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ジェンダー視点による小学校家庭科担当者に関する一考察 : 家庭科および「家庭生活指導」をめぐる理論枠組として

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(1)

ジェンダー視点 による小学校家庭科担当者 に関す る一考察

一家庭科および「家庭生活指導」 をめ ぐる理論枠組 として一

家庭科教育教室

か お る

Gender Perspective Analysis on′ reachers who lnstruct

Homemaking in Elementary Schools:

The Theoretical Framework regarding Homemaking and

Fanlily Life Education

Kaoru HoRIUCHI

と は じめ に 戦後 の新 しい教育制度の もとに成立 した家庭科 は,「女子教科で はない」「家事 と裁縫 の合科で は ない」「技能教科で はない」 とい う「三否定」 を掲 げ,「民主的家庭建設」 という役割 を担い

,男

女 が共 に学ぶべ き教科へ と変化 した といわれている。 しか し小学校家庭科 は

,成

立後間 もな く「廃止 論」 に見舞われ

,1950年

前後 にその性格規定 をめ ぐって論議が活発化 し

,教

育課程 における位置づ

けが家庭科教育関係者

,文

部省,CIE(General Headquarters,Supreme Commander for the Allied Powers,Civil lnformation and Education Section連合国軍最高司令官総司令部

,民

間情報教育

局)の見解 の間で大 きく揺れ動いた (堀内 1994a,1994b,1994c)。 小学校家庭科の存廃が問われた 一因 は

,家

庭生活 にかかわ る内容の指導上 の適任者が学級担任であると考 えられた ことであった。 かつての「廃止論」の台頭 にともな う小学校家庭科 の性格規定 をめ ぐる論議 は

,1951年

の学習指 導要領 の改定 にあたって家庭科の改定 をせずに

,同

年11月に

,小

学校 の活動全体で「家庭生活指導」 を行 う際の指針 となる『小学校 における家庭生活指導の手び き』が刊行 されたことによって

,一

応 終結 した といえる。「家庭生活指導」が導入 された際 に

,教

科 としての家庭科 は「特設 して もしな く て もよい」(文部省 1951)と い う不安定な位置づ けを余儀 な くされた。 さらに,「特設」された小学 校家庭科 は「主 として家庭生活 に必要な基礎的かつ初歩的な実際的技能 を指導す るための時間」で あることが前述 の「手び き」 に明記 されることになった。すなわち

,戦

後 の家庭科の特徴 として掲 げられた「技能教科で はない」 という理念 は後退 し

,再

び「技能教科である」 ことが小学校家庭科 のアイデンティティと考 えられた。 また,「家庭生活指導」の実施 にあたって望 まれたのは

,男

性 の 学級担任 による指導であ り

,技

能 に関す る指導 を行 う場合 に女性教師が補助するとい う指導形態が 支持 されたのであった (尾藤 1950)。 このような小学校家庭科 の歴史 は

,家

庭科の学習指導が社会的 に期待 され る性役割 と無関係 で は

(2)

あ りえなかった ことを示 している。成立当初 の家庭科が標榜 した「民主的家庭」とは

,家

族員が「主 婦 の仕事である家事労働」 に協力 し

,分

担 して手伝 うことによって

,互

いに助 け合 う家庭 を意味 し ていた ことが指摘 され る 鉢卜木 1990)よ うに

,性

別役割分業 を前提 としてお り

,家

庭生活 に関す る 自己管理能力 を身 につ けた「 自立」 した個人 を育成す るための主体的な「家事参加」(堀内 1994d) を推進 しようとす るものにはな り得なかった。換言す る と

,成

立当初 の家庭科 は

,教

科理念上

,社

会的。文化的性差であるジェンダー差 を内包 していた といえよう。 その後の小学校家庭科 「廃止論」 の台頭 によって

,主

として学級担任 による「家庭生活指導」の構想が提起 され

,そ

の「手引 き」が 作成 された ことは,家庭生活 にかかわ る指導 に関す るジェンダー差 を否定 しようとした試 み として, 解釈す ることが可能である。 しか し

,当

時の家庭科教育 におけるジェンダー差が克服 されたので は な く

,ジ

ェンダー差 を内包 していた家庭科 とは異なるもの として,「家庭生活指導」が導入 された と いえる。その背景 には

,小

学校 においては男女 の学習内容 を区別す るべ きで はない とい う

CIEの

見 解があった (堀内 1994b)。 ところで近年

,小

学校で は学級担任 の教師 による家庭科指導が普及 している (田部井 1993)。 学 級担任教師による家庭科 の指導が行われ るようになる とい うことは

,歴

史的に最 もジェンダー・ バ イアスのかか っていた教科である家庭科 を男性が指導す る機会が増大 していることを示唆 している。 また

,高

等学校家庭科が1989年 の学習指導要領 の改定 によって男女必修 の教科 となった ことに とも ない,「男性教師が教 える」家庭科がマスコミの話題 になるようになった。 こんにちの このような状 況

