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一般演題抄録 AOD1 1 COVID 19 における神経学的異常及び神経学 AOD1 2 COVID 19 重症例における神経学的後遺症 的予後の検討 と脳血流 SPECT の特徴 神戸市立医療センター中央市民病院脳神経内科 いしやま石山 ひろゆき浩之, 石井淳子, 角替麻里絵, 尾原信行, 吉村

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AOD1–1

COVID

–19における神経学的異常及び神経学

的予後の検討

神戸市立医療センター中央市民病院脳神経内科 石山 いしやま  浩之ひろゆき,石井 淳子,角替麻里絵,尾原 信行,吉村  元, 幸原 伸夫,川本 未知 【背景】COVID–19に合併する神経症学的異常の報告が散見されるが,実態 は明らかでない.【方法】2020 年3~5 月に当院に入院したCOVID–19連続症 例を対象とし,人工呼吸管理や5L/分以上の酸素投与を要した重症群とそれ以 外の非重症群に分類した.急性期の神経症状,神経学的所見や合併した神経筋 疾患,神経学的予後を後方視的に観察し,2群間で比較した.【結果】対象は 96例(53±20歳,男性58例),重症群35例,非重症群61例であった.重症群 は高齢(67±14 vs. 46±20 歳)で,高血圧症(54% vs. 20%),糖尿病(34% vs. 11%)の割合が高かった.神経症状は,重症群で意識障害(46% vs. 3%) や筋力低下(46% vs. 2%)が多く,嗅覚障害(3% vs. 26%)や味覚障害(6% vs. 28%)は少なかった.神経筋疾患は,脳血管障害は重症群の1例(3%)で, 末梢神経障害(17% vs. 2%)や筋障害(11% vs. 0%)も重症群で多かった.隔 離解除後の神経学的異常は,評価可能であった79例において,重症群で高率で あり(33% vs. 3%),意識障害(19% vs. 3%)や筋力低下(24% vs. 3%)の割 合が高かった.【結論】COVID–19では,重症例で高頻度に神経学的異常を合 併し,後遺症を残す可能性がある.

AOD1–2

COVID

–19 重症例における神経学的後遺症

と脳血流SPECTの特徴

神戸市立医療センター中央市民病院脳神経内科 塩見しおみ 悠真ゆうま,石山 浩之,石井 淳子,比谷 里美,乾  涼磨, 中澤 晋作,黒田 健仁,角替麻里絵,藤原  悟,村上 泰隆, 前川 嵩太,尾原 信行,吉村  元,幸原 伸夫,川本 未知 【背景】COVID–19において,しばしば神経学的異常を合併することが報告 されている.今回我々はCOVID–19重症例で,急性期治療後に遷延する意識障 害や高次機脳障害を認め,脳血流SPECTで特徴的な集積パターンを示した3症 例を経験したため報告する.【症例】症例1は75歳女性.COVID–19による急 性呼吸不全に対する26日間の侵襲的人工呼吸管理後,傾眠で発語量低下や従命 困難な状態が遷延した.IMP–SPECTでは,両側頭頂葉,前頭葉に高度な灌流 低下と視床の灌流上昇を認めた.症例2は66歳男性.20日間人工呼吸管理さ れ,抜管後は意思疎通可能だが,自発性低下・記銘力低下・語想起障害を認め た.IMP–SPECTでは,左優位に両側頭頂葉・前頭葉に中等度の灌流低下,視 床の灌流上昇を認めた.症例3は66歳男性.15日間の人工呼吸管理後,意識清 明だが記銘力低下や語想起障害を認めた.IMP–SPECTでは両側頭頂葉・前頭 葉の軽度灌流低下と視床の灌流上昇を認めた.3D–SSPによる統計解析で,何 れの症例でも頭頂葉・前頭葉の灌流低下,視床の灌流上昇を認めた.【結論】 COVID–19重症例で肺炎の改善後も意識障害や高次機能障害が遷延した3例に おいて,脳血流SPECTで症候や重症度に関連した灌流異常を認める.

AOD1–3

Global Open

–label Extension : 24–month

Data of Patisiran in Patients with hATTR

Amyloidosis

1熊本大学大学院生命科学研究部先端生命医療科学部門脳・神経科学分野脳神経内科学講座, 2CHU Bicetre, FR,

3Instituto Nacional de Ciencias Medicas y Nutricion Salvador Zubiran, MX, 4Mayo Clinic, US,5Columbia University, US,

6Centro Hospitalar Universitario do Porto, PT,

7Umea University, SE,8University Hospital Muenster, DE, 9Alnylam Pharmaceuticals, US,10Johns Hopkins, US

植田うえだ 光晴みつはる1,D Adams2,A Gonzalez–Duarte3,E Mauricio4

T Brannagan5,T Coelho6,J Wixner7,H Schmidt8,M Berber9

M Sweetser9,M White9,JJ Wang9,M Polydefkis10

hATTR amyloidosis is a progressive, life–threatening disease. Patisiran (pati) has been studied previously in hATTR amyloidosis with polyneurop-athy(PN).

Global OLE(GOLE) study (NCT02510261) in patients who completed parent studies : APOLLO/placebo (pb) n=49, APOLLO/pati n=137 and Phase(Ph) 2 OLE n=25.

178 /211 GOLE patients had≧24m exposure by October 7, 2019. Safety remained consistent. After 24m in GOLE, there was durable improvement +7 in APOLLO/pati and Ph2 OLE, and in Norfolk QOL–DN in

AOD1–4

Long

–term integrated patisiran safety in

patients with hATTR amyloidosis with poly

-neuropathy

1信州大学医学部内科学第三教室(脳神経内科,リウマチ・膠原病内科), 2University College London, UK,3Boston University, US,

4Mayo Clinic, US,5Johns Hopkins, US,

6Instituto Nacional de Ciencias Medicas y Nutricion Salvador Zubiran, MX, 7Alnylam Pharmaceuticals, US,

8Columbia University College of Physicians and Surgeons, US

関島

せきじま

 良樹よしき1,J Gillmore2,J Berk3,A Dispenzieri4,M Polydefkis5

A Gonzalez–Duarte6,M Sweetser7,S Arum7,JJ Wang7,M White7

M Maurer8

hATTR amyloidosis is a progressive, life–threatening disease. Patisiran's long–term integrated safety data (as of 7Oct2019) from the Phase 2 Open– Label Extension(OLE) (NCT01961921), APOLLO (NCT01960348), and on-going Global OLE(NCT02510261) are analyzed.

224 patients received patisiran with cumulative 813.9 patient–yr expo-sure; 46.9% had patisiran for ≧4yr. 66.5% had cardiac medical histories. 99.1% patients had at least 1 adverse event (AE) and 58.9% at least 1 seri-ous AE. Related AEs in >5% patients : infusion reactions (25.9%), diarrhea (6.3%). Cardiac AEs in >5% patients : atrial fibrillation (10.7%), cardiac

(2)

AOD1–5

Impact of Patisiran on Activities of Daily

Living and Functional Status in hATTR

Amyloidosis

1山都町包括医療センターそよう病院, 2Vanderbilt University Medical Center, US,

3Instituto Nacional de Ciencias Medicas y Nutricion Salvador Zubiran, MX, 4Boston University, US,5University Hospital Alexandrovska, BG, 6Umea University, SE,7Northwestern University, US,

8Alnylam Pharmaceuticals, US,9CHU Bicetre, APHP, FR

山下

やました

 太郎たろう1,A Peltier2,A Gonzalez–Duarte3,J Berk4,I Tournev5

OB Suhr6,S Ajroud–Driss7,M Merkel8,H Lin8,C Hale8,D Adams9

hATTR amyloidosis, a rare, life–threatening disease, leads to declining functional status (FS) and ability to perform activities of daily living (ADLs).

APOLLO patisiran study(NCT01960348) in patients with hATTR amy-loidosis with polyneuropathy included ADL / FS assessments: Rasch–built Overall Disability Scale (R–ODS), Karnofsky Performance Status (KPS), Norfolk QOL–DN ADL subdomain (Norfolk ADL). Analyses quantified pa-tients with no change / improvement in these assessments.

225 patients were enrolled. At baseline, patisiran and placebo groups had similar R–ODS, KPS, and Norfolk ADL scores. After 18m, a higher pro-portion of patisiran–treated patients vs placebo had no change/improve-ment in FS and ADLs.

In APOLLO, patisiran preserved ability to perform ADLs and FS for a majority of patients, with a higher OR compared to placebo.

