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ローカルアイドルと地域活性化を考えるアンケート調査報告書

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Academic year: 2021

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ローカルアイドルと

地域活性化を考えるアンケート調査

報告書

2016 年

北九州市立大学法学部政策科学科

森裕亮ゼミナール

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【ローカルアイドルよ,永遠に,,,】 私たちは,地域活性化の新たな道として,「ローカルアイドル」に着目しまし た。ローカルアイドルとは,「ご当地アイドル」ともよばれ,いまやそれは全国 各地で見られる現象となっています。 これまで地域活性化のために様々な方策が講じられてきました。工場を誘致 したり,発電所を誘致したりするようないわゆる「外発型発展」の方法,そし て 1980 年代くらいから,地域の歴史や風土等の資源を活かした「内発的発展」 の方法が大きく用いられてきたのです。しかしながら,近年,映像「コンテン ツ」を活用した地域活性化が着目されています。地域内の諸資源と「コンテン ツ」を融合するという方法です。このコンテンツは,地域の外にある場合もあ れば,地域の中で新しく作られるものもあります。地域外にあるコンテンツに ついては,アニメやマンガや映画などの映像作品が典型的です。 その新しさはどこにあるかというと,地域内の資源と地域外の資源とのコラ ボレーションが生まれるという点です。最も顕著な面は,観光という要素です。 観光というのは,地域住民による地域住民のための地域活性化を超えて,地域 住民と地域外の人々とのコラボレーションによる地域活性化を試みる方法と言 えます。もちろん,観光で経済的に豊かになるというだけでなく,地域住民の 「鏡効果」も重要です。「鏡効果」とは,外から着目されている,多くの人々が 訪れる,という現象から人々が地域に誇りや自信を大きく感じるようになると いうことです。 こうした映像コンテンツに類する取り組みとして,各地でローカルアイドル が広がっています。『まっぷる ご当地アイドル』(昭文社,2015 年)といっ た専門的な書籍が刊行されるほどですが,この本で紹介されているだけでも, 約 100 組のアイドルが存在しています。こうしたローカルアイドルを通じて, そもそもローカルアイドルはどれくらいあるのか,地域活性化がどのくらい図 られているのか,地域との距離感はどうなっているのか。実は,そういった点 を明らかにした研究はありません。 私たちは,先行する研究がほとんどない中で,手探りで調査研究を始め,よ うやくアンケート調査を実施しました。本報告は,その結果の報告です。

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【ローカルアイドルとは】 ローカルアイドルは「東京などの大都市圏に集中して,歌やダンスなどの芸 能活動をするアイドルに対し,地方に本拠地を構え,地元を中心に活動する地 域限定アイドル」(橋本 2014)というものです。ただ,概ね,ローカルアイド ルという場合,地域振興とか地元の PR 活動としての意味合いが強い面があり ます(同上)。その意味では,AKB48 など,地域限定ではありますが基本的に 全国展開を枠組みとするメジャーグループは本調査のローカルアイドルの定義 からは除くことにします。 ローカルアイドルと一言で言っても,実は大きく分けて2つの種類に分ける ことができます。一つ目は,いわゆる地域の公的団体が結成するタイプです。 自治体,商工会議所,青年会議所,または商店街振興組合といった団体がロー カルアイドルを企画して運営するというものです。このタイプは,期間限定の ケースが割とあり,地域の PR をそもそも目的としています。もう一つは,芸 能事務所や民間ベースで結成するタイプです。このタイプは,まずもって地域 活性化が目的というわけではありませんが,メジャーデビューを見据えるケー ス,あるいはビジネスとしてアイドル要素に着眼したが,結果的に地域活性化 に貢献しているケースなどが当てはまります。何れにしても,地域限定という 面は変わりません。

