2020 年度国際社会科学部卒業論文
ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力に関する研究
:求職者への魅力づけプロセスに着目した実証分析
Work-Life Balance Practices and Organizational Attraction: An Empirical Study of the Applicant Attraction Process
小西 英里
© 2021 Konishi Eri All rights reserved
要旨
本研究は、バウンダリー理論 (boundary theory) に基づき、ワーク・ライフ・バランス施策が求職者へ の組織魅力に与える 影響を 調査しその効果を明 らかに しようとするもので ある。 ワーク・ライフ・バラ ンス施策による組織 の魅力 づけのプロセスを明 らかに するため、媒介要因 と調整 要因についてそれぞれ
仮説を立て検証した。民間企業に就職先が決定した国内大学 4 年生に対し質問紙調査を行い、回収した
104 部の有効回答を用いて分析を行った。その結果、組織的支援予期 (anticipated organizational support)、 組織的家庭支援予期 (anticipated organizational family support) という 2 つの媒介変数がワーク・ライフ・ バランス施策と組織 魅力の 関係を媒介している という 媒介過程を確認した 。また 、組織的支援予期では 部分媒介、組織的家 庭支援 予期では完全媒介が 確認さ れ、組織的家庭支援 予期の 方がより強くワーク ・ ライフ・バランス施 策と組 織魅力の関係性を媒 介して いることが分かった 。一方 、調整効果に関しては 確認されず、仮説と は異な る結果が示された。 これら の分析結果は、今ま で日本 で研究が進められてこ なかったワーク・ラ イフ・ バランス施策の求職 者への 企業魅力づけの効果 につい て明らかにし、政策上 及び企業戦略上のワ ーク・ ライフ・バランス施 策推進 の妥当性を支持した 。また 、ワーク ・ライフ・バ ランス施策の調整要因について検証し、その影響の普遍性を示唆した。最後に、本 研究の結果に基づき、 今後のワーク・ライフ・バランス研究の課題点について示した。 キーワード:ワーク・ライフ・バランス施策、組織魅力、組織的支援予期、組織的家庭支援予期、ワー ク・ファミリー・コンフリクト予期、家庭役割特徴、バウンダリー理論 Abstract
The main purpose of this study is to examine the effect of work-life balance (WLB) practices on organizational attraction (OA) based on boundary theory. Specifically, this study develops a hypothesized model positing that the relationship between WLB practices and OA will be mediated and mode rated by anticipated work-family conflicts, role salience, and organizational general and family support. To test the hypothesized model, a questionnaire survey has been conducted by targeting senior year college students and obtained 104 useful samples. Findings of a hierarchical multiple regression analysis show mediating effects of both
anticipated organizational support (AOS) and anticipated organizational family support (AOFS) on the positive relationship between WLB practices and OA. Specifically, results indicate that AOFS has a stronger mediating effect compared to AOS by revealing that AOFS fully mediated the link between WLB practices and OA. On the other hand, findings show no significant moderating effects in the process by which WLB practices in fluence OA. Theoretical and practical implications for future research based on the result and limitations are discussed. Keywords: work-life balance practices, organizational attraction, anticipated organizational support, anticipated
目次 I. はじめに ... 1 II. 先行研究のレビュー ... 2 III. 研究の目的 ... 3 IV. 概念的枠組みと仮説の設定 ... 4 1. 仮説設定における包括的理論 ... 4 2. ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力: 媒介効果の検討 ... 6 3. 組織的支援予期 / 組織支援家庭予期と組織魅力: 調整効果の検討 ... 8 V. 方法 ... 12 1. 測定尺度 ... 12
1-1 ワーク・ライフ・バランス施策 (work-life balance practices) ... 12
1-2 組織的支援予期(anticipated organizational support) ... 13
1-3 組織的家庭支援予期(anticipated organizational family support) ... 13
1-4 組織魅力 (organizational attraction) ... 13
1-5 ワーク・ファミリー・コンフリクト予期 (anticipated work-family conflict) ... 14
1-6 家庭役割特性 (family role salience) ... 14
1-7 コントロール変数 ... 14 VI. 結果 ... 15 1. 基本統計量 ... 15 2. 仮説の検証 ... 15 2-1 ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的支援予期の媒 介効果の検証 (仮説 1) ... 15 2-2 ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的家庭支援予期 の媒介効果の検証 (仮説 2) ... 16 2-3 組織的支援予期と組織魅力との関係におけるワーク・ファミリー・コンフリク ト、家庭役割特徴の調整効果の検証 (仮説 3a、仮説 3b) ... 16 2-4 組織的家庭支援予期と組織魅力との関係におけるワーク・ファミリー・コンフリ クト、家庭役割特徴の調整効果の検証 (仮説 4a、4b) ... 17 VII. 分析結果のまとめ及び示唆点 ... 18 VIII. 本研究の限界と今後の課題 ... 19 IX. 参考文献 ... 20 X. 参考資料 ... 25 1. パイロット調査のサンプル特性 ... 25 2. 質問項目 ... 26
