研究の文脈上 の観点から,若干の変更を加えている。 異文化受容態度尺度:向井・金児(2006)の研究の本調査で用いられた尺度であり,拒否 的態度,対外国人緊張・警戒心,一般的受容・調節,個人的無関心の 4 因子からなる。拒 否的態度の因子は 7 項目から構成され,「外国の人の日本滞在についてはもっと厳しい法律 を取り締まりが必要だと思う」や「日本に住む外国の人には同じような生活スタイルを目 指してほしい」というような外国人や異文化をそのまま受け入れるということへの拒否的 な態度を示している。この因子には,「最近の日本の治安の悪化には在日外国人の増加が関 連していると思う」という項目が含まれており,本研究の目的においてこの項目を含めて 尺度得点を算出することは妥当ではないという判断から,分析ではこの項目を除外した。 対外国人緊張・警戒心の因子は,「外国人を前にするとつい身構えてしまう」・「日本人と 話すときに比べ,外国人とは緊張してうまく話すことができない」・「外国の人がたくさん 集まっているとなんとなく怖く感じる」という 3 項目から構成され,コミュニケーション 場面や外国人との接触における緊張的な苦手意識を示している。 一般的受容の因子は,「外国の文化がたくさん入ってきてこそ,日本の文化を発展させる ことができる」・「外国の文化を積極的に取り入れることは,日本にとって良いことであ る」・「もっと日本人はいろいろな部分で外国の人を受け入れていかなければならない」と いう 3 項目から構成され,異文化の取り入れが自国の利益につながるという認識を尋ねて いるものになっている。この意味では,個人的に受容するかどうかについての因子ではな く,自国が異文化を受容することが好ましいか否かという一般論としての態度を測定して いるものである。 個人的無関心の因子は,「特別に外国の文化に接する機会をつくろうとは思わない」・「わ ざわざ特別な努力をしてまで外国の人と交流したいとは思わない」・「他の民族の文化をも っとよく知りたい(反転項目)」・「異なる民族の友達がたくさんほしい(反転項目)」の 4 項目から構成され,異文化や外国人に対する交流への非関心的態度を測定している。この 因子は拒否的態度と弁別された形で見出されたように,拒否的態度とは区別されるものの

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向井・金児(2006)における因子間相関は.50 であり,近い概念であると言える。これらの 項目は向井・金児(2006)と同様に,全て「全くそう思わない~とてもそう思う」までの 5 件法で評定を求めた。 異文化接触尺度:向井・金児(2006)の研究で用いられた尺度であり,「はい・いいえ」形 式で回答する 7 つの質問項目(「インターネットで海外のサイトをよく見ている」・「外国人 の友人・知人がいる」・「海外のドラマや映画をよく見ている」・「外国に住んだことがある」・ 「海外の書物や雑誌をよく読んでいる」・「外国人のメール友達・ペンフレンドがいる」・「洋 楽やその他の外国音楽が好きである」)に「外国に旅行したことがある」という項目を含め た計 8 項目で構成される。分析にあたっては,向井・金児(2006)に倣い,8 つの質問項目 における「はい」の数を異文化接触得点とした。向井・金児(2006)においては,本調査 が大学生だけではなく,幅広い年齢層に対して行われたことから,カテゴリカル主成分分 析の結果において残った 9 項目から 2 項目を削除している。本研究では大学生を対象にし ており,近年では大学において外国旅行も珍しいものではないため,幅広く異文化接触の 頻度を尋ねるという観点から「外国に旅行したことがある」という項目を新たに付け加え た。よって,この尺度においては,その得点は 0 点から 8 点の範囲を取ることになる。 犯罪被害リスク認知:荒井・藤・吉田(2010)の研究で用いられた犯罪に対する反応尺度 から犯罪被害リスク認知を尋ねる 2 項目(「自分の周囲には犯罪が起きそうな危険な場所が 多い」と「自分もいつか犯罪にあいそうな気がする」)を用いた。評定は,荒井ら(2010) と同様に「全くそう思わない~非常にそう思う」までの 5 件法で求めた。 自尊心:Rosenberg(1965)による自尊心尺度の山本・松井・斉藤(1982)による邦訳版を 用いた。項目は,「少なくとも人並みには,価値のある人間である」・「色々な良い素質を持 っている」・「敗北者だと思うことがよくある(反転項目)」・「物事を人並みには,うまくや れる」・「自分には,自慢できるところがあまりない(反転項目)」・「自分に対して肯定的で ある」・「大体において,自分に満足している」・「もっと自分自身を尊敬できるようになり たい(反転項目)」・「自分は全くだめな人間だと思うことがある(反転項目)」・「何かにつ けて,自分は役に立たない人間だと思う(反転項目)」の 10 項目からなり,1 因子構造で構 成される。評定は「あてはまらない~あてはまる」までの 5 件法で求めた。 個人属性:性別,年齢,犯罪被害経験などを尋ねている。

