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他者との協働を通じて自らの考えを広げ深める生徒の育成 ―批判的思考と創造的思考の往還を促すカリキュラム・マネジメント―

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Academic year: 2021

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国語科

他者との協働を通じて自らの考えを広げ深める生徒の育成

―批判的思考と創造的思考の往還を促すカリキュラム・マネジメント―

三竿香織 釼持太一 川上尚俊 松森典子 *後藤亨朗 1 主題設定の理由 (1) 共通研究主題との関連 本校では,これまで各教科の特質に応じた物事を捉える視点や考え方を明確にし,それを核として 資質・能力を育成するカリキュラムの設定を目指してきた。 共通研究主題の「学びの意義を理解し自ら学び続ける生徒を育成するカリキュラム・マネジメント」 に示される「学びの意義」について,国語科では次のように考えている。新学習指導要領改訂の趣旨 として,PISA2012 や全国学力・学習状況調査の結果から,読解力及び表現力に課題があることが述べ られ,国語科の目標に「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成することを目指す」と 示された。そのうち「思考力・判断力・表現力等」に「社会生活における人との関わりの中で伝え合 う力を高め,思考力や想像力を養う」と示された。これが,共通研究主題でいう「学びの意義」であ り,本校国語科でねらう「他者との協働を通じて自らの考えを広げ深める」ことと繋がっていると考 えた。新学習指導要領に示されている課題とこれから育成すべき資質・能力を考えると,論理的に思 考する力と思考した物事を適切に表現する力が求められていると理解できる。また,「自ら学び続け る生徒」の姿について,国語科の研究主題で掲げる「自らの考えを広げ深める生徒」がこれに当たる と考えている。例えば,物事に対して問い続け,より良いものを創り出そうとして,批判的思考と創 造的思考とを往還させている生徒であると考えるものである。このような生徒を育成するカリキュラ ム・マネジメントを,国語科では,「主体的な学び」を保障する課題設定と「対話的な学び」を核にし た授業改善により,「深い学び」を引き出す単元の構想によるものとし,取り組むものである。 さらに,カリキュラム・マネジメントの視点として,持続可能な社会づくりやその担い手を育む視 点について述べる。国語科で身に付けさせたいと考える批判的思考力と創造的思考力は,実生活・実 社会で出会うあらゆる事象について向き合い,考える時の思考の基盤となるものと考えている。生徒 が,国語で身につけた複数の視点だけでなく,他教科で学習した知識も併せて,根拠立てて思考する ことができる単元を構築することを模索したい。そのための教材として,国語科の指導事項に照らし 合わせることにより,SDGs のゴールに関わる題材を取り上げることができると考える。 (2) 本校国語科のこれまでの研究との関連 国語科では,第1次研究において,そのカリキュラムのデザインとして,「『学習課題』と『対話的 な学習活動』の観点から」のアプローチを提案した。「他者との協働」を通じて「自らの考えを広げ深 める生徒」を育成するための授業改善という視点からのアプローチであり,一定の成果を上げたもの と考えている。本校国語科でのカリキュラム・デザインの基盤となっている全体構想図を図1として 次頁に示す。さらに,第2次研究において,第1次研究を基盤とした「主体的・対話的」な学習活動 と「深い学び」を通して培われるものとして「批判的思考力」を育成する単元を提案した。第2次研 究では,第1次研究の授業改善案や単元設定の工夫を踏襲した成果としての「主体的・対話的」な学 習活動と「深い学び」を通して培われる「批判的思考力」を育成することに,一定の成果を上げるこ とができたと考えている。これまでの研究成果を受け,第3次研究として,批判的思考力を育成する ことに留まらず,育成した批判的思考力と創造的思考力を往還させる学習を促すことで,さらに「自 国語 1

