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促成栽培イチゴにおける地力窒素及び有機質肥料,液肥中の施肥窒素の肥効発現-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香川大学農学部学術報告第49巻 第1号 1∼13,1997

促成栽培イチゴにおける地力窒素及び有機質肥料,

液肥中の施肥窒素の肥効発現

吉田裕一・尾崎弘幸*・森本義博**

NUTRITIONAL STATUS OF NITROGEN rN RELATION TO SOIL

FERTILITY,ANDNITROGEN APPLIED WITH ORGANIC

AND LIQUID FERTILIZERINFORCING STRAWBERRY

YuichiYosHIDA,HiroyukiOzAKIandYoshihiroMoRIMOTO

Thee飴ctofsoilfヒrtilityandappliednitrogen(N)withorganicandliquidfヒrtilizeronthe

longteImnitrogennutritionwasdeterminedinfbrcingstrawbeTTy(ilagaTiaXananassaDuch∼

cv…Nyoho),inthreecommercialgreenhousesthosehavebeenapplieddiffヒrentamountofor−

gamic substances.・AlthoughplantN concentrationincreasedrapidlywiththe applicationofor− ganicftrtilizer,theNconcentrationincreasedremarkablyaftercovenng}withPVC蔦Imwithout theapplication…Whenl,.5to3…Okg−N/10awasappliedwithliquidf己rtilizerafterplanting,the

increasesintheplantNconcentrationwerealmostequaltothosesupplied12kgJNwithorganic

蝕tilizer”Moreover,theefftctoforganicfbrtilizerwasquitelittleafterthebeginnlngOfharvest

(1ateDec),theonlyeffbctofsoilfbrtilitycouldbes占en∴Theearlinessoftheincreaseinthe

PlantNconcentrationhastenedflowenngandincreasedearlyyield,however,inthegreenhouse

whichhadthemostfbrtilesoil(0…25%oftotalNand2巾98%oftotalcaTbonindTySOil),the

totalyieldwashighestintheplantssuppliednofbTtilizerlConsequently,theefftctsoforganic 危Itilizerappliedbasallymaybesubstitutedbythe applicationofliquid f由tilizer,aSthenutri− tionaleffbctoforganicfeTtilizercouldbeseenonlyintheshortperiod,justbeforethe坑1mcov− eIing小 Althoughtheleafchlorophyllcontentmeasuredwithhandychlorophyllmeterwassigni丘cantly Ielatedtotheleaftotal−Nandnitrate−N,themeasurementofchlorophyllshouldnotbeareliable methodofthedeteminationfortheplantnutritional1evellWhenthenitrateJNconcentTationof

petiolewasO。2%dw,thetotaトNconcentrationofleafbladewasestimatedtobearound3.0%

dw。Andwhenthenitrate−NwashigherthanO.1%andtotal−Nwaslow,thetotal−Nincreased

theIeafter.Frて〉mtheseresults,WeCanCOnCludethattheforclngStraWbeITyPlantscanbegrown withoutbasalapplicationoforganicftrtilizerandwithsupplyingliquid蝕tilizerthroughoutthe gTOWlngPeriodいAtthattime,thenitrate−Ninthepetiole shouldbeanreliableindexandkept

tobearoundO巾2%dw(400ppminthesap)

KeyWords:strawberry,nitrogen,SOilfertility,Organic知tilizer,1iquidfertilizer,nutIitional deteImination * ♯* 現在 ㈱サカタのタネ ≡木町農業協同組合 …* 本報告の概実は園芸学会中四国支部平成7年皮大会において発表した

(2)

緒 イチゴは耐肥性が低く(1),肥料濃度障害が発生しやすい上に栽培期間が長いこともあり,従来か ら有機質肥料を主体とした施肥が行われている.ただし,イチゴの施肥体系は地域や作型によって