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3. 結果

3.1 尺度の記述統計量 まず,それぞれの変数について,項目の平均値を尺度得点として算出し,その平均値, 標準偏差,クロンバックの信頼性係数は表 2 に示した。また,異文化接触頻度は,項目平 均ではなく,8 つの質問項目における「はい」の数を異文化接触得点とした。それぞれの変 数において,信頼性係数は高くはないが,一般的に許容できる範囲と言われている.60 以上 の値を示していた。 3.2 分析の枠組みと相関分析の結果 次に,異文化受容態度における各因子を基準変数とし,犯罪被害リスク認知と異文化接 触頻度の交互作用項を含めた重回帰分析を行うために,性別をダミーコード化(男を 1,女 を 0)し,説明変数である犯罪被害リスク認知,異文化接触頻度,自尊心において,得点か ら平均値を引いた偏差得点を算出した(中心化を行った)。そして,中心化された犯罪被害 リスク認知と異文化接触頻度の積を交互作用項として算出した。表 3 は中心化後の基準変 数と交互作用項を含めた説明変数間の相関係数を示しめしている。中心化した前と中心化 した後において,相関係数の値は変化しない。中心化を行った理由は,交互作用項と犯罪 被害リスク認知,異文化接触頻度の相関係数が抑えられるようにし,重回帰分析において 多重共線性が生じないようにするためである(Aiken & West, 1991)。

相関係数からは,犯罪被害リスク認知は拒否的態度にのみ有意な相関を示し(r =.227, p =000),その他の異文化受容態度の因子とは有意な相関を示していなかった。異文化接触頻 度は,拒否的態度(r =-.381, p =000),対外国人緊張(r =-.487, p =000),個人的無関心(r =-.413, p =000)と有意な相関を示し,一般的受容とは有意な相関を示していなかった。自尊心は, 対外国人緊張(r =-.248, p =001)と個人的無関心(r =-.168, p =025)と有意な相関を示し, 拒否的態度と一般的受容とは有意な相関を示していなかった。また,犯罪被害リスク認知 と異文化接触頻度の交互作用項は,個人的無関心にのみ 5%水準で有意な相関を示しており (r =-.148, p =048),拒否的態度や対外国人緊張,一般的受容とは有意な相関を示してはい なかった。 表2.分析に用いた変数の記述統計量及び信頼性係数 M SD α 拒否的態度 2.623 0.712 .749 対外国人緊張 3.288 0.930 .688 一般的受容 3.599 0.793 .618 個人的無関心 2.528 0.877 .724 犯罪被害リスク認知 3.289 0.797 異文化接触頻度 2.938 1.878 .658 自尊心 2.863 0.630 .759 note: α はクロンバック信頼性係数; 犯罪被害リスク認知は2項目のため,尺 度ではなく項目として扱った。