1 I. はじめに 近年日本では、ワーク・ライフ・バランスというトピックが大きな注目を集めてい る。2007 年に内閣府が策定した仕事と生活の調和 (ワーク・ライフ・バランス) 憲章 (内閣府, 2007) によると、仕事と生活の調和 (ワーク・ライフ・バランス) とは以下の 様に定義される。 国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすと ともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各 段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会 (内閣府, 2007, p.3) 政府は1990 年頃から現在に至るまで様々なワーク・ライフ・バランスの実現に向け た取組みを行っている (武石, 2010)。少子高齢化の急速な進行に伴い、1992 年には育 児休業法施行が制定され、「ファミリーフレンドリー」という考え方が広がった。2018 年に働き方改革関連法案が成立した事から、ワーク・ライフ・バランスに対する一般 の認知度が増加し、近年特に重要な課題として議論されている。また、政府の積極的 な取組みに伴い、民間企業においてもワーク・ライフ・バランスの推進はさらに重要 な課題となってきている。ワーク・ライフ・バランスに関する意識の実態を調査する ために内閣府が行った「企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究」 (内閣 府, 2019) では、調査対象となった 1885 社のうち 80.0%がワーク・ライフ・バランスの 推進を経営方針、もしくは経営課題として位置付けていると回答している。特に規模 の大きい企業では中小企業よりもその特徴が顕著に表れている。101 人~300 人以下の 従業員数の企業ではワーク・ライフ・バランスを経営方針、もしくは経営課題として 位置付けているのが 77.2%であったが、1001 人以上の企業 146 社では 96.3%に上って いる。このように、ワーク・ライフ・バランスは日本の政策及び企業戦略上の大きな 課題として位置付けられている。 この背景としては、人材の確保、つまり求職者への魅力づけとしての効果が期待さ れているからといえる。まず、日本の内閣府や厚生労働省が推し進めているワーク・ ライフ・バランス政策の目的とは、人口減少の中で労働力を確保する事であると捉え る事ができる (奥山ほか, 2010 年)。働く個人の仕事と家庭の両立を支援し、多様な働 き方・生活スタイルの尊重する事で、労働力確保・企業競争力を高める事が政府にと っての課題意識なのである。そして、労働力確保による企業競争力の向上は、民間企 業の間でも重要な課題意識として実際に根付いている。「企業等における仕事と生活の 調和に関する調査研究」 (内閣府, 2019) では、ワーク・ライフ・バランスやダイバー シティを推進する目的についてもアンケート調査を行っ ており、多くの企業が人材獲 得について挙げていることがわかった。特に 1,001 人以上の企業では 80.1%が「優秀 な人材 の確保」、64.9%が「多様な人材の確保」を目的として挙げており、人材の確保 を重視している傾向にある。
2 II. 先行研究のレビュー
こうしたワーク・ライフ・バランスへの関心の高まりに伴い、人的資源管理 (HRM) 研究においても、ワーク・ライフ・バランス施策とその影響について様々な角度から の研究がなされている。一方で、未だ完全に明らかにされていない部分があると言わ れている (Beauregard & Henry, 2009; Kumari & Saini, 2018)。Beauregard & Henry (2009) らはワーク・ライフ・バランス施策が組織パフォーマンスに与える影響を大きく組織 レ ベ ル (organization-level) と 個 人 レ ベ ル (individual-level) に 分 類 し 先 行 研 究 の レ ビ ューを行っている。 この分類の中で特に、ワーク・ライフ・バランス施策が従業員の職務態度に与える 個人レベルの影響については多くの研究がなされてきた。職務満足度、コミットメン ト、自己申告された生産性、知覚された組織パフォーマンスなどを向上させ (e.g., Allen, 2001; Eaton, 2003; Frye & Breaugh, 2004; Ko, Hur & Walter, 2013; Ronda, Lopez & Legas, 2016; Wang & Walumbwa, 2007)、離職意思やワーク・ファミリー・コンフリクトを抑制 する (e.g., Anderson, Coffey & Byerly, 2002; Frye & Breaugh, 2004; Wang, Lawler & Shi, 2010) といった効果がある事が示されている。一方、ワーク・ライフ・バランス施策の 組織レベルの影響に関する研究は多くない。組織レベルの影響の 1 つでもあるワーク・ ライ フ ・バ ラ ン ス施 策 の求 職 者に 対 す る魅 力 につ い ては Carless and Wintle (2007)、 Casper and Buffardi (2004)、Honeycutt and Rosen (1997)、Rau and Hyland (2002) など欧 米において主に研究されているが、未だ明らかになっていない部分が多い。特に、日 本における事例についてはほとんど調査されていない 。これまでに、ワーク・ライフ・ バランス施策の企業の生産性への影響 (松浦, 山本, 2011)、組織市民行動や職務ストレ スに対する影響 (細見, 2019) などは研究されている事例が見られるが、特に求職者に 着目した組織魅力への影響を検証しているものは見られない。 また、ワーク・ライフ・バランス施策がどのようなプロセスで組織を魅力づけるの かという問いに関しても、議論の余地が残る。いくつかの先行研究では、従業員の知 覚に着目し魅力づけのプロセスを考察している (Allen, 2001; Casper & Buffardi, 2004)。 知覚された組織的支援はワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力の関係を媒介し強 めるという結果から、これらの施策が組織の従業員に対する支援や関心として捉えら れ、魅力に繋がっていると議論されている (Casper & Buffardi, 2004; Grover & Crooker, 1995)。しかし、未就学の求職者、特に日本の新規大卒求職者に対してワーク・ライフ・ バランス施策がどのように魅力づけられているかを調査した研究はほとんど見られな い。
ワーク・ライフ・バランス施策の影響に関する研究において明らかになっていない 点はもう 1 つある。個人によってその影響に差があるかという事に関しては 2 つの異 な る 議 論が な さ れ て お り 明 ら かに な っ て い な い の で ある (Beauregard & Henry, 2009; Casper & Buffardi, 2004)。個人が制度を使うかどうか、またその人のキャリア志向など
