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1美原記念病院,2昭和大学,3群馬大学

菊地きくち  豊ゆたか1,中澤 将城1,宮川 哲夫2,白吉 孝匡1,金井 光康1, 古井  啓1,池田 佳生3,美原  盤1

【症例】57歳女性.MSA改訂診断基準にてMSA–P probable.53歳時に歩 行障害にて発症.57歳時にstridorが出現したため就寝時のNPPVが開始と なった.NPPV開始後1ヶ月よりNPPV下のstridorが増悪し,酸素飽和度指数

(ODI)37.6 / h,SpO290%以下が睡眠時間の20.4%,日中過眠,起床時頭痛の ためNPPVタイトレーションを開始した.【4DCTによる上気道評価】320列 CTにて条件1:NPPVなし仰臥位,条件2:passive回路NPPV,条件3: active回路NPPVの3条件をそれぞれ10秒間撮影し,声帯開大面積(平均±

SD)と声帯開大面積の変動係数(CV)を評価した.声帯開大面積は条件1: 84.3±13.0cm2,CV15.4%,条件2:90.4±10.4cm2,CV11.4%,条件3:98.2± 7.2cm2,CV7.3%とactive回路NPPVにて声帯開大が得られ変動が少なかった.

3条件ともに喉頭蓋軟化症は観察されなかった.【結果】4DCTにて声帯開大が 確認できたactive回路NPPVにて就寝し,ODI1.2 / h,SpO290%以下が睡眠時

間の0.2%となり,日中過眠,起床時頭痛が軽快した.【考察】4DCTによる上

気道イメージングは喉頭内視鏡では評価が難しいNPPV下における上気道形態 の定量化が可能であった.本例ではactive回路がpassive回路よりも声帯開大 に有用であったことから,声帯開大の変動性が高い症例では選択肢の一つとな りうる.本例の声帯開大の変動性亢進はMSAにおける上気道狭窄の病態を反 映している可能性が示唆された.

OD14–6 異常姿勢で発症し卵巣腫瘍による傍腫瘍性運 動ニューロン疾患に対し卵巣腫瘍摘出術が著 効した 85 歳女性例

1聖マリアンナ医科大学脳神経内科,2新百合ヶ丘総合病院

伊佐早いさはや健司けんじ1,菊池 崇之1,佐々木 直1,長谷川泰弘1,2,山野 嘉久1 症例は85歳女性.X−2年から背中の曲がり,X−1年1月から歩行障害,8 月から首下がり,10月より易転倒性が出現.診察上では後方へ仰け反る異常姿 勢あり,頸部筋,傍脊柱筋,下肢近位筋優位の筋力低下,筋萎縮,両側

Babinski反射陽性を認めた.首下がり,異常姿勢は頸部筋及び傍脊柱筋の筋

力低下に由来すると考えられた.血算・生化学検査では異常を認めず,髄液検 査では細胞数上昇や蛋白上昇は認めなかった.針筋電図では上腕二頭筋,僧帽 筋,傍脊柱筋にて脱神経所見を認めた.腫瘍検索にて施行した胸腹部CTでは 骨盤内に巨大腫瘤を認め,子宮に造影不良な低吸収域が散存した.骨盤MRIで は子宮右上に直径7cmの多房性嚢胞性病変あり,不整な隔壁,内部に造影効果 を認めた.抗神経抗体ではYo抗体陽性であった.以上より卵巣腫瘍による傍 腫瘍性運動ニューロン疾患と考え産婦人科にて卵巣腫瘍摘出術が行われた.直 後より首下がりや異常姿勢の著明な改善を認め,歩行障害も消失した.摘出し た腫瘍は病理にて甲状腺腫と診断された.肺癌や卵巣悪性腫瘍による傍腫瘍性 運動ニューロン疾患の報告は散見される.運動ニューロン疾患の診断におい て,治療可能な傍腫瘍性運動ニューロン疾患の鑑別は治療可能の観点から非常 に重要である.

