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(1)

5

Cauchy

応力

歪は物体の変形を正確に計測すれば観測できるものである. また, 物体に外部か ら与える表面力や重力や遠心力など物体の位置で決まる体積力は観測できるが, こ れらの外力に対して物体が変形した結果, 物体内部に作用している力, 内力はいか なる手段でも観測することはできない. 丸棒の単純引張りなど均一な変形状態で あれば, 応力は材料力学では単位面積当たりの力 σ と説明されることが多い. その ため応力はスカラー量, あるいは力なのでベクトル量であるというイメージを持っ ている人も少なくないと思うが, 3 次元的な変形をしている場合はこれから説明す るように, 応力はスカラーでもベクトルでもなく, 「法線ベクトルと応力ベクトル を結びつけるテンソル」である.

5.1

変形した物体内部に作用する力

–Cauchy

応力テン

ソル

物体の表面に作用する力は大きく分けて、引張り圧縮などの垂直方向の力 (a) と 摩擦力に代表される水平方向の力 (b) がある。このどちらも外部から物体に作用 しているので、何らかの方法で観測できる。また、重力や遠心力は物体の内部に 作用するが、基本的に位置で定まるのでやはり観測できる。質点や剛体の力学で 取り扱う力はこれだけである。しかし、連続体解析学では物体が変形することを 考慮し、そのため物体が変形することにより生じる内部に作用する力を考慮する のだが、これは観測できない。 (a) (b) 図 5.1: 垂直力、せん断力

(2)

5.1. 変形した物体内部に作用する力–Cauchy 応力テンソル 39 内部に作用する力といわれても、イメージがわかないので、力 F で引張ってい るゴムひもを考えてみよう。これを真ん中で切断すれば元の長さに戻ってしまう が、もし切断面に切断前に作用していた力 Q を断面内での分布状態なども含めて 正確に再現して作用させることができたなら、たとえ切断したとしても変形は生 じないだろう。ここで重要なのは、与えるのはあくまで力であって、変位を与え るわけではないということである。つまり、この力が変形している物体の内部に 作用している力、すなわち変形により生じる力である。そして、Newton の作用反 作用の法則から、切断面のある点においてはお互いにまったく逆向きの力が作用 していることもわかる。 変形前 変形後 切断 F F −F −F Q −Q 図 5.2: ゴムひもの切断 そこで、物体内部に法線 n の仮想表面を考える。法線 n の平面で物体を切断 したと考えてもよいであろう。一般には断面内で力の方向と大きさは分布するで あろうから、仮想表面上にとった微小な面素 ds に作用する力が dfn であるとす る (図 5.1). dfn は n の関数なので厳密には df (n) と書くべきだが、記述が煩雑 になりすぎるので以後 dfnの形式で表す。このとき, 応力ベクトル tn は次のよう に定義される. tn = dfn ds (5.1)

(3)

現時刻 t l m n ds dfn 図 5.3: 法線と応力ベクトル 金属の丸棒の引張り実験の場合、応力は、単位面積あたりに作用する力と定義 し、断面内では力は分布しないと仮定して、変形後の細くなった断面積で与えて いる荷重を割ったものを真応力として求めている。上記の定義はこれを断面内で 力の大きさと方向が分布すると拡張したものと考えるとわかりやすいだろう。 ここで tn は n のとり方によって値が変わることに注意しよう。図のような x1 軸方向への単純引張りを考える。引張りと直交する x2− x3 平面で切断した場合法 線ベクトルは x1 軸の基底ベクトル e1、応力ベクトルは t1 = F /A である。これ に対して引張りの方向を含む平面、例えば x1− x2 平面で切断すれば、法線は x3 軸の基底ベクトル e3 で、t3 = 0 である。 x1 x2 x3 t1 = F /A t3 = 0 断面積 A F n n 図 5.4: 断面と応力ベクトル そこで、一般に n として基底ベクトル e1, e2, e3 をとったときの応力ベクトル を、それぞれ t1, t2, t3 とする。そして t1, t2, t3 を基底で分解したときの成分を Tij であらわす。 t1 = T11e1+ T12e2+ T13e3 (5.2) t2 = T21e1+ T22e2+ T23e3 (5.3) t3 = T31e1+ T32e2+ T33e3 (5.4)

(4)