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の変数が魅力度に違いがあると示す文献がある一方で、これらの個人的な要因に関わ らず普遍的な魅力がある事を示唆している文献が混在している。 先行研究において示 された調整変数は大きく 3 つある。まず 1 つは子供の有無についてである。 Rothausen, Gonzalez, Clarke and O'dell (1998) は施設内保育施設のもたらす影響について検証し、 この制度を活用する可能性のある従業員に対してのみ魅力だと捉えられると示してい る。一方で、Grover and Crocker (1995) は、チャイルドケアに関する情報は子供の 有無にかかわらずアタッチメントを向上させると示している。 もう 1 つの変数は、ワ ーク・ファミリー・コンフリクトと呼ばれる仕事と家族間の葛藤を表す度合いである。 Bretz and Judge (1994) や Rau and Hyland (2002) は、ワーク・ファミリー・コンフリク トの度合いにより、ワークファミリー施策の魅力度合いも異なると示している一方、 Casper & Bufferdi (2004) では、ワーク・ファミリー・コンフリクトや子供の有無によ って組織魅力が調整されることはなく、ワーク・ライフ・バランス施策は普遍的な魅 力として求職者に受け取られると示している。最後に、役割特徴と呼ばれるキャリア 志向を表す変数である。Carless and Wintle (2007) は個人の役割特徴により組織のキャ リア施策への魅力度が変化するか調べた。結果、個人の役割特徴に関わらず、仕事と 家庭のバランスをとる事のできる柔軟なキャリアパスを提供している会社がより未就 業 求 職 者 に と っ て 魅 力 的 に う つ る と 示 し て い る 。 こ れ に 対 し 、Honeycutt and Rosen (1997) もまた役割特 徴 という概念を用い個人 のキャリア志向の調整 効果について調 べた。その結果、ファミリーフレンドリー施策は個人が家庭志向かキャリア志向かに 関わらず魅力に繋がるが、家族志向の強い人をより惹きつけると示している。このよ うに、ワーク・ライフ・バランスに関連する施策の魅力度が個人により異なるか 、も しくは個人の特性に関わらず魅力的だと捉えられるかどうかについては長らくの間議 論が続いているのである。 III. 研究の目的 後ほど詳しく記述するように、本研究ではバウンダリー理論に基づき、ワーク ・ラ イフ・バランス施策の企業魅力度への影響を調査しその効果を明らかにする。 より具 体的に説明すると、本論文の目的となる 3 つの貢献点は以下の通りである。 まず、今まで研究のなされてこなかった、日本における ワーク・ライフ・バランス 施策の求職者への魅力づけに対する影響について明らかにする事で、政策上及び企業 戦略上のワーク・ライフ・バランス推進の妥当性を検証する事である。はじめに述べ たように、ワーク・ライフ・バランスは日本政府や民間企業にとって非常に重要なト ピックである。日本政府や民間企業は「人材確保」「人材の多様化」など、求職者への 魅力づけとしてワーク・ライフ・バランスを推し進めている。しかしながら、上記の 通りワーク・ライフ・バランスの求職者への魅力づけの影響について日本人を対象に 調査した実証研究はほとんどない。さらに、採用時の魅力にフォーカスを当てて行わ
4 れたワーク・ライフ・バランスに関する実証研究は日本のみならず欧米においても多 くない。日本におけるワーク・ライフ・バランスへの注目の高まりを考えても、今ま で明らかにされてこなかったワーク・ライフ・バランス施策の求職者への魅力づけに 対する影響について日本人を対象に実証研究を行う意義は大いにあると考える。 そこ で本論文における第 1 の目的は、今まであまり多くの研究がなされてこなかった日本 におけるワーク・ライフ・バランス施策の影響、とりわけ求職者への魅力づけに対す る影響を検証する事である。 次に、ワーク・ライフ・バランス施策がどのように組織魅力へとつながるのか、そ のプロセスを明らかにする事である。先行研究のレビューでも述べたように、いくつ かの研究ではワーク・ライフ・バランス施策が組織の従業員に対する支援や関心とし て捉えられ、魅力に繋がっていると議論されているが、根拠となる文献は限られる。 特に日本の新規大卒求職者を対象として調査した研究はほとんど見られない。ワーク・ ライフ・バランス施策の効果を採用活動において最大化するためにも、これらの施策 がどのように求職者に対して働きかけ、組織を魅力づけるのか検証する事 が第 2 の重 要な目的である。 最後に、先行研究で明らかになっていないワーク・ライフ・バランス施策の求職者 への魅力づけに対する個人差について明らかにする事である。先も述べたように、2 つ の対立する結果が混在しており先行研究で明らかとなっていない ワーク・ライフ・バ ランス施策の影響の個人差について検証する事は、研究の意義があると考える。また、 ワーク・ライフ・バランス施策の影響の個人差があるかどうかにより、企業の採用活 動への応用方法についても異なる示唆点を示す事ができるであろう。例えば仮に個人 差があれば、制度をより魅力と捉えやすい特性をもつ集団が多く集まる可能性がある。 反対に個人差がなければ、ワーク・ライフ・バランス施策についてより幅広い層の求 職者にアピールをする必要がある。このように、ワーク・ライフ・バランス施策の影 響の個人差について明らかにする事は理論的にも実務的にも貢献があると考える。そ こで本論文の第 3 の目的としては、ワーク・ライフ・バランス施策の影響を調整する 個人要因について検証したい。 IV. 概念的枠組みと仮説の設定 1. 仮説設定における包括的理論 ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力の関係性は、バウンダリー理論 (boundary theory) (Ashforth, Kreiner, & Fugate, 2000) に基づいて説明することができる。バウンダ リー理論において、人は複雑に絡み合った社会的役割を整理するため、1 つ 1 つの役 割に心理的な境界を作るとされている。例えば、家庭内での親としての役割、職場で の社員としての役割、行きつけのバーでの客としての役割など、環境により異なる役 割を心理的な「境界」を設け区切っているのである。境界により周囲の環境を区別す
5 る事で、自分が現在主に担っている1つの役割に集中する事ができるようになる。ま た、境界に区切られた環境 (家庭、職場、その他の場所) を移動し、1 つの役割から異 なる役割への移動の事をロールトランジション (role transition) と呼ぶ。ロールトラン ジションは主に 3 つの種類に分類される。(1) 職場-家庭トランジション (work-home transition)、部下・上司などの立場の変化や副業など複数の仕事間の移動をさす(2) 職 場-職場トランジション (work-work transition) もしくは職場内トランジション(at-work transition)、教会や近所のバーなどその他の社会的領域を指す(3) 職場-「第三の場」ト ランジション (work- “third place” transitions) の 3 つである。このうち本論文で扱うワ ーク・ライフ・バランスとは主に仕事と家庭のバランスに関連する話である為、1 つ目 の職場-家庭トランジション (work-home transition) にあたる。また、バウンダリー理論 において、ロールトランジションの際には労力が伴い、その労力を人は最小化させよ うとするという。職場、家庭、それぞれの役割が心理的に区切られていることにより、 境界をまたぎ 1 つの社会的領域から特徴の異なる社会的領域に移る事が複雑になって いるのである (Cummings & Staw, 1995)。さらにそれぞれの領域において求められる役 割が乖離しているほど、ロールトランジションが難しくなる。 例えば、厳格な上司と しての役割を求められる職場を離れ、温和な父親としての役割が求められている家庭 に移る際には精神的な労力を伴う。 本論文では、ワーク・ライフ・バランス施策を職場-家庭トランジション時の心理的 コストを低減するツールとして捉える。仕事と私生活の適切なバランスを取るための 休業・休暇制度や、適度なフレキシビリティを与えるワーク・ライフ・バランス施策 は、求職者に心理的な安心感を与え、職場-家庭トランジション時コストへの懸念を減 らす事ができると考えられる。 さらに、本調査の対象である現在の日本人学生は、よりトランジション時の心理的 コストをリスクとして捉えていると考えられ、ワーク・ライフ・バランス施策がより 魅力的に映るのではないか。特に日本人学生にとってロールトランジション時のコス トが大きな懸念となると考えられる理由は 2 つある。まず、日本人の国民性である。 バウンダリー理論では、国の文化や国民性により、職場・家庭など異なる役割を切り 分けようとする度合いが異なるとされている。個人主義的であり、男性性が高く、不 確実性の回避を重視し、権力格差が大きい文化であるほど異なる役割を切り分けよう とする。このような文化的コンテクストにおいては、例えば職場でプライベートな電 話をしないなど、ある 1 つの社会的領域に異なる役割が交わりづらい。つまり役割同 士の境界が厚くなり、1 つの役割から異なる役割へ移るロールトランジションが複雑 化する。男性性が高く、不確実性の回避を重視し、権力格差が大きいとされている日 本のコンテクストでは、職場と家庭での役割が切り離される傾向が強く、心理的コス トを感じやすいと考えられる。次に、現在の学生世代は親が在宅ワークをする様子を 間近で見る機会が多く、より役割間葛藤のリスクを感じやすい 可能性があるという事