,す

なわち男性教師が家庭科 の学習指導に関与す ることによって

,歴

史的に家庭科 に付随 して存 在 していたジェンダー差が消滅す るといえるだ ろうか。 こんにち小学校家庭科 は

,男

女共通の学習 内容 による指導が行われてお り

,制

度上のジェンダー差 は認 め られない。 しか し

,担

当教師の実態 には

,担

当形式や指導方法 におけるジェンダー差 はない といえるのだろうか。以上 のような問題意 識か ら

,本

研究 はジエンダーによる家庭科指導の相違 の有無 に着 日して考察 を進める とい う視点, すなわち「ジェンダー視点」 に基づ き

,男

性教師の家庭科教育への参入が学校

,家

,社

会 に対 し て及ぽす影響 を明 らかにす ることをね らい としている。本報 は

,研

究全体 の理論枠組 を構築す るこ とを目的 とした ものであ り

,以

下の手順で論考 を進 めたい。まず はじめに小学校教師の中で

,第

5。

6学

年担 当教師の性別比率お よび家庭科担当教師の性別比率 を教育統計か ら読み取 る作業 を行 う。 次 に

,先

行研究の中か ら小学校家庭科担当者 に着 目した調査研究 を取 り上 げ

,担

当教師のジェンダ ー差 とい う観点か ら論評 し

,本

研究 との関連 を明 らか にす る。最後 に

,女

性 あるいは男性が家庭生 活 に関す る内容 を指導す ることをめ ぐる

,わ

が国にお けるこれ までの論点 をまとめ

,小

学校家庭科 担当者 に関す る今後 の研究課題 を提示す る。

2

教 育 統 計 にみ る小 学校 教 師 の現 状 (1)国際的な趨勢 職業 としての小学校教師は

,女

性の占める比率が高い職種であり

,図

1に 示されるように

,過

去 20年間に女性の小学校教師は全世界的に増加の傾向を示 している。 しかし

,地

域による格差が大 き い(UN 1991)。 女性が小学校教師の過半数を占めている例 として

,特

に先進諸国に目を向けると , 「職業の女性化(feminiZation of occupation)」 の指標のひとつ として教師が取 り上げられ

,EC(現

EU)諸

国における男女の雇用率の比較が行われている

(EC 1992,図

2)。

EC諸

国のデータは対象 を小学校教師に限定 したものではないけれども,「女性化」の程度 は女性教師の年齢 によって推移 し,

(3)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第

1号

(1994) 90 100 先進地域 アフリカ ラテンアメ リカ・ カ リア海地域 アジア・ 太平洋地域 80 90 100 H革■1970 園園 1984

出所 :UNESCO,Statistical Yearbook,1984 and 1986(Paris,1984 and 1986)に 基づき国連統計局が作成。

注)国際連合著,日本統計協会訳 r世界の女性1970-1990-その実態と統計―』p100よ り引用 図

1

初 等 教 育 に お け る女性 教師 の割 合 (%) 教師 としての男女の雇用率 には

,各

国の特徴が表れている。

EC諸

国の中で

,デ

ンマー クは

,各

年齢 階層において男女の雇用率が ほば等 しい傾 向の国である。 しか しなが ら

,多

くの国で女性教師 は若 年層 にシフ トしてお り

,初

等教育 に比較的若年の女性教師が集中 していることを示す もの とみなさ れている (同上 p.158)。 アメ リカ合衆国で は

,幼

稚園か ら第

6学

年 に相 当する初等教育 において

,教

師の

70%が

女性であ

るとい う ``gender disproportions"(Allan 1993)が 生 じている。Allanによると

,男

性教師の大部 分 は

,第

4学

年か ら第

6学

年 を担当するか

,美

,音

,体

育 の教師 をしてお り

,第

3学

年以下 を 担当す る男性教師 は稀である。男性 の小学校教師 は

,教

育現場で男性 の役割モデル となることを期 待 され ると同時 に

,女

性的 とみなされているという「逆説的な位置」(同上 p.122)に 置かれている のである。 似)日本 における状況 わが国の場合 は,1993年5月 現在 の調査結果 によると

,小

学校 の女性教師の比率 は

60.4%で

あ り, 「いまや初等教育 を実質的 に担 っているのは女性教師」(読売新聞 1993)と言われ るようになった。 小学校教師の中で女性教師の占める比率 は,表1にみ られるように漸増 して こんにちに至 っている。 安定 して過半数 を上 回つたのが1969年であ り,こ の20年あまりの期間 に,およそ

10%ほ

ど増加 した。 しか し

,学

年や教科 の担 当状況 についてみると

,図

3に示す ように家庭科が設置 されている高学 年 を担当す る男性教師の比率 は

,同

学年担当の女性教師の比率のおよそ

2倍

に相 当す る。 さらに

,図

4に示す ように家庭科指導者 の現状 を見 ると女性が男性 よ りも高率 を示 し

,1989年

現 在で家庭科 を担 当す る女性教師 は

12.3%,男

性教師 は

9.9%で

あった。

(4)

ギリシャ アイルラン ド : │ 10 8 6 2 10 8 6 4 2 0 211 0 ' 20 ベルギー オランダ i │ 10 8 6 4 0 20 40 511 611 , m スペ イ ン フラ ンス 30 40 50 60 イタリア ルタセングルク 20 00 40 50 611 下方曲線:雇用率 (%) 10 ■ 6 4 20 30

-ktL

一 男性 llXl SO 25 0 ポル トガル イギリス 100 511 25 0 Ю   ほ   6   4   2   0 如 m ・0 ょ 6 4 2 0 ︲0   8   6   4   2   0 加 ドイツ

i i

10 8 4 2 0 上方曲線 :女性化率 (%―) 出所:EC(1992)'7bttρ″カ サル 五カψ盟″働″縁 ″軌pp.158■59 ただし,図 中の目名および項目名は,掘内が和訳して付した。横軸は年齢を表わす。 図

2

教師の女性化 Cemi

zauon)率

と雇用率 (男女

)(単

:%)

Iし 8 6 4 2 0 デンマーク 工・・…モ‐い

(5)