大きく異なり,元肥窒素の標準的な施用畳も品種や産地によっで大きな幅がある(2).このように施

肥量に大きな差がみられる原因として地域による土質の違いあるいは品種や苗貿による吸鱒カの違 いなど様々な要因が考えられる.香川県下では1980年代後半に主要栽培品種が‘宝交早生’から ‘女峰,に変わって以後,元肥の施肥畳は年々増加する傾向にあり,数年前の各産地の元肥施肥畳 は窒素成分で30kg/10a以上になっていた(.TA香川青果連).このような標準施肥設計は各産地の多 収農家の施肥畳をもとに作られているが,多収農家では有機質肥料とともに大量の私大有機物が投 入されている.菅田ら(3)が明らかにしたように,これらの多収農家の収量増加の大きな要因は,大 量に投入された粗大有機物の分解によるハウス内のCO2環境の改善にある・粗大有機物の効果と有 様質肥料の施肥効果とが混同された結果,比較的投入の容易な有機質肥料の施与畳の増加につな がったものと考えられる. 油粕などの有機質肥料ヰの窒素は1カ月で約50%が無機化され,その後の無機化速度は極めて緩

やかである(4).また,化成肥料のような濃度障害が発生しにくい.しかし,有機態窒素の無機化速

度は土.壊微生物活性に依存しており,気温・降水量などの気象条件によって大きく変動する.また, 硝化された窒素の流亡についても降水量や潅永量の多少に左右されるため,有機質肥料であっても 初期の肥効が気象条件の年次変動によって不安定になることは避けられない.実際に,台風の影響 で9月に200mmを越える降雨のあった1990年には,県内各産地で多量の追肥が行われた.−・方で降 水量の少ない年には,腋花房の開花の遅れやビニル被覆後のチップバ−ンの発生など窒素過剰によ ると思われる現象も広く認められており,これまでの施肥体系には改善すべき点が多く残されて−い る. JA三木町では,過剰施肥の欠点が認識され,1989年には30kg/10aであった元肥窒素の標準施肥 畳が93年には12kgまで減少している.ただし,低窒素栄養条件下ではイチゴの花芽発育が抑制され,

開花期が遅くなる.また花房あたりの花数が減少するとともに開花する花も小さくなる‘5る).促成

イチゴでは,花芽分化促進のために極端に窒素レベルの低い苗が定植されることが多く,初期の窒 素の肥効は作柄の安定のために非常に畳要である.しかし,‘愛ペリー’では,元肥としての窒素 は施用せずに,追肥を主体とした施肥体系をとることによって品質・収量ともに向上することが明

らかにされており(7),有機質肥料の初期の肥効は追肥によっで十分代替し得るのではないかと二考え

られる. 近年のイチゴ栽培においては,通常定植直後から潅水チューブが設置され,生育後半を中心に液 肥を利用した肥培管理が行われていることから,定植直後から追肥として液肥を施用することは技 術的にはきわめて容易である.元肥を施用せずに,定植直後から液肥を用いて肥効を調節する施肥 体系は,過剰施肥の危険性が低く,気象条件の変動にも迅速に対応できることから,実証的な栽培 試験を行うことによっで比較的容易に栽培農家に受け入れられるものと考えられる. そこで,液肥潅水による施肥体系を確.立するための基礎的な資料を得ることを目的として,過去 の有機物投入量,すなわち地力の異なる農家を選定し,有機質肥料中の元肥窒素,液肥による追肥 窒素並びに地力窒素の肥効発現と‘女峰’の生育収量との関係について検討したル

材料及び方法

本実験は,1993年9月から1994年5月まで行った.

(3)

青田裕一・他:促成イチゴにおける地力窒素と施肥窒素の肥効 Tablel.Diffbrencesintheamountanddurationofappliedorganicsubstances・

W′

FaImnure GIOWer Sorghum 十 +一 Table2.Details oftreatments.