AOD1–6

免疫チェックポイント阻害薬投与により発症

したsevere polyradiculoneuropathyの臨床像

1慶應義塾大学医学部神経内科, 2東京慈恵会医科大学附属柏病院脳神経内科, 3東京都済生会中央病院脳神経内科 岡田おかだ 健佑けんすけ1,関  守信1,谷口  洋2,作田 健一2,向井 泰司2 山田  哲3,大木 宏一3,中原  仁1,鈴木 重明1 【目的】免疫チェックポイント阻害薬は様々な癌に対して有効であるが,一 方で重篤な免疫関連有害事象が問題である.今回,我々は免疫チェックポイン ト阻害薬の投与により発症したpolyradiculoneuropathyの臨床的特徴をまとめ た.【方法】2017年1月から2019年12月までにおける3施設での神経系の免疫 関連有害事象が発症した患者における後ろ向き調査を行なった.【結果】我々 が経験した4症例と既報告の32症例を合わせて多発根ニューロパチーの臨床的 特徴をまとめた.男性は 28 例,女性は 8 例であり,平均発症年齢は 61 歳で あった.免疫チェックポイント阻害薬の単剤は27例で,併用は9例であった. 34例で,対称性に四肢筋力低下(主に下肢)を認めた.球麻痺症状は9例に認 めた.神経伝導速度検査では脱髄の所見が多く,髄液検査ではリンパ球上昇を 伴う蛋白の上昇を認めた.疾患の重症度はHughesの機能グレード尺度で評価 し,17例がグレード4以上であった.コルチコステロイド内服とメチルプレド ニゾロン静注は治療に有効であり,免疫グロブリン療法はステロイドとの併用 例が多かった.人工呼吸器が使用された4例を含め,7例の転帰は死亡であっ た.【結論】免疫関連有害事象としてのpolyradiculoneuropathyは早期におけ ると診断と治療介入が重要である.

AOD1–7

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーに

おける脳神経麻痺の特徴と治療反応性

千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学 澁谷しぶや 和幹かずもと,常山 篤子,三澤 園子,水地 智基,鈴木 陽一, 小島 雄太,中村 圭吾,狩野 裕樹,Mario Prado,桑原  聡 【目的】慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)において脳神経麻痺 は,稀に認められる症状である.しかし,その出現頻度や特徴,臨床病型との 関係,治療反応性について体系的に検討された報告は殆どない.これらを明ら かにすることを目的とした.【方法】CIDPの診断基準を満たした,連続132症 例(典型的CIDP89例,多巣性感覚運動型31例,遠位優位型9例,その他3例) を対象とし,臨床的な脳神経麻痺症状を検討した.【結果】典型的 CIDP の 11%,多巣性感覚運動型の48%,遠位優位型の11%,その他の0%が,脳神経麻 痺症状を呈していた.内訳としては,顔面神経麻痺,球症状が9%と多く,眼球 運動障害5%とそれに続いた.典型的CIDPと遠位優位型は全て両側症状であっ たが,多巣性感覚運動型は 80% が片側であった.脳神経麻痺を伴う典型的 CIDPの最終受診時四肢機能は,脳神経麻痺のない患者よりも有意に悪かった. 典型的CIDPでは90%の症状が完全に回復したが,多巣性感覚運動型では67% に留まった.【結論】多巣性感覚運動型CIDPでは,脳神経麻痺症状は約半数に 認められる症状であり片側性である一方,典型的CIDPと遠位優位型では稀な症 状であり,両側性に認められる.典型的CIDPにおける脳神経麻痺症状はより強 い炎症を反映している可能性があり,その治療に注意を要する可能性がある.

AOD1–8

ALS

緩和ケアスケールを用いた筋萎縮性

側索硬化症患者の苦痛評価

1東京都立神経病院脳神経内科,2東京都立神経病院緩和ケアチーム 清水しみず 俊夫としお1,2,木村 英紀1,2,森島  亮1,2,木田 耕太1,2 清水 尚子2,小野崎香苗2,新井 玉南2,工藤芽衣子2,早乙女貴子2 笠原 良雄2,本間 武蔵2,原田 明子2,阪口 優理2,高橋 一司1 【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)における自覚的な苦痛をALS緩和ケア スケールを用いて評価し,その特徴を分析した.【方法】対象は,2017 年 9 月~2019年9月に都立神経病院に入院し,緩和ケアチームによる回診を行った ALS患者45例(男性29例,女性16例,平均年齢71歳(55~86歳).当院が作 成した 13 項目からなる ALS 緩和ケアスケールを用い,それぞれ 6 段階評価 (0~5 点)にて ALS 患者の苦痛症状を分析した.【結果】13 項目の各スコア (平均)は,呼吸苦2.5,疼痛2.4,身の置き所の無さ2.4,口渇3.0,灼熱感2.0, むせ・痰がらみ2.0,嘔気0.4,便秘1.5,不眠2.5,不安3.5,寂しさ2.4,いら いら感 2.1,思いの伝わらなさ 2.3 であった.各項目間の相関(p<0.0038, Bonferroni補正)は,呼吸苦が,身の置き所の無さ・灼熱感・不安・寂しさと 強い相関を示し,身の置き所の無さが,口渇・寂しさと強い相関を示した.各 項目は年齢,性別とは相関がなかった.【考察】ALS患者の苦痛は,身体症状 としては呼吸苦,口渇,不眠が,精神症状としては不安が最も強い.また呼吸 苦と身の置き所の無さといった運動ニューロン変性や辺縁系の変性によると思 われる症状が他の苦痛症状と強く関連している.呼吸ケアと心理的サポートが 極めて重要である.

(3)

AOD1–9

脳深部刺激療法における定量的磁化率マッピ

ング画像の有用性

1三重大学脳神経内科,2鈴鹿回生病院神経内科, 3三重大学地域支援神経放射線診断学講座,4三重大学認知症医療学講座, 5東京都立産業技術大学院大学産業技術研究科,6三重大学放射線科, 7鈴鹿回生病院脳神経外科 松浦 まつうら  慶太けいた1,2,伊井裕一郎1,前田 正幸3,佐藤 正之4,田部井賢一5 新堂 晃大1,海野 真記6,梶川 博之2,荒木 朋浩7,冨本 秀和1 【目的】パーキンソン病(PD)への脳深部刺激療法(DBS)において,治 療前の定量的磁化率マッピング(QSM)と術後幻覚出現との関連について検討 を行うこと.【方法】PD症例に対して術前にQSM画像を撮影したDBS症例24 例を対象とした.QSM上の視床枕(Pul)を関心領域とし,その信号値および 術後幻覚出現との関連を検討した.【結果】術後幻視(一過性のものも含める) あり群(H+)が7例,無し群(H−)が17例であった.Pulの磁化率は,H+ が50.9ppmでH−が30.2ppmと有意差を認めた(Student's t–test, p=0.004). Pulの磁化率が 45ppm 以上の症例が 9 例あり,9 例中 6 例に幻視が出現し, 45ppm未満だった15例中幻視が出現したのは1例だった(Fisher's exact test, P=0.0037).【考察】過去に我々は,磁化率強調画像(SWI)にて,Pul の視 覚的低信号とDBS術後の幻視の出現に関連があることの報告をしている.SWI を用いた報告では視覚的な異常の有無を判断基準としていた.今回,QSMで Pulの磁化率が45ppm以上で術後幻視との関連を示唆出来たことの意義は大き いものと考える.

AOD1–10

パーキンソン病患者におけるノイズ・パレイ

ドリアテストの意義

東京慈恵会医科大学脳神経内科 大本 おおもと  周作しゅうさく,村上 秀友,白石 朋敬,梅原  淳,井口 保之 【背景と目的】パーキンソン病(PD)に伴う認知障害の診断におけるノイ ズ・パレイドリアテスト(nPT)の有用性,及び,パレイドリア反応陽性者の 臨床的背景を検証した.【方法】対象は当院通院中の PD 患者 99 名(年齢: 68.4±9.8歳,罹病期間:6.0±3.6年).nPTによりパレイドリア反応と見落と しの有無を評価し,各種臨床情報との関連性を検討した.【結果】パレイドリ ア反応陽性は16名(16.2%)にみられ,陰性患者に比べ,認知障害(MoCA– J≦25)の合併率が有意に高く(81.3% vs 27.7%, p<0.001),認知障害の診断 における感度は36.1%,特異度は95.2% であった.パレイドリア陽性患者は, 陰性患者に比べ HY stage(中央値 3.5 vs 2, p=0.001),1 日レボドパ換算量 (LED)(中央値 763mg vs 410mg,p=0.001)が有意に高く,日中の幻視 (37.5% vs 1.2%, p<0.001)と錯視(18.8% vs 2.4%, p=0.029)の出現と有意に 関連したが,夜間の幻視と錯視には関連しなかった.また,見落とし陽性は20 名(20.2%)にみられ,陰性者に比べ,認知機能障害の合併率が高かった (60% vs 30.4%, p=0.014).【結論】nPTはPDに合併する認知障害の診断にお いて特異性が高く,パレイドリア反応陽性は日中の幻視と錯視,認知機能障害 を反映する.