5.2. Cauchy の 4 面体と Cauchy 応力の物理的意味 41 総和規約を使って表現すると ti = Tijej (5.5) この Tij の意味については後述するが、言葉の定義として、T11, T22, T33 を垂直応 力、 T12, T21, T23, T32, T31, T13 をせん断応力と呼ぶ。そして、テンソルとしての基 底 ei⊗ ej をつけた T = Tijei⊗ ej (5.6) を Cauchy 応力テンソルと呼ぶ。Cauchy 応力テンソルもテンソルなので座標変換 ができる。また後述する Cauchy の第 2 運動法則によって、対称テンソルである ことが証明でき、したがって、固有値はすべて実数である。この固有値のことを 主応力、対応した固有ベクトルのことを主応力方向と呼ぶ。

5.2

Cauchy

4

面体と

Cauchy

応力の物理的意味

このように求めた応力テンソルは、定義に座標系が使用されているので、ベク トルやテンソルは座標系に依存しない量という条件に反しているように思われる が、これから説明する Cauchy の公式 tn = TT · n (5.7) と同値である。すなわち式 (5.7) を応力の定義と考えたとき、ある基底で分解した T の成分は ti = Tijej (5.8) の関係式を満たすと考えたほうがすっきりする。今回は式 (5.8) を定義として、式 (5.7) を導いてみよう。 以下のような微小 4 面体 (Cauchy の 4 面体) が静止しているとしての力の釣り 合いを考える。面 ABC の重心の法線ベクトルを n として、応力ベクトルを tnする。厳密に言うと tnは三角形 ABC の内部で変化するが、微小なので一定値を とるとする。すなわち面積を Δs として、  ABC tndS = tnΔs (5.9)

であるとする。また、平面の法線ベクトルを−e1,−e2,−e3 として三角形 ABC の

重心を通るように切断した際に得られる応力ベクトルを−t1,−t2,−t3とする。や はり厳密に言うと異なるが微小なので、これらは三角形 OCB, OAC, OBA の重心

(5)

における応力ベクトルとみなすことができ、さらに三角形 OCB, OAC, OBA の面 積を Δs1, Δs2, Δs3とすると  OCB t1dS = t1Δs1,  OAC t2dS = t2Δs2,  OBA t3dS = t3Δs3 (5.10) x1 x2 x3 −t1 −t2 −t3 tn Δs Δs1 Δs2 Δs3 A B C O 密度を ρ, 体積を Δv, 物体の加速度 a, 作用している体積力を g とすると、Cauchy の 4 面体に作用する力のつりあいは以下のように表すことができる。 ρ(a− g)Δv = tnΔs− t1Δs1− t2Δs2− t3Δs3 (5.11) ただし、この式は上述のように微小な場合のみ成立する。厳密には、4 つの三角形 の内部でそれぞれ応力ベクトルも分布し、4 面体の内部では体積力や加速度が分 布する。全体を Δs で割ると、 Δv/Δs → 0 である。注 4.1 に示す計算により下 式を示すことができる。 Δsi/Δs = ni (5.12) 以上より、n = niei から tn = t1Δs1 Δs + t2 Δs2 Δs + t3 Δs3 Δs = tini = Tijejni = Tij(ej ⊗ ei)nkek = TT · n (5.13)

(6)

5.3. テンソル表示の応力 43 これを Cauchy の公式と呼ぶ。これは、TT が任意の n をその面に作用する応力 ベクトル tn に変換することを示している。これを Cauchy 応力の定義とする教科 書もある。 注 5.1 A, B, C のそれぞれの座標を{a, 0, 0}, {0, b, 0}, {0, 0, c} とする.また記述の簡略化のため−→CA = a,−−→CB = b とする.n は,a, b の外積を正規化して得られる.即ち, a × b = ⎧ ⎨ ⎩ a 0 −c ⎫ ⎬ ⎭× ⎧ ⎨ ⎩ 0 b −c ⎫ ⎬ ⎭= ⎧ ⎨ ⎩ bc ca ab ⎫ ⎬ ⎭, n = 1 b3c2+ c2a2+ a2b2 ⎧ ⎨ ⎩ bc ca ab ⎫ ⎬ ⎭ (5.14) 側面の面積は Δs1= 12bc, Δs2= 21ca, Δs3= 12ab 、また斜面の面積は Δs = 12|a × b| なので、 Δs = 1 2 ! b3c2+ c2a2+ a2b2 (5.15) これより, n1= ΔS1 ΔS, n2= ΔS2 ΔS, n3= ΔS3 ΔS (5.16) が得られる.なお、念のため、|n| は a, b を 2 辺とする平行四辺形の面積 ΔS になることを示して おこう。a, b のなす角を θ とすると、平行四辺形の底辺は|a| 高さは |b| sin θ なので

ΔS =|a| |b| sin θ = |a| |b|!1− cos2θ (5.17)