1

小学校における女性教師率 (%) 1.2 1.8 1.8 2.3 2.6 3.2 3.3 3.1 3.2 3.5 4.5 4.7 4.9 4.3 4.0 4.8 5.1 5.5 6.0 5,7 6.4 7.4 9.3 10.2 10。9 11.8 13.1 13.2 14.8 16.5 17.2 19。1 20.2 21.3 22.7 25。9 26.5 26.9 27.1 1912 1913 1914 1915 1916 1917 1918 1919 1920 1921 1922 1923 1924 1925 1926 1927 1928 1929 1930 1931 1932 1933 1934 1935 大1 大2 大3 大4 大5 大6 大7 大8 大9 大10 大11) 大12) ノ(13 大14 昭1 昭2 昭3 昭4 昭5 昭6 昭7 昭8 昭9 昭10 1936(昭11) 1937(昭12) 1938(昭13) 1939(昭14) 1940(昭15) 1941(昭16) 1942(昭17 1943(昭18 1944(日召19 1945(昭20 1946(昭21 1947(昭22 1948(昭23 1949(昭24 1950(昭25 1873(明6) 1874(明7) 1875(明8) 1876(明9) 1877(明10) 1878(明11) 1879(明12) 1880(明13) 1881(明14) 1882(明15) 1883(明16) 1884(明17) 1885(明18) 1886(明19) 1887(明20) 1888(明21) 1889(明22) 1890(明23) 1891(明24) 1892(明25) 1893(明26) 1894(明27) 1895(明28) 1896(明29) 1897(明30) 1898(明31) 1899(明32) 1900(明33) 1901(明34) 1902(明35) 1903(明36) 1904(明37) 1905(明38) 1906(明39) 1907(明40) 1908(明41) 1909(明42) 1910(明43) 19■ (明 44) 4 6 9 1 5 4 9 2 5 5 6 7 9 0 3 0 6 4 0 6 3 3 2 3 6 32 . 6 34 . 3 37 . ︲ 39 , 9 43 . 2 一 47 . 9 5 . . 7 54 . 2 49 . 9 49 . . 50 . 4 50 . 0 48 . 8 1951(昭26) 1952(昭27) 1953(昭28) 1954(昭29) 1955(昭30) 1956(昭31) 1957(昭32) 1958(昭33) 1959(昭34) 1960(昭35) 1961(昭36) 1962(昭37) 1963(昭38) 1964(昭39) 1965(昭40) 1966(昭41) 1967(昭42) 1968(昭43) 1969(昭44) 1970(昭45) 1971(昭46) 1972(昭47) 1973(昭48) 1974(昭49) 1975(昭50) 1976(昭51) 1977 (町目52 1978 (晰g53 1979 (日召54 1980(昭55 1981 (H目56 1982 (H目57 1983 (H目58 1984 (尉目59 1985(昭60 1986(昭61) 1987(昭62) 1988(昭63) 1989(平 1) 1990(平 2) 1991(平 3) 1992(平 4) 1993(平 5) 48.4 47.9 47.2 46.7 46.5 46.2 45.8 45.2 44.9 45.3 46.1 46.7 47.4 48.0 48.4 48.6 49.1 49.6 50.3 50.9 51.7 52.4 53.2 54.0 54.8 55.4 55,8 56.3 56.6 56.6 56.5 56.2 56.0 56.0 56.0 56.2 56.5 56.9 57.5 58.3 59。3 59.8 60.4 鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第

1号

(1994) 151

注)1873∼1950年の比率 は下記文献所収の表 (pp.188∼192)より引用 した。 一番ケ瀬康子・木川達爾・宮田文夫編 (1974)『女教師の婦人問題』第一法規 1951∼ 1993年の値 は文部省『学校基本調査報告書』の「小学校教員本務者(男 女)」 の人教 をもとに算出したものである。

(6)

O―

O第

5学年担任(男)1

-第

5学年担任(女) 0中

0第

6学年担任(男) O・・。 第6学年担任(女) 1977 1980 19i3 1986 1989 台F 注)文 部省『学校教員統計調査報告書』より比率を算出して作図した。 図

3

第5・ 6学年担任教師の性別比率 (%)

%

1986 1983 口 全 体 1989 年 囮 女 囲 男 文部省『学校教員統計調査報告書』より比率を算出して作図した。 図

4

家庭科担 当教師の性別比率 (%)

(7)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第

1号

(1994) 153

このことは

,高

学年学級担任 の教師のほかに

,そ

の他の女性教師

,す

なわち他学年担任や専科, 学級担任外 (教頭

,教

務主任等

)の

女性教師によって

,家

庭科 の指導が行われていることを示唆 し ている。 しか し

,わ

ずかずつなが ら家庭科 を担当する男性教師 は

,増

加す る傾向にある。

3

小 学 校 家 庭 科 担 当者 の 実 態 お よび望 ま しい担 当方 式 に つ い て (1澄国の家庭科担 当者の実態 実態調査 に基づ き

,小

学校家庭科 の担当者の現状 を明 らか にす ることは

,1970年

代中頃か らの研 究の蓄積がある。 これ らの研究で は

,実

態の解明 とともに

,望

ましい担当方式 について も検討 を加 えているものが大半 を占めている。内藤 (1974)は

,家

庭科 を含 めた小学校 の教科担当方式の実態 を明 らかにするために

,全

国の都道府県お よび指定都市教育委員会 の小学校担当指導主事 を対象 と した調査 を行 った。 その結果

,最

も多かった担当方式 は

,他

学年担当者 による「奉仕授業方式 (い わゆる「出張」と言われ るものに該 当する)」 であ り

,36.3%,次

いで学級担任 による指導が

29.0%

となっていた。家庭科 の専科 による指導 は

,12.3%と

低率であつた。内藤 はこのような状況 につい て

,小

学校 における教師間協力の必要性 とい う観点か ら,「孤立 した分業者 としての教科担任で はな く

,学

年内

,学

校内の教科分担」に着 日し,「分業 に対す る協業 の重要性」があることを提起 してい る。 偉)各都道府県における家庭科担 当者の実態 と意識 さらに内藤 (1975)は山梨県を例 に