OD14–7 当院病理解剖同意取得例における近年の傾向

国立病院機構医王病院北陸脳神経筋疾患センター脳神経内科 駒井こまい 清暢きよのぶ

【目的】当院は院内で病理解剖を行うことによって地域における神経系難病 拠点病院としてだけでなく日本神経学会や日本内科学会の研修施設としての役 割を果たしている.しかし年間剖検数には大きな変動があり,剖検同意取得は 容易ではないため,同意取得に至った過程を振り返ることによって剖検説明時 等の要点を明らかにする.【方法】方法は後方視的観察研究.2008年1月から 2020年3月に当院で行った病理解剖123例の診療録から,臨床診断や病理解剖 同意取得に至った過程を確認できた30例を抽出し分析した.【結果】対象の死 亡時年齢は平均72.3(52~90)歳,原疾患の内訳は筋萎縮性側索硬化症21例,

パーキンソン病3例,進行性核上性麻痺または皮質基底核変性症3例,多系統 萎縮症2例,筋強直性ジストロフィー1例だった.剖検同意は22例で配偶者が 行い,4例では患者自身の事前指示が,2例では子の事前承諾があった.また調 査期間前半(2008–2013)より後半(2014–2020)で事前指示に剖検を含める ことが増えていた(前半1例,後半5例).【結論】剖検は神経疾患の病態解明 に重要な意味を持つが,同意取得は必ずしも容易ではない.今回の分析では終 末期における事前指示として剖検についての意思確認を行う機会が近年増えて おり,比較的円滑な同意取得につながった可能性があった.

OD15–1 ラット局所脳虚血モデルにおける iPSC 由来 間葉系幹細胞の脳保護効果の検討

1日本医科大学大学院神経内科学分野,

2東京大学医科学研究所遺伝子・細胞治療センター分子遺伝医学分野,

3日本医科大学大学院分子遺伝学分野 荒川あらかわ

 将史まさふみ1,仁藤智香子1,宮川世志幸3,坂本 悠記1,高橋 史朗1, 笠原 優子3,須田  智1,岡田 尚巳2,木村 和美1

【背景】脳梗塞症例に対する細胞治療として,間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)の自家および他家移植治療の臨床試験が行われている.し かしヒト生体由来のMSCには採取時の生体侵襲や高齢患者での採取細胞不足,

培養による細胞変性・老化など,安定した供給には多くの課題がある.そこで 私たちは,iPSCを分化誘導させたiPSC由来間葉系幹細胞(iMSC)における 脳保護効果の検討を行った.【方法】神経堤細胞を中間体としてiPSCをiMSC へと分化させた.雄性SDラットの中大脳動脈を90分間塞栓子にて閉塞し,再 灌流直後にPBS(Vehicle)またはiMSCを静脈内投与した.再灌流後72時間 における梗塞体積と神経学的評価を行った.【結果】虚血再灌流後72時間にお いて,Vehicle群に比べiMSC群では梗塞体積の有意な縮小(239.3±12.7 vs. 196.1±25.7mm3,p=0.046)を認め た.ま た,前肢握力(4.46±0.36 vs. 6.06±0.46 N,p=0.001)およびロタロッドテスト(53.7±19.1 vs.109.3± 24.6秒,p=0.003)においても有意な改善効果を認めた.【結論】iMSCの静脈 投与により虚血再灌流障害の軽減を認め,運動機能の改善が得られた.この新 たな幹細胞治療が虚血後の脳保護効果に寄与する可能性が示唆された.

OD15–2 脳梗塞後に神経細胞を新たに生み出し再生を 目指す~脳内グリア細胞から神経細胞を誘導 する新技術の確立~

岡山大学大学院脳神経内科学 山下やました

  徹とおる,商  敬偉,中野由美子,森原 隆太,佐藤 恒太,

武本 麻美,菱川  望,太田 康之,阿部 康二

【背景と目的】近年,生体内の細胞を直接神経系細胞に誘導するin vivoダイ レクトリプログラミング法が開発されたが,まだ未知の点が多い.今回,我々 は虚血脳内に豊富に存在するグリア細胞を直接神経細胞に誘導し,その治療効 果と安全性を評価した.【方法】8週齢オスのICRマウスを2群(n=13,n= 14)に分け,30分一過性中大脳動脈脳虚血3日後に精製レトロウイルスpMX–