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【調査の概要】 全国のローカルアイドルについて,関連書籍とインターネットのウェブサイ トの情報を頼りに,2015 年 2 月から 11 月まで,アイドル団体のリストを作 成しました。そのうち,連絡先がわかるものに限定して,メールアドレスと郵 送でアンケート調査票を配布しました。時期は 2015 年の 12 月から 1 月にか けて行いました。中には,連絡先が途中で判明したケースもありましたので追 加的に調査を実施しました。 調査の対象としたのは,アイドルを運営する団体です。先に見たとおり,芸 能プロダクションなど民間企業,商工会,商店街など様々な団体が対象となり ました。 概ね 100 団体にメールとお手紙を送付しましたが,今回,回答が得られたの は 26 団体でした。ウェブがあっても連絡先が不明というケースも多く,調査 は難航しました。一度,調査対象となった団体には返送確認をしました。調査 では,複数のアイドルを運営する団体が対象に入っており,実際 2 団体から複 数の回答がありましたが,回答件数が少なかったために,全て結果に加えるこ ととしました(2 アイドル分)。

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まず,一つ一つ情報を調べてみたら・・・ ローカルアイドルをどう定義するかが重要ですが,いわゆる全国型ではなく, 都道府県エリアまでの地域レベルを前提に活動するアイドルをローカルアイド ルだとすると,約 300 組は少なくともあるようです(解散したもの,団体名だ けが把握できたものもできるかぎり含めました。アンケートに回答いただいた 団体様から実際は 700 組ほど存在しているというデータをいただきまし た)!!情報収集しきれていないアイドルはまだある可能性があります。現時 点での情報をもとに,都道府県別の分布を見ると,グラフの通りです。全ての 都道府県でアイドルはいる(いた)のですが,とにかく顕著なのは,北海道, 東京都,愛知県,大阪府と福岡県の 5 都道府県に集中していることです。 いわゆるローカルアイドルとして地域活性化と積極的な結びつきがあるアイ ドルがどれくらいあるかは分かりませんが,アメリカの社会学者クロード・フ ィッシャーは「下位文化(サブカルチャー)」は都市で生まれると論じましたが, アイドルがいわゆるサブカルチャーだとすれば,大都市を含む都道府県が上位 にくるというのは当然の結果かもしれません。また,これらの都道府県は昔か ら歌手やアイドルを多数輩出してきた地域でもあります。そうした文化がもと もと根強いのかもしれません。ただ,地域活性化の手段という意味では,上記 5都道府県意外の地域ではあまり用いられていないというのが実情のようです。 27 2 1 7 1 2 7 5 4 6 6 9 28 13 8 3 2 2 5 8 3 6 20 3 3 4 39 5 1 2 3 1 4 5 1 3 2 2 3 34 3 3 2 4 4 4 5 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 北 海 道 青 森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 島 茨 城 栃 木 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神 奈 川 新 潟 富 山 石 川 福 井 山 梨 長 野 岐 阜 静 岡 愛 知 三 重 滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫 奈 良 和 歌 山 鳥 取 島 根 岡 山 広 島 山 口 徳 島 香 川 愛 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿 児 島 沖 縄

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1.活動期間について (期間の限定の有無) 図1 活動期間の限定(%) 活動期間が限定されているか,無期限の活動かはどうでしょうか。無期限(活 動期間なし)の回答が圧倒的に多かったです(92.2%)。もしかすると,期限付 きのアイドルよりも,無期限に活動するアイドルの方が回答動機があったかも しれません。 図2 設立年(%) 設立された年は,回答アイドルの中では 2013 年が最も多いようです。ロー カルアイドルは最近広がっている取り組みと言えるでしょう。 92.3 7.7 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 活動期間なし 活動期間あり 3.8 11.5 30.8 19.2 15.4 7.7 3.8 3.8 3.8 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2006年 2003年 2001年