=|a| |b| " 1  a · b |a| |b| 2 =!|a|2|b|2− (a · b)2 (5.18) =!(a2+ c2)(b2+ c2)− c4=!a2b2+ c2a2+ b2c2 (5.19) 注 5.1 終 

5.3

テンソル表示の応力

一部の連続体力学の教科書(流体、固体とも)応力を以下のようにマトリック ス表示して応力テンソルと記述している場合がある。これと基底付きでテンソル 表記したときの差はどこにあるのか考えてみよう。 ⎡ ⎢ ⎣ T11 T12 T13 T21 T22 T23 T31 T32 T33 ⎤ ⎥ ⎦ (5.20) すべての定式化を通じて、空間固定の直交デカルト座標系しか使わない、と約束 すれば基底 ei⊗ ej は応力、ひずみ、また、それらの速度などすべてのテンソルで 共通なので、いちいち記述するのが面倒だから省略したと考えるのが妥当だと思 われる。

(7)

もし場合に応じていろいろ座標系を取り直したほうがよいと思ったら基底を含め て記述する必要がある。例えば主応力を ¯T1, ¯T2, ¯T3、固有ベクトルを ¯ei とすると、 ⎡ ⎢ ⎣ T11 T12 T13 T21 T22 T23 T31 T32 T33 ⎤ ⎥ ⎦ = ⎡ ⎢ ⎣ ¯ T1 0 0 0 T¯2 0 0 0 T¯3 ⎤ ⎥ ⎦ (5.21) という数式は、数学的に明らかに誤りであるが、基底をつけて書くと問題なく記 述できる Tijei⊗ ej = ¯Tie¯i⊗ ¯ei (5.22) = ¯T1e¯1⊗ ¯e1+ ¯T2e¯2⊗ ¯e2+ ¯T3e¯3⊗ ¯e3 (5.23) さらに応力や、ひずみをベクトル表示している教科書もある。 ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ T11 T22 T12 ⎫ ⎪ ⎬ ⎪ ⎭ ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ εx εy γxy ⎫ ⎪ ⎬ ⎪ ⎭= ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ ε11 ε22 12 ⎫ ⎪ ⎬ ⎪ ⎭ (5.24) これらはベクトル表示されているが、もちろん物理的な意味のある有向線分の ベクトルではない。特に x, εy, γxy} は工学ひずみと呼ばれていて、よく用いら れる。実際本書でも後述するように有限要素法の剛性方程式を導くときにはベク トル表示を用いている。これは本来はテンソルである応力やひずみを計算負荷を 低減できるようにベクトル表示したものである。もともとのテンソルの応力や歪 を理解した上でベクトル表示を使うのは便利であるが、知らずに使うと、物理的、 数学的な意味が全くわからなくなってしまうので、注意を要する。

5.4

主応力と、ミーゼス相当応力

これまで見てきたように、応力はテンソルで成分表示したら 9 成分もあり可視 化して「ここの応力が高い」などと評価するのは困難である。 そもそもコンター図(等高線図)で可視化しようと思ったら、スカラー量でな いと無理である。そこで登場するのがミーゼス相当応力である。 これは下式で定義されるスカラー量で、金属材料などが単軸で降伏する時の応 力を σy として、3次元的に変形している場合、ミーゼス相当応力が σy を超えた ら降伏する。という条件判定などに使うもの。 ¯ σ = 3 2σ  ijσij 1 2 (5.25)

(8)

5.4. 主応力と、ミーゼス相当応力 45 ここで、σij は偏差応力とよばれ σij = σij 1 3σkkδij (5.26) = σij 1 311+ σ22+ σ33)δij (5.27) したがって、構造物が塑性変形によって壊れるという場合は適切な指標といえ るが、亀裂進展によって破壊するときは、あまり適していない。その場合には、主 応力方向をベクトルで可視化するなどの方法が望ましい。

(9)

6

Cauchy

応力の剛体回転と座

標変換

Cauchy 応力はテンソルの座標変換に従うので、第 3 章で示した座標変換則に 基づき別の座標系での成分を求めることができる。まずは、単純引張、純粋せん 断、均等 2 軸引張応力場を例にとり、座標変換を用いて応力についての理解を深 めよう。次に座標変換則を用いると、与えられた応力場に対して、最大せん断応 力状態を求めることができる。 座標変換は、同じ応力状態に対して観測者が都合のよい座標軸を導入すること で観測している物体が回転しているわけではない。では、物体が回転したら応力 はどのように変化するのか、簡単な例を示そう。だが、実際にはここで述べるこ とが幾何学非線形性を考慮する上で非常に重要な役割を果たしている。