Nameof Appliedamount FeItilizer

treatment ofnitrogen

(kg⊥N/10a) Kind Name

ContentZ

OrganicfbItilizer 91−Yukiy 6−5−4

No fertilizer

Liquid知tilizer OK−F−2 14−8−16 Liquid蝕tilizer OK−l=−2 14−8−16 Liquid feIzilizer OK−F−2 14−8−16 12_N 12..0 0」N O l小5_LX l.5 3..0_LX 3.0 4.5_LX 4.5 知−P205−K20content(%) y

consistof28%rapemeal,28%steamedbonemeal,16%steamedskinmeal,11”5

%重shmeal,8%bloodand8.5%potassiumsulphate

XTotalamountdf5applications(1weekinterval),SeealsoTable3

Table3.Practicalmanagementandstartingdateoffertilizerapplicationof3growers・

≡e

伽wer plantingdate

AUG“10 SEP小 5 SEP..16 0CT.13 16 11600 AUG。20 SEP.,11 SEP..24 0CT.15 22 8400 SEP.1 SEP.20 SEP.24 0CT.20 22 8400

A B C

Z8hdaylengthandca.12℃inthedarkperiods.

JA三木町管内の‘女峰,栽培農家の中から,経年的な有機物投入量が異なるA,B,C3戸の

農家の単棟ハウス(間口5.4m,長さ30∼50m)を選定した.3戸の農家のこれまでの有機物投入 量は第1表に示した..A農家では過去10年以上にわたって10aあたりの2tのたい肥の投入ととも

にソルゴーの作付け,すき込みと3tのムギワラが投入されている.B農家では過去4年間ソル

ゴーが栽培されているのに対して,C農家では過去10年以上2tのたい肥のみが粗大有機物として 投入されていた. それぞれの農家に依頼して,ハウスの−・部は慣行有機質肥料区(12−N)とし,91有機(.JA香川

経済連,6−5−4:ナタネ油粕28%,蒸製骨粉28%,蒸製皮革粉16%,魚粕11.5%,乾燥血粉8%,

硫酸加.里8.5%)を元肥としてJA三木町の標準施肥設計(12kg−N/10a)に従って施用した.その他 の部分には有機質肥料を施用せず,たい肥と粗大有機物のみを投入し,液肥の施用畳によって第2 表に示した3処理区(1.5−L,3.0−L,4.5−L)を設け,無施肥区(0−N)と合わせて計5処理区を設 定した.液肥処理区は,OK−ト2(大塚化学,14−8−16)を用いて全施用量の1/5畳をA農家は1993 年9月16日から,B,C農家は9月24日からそれぞれ約1週間毎に5回に分けて施用した.また,

(4)

農家で若干異なるが,12−N区については,液肥(OK−F−2)で0.4∼0..6kg−N/10aの追肥を活着後2 回程度施用した.3戸の栽培概要は欝3表に示した. 9月21日に3戸の12−N区,0−N区の土壌を採取して一風乾後,土壌中全炭素・全窒素濃度をCIJN コーダ・−・(Yanako,MT−3)で測定した. 頂花房開花日は各農家全5処理区についてそれぞれ40個体ずつ調査した。葉面積は新生第3葉の 中心小葉の菓長×葉幅とし,月に2回それぞれ10個体ずつ測定を行った.新生第3葉申クロロフィ

ル濃度は,葉緑素計(ミノルタ,SPAD−502)で11月までは月2回,12∼4月は月1回5個体ずつ

計測を行った.20個体より週2∼3回成熟果を採取し,果実数と患畳を測定した. 葉柄中硝酸態窒素濃度はCatald。法(8),菓身中会堂素濃度はサリチル硫酸一過酸化水素水分解後 インドフェノー・ル法により測定した(9).処理開始時∼11月は過1回,12月以降は月1回全5処理ぼ から無作為に10個体の新生第3稟を採取し,1処理区2反復として,5個体ずつ乾燥させ乳鉢で粉 砕して試料上した. 葉面積,クロロフィル濃度,収量については12−N区,0区,3.0−L区のみ調査を行った. 結 果 第4表に示したように,9月21日の土壌中全炭素・窒素濃度は経年的な有機物投入量が多いA農 家が最も高く,C農家が最も低かった.いずれのハウスiこおいても金宝素濃度にはほとんど元肥施 用の影響が認められなかったが,全炭素濃度は12−N区が0−N区より低くなった.窒素の添加によっ