AOD1–11

自己免疫性GFAPアストロサイトパチーの

治療と予後の検討

岐阜大学医学部脳神経内科 木村きむら 暁夫あきお,竹腰  顕,吉倉 延亮,林  祐一,下畑 享良

【目的】自己免疫性glial fibrillary acidic protein(GFAP)アストロサイト パチー(GFAP–A)の治療と予後を検討する.【方法】315 名の中枢神経疾患 患者の髄液を用い,Cell–based assayによりGFAP–IgGを検索した.その後, 抗体陽性患者の治療と予後を後方視的に検討した.【結果】29名の患者で,髄 液 GFAP–IgG を検出した.年齢の中央値は 52 歳,男女比は 17:12,臨床病型 は,髄膜脳炎15名,髄膜脳脊髄炎13名,脊髄炎1名であった.免疫療法が28 名(97%)で施行された.内訳は,ステロイドパルス26名,IVIg6名,プレド ニゾロン内服20名,デキサメタゾン点滴4名,アザチオプリン内服2名,単純 血漿交換療法 1 名であった.7 名で人工呼吸器の装着を必要とした.予後は, mRSの中央値が,入院時5,最終観察時1であった.一方,最終観察時のmRS が,3以上の患者が5名(17%)存在した.13名に後遺症を残し,認知機能障 害と排尿障害を6名ずつ認めた.再発をきたした患者は1名であった.【結論】 GFAP–Aは,ステロイドに対する反応性は比較的良好であるが,約半数で後遺 症を残し,認知機能障害や排尿障害が多く,治療後も17%の患者で日常生活に 介助を必要とした.早期の診断とステロイド治療の開始が重要である.

AOD1–12

NMDA

受容体脳炎の男性例における精巣の

関与

1近畿大学医学部脳神経内科, 2大阪刀根山医療センター リハビリテーション科, 3近畿大学農学部食品栄養学科,4大阪刀根山医療センター脳神経内科, 5近畿大学医学部泌尿器科,6堺市立総合医療センター脳神経内科 平野ひらの 牧人まきと1,井上貴美子2,伊藤 龍生3,寒川  真1,藤村 晴俊4 能勢 和宏5,楠   進1,中村 雄作6 【目的】NMDA受容体脳炎は女性に多く,半数に卵巣奇形腫が関与する.男 性で腫瘍陰性例の精巣機能や病理は不明であり,剖検報告はなかった.ここで は,世界初の男性剖検例を含めた5例の精巣機能,病理像を報告する.【方法】 5例は 27–38 歳.剖検例は 27 歳.ステロイドパルス,血漿交換療法を受けた が,肺塞栓症にて死亡.精巣生検例は29歳.ステロイドパルス,IVIg,血漿 交換療法を経て,社会復帰.精巣機能検査にて回復から2年以上経過していた が,無精子症であった.5例で脳炎初期と回復期の血清テストステロン/LH比 (Leydig細胞機能),FSH(造精機能)を測定した.【結果】剖検脳には,海馬 CA4の神経脱落,グリオーシス,ミクログリア活性化に加えて,脱髄巣が前頭 葉,側頭葉など広範に存在した.精巣病理では,2例とも間質のLeydig細胞は ある程度保たれていたが,造精能が完全に欠如していた.血清FSH上昇とテス トステロン/LH比低下がみられ,精巣機能の低下が示唆された.【結論】剖検 脳は,既報告女性例と類似していたが,脱髄がより広範であった.精巣は病理 的に高度に障害され,また,血清ホルモン値から機能低下も示唆された.ま

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AOD1–13

当院における高齢発症てんかんにおける抗

てんかん薬の有効性の検討

京都府立医科大学医学部神経内科 大矢おおや佳奈子かなこ ,田中 章浩,水野 敏樹 【目的】高齢発症てんかんは少量の抗てんかん薬で発作抑制効果が高いこと が知られているが,その詳細は明らかでない.今回,当院での高齢発症てんか んにおける抗てんかん薬の有効性について検討した.【方法】2017年4月1日か ら2019年12月31日までにてんかん専門外来に通院歴のある高齢発症てんかん 患者を抽出し,てんかん症候群,てんかん発作型,病因,抗てんかん薬の種 類・平均用量,有害事象と継続率を電子診療録を用いて後方視的に検討した. 【結果】65歳以上の高齢発症てんかんは46例,受診時平均年齢77歳,男性23 名(50%)であった.てんかん症候群は側頭葉てんかんが最も多く,30 例 (65%)を占めた.発作型は,焦点意識減損発作が32例(70%)で最も多かっ た.病因については器質的異常を認めないものが最も多く,脳血管障害,認知 症などが続いた.単剤投与例は37例(81%)であり,抗てんかん薬の使用頻度 (平均用量)は,主に Lacosamide 39%(125mg),Levetiracetam 33%(741 mg),Carbamazepine 22%(105mg)といずれも少量の投与であった.抗て んかん薬の継続率は 70% であり,中断理由はふらつきや傾眠などであった. 12ヶ月の発作抑制率は28例中25例(89%)と高率であった.【考察】少数例の 検討であるものの,高齢発症てんかんは少量の抗てんかん薬で発作抑制効果が 高いことが証明された.治療においては有害事象に注意し抗てんかん薬を少量 から開始することが重要である.

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OD1–1

ラサギリン投与により姿勢異常が改善した

パーキンソン病の1例

1東邦大学医療センター大森病院脳神経内科, 2国家公務員共済組合連合会三宿病院 平山 ひらやま  剛久たけひさ1,小中 宏美2,郡司 義尊2,岩本康之介2,清塚 鉄人2 狩野  修1 【背景】パーキンソン病の姿勢異常は治療薬に反応せず苦慮することも多い. 今回ラサギリン投与により姿勢異常が改善した症例を経験したため報告する. 【症例】85歳女性.X–5年より軽度の物忘れを自覚.X–2年より体が右に傾き, 頸部の前屈が出現,X–1年より歩行時や体動時の動きにくさが出現したため, 歩行障害,認知機能低下を主訴に来院.初診時,右側優位に固縮あり,頸部体 幹は右側に傾倒,前傾を伴い,小刻み歩行を呈していた.認知心理検査は HDSR21点,MMSE20点と軽度低下していた.幻覚はなかった.MIBG心筋 シンチグラフィにて H/M 比の低下を認め,レボドパ投与で著効をしたため, パーキンソン病と診断した.レボドパ300mgに加え,ガランタミン投与を開始 した.7ヶ月投与後,運動症状の改善のためラサギリン0.5mgを追加したとこ ろ,開始後2週間程度で姿勢異常が改善した.しかし,眠気が出現し,ラサギ リンを中止すると姿勢異常が再燃した.さらに,ラサギリン0.5mgの再開で姿 勢異常は改善した.【考察】既報告ではラサギリン投与による薬剤性の姿勢異 常の報告が多い.Pisa症候群などの姿勢異常ではドパミン,アセチルコリンの 不均等が原因と考えられ,ラサギリンの細胞外ドパミン濃度への影響が指摘さ れている.本症例はガランタミン投与下において,ラサギリン投与により不均 等が是正されたことが考えられた.

OD1–2

LCIG

導入後の手技獲得等に工夫を要した1例

1東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野(大森), 2済生会横浜市東部病院脳血管・神経内科 花城 はなしろ  里依さより1,2,狩野  修1,給前 まや1,蝦名 潤哉1,川〓 清一1 【背景】手技工夫や環境調整でLドパ持続静注療法(LCIG)継続できた1例 を経験した.【症例】69歳女性,11年前Parkinson病と診断され発達障害のあ る娘と2人暮らしで生活する.Yahr 4でLドパ/DCI配合剤の頻回内服や他剤調 整するも感染契機にParkinson症状が悪化しトイレへ這って行くなど自宅生活 が困難でLCIG導入目的で入院した.経皮経食道胃管挿入術(PTEG)やLCIG 導入時のメジャートラブルなく開始後UPDRS Part3も改善した.手技獲得や 環境調整は近隣在住の息子の協力を得る予定だったが後に困難となり難渋し た.手技は本人単独で困難のため,開始時間は訪問看護の時間帯にずらし起床 時と朝は内服薬に変更した.フラッシング動作を終了時から開始時に変更し, 終了時の本人単独手技を簡易化した.カセットを冷蔵庫から出す動作や内服薬 を袋から開封する動作は娘の協力が得られた.在宅介護サービス体制強化のた め別居の息子の協力で試験外泊を複数回行い,具体的問題点を挙げ多職種カン ファレンスを開催した.退院後の自宅生活は手すり把持でトイレへ行く等ADL 向上しLCIGも継続できた.【考察】LCIG導入にあたり詳細な家族背景の把握 が不可欠だが,手技や環境を工夫することで適応が広がると思われた.