,小

学校 において協力指導体制 の導入が困難 な要因 として, 「担当教師の『数』 と『質』」の問題 を指摘する。家庭科 について は

,家

庭科が「奉仕授業」で行わ れる理 由を尋ねてお り

,理

由の中で最 も高率であつたのは,「低学年教師 と高学年教師の授業時数の 平均化」とい うことであった。 しか し顕著なジェンダー差 を反映 していた回答 として,「女教師な ら だれで も担当で きる教科」 というものがあ り

,こ

のように回答 したのは男性教師 よ りも女性教師の 方が約

10%ほ

ど高率で

46.1%で

あった。 また,「男子教師で担当で きる数が少ない」とい う見解 を持 つ教師 は

,男

性教師の

54,7%,女

性教師の

47.8%で

あ り

,両

性 ともほぼ半数が

,小

学校家庭科の指 導 は男性教師には困難であると考 えていた。 このように,「男性教師 には指導が困難」とみなされた 要因 は

;小

学校家庭科 に対す る認識 に負 っていた と考 えられ る。「単 なる技能教科であるか ら男子教 師は敬遠する」と回答 したのは

,女

性教師が男性教師 を約

10%上

回 り

,26.1%で

あった ことか らも, 家庭科 は伝統的性別役割分業の範疇 にある家庭生活技能 の習得 のための教科 とみなされていた こと がわかる。1975年は

,国

連 の定 めた国際婦人年であつた。国際婦人年 は

,性

別役割分業 を否定 し, 男女が ともに家庭生活 の責任 を担 うという理念 に対 する国際的なコンセ ンサスが得 られた年であつ た。 しか しなが ら

,家

庭科の男女共学必修化 をめざす動 きは端緒 についたばか りであ り

,中

学校技 術・家庭科 における男女共通履修領域 の設定

,な

らびに高等学校家庭科の男女必修化の実現 は

,前

述のように1989年の学習指導要領改定 まで待たなければな らなかったのである。 内藤同様 の調査 として

,渡

辺 と西村 (渡辺・ 西村

1978,西

村・ 渡辺

1978)に

よる愛知県におけ る調査

,佐

藤 (1978)による千葉県における調査

,西

村 (1980)による岡山県にお ける調査

,武

藤 ら

(1986a,1986b)に

よる岡山県での調査 のほか

,高

森 (1986)は

,熊

本県 における実態 を調査 し ている。 また

,藤

原 と東門 (1987)は

,沖

縄県の現状 を明 らか にしている。同 じ岡山県全域 を調査 対象地域 としている西村(1980)と武藤 ら(1986a)の調査 は

,前

者 の実施時期が1976年

,後

者が1984

(8)

年であ り

,調

査実施時期 に

8年

間の隔た りがある。両者の結果 を比較す ると

,1976年

には「出張」 による指導が

55%で

最 も多 く

,次

いで担任 の

21%,専

科 の

19%で

あった ものが

,1984年

には学級担 任が

55.4%で

1位

とな り,「出張」 は

20.1%で

1976年の時点 と

1位

2位

が逆転 した。

3位

の専科 は

11%で

減少傾向にある。渡辺 らの調査 (渡辺・西村

1978)に

よると

,1974年

現在 の愛知県の状況 は,「出張」お よび担任 と他教師の「出張」を組み合わせた指導が同率で

,最

多の

31%で

あった。次 いで学級担任 による指導が

15%で

あ り

,家

庭科専科のケースは最 も低率で

10%で

あった。渡辺 らは, 「他の教科 と同様 に担任が行 ってこそ

,児

童 に偏見 な く受 け入れ られ るので はないか と考 える」 と いう見解 を示 し

,担

任 による指導 を支持 している。 また

,男

性で家庭科 を担当 している場合 は

,そ

の内の

93.3%が

学級担任 として行 っていた (西村・ 渡辺 1978)。 しか し愛知県下の小学校 の家庭科 担当者 の

80.3%は

女性であ り

,46.3%は

20代であった。1992年に全国の教育大学 。学部 の附属学校 の家庭科教師 を対象 に実施 された田結庄 と山本 (1992)の調査 において も

,家

庭科担当者 は比較的 若年で勤務年数の短 い教師の多い ことが指摘 されている。このことは,「女性 な らばだれで も担当で きる」 とい う家庭科 に対す る認識 を反映 しているように思われる。 佐藤 (1978)の 千葉県での調査 によると

,や

はり他県 と同様 の傾 向を示 し

,担

任 な らびに「出張」 による担当方式の学校が多い。担任 による指導 と並んで高率 を示 している「出張」 による指導は, 多 くの場合担任が男性であることと関連 しているもの と考 えられ る。高森 (1986)による熊本県で の調査で は