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3.3 階層的重回帰分析の結果 異文化受容態度における各因子に対して,中心化した説明変数と交互作用の効果を検討 するために,それぞれの因子ごとに強制投入法による階層的重回帰分析を行った。まず, ステップ 1 において,統制変数としての性別と自尊心を投入し,ステップ 2 において,犯 罪被害リスク認知と異文化接触頻度を投入した。そして,ステップ 3 において,犯罪被害 リスク認知と異文化接触頻度の交互作用項を投入した。表 4 は階層的重回帰分析の結果で ある。また,表 4 に示されているのは,SPSS による交互作用項の標準化偏回帰係数には問 題があるため(Cohen, Cohen, West, & Aiken, 2003),非標準化偏回帰係数の結果が示されて いる。 階層的重回帰分析の結果,犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度の交互作用は拒否的態 度(B = -0.058, BSE = 0.029, p = .049)と個人的無関心(B = -0.087, BSE = 0.036, p = .018)に おいて有意な偏回帰係数を示した。しかしながら,対外国人緊張と一般的受容においては, 犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度の交互作用の偏回帰係数は有意ではなかった。対外 国人緊張においては,自尊心(B = -0.217, BSE = 0.099, p = .029)と異文化接触頻度(B = -0.234, BSE = 0.033, p = .000)が有意な負の偏回帰係数を示していたが,一般的受容においてはどの 説明変数も有意な偏回帰係数を示すことはなかった。 1拒否的態度 .408***-.211** .374*** .128 .277***-.381***-.072 -.089 2対外国人緊張 .015 .350***-.041 .019 -.487***-.248***-.078 3一般的受容 -.363***-.159* -.045 .046 -.056 .117 4個人的無関心 .200** .076 -.413***-.168* -.148* 5性別 .103 -.107 .084 -.028 6犯罪被害リスク認知 .035 -.083 .119 7異文化接触頻度 .187* -.020 8自尊心 .016 9犯罪被害リスク認知×異文化接触 --note : n =178; *p <.05, **p <.01, ***p <.001 9 --表3.中心化後の変数間相関 1 2 3 4 5 6 7 8

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表4.異文化受容態度の各因子を基準変数とした階層的重回帰分析の結果

BSE BSE BSE

性別 0.194 0.108 0.080 0.098 0.071 0.097 自尊心 -0.095 0.085 0.022 0.078 0.028 0.077 犯罪被害リスク 0.256*** 0.060 0.271*** 0.060 異文化接触 -0.147*** 0.026 -0.149*** 0.026 交互作用項 -0.058* 0.029 .023 .209*** .017* .012 .215*** .228***

BSE BSE BSE

性別 -0.039 0.138 -0.154 0.124 -0.163 0.124 自尊心 -0.363** 0.109 -0.223* 0.099 -0.217* 0.099 犯罪被害リスク 0.036 0.077 0.050 0.077 異文化接触 -0.232*** 0.033 -0.234*** 0.033 交互作用項 -0.053 0.038 .062** .207*** .008 .051** .252*** .257***

BSE BSE BSE

性別 -0.249* 0.120 -0.234 0.122 -0.225 0.122 自尊心 -0.054 0.094 -0.069 0.097 -0.075 0.097 犯罪被害リスク -0.036 0.075 -0.051 0.076 異文化接触 0.018 0.033 0.020 0.032 交互作用項 0.059 0.037 .027 .003 .014 .016 .007 .016

BSE BSE BSE

性別 0.381** 0.129 0.286* 0.122 0.272* 0.120 自尊心 -0.259* 0.102 -0.147 0.097 -0.138 0.096 犯罪被害リスク 0.070 0.075 0.093 0.075 異文化接触 -0.177*** 0.032 -0.179*** 0.032 交互作用項 -0.087* 0.036 .074** .137*** .025* .064** .193*** .214*** AdjR2 △ R2 説明変数 note : n =178; *p <.05, **p <.01, ***p <.001 説明変数 B B B △ R2 AdjR2 B 個人的無関心