OD1–3

Parkinson

病の初回治療におけるMAO–B阻害

薬の効果~selegilineとrasagilineの比較

東京慈恵会医科大学医学部内科学講座脳神経内科 村上 むらかみ  秀友ひでとも,小澤 正和,白石 朋敬,梅原  淳,大本 周作, 井口 保之 【背景】現在の本邦ではParkinson病(PD)発症後初回のMAO–B阻害薬に よる薬物療法にselegilineとrasagiline を用いることができる.【目的】PD 初 回薬物療法におけるselegilineとrasagilineの運動症状改善効果を比較するこ と.【方法】2018年10月から2020年4月までの間にMAO–B阻害薬で初回の治 療を開始したPD患者のMAO–B単剤投与による運動症状(MDS–UPDRS part III)の変化を後方視的に比較した.【結果】Selegiline で治療開始した患者が 7例(4 例は 5.0mg/日まで,3 例は 7.5mg/日まで投与し 3 例のうち 2 例は 5.0 mg /日 の段階 でも評 価),rasagiline で 治療開始した 患者が 6 名 (全例 1.0 mg /日)含まれた.Selegiline 群(n=7)と rasagiline 群(n=6)の投与前の 年 齢 (53.4±9.2 vs 59.5±12.1 歳) と MDS–UPDRS part III (18.9±8.5 vs 15.8±9.8)に有意差はなかった.両群とも運動症状の平均値は有意に改善し, MDS–UPDRS part IIIの投与前からの改善率(低下量の投与前スコアに対す る割合)の平均は selegiline 5.0mg 投与(投与開始から 3~6 週後,n=6)で 49.2±14.4%,7.5mg/day 投与(投与開始 から 6~11 週 後, n=3)で 67.4± 14.3%,rasagiline 投与(投与開始から 3~7 週後,n=6)で 53.6±20.4% で あった.Selegilineの両投与量群ともrasagiline群と運動症状の改善率に有意 差を認めなかった.【結論】初回の PD 治療で selegiline(5.0~7.5mg/日)と

OD1–4

初発の Parkinson 病患者の過活動膀胱は起立

性低血圧と関連している

東京慈恵会医科大学医学部内科学講座脳神経内科 小澤おざわ 正和まさかず,村上 秀友,白石 朋敬,梅原  淳,大本 周作, 井口 保之 【目的】Parkinson病(PD)は各種の自律神経症状を呈する.PD診療ガイ ドライン 2018 によると過活動膀胱(Over Active Bladder : OAB)は 27.0~ 63.9% の患者に,起立性低血圧(Orthostatic Hypotension : OH)は 30.1% の 患者に合併するとの報告があるが,両者の関連は不明である.今回我々はPD 患者におけるOABとOHとの関連について検討した.【方法】未投薬のPD患者 43(男 30,女 13)名に OAB の評価として Non–Motor Symptoms Question-naire(NMSQ)の設問8(強い尿意を感じてトイレに駆け込むことがある)と 設問9(夜,尿意を感じていつも目が覚めてしまう)を実施した.一方,OHの 評価として20分間の安静臥床の後にHead up tilt testを実施し,起立後10分 までの収縮期血圧の最大低下度を計算した.NMSQの設問8および9の少なく とも1つに該当する患者(OAB+)群といずれも該当しない患者(OAB–)群の 起立後10分までの収縮期血圧の最大低下度をt検定で比較した.【結果】年齢, 罹患年数,運動症状(MDS–UPDRS part III),認知機能(MMSE, MoCA) には両群間に有意差を認めなかった.OAB+群はOAB–群よりも,起立後10分 ま で の 収 縮 期 血 圧 の 最 大 低 下 度 (Mean±SD=27.9±20.4 vs 16.8±11.8, p=0.028)が有意に高かった.【結論】OAB を訴える初発のPD 患者は起立後 の血圧低下の程度が重く,OABとOHが関連して進行している可能性がある.

(6)

OD1–5

De novoパーキンソン病における血中必須脂肪

酸濃度と臨床症状の関連

1東京慈恵会医科大学附属病院脳神経内科, 2東京慈恵会医科大学附属第三病院脳神経内科 梅原 うめはら   淳ただし1,白石 朋敬1,中原 淳夫2,松野 博優1,大本 周作1 村上 秀友1,岡  尚省2,井口 保之1 【目的】必須脂肪酸は体内で合成できないため,食物より摂取する必要性が ある.PD発症後の血中必須脂肪酸濃度と臨床症状の関連を報告したものは存 在せず,今回この関連性を評価した.【方法】未治療 PD 患者 72 名を対象 に,ω–6脂肪酸としてジホモγリノレン酸(DHLA)・アラキドン酸(AA),ω– 3脂肪酸としてエイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサペンタエン酸(DHA) の血中濃度を測定し,年齢,性別,罹病期間,UPDRS IIIスコア,Body mass index(BMI), motor subtype お よ び ド パ ミ ン ト ラ ン ス ポ ー タ ー (DaT) SPECTでの線条体各部位の摂取率との関連を評価した.【結果】血中 DHLA 濃 度 は UPDRS III ス コ ア (r = −0.463, p = 4.23×10–5), BMI (r = 0.426,

p= 1.89×10–4)と相関を認め,この有意な相関は年齢,性別,罹病期間を考

慮した重回帰分析にても保たれた(UPDRS III スコア ; p = 0.0093, BMI ; p= 0.0011, R2= 0.366).血中 AA,EPA,DHA 濃度は上記臨床症状と関連を 認めなかった.一方で,血中DHLA濃度はDaT–SPECTにおける被殻後部/前 部・尾状核の何れの摂取率とも関連性を認めなかった.【結論】血中DHLA濃 度はPDの運動重症度と負の相関を認める.血中DHLA濃度を高める栄養学的 治療は,DHLAの抗炎症作用を介して(黒質線条体節前ドパミンニューロンの 変性と関係なく)PDの運動重症度を改善させる可能性がある.

OD1–6

シヌクレイノパチーの早期診断~診療科協力

の向こうに

東邦大学医療センター佐倉病院脳神経内科 榊原 さかきばら  隆次りゅうじ,舘野 冬樹,相羽 陽介,尾形  剛 【目的】神経変性疾患の早期診断は脳神経内科医にとってのチャレンジと思 われる.我々は消化器内科・泌尿器科と共同して,神経変性疾患(特にシヌク レイノパチー)の早期診断を試みた.【対象と方法】研究 1.多系統萎縮症 MSA121名の前向き/後ろ向き研究 : 組み入れ期間5年,観察期間6.5±4.0 年. 全例にウロダイナミクス・括約筋筋電図・脳MRIを施行.研究2.レヴィー小 体病LBD450名の前向き研究 : 組み入れ期間5年,観察期間5.5±3.0年.全例 に脳DATscan・心筋MIBGシンチグラフィー・脳MRIを施行.【結果】研究1. MSA121名中18.2%が膀胱症状のみで発症し(頻尿プラス多量の残尿),2.8年 (1–7 年)後運動症状が出現した.研究 2.LBD450 名中 4.2% が消化管症状と REM睡眠行動障害(一部起立性低血圧)のみで発症し,このうち39%で観察 期間中運動症状・認知症が出現した.【まとめ】MSAの膀胱初発型は,仙髄を 中心とする部位の病変を表すと考えられ,LBDの消化管初発型は,腸管壁内神 経叢の病変を表すと考えられる.これらシヌクレイノパチー(MSAとLBD) の早期診断およびケアは,内科および各診療科の協力が不可欠と思われる.

(7)

OD2–1

多発性硬化症患者の脳萎縮進行における再発回

数と疾患修飾薬による早期治療介入の重要性

千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学 枡田ますだ 大生ひろき,森  雅裕,鵜沢 顕之,内田 智彦,大谷 龍平, 青木 玲二,桑原  聡 【背景】多発性硬化症(MS)の脳萎縮における疾患修飾薬(DMD)の長期 使用効果の有用性については十分に検討されていない.【目的】DMDが再発寛 解型MS患者の脳萎縮進行へ与える影響について検討すること.【方法】当科通 院中の再発寛解型MS患者のうち,1)2010年のMcDonald診断基準を満たし, かつ,2)これまでに同一DMD使用下または無治療下で,一年以上の間隔を開 けて頭部MRI画像を二回撮像された患者を対象とし,その臨床,MRIデータ を後方視的に検討した.脳容積の計算にはstatistical parametric mapping–12 を用いた.【結果】フィンゴリモド16名,インターフェロン–β23名,無治療10 名が上記の基準を満たした.再発型MS患者49名において,ベースラインMRI 撮像前の全再発回数と灰白質と白質を合わせた年間脳萎縮率とが正の相関を示 した(Spearman's rho=0.29, P=0.047).DMD 群39例において,DMD 使用 開始からベースラインMRI撮像までの期間が灰白質と白質を合わせた年間脳萎 縮率(Spearman's rho=−0.32, P=0.050)およびMRI撮像間の合計再発回数 と負の相関を認めた(Spearman's rho=−0.32, P=0.048).【結論】全再発回 数はMS進行の予測因子になる.DMDによる早期治療介入は再発寛解型MS患 者の脳萎縮進行を遅らせうる.

OD2–2

二次性進行型多発性硬化症患者における灰白

質萎縮,身体機能障害,認知機能の関連:

EXPAND

試験結果

愛媛大学大学院医学系研究科脳神経内科・老年医学 越智おち  博文ひろふみ 【目的】二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者において,ベースライン (BL)の脳灰白質容積が身体及び認知機能の悪化予測因子となるか検討した. 【方 法】 EXPAND 試 験 に 参 加 し た SPMS 患 者 の う ち Full analysis set (FAS;試験薬 1 回以上投与)と per–protocol set(PPS)を解析集団とした.