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2.専用の劇場,ライブハウスの有無 図3 劇場,ライブハウスの有無(%) 専用の劇場,ライブハウスは,あるアイドルとないアイドルで二つに分かれ ました。全体としては,専用劇場などを有さないアイドルの方が多いという結 果です。ローカルアイドルの場合は,地元のイベントのステージなどに出演す ることが多く,専用の劇場,ライブハウスまでは必要がないこともあるでしょ う。ただ,専用施設は,ファンがいつも集える場所となります。例えば,カフ ェや居酒屋にライブ施設を備える事例もありますが,ファンたちのコミュニテ ィがそこでできることで,アイドルの活動が広がる可能性が高まります。 (専用劇場,ライブハウスの状況) 専用施設がある場合,それを新設したか既存の施設を活用したかを訊ねまし たが,すべてのアイドルが既存施設の活用ということでした。 56.0 44.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 なし あり

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3.メンバー数と曲数 図4 メンバーの増減(%) (メンバー数) メンバー数は,創設当時から減る傾向があるようです。実際,聞き取りをし た際,2期以降のメンバーを募集したところ定員がなかなか埋まらなかったと いうケースがありました。定期的にメンバーを募集するという仕組みの場合, アイドルの知名度やブランドをどう維持するかが課題でしょう。もちろん,途 中でメンバーそのものの数を減らしたというケースもここには含まれると思わ れます。 メンバー数は,最大で 20 名,平均で 7.2 名です。いわゆるアイドルという のは,ソロ型アイドルよりむしろ,AKB48 型のチームアイドルが主流です。 ローカルアイドルも,舞台に出演する以上,基本的にはオリジナルの持ち曲 を持っていることが多いです。曲数は,最もたくさんあるアイドルで 60 曲に 上ります。平均では 14.1 曲であり,持ち曲はかなり多い方でしょう。主とし てインディーズレーベルですが,CD や DVD を製作し販売しているアイドルも 少なくないのです。 57.1 42.9 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 減った 増えた

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4.アイドル活動の内容 図5 活動内容(%) ローカルアイドルの活動内容を見てみましょう。イベントや祭りのステージ に出演するとか,ライブの公演はメインの活動です。マスコミへの出演も多い ことも特長です。地元の番組でお店を紹介したり,地元ワイドショーのレギュ ラーメンバーとして出演するアイドルもいます。ホームページや冊子などで情 報発信をする事例も多いです。対して,カフェ交流スペース,商品開発販売に ついては,取り組まれていないようです。ファンとのつながりを考えると,こ の2つはとても重要な要素でしょうが,そこまで展開していないアイドルが多 いようです。商品ついては CD や DVD に加えて,ステッカー,スマホケース なども多いですが,物販ではチェキの撮影も割と主流となっています。 52.0 4.0 80.0 72.0 84.0 44.0 88.0 64.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 その他 カフェ交流スペース ライブ公演 情報発信 マスコミ出演 商品開発販売 他団体等のイベントや祭り イベントや祭り主宰

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5.アイドルのファン層 図6 ファン層(%) ファン層の特徴を見てみましょう。男性,中高年がファンとしては多いとい う結果でした。ごく一部,男性アイドルもいますが(例えば,兵庫県赤穂市の AKR47 など),いわゆるローカルアイドルは女性アイドルが大半です。男性フ ァンが多いというのは頷ける結果でした。 3.8 0.0 38.5 57.7 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 女性がほとんど 女性がやや多い 男性がやや多い 男性がほとんど 3.8 61.5 34.6 0.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 中高年がほとんど 中高年がやや多い 若者がやや多い 若者が多い