国 語 科

他者との協働を通じて自らの考えを広げ深める生徒の育成

―批判的思考と創造的思考の往還を促すカリキュラム・マネジメント―

三竿 香織・釼持 太一・川上 尚俊・松森 典子・*後藤 亨朗

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表1 国語科として目指す思考力と指導事項との関係 図1 カリキュラムの全体構想図 らの考えを広げ深める生徒」を育成することができると考えた。本稿では,批判的思考力と創造的思 考力の関係性を,次のように捉えている。本校国語科で想定する論理的・批判的・創造的思考力と中 学校国語科学習指導要領の指導事項との関係を表1として以下に示す。 ■国語力(言語能力…言語を操作する能力) 中学国語科学習指導要領の指導事項 ※一部抜粋 構造と内容の把握 ア 文章の種類を踏まえて,論理や物語の展開の仕方などを捉えること。 論理的思考力 精査・解釈 イ 文章を批判的に読みながら,文章の表れているものの見方や考え方について考えること。 ウ 文章の構成や論理の展開,表現の仕方について評価すること。 批判的思考力 考えの形成,共有 エ 文章を読んで考えを広げたり深めたりして,人間,社会,自然などについて,自分の意見をもつこと。 批判的思考力 創造的思考力 ○国語的な(いわゆる)文章読解力 ○国語的な(いわゆる)言語を用いた表現力 話題の設定,情報の収集,内容の検討 ア 目的や意図に応じて,社会生活の中から題材を決め,多様な方法で集めた材料を整理し,伝えたいことを明確に すること。 批判的思考力 創造的思考力 構成の検討,考えの形成 イ 伝えたいことがわかりやすく伝わるように,段落相互の関係などを明確にし,文章(話)の構成や展開を工夫する こと。 批判的思考力 創造的思考力 表現,共有 ウ 根拠の適切さを考えて説明や具体例を加えたり,表現の効果を考えて描写をしたりするなど,自分の考えが伝わ る文章(話)になるように工夫すること。 批判的思考力 創造的思考力 ■協働する力(他者と協力して学びに向かう力) 話合いの進め方の検討,考えの形成,共有(話し合うこと) オ 表現の工夫とその効果などについて,読み手(聞き手)からの助言などを踏まえ,自分の文章のよい点や改善点を 見いだすこと。 オ 進行の仕方を工夫したり互いの発言を生かしたりしながら話し合い,合意形成に向けて考えを広げたり深めたり すること。 批判的思考力 創造的思考力 Ⅰ 学習課題の設定の観点 Ⅱ 対話的な学習指導の展開の観点 作成・選定 豊かに発想 ア 生徒を学習の主体にさせる四段階のアプローチ ①価値の自覚 ②課題解決の計画 ③課題解決の追求 ④課題解決の評価 イ 教師の授業構想における四つの視点 ①学習状況 (どんな生徒に授業する) ②学習目的 (何のために授業する) ③学習内容 (何を授業する) ④学習行為 (どのように授業する) ウ 「協働」を保障する課題の二つの視点 ○ものの見方・考え方の多様性がある ・「最適解」を求めるものである ○本質追究の側面を持っている ・自分の考えを深化させるものである A 個人の時間の確保 学習課題に対して個人の考えを持つ時間が 生徒に確保されているか B 他者と協働する時間の確保 生徒はより多くの他者と対話的な活動が できているか ・協働する人数や時間,利用するアイテムや 空間の制限への対応 C 収束と発信 自分の考えをまとめ,その考えをより多くの 他者に発信するための時間が確保されている か D 個人への帰着 生徒はその学習課題の解決方法や結論を 自らのものにする時間はあるか 「主体的な学び」のための課題設定 様々な「対話的な学び」のスタイル 「主体的な学び」を保障する課題設定 「対話的な学び」を核にした授業改善 他 者 と の 協 働 に よ っ て , 自 ら の 考 え を 広 げ 深 め る 生 徒 ○ 主体的な学習者 ○ 国語学習の本質追究 「深い学び」を引き出し得る単元の構想 - 16 - 国語 2