で土儀有機物の分解が促進されることから‘10),有機質肥料の施用によって土腐微生物の活性が高

まり,有機態炭素の分解が促進された結果であろうと考えられる. 第1図に示したように,頂花房の開花はA,B農家では12−N区が最も早く,0−N区と比較して10 日から2週間早かった.A農家では液肥施与畳が多いほど早くなる傾向にあったが,3.0−L区と4.5 −L区の間にはほとんど差が認められなかった“ただし,B農家では液肥施与畳の影響は認められ ず,土壌肥沃度が最も低かったC農家では処理区間にほとんど差が認められなかった. 月別収量の変化を第2図に示した.いずれの農家でも,開花の遅れから0−N区の年内収量が他の 処理区と比較して低くなった.しかし,土壌中会堂素濃度が高かったA農家では1月,2月の収量 が多く,4月までの総収量は0−Nが6.5日Oaと最も多く,12−N区が6.Otと最も少なくなった.そ・れ に対して,B,C農家ではほぼ全期間を通して0−N区の収量が低く,総収量はそ・れぞれ12−N区 (4..9t,3.4t/10a)の71,88%であった.

Table4.Di脆IenCeSinthetotalnitrogenandcarboncontentof

SOilinthegr・eenhouseof3growerson21Sep..1993叶 Z ■0 伽weI・ ! 。i・ () 0..24 2..78 0.25 2..98 0..20 2..28 0..21 2.51 0..16 1小87 0.16 2.05 A 十 B + C 十 Z+:200kgoforgamicfヒrtilizer(91−Yuki,6−5−4),−:noappli− CatlOn..

(5)

青田裕一・他:促成イチゴにおける地力窒素と施肥窒素の肥効 5 0 7 5 0 2 S︸u再五ぎ葛き○≡○辞 5 0 5 7 5 2 ︵gS︶p逗> 0 0 0 0 2 1..5 1 0..5 0

Oct

Nov

Fig.1 Effectsofsoilfbrtilityandnitrogenftr−

tilizationonthenowennglnStraWberTy

CV.Nyoho.Treatments are described

indetai1inTableland 2.

Nov Dec Jan Feb Mar Apr

Fig.2 Effbctsofsoilfbrtilityandnitrogenfbr−

tilization on changesin the yieldin

StraWberTy CV.Nyoho・Treatments are

describedindetai1in Tableland 2.

新生第3菓の菓面積の変化を第3図に示した.いずれの農家でも11月までは処理区間にかなりの 差が認められ,12−N区が最も大きく,0−N区が最も劣った.特にA農家では12−N区の葉面積が著 しく大きく,0−N区の約2倍であった.0−N区では農家間にほとんど差が認められなかったが,収 種開始期以後の気温・日射量の低下及び着果負担の増大にともなって,葉面積は急速に減少した.12 月以降収穫終了時まで3戸とも処理による差はほと:んど認められなかった.新生第3葉菜中クロロ フィル濃度は,いずれの農家でも定植直後には0−N区がやや低かったものの,処理区瀾にほとんど 差が認められなかった(第4図). 第5,6図に示したように,いずれの農家でも0−N区は新生第3菓の葉柄中硝酸態窒素,葉身中 全窒素ともに上昇が遅れた。 土壌中窒素濃度が最も高かったA農家では,処理開始が定植11日後であったため,処理開始時の12 −N区とその他の処理区の全窒素濃度に約0.6%の差が認められた.液肥処理区では処理開始直後か ら会堂素濃度の上昇が認められたが,0−N区では定植約1カ月後から顕著な上昇が認められた.い ずれの処理区も10月下旬にいったんピ・−クに達した後低下した.11月下旬以降はほぼ3.0∼3.5%で 准移し,元肥施与の影響はほとんど認められなかった.土壌中全窒素濃度は約0.20%であったが,