,全

体 の約

9割

が担任 として家庭科 を担当 していたが

,88%の

学校 の第5・

6学

年担任 はすべて男性 とい う実態 も明 らかにされた。第5・

6学

年 にのみ特設 されて きた家庭科 において, 多様 な担当方式 による指導が行われて きた背景 には

,高

学年 に男性教師 を配当す る一般的な傾向 と 関連が深いように思われ る。 また

,学

級担任 の男性教師の過半数 は

,家

庭科 を指導す ることについて「担任であるか ら仕方が ない」と思い,「家庭科 の指導 は苦手」と考 えていることが

,貴

田 と小松 (1984)の 調査 によって明 らかにされている。指導が「苦手」 と考 える理由は

,藤

原 と東門 (1987)の調査結果 に示 されてい るように,「裁縫

,調

理 な どの実習が苦手」 ということであろう。わが国に根強い性別役割分業 は, 女性の社会参加 の機会 を阻む ものであったの と同時に

,男

性 に とって は

,家

庭生活への参加が不十 分な ものにな りがちであった。国際婦人年以降

,行

政の施策 にも性別役割分業の解消が取 り上 げら れるようになって こんにちに至 っている (総理府編

1991)が

,妻

の職 の有無・勤務形態 にかかわ ら ず

,家

事労働 の大半 は妻が担 っている (堀内他 1992)。「家庭科 にお ける技能指導 は男性 には困難」 とい う認識 は

,こ

んにちに至 るまでのわが国の性別役割分業 を教育の場 に転化 したもの と考えられ るのである。 新福 と加地

(1983a,1983b)は

,大

阪府 の家庭科教師 と小学校第5・

6学

年の学級担任 を対象 と して

,実

態調査 を実施 している。「教科 の指導 に携わっている教員 の実態 は

,教

科 としての体質 とも な りうるものであるし

,担

当者 の意識 の基礎 ともなるもの」 とい う指摘 (新福 。加地

1983a)は

, 小学校家庭科 の担当者が抱 えている問題点 を示唆 しているように思われ る。新福 ら (1983)は

,中

学校

,高

等学校 の家庭科専任 の教師 と比較 して

,小

学校 の専科教師 と高等学校 の非常勤講師 に「満 足感」を得ているものが少ない ことを報告 し,「学校全体 の教育体系の中に自己の存在場所が確保 さ れているか どうか とい うことが,『満足感』を左右する要因の一つ とみることがで きよう」と考察 し ている。そ して

,小

学校家庭科が専科教師 によって担われていることは,「普通教科 としての家庭科 の位置づけを脅かす」 ことになると指摘 した。新福 らの主張 は

,後

に生活科 をぶ まえた家庭科指導 という方向へ展開す ることになる (新福 1987,1993)。

(9)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第

1号

(1994) 155

小学校家庭科担当者 の実態 と意識が性別役割分業意識 を反映 していることを指摘 したのは

,多

々 納 (1994)である。多々納の調査研究 は

,小

学校家庭科の担当状況 を小学校教師の性別役割分業意 識

,す

なわちジェンダーの問題 として とらえようとした点 において

,本

研究 と共通す る視点 を持つ もの と思われ る。多々納 は島根県の全公立小学校 で

,第

5・

6学

年学級担任 のうち「現在家庭科 を 担当 していない教員」 を対象 に調査 を実施 している。 その結果

,回

収 された調査票 の内訳 は男性教 師369名

,女

性教師15名で

,男

女比 に大 きな相違がみ られ

,既

述 の教育統計 における家庭科担当者 の 性別比率の結果 を具体的に示す もの となっている。多々納 は,「家庭科担当教員の決定 には

,性

別役 割分業意識が強 く作用 しているので

,家

庭科担当者が極端 に女子教員 に偏 るという実態が生 じてお り

,児

童 に性別役割意識 を植 えつけることにつなが るもの と考 える」 と論 じている。子 どもたちの 性別役割分業意識が生成 されるプロセスにおける教師の影響力 についての指摘 は

,

きわめて重要な 問題 を提起 しているので

,の

ちほ ど改めて取 り上 げ

,考

察することにしたい。多々納 の調査結果で は

,家

庭科の指導経験 のある学級担任 の男性教師 は

22.8%で

あ り

,現

在家庭科 を担 当 していない理 由 としては,「実技面 の指導に自信がないか ら」 とい うことに次いで,「女の先生 に任 せたほうが よ い と思 うか ら」 とい う理由があげ られていた。 このような回答傾向に対 して

,多

々納 は「 これ まで 家庭科 を専 ら女子教員が担当 して きた ことが

,逆

に男子教員 の担当を困難 にして きた ことを示 して いる」ととらえ,「女子教員 に担当が偏 っていた ことか ら生 じる家庭科担当上 の悪循環 の輪 をどこか で断ち切 る必要がある」と述べている。「悪循環の輪」とは