6.1

応力場の座標変換

2 次元の応力場の座標変換は、第 3 章で述べたように、座標変換前の基底ベク トルを e1, 変換後の基底ベクトルを ¯e1, これらがなす角を θ とすると以下のように 表される。 [ ¯T ] = [P ][T ][P ]T =  cos θ sin θ − sin θ cos θ   T11 T12 T21 T22   cos θ − sin θ sin θ cos θ  (6.1) ここで ¯T11 について詳しく計算すると、 ¯

T11 = T11cos2θ + T12cos θ sin θ + T21cos θ sin θ + T22sin2θ (6.2) = T111 2(cos 2θ + 1) + T22 1 2(1− cos 2θ) + T12sin 2θ (6.3) = 1 2(T11+ T22) + 1 2(T11− T22) cos 2θ + T12sin 2θ (6.4) ただし以下の関係式を用いている。 T12= T21, T¯12 = ¯T21 (6.5)

(10)

6.1. 応力場の座標変換 47 cos 2θ = cos2θ− sin2θ = 2 cos2θ− 1 = −2 sin θ + 1 (6.6) sin 2θ = 2 cos θ sin θ (6.7) 同様に ¯T12, ¯T22 についても以下のようになる。

¯

T12 =−T11cos θ sin θ− T21sin2θ + T12cos2θ + T22cos θ sin θ (6.8) =−T111 2sin 2θ + T12(cos 2θ− sin2θ) + T 2212sin 2θ (6.9) =1 2(T11− T22) sin 2θ + T12cos 2θ (6.10) ¯ T21= ¯T12 (6.11) ¯

T22= T11sin2θ− T21cos θ sin θ− T21cos θ sin θ + T22cos2θ (6.12) = 1 2(T11+ T22) 1 2(T11− T22) cos 2θ− T12sin 2θ (6.13) この関係は、Cauchy の 4 面体のように力のつりあいを考えることによっても導 くことができる。単純な例から示そう。ポイントは、ある応力場が与えられ、θ だ け座標変換したら単純引張状態になったとするところにある。 A B C このとき Cauchy の 4 面体と同じ考えに基づき三角形 ABC に働く力の釣り合 いを考えて見よう。まず AB で切断したとき、応力ベクトル tnは単純引張状態に あり、法線 n = ¯e1に平行であるとする。 tn= ¯T11¯e1 (6.14) BC で切断したときは、法線は −e1 応力ベクトル t−1 =−t1 は定義に従って −t1 =−(T11e1 + T12e2) (6.15)

(11)

同様に AC で切断したときは、法線は法線は −e2 応力ベクトル t−2 =−t2 は定

義に従って

−t2 =−(T21e1 + T22e2) (6.16)

次に力の釣り合いを考える。応力ベクトルは単位面積あたりの力なので、力の釣 り合いを考えるときは、作用している面積も考慮する必要がある。AB の長さを 1 とすると BC は sin θ, AC は cos θ なので、e1, e2 方向それぞれ、

¯

T11cos θ = T11cos θ + T21sin θ (6.17) ¯

T11sin θ = T12cos θ + T22sin θ (6.18) 式 (6.17) の両辺に cos θ, 式 (6.18) の両辺に sin θ をかけて加えると、

¯

T11 = T11cos2θ + T21cos θ sin θT12cos θ sin θ + T22sin2θ (6.19) となるので、座標変換した場合と一致することがわかる。

6.2

単純引張、純粋せん断、均等

2

軸引張

単純引張状態では、T22 = T12= T21= 0 なので、せん断応力は作用していない ようにも思えるが、座標変換すると、以下のようになる。 ¯ T11= 1 2T11(1 + cos 2θ) (6.20) ¯ T12=1 2T11sin 2θ (6.21) このせん断応力| ¯T12| は θ = ±45◦ で最大になる。 ¯ T11= 1 2T11, 1 2T11 (6.22) ¯ T12=1 2T11, 1 2T11 (6.23)

(12)

6.2. 単純引張、純粋せん断、均等 2 軸引張 49 T11 = 1 e1 e2 ¯ T11 = 0.5 ¯ T12= 0.5 ¯ T21 = 0.5 ¯ T22 = 0.5 ¯ e1 ¯ e2 純粋せん断状態は T11 = T22 = 0 で、今度は垂直応力が作用していないように 見えるが、やはり座標変換すると ¯ T11= T12sin 2θ (6.24) ¯ T12= T12cos 2θ (6.25) (6.26) θ =±45◦ を代入すると, 今度はせん断応力が 0 になる。 ¯ T11= T12,−T12 (6.27) ¯ T12= 0, 0 (6.28) 材料試験を行うとき、純粋せん断状態を作り出すのは難しいが、図のような応力 状態であれば何らかの工夫により実現できるだろう。 T12= 1 T21= 1 e1 e2