(6)

0 0 0 5 0 5 1 1 lU望UOUニきdOJO≡U−○当一望聖篭一心∝ 0 0 0 2 0 0 3 6 5 0 5 5 ︵N∈0︶雷L再−謡﹂ 5 0 5 4 4 3 100 0 0 3 6 0 2do 150 100 50 0 55 50 45 40 35 30 25

Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar Apr

Fig.4 E脆ctsofsoilftrtilityandnitrogenfer−

tilization on changes in the chloIophyll

COntentintheleafletofthethirdnewly

expandedleafinstrawbe甘yCV.Nyoho. Treatments、are describedin detailin

Tableland 2.

Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar Apr

Fig.3 E脆ctsofsoilfeItilityandnitrogenfer−

tilization on changeSin theleaf aTea

(widthXlength ofthemiddleleanet)

in the third newiy expandedleafin

StraWberTy CV・Nyoho・Treatments are describedindetailin Tableland 2. ソルゴ・−が作付けされたB農家では,元肥無施与層二の全窒素濃度の上昇が遅れた.特に0−N区と1.5 −L区では10月下旬まで12−N区より約1%低く推移した¶ しかし,A農家と同様に11月以降は処理 区間にほとんど差が認められなかった.土壌中金堂素濃度が0.16%と最も低かったC農家でも,0−N 区の金堂素濃度の上昇が遅れたが,液肥の肥効が強く現れ,4.5−L区では12−N区よりも金宝素濃度 が高くなり,1.5−L区でも処理開始5週間後には12−L区とほぼ同程度に達していた.ただし,他の 農家と同様に,0−N区の上昇が遅れたが,11月中旬以降はほとんど処理区間に差が認められなかっ た. 処理開始時の新生第3葉菜柄中の硝酸憩室素濃度はどの処理区も痕跡程度であったが,いずれの 農家でも金堂素濃度よりも処理区間の差が大きかった.生育初期には液肥施与畳の増加にともなっ て濃度の上昇は早くなる傾向にあったが,ビニル被覆後は処理区間の差は小さくなり,収穫開始期

(7)

青田裕一偲:促成イチゴにおける地力窒素と施肥窒素の肥効

−12−N,−+0−N 」ト1.5−L −∈ト3.0−L・増−4.5・L

︵≧白ま︶Zユ雲○ト

Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar Apr

Fig・5 E脆ctsofsoilfヒrtilityandnitrogenfbrtilizationonchangesinthetotalnitIOgenCOnCentrationin

theleanetofthethirdnewiyexpandedleafinstTaWbeITyCV・Nyoho.Treatmentsaredescribed in detai1inTableland 2.

(8)

−12−N −→◆−0−N +1.5−L せ3.0−L →ラー4.5−L

8 6 4 2 0000 ︵≧己ざ︶Z・¢l空︸≡ 0 1

0.8

0.6

0.4

0.2

0

Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar Apr

Fig.6 E飴ctsofsoilfbrtilityandnitrogenfertilizationonchangesinthenitrate・COnCentrationinthe petioleofthethirdnewlyexpandedleafinstrawbeITyCV・Nyoho・Treatmentsaredescribedin detai1inTableland 2。

(9)