6 である。コロナウイルスによる世界的パンデミックの影響で、日本では自宅でも仕事 をする人が増えた (総務省, 2020)。本来は職場、家庭などの異なる役割を区切ろうとす る文化である日本人が、その役割を調和させることを強いられたのである。ロールト ランジションに苦労する親の姿を見る機会が増えた事で、将来のトランジション時コ ストをさらに懸念するようになると想像できる。このように、本調査の対象である日 本人学生にとってロールトランジション時のコストは大きな懸念点となると考えられ る。言い換えれば、このようなコストを低減するツールであるワーク ・ライフ・バラ ンス施策は特に日本人学生にとって魅力的に映るのではないか。以上のように、ワー ク・ライフ・バランス施策が組織魅力にどのように繋がるかバウンダリー理論に基づ き説明することができる。本研究において、バウンダリー理論に基づき設定した仮説 について以下に詳述する。 2. ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力: 媒介効果の検討 まず、ワーク・ライフ・バランス施策が組織魅力に繋がっているか、どのように組 織魅力に繋がっているのかそのプロセスを明らかにするため組織的支援予期、組織的 家庭支援予期という 2 つの尺度を媒介変数と仮定し調査を行う。求職者へのワーク・ ライフ・バランス施策の魅力づけプロセスに関しては欧米でも実証研究が少なく、未 だ明確になっていない。そこで、ワーク・ライフ・バランス施策が組織的支援の知覚 を媒介して組織魅力に繋がっている、といういくつかの先行研究における議論を明ら かにするとともに、かつて検証されたことのない日本人学生を対象とした調査を行う 事により先行研究を拡張したい。 先も述べたように、数少ない研究における 1 つの見解は、ワーク・ライフ・バラン ス施策が、会社が社員を支援する姿勢や関心を持つ姿勢を象徴していると認識される 事により魅力に繋がる、という考え方である。このような魅力づけのプロセスは、社 員を支援し関心を持つ姿勢がどの程度知覚されているかを規定する概念である 知覚さ れた組織的支援の媒介効果の検証によって示されている。例えば、ワーク・ライフ・ バランス施策が組織の従業員の健康に対する関心 (concern) を象徴していると主張し た Groover and Crocker (1995) の議論を実証的に示した研究の代表例として Casper and Bufferdi (2004) を挙げる。この研究では、求職中もしくは就職後の社会人 371 人に対 し 8 つの異なるワーク・ライフ・バランス施策のエピソードを評価させ、ワークスケ ジュールの柔軟性や扶養者支援補助などのワーク・ライフ・バランス施策が、組織的 支援予期を媒介し職務追求意志 (job pursuit intentions) を高めると明らかにした。つま り、これらの施策が求職者に対するサポートや関心を象徴しており、象徴的に組織魅 力に繋がっていると考えられる。
これをバウンダリー理論に当てはめると、ロールトランジション時の心理的コスト を低減する組織的支援の象徴としてワーク・ライフ・バランス施策が知覚され、組織
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魅力に繋がっているといえるのではないか。この仮定に基づき、ワーク・ライフ・バ ランス施策がどのように従業員に知覚されているかを検証し、組織魅力が生まれるプ ロセスを明らかにする。ワーク・ライフ・バランス施策がどのように従業員により知 覚されているかを定量的に測る尺度として 2 つの概念を挙げる。
まず1 つ目は組織的支援予期 (anticipated organizational support) である。組織的支 援 予 期 と は 、 知 覚 さ れ た 組 織 的 支 援(perceived organizational support) (Eisenberger, Cummings, Armeli & Lynch, 1997) に基づいた概念である。知覚された組織的支援が、 組織内の従業員の知覚に着目した概念であるのに対し、組織的支援予期とは求職者の 知覚に着目した概念となっている。求職者が組織に入る将来の事を想定し、その組織 がどのくらい自分に関心を持ち支援してくれるか予期している度合いを表す。ワーク・ ライフ・バランスと職務追求意志の関係における組織的支援 予期の媒介効果は Casper and Bufferdi (2004) により示されているが、他にその正当性を示す研究はなされていな い。また、この研究において調査対象となっているのはアメリカの就業経験者であり、 日本の大卒新規求職者を対象に組織的支援予期の媒介効果について検証している研究 は未だない。本論文では、ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力の関係に対する 組織的支援予期の媒介効果を検証し、上記の先行研究の結果が日本においても同様の 結果をもたらすか明らかにする。 仮説 1: 組織的支援予期は、ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力の関係を媒介し ているだろう。 求職者の組織的支援への知覚に関する2 つ目の変数として、知覚された組織的家庭 支 援(perceived organizational family support) を 基 に 組 織 的 家 庭 支 援 予 期 (anticipated organizational family support) を作成し用いる。知覚された組織的家庭支援もまた、組 織的支援の知覚を表す概念の1 つである (Thompson, Jahn, Kopelman, & Prottas, 2004)。 知覚された組織的家庭支援とは、従業員がワーク・ライフ・バランスに関する組織の サポートや関心を知覚している度合いの事を示している。この概念と、知覚された組 織的支援との大きな違いは、組織的支援の範囲である。知覚された組織的支援は、組 織の支援を包括的に捉え、それを知覚する度合いについて表している一方、組織のフ ァミリーフレンドリーさ(family friendliness) の知覚にフォーカスを当てたのが知覚さ れた組織的家庭支援である (Jahn, Thompson, & Kopelman, 2003)。このように、知覚さ れた組織的家庭支援はファミリーフレンドリーというワーク・ライフ・バランス施策 に非常に関連性の高いトピックに特化した概念であるため 、本研究における媒介効果 の検証に適していると考え、仮説を立て検証する。また、本論文では未就業の求職者 を対象に調査を行うため、将来組織に入る事を想定した時の組織的家庭支援をどのく らい予期しているか、つまり組織的家庭支援予期にこの概念を置き換え検証に用いる。