Step1 Step2 Step3

AdjR2

説明変数 △ R2

一般的受容

Step1 Step2 Step3

B B

説明変数 B B B

拒否的態度

対外国人緊張

Step1 Step2 Step3

△ R2 AdjR2 B B B Step2 Step3 Step1

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3.4 単純傾斜分析の結果

次に,拒否的態度と個人的無関心において,犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度の交 互作用が有意な偏回帰係数を示していたため,単純傾斜分析を Cohen & Cohen(1983)によ る方法によって行った。この際,異文化接触頻度を+1SD と-1SD の基準として扱い,それぞ れの各値における犯罪被害リスク認知の拒否的態度に対する単純傾斜と個人的無関心に対 する単純傾斜を性別と自尊心を統制した上で検討した。図 1 は異文化接触頻度の各値にお ける犯罪被害リスク認知の拒否的態度への回帰を図示したものである。 まず,拒否的態度においては,異文化接触頻度が-1SD の時に,犯罪被害リスク認知の偏 回帰係数が有意な正の値を示しており(B = 0.380, BSE = 0.087, p = .000),異文化接触頻度が +1SD の時にも,犯罪被害リスク認知の回帰は有意な正の値を示していた(B = 0.161, BSE = 0.076, p = .036)。この異文化接触頻度が-1SD の時と+1SD の時の犯罪被害リスク認知の拒否 的態度に対する偏回帰係数の差を z 値化して検定したところ,z =1.896 (p =.057)で 10%水準 の有意傾向が見られた。 個人的無関心においても同様の分析を行った。図 2 は異文化接触頻度の各値における犯 罪被害リスク認知の個人的無関心への回帰を図示したものである。個人的無関心において は,異文化接触頻度が-1SD の時に,犯罪被害リスク認知の偏回帰係数が有意な正の値を示 していたが(B = 0.256, BSE = 0.108, p = .018),一方で異文化接触頻度が+1SD の時には,犯 罪被害リスク認知の回帰は有意ではなかった(B = -070, BSE = 0.095, p = .461)。この異文化 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 被害リスク(-1SD) 被害リスクMean 被害リスク(+1SD) 拒 否 的 態 度 の 平 均 値 犯罪被害リスク認知 図1.異文化接触頻度の各値における犯罪被害リスク認知の拒否的態度への回帰 異文化接触(-1SD) 異文化接触Mean 異文化接触(+1SD)

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接触頻度が-1SD の時と+1SD の時の犯罪被害リスク認知の個人的無関心に対する偏回帰係 数の差を z 値化して検定したところ,z =1.293(p =.019)で有意ではなかった。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 被害リスク(-1SD) 被害リスクMean 被害リスク(+1SD) 個 人 的 無 関 心 の 平 均 値 犯罪被害リスク認知 図2.異文化接触頻度の各値における犯罪被害リスク認知の個人的無関心への回帰 異文化接触(-1SD) 異文化接触Mean 異文化接触(+1SD)