皮質灰白質(cGM)と視床容積は高解像度T1画像(583例)と通常のMRI画 像(1062例)を用いて評価し,12ヶ月(M12)とM24におけるBLからの変 化を解析した.障害進行は6ヶ月持続する身体機能障害進行(6m–CDP)と4 点以上のSDMT悪化(認知機能の指標)で評価した. 【結果】FASにおけるシポニモド群と偽薬群のcGM容積変化(%)はM12で −0.07と−0.59,M24で−0.51と−0.90であり,偽薬群に比較してシポニモド 群では88%と43%,それぞれ有意に減少した.視床容積変化(%)もそれぞれ −0.54 と −1.01(M12;47% 減少),−1.20 と −1.74(M24;31% 減少)であ り,PPSでも同様であった(全てp≦0.0001).またBLのcGM容積が下位4分 の1群(Q1)は上位4分の1群(Q4)に比べて6m–CDP とSDMT悪化のリス クが有意に高く,視床容積のQ1はQ4に比べてSDMT悪化のリスクが有意に高 かった(全てHR>1.5;p<0.05). 【結論】シポニモドは偽薬に比べて有意にSPMS患者の脳灰白質萎縮を抑制 した.またBLのcGM容積は6m–CDP とSDMT悪化を予測した一方,視床容 積はSDMTのみを予測し,萎縮部位により身体及び認知機能障害に与える影響 が異なることが示唆された.

OD2–3

二次性進行型多発性硬化症患者の灰白質萎縮

に対するシポニモドの効果:EXPAND試験の

サブグループ解析

ノバルティスファーマ株式会社 上田うえだ 兼吾けんご 【目的】灰白質萎縮は長期間に及ぶ不可逆性の障害蓄積及び認知機能低下と 関連していることがいくつかの研究によって示唆されている.本稿では第3相 EXPAND試験のSPMS患者サブグループを対象として,シポニモドの皮質灰 白質(cGM)及び視床の萎縮に対する抑制効果を偽薬と比較検討した. 【方法】cGMと視床の12ヶ月(M)及びM24におけるベースラインからの 容積変化率(%)を評価した(per–protocol set 1560例).年齢と疾患特性に基 づいて規定した患者サブグループを対象にMMRMモデルを用いてシポニモド の効果を偽薬と比較検討した. 【結果】偽薬群では,cGM のM24におけるベースラインからの容積変化率 は,すべてのサブグループで同程度であったが(−1.17~−0.94),視床の容積 変化率はサブグループ間で異なっており(−3.56~−1.31),ガドリニウム造影 病変あり(−3.56),疾患活動性あり(−2.15),45歳以下(−2.12),罹病期間 15年以下(−2.09)のサブグループで変化率がより大きかった.全てのサブグ ループにおいて,M12–24にわたり,シポニモド群の方が偽薬群よりもcGM萎 縮 が 48~116% 少 な く(p<0.01), 視 床 萎 縮 が 30~68% 少 な か っ た (p< 0.05). 【結論】シポニモドは,すべてのSPMS患者サブグループ(疾患活動性が低

OD2–4

多発性硬化症患者におけるナタリズマブの安

全性および有効性:5年目の使用成績調査の中

間解析より

1順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科, 2関西多発性硬化症センター,3バイオジェン・ジャパン株式会社 横山 よこやま  和正かずまさ1,齋田 孝彦2,神田三智弘3,佐藤 竜介3,牧岡 大器3 金  明寿3 【目的】ナタリズマブ(NTZ)使用成績調査(PMS)の中間解析から安全性 と有効性について検討する.【方法】NTZ投与の多発性硬化症(MS)患者全例 を対象としたPMS(2019年8月7日時点)から,安全性解析は同意の得られた 403名を対象とし,有効性解析は同意の得られた,治験からの患者を除いた再 発寛解型MS患者(NTZ–naive)197名で,ベースライン時の背景別(投与1 年前の再発回数,EDSS,免疫調整剤の治療歴(DMT))に年間再発率(ARR) を負の 2 項回帰モデルで解析した.【結果】NTZ 平均投与期間(±SD)は 11.4±9.4ヶ月,中止率は32.8%,主な中止事由は進行性多巣性白質脳症の懸念 (13.6%)であった.有害事象と重篤な有害事象の発現率はそれぞれ 20.6%, 7.7%であった.NTZ–naiveの投与前1年と投与期間中(12ヶ月以上)のARR 減少率は DMT 前使用数でそれぞれ,0 剤で 90%(0.95 to 0.05,p<0.0001, n=20), 1 剤 で 72%(0.74 to 0.02, p<0.0001, n=43), 2 剤 以 上 で 80% (1.09 to 0.29,p<0.0001,n=44)であった.【結論】本解析で安全性に関す る新たな懸念はなかった.NTZ–naiveにおける全サブグループのARRは投与 前1年と比べ有意に減少し,また,ARRはDMT使用数が少ない方が低い傾向

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OD2–5

フマル酸ジメチル医薬品リスク管理計画書に

おける安全性検討事項の発現状況–使用成績調

査中間報告より

1順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科,2さっぽろ神経内科病院, 3東北医科薬科大学医学部老年神経内科学, 4バイオジェン・ジャパン株式会社, 5国立精神・神経医療研究センター神経研究所 横山 よこやま  和正かずまさ1,深澤 俊行2,中島 一郎3,佐藤 竜介4,牧岡 大器4 佐藤 弥生4,金  明寿4,山村  隆5 【目的】フマル酸ジメチル(以下,本剤)に掛かる医薬品リスク管理計画書 (RMP)における安全性検討事項の発現状況を報告する.【方法】本剤投与患者 全例を対象とした使用成績調査にて,患者同意の得られた2019年3月26日時 点(本剤投与後1年迄)のデータを集計した.【結果】対象患者700名において 有害事象(AE)は481名(68.7%),重篤なAEは56名(8.0%)で報告された. 「重要な特定されたリスク」のAEは,白血球数減少およびリンパ球数減少106 名(15.1%),進行性多巣性白質脳症(PML)以外の感染症 29 名(4.1%),肝 機能障害(臨床検査値異常含む)88 名(12.6%),潮紅185 名(26.4%),消化 器症状167名(23.9%)で報告され,PML,急性腎不全,アナフィラキシーの 報告はなかった.「重要な潜在的リスク」である悪性腫瘍は子宮頸部癌1名が報 告され,本剤と抗悪性腫瘍剤又は免疫抑制剤と併用した報告はなかった.【結 論】本剤投与(1年以下)患者において安全性検討事項の発現状況は治験や実 臨床での既報告と同様であった.当日は2020年3月26日時点のデータで発表 を行う.

OD2–6

再発型MS患者を対象としたオファツムマブと

テリフルノミドの比較検討:ASCLEPIOS I,

II

試験

ノバルティス ファーマ株式会社 ガブリエレがぶりえれ ディコーミテでぃこーみて 【目的】再発型MSにおけるオファツムマブ(OMB)の有効性・安全性をテ リフルノミド(TER)と比較検討する.【方法】ASCLEPIOS I,II試験は,二 重盲検,ダブルダミー,実薬対照,多施設共同の同一デザイン試験であり, ベースライン時EDSS が0~5.5 の再発型 MS患者を対象とした.患者を OMB 20mg /4週(皮下投与)又はTER 14mg/日(経口投与)群に1:1の比率で無作 為に割り付け,試験期間は最長 30ヶ月,主要評価項目は年間再発率(ARR) とした.【結果】両試験で 1882 例(I:927 例,II:955 例)が組み入れられ, 各群のベースライン特性に大きな違いは認めなかった.TER群に比較しOMB 群において,ARR の低下(I:50.5%,II:58.5%),Gd 増強 T1 病変の減少 (I:97.5%,II:93.8%),新規/拡大 T2 病変の減少(I:82.0%,II:84.5%) を認めた(全て p<0.001).3ヶ月,6ヶ月持続する身体障害増悪 リスクは, OMB群でそれぞれ34.4%(p=0.002),32.5%(p=0.012)低下した.OMB群 とTER群での有害事象の発現率は,各83.6%,84.2%であり,重篤な感染症の 発現率は各2.5%,1.8%,悪性腫瘍の発現率は各0.5%,0.3%であった.【結論】 OMBは有効性においてTERよりも優れ,安全性プロファイルも良好であった.