8 知覚された組織的家庭支援だけでなく組織的家庭支援予期の媒介効果について検証し ている実証研究は、日本だけでなく欧米においても未だない。ワーク・ライフ・バラ ンス施策と組織魅力の関係に対する組織的家庭支援予期の媒介効果を検証し、求職者 にとってワーク・ライフ・バランス施策がどのように捉えられ、魅力に繋がっている か明らかにする。 仮説 2: 組織的家庭支援予期は、ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力の関係を媒 介しているだろう。 3. 組織的支援予期 / 組織支援家庭予期と組織魅力: 調整効果の検討 上記に述べたように、ワーク・ライフ・バランス施策が普遍的な魅力を持つという 先行研究 (Carless & Wintle, 2007; Casper & Bufferdi, 2004; Grover & Crocker, 1995) が ある一方で、ワーク・ライフ・バランス施策の魅力は人により個人差があるという結 果を示す先行研究 (Bretz & Judge, 1994; Honeycutt & Rosen, 1997; Rau & Hyland, 2002; Rothausen et al., 1998) も少なからずある。本調査では、この議論のジレンマを解決 すべく、ワーク・ファミリー・コンフリクト予期、家族役割特徴という 2 つの尺度を 調整変数と仮定し調査を行う。 バウンダリー理論に基づいて考えると、ワーク・ライフ・バランス施策をどのよう に捉え、魅力的と感じるかどうかは個人により差があると言える。 バウンダリー理論 において、人が自分の持つ複数の役割をどの程度区切ろうとするか、また調和させよ うとするかの度合いは異なるとされている。例えば、職場に家族の写真を飾るなど、 職場と家庭の間に境界を設けず調和させたい人もいれば、反対に仕事とプライベート は区別したいという人もいる。個人により役割を調和、区別する度合いの好みが異な るのである。同じ環境にいても感じるロールトランジション時の負担は個人により異 なるのである。よって、同じワーク・ライフ・バランス施策に対してもその制度を魅 力的と思うかどうかは個人差があると考えられる。本研究では、その中でも先行研究 などにより調整要因となる可能性が示されている 2 つの概念に注目し、それらが制度 と組織魅力の関係を調整するか検証する。 まず 1 つ目はワーク・ファミリー・コンフリクト (work-family conflict) である。こ れは、仕事及び家庭における役割のプレッシャーが両立できず矛盾している状態であ る役割間葛藤 (interrole conflict) を表している(Kahn et al., 1964)。Rau and Hyland (2002) は、ワーク・ファミリー・コンフリクトの高い人は対立する仕事と家庭の要求を満た せないストレスが普通の人より高く、役割葛藤を減らす事ができるワーク・ライフ・ バランス施策を魅力的に感じると主張している。実際に、就業経験者を含むアメリカ の MBA 学生を対象に検証を行い、フレックスタイム制の魅力度が個人のワーク・フ ァミリー・コンフリクトにより調整される事を明らかにした。しかし、就業経験のな
9 い新規求職者に対して、また日本人を対象にした研究は見られない。そこで、就業経 験のない日本の大卒求職者を対象に、ワーク・ライフ・コンフリクトがワーク ・ライ フ・バランス施策の魅力度を調整するかどうか検討を行う。職務経験のない学生を対 象に調査を行うため、将来の仕事や家族の間に起こるワーク・ファミリー・コンフリ ク ト を予 期 す る 度 合い を 表 す、 ワ ー ク ・ ファ ミ リ ー・ コ ン フ リ クト 予 期 (anticipated work-family conflict) を用いる (Cinamon, 2010)。
仮説 3a: ワーク・ファミリー・コンフリクト予期は、組織的支援予期と組織魅力との 関係を調整するだろう。すなわち、ワーク・ファミリー・コンフリクト予期が高い程、 組織的支援予期と組織魅力の正の関係は強まるだろう。 仮説 3b: ワーク・ファミリー・コンフリクト予期は、組織的家庭支援予期と組織魅力 との関係を調整するだろう。すなわち、ワーク・ファミリー・コンフリクト予期が高 い程、組織的家庭支援予期と組織魅力の正の関係は強まるだろう。 2 つ目に、役割特徴 (role salience) という概念である。人々は、職場での従業員とし ての役割、家庭での親としての役割、その他のコミュニティーの一員としての役割な ど、複数の社会的領域に属しているが、より人生の中で重要性が高い 1 つ以上の役割 があるとされている。役割特徴とは、このように個人の人生において心理的に重要と される特定の役割の事を表す(Thoits, 1991)。家庭役割特徴とキャリア役割特徴は対立 する概念として捉えられており (Lobel & St Clair, 1992)、ワーク・ライフ・バランス 研究の中でしばしば取り上げられている (Abeysekeraa & Gahan, 2019; Carless & Wintle, 2007; Honeycutt & Rosen, 1997)。また人は、自分にとって重要性の高い役割特徴と同質 の役割を発揮する機会を追い求めようとすると仮定されている (Stryker, 1968)。家庭 役割特徴の例をとれば、これが高い人ほど、家庭での役割が生活の中心となっており、 家庭での役割と同質の役割をより発揮しようとするのである。よって、個人の重要視 する役割特徴のありのままで行動しようとする事を許容する組織を魅力的だと感じる と言える。これを求職時の意思決定に置き換えると、家族役割特徴のある求職者は、 職場においても家庭での役割に沿って行動しようとするため、家庭生活に関する支援 を し よ う と す る 組 織 を よ り 魅 力 的 だ と 考 え る の で は な い か 。 実 際 に Honeycutt and Rosen (1997) らの研究では、役割特徴によって、ワーク・ライフ・バランス施策の魅 力度が調整されたと示されている。しかし、ワーク・ファミリー・コンフリクトの場 合と同様に、就業経験のない新規求職者に対して、また日本人を対象にした研究は見 られない。そこで、就業経験のない日本の大卒求職者を対象に、家族役割特徴がワー ク・ライフ・バランス施策の魅力度を調整するかどうか検討を行う。
10 仮説 4a: 個人の家族役割特徴は、組織的支援予期と組織魅力との関係を調整するだろ う。すなわち、家族役割特徴が高い程、組織的支援予期と組織魅力の正の関係は強ま るだろう。 仮説 4b: 個人の家族役割特徴は、組織的家庭支援予期と組織魅力との関係を調整する だろう。すなわち、家族役割特徴が高い程、組織的家庭支援予期と組織魅力の正の関 係は強まるだろう。 以上の議論を踏まえ、本研究における分析の枠組みは図 1 の様に示される。
12 V. 方法 本研究では、パイロット調査と本調査に分けて 2 回調査を行い、本調査前に尺度お よび質問紙の改良を行った。パイロット調査は 2020 年 7 月 31 日から 8 月 2 日までの 3 日間、本調査は 2020 年 10 月 15 日から 10 月 24 日までの 9 日間に行った。調査対象 者は、国内四年制大学に通う大学四年生のうち、民間企業に就職先が決定している者 とした。調査は、事前に就職活動の状況を確認した上で、対象となる学生に対しての み Web 上で作成したアンケートフォームを配布し回答を依頼する形式をとった。本調 査では504 部を配布し、104 部の有効回答 (有効回答率 20.6%) を得る事ができた。サ ンプルの特性としては、まず男女比は男性が 30.8%、女性が 69.2%であった。年齢の分 布に関しては、大学 4 年生を対象に調査を行ったため 21 歳と 22 歳の回答者が全体の 93.2%であった。内定先の業界は、「情報通信」及び「卸売、小売」が並んで最も多く、 それぞれ 20.2%を占めた。次いで「金融、保険」が 18.3%、「製造」が 9.6%、「サービ ス」が7.7%、その他の項目は 5%以下であった。内定先での職種は、「事務 (総合職) 」 が最も多く35.6%、次いで「営業」が 32.7%、「専門・技術」が15.4%、「事務 (一般職) 」 が 6.7%、その他の項目は 5%以下であった。内定先の会社規模は、「5000 人以上」が最 も多く27.9%、「1000 人以上 5000 人以下」が 30.8%、「100 人以上 300 人以下」が 17.3%、 「300 人以上 1000 人以下」が 15.4%、「100 人未満」が 8.7%であった。 1. 測定尺度 質問紙では、本調査に必要な独立変数「ワーク・ライフ・バランス施策」、媒介変数 「組織的支援予期」「組織的家庭支援予期」、従属変数「組織魅力」、調整変数「ワーク・ ファミリー・コンフリクト予期」「役割特徴」の 6 項目群 53 項目、及び統制変数とし て 5 項目について測定した。すべての項目に関して一貫した回答を得るため、入社を 予定している会社 1 社を想定してすべての項目に回答するようすべてのページに注意 書きを含めた。独立変数を除いた 5 つの変数に関しては、5 件法によるリッカート尺 度 (1: 全くあてはまらない~5: 非常にあてはまる) を用いた。各変数の測定に際し、 以下の様な尺度を用いた。