,家

庭科 をめ ぐって連綿 と存在す る潜在 的かつ顕在的なジェンダー差 と言い換 えることがで きよう。 このようなジェンダー差 を克胃Rす るこ とが

,小

学校家庭科 の課題であるといって も過言で はない と思われる。 また

,調

査の結果か ら

,教

師の性別役割分業意識 によって家庭科の とらえ方が異 なっていた こと が明 らかにされ,「男女教員が ともに家庭科 を担当す ることには,まず

,教

員 自身 の性別役割意識 の 変革が必要」とい う指摘がなされた。「男 は仕事

,女

は家庭」とい うことばで端的に表現 され る男女 の役割分担 に対す る意識 は

,固

定的な ものか ら会々 に変化 しつつある (総理府 1990)。 しか し

,現

実の生活場面 において

,家

庭お よび社会 における生活時間のジェンダー差が示 してい るように (伊 藤他

1984,伊

藤・ 天野編

1989,天

野他

1994),意

識 と実態 は乖離 している とい う問題がある。む しろ

,教

師の性別 にかかわ らず

,す

べての教師が担当する教科 として家庭科 を位置づ け

,担

当実態 の面 におけるジェンダー差 を消去す ることによる意識変革 を試みる方が,効果的で はないだろうか。 家庭科の学習指導 を通 して

,担

当教師 自身 も何かを学んでいるはずである。学習指導 を通 して得 た ものは個々の教師によって異なるものであろうけれ ども

,子

どもたちに とって も

,教

師 に とって も, 「生活す る」 ということに対す る自己啓発 の機会 にな り得 るのが

,家

庭科 の学習指導であるように 思われる。いずれにせ よ

,担

当上のジェンダー・ バイアスをな くす ことが

,小

学校家庭科 の当面 の 問題であるといえよう。 13)家庭科 を担 当する男性教師に対する諸見解 松木 (1974)は

,青

森県の小学校第5・

6学

年の担任教師 に対 してアンケー ト調査 を実施 し

,男

性教師の

80.9%が

専科 による家庭科指導 を望んでいることを指摘 した。 これ らの男性教師の中で家 庭科 を教 えているのは

19.2%,教

えた ことがあるのは

29.4%で

あった。一方

,女

性教師 は

,専

科 を 望む ものが

46.4%,学

級担任が望 ましい と考 えるものが

49.4%で

,回

答が三分 され

,家

庭科 の専科 を望むのは男性教師 に著 しい ことが示 された。 松木 は

,な

ぜ家庭科 は

,学

級担任以外 の教師が担当す ることになるのか

,

とい う問題 を提起 し,

(10)

次の2つの理 由をあげている。既述 の先行研究 と同様 に

,ま

ず第1点

,低

学年 と高学年 の教師の 授業時数のバ ランスを とるためであ り

,第

2点

,男

性教師が家庭科 を「単 なる技能教科」 とみな して敬遠 し

,女

性教師 は「家庭科な らだれで も担当で きる」と軽 く扱って,「簡単 に交換 した り応援 した りする」という理 由であった。前述 の内藤(1975)の調査 によると

,家

庭科 を「単 なる技能教科」 とみなしていたのは

,む

しろ女性教師 に多かった。松木 の調査で は,このほか,「家庭科 は男子教員 に担当で きない教科 と思 うか」とい う問いに対す る回答 を教師の性別 に比較 している。「男性教師は 担当 しないほうが よい」 あるいは「担当で きない」 と回答 した比率 はいずれ も男性教師 よりも女性 教師の方が高率であ り

,男

性教師には「担当で きない」と考 える女性教師の比率 は

,19.2%で

ある。 女性教師自身が家庭科担当者 としての役割意識 を持 っていた といえる。さらに,「男子 は家庭科 を好 んで学習 していると思 うか」 とい う問いに対 しては女性教師の29。

1%が

「そう思わない」 と回答 し ている。女性教師には

,男

子の家庭科学習 に否定的な傾 向がみ とめられた。 このような教師の状況 に対 して

,松

木 は家庭科 の担当者 は原則 として男女 にかかわ らず学級担任 が行 うべ きであるという見解 を示 している。 しか しなが ら,「場合 によっては」 とい う限定つ きで, 「技能 をよりよ く指導するために家庭科の教科主任や家庭科の とくいな女子教員 に出張指導をして もらうこともあろう」 と述べ

,そ

の際 も「学級担任 は彼女等 にまかせ きりにしないで

,常

に自分 に 責任があることを自覚 して協力すべ きである」 と主張 している。松木 もまた

,技

能指導 は女性 の助 力 を必要 とすると考 えていたのである。 また

,松

木 は「家庭科 こそ生活指導 に結びついた生活学習 を基礎 として

,1年

生か ら必修 として次第 に内容 を高めてい くことが望 ましい」「合科教育的な効果 を期待 され るべ きである」 という指摘 も行 ってお り

,1951年

に刊行 された『小学校 における家庭生 活指導の手び き』 に共通する家庭科教育理念 の所持者であった と考 えられ る。 これ らの調査結果が20年前の ものであることを考慮す ると

,小

学校か ら高等学校 までの家庭科の 男女必修が実現 したこんにちにおいて

,教

師の意識 は変化 していると推察 され る。近年 は,「男女が 学ぶ家庭科」が 自明の こととして言われ るようになった。前述 の先行研究 において も明 らかなよう に

,家

庭科 を担当す る学級担任 の男性教師 は以前か ら存在 していたが

,家

庭科の専科 として勤務す る男性教師 は

,い

まだ希少な存在である。貴 田 ら (1989)は

,全

国の教員養成大学・ 学部家政科 に 在学す る男子学生 に対す る調査 を行い

,将

来 の抱負や家庭科観 な どについて質問 している。1986年 現在 の男子学生数 は22名

,1988年

現在で35名であ り

,入

学時 に不安 を

,在

学時 に孤立感 を感 じてい るという。家庭科教師 を志望 しているのは

50%で

,「衣」領域 に対する関心 は低い ことが示 された。 また

,高

等学校 の家庭科教師に対す る調査で は,「男性 の家庭科教師 は『被服実習』 と『母性』を教 えることが困難である」 と考 えられていることが明 らかになった。 津止 (1993)も 教員養成大学 における家庭科専攻 の男子学生 の在籍数およびその就職状況等に関 す る実態調査 を行 っている。1992年 8月 現在 の調査結果 によると