OD2–7

日本とロシアの再発型多発性硬化症患者を

対 象 と し た CD20 抗 体 (オ フ ァ ツ ム マ ブ)

APOLITOS

試験

ノバルティスファーマ株式会社グローバル医薬品開発本部 丸山サラディーニまるやまさらでぃーに 惠子けいこ 【目的】日本とロシアの再発型多発性硬化症(RMS)患者を対象に抗CD20/ B細胞抗体オファツムマブ(OMB)とプラセボの有効性,安全性,地域間一貫 性を評価する.【方法】対象はEDSSスコア0~5.5で疾患活動性の高い(2年以 内の再発が1回以上かつ1年以内に脳MRI活動性あり)RMS患者64例(日本 人32例,ロシア人32例).24週間のOMB・プラセボのランダム化二重盲検投 与期の後に,24週以上の非盲検OMB投与期間を設けた.主要評価項目は24週 までの累積Gd造影脳病変数とした.【結果】24週までの累積Gd造影病変数は, プラセボ群に比較してOMB群で93.6%減少し(p<0.001),地域間に大きな差 はなかった(日本:86.4%,ロシア:100%).年間再発率はプラセボ群に比較 して OMB 群で 58.0% 減少傾向であった(p=0.119).有害事象は OMB 群で 69.8%,プラセボ群で81.0%の患者に発現.最も頻度の高い有害事象は注射関 連反応であった(OMB 群:20.9%,プラセボ群:19.0%).重篤な有害事象と してCIDPがOMB群1例に発現したが中止には至らなかった.死亡,日和見感 染,悪性腫瘍は発現しなかった.【結論】日本人及びロシア人の疾患活動性が 高いRMS患者において,OMBは一貫してプラセボよりも高い有効性を示し, 新たな安全性シグナルは認められなかった.

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OD3–1

植込み型心臓電気デバイスを有する患者の急

性期脳梗塞治療の現状

1埼玉医科大学国際医療センター脳神経内科・脳卒中内科, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科・不整脈科, 3埼玉医科大学国際医療センター画像診断科 早津はやつ 仁美ひとみ1,加藤 裕司1,林   健1,加藤 律史2,内野  晃3 高尾 昌樹1,高橋 愼一1 【目的】近年,超急性期脳梗塞に対する再灌流療法の適応判断はMRI所見に 基づき行われることが多くなったが,ペースメーカー等植込み型心臓電気デバ イス(CIED)を有する患者ではいまだにCTに依存しなければならない.今 回,その現状を検討した.【方法】2007年4月~2016年3月の間,急性期脳梗 塞の診断で入院した患者のうち,CIEDを有する45例を対象とした.入院時の 頭部単純CTで責任病巣を同定できた群(A群)とできなかった群(B群)に分 け臨床像を比較するともにrt–PA(アルテプラーゼ)静注療法の適応判断を検 証した.【結果】B群(n=24)ではA群(n=21)に比し,有意差はなかった が発症から来院までの時間が早く(中央値:1 vs 2.25時間),皮質下白質梗塞 の割合が多かった(5 vs 34%).退院時の mRS スコアは両群間で有意差はな かった.rt–PA静注療法の適応時間内の来院が31例あったが,施行例は4例で あった.施行しなかった理由として軽症ないし急速改善が12例と最多であった が,家族の拒否が5例あった.拒否した理由はMRIを撮影できないことによる 情報不足が一因であった.【結論】CIEDを有する患者の超急性期再灌流療法で は,CT所見に基づくリスク・ベネフィット予測となるため,医師,患者家族 の躊躇を招きundertreatmentに繋がった可能性が考えられた.

OD3–2

血栓回収後に再閉塞を繰り返し た RNF213

p

.R4810K遺伝子多型陽性急性脳主幹動脈閉塞

症の1例

国立循環器病研究センター脳神経内科 吉本 よしもと  武史たけし,福間 一樹,田中 智貴,鷲田 和夫,服部 頼都, 猪原 匡史

【緒言】RING finger protein 213(RNF213)p.R4810K 遺伝子多型は日本 人のアテローム血栓性脳梗塞の強力なリスク遺伝子であり,頭蓋内血管内皮の 脆弱性との関連が報告されている.【症例】69歳,男性.右利き.既往歴に特 記事項なし.某日,突然の右上下肢の痺れを自覚し,救急搬送された.受診 時,意識障害,運動性失語,右不全片麻痺を認め,NIHSSスコアは12であっ た.MRIで左基底核,左頭頂葉皮質に急性期脳梗塞を認めた.MRAで左中大 脳動脈(MCA)近位部の閉塞を認めた.MRI 撮影後,意識障害が増悪, NIHSSは25となり,血管内治療を実施した.血栓吸引によって左MCA の再 開通を得たが,閉塞部位に血栓透亮像を認めた.アスピリン200mgとクロピド グレル300mgを投与したが再閉塞したため,経皮的血管形成術(PTA)/頭蓋内 ステント留置術を施行,再開通を得た.12時間後,MRAで左MCA再閉塞を認 め,再度PTAを施行,再開通を得た.術後,運動性失語,右不全片麻痺が後遺 した.3ヶ月後 mRS スコアは 3 であった.RNF213 p.R4810K 変異は陽性で あった.【考察】頭蓋内動脈狭窄とMT後再閉塞の関連は報告されているが,本 症例では頭蓋内動脈狭窄は明らかでなかった.血栓吸引デバイスの物理的刺激 がRNF213 p.R4810K変異による血管内皮脆弱性が増悪し,in–situ thrombot-ic occlusionを来したと考えた.RNF213 p.R4810K変異検査は,MT後の再閉 塞のリスク評価に有用である可能性がある.

OD3–3

急性期脳梗塞に対する血管内治療後にdelayed

leukoencephalopathy

を発症した80歳女性例

東海大学医学部内科学系神経内科 水間みずま 敦士あつし,湯谷佐知子,今関 良子,永田栄一郎,瀧澤 俊也 症例は80歳女性.3ヶ月前に左不全麻痺で当院搬送となり,右中大脳動脈閉 塞・心原性脳塞栓症の診断で血栓回収術を施行された.その後,回復期リハビ リ病院へ転院となったが,入院中に全身性強直間代性痙攣を認めたため当院へ 搬送となった.来院時,JCS2共同偏視はみられず左上下肢の不全麻痺を認め た.頭部MRI所見上,3ヶ月前には認めなかった両側大脳皮質下から深部白質 にかけての新規病変を認めた.採血では生化学検査や各種自己抗体,腫瘍マー カーの異常値はなく,血液像で異型リンパ球を指摘されたことから悪性リンパ 腫が鑑別に考えられた.腎機能障害があるため造影MRIは行えずMRSでは明 らかな腫瘍パターンを認めなかった.脳神経外科にて右前頭葉の病変部位から 脳生検を施行したが悪性腫瘍を示唆することは得られなかった.鑑別診断と発 症までの治療経過よりカテーテル治療後のdelayed leukoencephalopathyが疑 われ,ステロイドパルス療法を計2クール施行した.治療開始後から左不全麻 痺の改善と病変部位の縮小が見られ第78病日に再度回復期リハビリ病院へ転院 となった.これまでカテーテル治療後のdelayed leukoencephalopathyは動脈 瘤に対するcoilingの際に起こると報告されてきた.急性期脳梗塞に対する血栓 回収術後の経過における delayed leukoencephalopathy の報告はほとんどな く,貴重な一例と考えられた.今回病理所見と経過に基づいた診断根拠と文献 的考察を交えて報告する.

OD3–4

直接経口抗凝固薬服用中に発症した心原性脳

塞栓症患者の凝固マーカーと来院時重症度の

臨床的検討

埼玉医科大学国際医療センター脳神経内科・脳卒中内科 藤田ふじた 宗吾しゅうご,出口 一郎,長田 高志,高尾 昌樹,高橋 愼一 【目的】これまでDirect oral anticoagulant(DOAC)内服中に発症した脳 梗塞の発症時重症度については検討されている.しかし,凝固活性との関連に ついての検討は十分行われていない.我々は,DOACに関連する凝固系マー カーとして,来院時の activated partial thromboplastin time(APTT)およ びprothrombin time(PT)を用いて,DOACの服用中に発症した脳梗塞患者 の来院時重症度との関連について検討した.【方法】当院に入院した心原性脳 塞栓症患者のうち,DOACが処方されており,かつADLが自立していた71例 を対象とし,凝固系マーカー延長群(直接トロンビン阻害薬ではAPTT,Χa因 子阻害薬ではPT)と非延長群に分け NIHSS scoreを比較した.【結果】71 例 中,直接トロンビン阻害薬が21例,Χa因子阻害薬が50例に処方されていた. 延長群(37例)および非延長群(34例)の凝固マーカーの平均値はPT(17.4 vs. 12.8 P<0.001),PT–INR(1.5 vs. 1.1 P<0.001),APTT(44.8 vs. 30.4 P= 0.003)であった.入院時NIHSS score(中央値 2 vs. 9.5 P=0.007).脳主幹動 脈閉塞の割合(27% vs. 53% P=0.031).は非延長群で有意に高かった【結論】 DOAC服用中に脳梗塞を発症した際,来院時の凝固系マーカーが延長している 患者では,脳主幹動脈閉塞率が低く,軽症である可能性が示唆された.