1-1 ワーク・ライフ・バランス施策 (work-life balance practices)
先行研究においてワーク・ライフ・バランス施策を測定する尺度は様々なものが用 いられているが、その中でも日本企業の制度に基づいており、且つ妥当性が検証され ているものが存在しなかった。そのため以下の手順により独自に作成した 7 項目を用 い、制度の有無について尋ねた。
まず、Wang and Walumbwa (2007) において「ファミリーフレンドリー制度 (family-friendly programs) 」の測定尺度として用いられた 6 項目を候補として挙げた。この 6 項 目 は、「 事 業 所 内 保 育 施 設(on-site childcare facility) 」「育児に関する紹介サービス
13
(childcare referral service) 」「育児に対する経済的支援(subsidized childcare cost) 」「フレ キシブルワークスケジュール(flexible work schedules) 」「フレキシブルワークアレンジ メ ン ト(flexible work arrangement) 」「プライベ ートや家庭に関する休 暇制度 (personal and family leave) 」を含み、欧州の実証研究において最も注目されている項目である (Grover & Crocker, 1995)。より日本の文化コンテクストに合わせた尺度に改良する ため、内閣府 (2006) により発行された「少子化社会対策に関する先進的取組事例研究 報告書」内のワーク・ライフ・バランス施策の類型を参照し変更を加えた。まず、定 義の曖昧な 2 項目「フレキシブルワークスケジュール(flexible work schedules) 」「フレ キシブルワークアレンジメント(flexible work arrangement) 」をより詳細な質問項目に 変更した。また、「プライベートや家庭に関する休暇制度(personal and family leave) 」 について、出産・育児休業は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者 の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号) 」によりすでに一定の期間の休業を 設ける事が義務付けられているため、法定より長い期間の休業制度の有無を尋ねた。 以上の要領で最終的に 7 項目を作成した。すべての項目は制度の有無について尋ね、 制度がある場合は「ある」、ない場合は「ない」と回答してもらった。回答はすべて 0= ない、1=ある、としてダミー変数化し、7 項目の合計を変数とした。信頼性係数は α=.72 であった。
1-2 組織的支援予期(anticipated organizational support)
Casper and Buffardi (2004) による組織的支援予期の 8 項目を日本語に訳し、測定し た。また、パイロット調査の際、主成分分析による因子分析を行ったところ、特に逆 転項目で 0.40 以下の因子負荷量が見られてしまった。そこで肯定文に変える事のでき る逆転項目については修正を加え本調査に用いた。「会社は私にまったく関心を示さな いだろう (“My organization shows very little concern for me.”) 」を「会社は私に関心を 示してくれる」と変更した。本調査においても同様に主成分分析による因子分析を行 い、因子負荷量が 0.40 以上を示さなかった 1 項目を除外した。残りの 7 項目に関して 再度因子分析を行い、全項目の因子負荷量が 0.60 以上を示したためこの 7 項目を採用 し合成変数を作成した。信頼性係数は α=.85 であった。
1-3 組織的家庭支援予期(anticipated organizational family support)
Jahn et al. (2003) の 9 項目を日本語に翻訳したものを用いた (例: 私の会社には、従 業員が仕事と家族生活のバランスをとるためのプログラムや制度がたくさんある)。9 項目に対して主成分分析を用いて因子分析を行った結果、因子負荷量は全項目 0.73 以 上で 1 因子が抽出された。9 項目の信頼係数を測定したところ、α=.93 であった。
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Carless and Wintle (2007) の 7 項目を日本語に翻訳したものを用いた。(例: この会社 は働くのにとても良い会社である)。7 項目に対して主成分分析を用いて因子分析を行 った結果、因子負荷量は全項目 0.54 以上で 1 因子が抽出された。7 項目の信頼係数を 測定したところ、α=.86 であった。
1-5 ワーク・ファミリー・コンフリクト予期 (anticipated work-family conflict)
Greenhaus and Beutell (1985) の 6 次元モデルに基づき Carlson, Kacmer and Williams (2000) らが開発した 18 項目を日本語訳した渡井ら (2006) の文章を未来形に直して 用いた(例: 自分が家族と過ごしたい時間を、思っている以上に仕事にとられるだろう )。 すべての回答に一貫した回答を得るため、家庭を築き子供を持ち、今の就職先で働く 事を想定して回答するよう注意書きを添えた。原版の Carlson et al. (2000) は、仕事か ら家庭への葛藤と家庭から仕事への葛藤の 2 方向,および各々が時間・ストレス反応・ 行動に基づく 3 形態の組み合わせの 6 つの下位尺度で構成されている。18 項目に対し て主成分分析・バリマックス回転を用いて因子分析を行った結果、4 因子が抽出され た。本尺度の概念モデルである 6 因子モデルと比較すると、「時間に基づく家庭から 仕事への葛藤」「ストレス反応に基づく家庭から仕事への葛藤」の 2 因子の他、仕事か ら家庭への葛藤という葛藤の方向でまとまった「仕事から家庭への葛藤」、葛藤の形態 でまとまった「行動に基づく葛藤」と対応する 2 つの因子が見られた。そこで、「仕事 から家庭への葛藤」1 因子として表れた 6 項目のみで再度因子分析を行った結果、「時 間に基づく仕事から家庭への葛藤 (因子負荷量 0.83 以上) 」「ストレス反応に基づく仕 事から家庭への葛藤 (因子負荷量 0.74 以上) 」それぞれの 2 因子が抽出された。また、 「行動に基づく葛藤」1 因子として表れた 6 項目のみで再度因子分析を行った結果、 「行動に基づく仕事から家庭への葛藤 (因子負荷量 0.67 以上) 」「行動に基づく家庭か ら仕事への葛藤 (因子負荷量 0.80 以上) 」それぞれの 2 因子が抽出された。そのため 測定したすべての 18 項目を選出し構成変数を作成した。18 項目の信頼係数を測定し たところ、α=.88 であった。