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4. 考察

本研究では,異文化受容態度に対する犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度,それらの 交互作用の効果を検討した。分析結果は,異文化受容態度における拒否的態度と個人的無 関心において犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度の交互作用が見られたが,対外国人緊 張と一般的受容においては,それらの交互作用は見られなかった。拒否的態度における単 純傾斜分析結果は,異文化接触頻度が高い時,平均的な時,低い時のどれにおいても犯罪 被害リスク認知の回帰は有意な正の値を示していたが,異文化接触頻度が低い時の犯罪被 害リスク認知の偏回帰係数が高い時の犯罪被害リスク認知の偏回帰係数よりも高い傾向を 示していた。これは有意傾向を積極的に評価するならば,犯罪被害リスク認知が高い者ほ ど異文化への拒否的な態度が高いという関係性を示すが,異文化接触頻度が高い時はその 傾向は抑えられ,逆に異文化接触頻度が低い時は犯罪被害リスク認知が異文化への拒否的 な態度をより高めてしまうと解釈できる。それに対して,個人的無関心においては,犯罪 被害リスク認知と異文化接触頻度の交互作用の効果はわかりやすい。異文化接触頻度が高 い時と低い時の犯罪被害リスク認知の個人的無関心への回帰の差は有意ではなかったが, 回帰係数自体を評価するならば,異文化接触頻度が平均的な時と高い時には犯罪被害リス ク認知は個人的無関心に対して影響を持たない一方で,異文化接触頻度が低い時には犯罪 被害リスク認知が個人的無関心を高めてしまうと解釈できる結果であった。 まず,これらの結果からは,犯罪被害リスク認知が拒否的態度と個人的無関心を高めて しまうというネガティブな影響を持っていると考えられる。しかし,結果において示され た犯罪被害リスク認知と異文化接触頻度の交互作用の在り方は,異文化接触頻度が高いこ とによって犯罪被害リスク認知に含まれる外国人による犯罪という偏見が小さなり,結果 として,犯罪被害リスク認知が拒否的態度と個人的無関心に与える影響は低くなると考え られるものであった。この点については,より詳細な検討が必要ではあるが,犯罪被害リ スク認知には外国人による犯罪ということへの認識が含まれており,この認識は偏見的な 質を持つということが示唆されるものである。 その一方で,対外国人緊張では,交互作用は見られず,異文化接触頻度と自尊心による 効果のみが見られた。つまり,異文化接触頻度が高い方が,低い方よりも外国人への緊張 が低く,また,自尊心が高い方が低い方よりも外国人への緊張が低いという結果であった。 さらに,一般的受容では,どの説明変数の効果も交互作用も見られなかった。ここにおい ては,対外国人緊張と一般的受容は必ずしも外国人に対するネガティブな態度ではないた め,犯罪被害リスク認知の効果は見られなかったと考えられる。つまり,対外国人緊張は 外国人へのネガティブな態度というよりもコミュニケーションの際の問題であり,犯罪被 害リスク認知が高くても低くても,緊張はしてしまうということである。そのため,異文 化接触頻度が高いと外国人との接触に慣れているためにコミュニケーション上での緊張が 低く,自身の自尊心が高い者は外国人に対して物怖じせずに接することができるため,や

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はりコミュニケーション上の緊張が低いという単純な在り様が見られたと考えられる。そ して,一般的受容における結果については,一般的受容が個人として外国人を受け入れる かどうかという問題よりも,日本の発展のために異文化を取り入れていくことがよいかど うかに言及するものであったことが背景にあると考えられる。つまり,異文化を日本のた めに取り入れていくことが良いことなのかどうかという問題は,個人の問題というよりも 社会全体の在り様についての判断になり,単純に異文化に接触した結果としての個人の考 えだけでは判断できない事柄であったことが,どの変数の効果も見られなかった理由とし て考えられる。 また,本研究では,向井(2003; 2007)が恐怖管理理論の枠組みの中で,異文化受容態度 にとって重要であると指摘した自尊心を分析における統制変数として組み入れたが,先に 述べたように,対外国人緊張においてのみ有意な偏回帰係数を示し,拒否的態度や一般的 受容,個人的無関心との関連は示されなかった。向井(2003; 2007)による研究では,死へ の恐怖を顕在化させるような実験操作を行ったり,自文化への脅威を感じさせるような実 験操作を行ったりしており,その恐怖管理理論の文脈において自尊心が関連性を示してい たと考えられるが,本研究ではそのような操作が行われていなかったため,自尊心の影響 が顕在化することなく,関連性が示されなかったと考えられる。また,本研究において用 いた Rosenberg(1965)による自尊心尺度は,個人の自尊心を測るものではあったが,社会 との繫がりによる自尊心という側面を測れていなかった可能性も考えられる。本研究にお いては先行研究において示された異文化受容態度における自尊心の重要性ということを支 持するものではなかったが,この点については,今後より厳密に自尊心と異文化受容の関 連性を整理して検討していく必要がある。 総合的に考えるならば,異文化受容態度における異文化や外国人に対してよりネガティ ブな側面に対して,犯罪被害リスク認知の効果が示されたことは,異文化の受容という課 題に対して,個人が犯罪被害にあう可能性を過度に見積もることのない社会を作ることが 重要であることを示唆するものである。また,本研究では,犯罪被害リスク認知による異 文化受容態度への影響が偏見的な様相を持つことも示唆されたが,このような影響の背景 には,マスメディアにおける報道の在り方や外国人犯罪自体のインパクトの大きさなどが 影響していると考えられる。先に述べたように,議論の余地はあるものの,犯罪などの諸 問題を起こす可能性が高い個人や集団は外国人であるという認識は,実際の犯罪被害の状 況とは乖離していると考えられるものである。このような乖離した認識が異文化受容を阻 害し,ひいては他国や外国人への差別・排斥につながる可能性がある以上,個人レベルで の異文化との接触による偏見やステレオタイプの払拭だけではなく,社会全体で自国の中 にある異文化や外国人をどのように見ていけばよいのかというコンセンサスを形成する必 要があるように思われる。 本研究においては,大学生を対象にした調査のため,異文化接触頻度もある程度あり, 異文化や外国人への態度そのものもネガティブな状態だけというわけではなかった可能性

