共 催:びまん性肺疾患バイオマーカー研究会
エーザイ株式会社 エーディア株式会社
第6回
びまん性肺疾患バイオマーカー研究会
─ 抄 録 集 ─
日 時:2015年8月21日(金)18:00~20:45
場 所:JPタワーホール&カンファレンス
東京都千代田区丸の内二丁目7番2号JPタワー・KITTE4/5階
TEL:03-5222-1800
参加費:1, 000円
※軽食をご用意しております。 (なお、国公立等の施設にご所属の先生方におかれましては、事前にご所属施設 の規則等をご確認の上、ご対応いただきますようお願い申し上げます。)当番世話人
海老名 雅仁(東北薬科大学病院 呼吸器センター)
テーマ:特発性進行性肺線維症としてのIPF・f-NSIP・PPFE
-バイオマーカーからみる病態の相違と治療-
18:00~18:15【オープニング・リマーク】 東北薬科大学病院 呼吸器センター 海老名雅仁 18:15~18:55【一般演題】 座長:自治医科大学 内科学講座 呼吸器内科学部門 坂東 政司 演題1 『特発性肺線維症患者の血流と肺におけるSP-A、SP-Dの分布の相違』 札幌医科大学 呼吸器・アレルギー内科学講座 ⁄錦織 博貴,千葉 弘文,高橋 弘毅 演題2 『間質性肺炎における血清KL-6値の季節変動に関する研究』 高知大学医学部 血液・呼吸器内科 ⁄秋田 慎,河瀬 成穂,大西 広志,窪田 哲也,横山 彰仁 ― 休憩(15分) ― 19:10~20:40【特別講演】 座長:自治医科大学 内科学講座 呼吸器内科学部門 杉山幸比古 日本医科大学 大学院医学研究科 呼吸器内科学分野 吾妻安良太 講演1 『N-アセチルシステイン吸入療法を要した特発性肺線維症における血中レドッ クスバランス,新規バイオマーカーと臨床効果との関連性 KL-6,SP-Dとの 比較を中心に』 東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) ⁄本間 栄,杉野 圭史講演2 『F-NSIPの病態―KL-6、SP-Dなどのバイオマーカーを含めて―』 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 ⁄小倉 高志、山川 英晃、北村 英也 講演3 『PPFEにおけるKL-6、SP-D、SP-Aの変動と病態との関連』 福岡大学医学部呼吸器内科学講座 ⁄渡辺憲太朗 20:40~20:45【クロージング・リマーク】 自治医科大学 内科学講座 呼吸器内科学部門 杉山幸比古
一般演題 1 特発性肺線維症患者の血流と肺におけるSP-A、SP-Dの分布の相違 札幌医科大学 呼吸器・アレルギー内科学講座 ⁄錦織 博貴,千葉 弘文,高橋 弘毅 目的:血清中のサーファクタント蛋白質(SP)-A、SP-D値は特発性肺線維症(IPF)の重 症度と予後を反映し、血清バイオマーカーとして広く用いられている。両蛋白質は強い 類似性をもっているが、その血清値に乖離をみとめるIPF患者をしばしば経験する。今回 われわれは、IPF患者における血清と気管支肺胞洗浄液(BALF)中のSP-AおよびSP-D値、 BALF中の両蛋白質の親水性、組織中の両蛋白質の分布の観点から、その動態の違いにつ いて検討した。 方法:36人のIPF患者と18人のサルコイドーシス(SAR)患者のBALFを遠心し、細胞成 分を除いたのち、上清(Sup-1)中のSP-AとSP-D値を測定した。また血清中の両蛋白質濃 度を測定し、BALF中濃度と血清中濃度の比を求めた。さらに、IPF患者のSup-1を高速 遠心し、上清(親水性分画:Sup-2)と沈渣(疎水性分画:Ppt)に分離し、各分画のSP-A、 SP-D濃度、リン脂質濃度を測定した。