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6.アイドルと地域活性化 図7 アイドルによる地域活性化(%) 今回の調査の目的でもありますが,ローカルアイドル活動が地域活性化に, 意図するにせよしないにせよ,関係しているのか,成果としてあわられている のかを調べました(「あてはまる」から「あてはまらない」まで 5 段階で訊ね, 「あてはまる」の結果を示しました)。 来訪者の増加とか地域のメディアへの露出増加,そして出演オファーの増加 が多かったです。住民・事業者と来訪者の交流増加という面もあるようです。 ローカルアイドル活動を経て,来訪者が増えるというのは注目すべき結果でし ょう。ただ,地域の知名度向上とか愛着を持つ人が増加したというのは,低い 数値に止まりました。 44.0 52.0 20.8 20.8 52.2 50.0 0.0 20.0 40.0 60.0 住民・事業者と来訪者の交流増加 出演オファー増加 地域に愛着を持つ人増加 地域の知名度向上 地域のメディア露出増加 来訪者増加

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7.モチベーションの維持 ローカルアイドル活動を行う上で,アイドル本人たちのモチベーションをど う保つことができるのでしょうか。やはり,一定にアイドルのマネジメントも 求められるのです。 最も多かったのが,イベントに数多く出演するということです。場数を増や すことで,ステップアップを図るというわけです。実戦訓練がモチベーション のためには一番ということでしょう。中には,メジャーアイドルとステージを 一緒にやって対抗心を持たせるなどの取り組みもあるようです。 それと関連して,常にミーティングをして目標を明確にするということも回 答として多かったです。他,曲とか衣装を新しくするという回答も複数ありま した。ステージを増やすことと,曲や衣装もリニューアルすることでマンネリ 化を防ぐという工夫も取られています。 逆に,モチベーションの維持として何もしていないという回答はほとんどあ りませんでした。

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8.収入源 図8 収入源(%) アイドル活動の中で,収入源となるのは,何と言ってもグッズ(物販)販売 です。すでに,商品開発販売は少し弱い面であることを指摘しましたたが,取 り組みとしては難しい面があるとしても,アイドル活動を維持していくために は収入は欠かせません。他は,ライブ公演の収入が多い結果です。ローカルア イドルに限ったことではありませんが,ライブの場合は,物販とセットになっ ていることが多く,どちらかというと物販収入が支えになっているというべき でしょう。 15.4 4.0 76.9 26.9 50.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 その他 補助金 グッズ 広告出演料 ライブ収入

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9.経済面での苦労 図9 経済面での苦労(%) 物販が収入源のメインとなっていますが,それで十分な収入が得られるとは 限りません。経済面での苦労は尽きないようです。83.3%ものアイドル団体が 経済面での苦労があると回答しました。 具体的には,どのような苦労があるのでしょうか。多い回答としては,運営 スタッフ人件費と交通費です。曲を作るだけでもコストはかかります。「アイド ル事業の収入だけで回していくことは難しいです」という回答のように,多く の場合,アイドルの部分に会社や団体予算の一部を当てているというのが実情 でしょう。アイドル活動単体で採算があうというケースは非常に少ないのです。 16.7 83.3 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 なし あり

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10.モデルとしたアイドル 図10 モデルとしたアイドル(%) ローカルアイドル活動を始める際,モデルとしたアイドルはあるかと訊ねた ところ,ほとんどありませんでした。往々にして,先進な著名事例がモデルケ ースとなって,後の取り組みに影響することが多いですが,「AKB48」,そして 愛媛県の「ひめキュンフルーツ缶」があげられました。ひめキュンフルーツ缶 はローカルアイドルの草分け的存在であり,いろいろなところに実は影響を与 えているかもしれません。 ローカルアイドルどうしで参考にし合っているという事情はなさそうです。 92.3 7.7 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 なし あり