,53校

中26校の大学 に家庭科専攻 の男子学生が在籍 していたが

,就

職状況 をみる と

,家

庭科教員 として就職 した ものは13名にす ぎな かった。 しか し

,そ

の中で も9名は小学校 に就職 してお り

,い

わゆる小学校 にお ける家庭科専科 な のか

,家

庭科 も担当 しているということなのか

,そ

の点 は不明であるものの

,小

学校家庭科への男 性教師の参入 は

,中

学校・高等学校 の場合 と比較す ると

,進

んでいるといえよう。 また

,男

子 の家庭科教員養成 に関する教員養成大学の見解 には,「男子が学ぶ家庭科 の次 は

,男

女 で教 える家庭科の時代である」 とい うものが あった (津止 1993)。 家庭科が実質的に男女 に開かれ た教科 となるためには

,家

庭科教師 とい う職業 にお ける性別分業 もまた否定 されなけれ ばな らない のである。

(11)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36港 第

1号

(1994) 157

4

ま とめ に か え て 小学校家庭科担当者 に着 目し

,そ

の担当状況 について考察 した結果

,家

庭科 を専科教師が担当 し ていないケース はこんにちに始 まった ことで はな く

,家

庭科 の学習指導 は20年前の段階で も学級担 任教師や他学年担任教師の「出張」授業 によって行われていた。 またそれ は

,各

都道府県によって も異なる状況 を呈 していた ことが推察 された。 さらに

,各

学校 内における学年および教科間の「分 担」 に対 する見解 の相違が

,家

庭科の学習指導のあ り方 にも反映 されていた。小学校家庭科が他教 科 と同様 に学校教育 における必修 の

1教

科であ りなが ら

,多

様 な担当方式が存在 している現状 は, 学習指導の一貫性 とい う観点か らす ると不安定な もの と言わ ざるをえない。学校 の内外 において小 学校家庭科教育 の研修 の機会が提供 され

,多

くの教師が小学校家庭科 を担当する「力量」 を体得す る必要性があると思われ るが

,そ

のためには,「家庭科担当者 の『力量』と何か」ということが

,明

らかにされなければな らないであろう。 日本教育大学協会家庭科部門 (1981)は,「家庭科教員の望 ましい資質能力 とその養成」 を分科会 のテーマに掲 げ

,報

告の中で「家庭科教員 としては基本的に 家庭生活経験が豊かでなければな らない こと」や「技術 を的確 に体得 させ る指導力 をもつ こと」が 求められていることが指摘 された。最近では

,吉

原 (吉原編 1994)が「 これか ら家庭科教育の研究 実践 に携わ ろうとす る人 にどんな力 をつけてほしいのだ ろうか」 と自問 し

,次

のような4つの条件 を例示 している。すなわち

,①

子 どもたちの生活 の現実や 自分 の生活 に問題関心 をもつ こと

,②

生 活の中の科学や技術 な どの文化 をあじわい生活 スタイル を選 び創造で きること

,③

子 どもたちの成 長発達 に とって家庭科の果たす役割 についての認識 をもつ こと

,④

家庭科教育研究の到達点 を認識 し現代的な研究課題 を認識 し

,さ

らに授業研究や実践 の方法 を見出 し発展 させ ることとい う具体的 な「力量」が提示 されている。家庭科担当教師の「力量」 については

,稿

を改めて論 じるべ き重要 な主題である。今後 の家庭科担当教師に求められ る「力量」 とは

,ジ

ェンダー差 を克服 した家庭科 教育の担 い手 として不可欠な

,教

育上 の資質 にほかな らない。そのような「力量」形成の支援 を行 うことが

,今

後 の家庭科教育 に関す る教員養成 な らびに教師教育の課題であると考 える。 また

,統

計上 の数値お よび先行研究か ら

,第

5・

6学

年の学級担任 の男性教師 は女性教師 と比較 して家庭科 を指導 していない傾向が明 らかにされた。 このような結果 は

,小

学校家庭科の学習指導 におけるジェンダー差 の存在 を示唆 している。ひ とつの仮説 として,「実質的 に」ジェンダー差 のな い家庭科の学習指導体制が定着す ることによって

,家

庭科 に対す る意識上 のジェンダー 。バイアス は希薄化す ると考 えられ る。家庭科 を担当する男性教師の増加 による社会的な影響 を分析するため には

,他

の「女性化(feminiZadolll」 の進んだ職種 (例えば

,看

護帰

,美

容師な ど

)に

おける男性 の ケースについて も視野 に入れて比較 し

,考

察 を行 う必要があろう。 しか しなが ら

,教

師 は「教育」 とい う営みを通 して次世代 の子 どもたちに直接かかわ る存在であるという点 において

,他

の職種 と 大 きく異なっている。「学校 は特定 の文化 を正統な文化 として認定 し

,そ

の文化 の伝達 。習得 の活動 (教育 。学習

)と

それを基盤 にしている社会のあ りようを正統化 し

,か

くして

,文

化 と社会 を世代 を越 えて再生産す る とい う機能 を担 っている」(藤田

1993)の

であ り,「学校 は

,社

会的・文化的な 性 としてのジェンダーを再生産す る装置である」(同上)とい う指摘があるように

,教

師 は

,子

ども たちに対 す るジェンダーの「伝達者」 にな り得 る。1989年告示の学習指導要領 は

,小

学校か ら高等 学校 まで家庭科が男女必修教科 として位置づ けられた とい う点 において

,家

庭科教育史上

,画

期的 なものであった。 しか し,「男女必修 の家庭科」が クローズア ップされ ることによって

,家

庭科 にお

(12)