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OD3–5

急性期虚血性脳卒中における誤嚥性肺炎合併

症例の検討

日本大学医学部内科学系神経内科学分野 秋本 あきもと  高義たかよし,廣瀬  聡,溝口 知孝,横田 優樹,二宮 智子, 原   誠,石原 正樹,森田 昭彦,中嶋 秀人 【背景】誤嚥性肺炎(AP)合併は脳卒中の予後不良因子の一つであり早期に 発症を予測することが重要である.今回,急性期虚血性脳卒中(AIS)におけ るAP合併例の臨床的特徴と発症の予測因子について検討した.【方法】2015 年10月26日から2017年10月26日までAISで入院した患者をAP合併群,非合 併群に分け,入院時の既往歴,現症,画像所見,退院時mRS,在院日数を比 較し,そのうち有意差があり交絡が少ないと推測される項目について多変量ロ ジスティック回帰分析を行った.【結果】解析期間内に302例のAIS患者が入院 し,うち25例で入院中にAPの合併を認めた.AP合併群/非合併群の間で高血 圧症(84% vs 62%,P=0.021),構音障害(60% vs 35%,P=0.014),テント 下病変(44% vs 21%,P=0.012),年齢(以下,中央値:76 vs 73 歳,P= 0.041),GCS(15 vs 15,P<0.001),来院時 NIHSS(4 vs 2 点,P=0.001), 在院日数(46 vs 20日,P<0.001),退院時mRS(4 vs 1,P<0.001)で有意 差を認めた.テント下病変,年齢,来院時NIHSSを独立変数として多変量解 析を行ったところ来院時NIHSS(OR 1.077,95%CI 1.011–1.147),テント下 病変(OR 3.461,95%CI 1.436–8.340)で有意差を認めた.【考察】AIS 例で は,来院時NIHSS高値例やテント下に病変がある例でAPを合併しやすく,合 併例では在院日数の長期化や予後不良が予測されるため,その発症に留意する 必要がある.

OD3–6

重症アトピー性皮膚炎の経過中,多発脳梗塞を

呈した56歳男性例

1東京慈恵会医科大学葛飾医療センター脳神経内科, 2東京慈恵会医科大学附属柏病院 浅原 あさはら  有揮ゆうき1,宮川 晋治2,鈴木 正彦1 重症アトピー性皮膚炎の経過中,多発脳梗塞を呈した56歳男性例を報告す る.53歳時から全身の鱗屑,苔癬化を伴うアトピー性皮膚炎のため当院皮膚科 へ通院していた.54歳時から左上肢の動かしにくさを自覚するようになった. 来院4ヶ月前より歩行が不安定となり,CTで両側大脳白質に多発する陳旧性梗 塞を認めた.歩行能力および認知機能が階段状に低下し,自宅で倒れていると ころを発見されて救急搬送となった.来院時のMRIでは左前頭葉白質に急性期 脳梗塞を認めた他,両側大脳白質および皮質,小脳,脳幹に亜急性から陳旧性 病変が混在する多発脳梗塞を認めた.また,全身の皮膚に苔癬化を認め血液検 査でIgEが81,399U/mlと著明に上昇していた.明らかな血管病変や心内塞栓 源なく,凝固系異常や膠原病関連抗体は検出されなかった.入院後,シロスタ ゾール内服を開始しリハビリテーションで介助下に歩行可能となった.皮膚症 状はルパタジン内服およびステロイド軟膏を開始後著明に改善し IgE は 65,030U/ml まで低下した.退院後,明らかな脳梗塞の再発を 1 年間認めな かった.アトピー性皮膚炎は血小板や凝固因子の活性化により脳梗塞のリスク 因子となりうることが指摘されており,本例における多発脳梗塞の機序として 関連が示唆された.同様の症例が潜在していると考えられ,皮膚症状に対する 積極的な加療で脳梗塞発症のリスクを軽減できる可能性が考えられた.

OD3–7

第 9 病日に神経症候が増悪した後下小脳動脈

解離による脳梗塞の1例

1国立病院機構仙台医療センター神経内科, 2国立病院機構仙台医療センター放射線科 小池こいけ 大吾だいご1,突田 健一1,渡辺 源也1,佐藤 一輝1,山本 尚輝1 川崎永美子1,栗原 紀子2,鈴木 靖士1 【目的】稀ではあるが後下小脳動脈(PICA)に限局した動脈解離を生ずる症 例がある.当科で経験した若年男性例を報告する.【症例】特記すべき既往の ない41歳男性.某日夜就寝時は体調不良なし.翌日(第1病日)起床時,左後 頚部から左側頭部にかけての痛みを自覚.第4病日ふらつきが出現.同日夜間 に後頚部痛が増強し,当院救急外来を受診.頭部CTで脳実質に異常なく,対 症療法にて帰宅.ふらつき,頭痛が続くため第8病日当科受診.左上下肢,体 幹に軽度の失調あり.頭部CTで左小脳半球PICA領域に淡い低吸収域を認め た.MRIで同部位に新鮮梗塞.MRA で左椎骨動脈に広狭不整なし.左 PICA は近位部が不整に描出され,直後に途絶.T1強調像にて左PICAの壁内血腫を 示唆する高信号.以上からPICA解離による脳梗塞と診断し入院.第9病日に 延髄外側症候群を呈し,再検したMRIで延髄左背側に新たな梗塞巣を認めた. MRAで左PICAの形態に著変はなかった.【考察】虚血発症の脳動脈解離にお ける急性期の神経症候増悪は数日以内に多い,とする報告が散見されるが,責 任血管毎の症例の蓄積が引き続き重要と思われる.

(11)

OD4–1

振動覚検査による腰部病変部位同定

1高知大学医学部脳神経内科,2国立病院機構大牟田病院脳神経内科 大津留おおつる 翔しょう1,永松 秀一1,笹ヶ迫直一2,古谷 博和1 【目的】既に私達は振動覚検査(VS)を改良してVSを5段階に分類する手 技(MVS)を報告しているが,今回これを用いて神経根病変部位の同定が可能 かどうか検討した.【方法】MVSでは下肢の内顆と外顆のVSを5段階で評価す る.内顆と外顆で1段階以上VSに差を認めた症例を異常と判定し,MVSで外 顆に比して内顆の障害が強い場合は Th12 から L3 までの胸腰椎神経根病変 (ULR)があると診断し,内顆に比して外顆の障害が強い場合は,L4からS1 までの下位腰仙椎神経根病変(LLR)があると診断した.国立病院機構大牟田 病院および高知大学脳神経内科を受診し,最終診断が腰椎,仙椎の神経根障害 になり,MVS を含む神経所見と腰部 MRI 画像検査を行った 80 例について, MVSの結果と画像検査の結果(多発性に病変が見られた場合は最も障害の激 しい部位)をχ2検定を用いて検討した.【結果】臨床診断(MVS)では31名 の病変がULR,35名がLLR,判定不能が14名となった.一方画像検査でこれ らの症例は 51 名が ULR,21 名が LLR,8 名が判定不能であり,MVS は有意 (p<0.05)に画像検査と一致することが判明した.【考察】MVSの結果は画像 検査所見と有意に一致しており,ベッドサイドで胸腰椎,仙椎の神経根障害部 位を同定するうえで有用な方法と考えられた.

OD4–2

ギ ラ ン ・ バ レ ー 症 候 群 を 合 併 し た

Neuro-psychiatric systemic lupus erythematosus

(NPSLE)の1例

1近江八幡市立総合医療センター脳神経内科, 2京都府立医科大学脳神経内科 松尾まつお 宏俊こうしゅん1,田中 章浩1,2 症例は77歳,男性.X年8月上旬頃からの両手関節腫脹に対して,当院で関 節リウマチと診断され,ステロイド製剤(PSL 10mg/日)の内服による治療を 開始された.同年 10 月頃から両上肢のしびれが出現し,11 月より構音障害, 嚥下困難が進行したので入院とした.その後,これらの症状の増悪に加え,四 肢の脱力も出現した.頭部MRI,胸部CTでは責任病巣を同定できなかったが, 神経伝導検査での正中神経,後脛骨神経刺激にて時間的分散を認め,髄液検査 で蛋白細胞解離を認めたことからギラン・バレー症候群(以下,GBS)と診断 した.先行症状として多発関節炎があり,採血検査にて白血球の減少と抗核抗 体の陽性を認め,ここに神経症状としての GBS が加わったことで Neuro-psychiatric systemic lupus erythematosus(以下,NPSLE)と考えられた. 治療として γ グロブリンの投与(I V Ig),ステロイド製剤の投与(m–PSL 500mg /日×3日間,PSL 45mg/日),血漿交換を順次行った.その結果,一定 の改善が得られ,第44病日にリハビリ病院へ転院した.同院では約1ヶ月間リ ハビリテーションを実施し,独歩で自宅へ退院した.GBS発症から約3ヶ月で 回復した.本例は GBS の治療を優先して実施し,その効果が確認できた. GBSを合併したNPSLEにつき,文献的考察を加えて報告する.