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図2 思考と言語の関係 (3) 生徒の現状と課題 国語科では,これまでの研究の成果を生かした単元構想を行い,日々の授業実践を行ってきた。し かし,授業場面以外における生徒の日常の言語生活場面を見ると,充分な思考の深まりが定着してい るとは言い難いと考える。友だちの意見に付和雷同する・ネットの情報をうのみにする・情報をフィ ルターなしで受け入れる等,結論を考える論拠や前提に対する吟味が不足している様子が見受けられ る。こうした現状から,結論の一般性や客観性,妥当性を疑う姿勢をもたせることが,今後も課題と なると考えた。このような姿勢をもって思考することで,「そもそも,これはどういうことなのか」「本 当にこれは正しいのか」「こうとしか読み取れないのか」等,物事の本質を読み解くことができると考 えた。よって,思考し読み解いた事柄を表現することまで含めた単元を構想したいと考え,本研究主 題を設定した。 2 目指す生徒像と研究仮説 (1) 目指す生徒像 前回研究までに,新しい時代に必要となる資質・能力の育成に関連して,新学習指導要領にある「何 を知っているか,何ができるか」(個別の知識・技能),「知っていること・できることをどう使うか」 (思考力・判断力・表現力等),「どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか」(学びに向か う力,人間性等)の三つの柱から,その目指す生徒像として,「基礎的な知識・技能を習得するととも に,実社会や実生活の中でそれらを活用しながら,自ら課題を発見し,その解決に向けて主体的・対 話的に探究し,学びの成果等を表現する生徒」を想定した。本研究においても,この目指す生徒像に 変わりはない。他者との協働を通じて,自らの考えを広げ深めつつ,かつ批判的に自他の論理を吟味 し表現できるような生徒の育成を目指す。本研究は,そのために必要な力である「批判的思考力」を 育成するとともに,「創造的思考力」も活用する単元を提案することで,生徒の「深い学び」を保障し たいと考えた。 (2) 研究仮説 研究の基本となる思考と言語の関係は以下の図2で示すものである。本校国語科では,言語と思考 は密接に関わり合い,思考の発達に言語の発達は欠かせないと考えている。 そこで本研究でも,言語を習得させ,習得した言語を使った言語活動の中で思考する学習を,引き 続き実践していく。この思考する過程において,批判的思考と創造的思考を往還できるような単元を 構築し指導すれば,自らの考えを広げ深める生徒を育成することができるはずだという仮説を立てた。 国語 3

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3 研究計画 (1) 研究目標 第1次・第2次研究の成果を踏まえ,批判的思考と創造的思考を往還させる単元を設定し,授業を 改善することで,他者と協働しながら自らの考えを広げ深める生徒の育成を目指したカリキュラム・ マネジメントを実践する。 (2) 研究計画 ① 対象生徒 本校生徒(第1学年・第2学年・第3学年),研究協力校(公立校3校) ② 研究領域 他者との協働を通じて自らの考えを広げ深める生徒の育成 ③ 研究方法 情報収集,先行研究の調査,全体構想にもとづく授業実践,検証,まとめ ④ 検証方法 「調査問題」による生徒の学習状況の分析 4 3年生における実践の概要 これまで,原則的には全ての単元で「論理的な考え方」を追究し,批判的思考力を活用することを 指導している。本稿では,1年次から習得してきた批判的思考力を活用しながら,創造的思考力を必 要とする学習活動を取り入れた単元を提案する。 単元において,批判的思考力を活用する学習活動として,二つの作品を比較読みする単元を設定し た。さらに,創造的思考力を活用する学習活動として,各単元において「書く」活動を設定した。今 年度3年生の授業で,関連する単元の単元計画として,表2を以下に示す。 表2 関連する単元計画(一部抜粋) 本稿では,第3学年 12 月頃の『言葉の力』を比較読みする単元について述べる。この教材に関して は,第2学年2月頃に学習したが,コロナ禍による休校のため読解のみで終わることになったもので ある。今回,再読することにしたのは,再読によって生徒が自分自身の読みや考えの深まりを実感で きると考えたからである。 本教材は,大岡作品は光村図書,池田作品は教育出版の教科書に掲載されている教材文を使用した。 この二作品を使用することにしたのは,題名に示されるように,言葉の本質を問い,その言葉の使い 手である自分自身と向き合うことができるものであり,それぞれが新学習指導要領の教科の目標にあ る「言葉がもつ価値を認識する」という目標に最適なものだと考えたからである。そこで,学習指導 要領の「読むこと」にある「文章を読んで考えを広げたり深めたりして,自分の意見をもつこと」,「書 くこと」にある「表現の仕方を考えたり資料を適切に引用したりするなど,自分の考えが分かりやす く伝わる文章になるように工夫すること」を中心となる目標とした。言語活動としても,作品を読ん で,批評したり考えたことを伝え合ったりする活動に取り組めると考えた。生徒自身の考えを言語化 すること及び生徒が「自分の書く力がついている」と実感できることを目指して,随筆を書くことを 設定した。また,言葉がもつ価値を認識し,作品と向き合ったり自分自身と向き合ったりすることは, 今後の言語生活に結び付くものである。 令和2年 12 月3日(木)に,第3学年の生徒を対象に,次頁の指導案で授業発表を行った。 学習時期 使用教材 「書く」活動 第2学年2月頃 『言葉の力』 (大岡信) 作文を書く(コロナ休校のため未実施) 第3学年6月頃 『友好使節』 (星新一) 『信用ある製品』(星新一) 言葉と心について,意見文を書く 第3学年9月頃 『月光と海月』 (萩原朔太郎) 『月夜の浜辺』 (中原中也) 心情と表現について考え,鑑賞文を書く 第3学年 12 月頃 『言葉の力』 (大岡信) 『言葉の力』 (池田晶子) 自分の言葉を振り返り,随筆を書く - 18 - 国語 4