吉田裕一・他:促成イチゴにおける地力窒素と施肥窒素の肥効 にあたる11月中下旬にピ・一クに達した後,漸減する傾向にあった.土壌中窒素濃度が最も高かった A農家では,12−N区,4.5−L区は処理開始3週後には約0.5%となったが,0−N区でも処理開始2週 後から上昇し始めた.1ユ月下旬にはいずれの処理区も約0.4%となり,その後はどの処理区もほぼ 同じ水準で推移した.B農家の0−N区,1.5−L区はビニル被覆期までは他の処理区と比較して−著し く低い濃度で推移したのに対して,12−N区は他の農家と比較して−も高く,処理開始4過後の10月22 日には0.8%と最大の億を示した.C農家では,0−N区のみが著しく低い濃度で推移したが,12−N 区と3水準の液肥処理区の間にほとんど差が認められなかった.処理終了までは,合意素と同様に 4.5−L区が12−N区よりも高かった. 収穫開始期以降,硝酸憩窒素濃度はA,B農家では処理区間にほとんど差が認められなかったが,

C農家では12月から3月まで12−N区のみが高く,元肥を施用していない他の処理区は極めて低

かった.農家間で比較す為と,土壌中窒素濃度が最も高かったA農家は1月から3月まで他の2戸 と比較して高く推移した. 考 察

藤本(11)によって育苗中の断根・ずらしによる低窒素栄養が‘宝交早生,の花芽分化を促進する

ことが示されて以来,イチゴの窒素栄養と花芽分化との関係については多くの報告がある(121314〉

しかし,イチゴの主要作型である促成栽培については,本圃での窒素施肥に関する研究事例が比較 的少ない. イチゴは通常,花芽分イヒ促進を目的として−窒素中断が行われるため,窒素栄養状態の極めて低い

昔が定植されることが多い.第5,6図に示したように,いずれの農家でも定植時の菓身中金宝素

は約1.5%で,硝酸態窒素はほとんど検出されなかった.このような状態の定植苗の生長を促進す るために,肥料磯度障害の発生しにくい有機質肥料の大量投入が実際に行われて−きたのであろう.

‘宝交早生,の花芽発育は高窒素栄養で促進され(11’,‘女峰,では育苗期の花芽分化促進処理期間

中においても窒素施肥によって開花が促進されることが明らかにされている‘15).しかし,青田ら(6)

が示したように,極端な低窒素栄養条件下では‘愛べり・−ノ の花芽発育が抑制されるが,葉柄中硝

酸悪妻寮で0.1%以上であれば花芽発育速度にはほとんど差が現れない.

田中ら(16171き)は,初期の窒素の肥効は収穫開始期の早晩には影響するが,全収量に対する影響は

ほとんどなく,初期の肥効は液肥で調節するこ.とが可能であると述べている.どの農家でも12−N

区が0−N区よりも窒素レベルの上昇は早かったが(第5,6図),ビニル被覆期頃には金宝素,硝

酸態窒素ともにほとんど差がみられなかなったり また,農家によってその量は若干は異なるものの,

液肥の施用によって12−N区と同様の肥効が得られており,元肥として施用した有機質肥料中の窒

素の初期肥効は液肥によって十分に代替し得ることが明らかになった.

さらに,腋花房の収穫盛期となる1月以降はハウスによる地力窒素の違いが大きく影響し,元肥

として施用した有棟質肥料の効果はほとんど認められなかった.土壌中全窒素濃度が0.24%と非常 に高かったA農家では常に硝酸態窒素が0.1%以上であったのに対して,0伊20%であったB農家で

は2月以降極端に低くなった.作土の深さを15cm,仮比重0.6とすれば,耕土の量は10aで約100t

となる..30kgの窒素を施肥しても窒素濃度は0.03%増加するに過ぎず,いわゆる地力の低いハウス

であっても地力窒素のわずか2%程度である.そのうちの50%が施用後1カ月以内に無機化される

ことからすれば‘4),有機質肥料による地力窒素の増加はほとんど期待できない.また,菅田ら(3)が

述べているように,促成栽培イチゴにおける有機物投入の効果は,土壌微生物の呼吸基質,すなわ

ち,土壌からのCO2発生源として周れる・・有機質肥料は炭素濃度が低く,投入量も500kg/10a程度

にとどまるため,租大有機物のようなCO2発生源としての効果もないと考えられ,有機質肥料の施

(10)