また、IPF患者のうち外科的肺生検をおこなった 12名の検体を用いて、組織におけるSP-AとSP-Dの分布を調べた。 結果:血清SP-AおよびSP-D値はIPF群で有意に上昇していた。BALF中のSP-A値は各 群間で有意な差を認めなかったが、SP-D値はIPF群で有意に低下していた。IPF群で BALFと血清中の濃度比は有意に縮小していたが、その傾向はSP-Dでより顕著であった。 BALF中のSP-AおよびSP-Dの親水性の検討では、ほとんどすべてのSP-AがPptに存在 していたのに対し、SP-DはSup-2とPptに分離しており、有意にSup-2に多かった。免疫 組織化学的検討では、IPF肺の拡張した気道や蜂巣肺の内部にしばしば厚い粘液の貯留が 認められたが、この粘液はSP-Aが強発現しており、SP-Dの発現は弱かった。 考察:BALF中と血清中の両蛋白質の濃度差はIPF群で縮まっており、IPFではこれらの 蛋白質が肺胞腔から血中に移行しやすくなっていると考えられるが、SP-Dでその傾向が 顕著であった。BALF中の親水性の検討および免疫組織化学的検討からSP-Aは肺サーフ ァクタント脂質との結合により、IPF肺の拡張した気腔内の粘液に捕捉されやすく、SP-D より血中へ移行しづらいものと考えられた。
演者略歴
2002年 3 月 札幌医科大学医学部 卒業 2002年 4 月 札幌医科大学附属病院 研修医 2003年 4 月 各関連病院 呼吸器内科勤務 2009年10月 札幌医科大学 呼吸器・アレルギー内科学講座 診療医 2013年10月 札幌医科大学 呼吸器・アレルギー内科学講座 助教一般演題 2 間質性肺炎における血清KL-6値の季節変動に関する研究 高知大学医学部 血液・呼吸器内科 ⁄秋田 慎,河瀬 成穂,大西 広志,窪田 哲也,横山 彰仁 【背景】間質性肺炎の血清マーカーであるKL-6値の測定は、間質性肺疾患の存在診断、治 療効果判定、および一部は予後判定に有用である。しかしながら、KL-6には各種間質性 肺疾患における疾患特異性は乏しく、鑑別診断における有用性は限られる。一方、過敏 性肺炎のように原因抗原暴露により肺病変が悪化し、血清KL-6値が季節性に変動する疾 患も経験されるが、各種間質性肺炎における血清KL-6値の季節性変動に関しては不明で ある。【目的】各種間質性肺炎における血清KL-6値の季節性変動の有無を明らかにする。 【方法】2009年4月から2013年11月までに、当院に通院歴または入院歴のある間質性肺炎 (特発性肺線維症(IPF)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、膠原病関連間質性肺炎(CVD-IP)、 過敏性肺炎(HP)、気腫合併肺線維症(CPFE))患者の中で、血清KL-6値が半年以上の間 に4回以上測定され、少なくとも各季節1回以上測定されている患者を対象に、疾患情報、 夏季(6月~9月)と冬季(11月~2月)の血清KL-6値を電子カルテより抽出し、血清KL-6 値の季節性変動を後ろ向きに検討した。【結果】血清KL-6値は、IPFよりCVD-IP、CPFE で有意に低かった。全経過中の血清 KL-6 値の変動は、CVD-IP、CPFE に比較して、 NSIP、住居関連HP、鳥関連HPで有意に大きかった。住居関連HPと鳥関連HPでは、夏 季と冬季の間で血清KL-6値の有意な季節変動がみられた。他の間質性肺炎と比較して、 鳥関連HPでは血清KL-6値が冬季に有意に増加し、住居関連HPでは、血清KL-6値は夏 季に有意に増加していた。【結論】間質性肺炎の治療中もしくは経過観察中に、血清KL-6 値の季節性変動が大きい症例では、過敏性肺炎の可能性を考慮する必要がある。
演者略歴