1-6 家庭役割特性 (family role salience)
Eddleston, Veiga and Powell (2006) で使用された 8 項目より、家庭役割特性 (family role salience) に関する 4 項目を抜粋し日本語訳して使用した。 (例: 人生における大 きな満足の源泉は家族である)。4 項目に対して主成分分析を用いて因子分析を行った 結果、因子負荷量は全項目 0.80 以上で 1 因子が抽出された。4 項目の信頼係数を測定 したところ、α=.86 であった。 1-7 コントロール変数 コントロール変数として以下の 5 変数を設定した。性別 (ダミー変数: 「女性」=1,
15 「男性」=2) 、年齢、内定先業界 (総務省の統計基準・分類 (総務省, 2006) で規定さ れた 20 業界から選択) 、内定先職種 ((総務省の統計基準・分類 (総務省, 2006) を基 に作成した以下 7 項目より選択: 営業、専門・技術、事務 (総合職) 、事務(一般職) 、 販売、サービス、その他) 、内定先規模 (「100 人未満」=1, 「100 人以上 300 人以下」 =2, 「300 人以上 1000 人以下」=3, 「1000 人以上 5000 人以下」=4, 「5000 人以上」 =5) を尋ねた。また、複数選択肢を持つ名義変数である内定先業界、内定先職種につ いては分析のためダミー変数化を行った。内定先業界は最も割合の多い情報通信を 1、 その他を 0 とした。内定先職種は、事務 (一般職) を 1、その他を 0 とした。 VI. 結果 1. 基本統計量 使用変数の相関を表 1 に示す。 2. 仮説の検証 ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的支援予期、組織 的家庭支援予期の媒介効果 (仮説 1, 2)、また組織的支援予期、組織的家庭支援予期と 組織魅力との関係におけるワーク・ファミリー・コンフリクト、家庭役割特徴の調整 効果 (仮説 3ab, 仮説 4ab) を明らかにするために、階層的重回帰分析を行った。結果 は表2 の通りである。以下にそれぞれの仮説の結果を述べる。 2-1 ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的支援予期の媒介効 果の検証 (仮説 1) ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的支援予期の媒介 効果の検証をするため、Baron and Kenny (1986) による媒介効果の検証方法を用いて検 討する。媒介効果が確認されるためには、以下の4 つの条件が必要となる。(1) 従属変
16 数にたいして独立変数が有意な直接効果を与えている、(2) 媒介変数にたいして独立 変数が有意な直接効果を与えている、(3) 従属変数にたいして媒介変数が有意な直接 効果を与えている、そして(4) (上記の直接効果が確認された場合に) 従属変数に与え る独立変数の直接効果の影響力が、媒介変数を重回帰式に追加投入した場合に弱まる か、の 4 つである。そこでこの 4 点について検証を行う。まず、モデル 3a の結果よ り、ワーク・ライフ・バランス施策は組織魅力(β=.38, p<.001) に対して有意な正の影 響を及ぼす事が示され、条件(1) を満たしていることがわかった。次に、モデル 1 の結 果より、ワーク・ライフ・バランス施策は組織的支援予期 (β=.32, p<.01) に対して有 意な正の影響を及ぼす事が明らかになった。これにより、条件(2) を満たしていること がわかった。さらに、モデル 3b の結果より、組織的支援予期が組織魅力 (β=.58, p<.001) に対して有意な正の影響を与えている事が明らかにな り、条件(3) を満たしているこ とがわかった。 そして最後に、モデル3b より、組織魅力に対して有意な直接効果を及ぼしていたワ ーク・ライフ・バランス施策(β=.38, p<.001) が、媒介変数である組織的支援予期を重 回帰式に投入した場合に組織魅力に与える直接効果が弱まり(β=.20, p<.05) 、組織的支 援予期の部分媒介効果が確認された。従って、仮説 1 は部分的に支持されたといえる。 2-2 ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的家庭支援予期の媒 介効果の検証 (仮説 2) ワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力との関係における組織的家庭支援予期の 媒介効果の検証をするため、上記と同様の 4 条件に関して検証する。まず、仮説 1 の 検証作業でも示されたように、モデル 3a の結果より、ワーク・ライフ・バランス施策 は組織魅力 (β=.38, p<.001) に対して有意な正の影響を及ぼし条件(1) を満たしている。 次に、モデル 2 の結果より、ワーク・ライフ・バランス施策は組織的家庭支援予期 (β=.70, p<.001) に対して有意な正の影響を及ぼす事が明らかになった。これにより、条件 (2) を満たしていることがわかった。さらに、モデル 3c の結果より、組織的家庭支援予期 が組織魅力 (β=.39, p<.01) に対して有意な正の影響を与えている事が明らかになり、 条件(3) を満たしていることがわかった。そして最後に、モデル 3c より、組織魅力に 対して有意な直接効果を及ぼしていたワーク・ライフ・バランス施策 (β=.38, p<.001) が、媒介変数である組織的家庭支援予期を重回帰式に投入した場合に組織魅力に与え る直接効果が非有意になる事(β=.11, n. s.) が示された、組織的家庭支援予期の完全媒 介効果が確認された。従って、仮説 2 は支持された。 2-3 組織的支援予期と組織魅力との関係における ワーク・ファミリー・コンフリクト 、家 庭役割特徴の調整効果の検証 (仮説 3a、仮説 3b) モデル3d の結果より、組織魅力に対する組織的支援予期とワーク・ファミリー・コ ンフリクトの交互作用項(β=.09, n.s.) の直接効果は非有意であると示された。よって、 組織的支援予期と組織魅力の関係はワーク・ファミリー・コンフリクトにより調整さ
17 れるとした仮説 3a は棄却された。また、モデル 3e の結果より、組織魅力に対する組 織的支援予期と家庭役割特徴の交互作用項(β=-.07, n.s.) の直接効果もまた非有意であ る事を確認した。よって、組織的支援予期と組織魅力の関係は家庭役割特徴により調 整されるとした仮説 3b は棄却された。 2-4 組織的家庭支援予期と組織魅力との関係におけるワーク・ファミリー・コンフリクト、 家庭役割特徴の調整効果の検証 (仮説 4a、4b) モデル3f の結果より、組織魅力に対する組織的家庭支援予期とワーク・ファミリー・ コンフリクトの交互作用項(β=.01, n.s.) の直接効果は非有意であると示された。よって、 組織的家庭支援予期と組織魅力の関係はワーク・ファミリー・コンフリクトにより調 整されるとした仮説 3a は棄却された。また、モデル 3g の結果より、組織魅力に対す る組織的家庭支援予期と家庭役割特徴の交互作用項(β=.06, n.s.) の直接効果もまた非 有意である事を確認した。よって、組織的家庭支援予期と組織魅力の関係は家庭役割 特徴により調整されるとした仮説 3b は棄却された。