(13)

均等 2 軸引っ張り状態は T11 = T22 = T, T12 = 0 であるが、このような応力状 態は例えば風船の一部を想像すればわかりやすいだろう。このとき、任意の角度 で垂直応力のみ、つまりどのように座標変換してもせん断応力は生じない。また、 T < 0 ならば静水圧といわれる。 ¯ T11= T (6.29) ¯ T12= 0 (6.30) T11= T T22 = T e1 e2

6.3

最大せん断応力状態

純粋せん断の例から分かるように、ある方向の基底をとるとせん断応力は消え る。数学的には Cauchy 応力テンソルは対称テンソルなので、固有値がすべて実 数になるということで、さらに 2 次元問題の場合は、 T · φ = λφ (6.31) の固有値問題を解かなくても、式 (6.4), (6.10), (6.13) でせん断応力 = 0 とおけば θ が求まるということを意味している。 ¯ T12 = 0→ tan 2θ = 2T12 T11− T22 (T11 = T22) (6.32) また、このとき式 (6.4), (6.13) を θ で微分すると ∂ ¯T11 ∂θ = 2( 1 2(T11− T22) sin 2θ + T12cos 2θ) (6.33) = ¯T12= 0 (6.34)

(14)

6.3. 最大せん断応力状態 51 ∂ ¯T22 ∂θ = 2( 1 2(T11− T22) sin 2θ− T12cos 2θ) (6.35) =− ¯T12 = 0 (6.36) よって ¯T11, ¯T22 は、最大あるいは最小となる。さらに別の基底 ˜ei をとる。 T = Tijei⊗ ej = ¯Tije¯i⊗ ¯ej = ˜Tije˜i⊗ ˜ej (6.37) ¯ T12 = 0 なので ˜ T12 =1 2( ¯T11− ¯T22) sin 2φ + ¯T12 (6.38) は φ = 45◦ でせん断応力| ˜T12| は最大となる。これを改めて ˜T12 とおくと ˜ T12 =1 2( ¯T11− ¯T22) (6.39) このとき ˜T11, ˜T22 は cos 2φ = 0, ¯T12 = 0 より下式のようになる。 ˜ T11 = 1 2( ¯T11+ ¯T22) + 1 2( ¯T11− ¯T22) cos 2φ + ¯T12sin 2φ (6.40) = 1 2( ¯T11+ ¯T22) (6.41) ˜ T22 = 1 2( ¯T11+ ¯T22) 1 2( ¯T11− ¯T22) cos 2φ− ¯T12sin 2φ (6.42) = 1 2( ¯T11+ ¯T22) (6.43) この関係を図示すると下図のようになる。 e1 e2 ¯ e1 ¯ e2 ˜ e1 ˜ e2 θ φ 主応力状態 最大せん断応力状態

(15)

6.4

Cauchy

応力の剛体回転

最後にある与えられた応力場が剛体回転した結果得られる、新たな応力場につ いて考えてみよう。これまで取り扱ってきた座標変換は、あくまでひとつの応力 場を別の座標系で観測しただけのものであって応力場自体が回転したものではな い。これに対して例えば単純引張状態にある棒を θ 回転したとする。 θ 回転した棒の応力は 6.1 節の最後示したように ¯

T11 = T11cos2θ + T21cos θ sin θT12cos θ sin θ + T22sin2θ (6.44) であるが、座標変換で表すと [ ¯T ] = [P ][T ][P ]T (6.45)  ¯ T11 T¯12 ¯ T21 T¯22  =  cos θ sin θ − sin θ cos θ   T11 T12 T21 T22   cos θ − sin θ sin θ cos θ  (6.46) なので、 ¯Tij が与えられていると考えて、この逆対応 [T ] = [P ]T[ ¯T ][P ] (6.47)  T11 T12 T21 T22  =  cos θ − sin θ sin θ cos θ   ¯ T11 T¯12 ¯ T21 T¯22   cos θ sin θ − sin θ cos θ  (6.48) によって、ei の成分を求めることができる。この式は、応力場 ¯Tij−θ 回転し た座標系に座標変換したものとも考えられる。 以上をまとめると、与えられた応力場 Tij が θ 剛体回転して得られる新たな応 力場の成分は Tij−θ 回転した座標系に座標変換して得られる。

参照

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