OD4–3

遠位型特発性腕神経叢炎の診断と治療効果判

定にMR neurographyが有用であった1例

藤田医科大学病院脳神経内科 長尾ながお龍之介りゅうのすけ,新美 芳樹,島 さゆり,水谷 泰彰,植田 晃広, 伊藤 瑞規,渡辺 宏久 症例は21歳男性.受診2週間程度前の起床時から,左C7からTh1領域に痛 みが出現.徐々に痛みは軽減したがC7,C8領域にしびれが残存し,亜急性に 進行するC6からTh1髄節支配と思われる筋に筋力低下を認め当院受診.受診 時主にC8髄節支配筋に高度筋力低下,主にC7,Th1髄節支配筋に中等度筋力 低下,C6髄節支配筋の一部で軽度の筋力低下を認め,感覚過敏をC8領域に中 等度,C7領域に軽度認めた.先行感染や外傷歴,手術歴,ワクチン接種や家 族歴はなかった.MR neurographyでは左下部腕神経叢に限局した信号強度の 上昇と腫大を認めた.頚椎単純写真とMRIは正常で,血液検査では炎症反応の 上昇や各種ビタミン,自己抗体などの異常はなく,髄液検査も正常であった. 神経伝導検査では左尺骨神経でCMAPとSNAPの軽度低下を認め,F波の描出 も不良であった.以上より遠位型特発性腕神経叢炎と診断し,ステロイドパル ス療法を3クール行い,プレドニゾロン 30mg/dayの内服を継続したところ筋 力低下と感覚過敏は緩徐に改善を認め,症状の改善に伴いMR neurography所 見も正常化した.腕神経叢炎において診断だけでなく治療効果判定にも MR neurographyは非常に有用であることを捉えた貴重な症例と考え,文献的考察 を含めて報告する.

OD4–4

血清 M 蛋白を認めなかった POEMS 症候群の

1

例:診断と治療に関する考察

1名古屋大学脳神経内科,2名古屋大学病院検査部 鳥居とりい 良太りょうた1,土方 靖浩1,坪井  崇1,熱田 直樹1,小池 春樹1 中村 友彦2,勝野 雅央1 症例は78歳男性.X年8月末より歩行時のふらつきを自覚.症状は緩徐に進 行し,9月中旬に近医を受診し,下肢の筋力低下および感覚低下を指摘され, 10月上旬に紹介受診.初診時,脳神経に異常所見なく,上肢は正常で下肢遠位 優位の筋力低下,足底の異常感覚を認めたが独歩可能であった.その後,症状 は急速に進行,握力低下が出現し下肢筋力低下が増悪,下垂足を認めて独歩困 難となった.四肢の腱反射は消失し,神経伝導検査で脱髄性の末梢神経障害パ ターンを認め,髄液検査では蛋白細胞解離を認めたことから,慢性炎症性脱髄 性多発神経炎の可能性を考慮しIVIgを行ったが改善せず.身体所見で体幹部に 血管腫,両下腿の多毛と浮腫を認め,血清VEGFは2870pg/mlと高値であり, 血清M蛋白は認めなかったが尿中ベンスジョーンズ蛋白が陽性となりPOEMS 症候群と診断した.Lenalidomideにて加療し,血清VEGFの低下と症状改善 を認め自宅退院となった.若干の文献的考察をふまえ報告する.

(12)

OD4–5

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に伴う末梢神

経障害の初期治療と長期予後の関連

1東京都立神経病院脳神経内科, 2東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病科 森島 もりしま   亮りょう1,清水 俊夫1,頼母木直樹2,横川 直人2,高橋 一司1 【目的】好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は 65% に末梢神経障害 (EGPA–PN)が伴い,ADL 低下と関連する.近年血管炎治療の進歩に伴い, 分子標的薬・免疫調整薬を初期から併用する機会が増えたが,これらの EGPA–PNに対する効果は不明であり,早期積極的治療がEGPA–PNに有効か どうかを検討する. 【方法】1999年4月から2019年3月までに2施設でEGPAと診断され,電気 生理学的又は病理学的にEGPA–PNが証明された24例を対象とした.初診時 と治療介入一年後の2時点で以下のパラメーターの変化量を測定し,積極的治 療群と対照(ステロイド単剤治療)群で比較検討した;脛骨神経の複合筋活動 電位(ΔtibCMAP),腓腹神経の感覚神経活動電位(ΔsurSNAP),前脛骨筋筋 力(ΔTA),および腓腹筋筋力(ΔGC).

【結果】ΔtibCMAP は 26 神経,ΔsurSNAP は 30 神経,ΔTA および ΔGC は 各々38筋で計測した.積極的治療群は対照群と比較してΔtibCMAP(0.36mV vs. −0.49mV),ΔTA(1.5 vs. 0.5),ΔGC(1.1 vs. 0.5)で改善が大きい傾向が あったが,有意差はなかった.ΔsurSNAPは積極的治療群でより大きく低下し ていた(−4.10µV vs. −1.23µV). 【結論】後方視的・少数例の検討であり,有意差は認めなかったが,早期の 積極的治療によりEGPA–PNの運動機能は改善する可能性があり,より多数例 での前向き検討を要する.

OD4–6

脳梗塞,末梢神経障害を伴った顕微鏡的多発

血管炎に対し,リツキシマブで寛解導入した

72

歳女性例

1聖マリアンナ医科大学内科学脳神経内科,2新百合ヶ丘総合病院神経内科 鏑木 かぶらぎ   圭けい1,伊佐早健司1,鈴木  祐1,2,佐々木 直1,長谷川泰弘1,2 山野 嘉久1 症例は高血圧症,痛風の既往がある72歳女性で,X年10月上旬に両側足底 に痺れる疼痛を自覚した.同年11月中旬に顔面を含む左片麻痺で前医搬送され 右放線冠に急性期脳梗塞を認め,発症4.5時間以内であったことからrt–PA静 注療法が施行された.入院時血液検査で Cr 2.58mg/dL と腎障害を認め, MPO–ANCA陽性であり腎生検を含めた精査加療目的に当院へ転院となった. 転院時,左片麻痺に加え下肢末梢優位の感覚障害,左下肢腱反射減弱を認め, 神経伝導検査で両側腓骨神経CMAPは表出なく,両側正中神経CMAP低下を 認め多発神経炎と考えられた.腎生検で糸球体に半月体形成認め,ANCA関連 血管炎に伴う急速進行性糸球体腎炎に矛盾なく顕微鏡的多発血管炎と診断し た.診断後にステロイドセミパルス療法(mPSL 500mg/日)3日間に加え,後 療法としてPSL 1.0mg/kg/日を投与した.腎障害は経時的に改善傾向となった が脳血管障害,腎障害,末梢神経障害を来しているためより強力な寛解導入療 法が必要と考えリツキシマブを投与した.2クール投与後に血液検査にて著明 なCD20サブセット抑制を確認し,十分な効果が得られたと判断し回復期病院 へ転院となった.脳梗塞,末梢神経障害を来した顕微鏡的多発血管炎に対しリ ツキシマブを用いて寛解導入を行った症例は少なく,文献的考察を加えて報告 する.

OD4–7

パチシランを用いた遺伝性 ATTR アミロイ

ドーシスに対する治療経験

1信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科,2佐久総合病院 高橋 たかはし  佑介ゆうすけ1,中尾  聡1,高曽根 健2,加藤 修明1,関島 良樹1 【背景】遺伝性ATTRアミロイドーシスに対する疾患修飾療法として,肝移 植,四量体安定化薬がこれまで用いられていたが,2019年新たにRNA干渉薬 であるパチシランナトリウムが保険収載となった.本剤は肝臓での変異型およ び野生型TTRmRNAを分解することで血中TTR濃度を減少させ,症状の進行 を抑制する.当院でのパチシランを用いた治療経験を報告する.【対象】2019年 9月~2020年5月の間に当院でパチシランを導入した遺伝性ATTRアミロイドーシ ス患者計25名.TTR遺伝子型はV30M(p.V50M)が16名,F44S(p.F64S)が 2名,A36P(p.A56P),D38A(p.D58P),E42G(p.E62G),S50R(p.S70R), T60A(p.T80A),V107I(p.V127I)が各1名.3名の患者は肝移植後で,2名の 患者はドミノ肝移植後の医原性アミロイドーシスであった.【結果】パチシラン により血中TTR濃度の著明な低下を認め(投与前25.4mg/dL,投与後3.9 mg / dL),4例で消化管症状やしびれなどの自覚症状の改善が認められた.有 害事象として,投与関連反応が2名,肝障害,ふらつき,目眩,下痢,倦怠感, 心不全の悪化を各1名で認めた.心不全が悪化した1例では投与中止したが,24名 は治療継続している.【結論】パチシランにより血中TTR濃度が著明に低下し, 一部の患者で自覚症状の改善が見られた.今後,Neuropathyimpairmentscore (NIS)やアミロイドイメージングなどを用いた長期的な治療効果の評価を実施 してゆく.

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