2002年 3 月 広島大学医学部卒業 2002年 4 月 広島大学病院内科研修医 2004年 4 月 各関連病院 呼吸器内科勤務 2007年 4 月 広島大学大学院分子内科学入学 2015年 4 月 高知大学医学部血液・呼吸器内科学講座 助教特別講演 1
N-アセチルシステイン吸入療法を要した特発性肺線維症における血中レドックスバラン ス,新規バイオマーカーと臨床効果との関連性 KL-6,SP-Dとの比較を中心に
東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) ⁄本間 栄,杉野 圭史
【背景】近年,特発性肺線維症(IPF)患者において血中CC-chemokine ligand 18(CCL18)値(Am J Respir Crit Care Med 2009;179:717-23),matrix metalloproteinase-7(MMP-7) 値(Chest 2013;143:1422-9)が予後予測因子となり得ることが報告されており、治療効果予測システムを 構築する上で有用であると推測される.【目的】NAC吸入療法およびピルフェニドンで治療され たIPF患者を対象に、長期臨床効果と血中レドックスバランス,ヒドロペルオキシド,CCL-18, MMP-7値,尿中8-OHdG値等の推移との関係,さらに既知のKL-6,SP-Dと比較してこれらのバ イオマーカーが治療効果の有用な予測因子となり得るかどうかを検討する.【方法】GSH濃度は検 体 と し て 全 血 を 用 い て,Oxis Research 社 の GSH/GSSG-412 assay kit, 尿 中 8-OHdG 濃 度 は 8-OHdG 測 定 用 ELISA kit, 血 中 の 活 性 酸 素 代 謝 産 物( 酸 化 ス ト レ ス )濃 度 は, イ タ リ ア WISMERLL社の活性酸素フリーラジカル分析装置(F.R.E.E)を用いて測定した.血中MMP-7お よびCCL-18の測定は,検体として遠心分離後の血清を用いてELISA法で測定した.なお,治療 効果判定は6ヶ月間でFVCの5%以上の低下を悪化,その他を安定と定義した.【結果】NAC吸入 療法がおこなわれた40例の検討では,安定群では悪化群に比べて有意に血中レドックスバランス の改善,血中ヒドロペルオキシド,CCL-18,MMP-7値の低下が認められた.一方,KL-6,SP-Dは, 経過中に臨床効果とは無関係に変動する傾向にあった.さらにNAC吸入療法およびピルフェニ ドンによる併用療法がおこなわれた13例の検討では,血中ヒドロペルオキシド,CCL-18が併用 療法後に低下傾向にあり,FVC変化量と血中ヒドロペルオキシドおよびCCL-18変化量とは有意 な負の相関関係を認めた.【考察】血中ヒドロペルオキシドおよび血中CCL-18,MMP-7は比較的 簡便に測定でき,治療効果判定および病勢を評価できるものと考えられた.我々は,早期軽症 IPF患者を対象にNAC単独吸入療法を行い,安定群において,還元・酸化型グルタチオン比およ び還元型グルタチオンの増加,酸化型グルタチオンと尿中8-OHdGの減少することを既に報告し ているが,NAC単独吸入療法で悪化した症例においても,ピルフェニドンを併用することにより, 再び酸化ストレスマーカーが改善することが示唆された.【結語】本研究のようにNAC吸入療法 およびピルフェニドンで治療されたIPF患者において,レドックス制御および血中バイオマーカ ーの推移を解析することは,治療効果予測システムを構築する上で大変重要と考えられる.また, IPF患者において,これら血中バイオマーカーを測定することは,治療導入のタイミングや治療 効果判定を迅速に行うことができ,適切な治療薬の選択に役立つものと期待される.