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があり,より社会一般のレベルでの検討も必要になる。社会を構成するのは大学生の年代 の若者だけではなく,年少者や高齢者といった多くの年代層を含むものであり,それぞれ において価値観や異文化接触の経験などが異なるものである。本研究で示された結果が, 高齢者でも同様の結果になるかなど,一般化に向けて検討する課題は多い。 また,本研究では異文化接触の効果が示されたが,これは単純にどの程度接触したこと があるかを尋ねているだけの形でもあり,どのような異文化とどのような接触をどの程度 の期間したのかというより深い形での測定も必要になる。例えば,異文化接触頻度が高か ったとしても,それがネガティブな形での接触に出会った場合,犯罪被害リスク認知の拒 否的態度や個人的無関心への影響を抑える形でのあり方ではなく,むしろ相乗的に押し上 げる形になる可能性も考えられる。そのような点では,個人レベルの異文化とのより良い 接触や外国人との良い出会いが出来る機会を社会が提供することが求められるとも言える。 また,犯罪被害リスク認知においても,本調査では具体的,個別的な犯罪事象に言及する のではなく,一般的なレベルでのリスク認知を尋ねているため,今後はどのような外国人 による,どのような犯罪によるリスク認知なのかといった精査も必要になると思われる。 先に述べたように,マスメディアの報道が影響している可能性があり,これは特定の国家 の外国人に焦点を当てることも多い(例えば,中国人窃盗団である爆窃団やアラブ系外国 人によるドラッグの街頭での販売などはメディアでもたびたび特集されてきた)。そのよう な点では,本研究が測定したような個人の漠然とした犯罪に対するリスク認知よりも,特 定の国家の外国人による犯罪に対する犯罪被害リスク認知はより大きく偏見の形をもって 異文化受容態度に影響を与えることも考えられる。 本研究は,ホスト側の異文化受容の在り方についての研究はまだ少なく,社会システム の 1 つである安全・安心という観点からの検討も少ないという意識から,犯罪被害リスク 認知という市民の犯罪に対する認識と異文化受容の関係性を検討した。今後,異文化や外 国人の日本への移動は多く行われると予想されるものであり,それは社会システムとして の安全・安心に対しても大きな影響を与えると考えられる。日本社会において安全・安心 は極めて重要視されるものであり,それら維持構築しながらも,異文化や外国人を衝突な く受け入れ,受けいれた後に問題が起こらないようにすることが求められる。そのために も,移動側の変化や適応の問題だけではなく,ホスト側として異文化を受容するために何 が必要であり,どのような変化が求められるのかといったことを検討していく必要がある であろう。

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参照

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