与効果は初期肥効のみであるといえる. 液肥の肥効についてみれば,液肥施与畳と葉柄中硝酸態窒素濃度との関係は農家によっで大きく 異なった.ソルゴー・の作付けとムギワラの投入が行われたA農家では,1」5−L区の窒素濃度の上昇 がやや遅く,開花も遅れた.また,3.0−L区と4.5−Lの間にはほとんど差が認められなかったこと から,粗大有機物の大量投入を前提とした場合には,有機物の分解に伴って有機化する窒素を補う

ために(19),定植後約1カ月の間に蛮素成分で3kg/10a程度の施肥が必要と考えられる.しかし,

有機物分解に伴う窒素飢餓の発生については,施用する租大有機物の種類や投入時期,さらには地

力窒素の多少や気温,降水量など様々な要因が関与すると考えられることから(41019),迅速簡便な

窒素栄養診断をもとに追肥を施用することが望ましいと考えられる. 作物の簡便な窒素栄養診断法としてSPAD葉緑素計による葉色の測定がイネなどで行われてい る(20).また,イチゴ生産者の経験的な栄養診断も葉色の変化を中心にしていわゆる葉の「ツヤ」 や「伸び」といった視覚的な判断によって行われている.本実験においては,1月以降全窒素濃度 と葉緑素計の指示億がほとんど変化しなかったことから,9月から12月までの葉柄中硝酸態窒素, 葉身中全窒素と葉緑素計の指示億の関係を第7,8図に示した. 全体では葉緑素計の指示億と葉身中全窒素との間に統計的には有意な相関(Ⅰ・=0.682,p< 0.001)が認められたが,農家間にかなりのバラツキが認められ,窒素濃度の推定精度は低かった (第7図a).さらに,葉緑素計の指示億と葉柄中硝酸態窒素との間にも有意な相関(ー=0.484, p<0.001)が認められたが,精度がさらに低かった(第7図b).これらのことから,最も簡便な 手法であると考えられる葉緑素計による測定では,イチゴの施肥管理のための窒素栄養診断は困難

であろう.また,田中と水田く16)は‘宝交早生,の促成栽培において菓中の全窒素濃度が2.27

、3.45%の間では生育収量に大きな差は認められなかったと述べており,煩雑な操作を必要とする 金堂素の測定も的確な栄養診断法とはなり得ないであろう. イチゴの窒素栄養診断法としては,花芽分化期を中心に葉柄中の硝酸態窒素濃度の測定が行われ ており,生育期間中においても葉柄中硝酸憩室素によって窒素栄養診断が可能だと考えられる.第 8図に示したように,金堂素濃度が2%以下の場合にはほとんど硝酸憩室素は検出きれず,吸収さ れた窒素は速やかに蛋白態に代謝されていると考えられる.しかし,全窒素濃度が2.5%以上の場 合には傾きは小さいものの,葉柄中硝酸態窒素と葉身中会堂素濃度との間にほぼ直線的な高い相関 が認められた.回帰式から,葉柄乾物中の硝酸態窒素濃度が0.2%の時,全窒素濃度は約3%と推 定され,それ以下の濃度の場合でも葉身中全窒素濃度の上昇が認められた(第5,6図).定量方 54321 ︵宴凸辞︶むP再一q−d心一u膚N篤︶○ト ︵≧凸芭ひ一〇膏duⅧZ・空空l乏 ・ 穴心 6 4 0 0 0 o Grower A Grower B B △GrowerC △△[ヽ 20 30 40 50 60 70 20 30 40 50 60 70 ReIativeva[ueofcHorophy[lcontent

RelativevaJueofchJorophyllcontent

Fig.7 Relationshipbetweentotalnitrogenconcentrationoftheleanet(a)andnitrateconcentrationof thepetiole(b),andchlorophy11contentoftheleafletinstrawberTyCV.Nyoho.