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単元(教材) 続々「ことば」と「こころ」(大岡信「言葉の力」池田晶子「言葉の力」) 第 2/4 時 本時の目標 二作品を参考に,自分の言葉がもつ力について随筆を書くことができる。(書くこと) 学習活動 指導・支援の留意点 評価 1.本時の学習内容を 確認する。 2.二つの作品の内容 を読み取る。 3. 随筆を書く準備を する。 (1)自分の言葉の力 について考える。 (2)具体例を考える。 4.随筆を書く。 5.本時の学びをふり 返る。 1. 「随筆」に書く内容を確認するために,学習の目標を, ○ P「の」を使って分析するよう指示する。 〇自分「の」言葉「の」力(例:自分「が使う」言葉 「に備わっている」力)について随筆を書く。 また,二つの作品を再読する方法として,「比較読み」と 「価値評価読み」を使うよう説明する。 2.「言葉」「言葉の力」とはどのようなものだと筆者が述 べているかを確認すること,自分の随筆に必要となる「言 葉の力」に対する評価をすることを説明する。班活動の 時間を設定し,以下の2つの視点で読むよう指示する。 ・大岡氏と池田氏が述べる「言葉」「言葉の力」につい て,比較し共通点と相違点を見つける読み。 ・大岡氏と池田氏の意見に対して,自分がどのように 評価するかを考える読み。 3. 個人思考の後,班で交流する時間を設定し,以下の手 順で行うよう,指示する。 (1)活動2で読み取った「言葉」や「言葉の力」を基準に し,自分が使っている「言葉」にどんな「力」がある のかを考える。 (2)その具体例を自分の日常生活の中から考える。 4. 随筆に書く内容として,以下のことを述べるよう説明 する。 ・活動3で考えた自分の「言葉」「言葉の力」について ・自分が(読む/書く/話す/聞く時に)使っている言葉 が「力」をもっていると感じた場面の具体例 ・周囲の人から自分に向けられた言葉が「力」をもっ ていると感じた場面の具体例 ・今後の言語生活についての自分の意見 また,二つの作品の書き出し(P意外さ・○P逆接・詳 細な具体例)を説明し,随筆の書き出しを工夫するよう 指示する。随筆を書くための時間を設定する。書き始め られない生徒に対しては,筆者の考えに対する評価を述 べることから書き始めるよう,助言する。 5. 自分が使っている言葉について考え,今後の言語生活 について思いを馳せることができたかどうかを自己評 価し,ふり返りシートに記述するよう指示する。 書くこと ・自分の言葉 の力について 随筆を書くこ とができてい る。 (作品) 二つの作品を再読し、自分の言葉の力について随筆を書こう。 国語 5

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図3 生徒作品「言葉の力」 図4 生徒交流後の付箋(一部抜粋) 本実践授業の次時に,完成させた随筆を交流する時間を設定した。完成した随筆を班内で読み合い, 感想や意見を付箋に記入して交流させた。同じ班での交流だけでなく,他の班の生徒作品も同様に交 流する時間を設定した。授業で学んだ書き出しの工夫や自分の言葉の力について適切に表現できてい る作品を評価し,「書き出し賞」「言葉の力賞」を選ばせ,授賞理由も記入するよう指示した。以下に 生徒作品として図3,図4を示す。 本実践では,二つの作品について,批判的思考力を使って比較読みをさせ,作品の書き出しの工夫 を見つけたり構成の工夫を真似したりしながら,創造的思考力を使って自らの言語について考えを形 成させ,随筆として書く言語活動に取り組ませた。さらに,友達の作品を読み,言語について多角的 に考える機会とし,互いの作品について批判的思考力を使って評価する言語活動を設定した。 今後,このような批判的思考と創造的思考を往還させることができる単元を構想し,実践を継続す る予定である。 - 20 - 国語 6