演者略歴
1979年 順天堂大学医学部 卒業 & 自治医科大学付属病院 内科研修医 1985年 順天堂大学大学院 医学研究科卒業(医学博士) 1988年 米国 Harvard大学病理学科、公衆衛生学科留学 1992年 順天堂大学医学部呼吸器内科講師 1994年 国家公務員共済組合連合会虎の門病院呼吸器科医員 2005年 国家公務員共済組合連合会虎の門病院呼吸器センター内科部長 2006年 東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森)教授特別講演 2 F-NSIPの病態―KL-6、SP-Dなどのバイオマーカーを含めて― 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 ⁄小倉 高志、山川 英晃、北村 英也 NSIPは、当初は暫定的な臨床画像病理疾患概念と位置づけられたが、2008年にATSの projectにより病理パターンの一つとしてだけでなく、独立した疾患単位として報告され た。2013年、ATS/ERSによって改訂されたIIPsに関する共同声明においても、特発性 NSIPとして独立した疾患単位であることが再確認され、IPFと同様に慢性経過の線維化 を伴うIIPs(chronic fibrosing IP)に分類された。ただ、特発性NSIPの病態においては解 明すべき事は多い。 NSIPの病態においては、以下の点が報告されている。 ① 特発性NSIPの臨床経過は、治療が奏功し可逆性の症例から治療抵抗性で線維化が 進行する予後不良な症例まで多彩であり、本症は IIPs の中ではとくに Disease behaviorに基づいた診療が有用であるとされる。 ② NSIPは、組織学的に炎症と線維化の程度により細分類されており、その細分類と 予後が関連することが示されている。現在は、NSIPを、細胞浸潤性非特異性間質 性肺炎(cellular NSIP : C-NSIP)と線維化性非特異性間質性肺炎(fibrotic NSIP : F-NSIP)に分類されているが、C- NSIPからF- NSIPに移行する例は多い。
③ IPFと同様に特発性 NSIPでも急性増悪の病態があることが確認された。ただ、 NSIPの場合は、IPFにおける急性増悪の定義を満たさない程度の増悪も発症して、 治療の追加が必要になる事も多い。
④ IPFとF-NSIPと分類する病理パターンよりも、肺機能の推移のほうが予後と関係 あるという報告を考慮すると、IPFとF-NSIPを分類する必要がないという意見も ある。すなわち、両者をあわせfibrosing interstitial pneumoniasとして分類して、 IPFと同様に抗線維化薬が有効である可能性もある。 ⑤ 膠原病に先行する症例や、膠原病の診断基準を満たさないが自己抗体陽性や組織 所見の類似性から特発性NSIPと膠原病との関連を指摘する報告も少なくない。 本講演では、特にF-NSIPを中心に、上記に記載したNSIPの病態とKL-6、SP-Dなどの バイオマーカーとの関係を解説する。
演者略歴
1983年 自治医科大学卒業 1985年 横浜市民病院 初期研修 1988 ・ 4 神奈川県立青野原診療所 医師 1992 ・ 6 神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器科医長 2002 ・ 4 同 部長 2011 ・11 同副院長兼務(現在に至る)特別講演 3
PPFEにおけるKL-6、SP-D、SP-Aの変動と病態との関連 福岡大学医学部呼吸器内科学講座
⁄渡辺憲太朗
Idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis(IPPFE)は、2013年にIIPsの国際分類が改訂され た際に正式にIIPsの仲間入りをして以来、報告論文が増加している。世界的にPPFEは稀な肺線 維症ということになっている。定義も未だ流動的であり、どこまでPPFEという疾患概念を許容 するかということにもよるが、PPFEはまれではないという認識がわが国にある。PPFEの病理組 織学は比較的分かりやすい。UIPと一部のfNSIPの鑑別に悩むような煩わしさはない。しかし臨 床像にはかなり幅がある。今回の検討では、外科的肺生検や剖検により、病理組織学的にPPFE と診断できた症例、すなわち上肺野の胸膜に沿って帯状に集簇する弾性線維の存在とそれに連続 して存在する肺胞内の膠原線維による線維化を証明できた症例について、IPFなどの診断や病勢 の推定に用いられている血中KL-6、SP-AやSP-Dの動きをFVCとの関連において検討した。 KL-6、SP-D、SP-Aの基準値を<500U/mL、<110ng/mL、<43.8ng/mLとした場合、基準値 を上回った症例はそれぞれ 20 例中 12 例、15 例中 12 例、14 例中 10 例であった。これら 3 者と FVCの測定時期を一致させてそれぞれの値を症例ごとに比較したが、相関関係はなかった。す なわち、KL-6、SP-A、SP-DなどのバイオマーカーはIPFにおいて上昇する症例が多いが、それ ぞれの値にバラツキが多く、一定の傾向をみいだせなかった。またIPFの進行(FVCの低下)と も有意な関連はなかった。 次に、KL-6の経時的変動をFVCと同期させて1年以上追跡できた20症例を検討したが、FVC の進行と有意な相関関係はなかった。FVCの低下とともにKL-6が上昇していく症例が6例あっ たが、KL-6とFVCが同じ動きをする症例が2例あり、一方両者が無関係な動きをする症例も多 く、結果として有意な相関関係は得られなかった。 PPFEは予後に幅があり、臨床的な表現型が多様であるが、今回示したKL-6などのバイオマ ーカーとFVCの動きは、PPFEの多様な表現型を反映しているかもしれない。