(11)

吉田裕一・他:促成イチゴにおける地力窒素と施肥窒素の肥効 11 4 ︵き凸辞︶lむ一−憎む一u;〓空○ト △ △

ロGrowerA

●GrowerB

△GrowerC

−TN>2% y=2.62+1.59x((=0,79大か*)

…Tota‡ y=2.32+2.32x((=0.76火”)

2 0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Nitrate−Ninpetiole(%DW)

Fig.8 Relationshipbetweentotalnitrogenconcentrationoftheleanetandnitrateconcentrationofthe

petiole in strawberry cv. Nyoho.

法は異なるが,青田ら(6)は‘愛べり・ノの場合0小3%以上では奇形果の発生が助長され,肢花房の 分化も抑制されることを明らかにしている.本実験では,腋花房の開花については調査できなかっ たが,‘女峰,においても‘愛ペリー,と同様に,腋花房の分化の遅れや乱形果などの花器の発育 異常が誘発されると考えられることから,葉柄乾物中で硝酸態窒素濃度0.2%,葉柄の乾物率を約

20%として汁液濃度で400ppm(硝酸液度として約1800ppm)が液肥施用の必要性を判断する上で

一つの基準値となり得ると考えられる. 収穫開始期以降,気・地温の低下する時期には全窒素濃席は高く維持されていたが,硝酸態窒素 濃度には顕著な低下が認められた.また,養液栽培で環境条件を好適に維持した場合,多量の養分 を吸収することから(21),収穫開始期以降も継続的な施肥を続けることが肥培管理の上で重要と考 えられる.海外において−は,点滴潅漑施設の普及に伴って,生育期間を通じて肥料成分を潅水時に 施用する技術が注目され,蝕tigadonとよばれている.この技術は露地栽培イチゴには適用され, 効果が認められている‘22).現在のところ施設栽培イチゴに適用した例は見られないが,有用な技 術であろう.すなわち,イチゴの促成栽培にもぬtigationの概念を導入して,高価である上に肥効 もかなり不安定な有機質肥料は施用せず,生育期間を通じて降水量や栄養診断に基づいて液肥を施 用することが合理的な肥培管理であると結論することができる. 要 約 経年的な土壌有機物投入量の異なるイチゴ‘女峰’栽培農家のハウスを用いて,地力窒素及び有 機質肥料と液肥によって施用した窒素の肥効発現を調査した.有機質肥料の施用によって定植後の

(12)

イチゴの体内窒素濃度の上昇は早まったが,どこル被覆後は無施肥区でも顕著な増加が認められた¶ また,元肥無施用でも,ビニル被覆期までに1.5∼3kg/10aの窒素を液肥で施用することによって,12

kg−N/10aの有機質肥料とほぼ同等の肥効が得られたル 収穫開始期以降は有機質肥料の効果はほと

んど認められず,地力窒素の影響だけが認められた.定植直後の体内窒素濃度の上昇が早いほど, 開花が早く,初期収量も多かったが,地力の高い農家では無施肥区の総収量が最も高くなった。有 機質肥料の施与効果は,初期の肥効に限られ,液肥で代替可能であったことから,有機質肥料を元 肥として施与する必要性は極めて低いと考えられる. 回帰式から葉柄中硝酸態窒素濃度が0.2%dwの時,葉身中全窒素濃度は約3%と推定された. 全窒素濃度が低い場合には,硝酸態窒素濃度が0.1%以上であれば,金堂素濃度の上昇が認められ

た.また,葉緑素計による葉色の測定では,体内窒素栄養状態の推定は困難であった.

とから,葉柄中硝酸態窒素濃度の測定によって栄養診断を行い,硝酸態窒素濃度0.2%dw(葉柄汁 液中濃度約400ppm)を基準として,全生育期間を通じて液肥による施肥管理を行うことこによって, 元肥無施用での栽培が十分に可能であると考えられる.

引 用 文 献

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参照

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