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図5 本校2年生と協力校2年生の無回答率 5 成果と今後の取組 (1) 調査問題の結果と考察 ① 実施時期:7月(指導前)2月(指導後) ② 問題内容と主に必要とする思考力 国語科で作成した記述問題。設問ア・イ・ウについて,以下の手順に沿って記述する。 〈手順1〉2つの事物の共通点を見つける。 「創造的思考力」 〈手順2〉手順1の共通点の中から1つを選択し,その選択理由を記述する。「批判的思考力」 〈手順3〉手順2で選んだ共通点をもつ課題以外の事物を記述する。 「創造的思考力」 ③ 記述の評価基準 各設問において,必要とした思考力を使っていることが分かる記述があるものを正答とした。 現在,調査用紙の回収ができている指導前の結果について,次頁に考察する。本校2年生と協 力校2年生の無回答率を図5,本校1年生と2年生の正答率を図6として示す。 図6 本校1年生と2年生の正答率 0 20 40 60 80 100 手順1 ア 手順1 イ 手順1 ウ 手順2 ア 手順2 イ 手順2 ウ 手順3 ア 手順3 イ 手順3 ウ 本校 協力校A 協力校B 100 (%) 0 20 40 60 80 100 手順1 ア 手順1 イ 手順1 ウ 手順2 ア 手順2 イ 手順2 ウ 手順3 ア 手順3 イ 手順3 ウ 2年正解率 1年正解率 100 (%) 国語 7

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図5より,手順1・2・3,設問ア・イ・ウの順に無回答率が高くなっていることから,問題設定 の難易度が生徒の感覚と合っていることが読み取れる。 手順1を見ると,協力校に比べて本校の減少幅が小さいことが分かる。本校生徒が,抽象度の違い に関わらず比較する力があることを示していると考えられる。 図6より,学年を問わず,手順2の正答率が低いことが見て取れる。これは手順2の記述に,批判 的思考力を用いたと判断できる記述が見られなかったためである。批判的思考力を用いた記述と判断 した基準は次の4点である。 ①課題認識(ここでは,手順1における解答の中から,一つを選ぶことができているかどうか。) ②他の解答との相違点(比較し選別する際に,他の解答との相違点に着目しているかどうか。) ③多角的な視点(比較し選別する際に,他者の視点,独自性,新奇性に着目しているかどうか。) ④論理の言葉(比較し選別する際に,一般性,妥当性,客観性に着目しているかどうか。) これら4点のうち,①を満たしているものを正答の候補とし,その中から,②③④のいずれかを満 たしているものを正答とした。今回の調査では,①の記述が,比較し選別した理由ではなく,選んだ 解答の説明になっているものが多く見られた。これは、国語教育の課題ともなっている読解力の問題 であり,課題を正確に理解できていないことが原因であると考えられる。 手順1については,本校の 1 年生と2年生に差は見られない。しかし,手順2・3では,2年生の 正答率が高いことが分かる。手順1で必要とされる創造的思考力に差はないが,手順2で必要とされ る批判的思考力に差があると考えられる。手順2の記述内容を比較したところ,1年生の記述に論理 の言葉を使用した記述は見られなかった。調査問題の実施時期に,1年生はまだ論理の学習を始めて いなかったことが原因と考えられる。前回研究成果と併せて,論理の学習が思考力の獲得に必要であ ることを示していると考えられる。 (2) 今後の取組 今後の予定として,引き続きの授業実践と,指導後の調査問題の実施・検証を計画している。調査 問題の結果検証では,論理の学習をした1年生の変化や,論理の学習をしていない協力校との差,発 達段階による差などにも目を向けながら,調査をまとめたいと考えている。また,指導後の調査結果 を踏まえ,さらなる授業改善に取り組んでいくことにしている。 「参考文献」 1)文部科学省(2008,2018)『中学校学習指導要領解説 国語編』 2)文部科学省国立教育政策研究所(2011)『評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資 料【中学校 国語】』 3)藤森裕治(2018)『学力観を問い直す 国語科の資質・能力と見方・考え方』明治図書 4)楠見孝・道田泰司編(2019)『批判的思考 21 世紀を生きぬくリテラシーの基盤』新曜社 5)田村学(2021)『教育科学 国語教育 No.854』明治図書 6)中山芳一(2021)『教育科学 国語教育 No.854』明治図書 7)岡山大学教育学部附属中学校(2017~2020)『研究紀要 第 52・53・54・55 号 全体編・国語科編』 - 22 - 国語 8

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