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11.地域活性化との関係の意識 図11 地域活性化との関係の意識(%) ローカルアイドル活動で地域にいろんな変化が起こっていますが,来訪者の 増加など地域活性化に繋がっていることもわかりました。アイドル活動はそも そも様々な目的や事情によって立ち上げられていますが,地域活性化が活動実 施の中でどのように認識されているのでしょうか。 結果を見ると,地域活性化を「かなり認識している」が6割以上となりまし た。ローカルアイドルだからこそ,多かれ少なかれ地域活性化と繋がるようで す。 もともと商店街の活性化のために立ち上げたというような事例もありますが, たまたま活動の中で観光大使に任命されたり,行政の補助事業で地域活性化と 関わっていたり,事情は様々でも,地域活性化が活動の枠組みの中で大きな要 素となっていることが分かりました。 興味深かったのは,「楽曲の中に,地元の名産品,特産品を入れ込み,宣伝効 果を狙う」という点,そして「学校や地域のお祭りなどは出演料を頂戴しない」 といった点です。対外的に地域の知名度を高めるために楽曲を工夫したりする 一方,同時に地域との関係を深めるために様々な工夫が行われています。 0.0 8.0 28.0 64.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 認識していない あまり認識していない やや認識している かなり認識している

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12.専任スタッフの有無 図12 専任スタッフの有無(%) 経済的な苦労を伴うローカルアイドルが多い中で,専属のスタッフを擁する グループが多いようです。だからこそ,苦労の中で「運営スタッフの人件費」 という回答が目立ったわけでしょう。どうしてもアイドル活動を支えるための スタッフは必要です。会社にせよ,団体にせよ,何らかのマネジメントを担う 人材が求められます。スタッフ数の平均は 3.43 人でした。 とはいえ,専属スタッフがいないというアイドルもいます。アイドル事業を 担当していつつ,他の仕事も一緒にやっているということも実体として多いの でしょう。 40.0 60.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 いない いる

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13.オーディションの実施について アイドルメンバーをどのように募集するかは,ケースによってまちまちです。 オーディションを行っているかについて訊ねたところ,実施していないアイド ルも多い結果となりました。メンバー固定の場合はそもそもオーディションを 改めて行う必要はありません。 先にメンバーが減少傾向にあるということを指摘しましたが,何期までかは 募集していたものの,メンバーが集まらず今年は行わなかったとか,以前は日 程を決めていたが,小さな町なので応募者がおらず現在は随時実施といった事 例もあります。オーディションを行うとしても,定期的にオーディションを実 施するケースと,応募者があった場合に随時実施というケースに分かれます。 オーディションでは,特に面談,面接が重視されているようです。「歌,ダン スは一切見ないで,とにかくコミュニケーション能力,何か面白いところはあ るかを重視する」というアイドルもありました。

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14.地元とのつながり 図13 地元とのつながり(%) 地域活性化を認識するローカルアイドルが多い中で,実際地域とのつながり は,とても強くなっています。やはりローカルアイドルだからこそ,実態的に 地域との連動は重要でしょうし,強い関係にあるというべきです。橋本(2014) のいうとおり,ローカルアイドルは,地域の特性とアイドルの融和性から構成 されるものなのです。 4.0 8.0 32.0 56.0 0.0 20.0 40.0 60.0 強くなっていない あまり強くなっていない やや強くなっている 強くなっている

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15.ローカルアイドルを通じた地域活性化について 図14 ローカルアイドルを通じた地域活性化について(%) それでは,ローカルアイドル活動を通じた地域活性化を進めるべきと考える かどうか,その意見を訊ねました。当然といえば当然かもしれませんが,積極 的に進めるべきという推進派が多数を占めました。 ローカルアイドルを主催する中で,ローカルアイドルの目的は必ずしも地域 活性化が一番のものではないこともあるでしょう。例えば,メジャーデビュー を最大の目標にしているかもしれません。そもそも,アイドルメンバー本人が 地域のためにというより,自身のキャリアアップを目的としているかもしれま せん。それでも,枠組みとしてローカルアイドル活動は地域活性化と共にある ということは明らかなのです。 12.0 0.0 8.0 32.0 48.0 0.0 20.0 40.0 60.0 わからない 積極的に進めるべきとは思わない あまり積極的に進めるべきとは思わない やや積極的に進めるべきと思う 積極的に進めるべきと思う