GFPとpMX–Ascl1+pMX–Sox2+pMX–NeuroD1(計1.5–2.0×107/ ul)を虚 血周辺部に投与を行い,7,21,49日後に運動機能評価と組織学的検討をそれ ぞれ行った.【結果】レトロウイルス投与後7,21日後において,GFP陽性細 胞の一部がDcx陽性神経前駆細胞に誘導されており,49日後にはNeuN陽性細 胞が誘導されていることが確認できた.また誘導されたNeuN陽性細胞は長い 軸索とシナプス様構造を持つなど成熟ニューロンに非常に類似した形態を示し ていた.【考察】今回,神経特異的転写因子であるAscl1やSox2,NeuroD1を 脳内グリア細胞に強制発現させることで,神経系細胞に直接的に誘導すること ができた.今後3つの転写因子を発現できる高力価ポリシストロニックベク ター等を用いるなど,更なる検討を行うことが必要である.

OD15–3 幹細胞移植による虚血脳のタンパク分解分子 機構への影響

岡山大学脳神経内科 田所たどころ

  功こう,福井 裕介,山下  徹,劉   夏,角田慶一郎,

商  敬偉,表  芳夫,武本 麻美,菱川  望,太田 康之,

阿部 康二

【背景と目的】最近我々は,脳虚血が軽度から重度になるにつれて,脳虚血 により生じた異常タンパクの処理機構が,BAG3 / BAG1比の上昇を伴ってユビ キチン・プロテアソーム系(UPS)からオートファジーに変換されることを報 告した.しかし,治療がこれらのタンパク処理機構に与える影響はまだ明らか ではない.骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)移植は神経栄養や抗炎症作用など を有し脳梗塞の新規治療法として期待されているが,本研究では急性期虚血脳 に対するBMSC移植療法が,これらのタンパク処理機構に与える影響について 検討した.【方法】30分一過性中大脳動脈閉塞モデルマウスの虚血周辺部に,

BMSCまたはvehicleを再灌流15分後に移植し,2,24,72時間後に組織学的 検討を行った.【結果】BMSC群ではvehicle群と比較し,24,72時間後の脳 梗塞体積が縮小し,72時間後のTUNEL陽性細胞数が減少した.両群で ubiquitin陽性細胞数に差はみられなかったが,BMSC群では2時間後の BAG3 / BAG1比上昇の抑制,2時間後のp62低下,24時間後のLC3–II / I比上 昇の抑制がみられた.【考察】BMSC移植療法は,脳虚血におけるUPSから オートファジーへの変換を抑制した.

OD15–4 急性期脳梗塞患者における体重減少と予後

岡崎市民病院脳神経内科 大山おおやま

  健けん,大塚 健司,斎藤 勇紀,辻  裕丈,中藪 幹也,

小林  靖

【目的】脳卒中患者では積極的な栄養管理が推奨されており,低栄養は患者 の予後規定因子となり得る.我々は急性期脳卒中患者において体重の推移を評 価し,予後への関連性を検討することを目的に調査した.【対象・方法】2014

年1月から2018年12月に急性期脳梗塞で入院した症例のうち,回復期リハビ

リテーション病院に転院した513例を対象とした.後方視的に急性期病院入院 時から回復期病院退院までの体重の推移を抽出し,急性期病院入院期間中にお ける体重減少と機能予後の関連性について調査した.また体重減少を来たした 症例の臨床特徴について検討した.【結果】急性期病院の入院期間中に,入院 時体重より2.7±4.1kg,4.4±6.9%の体重減少を認めた.栄養障害の指標である 5%以上の体重減少は513例中210例でみられた.急性期病院での体重減少は,

回復期病院退院時の機能予後と相関していた.(p<0.05)重症例や心原性塞栓 症の症例では,体重減少を伴う傾向にあった.【結論】40%の症例で栄養障害 の指標をこえる体重減少を来たしていた.重症例で体重減少する傾向にあるこ とから,入院後の絶食や安静に伴う筋萎縮が体重減少の一因となっているもの と考えた.入院直後からの栄養面での介入および離床を促していくことの重要 性が示唆された.

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