けるジェンダー差が「個性」と読 み替 えられ

,正

当化 され ることにな りはしないだろうか。「家庭科 は

,両

性が協力 して家庭生活 を営む ことを強調するあまり

,逆

に現代社会や家庭生活教材 に内在す るセクシズムを見 えに くくす る側面 もある」(亀田 。舘 1990)と い う指摘 は

,今

後 の家庭科教育 に 対する重要な示唆 を与 えるもの と考 えられる。「男女で学ぶ家庭科」の内容が再検討 されなければな らないの と同時 に,「文化 の伝達者」である家庭科担当教師のジェンダー差 の実態が明 らかにされ る 必要がある。 その端緒 として

,他

の学校段階 と比較 して家庭科 を担当す る男性教師が多い小学校教 師に限定 し

,小

学校 における家庭科担当者の実態の把握 を試 みることにしたい。前述 したように, 小学校家庭科の担当者 に関 しては各都道府県による相違が大 きいので

,一

般的な傾向をとらえるの と同時 に

,地

域 を特定 して

,そ

の地域 における生活様式や意識構造 の特徴 とも関連 させた分析が不 可欠である。特定地域 の調査研究 に着手す ることを次の課題 としたい。

引用文献

(著

者名アルファベ ッ ト順

)

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『 “フレb%η♂″

`77♭

″t′豚診ηゲηハリη aη ttoη,ア Oθttα″ο%弓 Newbury Park:SAGE Publications,pp l13-127 天野寛子・伊藤セツ・森 ます美・堀内かおる 。天野晴子 (1994)『生活時間 と生活文化』 光生館

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,CIEの

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,CIEの

動向」(第2報)一『家 庭科』か ら『家庭生活指導』ヘー」『日本家庭科教育学会誌』投稿中 堀内かおる(1994c)「戦後初期小学校家庭科廃止論をめぐる家庭科教育関係者,文部省

,CIEの

動向」(第3報)一F/Jヽ 学校 における家庭生活指導の手びき』が完成するまでの過程―」『日本家庭科教育学会誌』投稿中 堀内かおる(1994d)「子 どもの生活時間 と家事参加」 天野他共著『生活時間 と生活文化』 光生館 pp.90108 伊藤セツ・ 天野寛子・ 森 ます美 。大竹美登利 (1984)『生活時間』 光生館 伊藤セツ・天野寛子共編著 (1989)『生活時間 と生活様式』 光生館 亀田温子・舘かおる(1990)「教育 と女性学研究の動向 と課題」 女性学研究会編『ジェンダー と性差別』勁車書房 pp. 130-149 松木侃 (1974)「/Jヽ学校家庭科教育 における男子教員の諸問題について」『日本家庭科教育学会誌』No15,pp.1317 文部省 (1951)F/Jヽ学校 における家庭生活指導の手びき』 明治図書出版 武藤八恵子・ 西村緞子 。大倉美恵・ 石原公子 (1986a)「岡山県における小学校家庭科教育の実態 (第1報)」『日本家 庭科教育学会誌』Vol.29,No 3,pp.1-7 武藤八恵子・西村綾子 。大倉美恵・ 石原公子 (1986b)「岡山県における小学校家庭科教育の実態 (第滲報)」『日本家 庭科教育学会誌』Vo1 29,No 3,pp.814 内藤道子(1974)「小学校の教科担当方式に関する調査研究(1)一家庭科 を中心 として一」『日本家庭科教育学会誌』No15, pp 7-12 内藤道子 (1975)「小学校の教科担当方式に関する調査研究(2)一各教科の協力指導体制 と家庭科一」『日本家庭科教育

(13)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第

1号

(1994) 159

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2:

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(14)

SW41コ

mary

Todayj homemaking educatiOn adheres to the cou〔 説 of study revised in 1989 FegaFding the equality of the

sexes h educatioh.It was decided hat homemaking education was a required subiect staFting in he 5血 grade

in elemelltary school and continuing int0 1 gh schodi for every boy and girl.Latelyjinale homemaking teachers

have been increasing little by little,and their actions are noticed.

This study was based on those tttuations about teachers and homemaking educatiOn,and composed of the FeSearch on the effects of rnale homenaking teacheFs concerning ёI■linatiOn Of gender bias on homelnaking education.This report、 Tas situated at the― beginning of he study and aimed tO construct the theoretical

framewOrk.

The precedures of this report were as fOllo嶋、F'IStly,educational statistics concerning elementary teachers

vere reseached.Secondly,literatureS vere ro ewd with gender perspect et Lastly,principal problems of this

表 1  小学校における女性教師率 (%) 1.2 1.8 1.8 2.3 2.6 3.2 3.3 3.1 3.2 3.5 4.5 4.7 4.9 4.3 4.0 4.8 5.1 5.5 6.0 5,7 6.4 7.4 9.3 10.2 10。 9 11.8 13.1 13.2 14.8 16.5 17.2 19。 1 20.2 21.3 22.7 25。 9 26.5 26.9 27.1 19121913191419151916 19171918191919201921192219231924192519

参照

関連したドキュメント

などに名を残す数学者であるが、「ガロア理論 (Galois theory)」の教科書を

独立行政法人福祉医療機構助成事業の「学生による家庭育児支援・地域ネットワークモデ ル事業」として、

C. 

指導をしている学校も見られた。たとえば中学校の家庭科の授業では、事前に3R(reduce, reuse, recycle)や5 R(refuse, reduce, reuse,

3 主務大臣は、第一項に規定する勧告を受けた特定再利用

 ファミリーホームとは家庭に問題がある子ど

◯また、家庭で虐待を受けている子どものみならず、貧困家庭の子ども、障害のある子どもや医療的ケアを必

海に携わる事業者の高齢化と一般家庭の核家族化の進行により、子育て世代との