18 VII. 分析結果のまとめ及び示唆点 本研究ではバウンダリー理論に基づき、ワーク・ライフ・バランス施策の企業魅力 度への影響について実証的な調査を行った。各仮説の分析結果から 3 つの主な示唆点 が得られたと考える。以下にそれぞれについての考察を記述する。 1 つ目に、本研究では今まで研究されてこなかった日本におけるワーク・ライフ・ バランス施策の採用時の魅力に対する影響を検証し、ワーク・ライフ・バランス施策 が組織的支援予期、もしくは組織的家庭支援予期を高め、その結果組織魅力を向上さ せているという媒介過程を明らかにした。この結果は、日本人学生の採用時にもワー ク・ライフ・バランス施策が組織魅力に正の影響を与える事を示唆している。先行研 究レビューで述べたように、ワーク・ライフ・バランス施策が求職者に対する魅力づ けになるかどうかを研究したものは少ない。特に日本人学生を対象に 実証研究を行っ たものはほとんどない。よって、日本学生の採用時魅力づけという新たな観点からワ ーク・ライフ・バランス研究の蓄積に貢献できたと言える。またこの結果は、人材確 保を目的とした日本政府の政策、また企業の経営戦略におけるワーク・ライフ・バラ ンス推進の妥当性を支持するものである。求職者である日本人学生は、より ワーク・ ライフ・バランス施策が充実している企業を魅力と感じている事が実証的に示された。 企業がワーク・ライフ・バランス施策を充実させる事で、採用活動を円滑に進める事 ができ、結果企業競争力を高める事に繋がるのではないか。 2 つ目に、媒介変数として組織的支援予期、組織的家庭支援予期の 2 つを用いた事 で、その媒介効果の違いを観測できたことである。組織的支援予期のベースになって いる知覚された組織的支援とは異なり、組織的家庭支援予期という概念についてはま だ先行研究が多くない。本研究では、一般的によく取り上げられる 知覚された組織的 支援の観点からだけでなく、組織的家庭支援予期を用いてワーク・ライフ・バランス 施策の影響を調査した。その結果、組織的支援予期に関しては部分媒介効果、組織的 家庭支援予期に関しては完全媒介効果が明らかになり、組織的家庭支援予期の方がよ り強くワーク・ライフ・バランス施策と組織魅力の関係性を媒介していることが分か った。よって、ワーク・ライフ・バランス施策の研究においては組織的家庭支援予期 についても考慮に入れる事が大切なのではないか。今後は、ワーク ・ライフ・バラン ス施策の組織魅力への影響だけでなく、従業員の職務態度への影響においても 知覚さ れた組織的家庭支援との関連性を調べていく必要があろう。また、企業においては特 に家族に対する組織サポートを充実させる事の重要さを示した。 組織的家庭支援予期 は、より家族生活に関するサポート度合いを強調して測る指標である。組織的家庭支 援予期でより強い媒介効果が見られたという事を言い換えれば、 対象者にとって、ワ ーク・ライフ・バランス施策が全体的な組織サポートとして捉えられて魅力になって いるというよりも、特に家庭に関するサポートをしてくれるという知覚が魅力に繋が っているという事となる。すなわち、企業による包括的なサポートだけでなく、家族
19 生活のサポートという側面も非常に重要な魅力ファクターとなっているという事であ る。今後は、企業が従業員や入社予定者自身のサポートだけでなく、彼らの家族生活 についても充実できるよう取り組んでいく事が必要であろう。 最後に、組織的支援予期及び組織的家庭支援予期と組織魅力の関係を2 つの調整変 数を用い検証したが、いずれも仮説とは異なる結果が示されたという事である。これ に関しては、以下の様な 2 つの可能性が示唆された。1 つ目は他に調整要因があると いう可能性、2 つ目は、個人のキャリアに対する考え方の違いによらず、ワーク・ライ フ・バランス施策は日本人学生にとって普遍的な魅力に繋がっている可能性である。 本研究においてワーク・ファミリー・コンフリクト、家庭役割特徴という 2 つの概念 を調整変数として用いたものの組織魅力との関連が見られなかった原因は、就業経験 のない学生にとってワーク・ファミリー・コンフリクトや家庭役割特徴といった概念 が現実的に捉えられなかった事ではないかと考える。多くの就業経験のない学生の間 で将来のキャリアと家庭のイメージがまだついていないと仮定すると、ワーク・ファ ミリー・コンフリクトや家庭役割特徴などの個人的なキャリアへの考え方は組織魅力 と関連が薄いと考えられる。すなわち、考えられる可能性は①他に組織魅力への影響 を調整しうる調整要因が存在する、②その他にも調整要因は存在せず、ワーク・ライ フ・バランス施策が普遍的な組織魅力に繋がる、の 2 つにまとめられる。よって今後 は他の調整要因について検証し、明らかにしていく必要がある。この結果次第で、実 務的示唆点も異なってくる。例えば、仮にワーク・ライフ・バランス施策が個人差な く普遍的魅力を持っているとすると、実際の採用活動でも異なる工夫を取り入れる必 要があると言える。具体的には、日常的な広告やセミナーにおいて、制度に関心がな い求職者に対してもワーク・ライフ・バランス施策の充実度をアピールする事が重要 となる。 VIII. 本研究の限界と今後の課題 このように、本研究ではワーク・ライフ・バランス施策の組織魅力に対する影響、 またその調整要因について検証し、一定の理論的及び実務的示唆点を得る事ができた。 よって、本研究は今まで研究されてこなかった日本におけるワーク ・ライフ・バラン ス研究に一石を投じる事ができたのではないか。しかし、今後の研究にあたっての課 題点及び本研究の結果に影響を及ぼしている可能性のある懸念点 も多くみられる。以 上の考察を踏まえ、考えられる研究上の課題について以下に述べる。 まず、仮説と異なる結果を得た調整効果の検討については、今後さらに検討方法を 修正して明らかにしていく必要がある。先ほども述べたように、 組織魅力に影響を及 ぼす個人特性について、他の調整変数を用い検証する必要がある。本研究において、 調整変数として選んだ 2 つの変数は、先行研究でワーク・ライフ・バランス施策の影 響を調整していると示唆されていたものを用いた。しかし、本研究で調査の対象にし
20 ていたサンプルは就業経験のない新規大卒求職者であり、先行研究ではほとんど扱わ れていない層であった。そこで、実際に就業経験がある社会人と求職者では、調整効 果を与えうる変数が異なる可能性がある。今後は他の調整変数を視野に入れながらよ り探索的な研究を行っていく必要性があるだろう。 次に、研究結果に影響を与えうる懸念点についてである。1 つ目に、本研究の調査が 内定取得後の学生を対象に、一般的な内定取得時期からかなり遅れた 10 月に行われて いる点である。求職中であり且つ内定取得前の学生に比べ、内定取得後の学生は、い わゆる認知的不協和の解消のために組織魅力を高く回答してしまっている可能性があ る。つまり、今後入社が決まっている企業の実際の印象と理想のギャップに対し、肯 定的な印象をつけることで対応しようとするという事である。 今後は、内定取得前な いしは内定取得直後に調査を行う事が求められる。 もう 1 つは、コロナウイルスによ る世界的パンデミックの影響である。はじめでも軽く触れたように、2020 年 4 月には 国内で緊急事態宣言が出され自粛が促されるなど、自宅勤務する親と過ごす時間も増 え、学生にとってはワーク・ライフ・バランスについて考える機会がより増えたと推 察する。その影響から、ワーク・ライフ・バランス施策の組織魅力への影響がより強 まっているのではないか。今後パンデミック収束後も同じような結果を示すかどうか、 縦断的調査などの手法も用いさらなる調査が必要である。以上が本研究の限界および 今後の課題である。 しかし先にも述べたように、本研究では、いまだ日本において研究の少ないワーク・ ライフ・バランスに関して一定の示唆点を得る事ができた。また 、パンデミックによ り就職活動中に大きく影響を受けた 2021 年卒業の学生を対象に調査を行う事ができ た点は、今後の研究に対し大きな貢献になったのではないか。今後はこれらの課題点 を踏まえ、明確になっていない部分を明らかにするために引き続き研究を継続してい く事が求められるであろう。 〔謝辞〕 本論文の執筆にあたり、早稲田大学 鄭有希教授には研究の構想段階から調査、分析に 至るまで懇切丁寧なご指導を頂きました。厚く御礼を申し上げ、感謝の意を表します。 IX. 参考文献
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