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【分析編】 それでは,最後に少し分析を行います。ローカルアイドル活動と地域との関 係について,どのような条件がアイドルの地域性に影響を与えると言えるので しょうか。調査項目である,専用施設の有無,メンバーの増減,経済面の苦労 の有無,専任スタッフの有無と,地元とのつながりの強弱との関係を調べてみ ました。地元のファンとか地域からの愛着がローカルアイドルの生命線だとす ると,これを達成するために何が重要なのでしょうか。 結果,統計的に有意だったのが「専任スタッフの有無」と「地元とのつなが り」です。専任スタッフがいるアイドルほど,地元とのつながりが強いという 結果でした。物理的な条件がどうあれ,ローカルアイドルと地域との関係はそ もそも切っても切れないものだと言えるかもしれません。たとえ,施設がなく ても,メンバー数がどう動いても,経済的にしんどくても,地域限定アイドル は地域性を帯びることが本質なのであり,何らかの形で活性化に関わることが 存在意義なのです。ただし,分析からは,専任スタッフの強みが明らかになり ました。実際の地元とのつながりを達成するためにはスタッフの力が必要だと いうことが言えないでしょうか。施設があるなしにかかわらず,アイドルを支 えるスタッフが不可欠な条件なのかもしれません。その意味で気になるのは, 運営スタッフの人件費の悩みです。 表1 分析結果

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【調査のまとめ】 ローカルアイドル活動は,だんだんと注目を集めてきています。2013 年以 降に作られたアイドルが多いことからもそれは明らかです。クールジャパンが 世界から認められ,メジャーグループを含めてアイドルは衰えを知りません。 とはいえ,現状ではローカルアイドル活動の運営は経済的な面でもなかなか 舵取りが難しいということは指摘せざるをえません。もっとも,難しい点は, 地域の知名度を向上させるために対外的な PR を行う面と,加えて地域内のア イドル自体の知名度向上とを両方追い求めなければならないということです。 単に,地域の特産品を PR するだけでも大変なことですが,ローカルアイド ルであればこそ,地域内のファンがいること,地域から愛されるアイドルであ るという前提を伴うのです。ある意味,ゆるキャラと同じ使命を負っていると いうことも言えるでしょう。地元イベントに積極的に参加したり,出演料を無 料にするといった工夫は,地元でのアイドルの知名度を高める上でとても重要 なものです。 最後の分析で,運営のための専任スタッフの有無が重要ということも述べま した。地元との関係を実際維持するためには,それを陰で支えるスタッフが必 要なのです。企画を練ったり,ミーティングを開いたり,チラシを撒いたり,“縁 の下の力持ち”がアイドルを支えます。 もちろん,冒頭でも述べたとおり,現実にローカルアイドルを活用する事例 は特定の都道府県に偏っています。気軽にどこでもアイドルを立ち上げること はできますが,それを維持し運営するノウハウが不可欠です。ただ,調査を通 じて,ローカルアイドル活動が地域を救う大きなコンテンツになり得るのでは ないかと言うことを感じています。調査そのものは先行研究もほとんどなく, 難航に次ぐ難航でしたが,貴重な調査となったことは間違いありません。ご協 力いただいた皆様には深く感謝を申し上げます。 参考文献 橋本英重(2014)「地域アイドルを訪ねる旅」コンテンツツーリズム学会編『コ ンテンツツーリズム入門』古今書院。

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【演習生】 井上 和 石川 円香 大穂 貴弘 久保田 佳甫 小園 千秋 白石 夏奈子 高松 友樹 中谷 俊吾 夏迫 優 野村 隼 深見 竜輔 山口 真愛 脇坂 雄祐 森裕亮 ローカルアイドルと地域活性化を考えるアンケート調査報告書 2016 年8月発行 著 者 北九州市立大学法学部政策科学科 森裕亮ゼミナール 発行所 北九州市立大学 ©北九州市立大学法学部政策科学科森裕亮ゼミナール

参照

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